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2016年4月28日(木)
やめられない働き改革 とまらない…カルビー

ゲスト

松本晃
カルビー株式会社代表取締役会長兼CEO
海老原嗣生
雇用ジャーナリスト 立命館大学客員教授

カルビー松本会長に聞く これからの働き方と経営戦略
秋元キャスター
「まずはカルビーと松本さんの経歴から紹介していきたいと思います。カルビーは終戦から4年後の1949年に創業した、スナック菓子業界では最大手の企業です。松本さんは1947年、昭和22年、京都府に生まれました。1972年に、京都大学大学院農学研究科を修了。大手総合商社に入社されます。1999年から外資系大手医療メーカーの代表取締役社長を務め、2008年には最高顧問に就任します。ところが、2009年、まったくの異業種であるカルビーの代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)に就任されました。松本さん、外資系医療メーカーからまったく異業種のスナック菓子業界に転身される経緯というのは、どういう経緯があったのでしょうか?」
松本氏
「特に転身をしたわけではなく、私は60歳で、定年で前職を辞めました。辞めて、その後はこれまでの罪滅ぼしがありますから、罪は一杯ありました。従って、これからは、世のため、人のために、いろんなNPO(特定非営利活動法人)の活動をしようということで、そういうことを始めていたんですね。ところが、カルビー創業者の三男から、お前、どっちみち暇にしとるんだから、そこからへんに座っておれば、ということで1年間社外取締役をやったんですね。この性格で憎まれ口を言うのが好きなものですから、憎まれ口を言っておったら、そんな偉そうなこと言うんだったら、自分、やってみろと。こういうわけですね。社長どうだと言われたのですが、前職で社長を9年間やりまして、社長業というのは、本当に大変でして、1年365日、1日24時間。本当に休む暇もないので、社長はちょっと勘弁してくれと。そうしたら会長だったらどうだというから、会長ぐらいなら何とかと思って、それで受けたんですね」
反町キャスター
「カルビーという会社そのものに対しては、1年間の社外取締役の間に、おおよそ良い点、悪い点はわかっていたんですね?」
松本氏
「1年でほとんどわかりましたね。もちろん、1年と言ったって、社外取締役で、しょっちゅう、会社に行っているわけではなくて、週に1回、2回ですね。行って、覗いていましたら、よくわかりました。カルビーは大変いい会社でした。現在もいいです。いい会社なのですが、問題点がありました。その問題点は何かと言うと、2000年に入ってから成長は止まっていました。利益率が非常に低い、これはおかしいと。考えてみれば、食品産業というのは基本的には儲かる仕事だと思うわけです。人を助けるヘルスケアの仕事が前職でしたけれども、ヘルスケアほどは儲からなくても、物を食わずに生きている人間というのは見たことがないですから。従って、食品産業というのは基幹産業ですので、儲かるはずだと。なおかつ世界を見渡したら、どこの会社も皆、儲かっている、主要企業は。日本企業はどちらかと言えば、どこの会社もたいして儲かっていない。何かの違いがあるに決まっている。カルビーという会社はもともとスナックでは、その時も独占でしたから、これは儲かるはずだ。それで会社の中身を眺めていましたから。ああ、なるほど、こういうところで儲かっていないのだなというのは、遠からずわかったものですから。それで会長職を引き受けて、現在もたらたらとやっておる。こういうことです」
反町キャスター
「会長を引き受ける前に、これが弱みだろうと思っていた部分は、実際、会長になってグッとドライブをかけてみると、その通り、弱みはちゃんと弱みで、それを強みに変えていくというプロセスはスムーズにいったのですか?」
松本氏
「それは、それほど苦労はなかったと思います。と言うのは、もともとどうして儲かっていなかったのかというと、これははっきりしているんです。儲ける気がなかった。気のないことはできないです、人間はね」
秋元キャスター
「儲ける気がない企業があるのですか?」
松本氏
「いえ、おそらく日本の企業の大部分はたぶんそうだと思います。利益に対して貪欲ではないですよね。しっかり利益を上げなかったら何もできない。最初に新しい商品はできない。設備投資はできない。月給は払えない。社会貢献はできない。おまけに株主に配当できない。要するに、儲からなかったら何もできないんですよ。だから、お仕事というのは、大事なことは2つしかないと。1つは、世のため、人のためですね。どんな仕事をやっても、変な仕事以外は、世のため、人のため。もう1つは、儲けることです。この2つの片方はよくやっていたんですね。片方がよくできていないから、この部分をちょっと修正しただけですね」

『儲かる企業』に変えた秘策は
秋元キャスター
「儲かる気がないと言っていたカルビーは、松本さんが経営のトップに就任をされて、どのように業績が変わったのか。松本さんが就任した2009年から6期連続の増収増益、今期も増収増益との業績予測を立てています。売上高も着実に伸びているんですけれども、注目すべきは営業利益ですね。会長就任前、2008年と2015年の業績予測を比べますと6.5倍と、2007年度と比べると、何と10倍以上に伸びているということですが、少子高齢化で、スナック菓子業界、なかなか厳しい状況だと思いますが、どうやって、この6期連続増収増益を実現させたのですか?」
松本氏
「それはもともとその可能性がある。ポテンシャルがあって、そのポテンシャルをちょっとずつ引き出しているだけで、大して自慢できるほどのことはしていないです。従いまして、営業利益は、確かに10倍以上になっています。10倍以上になっていますけど、営業利益率から言うと、日本では高いと言われますが、世界にしたら、そんなに高くないんですよ。営業利益率がやっと11%ぐらいですね。11%の営業利益率が高いか低いかと言ったら、日本にいると、日本は内弁慶で高いと。こう言われるわけですが、外に行ったら、何だと言われるだけです」
反町キャスター
「それは海外の食品メーカーと比較した場合、そういう意味ですか?」
松本氏
「そうです。ですから、私はこの業界に入った時に、業界というのは業界なりの、業界のスタンダードがあると思うんです。これはヘルスケアの世界もそうでした。ヘルスケアの世界は、日本の営業利益率はこのぐらいだと。世界にいくとグローバルはこれです。食品会社も一緒でしたね。食品会社は世界のスタンダードが営業利益率で15%です。これがスタンダードですね。当時、私が行く前の年はまだ1%か2%だったわけですね。ここまでは誰がやったってくるんです。ここまで誰がやったってくるよと。だから、誰がやったってくるところまではいこうと。で、もうちょっといってもいいなと思っていますけれどもね。もうちょっといくためにはもうちょっと違ったことが必要ですよね」
反町キャスター
「それは15%という意味ですか?グローバルスタンダードの15%まではいきたい?」
松本氏
「はい。15%。これは誰がやったってできるはずです」
反町キャスター
「その上を狙っているということですか?」
松本氏
「そうです。私は20%がいい線だよと言っているわけです。20%の営業利益率がありますと。これは大して自慢できることでもないけれども、世界に比してたいした会社だと言われても、おかしくないと」
反町キャスター
「企業の資質の中で、いわゆる人件費とか、そう言われる、俗に固定費と呼ばれる部分と、それと、原価とか、工場の稼働率みたいな変動みたいなもの。どちらを大切に…斬り込んでいく、対象はどちらなのですか?」
松本氏
「それはその会社によります。その時の現状によりましてカルビーの場合、どうだったのかと言うと、変動費がやたらと高すぎた」
反町キャスター
「具体的には、どこの部分ですか?」
松本氏
「要するに、工場のコストが高かったんですね。コストが高いというのは皆、知っていたと思うんですね。しかし、どうして高いかということに関して気がつかなかった。私は新参者でこれまでいろいろな経験がありますから、この会社のコストが高いのはこれが理由なのだと。その理由はそんな難しいことではないですよ。それを見つけただけですね。その理由は何かと言うと工場が多すぎたんですね。工場が多すぎますと結果どういうことになるかと言いますと、稼働率が極めて低かったんですね。稼働率が当時、60%です。60%の稼働率というのは、週5日しかなければ、ワーキングデーが、3日しか動いていないということです。2日分は余計ですね。余計な2日分を工場が多すぎるから潰してしまおうかと、閉めてしまおうかと。もしくはこれを動かすか。どちらかの選択しかないわけですね。私は社員の首切りはもともと苦手ですね。嫌いというか、苦手です。だから、こちらはやらないと。そうすると、稼働率を上げるしか手がない。稼働率を上げるためには、シェアを上げるしかないと。だから、とにかくに、市場は大きくならないですけれども、とにかう、人のものをとってこいと。もっと、シェアを上げろと」
反町キャスター
「シェア獲得から始めたということですか?」
松本氏
「そうです。始めたのはこういう構造になっているよと。従って、変動費を少しずつ下げていくと。余計なものは買わない。買うのでも、べらぼうに値切ったら良くないですね。しかし、できるだけ安く買う。設備投資を一時期控えると。そうすると、変動費は下がっていったんですね。変動費が下がっていくと、要するに、コストが下がるから。変動費が下がって、下がった変動費をポケットに入れてしまったら、あの時終わっていたんです。入れちゃいけないと。どうしてかと言うと、当時、カルビーは、当時でもNo.1のブランドですからね。No.1ブランドだからと言って、値段が高かったんですよ」
反町キャスター
「同じポテトチップスでも、他社のポテトチップスに比べて高かった?」
松本氏
「ところが、日本のようにどんどんデフレが進めば、それで可処分所得が全然、増えないと。そんな世界で、要するに、高いものを買ってくれるかというと、価格差が小さいんだったら買ってくれますよね。しかし、カルビーのブランドがいいからと言って、商品がいいからと言ったって、せいぜい許されるのはそのぐらいですね。もう少し価格差が大きくなってしまうと許されないです。従って、お客さんは、まあ、いいわと思って、こちらの方を買っちゃうんですね。だから、これをできるだけ値段を、コストを下げて、値段を下げていくしか手がない。このぐらいになったら、さすがにカルビーという会社はたいした会社ですから、お客さんはどんどんカルビーを買ってくれると。従って、シェアが上がっていく。シェアが上がるとどうなったかと言うと、要するに、固定費が下がったんです。工場が動きますから。固定費が下がった分だけポケットに入れた」
反町キャスター
「現在、世の中的にはデフレ脱却したかと言えばしていないけれども、脱却しつつあるみたいな、政府はそのあたり、もやもやとした言い方をしていますけれども、実際にスナック菓子というものを市場で売ろうとする立場から見た時、消費者の価格、購買傾向を見た時に、日本はもうデフレから脱していると思いますか?」
松本氏
「思いません。ただし、政府のやり方は一定の効果は示したのではないかと思います。すごくデフレが止まった。それで、日銀と政府が計画しているような2%、1年2%。これはそう簡単ではないです」
反町キャスター
「そうすると、デフレが止まって、これから先、もしかしたら値段が上がって、インフレの傾向になるかもしれないという気持ち、インフレにはならない?」
松本氏
「それはあまりない。ならないと思いますね。まだ当分難しいでしょう」
反町キャスター
「そうすると、カルビーの価格戦略はどうなるのですか?さらに、また変動費を抑えていって、価格をさらに削っていって、シェアを拡大する方向か。ここから先、デフレが下げ止まった先の先はどういう展開になってくるのですか?」
松本氏
「特に国内は、所詮はカルビーのシェアがあまりにも高いですから。ここからのシェアアップというのはそれほど急激には上がらないですね。従って、このシェアは徐々に上げていくしか力がない。お値段はどうかと言うと据え置きだと。ただ、結局、お値段は特に大きく、そのあとは下げていないですよ。現在は据え置きですよね。だから、インフレだからと言って、嬉しがってあげると、お客さんは賢いですよ」
反町キャスター
「一時、食品業界とかで、牛丼もそうだったのですけれど、低価格ではなく、ちょっと懐が暖かくなってきて、30円とか、50円上げた時がありましたよね。ああいう他業界の動きを見た時に、うちもポテトチップス、一袋20円上げようとか、そういう議論にはならなかったのですか?」
松本氏
「それはならないというか、私はそういう考え方をしなかった。と言うのは、お客さんは必ずポテトチップスを買っているかどうか疑問ですね。子供達は、子供達に限りませんけど、お菓子を食べたいと。お菓子の時にポテトチップスを食べるか、じゃがりこを食べるか、じゃがビーを食べるか、チョコレートを食うか、ビスケットを食うか、何を食うか。お客さんの勝手ですよね。そうすると、お客さんはいつもお利口。要するに、お値段がリーズナブルでおいしいものを買うんですよ。従って、スナックだけで勝負をしているのだったらいいですけれども、スナックなんて、所詮は、お菓子全体の市場の、いいところ4分の1ぐらいですから。その中で、敵というのは、ライバルというのは必ずしもスナックではないです。だから、チョコレートがほしかったらチョコレートにいく、米菓がほしかったら米菓にいくと。ビスケットがほしかったらビスケットに行くんです。そういうところで戦っているわけですから。従って、お値段をそう簡単に上げられると思っていません」

『働く空間』の改革と狙い
秋元キャスター
「カルビーの本社のオフィスでは、様々な働く空間の改革が実践されています。ポイントを番組でまとめました。役員室なし、会議室の仕切りなし、固定席なし。これはフリーアドレス制ということですけれども」
反町キャスター
「実際に会長の席から見て、激変したものは何ですか?」
松本氏
「いや、だから、誰かがおると、ああ、そう言えば、この間、あいつに、こんなこと言うんだったと思い出しますよね。誰か顔を見ないと、なかなか思い出さないですね。誰か呼ぼうと思えば呼べます。行こうと思ったら、歩いて行けばいいですから。ところが、縦にしていますと、行かないです、邪魔くさくて。エレベーターに乗って、階段で登ったり、降りたりする。行かない。従って、社内のコミュニケーションというのはそれはそれなりに大事ですから。そうすると、敢えて皆がどこにでも行けると。なおかつ現在のオフィスは、要するに、個人の机がないですから。朝行きますと、ICカードで、コンピューターにアクセスして、今日、あなたは64番のAに座りなさい。あなたは34番のBに座りなさいと言って、コンピューターが指示してくれる。そうすると、行ってみると、誰がいるかはわからない。そうやって、カルビーの中に、たとえば、総務部とか、人事部とか、財務部はないです。何もなし。要するに、どこに誰が座っているか、行ってみないとわからない。もちろん、そういうことをやるといくらか弱点もあります。しかし、ワンフロアですから、集まりたかったら、電話するなり、何なりして、集めればいいですから。どうやっても集められるんですね。だいたいもともと集まるのが好きですし、皆」
反町キャスター
「秘密の会議はないのですか?」
松本氏
「ありません」
反町キャスター
「本当にないのですか?」
松本氏
「めったにないですね」
反町キャスター
「それは個室が別につくってあるとかはないですか?」
松本氏
「ありません」
反町キャスター
「会議室、何時…、毎週月曜日は2時から何とか会議みたいな。うちの番組もそういうのがいっぱいあるのですけれども、そういうものというのはダメですか?」
松本氏
「ダメだと思います。要するに、カルビーという会社を変えないといけない。変えると思った時に、私が、要するに、非常勤の社外取締役をやっている時、月曜日の朝に行ったら会議をしているんですよ。月曜日の朝に行ったら、会議をしていて、終わったら、何をやるかと言ったら、また、常務会とか、また、やっている。月曜日の朝というのは、皆仕事をしているのだと。お客さんはそんなところにいない。そんなところで、皆で会議しているから、こんなものをやめてしまえということで、意識的にやめさせたんですね」
反町キャスター
「重要な決定、意思決定がされる場が、定例の会議でないことに対して、僕個人的には、僕がカルビーの社員だったら、恐怖を感じるんですよ。要するに、たぶん重要な営業戦略を決めるのが、いつもだったら定例の会議であれば、そこで決まるだろうなと思っているのではなく、実はもう決まっていたのか。いつ決まるのかわからないとか、ということを考えると、逆に言うと、重要なことがいつ決まるのかがわからないと、僕はオフィスから出られなくなってしまうみたいな。そういう社員はダメですね?たぶん」
松本氏
「そんなことはだいたいやらないですし、重要なことはそんなにたくさんはないです。なおかつカルビーの場合は、私がカルビーの会長になって言い出したことは3つあるんですね。簡素化と透明化、分権化と言ったんですけれど、権限をできるだけ委譲しているんです。委譲しているから、いちいち我々は口を挟む必要がないですよね。権限はどんどん委譲をすると。だから、委譲をしていたら、その人達が決めればいいわけです」
反町キャスター
「その意味で言うと、たとえば、担当の人がいないで決まってしまうと、そういうことはたぶんないでしょうね?」
松本氏
「それはないでしょうね」
反町キャスター
「それは何らかの、携帯電話なり、パソコンなり、ネットなり、様々な形で集まってやっていく。そういう社員の間での自然集合的な集まりで意思決定がされて、それが有機的にくっついていくみたいな、そういう、うじゃうじゃとした、そういう組織的なもの、組織のそういう動きというものを期待されているのですか?」
松本氏
「それよりも大事なことは権限をどんどん委譲して、委譲をされた人間が全部決めればいいわけです。従って、たとえば、カルビーは最近、カルビープラスとかと称して、全国あちこちに店をつくっていますよね。そんなこと、僕は知ったこっちゃないわけです。勝手にやればいいわけです。権限をどんどん委譲していますから。人事権であろうが、何とか権であろうが、金額を決めて、その金額で、たとえば、50億円の投資をしますとか、そういうやつはすごく簡単に1人ではできませんよね。それ以外は大概、皆さんで、自分でやったらいいのだと。会社というのは、要するに、下の人が何か失敗をしても会社が潰れたためしはないですね。会社が潰れるのは上が失敗をすれば潰れるので。だから、権限というのはどんどん下へ委譲しておいた方がいいわけです、権限委譲は、本当に効果あると思いますね。だから、カルビーはどんどん自主性が出てきたと思うんです。権限を委譲しますと、人間は元気になります。権限を委譲しますと、人間は成長をします。従って、権限はどんどん委譲をしろと。失敗はいいと。失敗はいくらでもしろと。失敗から学ぶと」
反町キャスター
「指示待ち人間というのは要らないですね」
松本氏
「要らないでしょうね。指示待ちの人間というか、もともと権限も与えられないから、指示を待っているだけで、与えられたら皆さん、自分で動きますよね」
反町キャスター
「海老原さん、いかがですか?この育て方というか、組織運営は」
海老原氏
「うまいですよ。いやいや、これは簡単に自由にしたら、うまくいくわけないではないですか。でも、権限委譲をしながら、分権化と透明化をおっしゃっているんですよ。それは何かあったら分権化されていて、しかも、分権化をするというのは説明責任をちゃんと果たさなければいけないんです。そういう形で権限委譲するのはすばらしいことだと思いますよ。そこまでできないから、ひっちゃかめっちゃかになるわけ。すばらしいと思いますよ」
反町キャスター
「これは、たとえば、国でも地方分権とか言っていますよね。税権委譲とか、国の単位と、企業の単位という違いはあるにせよ、たぶん任せることによる組織の活性化というのは、たぶん同じだと思うのですけれども、どう見ていますか。国の地方分権の取り組みを」
松本氏
「ただ、問題は権限を持ってそれを楽しんでいる人がいますよね。その人の権限を剥奪しなければならない」
反町キャスター
「既得権益をとらないとダメですか?」
松本氏
「そうです。要するに、その不愉快さ。アカウンタビリティがあります。それをとってしまえば、何でもないと思います」
反町キャスター
「と言うことは、カルビーがそれを導入する時にもそれまで個室を持ち、週に何回かのクローズドミーティングに出席をすることによって、何か自尊心を感じる皆さんがいて、その人達からの抵抗はあったわけですか?」
松本氏
「抵抗は表向きはないですけれども、実際は抵抗があるかもしれません。それはあると思いますね。しかし、要するに、会社であろうが、何であろうが、正しいことを言っていたら、正しいことはそのうちにちゃんと通じますよね。だから、繰り返して、繰り返して正しいことを言う。文句があるのだったら言ってごらんと。いくらでも聞くよと。しかし、正しいことは最終的に皆さん従いますよね。正しくなければ、あいつは間違っていると言って当然、抵抗しますが。言われてみたら、そうかなと皆さん思っているのではないでしょうか」
反町キャスター
「強さというか、もしかしたら開き直りという言葉は失礼かもしれない。文句があるなら言ってごらんと。何回も何回も同じことを言ううちに通っていくというのは、それはどういうことから、自身の?」
松本氏
「それは、会社の経営はそんな難しいことをやっているわけではないです。それを勝手に皆さんが難しくしてしまったから、複雑怪奇になって何かわからなくなっているのだけれども、私は頭がたいして良くないから、できるだけ簡単にしているわけですね。簡単なことを簡単に進めているだけですね」
反町キャスター
「簡単なことを、簡単に進められない人達が世の中に多いのはどうしてだと思いますか?」
松本氏
「それは、1つは権限の問題もあります。頭のいい人が経営しているからではないですか」

『短時間労働』と『成果主義』
秋元キャスター
「社員の働き方に対する松本さんの考えを象徴する発言だと思うのですが、『残業代は人をダメにする』『成果が出れば午後2時に帰ってもいい』と。労働の評価は時間ではなく、成果で計るということだと思うのですが」
松本氏
「特に日本は1990年ぐらいを境にまったく変わったんですね。従って、ビジネスモデルが変わったのに、やっていることは同じです。要するに、1990年までは日本は大量生産、そういう商品をつくっていればよかったんですね。その時代は1時間で、1個できるものが2時間したら2個できる。3時間したら3個できる。要するに、時間に対して、全て比例だったんです。時代が変わって、このビジネスは韓国とか、台湾とか、シンガポールとかに持っていかれてしまって、そのあと中国がでてきたら手も足もでない。全部持っていかれてしまったと。日本には新しいモデルがないです、ビジネスが。ところが、やっていることは相変わらず一緒だから、時間働けばいいことがあると。しかし、そんなことは決してない。長きをもって尊しとなさない、朝から晩まで仕事していたって、何もいいことはないと。従って、残業なんかをするなと。早く帰れと。終わったら帰ってもいいと。だから、2時に帰ってもいいよと。2時でも、1時でも何時でもいいんですよ、成果さえ出れば。それでいいと。従って、仕事は3つに分けるのだと。1つはやらなければいけないこと、2番目にはやった方がいいこと。3番目にはやらなくてもいいこと。普通の人はやらなくていいことから始めるんですよ。だから、残業になるんですよ。その次にやった方がいいことをやるんですよ。やらなくてはいけないことをなかなかやらないと。だから、夜中まで仕事をしなくてはいけないと。そうすると、どうしたらいいかと言うと、やらなくてもいいことを最初からやるなと。2番目のやった方がいいことも、これもやめておけと。やらなければいけないことだけが残ると。これだけ終わったら帰れと。終わっていいことがあったら、どんないいことがあるかと。たとえば、2時に帰ると仮定した時に、毎日2時に終わったらパチンコ屋へ行っているやつがいるかというと、そんなのはいないですよね。そうすると、時間があったら、人間は何かを始める。何を始めるかというと、勉強しようぜと。趣味、教養、体力を鍛えて健康になろうよと。もっと大事なのは、家庭生活を大事にしようと。そういうことをする人間が人間として魅力的なのだと。その魅力的な人間から、人はそんな会社と付き合いたい。そんな人からモノを買いたいと皆、思うわけですね。だから、15年ぐらい前から言っていますけれども、人は買いたいモノを買うのではないと、人は買いたい人から買うのだと。だから、魅力的な人間にならない限りは絶対にダメなのだと。朝から晩まで仕事をして、家庭を顧みない、こんな私生活を送っていたら意味がないではないかと。私は、昔はそうでしたけれど…」
反町キャスター
「成果を計るものは数字ですか?売上げですか?」
松本氏
「数字。大事なのは利益です、会社は儲けるためにやっているのですから。売上げばかりやって利益が出ないと意味がない。だから、1番大事なのは利益。利益を上げようとすると、それなりの売上げになりますね。その次は売上げと。あとは個人個人いろいろな目標があるとは思いますけれども。あとは個人の目標だと思います」
反町キャスター
「カルビーの社員は全員が営業だけではないですよね。管理部門の方もいる。開発部門の方もいる。そういう方は」
松本氏
「それも数字で計れと言っているわけです。数字ではかるのは一概に簡単ではないですよ。何か最初やってみると、自分の目標を数字にしてみろと。工夫してやってみろと。やってみても最初からうまくいくわけではない。しかし、やってみたらいろいろと勉強ができると。2年目ちょっとだけ上手になる。3年目もちょっとだけ上手になる。10年したら随分上手になりますよ。だから、人事部であろうが、財務部であろうが、開発であろうが、基本的には計るのは数字でやれと。数字は正直ですからね。結局、数字で計らないから、好き嫌いになってしまうわけです。人の評価は数字でやらない限りは結局好き嫌い評価になってしまうから、できるだけそれを省けと。排除しろと、それは簡単ではない。できるだけやってみろと。やってみたら上手になると」
海老原氏
「数字化するにしろ、しないにしろ、成果主義は当たり前だと思うんですよ。昔から日本人には査定というものがあって、内勤だって査定されて、皆で査定監査もやるから、しかも、上司もクルクル変わって、いい査定をする人はいい成果を出しているんですよ。当たり前のこと。ところが、成果を出せない人達ががんばった感をみせると、まあ、しょうがないかという甘い査定になると。ここが問題だったわけですよ。成果を出せないのにがんばった感を出していればいいのではないかというのをダメだと正直に言っただけの話ですよね。ただ、すごくいいことですけれども、成果を出せる人は早く帰ってワークライフバランスを充実させて、成果を出せない人はいくら努力しても浮かばれないという状態になるから、それが本論だけれども、それが会社という仕組みですけれども、厳しい社会になるとは思いますよ」
松本氏
「厳しいから、1人1人が成果を出せるための環境をつくってあげて、1人1人が成果を出せる制度をつくってあげる。会社で間違っている仕組みがあったら、仕組みを変えないといけない。悪しき文化を変えないといけない」

女性活躍と企業の多様性
秋元キャスター
「カルビーでは女性管理職が増えています。なぜこれが実現できたのでしょうか?」
松本氏
「これはやらないと会社が良くならないから、力ずくです。別に女性とか、ではなくて、とにかくパッション、情熱を持って、結果を出す人をとにかくどんどん使わない限り組織は戦っていけないですよね。カルビーでも日本のスナックの世界では、どないしても戦えますから、別にダイバーシティをやらなくてもやっても一緒です。ところが、日本という国は人口が減っていくし、特にカルビーはお菓子のビジネスをやっています。子供達が減るということは市場が小さくなっていくのは決まっているわけですよね。これから出かけていくのは外へ行くしか手がないと。その時にとにかく使える人は皆、使おうと。とりあえずまず女性から始めて、その次は外国人とか、身体の一部に障害がある人とか、そういう人をどんどん使っていかない限り会社は成長するはずがない。だから、ダイバーシティというのは会社のエンジンですから、エンジンなしに飛行機は飛ばないですよね」
反町キャスター
「男性はダメなのですか?」
松本氏
「カルビーで女性を登用しますね。女性は優秀ですよ。しかし、男性も優秀ですよ。どのくらい優秀かと言うと、一緒ですよ。男とか、女とか、と性別があるけれども、能力は一緒ですよ」
反町キャスター
「女性が社会進出を進めていくうえで障害になる出産、育児について、企業としてはどのように?」
松本氏
「それはいろんな意味での環境・制度を整えてあげないとダメですね。そういうものを整えている限りは出産とかがあっても簡単には辞めないですね、この会社がいいと思ってくれれば。そういう意味で、出産しますから私は会社を辞めますと言う人を聞いたことがないですよ」
反町キャスター
「カルビーは社内保育所みたいなものは?」
松本氏
「それはありません。それはまだ会社の規模から言って、できないです。たとえば、資生堂のような大会社はできますが、カルビーはまだちょっと無理です。将来はわかりません。どうしたらいいかと言いますと、お金で面倒見るしか手がないですね。そういうものを徐々に充実させるしか手がない」
反町キャスター
「女性の幹部登用について、男性から怨嗟の声があがるものですか?」
松本氏
「最近は諦めているのではないですか」
秋元キャスター
「他の企業で女性管理職比率がなかなか上がらないのは何ででしょう?」
松本氏
「それは既得権を離さないからです。この4つを持っている人が絶対に離さないです。日本人、男、年長、高学歴、これを持っている人は絶対に離さないです。規制緩和にしろ、何にしろ、既得権を持っている人がそう簡単に既得権を離すわけがない」

グローバル時代に日本の人材は…
反町キャスター
「多様性のもう1つの側面としては、カルビーの従業員は新卒が3割、中途は7割。カルビーは中途採用の社員が多いのが印象的です。これはどういう狙いから中途が多くなっているのですか?」
松本氏
「これは職種の違いが1つあるのでしょうね。これは工場の人達も入れていますから、現地採用の人達も多いですから、だから、中途採用や新卒採用というのを意識してやっているわけではないです。ある程度のバランスは必要だと思いますね。カルビーにはよき文化があると思いますね。外の人達はまた違う文化ですから、その違う文化と混ぜるというのは、良い時と、悪い時がありますよね。カルビーにはカルビーのビジョンがありますと。そのビジョンを崩してまで中途採用を増やすのは賛成していませんね。新卒の人は基本的にフレッシュで入ってきますから、もともと新卒の人というのはカルビーの物事の考え方に同調して入ってきます。従って、カルビーはこの指止まれ、とこの指を示していますから、この指を目指して入ってくる人が多い。そういう意味で、新卒の人を入れるのはいいのだけれども、かつては新卒が多かったですよね。そのために歪みみたいなものがいくらかありますから、中途採用とのいいバランス、新しく採用する場合はいいバランスで採用する必要がありますね。会社というのは、最初に大事なのはビジョンあるいは理念。この指止まれというものがないと、会社というのはもともと存在しないと思うんですよ」
反町キャスター
「敢えて、その指とは何ですか?」
松本氏
「その指は、ステークホルダーズ、利害関係者に対して責任を果たします。1番は、顧客と取引先です。2番目は、従業員と従業員の家族です。3番目は、コミュニティです、要するに、世間です、地域社会です、地球です、資源です、環境です。株主は4番目ですよと。この考え方がカルビーの現在のビジョンです。この考え方に異論のある人は入ってほしくないわけです」
反町キャスター
「株主が4番目というのは…。株主の比率というのは創業家の皆さんがほとんどを持っているのですか?」
松本氏
「いや、持っていません。創業家の皆さんは2割ぐらいだと思います」
反町キャスター
「残り8割というのは一般の株主?」
松本氏
「20%ぐらいはペプシコ。残りの60%は一般ですね」
反町キャスター
「株主が4番目というのは、大丈夫なのですか?」
松本氏
「皆さんをハッピーにしようと。要するに、株主を良くしようと思ったら、この順番通りやらないとうまくいかないです。株主を上に上げると会社経営はうまくいかないと。これが考え方です。従って、株主には待って頂戴と。ここの順番通り責任を果たしているから、株主のところにまわってくるんですよ、という考え方です。これは異論がある人達がいるわけです。異論がある人達は株主にならなくてはいいわけです」

松本晃 カルビー株式会社代表取締役会長兼CEOの提言:『Our Business is People Business』
松本氏
「私達の仕事は人がやっています。従って、人を大事にしなければ手がないと。人が活躍しない限りは企業というのは絶対に良くならない。従って人に投資します。教育します。給料もできるだけ。給料というのは1番会社にとって大事な投資と思っています」

雇用ジャーナリスト 海老原嗣生の提言:『脱おもてなしし過ぎ』
海老原氏
「おもてなしという名前で勘違いしている人が多いです。たとえば、料理屋があって、ピカピカに磨いてあって、マナーも良くて、接客も最高だけれど、まずい飯しか出さないレストランは売れるわけがないです。多少汚くったっておいしいところが売れるんですよ。本質とはそういうことだと思うんです。ただ、美味しいものをつくれないから、すごくいい笑顔をしていますということをやって、仕事と思っている人が多すぎると思うんです。おもてなしという名前で逃げている気がするので、こういうのはし過ぎではないかなと思っています」