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2016年4月26日(火)
北朝鮮の『現在位置』 ミサイル・核の深刻度

ゲスト

小此木政夫
慶應義塾大学名誉教授
平井久志
ジャーナリスト 共同通信客員論説委員 立命館大学客員教授
洪熒
統一日報論説主幹

北朝鮮が発射待機状態に 弾道ミサイル「ムスダン」の脅威
秋元キャスター
「今日、韓国の聯合ニュースは、北朝鮮が15日に発射をして、失敗した中距離弾道ミサイルムスダンについて新たに1発が発射待機状態にあり、近く発射をする兆候があると伝えました」
平井客員教授
「1300kmの射程を持って日本列島をほぼ射程に押さえるノドンミサイルというミサイルがありますが、それよりも少し長い、だいたい2500kmから4000kmぐらいの射程を持ったミサイルです。ですから、有事の際、朝鮮半島に動員される米軍のグアム基地を叩ける、そういう機能も持ったミサイルです」
反町キャスター
「4月15日の打ち上げで失敗をしたと。失敗したといっても、まだ2週間が経ったかどうか。経っていないですよね、まだね。これでもう1回やるというのは、これはかなりギャンブルというか、リスクありますよね。失敗したら徹底的にこれはダメだな、この国のミサイルはと思われる。ここのリスクを超えてまでやろうとしている。これはどう見たらいいのですか?」
小此木名誉教授
「それは党大会でしょう。党大会までに我々が…」
反町キャスター
「あるものを全部見せる」
小此木名誉教授
「見せる。見せて、ここまで来たということを立証しようとしているんですね。核保有国ですよと言いたいわけですから。だから、核実験もやる可能性が十分あるということになりますね。」
反町キャスター
「その意味で言うと、今回のものというのは、失敗は許されない。もしやるのならば」
小此木名誉教授
「1回失敗しちゃったから、もう成功して見せないとね」
平井客員教授
「だから、国内的には発表をされていないんですよね」
反町キャスター
「前回の失敗の分がですね」
平井客員教授
「ええ」
小此木名誉教授
「成功していないですから」
平井客員教授
「ですから、北朝鮮国内ではその失敗というものが政権に対するダメージになっていないというのか。ですから、その担当者達はたぶんどうなっているのだということになっていると思いますけれども、住民向けのプロパガンダとしてはこの実験の失敗。その前に実はノドンミサイルも1つは飛んでいますけれども、1つは失敗をしているというのがあるのですけれども、そういう事実は、国内では発表されていませんから」
反町キャスター
「でも、ここでムスダンの打ち上げが失敗したことが国内に知れ渡ったからと言って、政権の基盤が揺るがされるような、そんな政権ではないですよ、おそらくは」
平井客員教授
「ないですけれども、権威に対して、党大会を前に、いわば威信のためにやっている一連の行動ですから、それを失敗したということは権威を傷つけるということにはなると思いますね」

北朝鮮が日本海で発射か 潜水艦弾道ミサイルとは
秋元キャスター
「今年に入ってからの北朝鮮の動きをあらためて、見ていきたいと思います。年明け早々1月6日に4度目の核実験を行いました。水爆実験に成功したと発表しています。そのあとの2月7日には事実上の長距離弾頭ミサイルを発射しました。国連安保理制裁決議が採択されまして、3月3日には、それに対抗するように短距離飛翔体を発射。3月7日から米韓が大規模な合同軍事演習を開始しています。その2日後、9日には金正恩第1書記が核弾頭の小型化に成功したと宣言しています。故金日成主席の誕生日にあたります4月15日には移動式中距離弾道ミサイルのムスダンを発射しますが、これは失敗に終わります。先週土曜日の23日、SLBM、潜水艦発射弾道ミサイルと見られる飛翔体を発射しました。このSLBMというものは何を目的につくられたものなのでしょうか?平井さん」
平井客員教授
「潜水艦から発射をするわけですけれど、1つは敵国の近くに行って、距離がなくても撃てるということがありますけれども、1番大きいのは本国が撃たれても、その外にいる潜水艦で第2弾として敵を撃つという能力を持っているという意味で、もう1つの体系として、先制攻撃をかけても、第2弾の発射能力を北朝鮮が持つという脅威になり得る」
小此木名誉教授
「これはまだ実験ですよね。だけれども、やっていることはすごく重要ですよ。アメリカで言うとポラリスミサイルですね。だから、ケネディ政権の時代に一生懸命に米ソでやったのと同じで、つまり、核の総合抑止のためのものですね。平井さんが言ったように核攻撃をされても残っているわけですから」
反町キャスター
「潜水艦がね」
小此木名誉教授
「そうそう。残存性が問題ですね。残っているということが、だから、戦争になったあとで、それを使うことができる。第二撃能力です。だから、北朝鮮がそれを持つということは、アメリカにとって非常に脅威になるわけですよ。現在の段階はまだいいのだけれども、3、4年経ったら、これは相当深刻な脅威になりますね」

北朝鮮 対話か挑発か 「5度目の核実験」可能性は?
秋元キャスター
「5回目の核実験について今月23日、訪米中だった北朝鮮の李洙?外相は、朝鮮半島で行っている核戦争のための演習、米韓合同軍事演習をやめれば、我々も核実験をやめるだろうとコメントしました。しかし、これに対して24日に、オバマ大統領が拒否しています。今日、北朝鮮外務省のスポークスマンは合同演習を中止すれば、核実験を中止するという提案は有効ではないと声明を発表しまして、北朝鮮外相による核実験の中止の提案。これは無効だと主張をしました。小此木さん、この北とアメリカとのやりとり、これはどう見たらいいのでしょうか?」
小此木名誉教授
「李洙?さんが言ったことはこれまでも何回も言ってきたことですから。オバマ大統領は、そんなことは受け入れられないと言って拒否声明を出しているわけですから、だから、これから実験をしますと言っているようなものではないですか。もう交渉は終わりましたと。本来、建軍節、今日あたり25日ぐらいに実験をするのではないかと言われていたわけですけれども、ああいう提案をしていると、まだ反応が返ってくるまで何日か余裕をみますから、だから、労働党大会までの間にこれから実験をする、そういう準備を、論理的には整えたということになると思うんですけども。それから、もう1つは、核実験と言っていると、非核化とは絶対に言っていないですから。ですから、アメリカが軍事演習をやれば、核実験をしないと言っているわけ。核を捨てると言っているわけではない。別に不思議ではないですよ」
反町キャスター
「平井さん、このやり取り。何か見た目で言うと外務大臣が言ったことを、同じ外務省の大臣が言ったことを、外務省のスポークスマンが否定をしているように見えます。これは組織論として変ではないですか?」
平井客員教授
「実は、この米韓合同軍事演習を中止すれば、核実験を止めるというのは、昨年の1月に北朝鮮が正式提案をしているんですね。ですけど、その時は拒否どころか、無視されているんです。まったく検討もされていないですね。そのことに対する北朝鮮の苛立ちがあったために、北朝鮮はわざわざ外相がアメリカまで行って、AP通信との会見で、そのことを提案したのに、少しはちゃんと検討をしてくれるかなと思っていたのに、翌日にはオバマ大統領が拒否をしたわけですね。即座に拒否という姿勢に対する、おそらく北朝鮮からのリアクションとして、そういう態度に出るのであれば、我々はこの提案自身も無効にしますよということを突きつけ、実際にあるかどうかわかりませんけれど、党大会前までに、核実験を、あなた達がそういう態度に出るのであれば、核実験をやらざるを得ない状況が生まれますよ、という威嚇攻勢だという気がしますね」

36年ぶりの労働党大会へ 「北」で何が起きるのか?
秋元キャスター
「朝鮮労働党は昨年10月30日に、来月5月に党大会を開催すると発表をしました。これは開催されると36年ぶりのことになるわけですけれど、平井さん、この朝鮮労働党の党大会はどういう位置づけのもので、どんなことをするところなのでしょうか?」
平井客員教授
「朝鮮労働党の党規約では、最高の決定機関とされています。昔の規約では党の総書記、党のトップを選出するのは、この党大会が持っている固有の権利だったんです。すると、重要な経済政策であるとか、路線問題の正式の機関決定をする最高の機関ということですね」
反町キャスター
「小此木さん、この党大会をどのように見ていますか?」
小此木名誉教授
「金正恩氏の時代が始まりますという宣言ですよ。だから、そのために、成果が必要だから、核とか、ミサイル、現在やっているわけですからね。そこで、それが合体をするわけですよね。だけど、なぜ党大会、長く開かれなかったのかということで、金正日さんの時代には余裕がなかったんです。生き残ることで必死だったわけですから。冷戦が終わって、ソ連も東欧も崩壊をしていくという、そういう時代でしょう。北朝鮮が生き残れるかどうかわからないような状況で、それでともかく生き残るために、核に手をつけたわけですから、核開発。それで20年やったわけですから。だけれど、金正日さんにとってのプラス面というのは、その前にずっとやっていたから。つまり、1980年の党大会から10年、20年、彼はNo.2でやってきたわけだから権力の継承というのは終わっていたわけですよ。なった時に。ところが、今回は権力を継承すること自体がとんでもない話でしょう。3番目の3男にやっているわけですから。だから、ここで党大会をやらないと示しがつかないですよ。やらないと、彼が本当に彼の時代が始まったのだということにならないわけですよ。だから、どうしてもやらなければならない」
反町キャスター
「そういうものは内外で、この場合、内ですけれども、国内にちゃんと見せなければいけない文化というか、風土というか、そういうものなのですか?北朝鮮というのは」
小此木名誉教授
「だって、彼が本当の指導者で安定をしている体制なのだということを見せていかなければ、ついていかないではないですか」
秋元キャスター
「これまでのニュース映像とかに出てくるものだけでは十分ではない?」
小此木名誉教授
「本当に信じていいのかどうかという話ですから。そうすると、本当に人工衛星が上がったではないかとか、核実験をやって、本当の指導者として、これで安心をしてついて行けばいいのだということを示さなければいけないわけですよ」
反町キャスター
「そうすると、党大会というと30分だか、40分だか1時間、大演説、カストロさんみたいに6時間というのはないでしょうけれど、そんな大演説をやり続ける。そういう金正恩第1書記の映像が出てくる?」
小此木名誉教授
「それはそうでしょうね。結構、やると思いますよ」
平井客員教授
「第6回の党大会では、金日成主席は…」
反町キャスター
「第6回は1980年?」
平井客員教授
「6万字を超える。僕はA4で、自分で印刷をしましたけれど、60枚を超えますね。その大演説をやっているんですね。おそらくそれは党大会、前の党大会からの総括をしなければいけませんから」
反町キャスター
「では、36年分を総括するのですか?」
平井客員教授
「労働新聞に載っている記事を読んでいますと、前回の党大会からの事業を総括して、という文章が出てきますから、ある程度はやると思います」
反町キャスター
「では、本当に30分、40分ではなくて、数時間の大演説を?」
平井客員教授
「と思います。それは過去、彼はかなり演説をやっていますから。相当の長文の演説をやると思いますね」
反町キャスター
「朝鮮労働党の党大会が36年ぶりに行われるということでそのポイント。何に注目をしていくのかというところについて、皆さんに聞いていきたいと思います。洪さん、どこに注目されますか?」
洪氏
「私は、どのように人が代わるのかと思うんですね。現在、北の、いわゆる政治局などは平均寿命が、北の平均的な一般住民の平均寿命よりも15歳、20歳ぐらい年をとっているのですから、若い方に、大々的に、大胆に変えなくてはいけないと思いますよ。だから、一応、党大会での方針、総括が終わったら、終わった直後にその次の日に人事がありますから、ここで大幅な若返り、そういうのがあると思いますね」
反町キャスター
「党大会で発表されるのではなくて、党大会が全部終わったあとに発表されるものなのですか?」
洪氏
「終わったあとの、第1回の中央委員会で人事が決まるわけです。それから、だいたい半年ぐらいあとに最高人民会議を開き、そこでまた正式ないろんな人事が決まります。だから、今度は党の人事だけです」
反町キャスター
「小此木さん、今回の党大会、どこに注目されますか?」
小此木名誉教授
「それは党大会ですから、そんな細かいことはなく、かなり展望が多いと思うんですけれども、僕はむしろ個人的に注目をしているのは、現在の戦略状況というのが、これからどう表現をされていくのか。つまり、核を持ちましたと言っているわけですからね、完成したと。そうすると当然、今後の状況が変わるわけですよ。持った核、この核で何をしたいのかということになるわけですから。ですから、たとえば、総合抑止対策ができたということであれば、それに対して何かを言わなければおかしいし、交渉するというので、非核化でない交渉というのは何なのか。では、核は移転をしませんとか。移転しなくてもいいですよと。だけど、何かがないとかね。何かそういう新しい戦略状況に関して何を考えているかということ、方向性がわかれば。あるいは南北関係に関して、個人的には関心を持っているんですよね」
反町キャスター
「それは、たとえば、第1書記がその演説の中で、我が国は核を持っていると。この核を持って、こうこうしたいという、こういう話するという、こういう意味ですか?」
小此木名誉教授
「そこでは言わなくても、これだけやっているわけですから、だから、これをやって、ここまでやって、核を保有したという宣言ですよ、実際。たぶん核保有を宣言しました。持ちましたということを言うのではないかと思うんですね。そのあと何を言うかということですよね。持ったら何なのか」
反町キャスター
「それはたとえば、アメリカに対するダイレクトなメッセージ?」
小此木名誉教授
「アメリカにも言うし、韓国に対しても言うはずですよ。つまり、自分達はもうアメリカの顔色だけを伺って見ている存在ではないんだと言うと思いますよ」
反町キャスター
「平井さん、どこに注目されますか?」
平井客員教授
「私も1点は、おそらく核保有国であることを宣言して、並進路線。経済開発と核開発を同時進行させるのだということを宣言すると思いますね。おそらくこの間の核実験やミサイル、対米戦争に勝利をしたと言うトーンで、そういう主張をして。もう1点は、南北関係ですよ。分断国家ですからね。第6回党大会の時には金日成主席は、これは民主連邦制という提案をしたわけですよね。それを何かバージョンチェンジするような、何か新しい統一提案みたいなことをしてくる可能性はあるのではないかなと思いますね。もう1つは、これまでの過去の党大会で、最も重要だったのは、経済計画の発表だったんですね。7か年計画とか、そういうものを発表するのが党大会の大きな使命だったわけですよ。人民生活をこういうふうに向上させます。そのことは党大会で非常に大きなウェイトを占めたんですけれども、おそらく現在の経済状況下で、新しい長期経済計画を提示することは不可能だと思います。そういう状況ではありませんから。ただし、金正恩政権というのは奇妙な政権で、政治的には統治を強めているにもかかわらず、経済の部分では、市場経済的な要素をかなり取り入れているんですね」
反町キャスター
「北朝鮮が新しい経済政策?少なくとも僕がテレビで見ている限りでは、水族館をつくりましたとか、遊園地をつくりました、スキー場をつくっているのだけれど、何百億もかけた割には雪は悪いし、お客さんは来ないし、サービスはないし、スキー場も開店休業状態で、ああいうものは、見た目は成果がありげに見えても、次々、公共投資で言ったら、失敗をしている印象が僕にはあるんですけれども、そういうものの新たな目玉が出てくると、こういう意味ですか?」
平井客員教授
「いや、たとえば、こういうことがあるんですね。奇妙なことですけれど、北朝鮮が近年、言っているのは、社会主義にも平等はないのだと。たとえば、働いた人間も、働いていない人間も、同じものをもらうのはおかしいのだというようなことを言っているんですよ。たくさん働いた人はたくさんもらえる。これが本当の社会主義なのだという。それは旧来のスターリン主義的な社会主義の考え方から言うと、ちょっと変化をしているわけですね。働いただけ労働者のインセンティブを刺激するような。そういうものを目指す。北朝鮮は税金のない国というようなことを言っていますけれども、近年、たとえば、市場で店を出す、そこの使用料をとったりするわけですよ。ですから、たとえば、所有権というものは国有だけれど、お店の、いわゆる使用料。ですから、法律的に言えば、用益権みたいなことについては課税をして、それを財源にするとか。1部、市場経済的な要素に取り組んだ、私から言うと。そういう経済施策を、だから、今回整理する可能性。だから、昔流の社会主義のように、皆が平等に分かち合うのではなくて、能力のある者が、たくさん働いた者が報酬を得る。そういう社会主義に、我々、生まれ変わらなければいけないのだみたいなね、そういう経済施策が出てくる可能性はあるのではないかと」

粛清相次ぐ北朝鮮 金正恩体制に何が?
秋元キャスター
「金正恩体制になって、粛清が続いています。なぜこのような粛清が続いているのでしょうか?」
小此木名誉教授
「それは僕にも良くわかりませんが、金日成、金正日の時代もそうですが、北朝鮮で1つの体制をつくる過程というのは、このぐらい普通に粛清がありますよ。自分達が自分の体制をつくって、しかも、恐怖で抑えていくわけですから。ある種の昔で言えば、スターリン主義体制ですからね。自分の威信を徹底するためには、それが1番早いわけです。たぶん分派的な活動をやっていたような時代もあって、金日成の時代には、そういうものに対して権力闘争的な部分があったんですよね。最初はあったんです。現在のものはそうではないと思う。権力闘争でも何でもないと思いますよ。そうではなく、金正恩氏の意思に反した人達がパージされているわけで、それが本当に政策的に大きな対立なのかと言われるとたぶんそんなことはないのではないか。(金正恩の)意思にちゃんと忠実であるかどうかが問われているわけですよ」
反町キャスター
「金正恩体制では惨たらしい殺し方をしていますが、金正日、金日成の時にも惨たらしい殺し方をしたという話が飛び交ったものですか?」
平井客員教授
「その話は私はわかりませんけれど、私も金日成時代、金正日時代も似たような大粛清があったと思いますね。ただ、現在の政権と根本的に違うのは過去の金日成時代、金正日時代というのはそれを隠したわけですよ。公表することはしなかった。ところが、この政権は、たとえば、1番端的な例が、張成沢さんの粛清ですけれども、粛清を決める会議を公表して、それを映像で見せたり、写真を公開したり。しかも、死刑の判決が出た様子をスチール写真でオンエアしたり、そういう粛清を公開するというこの作業は、お父さんの時代、お爺さんの時代にはあまりなくて、我々が大粛清があったということを知るのは何年もあとになって。そういうことがあったのだという時間差があったわけです。ですから、リアリティを我々は感じることができなかった。ところが、現在の政権というのは即座にそれを外部、社会が北朝鮮に関心を持っているということもありますが、公表しているから、粛清の酷さを、より我々が直接的に感じるという面があると思いますね」
秋元キャスター
「洪さんが注目しているのは、金英哲氏ということですが、どういう人なのでしょうか?」
洪氏
「彼は記録によれば、非常に独特な軍人ですね。たぶん高校を卒業して、軍隊に入って、現在の非武装地帯の方に配備された最初というのは、そこは特別な軍人が配備されるんです。だから、敵と日常的に顔を合わせるような場所ですから。そういう訓練を受ける兵士から、普通は兵士としても、板門店の場合ほとんどが将校なのですが、そういう訓練を受けたんです。彼は少佐の時から韓国との停戦、軍事停戦委員会の連絡将校として出るのですが、彼が43歳頃に将軍になります。それで韓国とのいろんな接触に彼が窓口として出るんですね。それで非常に能力を示すんです。話が飛んで、2009年以降、彼が偵察総局長になった時…」
反町キャスター
「偵察総局長とは何をやるところですか?」
洪氏
「話が長くなるのですが、一言で言うと、北の場合は党が国を治めるんですね。それでそういう工作、対南政策一切を労働党が司るんです。偵察総局というのは、それが党から国の方に移管されたということです。これが2回目です。北の場合は50年前にいわゆる秘書局、日本では書記国と言うのですが、北の労働党は1966年に事実上の司令塔として、党の司令塔として秘書局をつくるんですね。政治局ではない秘書局が実権を持っている。その時から韓国に対しての全ての戦略を担当する対南秘書というのがあるのですが、これがこれまで8年です。これから50年ぐらい前にも現役の大将が対南秘書になったことがあるんです。その時は、韓国に対して第2の南進戦争を起こそうとした時、そういう体制をとりました。今度、2009年にまったく同じそういう体制が整うんですね。それで党から全てが偵察総局の方に移管されて、党の機関が。その責任者として星2つで任命されているんですね。それで現在、星4つなのです。だから、2009年以降の韓国に対し、韓国の海軍の哨戒艦を沈没させたり、韓国の延坪島を砲撃したり、韓国に対するサイバー戦争とか、韓国に対してのテロの全ては現在、偵察総局でやっています」
平井客員教授
「実は彼に何度も会っているんですよ。1990年代に彼は南北対話の一種のスポークスマンだったんですね。南北の軍事会談をやる時、会談の結果を板門店で我々にブリーフするのはいつも彼だったんですよ。非常に頭のいい人です。ただ、すごく恐面で、ソフトではない人です。非常に南の情勢に詳しい人です。自分の都合の悪い質問には一切答えない。上手に逃げて、自分の主張を的確に展開する人です。最近見ていますとラオスにも行って…。こういう工作機関の責任者だった人が対南工作まで兼務し、なおかつ現在外交部門まで手を出している。非常に危険だと思いますね」

北朝鮮崩壊の序曲? 「偵察総局」大佐の亡命
反町キャスター
「北朝鮮の工作機関、偵察総局の韓国担当だった大佐が昨年、亡命したことが明らかになりました。偵察総局の大佐が脱北して南に入った、これはどういうことですか?」
洪氏
「偵察総局が軍の特殊部隊と党の工作機関を1つにしたわけですから、その大佐がどちらの出身なのかまだわかりません。情報がないのですが、その大佐だったら現在の金英哲氏の偵察総局は7年目ですから、この7年間の変化、戦術のほとんどのことがわかる立場ですね。と言うことは、幸いに北が駆使するいろいろなサイバー攻撃とか、いろいろなテロ戦術とか、挑発に対しての相当のデータを得たと思います。これは韓国にとっては大きいと思います」

朝鮮半島のこれから 南北統一のかたち
秋元キャスター
「韓国と北朝鮮は朝鮮半島の統一についてどういったシナリオを持っているのか。2000年に南北共同宣言で、南側の連合制案と北側の低い段階の連邦制案、これはどういったことでしょうか?」
小此木名誉教授
「統一と言っても我々が普通想像するように簡単に1つになって、制度的にも1つになることではないですよ。そんなことは両方とも考えていないです。だから、連合制というのは、大韓民国も朝鮮民主主義人民共和国も残って、ただし、それに大きな枠をはめ、それを何とかという言葉で呼ぶことは可能である。だから、真ん中にパイプが通っているぐらいの感覚で、ところが、連邦制というとどこが違うのかと言うと、連邦政府というのが必要になるわけですよ。アメリカの場合もそうでしょう。そうすると、2つの上に屋根があるわけです。屋根があって、この連邦政府はどれぐらいの権限を持つかということによって、国のあり方が変わってきちゃうわけです。連合制の場合はまったく違ったものでいいわけだけれども、連邦政府があると何かやっぱり…。『低い段階』というのは、北側が求めているのは典型的な連邦政府、2つの制度、金日成主席は1122と言ったのですが、1民族1国家、2政府2制度と。ドイツの場合には1民族2国家と言ったでしょう。1民族2国家ではなく、それだけではなくて2政府2制度、2国家ではなくて1つの国家。連邦制、だから、中央政府があるという、そういうのが理想だと考えて、これに高麗民主連邦共和国という名前をつけたのですが、だけども、これは典型的な連邦制だから高いレベルでの連邦制だ。連邦政府にどれぐらいの権限を持たせるかで、高いか低いかが決まってくるのではないかと思うんですね。連邦政府にあまり権限を持たせなければ、連合制に近くなっていくわけです。だから、そのへんのことで、我々はたぶんこの文言ですと、完全なる連合制ではないけれども、連邦政府はあることはあるけれど、それに大きな権限を持たせないという程度のことが中間的な形態だということになると思うんです」
洪氏
「在来軍備で北が非対称戦力を持つのは、これが安上がりだからです。核兵器は確かに、アメリカとは戦争しないというのは、アメリカに介入させないということですから、私はこれからも核実験が続くと思うのですが、使える核兵器があります。戦術的に、韓国に対しては。アメリカに対しては抑止力なのですが、韓国に対しては使えるものを彼らはやります。それをもって初めて韓国は押さえられるということですね」
小此木名誉教授
「その議論を韓国でこれからどんどんやろうと。現在問題になっているのはそれです。自分達も核武装をする、その話です」

小此木政夫 慶應義塾大学名誉教授の提言:『新しい分断状況』
小此木名誉教授
「現在、南北の間で新しい分断状況ができつつあるのではないかということです。つまり、洪先生がおっしゃられた通り北の核というのがいろんな形で使われるとすると、韓国側は不安ですから、自分達も核を持つ。もし持てないのであればアメリカの戦術核、使える核を再導入したい。お互いに使える核を持ち合ったらどうなるのかと。そこで抑止が成立するんですよ。そういう状況を前提にして、新しい南北関係を考えざるを得なくなっていく。だから、これまでの状況とは随分違った状況が出てきますよ。これがこれから5年、10年の朝鮮半島ではないか。分断国家であるということをくれぐれも忘れないで、我々そこのところは甘く見てはいけないということですね」

洪熒 統一日報論説主幹の提言:『スターリン主義体制の化石』
洪氏
「金正恩体制になってから、先ほど粛清の嵐を、血の粛清ですね。つまり、これはスターリン体制の化石ですね。それをやったのが北のベリヤと言われる国家安全保衛部長。問題は北の内部も皆が戦々恐々しているし、周りもこれをスターリン体制の化石と認めるべきかどうか、これが問われているのではないかと。韓国はこの問題を解決するのが、これからの課題ということが言えると思います」

平井久志 立命館大学客員教授の提言:『予想困難』
平井客員教授
「お父さんの金正日さんという人もなかなか予測困難な人でしたけれども、それでもある程度、思考の方法、彼の考え方、そういうことはある程度わかっていたわけですが、現在の最高指導者という人の性格だとか、思考が非常にわからないわけです。だから、韓国の新聞が実は北朝鮮が核実験をやったあとに、核実験よりも怖い金正恩の予測困難性みたいなことを言っていたので、それはそうだという気はしますね。どういう選択をとるのかということが外部社会から非常に読みにくい。それが非常に我々にとって恐怖だと思います」