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2016年4月22日(金)
『パナマ文書』の衝撃 分析者が語る闇とウソ

ゲスト

澤康臣
共同通信社編集局特別報道室次長
大野和基
国際ジャーナリスト
三木義一
青山学院大学学長

『パナマ文書』分析者と考える 流出の背景と資料の中身
松村キャスター
「『パナマ文書』が暴く実態を見ていく前に、まずはタックスヘイブンについておさらいをしておきましょう。租税回避地と言われていますが、タックスヘイブンとは法人税などが一部、あるいは完全に免除をされ、同時に企業情報の非公開、金融規制がない国や地域のことです。そのため租税回避だけではなく、法的問題のある脱税、またはマネーロンダリング、資金洗浄、の温床となってきました。この『パナマ文書』とは、こうしたタックスヘイブンに世界各国の要人や企業がペーパーカンパニーを設立する際に用意をした登録関係書類やデータなど1150万件に及ぶ資料、それのデータですが、データ量は2.6テラバイト。これを紙に写しますと、トラックがおよそ1000台分あると言われています。膨大な資料なわけですが、澤さんは現在、まさに、このパナマ文書を分析されていると思うのですが、その中身、主にどんな情報なのでしょうか?」
澤氏
「これは法律事務所から出た文書です。タックスヘイブンに、法人、主にペーパーカンパニーをつくる手続き書類。それを貯めていたものが今回、出てきたわけですね。ですから、法人をつくる、会社をつくるための、たとえば、申し込みというか、出願書類などそのための証明書。それから、逆に会社ができたあと、株主が誰か、役員が誰かという、本来なら、というか、その国のタックスヘイブンの制度では公開されないような、誰が本当の会社の持ち主かということが、つぶさにわかる資料、それが出てきたということです」
松村キャスター
「たとえば、ですけど、ここに『パナマ文書』で流出したデータの1部があります。これはプーチン大統領の報道官であるペスコフ氏の妻のパスポートの写しです。さらに会社を登記するための請求書。このようなものが『パナマ文書』で流出したデータの1部ということですが、私達は名前がずらっと並んでいるような、顧客リストのようなものかなと想像をしていたのですが、このような資料なのですか?」
澤氏
「そうです。もとの生データはこういうもの。これはICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)という団体が出したわけではなくて、イギリスのガーディアンという新聞のホームページにアップしたものだと思うんですけれども、実際にこういうものが入っています。パスポート、これは何で必要かと言いますと、会社をつくる際に身分証明書が必要ですよね。身分証明書で1番堅いものはパスポートなのですが、パスポートでつくるのですが、そのコピーをPDFにしてメールで送ったりしますよね。法律事務所が保管していたものが『パナマ文書』の一部になっているわけです。そうしたメールとか、ファクス、そういうもので、こういう1つ、1つの申し込み書類、申し込みのための証明書類。そういうものですね」
反町キャスター
「そもそもこういう資料、1150万件でしたか。どういう経緯で表に出てきたのですか?」
澤氏
「これはヨーロッパの大変有力な新聞である、南ドイツ新聞というのがあるんです。そこにある日、ある時、匿名の情報提供者が記者に接触をしてきて、メールのチャット、データに興味があるかと。記者ですから、興味がないという人は誰もいないですけれども、興味あるかと言われて、あると。それではと言うことで、いろいろな条件を付けて、身元を明かさない、直接は会わない。そういう形で情報提供があったわけです。それをドイツだけの新聞では、とても手に余る量。手に余る範囲ですね。いろんな国が入って。なので、国際調査報道ジャーナリスト連合、ICIJという、いろいろな国の組織、いろんな国のいろんな報道機関の記者が関わっている団体があるんですが、そこに協力を呼びかけたんです。いろんな国のことがわかる」
反町キャスター
「手に余るということですね」
澤氏
「そうですね。裏を返せば、もうちょっとポジティブな言い方をさせていただくと、皆でやればよくわかる。そういうことですよ」
反町キャスター
「初めて各国、いろんなメディア、少なくともそのICIJでしたか。そこに加盟をする会社も含めて、皆、知るところになった。そういうことになるわけですか?」
澤氏
「そうです」
反町キャスター
「よくこの手の話をすると、大野さん、リークする。この場合、敢えてリークと言わせていただく、リークをする時には、リークの目的があると思うんですよ。リークすることによって得をする人がいると思うんですよ。それは、たとえば、ヒラリー・クリントンでも、キャメロン首相でもいいですよ、アイスランドの何とかという首相でも、総理大臣でも結構です。その人を叩きたかった、ダメージを与えたかったのか。ないしは、この事務所というリークのデータを貯めていた事務所を叩きたかったのか。ないしはバハマならバハマ、ないしはケイマンならケイマン。あるいはバージン諸島を叩きたかったのか。何を目的でリークされたという、ここの部分」
大野氏
「1つではないと思います。それがいくつか重なって、むしろ南ドイツ新聞に提供した人は1人でハッキングをしたのか、あるいは内部の人か、あるいは内部の人だとよくCIA(中央情報局)がやる手ですけれども、CIAがやるのは、その内部の人をリークさせて、外に持ってこさせる。それかもわからない。それの場合、たとえば、エドワード・スノーデン版。その場合は、完全に内部ですからね。それかCIAのように情報源、内部情報源を連れだしたか、あるいはアメリカ、プーチン氏の場合は、アメリカの陰謀と言っていますけれども、それはロシアも不安定にさせるため。ひょっとしたら、CIAが絡んでいるかもわからない。それは実際に、その法律事務所をつくった、モサックさん。モサックさんのお父さんですね、お父さんはCIAのためにスパイをやってくれと言われていますからね、アメリカに。その可能性もありますね」
反町キャスター
「澤さんに質問をしても答えにくいと思うのですが、敢えて聞きたいのですけれども、いろいろ調べていく中で、何の目的で南ドイツ新聞に資料が持ち込まれたのかと考えながら、調べません?」
澤氏
「それは1つ言えるのは、南ドイツ新聞に持ち込まれた時に、情報提供者は、このような犯罪を明らかにしたいと言っています。つまり、今回のようなタックスヘイブンというか、その隠れた匿名法人みたいなものをつくってやっている人達がいる。これをオープンにしたいと。ここで止めさせたいということ。少なくとも南ドイツ新聞の人にはそう言っているわけですね」
反町キャスター
「正義のパンチであると」
澤氏
「はい」

『政治家』の関与と余波
松村キャスター
「さて、今回、流出したパナマ文書には世界の指導者の名前が含まれています。こちらで見ていきますと、ロシアのプーチン大統領の友人らが、イギリス領バージン諸島の企業を通じて総額20億ドル、日本円にして2200億円の不透明な金融取引を。中国、習近平主席は義理の兄がイギリス領のバージン諸島にペーパーカンパニー2社を所有。シリアのアサド大統領はいとこがイギリス領のバージン諸島にペーパーカンパニーを設立しています。アイスランドの首相は、夫婦でイギリス領のバージン諸島の法人を使って、巨額の投資を行っていたことから辞任に追い込まれました。辞任しています。イギリスのキャメロン首相は父親がイギリス領バージン諸島に設けたファンドに投資していたことが発覚しています。デモなども起っていますね。スペインでは産業大臣がバハマでペーパーカンパニーの役員を務めていたことがわかり、こちらも辞任しています。大野さん、政治家の租税回避が明るみに出てきた。これをどう捉えますか?」
大野氏
「今回の文書が、こういうふうに出て来たということは、私はそんなにショックではなかったんですね。と言うのは、2008年にリヒテンシュタイン。タックスヘイブンの悪名高い小さな国ですけれども、そこでキーベルさんという人が、データ入力の係をしていたんですけれども、1400人ぐらいの顧客の情報を、DVDに入れて持ち出したんですね。それを各国に売って、1つの国でだいたい数億円を出していますから、40、50億、儲けたんです。それで、その情報をもとに初めはドイツ、それから、アメリカ、それから、スペインとか、フランスとか、全部脱税容疑で片っ端から起訴していったんですね。その事件を私は取材をしたんですけれども、その事件があったから、今回の、この文書が出た時も、その大型版と思っただけで。ところが、先ほど言われたように政界の大物、首脳クラスが出た時に、G20が、いわゆるこれを厳しくしましょうと言ったら矛盾をする。だって、万引きをしてはいけない人が万引きをしている感じになりますから」
反町キャスター
「キャメロンさんはまさにその感じですよね?」
大野氏
「それをどうやって取り締まるのかなというのが最初に思ったことですね」
反町キャスター
「三木さん、どのように感じますか?この著名人、はっきり言って世界のリーダーがぞろぞろ出てきているのですが、どんなふうに見ていますか?」
三木氏
「これはまさに出るものが、出てきたなと思いますし、これまでも皆さんはだいたいこういう人達はこういうことをやっているのではないかと思われていたと思うんですね。それが実際、裏付けられたと。面白いのはこういうのが出てきたことに対する国民の反応を見ると、その国の民主主義の成熟度合いが読めるのではないかと思いました。まったく何の動きもない国というのは、規制をされちゃっている。ある程度、民主主義の度合いが進んでいるところはちゃんと反発が出ている。そういう健全さを持っている国民がいるということなのだろうと思いますね。そういう意味で言うと、面白いなと思って見ています」
反町キャスター
「この件については澤さんに聞きたいんですけれども、たとえば、三木さんが言われた指摘から言うと、アイスランドの首相は辞任に追い込まれた。キャメロン首相は大批判がロンドンで起きている。一方、プーチン大統領に関して言えば、この2200億円、楽器を買うためだと言って強弁をして、ロシアの国民は、それを、ああ、そうか、プーチンは偉いやつだなと言っている人さえいるという話も聞いています。習近平さんに関しては先ほど、まさに言われたように取材すらできない。義兄という言葉すらネットで開けないという状態だというのは、先日、別の方から聞きました。この国による温度差というのか、波の立ち方をどんなふうな想いで見ていますか?」
澤氏
「まさに三木先生がおっしゃった通りだと思いますね。自分達に関係があることかどうかという問題だと思うんです。税の問題、福祉の問題、特に困っている人達にまず使うのが税金ですよね。道路だってそう、困っている人達というわけではないですけれども、たとえば、教育でもそう。社会保障でもそう。自分達も関係があるかもしれない。いつか自分達も必要になるかもしれない、そのお金が細るのが、そういう税金を他のところで逃がしてしまうような、それで頭にきている。もっと重要なのは民主主義というお話がありました。自分達に隠れて、あるいは嘘をついているということへの批判というのはとても大きいと思いますね」
三木氏
「税金と言うのは、民主主義社会では私達が皆1人1票で、一応選挙でどういう税制にするか、皆が決めるわけでしょう。決めたのに本来、負担をしなければいけない人が自分は負担をしたくないということで国境を利用して、こんなふうに逃げて、しかも、それをリーダーの人がやって、本来だったら、皆をまとめなければいけない人がやったら、税制なんか維持できなくなるではないですか」
反町キャスター
「あの人に任せていいのかという話になりますよね?」
三木氏
「そうなりますよね。税制というのは本来民主主義をベースにしかできないはずです」

日本での関与と影響は?
反町キャスター
「澤さん、これは日本の政治家の名前が出てきているのですか?」
澤氏
「出てきていないです。もちろん、鵜の目鷹の目で探してはいるんですよ。探して、400人という個人名に行き当たっているのですが、我々がこれまで見たところで、明らかに政治家だという、あるいは政治家と関係が明らかにあるのだという名前は出てきていないです」

タックスヘイブンの実態と闇
松村キャスター
「タックスヘイブン、租税回避地の1つイギリス領のジャージー島で起こったデモの様子です。そこにはTAX JUSTICE、NOT TAX HAVENSと、税金の正義、タックスヘイブンではない、とこのように書かれています。大野さん、何を表しているのでしょうか?」
大野氏
「私が取材に行ったところですけれど、収入が100万ドル、ポンドで62万5000ポンドまでは所得税が一律20%ですね。それを超えると突然、所得税が1、2%、あるいは2%になっちゃうんですよね」
松村キャスター
「所得が高い人の方の税率が低い?」
大野氏
「突然、安くなってしまうんですね。それに対して怒っているんですけれども、タックスヘイブンを持っている人は、要するに、お金持ちですから、税金を払わないです。だから、もちろん、タックスヘイブンがジャージー島にあることで、光と影があります。光の部分も確かにある、多いですが、影の部分として、収入が年間、200万円、300万円の人も20%払っていると。そういうことに対して怒っているんです」
松村キャスター
「そういうことに対する反対デモ?」
大野氏
「そうですね。だから、タックスヘイブンを入れることによって、お金持ちに対しては税金を全然とらずに、給料が少ない人からは20%もとると」
反町キャスター
「でも、そういう形で、極端に金持ちを優遇することによって、それで、低税率に惹かれて、たくさんの人が、資産家がそこに登録して、お金が落ちるわけではないですか。それは20%の税率が高いと言っていても、税率20%を見た時にジャージー島というのは、イギリスの他の国、ないしはヨーロッパの他の国も見た時に、たとえば、インフラの整備率とか、良い暮らしをしているのではないですか?」
大野氏
「そうですね。たとえば、1人当たりのGDPで言うと、昨年で5万8000ドルかな」
松村キャスター
「ジャージー島は5万6000ドルで、日本円でいうと600万円」
大野氏
「日本よりも200万円、高いですね。しかも、教育レベルも高いし、インフラの整備もいいし」
反町キャスター
「良い暮らしをしているのだけれども、文句を言う。それをどう見たらいいのですか?」
大野氏
「それは自分の税金がとられたくないからです。お金持ちからもっと税金をとれということですね」
反町キャスター
「それをやったら、皆逃げちゃったら、現在の暮らしができなくなる?」
大野氏
「そのバランスは20%で、100万ドルを超えた時、常に1%、2%。そのギャップがあるというんですね」
反町キャスター
「そこをもう少し均してほしいと」
大野氏
「そうですね。だから、ジャージー島を見ていると、タックスヘイブンの縮図を見ているような感じ。だから、小さいから、たとえば、タックスヘイブンの口座をつくる時に法律事務所を通しているんですけれど、その弁護士は何をするかというと各タックスヘイブンの法律を調べるんですね、まず。どの法律もクライアントに合う法律がなければ、たとえば、ジャージー島の外から圧力をかけて、新しい法律をつくらせるんですよ。そこまで国が大きければできませんけれど、ジャージー島のように、人口10万人もいないですから、外から圧力をかける。たとえば、普通、トラストに寄付をすると、寄付をしたら、お金は、自分でコントロールできませんけれども、ジャージー島の場合は寄付をしたあとも、自分の寄付金を自分でコントロールできますという法律をつくったんですね」
反町キャスター
「それは寄付ではないですよね。ただ、単に預けている」
大野氏
「そうです。預けて、要するに、タックスベブンのために使うんですけれどもね。そういう普通の国なら絶対、通りようのない、通過しそうにないような法律をつくらせてしまうんですね」
反町キャスター
「それは、でも、イギリスの一部ですよね?」
大野氏
「そうですね。ジャージー島、一応、それぞれの法律は全部、別ですから。属領ですけれども。自治領ですから」
松村キャスター
「そうですね。ジャージー島のように、その国と地域によって、重要な産業の1つとなっている、このタックスヘイブンですが、2000年のOECD、経済協力開発機構の報告書では世界35の国と地域が該当するということです。大野さん、このタックスヘイブンの利用者、どうやって租税の回避を行っているのか。仕組みをちょっと説明していただきたいのですが」
大野氏
「まず本社が、外国に工場をつくりたい時に、そのままつくって、そのまま製品をつくって儲けてしまうと、その利益を本社に還元するとき、その利益に対して税金がモロにかかってしまいますね。それをできるだけ少なくするために、タックスヘイブンにA社、B社をつくるんですね。どちらも、もちろん、本社の方も出資をするんですけれど、まずB社に対しては工場に出資をするための会社。たとえば、その工場が50億円でできるとすれば、そこに5億円とか、10億円を出資するための会社、B社をつくるんですね。その5億円、10億円を出資させると残りの40億円、45億円が足りませんから、それを融資するための会社、またA社をつくるんです。それも本社がお金を出しているんですね。だから、この工場はA社から残りのお金を借り、その借りたお金に対して当然、返さなければいけませんから、その時、利息をかなり高くするんですね。融資のこの部分で利息をかなり高くすることによって…」
反町キャスター
「返済の利率ですね」
大野氏
「そうですね、高くすることによって、利息は税控除になりますから、儲けから引かれますから。だから、儲けが少なくなってしまう、利息を払っていますから。つまり、全体で言うと、このA社に利益がどんどん貯まりますね。それを本社に還元しない限り、税金を払うことはないですから。全体は結局、本社が全部お金を出していますからね。1つの会社なのに分けることによってほとんど税金を払わなくて済むという仕組みです。本当はもっとややこしいですけれどもね」
反町キャスター
「それは現在の話、たとえば、この利潤がどんどんこのA社に貯まっていく。この貯まった利益を本社の意向に沿って、たとえば、他の国の工場を設置するために使いたい。ないしは本社に還流をして、本社の人間の人件費に使いたい。ここからA社からどこかに動かそうとすると今度は税がかかりますよね?」
大野氏
「だから、利益として還元をしなければいいです。経費として還元をすればいいわけ。利益で還元をしてしまうと税金がかかってしまいますからね」
反町キャスター
「たとえば、本社に戻すにしても、どういう形にすればいいのですか?このA社、タックスヘイブンのA社から、ここに貯まった利益をどういう形で本社に還流する形で、税逃れができるのですか?」
大野氏
「それは弁護士の仕事というか、監査法人、弁護士の話が出ていましたけれども、監査法人も入っているんですよ、ここに。だから、現在はわかりませんよ。私が取材した当時は、いわゆる有名な監査法人の中に、タックスヘイブン指南部というところがあって、こうしたら合法的に税金を少なくできる。だから、こういうスキームやシステムを教えるんですね。しかも、それが見つかって、もしペナルティーを科せられても、ペナルティーを払っても、まだ利益の方が大きいからばれてもいいと。だから、これを継続するようなインセンティブになっているんです。もし罰金の方が多ければやめますけど、見つかってもいいです。罰金が高くても300万円とか、そのぐらいですから。儲けはもっとありますからね。見つかってもいいからやりましょうと」
反町キャスター
「そういう意味で言うと、たとえば、現在、日本の法人税は、仮に30%ぐらいだと、そのぐらいだとしましょう。その30%の利益。本来だったら直接ここに投資、Y国に投資して、工場をつくって、利益を出したのが戻ってきて、その利益に対して30%の税がかかるはずのところが、この形でこういうふうにワンクッション、ツークッションおいてやってくることによって、これがほとんどゼロになってしまう?」
大野氏
「ゼロになってしまう。そうですね。だから、合法的」
反町キャスター
「これはおいしい」
大野氏
「おいしいし、それも違法ではない。グレーですけれども。国によっては、これをやらせ、たとえば、アメリカの場合は厳しくなっていますから。できるだけやらせないようにすると、アメリカの財務省ですか、いろんなアイデアを持っていますからね。少しずつ財務省の方がタックスヘイブンよりも知恵としては勝ってきています」

『租税回避』と『脱税』
反町キャスター
「税逃れと言っていますが、脱税と言ったら違法ですよね?」
三木氏
「脱税というのは違法な方法で、税金を減らすことですよね。節税は法律自体がちゃんと認めている方法を使って税金を減らすわけ。たとえば、日本でも租税特別措置がありますよね。それとか、教育資金のための贈与とかありますね。ああいうものを使って税金を減らしている限り、それは法律自体がどうぞと言っているわけですから、いわゆる節税になりますよね。これに対して現在、言われている租税回避というのは、確かに違法ではないのだけれど、だけど、どうしてわざわざジャージー島に法人をつくるの?しかも、実際にそこでビジネスをやっているわけでもないのにつくる。また、その法人の株式をまた別の法人が持つようにしている。さらにまた訳がわからないけど、さらにまた別の法人がつくられている。何のためにこんな法人をつくって動かしているのかさっぱりわからない。という取引がありますよね。そういうのは確かに違法ではないんだけれども、何のためにやるんでしょうね。普通の人はやりますか?ですから、ごく1部の人達だけが何か自分の特定の利益のために、普通やらない行動をとっているわけです。これは違法ではないけど、異常だよねと。異常ですよね。異常な行動を通じて税金を逃れているわけですよ。税負担を下げているわけです。こういう行為が問題です、租税回避と言われるわけですね。こういうものを認めていいのかどうかですよ。私達は法律、先ほど言ったように民主的な方法で税法を決めたわけでしょう。皆お互い出していこうねと決めた途端、この人達はこんな方法を使って自分達が決めたはずの税法を逃げちゃうわけですよ」
反町キャスター
「違法で巨額の富を得ている人に対して、そこの部分を明らかにするというところが、自身の仕事のモチベーションにもなっているのですか?」
澤氏
「私というよりはこういう仕事をする人は皆、そうだと思いますよね。これは確かガーディアンだったと思いますが、記憶が確かではないですけれど、これは違法ではない、しかし、公正ではない。これは確かに何か具体的に引っかかるわけではないけれど、これはおかしいのではないの、普通に考えてずるいのではないの、というようなそういうことを議論するという、我々ニュースというのは、議論を盛り上げるためにやるわけですね。市民の間で、皆で話し合うために材料を提供する、そういう意味では、違法だから材料を提供すると、そういうことではないと思うんです。不公正、おかしいよと、むしろ仕組みの方が追いついていない」

グローバル企業の『租税回避』
松村キャスター
「スターバックスやアップルなど、グローバル企業の租税回避の動き、どこに問題があるのでしょうか?」
大野氏
「問題というか、もともと税金というのは格差を縮小するために最も有効な手段のはずです。ところが、こういうアップルとか、こういう大きな会社が逆のことをやっているんです。ますます格差が広がるようにやっていること自体に問題があると思うんですね。そのために、アイルランドはタックスヘイブンではないけれど、アップルがアメリカの公聴会に呼ばれた時にタックスヘイブンを利用していませんと言ったんです。タックスヘイブンを利用して節税していませんと。アイルランドはタックスヘイブンでありませんと。それはおかしいですよね。普通にしていたらもっとたくさんの税金を払うべきであるのに、それをかなり払っていないわけだから、そのために、また格差、現在世界中で格差の問題が起こっていますけれど、その1つの原因にタックスヘイブンがあることは間違いないですよ。あまりにも巨額なお金が動いていますから。たとえば、ラテンアメリカで言えば、その国の富の30%、ロシアで言えば50%、それぐらいの額が、タックスヘイブンであるわけですから。そのぐらいの額がタックスヘイブンにあるということは格差がもっと広がるような仕組みになっているんですね。問題になっているのは格差をどうやって縮小したらいいか、それを議論しているのが国の首脳。トップが議論しているわけだから、僕から見たら滑稽で仕方がないですね」
反町キャスター
「国の議論が嘘っぽく見えてしまいますよね」
大野氏
「そうですね」
反町キャスター
「租税回避がもたらすデメリットは、1番は何だと?」
三木氏
「まず基本的にこういうものを使って、いろんな人達が、富裕層が自分の税負担を減らしていますよね、そうすると、民主主義で決めたことを守っていない。まずそれですね。それから大野さんもおっしゃったように、現在、我々は資本主義社会で生きていて、この資本主義社会というのは経済発展していくわけですが、どうしても経済発展に伴って格差が生じちゃうんですね。資本主義国家においては資本収益率が常に経済成長率を上回っているわけです。だから、放っておいたら格差社会になるわけです。だから、資本主義社会というのを本当に安定した良い社会にしていくためには、税制を使って格差を縮めていくことが大事ですよね。その機能が1980年頃から世界的に失われちゃって、レーガン、サッチャー税制以来。それでガッと世界が格差社会になっちゃっているんです。もう1度、税制を全世界で声を上げて、昔の1950年代から1980年代までやった、所得再分配を機能させる仕組みにつくり直さなければいけないですよ」

タックスヘイブンへの対抗策
反町キャスター
「G20財務相・中央銀行総裁会議の共同声明で『課税逃れを防ぐための国際的な情報交換に関する基準をすべての関係国に2017年または2018年までに実施を要求』『脱税防止に非協力的な国、地域に制裁を検討』『タックスヘイブン(租税回避地)などにある法人の実質的所有者を特定し、各国当局間で情報交換』を挙げています。この実効性はいかがでしょう?」
三木氏
「もちろん、やらないよりはやった方がいいし、今度は情報交換ということで、できるだけそういう情報を各国に提供するということを求めていて、パナマも、今回やむなくそれに協力しますと言っているから、これはこれで評価していいのですが、所詮本当に出しているかどうかというのは、裏は取れないし、制裁も課せられるわけではないので、効果はかなり低いと見ておいた方がいいと思います。これまでいろんな規制をしているのですが、皆、それをうまくかいくぐっていくようなことが次々出てくるわけですよ。こういうものは規制をかけていくだけでは無理だろうと思いますね、現在の仕組みでは。私はむしろこういう時には現在ドイツとフランスが積極的に金融取引に課税しようと。国境をまたぐ取引について現在ほとんど課税できないために、こういうものが利用されているので、国境を利用する取引、通貨取引も含めた金融取引にEU(欧州連合)の10か国が共同連携して、課税しようという提言をEUの中で議論しているんですよ。これは1国だけではなくて10か国が連携してやろうとしているんですよ。人類初めての試みですよ。そういうものにもっと我々は注目して、日本だってこういうものに加盟して一緒になってやるというぐらいの意気込みを示してほしいと思います。だから、私は、むしろ積極的にそろそろ出て行った方がいいのではないかと。国民もそういう声を政府に求めるべきだと思います」
大野氏
「3つ目の、タックスヘイブンなどにある法人の実質的所有者を特定し、各国当局間で情報交換、ですが、このためにグローバルに登記簿をつくった方がいい。透明性を持たせる。それには誰が本当のオーナーであるかを記入させる。そういうのをつくると、1つの解決、抑止力になると。かなり重要だと思いますね。ばれないからタックスヘイブンを使うわけであって、ばれるのであれば使わなくなるから、実効性を上げるためにグローバルなファイナンシャル・レジデンス、そういう制度をつくるとだいぶ変わると思います」

三木義一 青山学院大学学長の提言:『そろそろ金融取引税を!』
三木氏
「租税回避についてはこれまでも様々な規制の措置が行われてきましたけれども、なかなかうまくいきません。そうであれば、そろそろ税のところで、富裕者が行っている国際取引を中心に金融取引税のようなものをきちんと各国が連携して課税するというようなところに入った方が、バランスがとれるのではないかと思います。庶民の消費税よりも、富裕者の金融取引税で少し財政を賄っていくという姿勢に社会は変換すべきではないかと、こんなふうに思っています」

国際ジャーナリスト 大野和基氏の提言:『グローバルな金融登録制度を作る』
大野氏
「これをつくることによって、要するに、本当のオーナーが誰なのかわかると。つまり、タックスヘイブンを利用する価値がなくなってくるんですね。タックスヘイブンの1番良いところというか、3つの条件の1つに不透明性がありますから、これがなくなるということですから、タックスヘイブンを使うのをやめようかと、つまり、抑止力になると思うんですね。だから、これは実効性があると思っていますから、G20か、何かでこういう制度をつくってほしいですね」

澤康臣 共同通信社編集局特別報道室次長の提言:『もっと情報公開を』
澤氏
「情報公開ですね。しつこいですかね、繰り返していますけれども、まずタックスヘイブン自体の問題として、これは税金として安いというだけではなく、実際の持ち主がわからない、そういう法人がつくれるというところに特徴がある、つまり、情報が隠れていると。そこが大問題ですね。でも、それだけではなくて、それが今回どういう、誰が持っているのかを調べるにあたっても、たとえば、日本は決して情報公開される国ではない。イギリスのタックスジャスティスネットワークという市民団体は日本の情報公開の悪さ、下から十何番目かだと言うんですね。誰が株主なのかということがなかなかオープンな情報に書いていない。あるいは情報公開法1つとっても日本は個人情報である、あるいは企業の競争上の利益を失うということが理由であれば、公開しないということができるという。つくられた2000年頃は別として現在となってはかなり遅れた情報公開制度だと言われています。こういうところを改善していけば、いろいろな意味で良くなっていくのではないかなと思います」