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2016年3月25日(金)
ライフネット出口会長 1億総活躍に物申す!

ゲスト

出口治明
ライフネット生命代表取締役会長兼CEO
野田稔
明治大学大学院グローバルビジネス研究科教授

『保険料半額』の秘密
松村キャスター
「出口さんが会長を務めるライフネット生命ですが、2006年に準備会社を設立、2008年に開業。経常収益はこの8年間でおよそ38倍に伸びています。インターネット生命保険の先駆けとして知られているライフネット生命ですが、出口さんが会社を立ち上げる際に掲げた3つの指針がこちらです。保険料を半額にしたい。保険金の不払いをゼロにしたい。生命保険商品の比較情報を発展させたい。順番に聞いていきたいのですが、まずこの保険料を半額にしたい。これはなぜどういう想いから半額にしたいと思ったのでしょうか?」
出口氏
「ちょうど開業前後に日本人の所得を調べたら、20代が1番貧しくて、年収で300万円ちょっとしかないです。それを見た時に大手の保険会社が売っている毎月2万円前後する保険をとてもよう売らんなと。年収が税込300万円ぐらいだったら半分にしなければ絶対に買えないわけです。そう思ったので、保険料を若い人の年収をベースに考えたら、半分にして、安心して保険を買ってもらって、赤ちゃんを産めるような社会をつくりたいと思って開業をしました」
反町キャスター
「最初から半額が目標だったのですか?」
出口氏
「はい。半分にするにはどうやればいいかを考えて、インターネットで売るしかないなと。そう考えました」
反町キャスター
「インターネットというところ、最初から半額にするためにはネットだというのは、そこは迷いなく、そこにいったのですか?」
出口氏
「一言で言えば、缶ビールのビジネスモデルと言っているんですけど、缶ビールを買えば、200円ぐらいですよね。でも、居酒屋に行ったら、同じ銘柄のビールが500円しますね。これは何でと言えば、居酒屋で働いているお兄さん、お姉さんの人件費、物件費、光熱費、家賃が乗って500円になるわけです。だから、インターネットで売れば、その経費は要らないわけですから。だから、ライフネットが半額になるというのは、お客様がインターネットを通じて200円の缶ビールを買ってくださると、そういうビジネスモデルですよね」

『保険金不払いゼロ』
松村キャスター
「2つ目が保険金の不払いをゼロにしたい。これはどういう理由があったのですか?」
出口氏
「これは現在の話にも絡むんですけれども、ちょうどライフネットを起業した頃は不払い問題のピークだったんですよ。これも競争の中で特約をどんどん付けていって、複雑にして、保険会社がわからないようになってしまったので、不払いが起こったという面があるんですよ。だから、保険会社は何が仕事やと言えば、保険金をお支払いすることですよね。それが一丁目一番地なので、逆に言えば、シンプルにすればわかりやすいから不払いも減るんですよ。それから、ライフネットではインターネットでやっていますから、給付金をお支払いする時も全部、紙を介さなくてもいいと。たとえば、病気で明日、退院だと。でも、まだ元気が出ないから、字を書くのはしんどいですよね。その時に病院で貰った診療明細をスマホで写真を撮って、そのまま送れば、給付金をお支払いできると。そういういろんな工夫も、これはライフネットが初めてですけど。そういういろんな工夫をして、不払いをゼロにしたいと考えています」
反町キャスター
「そもそもその不払い問題、昔あったなと確かに思ったんですけれども、あの状況というのは現在言われたような特約がいっぱいついて、商品が複雑になったことによるものですか?」
出口氏
「1番の原因は、そうです」
反町キャスター
「保険会社の方が、ズルをしたというか、そういう印象が…」
出口氏
「でも、それであれば、レピュテーションが下がりますから、実は、これは2、3年かけて金融庁がちゃんと分析をしたデータがあるのですが、保険会社は新商品をつくる時に払うのが5年後、10年後だと考えるではないですか。そうすると、売りたいから、いろんなデコレーションをつけた複雑なものをつくって、暫く経ってから、払う方のシステムの準備をしようと、後まわしになるんですよ。当時はなっていたんです。でも、どんどんつくっていくと後まわし、後まわしになって、いざ、支払いが生じた時にシステムが完備をしていなかったとか。そういういろいろな問題がありましたから、だから、行政指導の方も商品をつくる時には支払いまで、全部システムを組んでから認可申請してくださいよとか、そう変化をしたんですけれど、実は不払いの問題は売りたいという気持ちが強くて、ちゃんと支払いまで考えないで、どんどん前のめりに商品をつくってしまったことが…」
反町キャスター
「そうすると、保険金の不払いをゼロにしたいという目標については、商品の簡素化とシンプルさ。その手続きもシンプルにする。両方?商品と手続きをシンプルにする、簡素化、これで解決していったと?」
出口氏
「はい」

商品『比較情報』の活用
松村キャスター
「最後の1つ。生命保険商品の比較情報を発展させたいと。これはどういったことなのでしょうか?」
出口氏
「これはすごく簡単ですが、モノを買う時に、ビールを買う時も、200円か、210円か、普通モノを買う時は、人は比べますよね。だから、同じように生命保険を買う時もちゃんと比べて買った方がいいし、そういうふうに生命保険も、普通の商品だから、普通のモノを買うように比べて買った方がいい。そういうマーケットをつくりたいという考えです」
反町キャスター
「マーケットをつくりたいというのは、それは別にライフネット生命が、何かマーケットをつくれるわけではなく、いわゆるインターネット生保という会社を立ち上げて、世に問うことによって、これまでの伝統的な保険ビジネスに透明性とか、平準化とか、競争という、商品の競争というような、そういう刺激を与えたかった」
出口氏
「はい。そう考えていただいてもいいですし、たとえば、製造原価と会社の経費の割合も随分オープンにしましたから。まだライフネット1社以外はどこも出していないですけれども、そういうふうに情報開示をすることでお客様と保険業界との情報の非対称というか、それが縮まっていけば、だんだん皆さんのリテラシーが上がって、ちゃんと比べるようになるのではないかと。そう考えて、情報開示をやっています」
反町キャスター
「情報開示をするということは何かというとオープンにする。オープンにするということは絶対に負けないという自信がなければやらないですよ。そういうことですよね?」
出口氏
「はい。そうです」
反町キャスター
「それはどういうことかというと、伝統的な保険ビジネスにいた方から見ると、伝統的な保険ビジネスというのがあまりに、ある意味、問題点があったと。そういうことですよね?」
出口氏
「それは対面販売にコストをかけ過ぎていると思っていましたから。もちろん、高度成長期で皆が居酒屋に行けたら、それでいいですけれども、そうでなくなった時には、缶ビールも供給しなければ、飲めなくなる人がいるのではないか。それが問題意識です」

若い世代との関わり方
松村キャスター
「還暦でベンチャーを立ち上げた時の話を聞いていきます。まずこちらの写真を見てください。2008年5月18日、ライフネット生命が開業された時です。初日に撮影された写真ですが、出口さんはこの時、既に還暦を迎えていました。皆さん、同じポーズをとっています。続いて、こちらの写真です。2008年に開業したライフネット生命。ゼロから立ち上げるにあたって、出口さんのパートナーとなったのは右側の岩瀬大輔さんです。現在のライフネット生命の社長です。出口さん、岩瀬さんはどんな方ですか?」
出口氏
「すごく素直で、いろいろなことができる人間だと思っていますけれども、僕はダイバーシティ(多様性)が、何よりも大事だと思っているので、僕は、自分自身を定義したら、かなり歳をとっていて、保険のことはまあまあわかっている。では、僕と組むのに理想的なパートナーは保険のことはあまり知らない。つまり、消費者の目線でものを考えることができる、それから、若い、この2つの条件がベースになると思いましたから、そうすると、補うことができますよね。だから、僕が歳をとっていて、保険業界の出身であれば、保険業界以外の出身者で、若い人をパートナーにしたいと。そう思っていました」
反町キャスター
「保険ビジネスやるのに保険を知らない人と組むのですか?一から説明するの面倒くさくないですか?」
出口氏
「でも、逆に、そのことで新鮮な発想が生まれますよね」
反町キャスター
「実際に生まれたのですか?」
出口氏
「生まれました。たとえば、ライフネットコンタクトセンターを初めて夜の10時までにしたんですけれど、生保業界にいたら、電話が開いているのは、9時から5時、9時から6時が常識ですよ。でも、消費者の目線から見たら9時から6時は、働いている時間だから電話できない。では、10時まで開こうと。そういう発想が生まれるので。あるいは生保業界にいたら、医療保険の給付金のお支払をする時にはお医者様の診断書はマストだよなと。誰も疑わないではないですか。ところが、ライフネットの社員の半分は生保業界以外から来ていますから、病院に行ったら診療明細がえらい詳しくなっていると。じっと見たら診断書よりたくさん情報があると。診断書がなくてもいいよねと。こういう発想は知らないから生まれるんですよね」
反町キャスター
「それならば、岩瀬さんという素人の若い男性を引っ張ってくるのではなく、時々、全然知らない子育中のお母さんからヒアリングするとか、ヒアリングで済む部分ではなくて、なぜ相方として組まなくてはいけないのですか?」
出口氏
「時々聞いているというのは効果的なようでいて…、こちらが聞きたい時に聞くわけです」
反町キャスター
「肯定的な返事を期待しますよ。普段から一緒にいて、おかしいねとか、これは何ですかと言ってくれることで気づくので。だから、本当に仕事をやろうと思ったら、1か月に1回ぐらい皆さんの意見拝聴ではうまくいかない気がしますね。喧嘩はしますよね?」
出口氏
「でも、喧嘩して、初めて良いビジネスができるわけですから」
反町キャスター
「28歳年下の人と、イーブンで言いあいをするのですか?」
出口氏
「逆に年が離れていると、すごく楽なのは、美学とか、人生観とか、価値観とか、なくなるんですよ。僕と岩瀬が好きな女優の話をしたら絶対喧嘩になりますよね」
反町キャスター
「ちなみに、出口さんは吉永小百合世代ですよね?」
出口氏
「そうです。岩瀬は知らないでしょう。でも、それだけ年齢が離れているということはビジネスなのだから、では、理念は2人でディスカッションしてつくろう。あとは数字ファクトと、ロジックで議論をしようとなりますから。むしろダイバーシティがある方がガチな意見ができるんですよ。だって、そう考えないと、たとえば、GEの研修とか、80人が30の国から来ると言われているのですが、数字ファクトと、ロジックでないと議論ができないですよね。だから、むしろ年齢とか、バックグラウンドが違う方が遠慮をせずにガチの意見を言えると思います」

『シニア起業』成功のヒケツ
反町キャスター
「ベンチャーを立ち上げる時に前の会社の看板というものがどのぐらい効くのかとか、前の会社の看板を外した時に自分がどのように世間に通じるのかと、そこの部分の不安、ないしは自分に対する評価、迷いはなかったのですか?」
出口氏
「本当に、正直に言うと、僕は起業した時は、(あすかアセットマネジメントの)谷家さんという人に会って、保険会社をつくりませんかと声をかけられて、すごい感じが良い人だったので、その場でいいですよと言ってしまったことが実は全てで、僕はすごく歴史が好きで趣味ですけれども、歴史の本を書いたりしているんですけれど、よく見たら、大きい仕事をした人のほとんどというのは、実は偶然の出会いで、いいですよ、と言ってしまったことがきっかけになっているんですよ」
反町キャスター
「後づけではないですか?」
出口氏
「たぶん本当だと思います。実際に何かをやる時は直感でこの人が言うのだったら、やってもいいなとか。そういうものから始まるのが実際で、まったく後づけではないと思います。その時、僕はたまたま大学の仕事をしていたので、それもすごく面白かったので、これで10年ぐらい仕事をしようと思っていたんですけれども」
反町キャスター
「歴史の先生か、何かをされていたのですか?」
出口氏
「いや、大学改革の。でも、それがたまたま不思議なもので、谷家さんに会って、保険会社をつくりましょうよと言われた時に、本当に良い感じの方だったので、まずいいですよと言ってしまったので。言ってしまった以上はがんばるしかないと。たぶん人生はそんなものだと思うんですよ」
野田教授
「キャリア論で、プランド・ハップン・スタンス・セオリーというのがあるんです。計画された偶発性理論というんですよ。フランボルス先生というスタンンフォードの先生が1999年ぐらいから言っているんですけれども、これはどういうことかと言うと、だいたいの人のキャリアは偶然で決まっているんです、その先生の調査によると。ただし、自分のキャリアに対する満足度とか、周りから見てもあの人いいねというようなキャリアになっているかどうかというのは、その人の偶然に対する対し方によって大きな差が出てくるということがわかっているんですね」
反町キャスター
「見ている人達は目の前に回転すしで大トロがきた時に、逃さないためにはどうしたいいのか。どうしたらいいのですか?」
野田教授
「まず大トロがくるぞと思ったならば、まず大トロは食えですけれども、たとえば、大トロがこなかった。中トロだった。でも、中トロでもいいかと。これがまず1つ目です」
反町キャスター
「それは失敗ではないのですか?違いますか?」
野田教授
「いや、自分の目の前にきた偶然については、良いなと思ったら、飛びついてみるというのが1つ目ですよ。でも、もう1つコツがあって、そうは言ったって、大トロがきそうなところの席に移っておけと。だいたい川上でとられるわけだから。そうなったら、自分が大トロをとりたいと思うのだったら、くるのかどうかわからないけれど、川上の方に座るという偶然を引き寄せる積極的な行動もしろと。これがフランボルスの言う、プランド・ハップン・スタンスです」
反町キャスター
「出口さん、ここに行けば大トロがくるのではないかと待っていたら、谷家さんと会えたのですか?」
出口氏
「僕は、棚からぼた餅理論と言っているんですけれども。僕は、世の中を1番動かしているのはダーウィンの進化論だと思っていて、強い者や賢い者が生き残るのでないと。世界は常に変化しているのだから、変化に対する対応だけだと言っているんですよね。対応の内容は運と適応ですよ。僕は、それは運というのは偶然ですけれども、運というのは必要な時に、必要な時期に、そこにいることですよ。それに適応するかどうかなのですが、棚からぼた餅が落ちる時に、たとえば、その5メートルぐらいにいなければ食べられないわけですから。ぼた餅が落ちる時にその場所にいるということが必要な時に、必要な場所にいる運ですよ。でも、5メートルぐらいにいる人は5人とか、10人いるわけです。それを見た時に素早く走っていって、真下で口を開けたらぼた餅を得られるんですよ。これが適応ですよ。そう考えたら、僕は、健康ですよね、要するに、朝起きた時に今日も元気で働こうという気持ちがなければ、ぼた餅が落ちているのを見ても走れないですよ。だから、僕は本当にダーウィンの進化論というのは深いと思うんですけれど、世の中の全てはよくよく分析をしてみたら、運と適応ですね」
反町キャスター
「どこかに落ちてくるかもしれないと思って、上を見ながら歩くのですか?」
出口氏
「いえ、もっと言えば、本当に起業できる人は数が少ないですよ。だから、僕は、むしろたまたま谷家さんに会ったから起業ができたんですけれども、歴史を見ていると、起業できないで、普通に死んでいく人が99%なので。それでいいですよ、多数派なので。でも、たまたまそういうところに居合わせたら、それは1%に当たったわけですから。一生懸命にやるしかないと。それぐらいに考えておいたらいいと思いますよね」
反町キャスター
「それは、たとえば、谷家さんという方に会う場合もあったでしょうし、それではない形での起業のチャンスというのも、過去にもなかったのですか?」
出口氏
「あまりなかったです」
反町キャスター
「では、唯一のチャンスに出会った時に、これだと思って、自身もそこに乗ったと」
出口氏
「それだと思うより、たぶんこれも恋愛と一緒で、これだと最初から思ったわけではないでしょう。たぶん、そういうふうに思うので、最初は感じが良い人だなと思って。その中でだんだんお付きあいして、同じようにいろんな経緯があって、それでやってみて、実はライフネットも本当に運と思うのは、最後の増資が2008年の3月の末だったんですよ。これは免許が1年半から2年かかると言われて、1年半で下りそうになったので、3月31日で最後の増資をしたんですけれども。本当に2年かかっていたら、9月30日ですよね。リーマン危機が起こっていますから。本当にお金が集まったかどうかはわからないので。その時はリーマン危機が起こるとは誰も思っていませんから、運ですよね。いろんな偶然が重なって、いろんなことができるのだと思います」

勝つための人事システム
松村キャスター
「30歳未満のみという定期採用の条件ですが、この狙いは?」
出口氏
「これはもう1つ条件があって、面談でなく、字数無制限の論文を家でゆっくり書いてもらうんですけれども、ライフネットは90名しかいない小さい会社ですよね。そうすると、定期採用の新卒は1人か、2人ですよ、3人とか。そうすると、大きい保険会社は何百人も採っているわけです。大きい保険会社と同じような優秀な人を採っていたら、何百人対1人、2人ですから絶対に負けるんですよ。ですから、ベンチャーで本当に必要なのは自分の頭で、自分の言葉で数字ファクト、ロジックで考えることができる人がほしいんですよ。ですから、これは始めた時から論文採用をやっているんですけれど、字数無制限で、家でゆっくりやってほしいと。たとえば、厚生労働省が日本の平均寿命が10年後に100歳を越えるというレポートを出しましたと。何をすればこの国はもっていくと思いますかというようなテーマを出して、自分でじっくり考えてもらう。ですから、グローバルで考えたら、大学を卒業して企業に入る人はむしろいないですよね。世界を放浪するとか、NPO(特定非営利活動法人)とか、NGO(非政府組織)をやって、その中で、自分がやりたいことを見つけて入りますから、30歳未満というのはグローバル基準ですし、数字、ファクト、ロジックで考える人だけがほしいので論文採用をやっている。高齢化社会ですから、高齢者も働かなければもたないことはわかっていますから定年はありませんと。これもグローバル基準ですね。世界で定年があるのは日本ぐらいですから。ですから、ユニークな採用方法と言われていますが、世界の普通の採用をやっているだけだと僕自身は思っています」
反町キャスター
「給料は?」
出口氏
「同一労働、同一賃金です」
反町キャスター
「できのいい人間がたくさんもらう?責任によって給料が変わる?」
出口氏
「そうです」
反町キャスター
「評価にルールがあるのですか?」
出口氏
「評価は、たとえば、部長であればこういう水準、課長であればこういう水準というのがどこでもありますから、それを示して、ディスカッションし、双方納得して評価を決めるという、普通の方法をとっています。不満があれば、言えばいいわけですから、お互いが納得するまでやるわけですから、全世界でやっている方式ですから」
反町キャスター
「退職金は?」
出口氏
「ありません。基本は退職金というのは後払いですよね。ずるいですよね、ある意味では。若い時にお金が要るわけでしょう、子育てとか。その時にケチって引き止めている。むしろ年齢を見ないで、働きに応じてちゃんと働くわけですから、普通に考えたら、同じ仕事をするのだったら、同じ賃金というのがフェアだと思います」

『労働生産性』どう高める?
松村キャスター
「労働生産性の国際比較で日本は21位。この現状をどう見ますか?」
出口氏
「悲しいことで、日本は世界で1番高齢化が進んでいる先進国です。そうすると、何もしなくても、1年間経てば、1年歳をとりますから、5000億円とか、1兆円とか、2兆円というお金が出ていくわけですから、むしろ世界で1番高齢化が進んでいる日本こそがその分を取り戻すだけ、生産性を上げなければ、だんだん貧しくなるばかりですね。そう考えています」
反町キャスター
「その生産性、日本が低い原因は何になると思いますか?」
出口氏
「長時間残業、ダラダラ残業と思うのですが、ちょっとこれを見ていただければわかりますが、日本の正社員はだいたい2000時間。1990年の初めからほとんど変わっていません。夏休みは1週間と言えば、いい方ですね。この3年間の実質成長率はだいたい0.6%ぐらいです。アメリカは人口が増えていますから、ちょっと比較にならないと思うのですが、EU(欧州連合)と比べればだいたい労働時間は130時間から1500時間、夏休みは1か月、それで3年間の平均成長率は1.5%ぐらいある。どちらがいいですかという世界ですよね。昔は2000時間働いて、1週間で7、8%成長していましたから、これは10年で所得が倍になる世界ですから、釣り合っていたわけですよね。でも、何で7、8%成長したのかと言えば、冷戦構造の中で人口が増えて、キャッチアップ型のモデルで働けば豊かになれたという外的条件があったわけですが、冷戦も終わり、人口も減少に転じ、キャッチアップモデルから課題先進国になったわけですし、ヨーロッパ型の社会になっているわけですから、働き方を変えないでダラダラ残業していたら、こういう状況になるんですよね。ですから、日本こそ生産性を上げなければいけない。そのためには考えなければいけないですから、皆と同じことをやっていたら進歩しませんから、考えるために勉強しなければいけない。そうすると、10時に帰って、家に帰ったら、風呂、飯、寝るになりますよね。こんなのでいいアイデアが浮かぶわけはないですから、労働時間を切り詰めて本当に集中して仕事をして、ゆっくり休んで勉強して、知恵をつけなければいけない。そういう段階にきていると思います」
野田教授
「実際に私の知っているシステムベンダーさん、システムベンダーと言えば、本当に3Kとか、7Kと言われるような長時間労働が当たり前の業界ですけれど、その会社の当時社長だったと思いますけれども、鶴の一声で、総労働時間のすごく圧縮をやったんです。月間20時間以内。どんなにあっても20時間以内。20日間の有給休暇は完全消化、という目標を立てられたんですね。とにかくシーリング決めちゃったので無理やりやったわけですよ。当然、それをやったら売上げが落ちるだろうと思った。実際に社長も売上げが落ちてもいいから、労働時間を減らせとおっしゃったんですね。蓋を開けてみたらどうなったかというと、売上げが上がっちゃったんです。なぜそうなったかというと、とにかく時間を短くしなければいけないという鶴の一声ですから、何が何でもやるためには仕事のやり方そのものを変えるしかなかった。とりわけ重要だったのが前さばきですね。事前の段取りに時間かけるようになったんです。当然そうやると、手戻りがないわけです。逆に言うと、手戻りをやっている時間的な余裕がないですから、そうしたら利益率も上がっていった。しかも、先ほどありましたけれど、労働生産性がどう定義されているかというと、労働投入分の付加価値ですよね。これを上げようと思ったら付加価値を上げるか、要するに、付加価値の高いビジネスを始めるか、もしくは投入労働時間を減らすのか。その両方をやらなければいけないわけですけれど、現在労働が多すぎちゃって家に帰っても考える暇もない、へとへとですから、付加価値の高いビジネスなんて考える余裕なんてまったくないですよ。悪循環極まりないわけですね。これを善循環するためにはまず時間を減らすことからスタートするのが1番良いという事例が、既にこの日本で、しかも、悪名高き、と言ったら申し訳ないけれど、長労働時間産業で起きているということを我々は知るべきではないですかね」

いま求められるリーダーとは
松村キャスター
「いま必要とされるリーダーはどういうものだと思いますか?」
出口氏
「世の中はどんどん変わっていきますよね。たとえば、今年の初めにあった株価とか、為替の大きい動きを、昨年の12月に予測した人はゼロですから。それほど世の中はどうなるかわからない。そうすると、何よりも必要なのは過去の成功体験だけではなくて、数字、ファクト、ロジックでキチッと考えられる人。それと、人間の脳は1万2000年ぐらい進化していないと言われていますから、僕は縦横思考と言っていますが、喜怒哀楽や経営判断は一緒なので、昔の人はどう考えたのだろうとか、グローバル基準という言葉は嫌いなので、世界の人が普通、どういう働き方をしているのだろうということを素直に見て、縦横にいろんな情報を集め、数字、ファクト、ロジックで、過去の成功体験にとらわれず、自分の頭で考えることができる人がリーダーでなければ大変だと思いますね」

出口治明 ライフネット生命保険代表取締役会長兼CEOの提言:『適用拡大』
出口氏
「僕は、適用拡大の問題が1番大事だと思うんですけれども、人間は安心して働けることが1番大事で、体が元気なうちはいいですけれども、歳をとったら心配ですよね。日本の年金制度はもともとは自営業者が国民年金で、被用者、人に雇われている人は厚生年金という原理原則で始まったわけですから、でも、現在はこの厚生年金が1週間30時間働く正規社員しか適用されてない。でも、本当はパートやアルバイトの皆さんの方が将来の生活が心配なわけですから、原理原則に戻って人に雇われている人、被用者は全部厚生年金に移すと。そうすると、将来がある程度安心だということは精一杯働けますね。これはドイツのシュレーダー政権がやった、アジェンダという労働改革の柱の1つですけれど、僕は高齢化社会である日本であるが故に年金を原理原則に戻して、被用者は全部厚生年金にするという適用拡大の問題が1番大事だと思います」

野田稔 明治大学大学院グローバルビジネス研究科教授の提言:『創造生産性向上』
野田教授
「先ほどのリーダーの話、私も一言で言うと、これまで成果が上がった人は、だいたい問題解決力の強い人がリーダーになっていく。問題解決はもういいですよ。その前に何が問題かを発見ができる人。問題発見ができる人間がリーダーになるべきだと思います。この問題を解決すれば、世の中は良くなる。と言うことは、自分達も儲かるというようなことを考えると、まさにこの話は創造生産性、新しいことを生み出すという意味での生産性を可能な限り組織の中で高めていくようなマネージメントをしない限り、日本は絶対生きていけないです。先ほどの労働生産性で言うならば、投入時間分の付加価値の、付加価値の方を上げられる人をリーダーに持ってこないとたぶん日本は持たないと思うんですよね。ここに全勢力を注入したいと思います」