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2016年3月24日(木)
アメリカは大丈夫か? 日米共通の政治課題は

ゲスト

西山隆行
成蹊大学法学部政治学科教授
安井明彦
みずほ総合研究所欧米調査部長
冷泉彰彦
作家・ジャーナリスト

大統領選から読み解く アメリカ社会の実情は?
秋元キャスター
「アメリカ大統領選に向けた予備選、各党の候補者選びの情勢から見ていきたいと思います。当初、異端と言われていました不動産王、トランプ氏が予想外の快進撃を続けているのが保守政党共和党です。親子で大統領を務めたブッシュ・ファミリーの三男ジェブ・ブッシュ氏や若手のルビオ氏は撤退し、クルーズ氏、ケーシック氏がトランプ氏を追う、候補者争いを続けています。対する民主党ですが、ヒラリー・クリントン候補が優勢ながらもまだ盤石とは言い切れず、74歳のバーニー・サンダース氏が若者世代の支持を受け、急迫する展開となっています。冷泉さん、アメリカで暮らしているということですけれども、民意の盛り上がりなど、どんなふうに感じられていますか?」
冷泉氏
「1つは予備選の段階で言うと、これまでいつもニュースを見ていて、ワシントンポストとか、ニューヨークタイムスを読んでいるような、いわゆるニュース好き、意識の高い層が割と中心で、たとえば、テレビ討論があっても、視聴者というのは、だいたい200万人とか、300万人とか、そのぐらいの数だったんです。ところが、今回は1桁違う2000万人ぐらいの人が視聴するという中でちょっと異常な選挙戦になってきていて、トランプ効果はもちろんあるわけですけど、民主党の側も同じようなところがあって、サンダースさんはこれもまた左の異端候補ですから。ここまで極端な候補は、ここ20年ぐらい、ここまで躍進するというのは珍しいわけで、ある意味で言うと、ニュースを見ていて意識が高い層ではなくて、いろんな人達が本音を剥き出しにしてきて、何か過去、冷戦が終わってからのアメリカの歴史の中ではまったく新しい状況が出てきたなという感じがします」
反町キャスター
「既存の政治家に対する風当たりが強いとも言われているではないですか?既存の政治家、プロの政治家に対する雰囲気、逆風という言い方はあり得るものですか?」
冷泉氏
「最初のうちは、そういうエスタブリッシュメント、いわゆるワシントンの政治家に対する批判が大きかったのだと思うんですけれども。それから、いろんなことをトランプさんは言い続けて、意外な反応があって。そういう中でだんだん世論全体のいろんな本音がどんどん噴出してきたと。ですから、ちょっと結論めいたことを先に申し上げると、もしトランプさんが失速するとすれば、あまりにもいろんな材料をぶちまけたために最後に自分で抱えきれなくなるぐらいの、いろんなものが出てくる時にはたぶん失速するなと、私は最近思っているんですけれども」

異端候補に沸く世論… アメリカ社会の実情は?
反町キャスター
「それは本音というのはどういうことですか。たとえば、移民を、メキシコとの間に壁をつくるとか、日米安保条約は片務的であるとか、諸々そういう話というのは、それは本音だとお感じになっていますか。それとも、極めて表層的な、見た目、そう言えるよね、そういうふうに言った方が気持ちいいよねと、精神的な快感を、ただ、民衆にぶちまけているだけなのか。本当に考えている人の心に染みるものなのか。ここはどう見ていますか?」
冷泉氏
「ここが非常にわかりにくいところで、ご本人もわかっていないでしょうし、受け止めている側、世論もわかっていないだろうし、ただ現象としてどんどん雪だるま式になっていっていますから、あるところで何かが起きているのではないかと。そういうふうに思っていますけれども」
秋元キャスター
「安井さん、民意の盛り上がり、どう見ていますか?」
安井氏
「今回の選挙の特徴は、国民の不満がもたらした現象。それがアウトサイダーの活躍だと思いますし、それはただの不満というよりは非常に鬱積している、長年の不満が鬱積した結果が現在だと思います。ここに世論調査の数字があります。これはよく使われるグラフですけれども、アメリカが進んでいる方向に満足していますか、満足していませんかというような世論調査になります。満足していないというのは、赤い折れ線になりまして、満足しているのが青いグラフと。見ていただくとおわかりのように、不満というのが満足をずっと上まわっているわけです。これがだいたい2000年代の前半からですから、10年以上に渡って不満が続いているということです。これは何の不満なのか、これは時期によってだいぶ違うと思うんです。外交に対する不満。経済に対する不満。それが積み重なって政治に対する不満になっている。ここで見逃せないのは、政治に対する不満というのは政策に対する失望、幻滅というのと裏表の関係にあると思えることです。どういうことかというと、振り返っていただきますと、2000年代というのは、最初の8年間は共和党だったんです。ブッシュ政権がやりました。大減税もやりました。共和党がやると言ったことをやっていたわけです。オバマ政権になって8年間になります。ここでは医療制度改革をやる、民主党の政策をやったわけです。ただ、この間、結果的に普通の人達の賃金が伸びたかというと伸びていない。これまでの政治家にやると言ったことをやらせてみたけれども、ダメだったと。そういう政策に対する、政策の敗北と私は言いますけれど、政策が結果を出さないことが現在の不満の裏側にあると。だから、これまでの政治家ではない人。全然違うものを求める世論になっているのではないかと思います」

大統領選に映る米国社会 異端発言の真意は?
秋元キャスター
「予備選の演説や討論会の度に、過激な発言が注目を集めている不動産王のトランプ候補ですけれど、その中から、安全保障、外交に関する発言をまとめました。非常に強気な発言が並んでいるんですけれども、冷泉さん、こういった強気の発言の狙い、真意、どのように見ていますか?」
冷泉氏
「これは全部、一見すると本当に強気に見えるんですけれども、ですから、非常にタカ派だし、威勢がいいし、何か強そうに見えるんですけれども」
秋元キャスター
「本当にできるの?という気もしますけれども」
冷泉氏
「この中の、1つ1つを見ていくと、どれも孤立主義だし、孤立主義にもいろんな孤立主義がありますが、本当のアメリカの建国以来、綿々と歴史が流れているのは、ヨーロッパがトラブった時には距離を置いてしまおうということがあるんですよ。それはナポレオン戦争の時もそうだったし、1番大きかったのは第一次世界大戦ですよね。第一次世界大戦は関係ないのに参戦したら、アメリカの若者が大勢殺された。これは何なのだと。それで非常に内向きになったと。結局、第二次世界大戦の参戦も遅れるみたいな。それが現在になって出てきたと。だから、たとえば、イスラム教徒の入国禁止というのは、9.11でアメリカが直接、ああいったテロのターゲットになった直後にはそんなのは出なかったんですよ。それはブッシュ氏がうまく抑えたというのもありますけれど、ただ今回、何で出てきて、トランプ氏が、こういったのが通っていくかというと、ヨーロッパで非常に揉めているではないかと。ヨーロッパは移民で困っているではないかと。テロが起きているではないか。あのヨーロッパのトラブルに我々は関与したくないと。あれがこらちに来たら困るだろうというような心情に訴えていますよね。ですから、たとえば、アジアの問題もそうだし、全て距離を置きたい。孤立したい。内向きになっている。そういう心情に訴えかける戦術ということで、決してこれは急進タカ派でもなく、アメリカの保守主義の中に綿々と流れている、特にヨーロッパのトラブルは他人事、距離を置こうという孤立主義の表われだと思います」
安井氏
「外に悪者をつくるという形になりますよね。メキシコ人ならメキシコ、日本、韓国、ヨーロッパ、国内の経済が良くない時に、外に敵をつくるというのは歴史的に見ても非常に普通というか、常套手段だと思います」
反町キャスター
「どこの国の人でもやるという。日本はやらないと思いますけれど」
安井氏
「そうですね」
反町キャスター
「周辺の国の人でもそういうのをやっている人はいますよね」
安井氏
「はい。ですので、それを含め、オーソドックスと言えば、オーソドックスです。国内がおかしいのだけれども、その対策がなかなかない中で、わかりやすい敵を選んで、そこを叩く姿勢を見せる。それはおっしゃられたように、タカ派だということではなくて、アメリカ第一主義であって、アメリカファーストで、アメリカを守るために、相手、敵をやっつけるというやり方で不満を吸収するというのが1つの考え方です。ですので、裏側には経済の閉塞感とか、そういったものがあると思いますし、トランプの言っていることの1つの中に、外で戦争するお金があるのだったらまず国内を立て直す。インフラに投資をするべきだということを言っているわけですけど、それは、言い方は優しいですけれど、オバマも言っていたし、クリントンも言っていたと。どのアメリカの大統領も折に触れ、言っていたわけですね。それを(トランプ氏は)どぎつく言っているだけであって、そういった外は敵で、そこは叩くのだけれど、アメリカの国内をしっかりしなければいけないよねというところにまで落ちてしまっていると。平たくしてしまえば、それは意外にそうだよねという腑に落ちる国民も少なくないではないかと」
反町キャスター
「現在の安井さんの話を聞いていると、トランプ候補が、もしも本当に大統領になったら大変になるよという人が、巷でほとんどそう思っている人が…。意外と、彼が大統領になっても真の部分は皆、アメリカ大統領は根っこの部分は変わらないから、実際の政策にその理念を落とし込むというか、上にあげるのかわかりませんけれど、普通のものになるのかと見たら、怒られます?」
安井氏
「それは全体の政策、全体像があるわけではないですし、主義主張がしっかりとあるわけではありません。どちらかと言えば、現在、有権者にウケる政策を積み重ねていった結果、こうなっているというところは当然あるのだろうと思いますので、それをやれば、いいことになるとか、普通の政策が運営できるとは思っていないです。ただそういった政策。たとえば、外を叩きたいとか、国を守りたい気分であるとか、まず国内から立て直したいという気分が有権者にあることは事実だと思いますので、トランプ氏のように、極端な政策、支離滅裂な政策をやる必要はないと思いますけれども、次の大統領に対しては、世論からそういう圧力がある程度かかってくるのだと思うんですね。そちらの方向にもっとリーズナブルかもしれませんけれども、政策が引きずられていく、引き寄せられていくということはあるのだろうと思います」
秋元キャスター
「先ほども紹介がありましたけど、メキシコとの国境に壁をつくるなどの発言もあるわけですけれども、西山さん、そういう発言をすることによって、アメリカ国内にいるメキシコの人の反感を買うという、そういうリスクは、トランプ候補はあまり考えていないのでしょうか?」
西山教授
「間違いなく大きなリスクがあるわけですよね。先ほどのお話の中でアメリカというのは危機的な状況になったら、外に敵をつくるというようなお話がありましたけども、メキシコ系の移民、並びに不法移民というのは、アメリカにたくさんいるわけです。アメリカ国内に不法移民だけで1000万人以上いると言われていますが、その家族達がアメリカ国内にいるわけですね。つまり、そのアメリカの不法移民を叩くというのは、同時にアメリカ国内の中南米系の人を叩いていると捉えられても仕方がない部分があるのだろうと思います。このあたりのトランプ氏の認識というのと、共和党主流派の人の認識というのを違いとして、非常に大きな問題というのが発生しているのかなという気がしています」
反町キャスター
「この表で、人口比をつくっているんですけれど、ここから見えることというのはどんなことですか?」
西山教授
「1960年、2011年、2050年と、これは推計値ですが、それぞれの人種構成というのがどうなるかという話ですけれども、ざっと言いますと、1960年には人口の85%を占めていた白人、この場合、中南米系の人を除きますが、これが2050年には47%、過半数を割るということになっているわけです。これに対して中南米系の人達は1960年代には3.5%しかいなかったのが、2050年に29%になっていく。黒人の割合というのはほとんど変わりませんで、11%、12%、13%とほぼ横ばいで推移していくわけですね。たぶん2011年の段階のところを見ていただければおわかりいただけるように、特に中南米系の人口が黒人を上まわっていて、なおかつ今後も人口が増大し続けるという状態なわけです。このように人口構成が大幅に変化をするということになると、二大政党も当然、対応を新たにとらなければいけないということは言えると思いますね」
反町キャスター
「こういう人口動態、人口構成の変化を見越した政策を打つと。それがこれですか?」
西山教授
「こちらの図は大統領選挙の時に、民主党、共和党がどういった人々から票を獲得しているかという図ですが、これを見ていただければおわかりになりますように、非白人、黒人と中南米系がメインですが、アジアは5%しかいませんので、黒人と中南米系でもいいのですが、この割合を見ていただきたいですけれども、民主党の方は比較的多くのマイノリティから支持を獲ることができていると。これに対して共和党系の方は多くても10%ぐらいしか獲れていないという状態になっているんです。ですので、民主党というのはマイノリティの政党。共和党というのは白人の政党となっているようなイメージが一部の人達に持たれているわけですね。このような状況を考えると今後増えていくのは非白人だと。となれば、今後、民主党が優位な状況というのが長期的に発生していくのだろうか。それはまずいのではないだろうかという考え方が、共和党の中にはあったわけで、そこで共和党の人達は今回の大統領選挙の時に南米系の票を獲りたいというのを思ったはずです。そこで彼が期待したのは、ジェブ・ブッシュ氏やマルコ・ルビオ氏。ジェブ・ブッシュ氏の場合、兄のブッシュ氏が南米系の中で、支持率が非常に高かったということがありますし、ジェブ・ブッシュ氏の奥様はメキシカン・アメリカンなわけですね。マルコ・ルビオ氏の場合にはキューバ系のアメリカ人であると、こういうところでこれまで共和党は一貫して中南米系批判というのをやっていた。マイノリティに対しては必ずしもシンパシーを持っているとは思えないような態度をとってきたというところがあったわけですけれども、おそらく共和党の主流派は2014年の中間選挙が終わって以降、中南米系の方にすり寄っていこうとしていたような節があるわけです。大統領選挙もジェブ・ブッシュ氏か、ルビオ氏かという期待が高まっていたというところは、そういう期待の表われだったのだろうと思うのですが、こんなトランプ氏みたいな人が出てきて、主流派の方針というのは完全にちゃぶ台返しをしてしまった、ひっくり返してしまったということで、共和党の方はどうしたらいいのだろうなと思っているというのが1つの見えてくる姿かなと思っています」
反町キャスター
「人口のこういった、先ほどの円グラフ、人口割合の変化を見越した時、これはどう考えても、これまでの白人を軸とした投票、票田を相手にしたものだったら先細りだよというのは共和党の執行部はわかっているわけですよね?」
西山教授
「はい」
反町キャスター
「わかっているのだけれども、トランプさんが勝っちゃうことについて、共和党の執行部はコントロールが全然できないものですか?」
西山教授
「いろいろ難しいところがあると思うんですけれども、先ほど、マイノリティの人口が増えていると申し上げましたけれども、それは間違いないことなのですが、今日でも白人というのは人口の63%を占めているんですね。人口の63%ですけれども、中南米系や黒人の人達は有権者登録をしていない率というのが非常に高いので、有権者比率だけで見ていくと、白人は有権者の75%を占めているというところがあるわけですね。最近の研究によりますとマイノリティの人口、特にマイノリティの中でも中南米系の人口の比率が高い州では、共和党に対する支持率というのは、実は高いと。白人の中で、中南米系に対する反発というのは共和党に振れている現状があるということが明らかにされていますので、長期的に見るならば、マイノリティのことを考えた戦略というのをとっていくべきである。しかし、次の選挙ということを考えれば、白人の方をターゲットにした方が賢明かもしれない。これはある意味、合理的な戦略なわけですね」
反町キャスター
「トランプ氏が勝っていることについて、共和党の中にはもしかしたら、今回はこれでいいかなと思っている人達がいるかもしれない?」
西山教授
「仕方がないという」
反町キャスター
「有権者の75%が白人だとすれば、将来的にこの方法をやってもダメだとわかっていても、この方法をとりあえず今回の大統領選挙、ないし次の中間選挙ぐらいまではこれでいこうかという、そのへんの塩梅というのか、潮目をどう見るかについてははっきりした…現在共和党自身はすごく迷っているのではないかと。そこらへんのことは」
西山教授
「そうですね。現在のオバマ大統領というのは、言うまでもなく黒人の大統領ですので、かなり特殊な位置だったわけです。ですので、2008年並びに2012年の大統領選挙というのはマイノリティの人々の投票率というのが従来の選挙に比べて高かったわけですね。しかし、もし民主党の候補がオバマ氏であれば、マイノリティの人が投票する。かなりの割合で投票するということがあるかもしれませんけど、オバマでなくなった場合にどれぐらい投票をするかというのはよくわからないわけです。ですので、マイノリティの投票率がもし下がるのであれば、白人の比率というのは全体として増えるわけですから、そうなると、マイノリティを叩いて白人の票をかためようと。そうすれば、選挙には勝利できるのだと思っている人達が間違いなくいるだろうと思います」
秋元キャスター
「サンダース候補の公約はどのような支持層の共感を得ていると?」
安井氏
「支持者の構成でクリントンさんとサンダースさんを比較したものがあります。サンダースさんの支持の特徴は若者ですよね。若者の支持が非常に強いというのが、特徴になってきています。オバマさんもそうだった、若者の支持が非常に強かったと。オバマさんの再来というようなことを若年層だけ見れば、言う人もいる。サンダースさんの政策は大きな政府と言いますか、本人も暫く前までは社会主義者と言っていたぐらいに、アメリカでは稀にみる非常に大きな政府なわけですけれども、それを若い人達が支持しているというのが1つの大きな特徴になっていると思います。他方で、オバマさん(と同じ)か、というと違うところがあります。ワーキングクラス、白人というところが違います。今回サンダースさんの支持に白人がまわっているということですが、実は2008年にオバマさんが出た時には、彼ら、彼女らはクリントンさんの支持だったんですね。クリントンさんを支持していたワーキングクラスの人達が今度はサンダースさんの方になっていると。逆に人種でいうと、ヒスパニック、黒人のところというのはオバマさんの時にはオバマさんの支持だったのですが、今回クリントンさんの方にきているということで、サンダースさんの場合は、大雑把に言えば、若い人、ワーキングクラス、白人、所得で言うと、中間からやや下にあたる白人の人達が支持しているということです。何が共通しているか、経済的に言うと、先々に対して不安が強い人達。若年層は将来がなかなか見えにくいわけですね。非常に学費も高くなり、学生ローンもたくさん抱えて大学を出なければいけない。働いても最初はお金を返すところから始めなければならない。さらに言えば、日本ほどではないけれども、高齢化が進んでいる中で、将来的に自分達が年金をもらえるかと言えば、それはもらえない。将来的な自分達が見えない、片方はマイノリティ、非白人達が増えてきて、製造業が落ちていく中で先が見えない。そういう人達がこういった、ある意味では大きな政府というか、何かに守ってもらいたいというような政策に動いていると考えています」
反町キャスター
「高齢者やヒスパニック、黒人がヒラリーに留まったのか?」
安井氏
「高齢者の人達は所得再分配政策を強化してほしいとは思っていない」
反町キャスター
「アメリカの高齢者は皆、幸せなのですか?」
安井氏
「幸せであるということではないのですけれど、なぜかと言うと、彼ら、彼女らは既に社会保障政策の恩恵を受けているわけですよ。年金もありますし、アメリカの場合は公的な医療保険制度も高齢者と貧しい人にだけ。高齢者の方達は基本的にはもう恩恵を受けているわけです。これ以上広げるということは自分達が持っているものを自分達以外の人達に渡していくことだと。現状を維持してほしい。極端に増やしてほしいというわけでもないというところはあるのだと思います。もう1つは、高齢者の人達ですので、社会主義という言葉に対する記憶の違いです。社会主義という言葉の認識が違うと思うんですね。おそらく若い人達というのは、国に助けられるという意識もないのかもしれないが、もう少しコミュニティ的なものというか、社会的なつながりの中で助けられていく社会、それが社会主義というような…、年配の人達の社会主義、共産主義、ソビエト連邦という流れからくるものとは違う憧れのようなものが若い人達にある。その逆が高齢者にあると思います。人種の方は私もわかりにくいというのがあるのですけれども、そこは経済的なことだけではなく、いい難い人種的な問題もあるでしょうし、もともとはクリントンさん、クリントンさんの旦那さんです。クリントンさんの旦那さんは1990年代の後半、ある程度景気が良く、貧しい人でも暮らしが良くなる時代だった。その時、黒人、マイノリティの人達に対して親近感を感じさせる言動が多かったし、オバマさんが出る前には、アメリカの初の黒人大統領と言われるぐらい、黒人から信頼されている方だった。クリントン家というのは、マイノリティ、ヒスパニック、黒人の方々に支持されている人達だという歴史があるのだと思います」
冷泉氏
「サンダースさんの特殊性というのもあって、あまり報道されていないのですが、ユダヤ系というのが1つありますよね。それは黒人、ヒスパニックの人達には何だかんだ言ってエスタブリッシュメントに近いのではないか、マイノリティではないねという感じがある。もう1つは、サンダースさんというのは、東部でもバーモントですから、山岳地帯で狩猟とかが好きな人が多いので、銃規制に反対ですね」
反町キャスター
「民主党なのに?」
冷泉氏
「民主党なのに、ライフル協会に近いです。選挙の問題がありますので、あまり大きな声で言わなくなっていますけれども、それを敏感に察知していて、そういう意味で言うと、クリントン家の方が信用できるというのが強いみたいですね。サンダースさんはベトナム戦争の時から筋金入りの反戦左派ですから、退役軍人からすると耐えられないのかもしれませんね」
反町キャスター
「政治的な変革が1つのポイントだと。どう思いますか?」
冷泉氏
「格差は確実に広がっていますし、ただ、アメリカの強みというと先端産業ですね。たとえば、宇宙航空であるとか、IT(情報技術)であるとか、金融ですとか、食えるわけですよ。もしかしたら、トランプが言っている偉大なるアメリカというのは1990年代だと思うんですね。なぜ1990年代の満足度が高かったかというと古典的な製造業が残っていたわけです。それに二重構造として、ITとか、金融とか、新しい技術が乗っかっていたわけです。日本の経済が再生する時に、むしろ逆に時代を戻して、アメリカの1990年代的な、製造業の強みは残したうえで、それに金融とか、ITとか、先端のものを乗せて、経済を再生する1つのヒントがあるような気がしますね」
西山教授
「日本とアメリカで大きく違うところがあるという気がしまして、日本の場合、何だかんだ言って政策の立案は官僚に投げてしまうところがあるわけですよね。これに対してアメリカの場合、連邦議会の議員自身が多くのスタッフを擁して、政策をつくろうとしている。そういう試みというのをある程度、民主党政権の時にしておけばもしかしたら可能性があったのかもしれないとういう気はしなくはないですけれども、そもそも取れる選択の余地がないということが大きいのかもしれない」

西山隆行 成蹊大学法学部政治学科教授の提言:『冷静な対応を』
西山教授
「アメリカの政治、社会事情を踏まえた冷静な対応をしてほしいということであります。日本の場合は、アメリカの大統領が民主党よりも共和党の方が親日的でいいという、根拠が薄弱な議論がかなり流行ってしまう。それがアメリカに伝わって、悪い印象というのがつくられてしまうというようなことがあるわけです。そういうことはかなりの程度思い込みに基づく議論なわけです。アメリカの場合、政党は綱領政党でもありませんし、党議拘束もない。なので、民主党だから、共和党だからと言うことで政策が変わったりするということはあり得ない。ですので、そういうような状況を踏まえたうえで、冷静な対応をしていただくことが必要なのではないかと思っています」

安井明彦 みずほ総合研究所欧米調査部長の提言:『謙虚』
安井氏
「3つの意味があります。第1点は、誰が大統領になっても日本はアメリカと付きあわなければいけないと。アメリカの大統領というのはアメリカの国民が選んだわけですから、真摯に、謙虚に付きあわなければいけないというのが第1点です。第2点は、もしそれがトランプ氏であった場合、その背景にある経済的な問題、経済的な閉塞感というのは日本にも起こり得ることであると。そういった意味で、アメリカ人はちょっと変なことをするよねということではなくて、自分達の問題として現在抱えている経済の問題を謙虚に受け止めなければいけない。もう1つ、そうなった時にどうするか。政策を謙虚にやるということだと思うんです。1つ、1つの政策には、いいこともあれば、悪いこともある。何がいいことなのか、どういう結果が出ているのか、エビデンスを持って、謙虚に政策をやっていくことが必要なのだろうと思います」

作家・ジャーナリスト 冷泉彰彦氏の提言:『アメリカの「ブレ」に振り回されるな!』
冷泉氏
「とにかくアメリカがブレまくっているわけで、右へのブレ、左へのブレというのがあるわけですけれど、特にトランプさんの発言でいうと、日本に対していわゆる軍事費を負担しろとか、あるいはアメリカの雇用を奪っている、やっつけろと言うわけですが、これに振り回される必要はないと思うんです。特に雇用の問題で言えば、日本がアメリカの雇用を奪っているというのは完全に時代錯誤で、1980年代的なレトロ感覚で言っているだけですから、これはまったく真に受けることはないし、これからいろいろ形でまだまだ大統領選挙が続いていくわけですから、いろんなブレがアメリカから出てきますけれども、むしろ中国も含めた、今年は国際経済が非常に揺れる年だと思うので、こちらを本筋で見ながら、日本の今後の進路というのを冷静に判断していただきたいと思いますね」