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2016年3月4日(金)
震災5年…福島の未来 覆われた真実とは何か

ゲスト

井上信治
環境副大臣 自由民主党衆議院議員
竹内純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員
開沼博
福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員

福島 直視すべき『現実』 被災地の復興は今
松村キャスター
「色別に分かれているのですが、ピンク色は、放射線量は高いレベルにあり、特別な許可がなければ立ち入りができない帰還困難区域です。黄色が将来的に住民の方が帰還を目指して除染が実施されている居住制限区域。緑色が、復旧、復興のための支援策を迅速に実施し、住民の方が帰還できるための環境整備を目指しているという避難指示解除準備区域となっています。開沼さんに聞きたいのは現在、これらの、それぞれの区域はどのような状況なのでしょうか?」
開沼氏
「帰還困難区域は長期的に帰れないということで、周りを除染している。まさに、今日のテーマですけれども、ということです。中でも楢葉町、昨年の9月に、半年ぐらい経つわけですけれども、やっと帰れるようになりました。ただ、帰れるようになったけど、帰っている人が5%、6%でとどまっているという理由が、町に行くと結構、栄えている。何で栄えているかというと除染であるとか、原発の廃炉作業をする方が住み始めています。一言ではなかなか言えないですけれど、ただ、いわゆる復興がただ遅れているという紋切型で語られがちですけれど、そういう話ではないということまで見ていかないと、細かいところを見ていくことが重要かなと思っています」
反町キャスター
「それは進んでいるところも進んでいないというか、この場合まったくやっていないところもあるわけですよね。そこのところの進捗状況によっていろいろあるよという情報がきちんと伝わっていないという意味で言っていますか?」
開沼氏
「おっしゃる通りですね」
反町キャスター
「なぜきちんと進んでいる部分は進んでいると情報が伝わらないのか。これはどういうふうに見ていますか?」
開沼氏
「状況の進捗が意外と早過ぎる。その都度その都度です。今週1週間、たとえば、飯館で牛が育てられるようになりました、第1原発の中にコンビニができましたよとか。そんなことがポンポン入ってきて、おそらく興味を失った一般の方にはなかなかそういう状況は伝わっていないと。それで何となく、こういう節目に福島のことはまだまだ進んでいませんと、かわいそうな人達です。何も手つかずなところだけ撮りに行くみたいなことになっていく。だから、何が進んだのかということをちゃんと拾い上げて、でも、進んだからハッピーというわけではなくて、ここに課題がありますよと言っていくべきだと思いますね」
反町キャスター
「つまり、報道やらが、広く言うと人々の関心が悲しい話をほしがっているのであって、進んだよという話には関心を示さない。できるだけ報道をしない。そこにすごく問題があるという話に聞こえます」
開沼氏
「それはそうですね。だから、悲しみを拡大することによって風化を防ぐ。それはそれで1つだと思います。ただ、今日のテーマになってくると思うんですけれど、それが風評を助長してしまっている側面はあるのではないかと思いますね。だから、善いことと悪いことをちゃんと区別していくことが第1段階。悪いことをどう進めていくか。それはこれまでも結構、やってこられたと思います。あと、一方、良いことが進んでいるのであれば、褒めていくということです。それはそれで良い成功事例が被災地で出ているんだみたいな捉え方ということも必要になってくると思います」
反町キャスター
「褒めるって難しいですね」
開沼氏
「難しいです」
反町キャスター
「特にこの件に関しては、でも、この件に関してはという意味で言っていますね」
開沼氏
「はい」

『除染』実態と展望
松村キャスター
「除染作業の進捗状況を見ていきたいと思います。復興が進まないと言われている除染の遅れですが、除染が終了しているのが緑の部分。実施中が水色。さらに、まだ手つかず状態となっているのが赤の部分ですね。帰還困難区域と言われているところです。井上さん、この除染の進捗状況をどのように見ていますか?」
井上議員
「もともと帰還困難区域というのは現在も放射線量の高い地域ですので、その前に緑のところ、これをやっていこうということになっていまして。震災から5年ですが、来年度までの6年間で、これを終わらせようという計画で、ずっとやってきていまして。おかげ様で現在11市町村の中で6市町村では除染が終わりまして、来年度の目標に向けて、着々と進めていくという状況にあります。ですから、その意味では、開沼先生の、だいぶ、いきなり深い話から入られましたけれど、それを遅いのか早いのか。評価はそれぞれあると思うんですけれど、5年経ちましたので、地元の皆様の理解とか、それから、我々もやり方を習熟してきまして、そういう意味では、計画に則って現在着実に実施しているということになります」
反町キャスター
「進行中の部分、ないしは手つかず部分。いつ頃まで終わらせる予定という、スケジュール感というのは出ているのですか?」
井上議員
「はい。進行中のところは来年度までということで」
反町キャスター
「来年度ということは来年の3月いっぱい?」
井上議員
「終わらせようということで計画を立てて、それに則ってやっています。それから、赤いところの、帰還困難区域ついてはその後、帰還困難区域に手をつけていこうということですから、そこの計画についてはまだ策定していません」
反町キャスター
「策定していない?」
井上議員
「していません」
反町キャスター
「策定していないというのは、それはどう理解をしたらいいのですか?あまりにも汚染が酷くて、どうやっていいのかわからないという意味なのですか?」
井上議員
「それもありますけれども、段階的にやっていくということで、これは除染に限らず、復旧、復興も同じことでありまして。そういう意味で、まずは帰還困難区域以外のところをしっかりやったうえで、帰還困難区域をどうするかを考えていこうということにしています」

『除染』どこまでやるべきか
反町キャスター
「井上さん、地区別の除染の進捗状況、ないしは先行する地区、後発の地区。いろいろあるとして、現在の話を聞いて、この土地を除染するという時に何をもって除染を行ったというのかという、その完成度というのか、除去の具合を、何をもって除染したと言い切るのか。ここの部分、ちょっと聞いていきたいと思うんですけれども、完成度というか、ここは除染しましたというのは、たとえば、住宅地を除染すれば終わりなのか。住宅の周りを除染すれば終わりなのか。それともその後ろにある森林まで除染をしなければいけないのか。そういう意味において除染のマニュアルというか、定義というか。それはどうなっているのですか?」
井上議員
「まず住宅であるとか、あるいは学校とか、病院とか、そういう大事な生活圏を優先して除染します。住宅の周り、たとえば、山であれば、住宅の周り20メートルまでは除染していこうということになっています。一律にやります。そういう中で、さらに、その外側をどうしようかということについては、たとえば、ホットスポット的に、非常に線量が高いとか、あるいは山の中でも里山的に20メートルより外でも、住民の皆さんが入っていくようなところであればやりましょうとか、そういった基準を細かく決めています」
反町キャスター
「その意味で言うと、そこにもう1度生活の拠点を移すことについては、障害にならないようにやっている?」
井上議員
「はい。それは住民の方々の生活が1番大事ですし、そのことによって、帰還していただこうということですから、それを中心に考えています」
反町キャスター
「開沼さん、いかがですか?現場をまわられていて、極端な例ですが、私はあの山にあるマツタケが好きなんだよと。そういう人が採りに行けるような環境まで、そこまで戻さなければいけないのでしょう、たぶんね。そういうところまでの住民の要望と、除染の実態、ここには乖離はあるのですか?ないのですか?」
開沼氏
「あると思います。筋論的にはもちろん、元に戻していくというのが筋論である。そこに至るまでの、そもそもそこの山をいじっていいのですかと。合意形成をどうとっていくのかとか。そこで出たゴミをどうするか。ますます増えるのかとか。予算はそもそもどうするのだと。それは税金がかかってくる部分、あるいは東電が負担する部分というのも出てくると。そこをどれだけ見ていくかという議論がたぶん本来はなされるべきであるのに、そうではないと。ある種、合理的に進められる部分だけ進めて、そうではない部分は後まわしと住民側から見えてきてしまうし、なんなら要望に応えてもらえるのではないかという感覚は、最終的に不満を残してしまうというのが現在の構図だと思います」
反町キャスター
「やってはいるけれども、除染の定義や除染の限界というのが、戻ろうとしている住民にとって不安であり、不満であるという、実態があるということですか?」
開沼氏
「はい」
反町キャスター
「そこは井上さん、そのへんはどう把握されているのですか?」
井上議員
「それは住民の方々にもいろんなご意見もあるし、あるいは地域によって状況も違いますので、それぞれの地域、地元の方々と丁寧に対話をしながら、どうやって除染をしていくかということを考えていくというのがすごく大事だと思っています。ですから、我々は当然のことながら一定のメニューがあって、基準はありますが、その中でよく対話をしながら除染を進めているということになります」
反町キャスター
「実態では、たとえば、先ほど言われたみたいに住宅、ないしその周囲20メートル。ないしはそこから先の部分、裏山を全部やってほしいと言われてもできないのか、ないしは住民から要望があったら、それはやるのか。ここはどういう状況になるのですか?」
井上議員
「もちろん、限界はあります。それはそもそも技術的に除染しても、放射線量をどこまで下げることができるかという、そういう限界もありますし。あと山について言えば、表土をはぎとったりするとかえって、山が荒れてしまうとか、あるいは土砂崩れの恐れが出てくるとか、そういうデメリットもあるんですね。ですから、そういったことも丁寧にご説明したうえで、住民の方々の理解をなるべく得る努力をしています」

『除染』1mSvめぐる波紋
松村キャスター
「住民の早期帰還に向けて進められている除染ですが、除染と言えば、目標値を巡り、丸川環境大臣が先月、自身の講演で言ったこの発言が波紋を呼びました。『国の除染の長期目標、年間1ミリシーベルト以下は何の科学的根拠もなく、時の環境大臣が決めた』と、このように発言をしました。丸川環境大臣、後日、全て撤回しますと発言を撤回しているのですが、竹内さん、この発言、どのように受け止めましたか?」
竹内氏
「文脈全部を存じ上げているわけではないので、どういうご主旨でおっしゃったか、想像するしかない部分が当然、あるんですけれど、1ミリという数字が決まった、その経緯を考えると、そこに科学的な議論があったのだろうかという疑問を持たれる。これはたぶん当然のことだろうと思うんですね。平成23年の9月28日に、内閣府、環境省が出していた地元の自治体に説明をされていたのは、年間5ミリシーベルトです。それ以下のところはホットスポットのようなところ、場所を選んで除染をしていく。放射線防護のリスクは全体的なリスク・コミュニケーションとか、そういったものを含めて、全体的にやっていくと。5ミリ以上のところというような、5ミリという数字を置いていたわけですけれども、地元の方達から強い不安の声が出された。その5日後、10月2日でしたか、1ミリ以上はやりますと。時の環境大臣であられた細野(豪志)さんがおっしゃった。その間に、国として科学委員会か何かを開いて議論をしたか。していないわけですよね。ですので、そういった経緯がどういった科学的根拠、議論があったのだという疑問を持たれていたのがお言葉に出たのではないのかなと想像はしています」
松村キャスター
「井上さん、長期目標の年間1ミリシーベルト。この科学的根拠はどこにあるのでしょうか?」
井上議員
「これも大臣が説明されているようにICRP(国際放射線防護委員会)の考え方ということで発表されていますから特に回復・復旧期にあたります。これが1から20ミリシーベルトということで、これを目指していくのだということですから。そういう意味では、これが根拠であるということになりますね」
反町キャスター
「つまり、それで言うと、現在の福島の状況というのが平常時、回復・復旧期、緊急事態期から言うと、普通、回復・復旧期ですよね、それで、要するに、1ミリ、回復・復旧期はICRP、国際機関によると1ミリシーベルトから20ミリシーベルト、年間ですよね。それが、要するに、回復・復旧期において許容範囲であるとしたにも関わらず、日本の先ほどの、細野大臣が決めた時は1ミリシーベルト以下というのは、これは何かICRPの基準を引用しながら、ICRPの基準に従っていないように見える部分というのは、これは間違いですか?」
井上議員
「ICRPの基準も1から20とそれだけを言っているわけではなく、そのうえで住民の方々の生活様式とか、あるいは意向を考慮したうえで、その範囲で設定すべきだということを言っていますから。そういう意味では、ICRPに準じていると思っています」
反町キャスター
「準じている?僕はそこがわからない。竹内さん、どう見たらいいですか。ここの話だと、1から20だったら、現在の福島はこの範囲かなと思っていたのだけど、現在の井上さんの話だと、1以下の平常時のゾーンを基準とするのが正しいという、どちらなのですか?」
竹内氏
「長期的に目指していくというものに書かれているんですね。ですので、長期的にという時間軸がどれぐらいのスパンかと言いますと、数十年ぐらいかけて平常時を目指していくものだというので、平常時の1ミリシーベルト以下を目指すのだという、ここの点は科学的な根拠として、確かにICRPも出している。日本が現在それを目指し、かなり急いでそこを目指しているというような形かもしれないですね。そういう理解がいいのではないかと思います」
反町キャスター
「このICRPの三角形、いろいろわかりやすくすると、こうなるんですね。竹内さん、日本人は普通に住んでいると、年間2.1ミリシーベルト、自然被爆ですよね、すると。そのうえで今回、追加被爆、福島における追加被爆というのは、年間1ミリシーベルト以下を目標としましょう。年間目標としてということで。足しあげる3.1ということになるわけですよね。この3.1というのが、どういう意味なのかと言う話を考えると、レントゲンやら、何やらと、こう考えていくと、どれがわかりやすいのか…キャビンアテンダント、ニューヨークを5回往復すれば1行ってしまうよと。こういう話、ないしはよく僕も受けたりしましたけれども、CTスキャンはもっと大変な被爆量になってしまうよと。こういうことを考えた時に、今回の、その2.1足す1の3.1というのが、科学的根拠がある線かどうか。この議論というのは現在、どう我々は受け止めたらいいと感じますか?」
竹内氏
「あくまで安全と危険の境目に、この1ミリシーベルトというものがあるわけではないというところはあるかと思いますけれども、ただ、目標値は1つ持たなければならない。でき得る限り低く抑える、これは当然必要なことだと思う。ただ、たとえば、地域差によっても、それから、例示で出していただいたような生活行動であっても被爆をすることはあるので、追加で1ミリぐらい許容しましょうという考え方がとられているというようなところであります」
反町キャスター
「他の、たとえば、放射線の事故があった地域などと比べた場合、この日本の1足す2.1で3.1ミリシーベルト/イヤーというのが、長期目標としているこの目標設定というのは、これは普通なのですか?厳しいですか?」
竹内氏
「事故があったところと言ってもあまり違いはないですね。ただ、十分に日本はICRPの基準を準用して十分に厳しいというか、かなり厳しい。ただ、除染、あるいはそういったものの目標というのは結局、放射線リスクを下げることですよね。放射線リスクを下げる手段は、除染だけではないわけです。先ほど、大臣がおっしゃられたように、それこそリスク・コミュニケーションでありますとか、食品管理であるとか、その情報を共有して、危ないところがあればそこに近づかないといったようなところ。そういったところで総合的に防護していくところがあって、除染というのは、その中核であるというところですので、これを1つの核として、放射線防護、リスクを下げるということを全体的に考えていくことが必要なのだろうと思います」
反町キャスター
「訴訟リスク、あんたらがいいと言ったから帰ったんだよと、住民から訴えられるのが嫌で、我々としては1ミリ以下を目標にがんばっているんですよと。それでよろしかったらお帰りくださいと。帰ったうえで何かトラブルがあった時に訴えられたとしても、我々は1ミリ以下を目標にがんばっていると、訴訟リスク(の回避)に見えてしまう。そこはどう感じますか?」
開沼氏
「そういう見方もできるでしょうし、でも、合意形成をとりながら進めていくという見方で、そこまで穿った見方をしている方ばかりではないと」

『風評』実態と対策
松村キャスター
「福島をめぐる主な反応ですが」
開沼氏
「グーグルで、東京と検索すると、『東京 グルメ』と一緒に検索されているものが出るのですが、『福島 農家』と検索すると、今日調べてきたけれども、『福島 農家』で『人殺し、テロ、死ね、食べない』という言葉が出てくるんです。マスメディアにはもちろん、載せられないですけれども。だから、そういう感覚で、福島の農業の問題とかが語られてきてしまっているというのがこの5年間の結果です。そこをどう改善していくかということを、現場にいたら気づくわけです、なかなかそこに手をまわすことができない。外の人が気づいて、支援することも今後、必要なのかなと思っています」
反町キャスター
「ネットでの風評被害、震災直後と比べて広がっているのですか?収束の方向へ向かっているのですか?」
開沼氏
「定量的に調査したわけではないですけれども、感覚値になりますけれど、数としてはもちろん、減ってきた。いろいろデータとかを見たら、安全の部分はある、という方が増えてきている。一方、少数の方が先鋭化してやっている。だから、このゴミ拾いのボランティア、国道6号線の道路で、全部染量をはかって、子供には危ないところはやらせませんよというのに、1000件以上の電話、メール、抗議のファックスがくるというのが、5年目近いところで起こったというのが象徴的で、これまでそこまで過激なものはなかったのかなと思います」
反町キャスター
「どういう人達がやっているのですか?」
開沼氏
「これは丸川大臣の発言で、『放射能のあの人達が』という言い方がありましたので、もちろん、政府の立場でそんなことは言えないでしょうけれども。これは住民の立場からしたら、確実にそういう人達が福島の風評を煽っているというのがありますし、それを槍玉にあげるということがなかなかできない空気があったのかもしれません。つまり、放射線への不安というのは当然であろうと。私達は政府に対して反抗しているのだから、言論の自由は守られるべきだといった話にされてしまう。ただ、それはそれで正しいのかもしれないですけれども、それが結果として住民に対して2次被害をもたらしていることはもうちょっと知られていいのかなという状況ですね」
反町キャスター
「地域住民の人達の耳にも届きますよね。どういう気持ち…」
開沼氏
「寝た子は起こすなという、それ故に表面化しなかったですが、やっとここ3か月ぐらいでこの問題、言ってしまえば、差別問題について取り上げていくということが、やっとです。ヘイトスピーチの問題、それは相手にするだけ相手が元気になっちゃうよというレベルの議論だったのですけれども、それだけで、そろそろ問題のフェーズが移ってきているのかなと」
竹内氏
「福島の地元の方達は自分のこととして放射線のリスクの話、かなり情報を勉強され、リスクの避け方、リスクの捉え方というところの知識レベルもかなり上がっているんですね。足りなかったのは、それ以外の地域で離れたところにいる人達で、反原発からくるのかもしれませんけれども、福島は危険だという断定的価値観を持つ方がいて、そういった声が逆流してきて、地域の方を揺さぶるというようなことで、地域の方達は歯を喰いしばって、そういうのを我慢してこられたわけですが、そこは正していくように、政府もこれまでリスクコミュニケーションで、現地の方達にこういうご理解をしていただこうというようなことで、現地を向いていましたけれど。むしろ現在は福島の方達というよりは東京のエリアの人間、あるいは圏外の人間、海外に向けての発信というところにパワーを割いていくことが重要だろうと思います」
井上議員
「そういう意味で、悪意的な考えでやっている方がいるのであれば大変残念なことだと思います。ただ、どうしても本当に心配してしまうという方もいらっしゃいますから、先ほど、おっしゃったようにリスクコミュニケーションをこれまで以上に、丁寧にしっかりやっていくということだと思っています」

『賠償』格差と区切り
松村キャスター
「これまでの賠償のあり方をどう見ていますか?」
竹内氏
「原子力損害賠償制度というのはいろいろな課題はあるのですけれども、今回、わかったもっとも大きな課題というのは事故を起こした東京電力と被害者の個対個の賠償という普通の損害賠償の域を出なかった。出られない制度なわけです。原子力災害の1つの特徴が地域、コミュニティを破壊してしまうと。個対個の賠償では回復し得ない被害をもたらしてしまう。本当は事故当初に早い段階で、災害補償的な形で地域コミュニティの復活というところの手当てが考えられるべきだったのではないかと。それを福島の問題は原子力災害の話なので、原子力損害賠償法という法律に則って賠償という個対個の賠償の金額で被害を回復するというところに頼ってしまったが故にコミュニティの回復が遅れているところがあるのかなと思います」
反町キャスター
「個人賠償で1人あたり月10万円が入り続けるというシステムが、復興・復旧に向けての方法としてどうだったのだろうか。これでよかったのかについてはどう感じていますか?」
開沼氏
「現状、こういうふうになった結果についての検証は難しいと思います。個別にこれでも足りないという方もたくさんいるでしょうし、そうではなくてモラルハザード的になっているという方もいるのではということは、被災地の中でも言われ始めているのは事実です。これは福島だけに限らないと思っています。重要なのはこれからどうするかということで、まずは東京電力が1人1人最後まで賠償をしますという言い方をしている。これはやってもらうのは当然ですけれども、そのうえで、お金に換算できない様々な損害があったということですよね。たとえば、会社があって、事業所をやっていると。工場をやっているところが双葉町あたりに戻れるようになりました。戻りましたという時、震災前と同じ状況なのかというと、まったく違うわけですね。たとえば、サプライチェーンが違うとか、工場の原料の入れ方が変わってしまったというところまで面倒を見るというのは、それはお金の問題ではなくて、どういう形で新しいビジネスをつくっていくのかとか、どういうふうに生活とのワークライフバランスを整えるのかという話になってきていて、ここはむしろお金というよりかは個別の対応、工夫をしていくということですね。ニーズを聞き取っていくというのが必要な状態になっている。国がやり始めていることの1つで、官民合同のチームが、8000社ある双葉郡の地元の企業に個別にインタビューをしていくことをやっています。どういう落としどころになっていくかまでは私は把握していませんけど、こういう策をちょっとずつやっていくということが重要だと思います」
竹内氏
「帰還3要件というのがありまして、まず除染、インフラ整備ですね。たとえば、医療であるとか、介護施設が戻る、買い物できる場所が戻ってくる。そういったインフラ整備、住民との協議というのが帰還3要件と言われているのですが、そのあと生業の支援というのが当然のことながら必要になってくる。その生業の支援というところに対して、官民合同チームというのがヒアリングをずっとしていたところ、これまでもっていた事業を継続したいという事業者のパーセンテージが4割ぐらいいらっしゃるとことがわかってきた。ここからの落としどころ、確かに見えないところがあるのですけれども、ここから具体的に資金調達や、ファイナンス支援のスペシャリストの方に官民合同チームに入っていただいたり、たとえば、販路の拡大というところで新規事業のスペシャリストみたいな方にも入っていただいたりしながら、多角的に支援をしていく体制に今後官民合同チームを高めていくことが求められていて、ここは政府の方もきちんと対応しようということで組織をされていると伺っています」
井上議員
「おっしゃる通りだと思います。もちろん、賠償などのお金による支援も必要ですけれども、それ以外の支援というのも非常に重要だと思っていますので、それは両方やっていかなければいけないと思っています。住民の方々1人1人からすればなかなか金銭的な面と、そうでないお金に代えられない問題と両方ありますから、それに対応した支援をやっていくというのがすごく大事なことだと思います」

井上信治 環境副大臣の提言:『希望』
井上議員
「原発事故から5年が経って、5年経つと避難されている方は、避難生活にある意味、慣れてしまって、では帰るか、帰らないか、そういうのを悩んでおられる方もいる。自分達の故郷は将来どうなっていくのだろう、そこがまだまだ見えない。そういう時期に差しかかっていると思うんです。だからこそ現在被災者の方々に希望を持っていただこうというのがすごく大事なことだと思っていまして、そのために、我々、当然できることを一生懸命にやっていますが、それだけではなく、これからの将来像というものをしっかり示していく。その将来像に向かってどういう計画で、どうやっていけば、しっかり被災地を取り戻すことができるのかということを示していくということが大事だと思います」

竹内純子 国際環境経済研究所理事・主席研究員の提言:『タブーに挑む』
竹内氏
「この言葉は、プライムニュースにもよく出演されていた澤昭裕、私の所属している国際経済研究所の所長をやっていてくださった方なのですけれども、12月に出された提言の福島復興のタブーに挑むからいただきました。福島の問題を語るというのは、ある意味とてもタブーになってしまっている、皆が触れないで、ステレオタイプのようなことだけ申し上げている議論にとどまっていたのではないかと。ただ、そうしてしまうことが福島の人達にかえって失礼な、あるいは申し訳ないことをしていたのではないかという気がしまして、私もこのテーマで出させていただくことを悩みましたけれども、タブーに挑まなければ問題は打開できないと思いまして、タブーにこれから挑んで、5年に何か意味があるわけではないのですけれども、区切りがあるというのは1つ大事なことだと思うので、5年を区切りに皆でタブーに挑むことが必要なのかなと思います」
反町キャスター
「障害は何ですか?」
竹内氏
「メディアにお願いしたいですが、福島県内の方とSNSでつながっていたりするので、福島のメディアの情報なんかも入ってきたりするんです。ただ、福島で報じられていることが東京でほとんど報じられなかったりする。たとえば、3月1日の福島民報には、ホールボディカウンターを受けた方が28万人いて内部被爆の累積染量が1ミリシーベルト以下の方が99.99%でした、というようなニュースであるとか、昨年11月には福島高校の高校生が、県内の高校生と県外の高校生、あるいは海外の高校生の外部被爆染量を比べて、そこに有意の差がないというような論文を放射線防護の専門誌に投稿、それが掲載された。これはすごいことだと思うんです。東京のメディアでは全然報道されていない。そういういい進捗を是非、東京のメディアでも、反町さん、お願いします、報道していただければなと思います」

開沼博 福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員の提言:『最後は社会的合意形成』
開沼氏
「たとえば、現在、廃炉の汚染水をどうするかとか、長期的に見れば、あそこにある建屋とか、崩したらどこに持って行くのか。中間貯蔵の話はさらに難易度の高い社会的合意形成が待っていますので、昭和の時代だったら、迷惑施設にはお金、補助金とかを出して、ある程度、強制執行とかをしていけた時代だったかもしれませんけれど、現在はそうではないと。そういう選択をしている中で、必要なのは社会的合意形成をどうとっていくかということ。ここから政治家の方も、あるいは私達研究者も逃げてはダメ。まさにタブー化してしまうんですよ。ここを語らないでいると合意形成ができない、そこにどう挑んでいくのかというのが5年目以降の課題だと思います」