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2016年3月3日(木)
『アース』なぜ売れる 女性市場の攻略法とは

ゲスト

石川康晴
ストライプインターナショナル代表取締役社長
楠木建
一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授

『アパレル業界の異端児』に聞く 『イノベーション』と経営戦略
秋元キャスター
「日本の衣料品、アパレル市場の推移を表したグラフですが、緩やかな縮小傾向にあることが見てとれるのですが、このような中、石川さんが社長を務めているストライプインターナショナルは、創業以来、成長を続けています。ストライプインターナショナルの売上高と経常利益の推移と経営上の大きな転換点をまとめたものです。1994年に岡山市内で特定のブランドだけでなく、独自のコンセプトで選んだ商品を店頭に置く、いわゆるセレクトショップをオープンして創業したストライプインターナショナルですが、最初の転換点は1999年でした。後の主力ブランドとなる『earth music&ecology』を立ち上げ、自社ブランドの製品を製造から小売りまで手がけるSPA、製造小売業に業態を転換しました。赤字に転じていた経常利益を翌2000年に黒字回復させています。2つ目の転換点が2002年。この年から駅ビルへの出店を開始し、落ちこんでいた経常利益がV字回復と。前年比5.5倍となっています。次の転換点が2010年で、主力ブランドのテレビCMを開始します。この年の経常利益を見ますと、グッと上がっているわけですけれども、石川さんに話を聞く前にまず様々な業界の戦略、取り組みを研究してきた楠木さんから見て、石川さんの経営というのはどこかすごいのですか?」
楠木教授
「まず成長性ですよね。しかも、たとえば、スマートフォンとか、新しい分野になると成長している日本の会社は失われた何十年の中にもあるんですけど、石川さんのところは利益も伴う成長。ビジネスとしてきちんと稼いでいる。儲かっているところですね。それと、たぶん今日のテーマだと思うんけれども、それがイノベーションによって起きていると。成果がもたらされていると、ここがすごいところだと、僕から見てそう思いますね」
反町キャスター
「言葉の定義から。イノベーションと言いましたよね。よく安倍さんも好きで、イノベーションという言葉を使うんですよ。イノベーションというと革新とか、進歩という言葉として言われるんですけれども、この場合のイノベーションはどのように理解したらよろしいのですか?」
楠木教授
「そこはすごく大切なところで、今日はそれだけを言いに来たようなもので、つまり、進歩ではないということです。何がイノベーションというのは、イノベーションでは何でないかで考えるとはっきりするわけで、進歩ではないのだと。進歩というのは、ものごとがどんどん良くなるということです。たとえば、車の燃費がどんどん良くなる。スマートフォンがより軽く、薄くなって、充電池が長く持つ。そういう進歩というのは、日進月歩というぐらいなので、特に技術の世界だと起きているんですけれども、イノベーションは何が違うかというと非連続な現象です。つまり、もっと薄くなりました。もっとよくなりましたではなくて、何がよいかという、その問題にフォーカスする価値の物差しが変わると。これがイノベーションで、よく新聞とかで、イノベーションというとカッコ書きで、技術革新と訳される。これはこれでいいんですけれど。僕にとってよりしっくりくる日本語は路線転換です。これまで皆がいいと思っている路線を転換すること。これがイノベーションのいい訳だと思っているんですよ。イノベーターというのはご存知だと思うんですけれども、路線転換者ですね。ですから、その点で、石川さんはこの業界で路線を変えてきた人。何がいいかを変えてきた人ですよ」
秋元キャスター
「石川さん、1999年の路線転換。SPAへの転換に踏み切った背景というのは、なぜ転換をしようと思ったのですか?」
石川氏
「まず1つは赤字になった。このまま、いわゆる欧米からのセレクトショップを続けていっても、会社が持続、継続的に進歩をしていかないのではないかと。立ち位置を大きく変えて、製造から小売りまでのビジネスモデルをつくった方が、かなり強い会社、成長できる会社になれるのではないかなと。ただ、一方で、セレクトショップというのが、非常に利益率も低く、いろいろ大きいセレクトショップ、小さいセレクトショップを見ていても、規模はある程度大きなところはあるものの、利益率だけでみると、本当に小さな会社ですね。僕はこの事業、ビジネスモデルを切り替える時というのは、ベネトンというブランドを参考にしたんですけれども、当時、GAPだとか、ベネトンだとか、欧米のSPAは非常に利益率が高かったので、利益率が低いセレクトショップから、利益率が高い製造小売りのビジネスモデルに切り替えた方が、組織が持続、継続的に伸びるという判断で、大きく変えました」
楠木教授
「この製造小売りというモデル。SPAというのは、業界全体にとってもともとあったやり方です。僕はむしろ業界全体にとってのイノベーションで言うと、その3年後ですか、これまでとちょっと違った売場をつくっていくという顧客接点の方が、ついつい僕はクロスカンパニーと言ってしまうんですけれど、現在ストライプインターナショナルですけれども…」
石川氏
「3月1日付で社名変更しました」
楠木教授
「ストライプインターナショナルの最初のイノベーションだと思うんですね。
反町キャスター
「3年後というのは駅ビル進出のことですか?」
楠木教授
「つまり、ああいう洋服を売るのにいい場所。こういうのがいい売場なんだというのが、それまでずっとあったわけです」
反町キャスター
「それはどういう場所なのですか?」
楠木教授
「それはご説明いただけますか。カジュアルな、若い人の…」
石川氏
「もともとはパルコとか、ラフォーレが、若い人がファッションを買う場所。私達も岡山で1号店を出した。2号店はラフォーレに出しましたので、ファッションビルの戦略を1999年から2001年までやっていたんですけれども、2002年に駅ビルに打って出るんですね。当時の駅ビルは、非常に有名なブランドがなくて、かなり40歳向けのミセス的なブランドがたくさんありましたし、一部、着物屋とか、ドラッグストアが入っていた。まったく現在のルミネやアトレのようなハイセンスな駅ビルはほとんどなかったです」
秋元キャスター
「商店街みたいな感じだったのですか?」
石川氏
「まさに商店街に近い形ですね。その中で、駅ビルに店を出すというのは、実は、社員は大反対をしまして、ここの経営判断というのもかなり強引に進めてきました。アパレルの大先輩からは、石川はもう終わったと。駅ビルに出した瞬間、かなり言われました」
秋元キャスター
「それでも駅ビルに進出した、その理由は何だったのですか?」
石川氏
「ただ、利便性が良いことです。改札を抜けたところに商業施設があるわけですから。そこがもし品揃えだとか、有名なブランドであるとか、どんどん良くなって入ってくることが起きたら、どんな立地よりも1番誘引性が高いですよね。そう時代が来るのではないかと仮説を立てました。一方、JRの投資予算を見ていると、駅ビルのリニューアルがどんどん進んでいった時期だったんですね。これらをミックスさせていくと必ず駅ビルは進化をすると。そう捉えて、早目に投資を入れていこうと決めました」
反町キャスター
「それはある人から、終わった、と言われたとありましたけれど、勝算どうだったのですか?」
石川氏
「駅ビルに2週間視察に行ったんですけれど、平日の昼間は案外、ビジネスマン、特に男性が多くて、ここでは商売にならないなと思ったんですね。ただ、一方で、土日に行くと、比較的若い、我々のセグメントあたりの人がいるんですよ。でも、買っていない。では、買えるものが入れば売れるのではないかと。そう考えました」
反町キャスター
「最初から土日勝負の場と見たわけですね?」
石川氏
「まずは」
反町キャスター
「平日は無理だと」
石川氏
「我々が成功事例をつくれば、アパレルメーカーの出店も追随してきますので、最終的には優れたメーカーが集まって、1つのファッションビルが、駅ビルが生まれ変わると。そこを期待しながら、一緒に駅ビルと二人三脚で、最初の3年間はやってきました」

CMの期待と効果
秋元キャスター
「一方で、ブランドイメージを前に非常に出したなというのが2010年に開始されたテレビCMですけれど、いわゆる洋服を全面に出すCMというよりはふんわりしたイメージを出しているなという感じがしましたが」
石川氏
「まず1つは、マス向きのテレビCMをアパレルメーカーがやることに対して、社内では反対がありましたし、また、同業者の社長に少し探ってみたんですね。CMをどう思いますかと。全て1000億円以上の同業者です。絶対にやめた方がいい。ブランドの価値が下がると」
反町キャスター
「価値が下がるのですか?テレビコマーシャルを打つと」
石川氏
「と言うことを当時、言われました」
秋元キャスター
「あまりCMがなかったですよね?洋服のCMは」
石川氏
「ただ、僕には仮説があって、認知度と売上げにある程度、相関があると思っていたんですね。当時、認知度調査をして、earth music&ecologyはたった17%しか、ターゲット、すなわち20歳から30歳の女性の認知度が17%しかなかったんです。当時、ユニクロは95%ありました。認知度を上げない限り、売上げが上がらないと思って、認知度を上げるにはCMが効果的だと。さらにマーケットがITに動いてSNSで、結構、当時だとTwitter、Facebookよりmixiが流行っていて、どのようにお客様がざわざわ言ってくれるのか。また、GoogleやYahoo!で検索ということも、お客様がそういう時代だったので、我々はクロスメディアという考え方で、CMは1つのきっかけで、たとえば、earth music&ecology半角、宮﨑あおい半角、歌うと打ってもらうんですね。そうしたらearth music&ecologyのCMが出てきます。そういう作業をお客様にしてもらうためのCMをつくったというのが、最初のCMで、すなわちF1層に接触するためにテレビCMだけでは…」
反町キャスター
「F1というのは10代女性」
石川氏
「10代から20代前半ですね。このあたりの層に接触するためには、いったんCMがきっかけになるのだけど、検索をしてもらうということを一緒に考えたプロモーションが我々のテレビCMだったんですね。
反町キャスター
「テレビというメディアで何かをしようと思ったのではなくて、結局、勝負を賭けたのはインターネットですよね?」
石川氏
「そうです」
反町キャスター
「スマートフォンで勝負を賭けたということですよね?」
石川氏
「当時はまだガラ携の方が多かったですけれども」
反町キャスター
「そこの部分、メディアミックスというのですか」
石川氏
「そういうことです」
反町キャスター
「テレビを舞台に、消費者の気持ちをちょっとくすぐっても、彼らに、本当に食い込んでいくのはインターネットの世界だと。ここの部分、何年ですか、2009年ぐらいにその判断をしているんですよね?」
石川氏
「2009年に判断をして、2010年から打ち込んでいました」
反町キャスター
「2009年でそこまでのメディアミックスをしたうえでの営業戦略というのを、本人を前にして言ってもしょうがないけれど、社内で議論があったのですか?それとも誰か社外の人とか、いろんな形でブレストとかをやりながら浮かんでくるものですか?」
石川氏
「これも、ちょっと追い込まれた状況がありまして…」
反町キャスター
「この時は営業、300億円とか、400億円の売上げの時ですよね?」
石川氏
「2009年にearth music&ecologyの前年比が割れているんですね。これは2002年から右肩上がり過ぎて、競争相手が全部、earth music&ecologyになっちゃったんですよ。いわゆる商品の模倣。後発ブランドが模倣戦略に出てきて、earth music&ecologyがあまりにも売れているので、真似をし始めたんですね。すなわち商品の差別化がとれなくなってきた。でも、たぶんこれはどんどん商品化しても追いつかれるだろうと。であれば、戦略というのは、商品戦略だけではないので、プロモーション戦略も競争相手と差別化をつけていこうと。特に、競争相手よりも高い認知度を勝ちとれば、お客様は同じものだとすれば、高い認知度のブランドで買うと読んで。この時に12億円の投資をかけたのですが、ブランドがまだ120億円ぐらいでしたから、10%も広告費をかけるんですね。当時、アパレルの広告費というのは2%が標準でしたので、通常の5倍をかける大勝負に出たのですが。会社の経常利益が50億円出ていましたので、会社は潰れないということで競争相手を引き離すための戦略として大型投資に踏み込みました」

イノベーションの秘策とは
反町キャスター
「普通、企業が大型投資というと店舗拡大、インフラ整備、そういう後に残るものでだいたい勝負をするのかなと勝手に僕は思っているんですけれども、普通、そうではないのですか?」
石川氏
「投資のゴールというのか、投資のKPIというのは、売上げ、利益とか、店舗数だけではなくて、今回、僕達が引いたのは認知度ですね。認知度さえ上がれば良し。そうすれば、結果的に売上げがついてくるはずだと。認知度だけをずっと見ていました」
反町キャスター
「社内におけるそれというのは、社長がいこうと言ったら、ついていくものなのですか?」
石川氏
「賛成しないです。CMがブラックボックスだという議論もあって」
反町キャスター
「そんなことテレビ局を儲けさせるだけだよと」
石川氏
「外れた事例をたくさん出してきますね。ただ、一方、当たった事例もたくさんあるんですね。それを両方調べた。その結果、どちらとも言えないという結論ですよ。これは五分五分だと。僕は、実はJRの事例を最後に、判断に使ったんですけれども、国鉄からJRに移る時に、各JRがすごくCMの投下をしたんです、そうしたら、それまでみどりの窓口が、サービスが悪かった国鉄時代に比べて、CMでJR、JRとやった瞬間、一気にサービスが上がったんですね。たぶん認知度だとか、プライドとか、そういうことだと思うんですね。ですから、CMを打つことによって、認知度が上がるかどうかは五分五分だけれども、社員のプライドだとか、社員の家族が、社員に対する評価、すなわち有名なブランドの中で働いているということが勝ちとれるのではないのかなということで、最後の経営判断は社員のモチベーションを上げるということが最後の1票ですね」

日常着のレンタルサービス 『メチャカリ』の狙い
秋元キャスター
「アパレル業界の常識を打ち破る経営戦略で売上げを拡大してきたストライプインターナショナルですけれども、最近はアパレル以外の事業への進出でも注目をされているんです。主な事業をご紹介しますと、earth music&ecologyなどのアパレル事業の他にハンドクリームなどのケア商品ですとか、アイスクリーム。宅配クリーニングにも進出していて、さらに、アパレル業界で反響を呼んでいる『メチャカリ』という日常着のファッションレンタル事業ということですけれども、石川さん、『メチャカリと』いうのはどういうビジネスなのですか?」
石川氏
「これは月額5800円で、新品の服が借り放題。先ほど申し上げたearth music&ecologyも含めて、現段階では5ブランドが借り放題。だいたい5000点の中から、好きなものを借り続けることができるというのがこのサービスですね」
反町キャスター
「5800円。毎月、払うと5ブランド5000点の中から、インターネットで選んで、それを注文すると家に送られてきますよね。それを着て、洗って返すのですか?」
石川氏
「いや、そのまま返してもらいます」
反町キャスター
「何日間、借りていようとタダなのですか?」
石川氏
「タダです」
反町キャスター
「それは1度で何点まで借りられるのですか?」
石川氏
「1度で3点まで」
反町キャスター
「つまり、1点返せば、次の1点、また借りることができる?」
石川氏
「そういうことです」
反町キャスター
「それは、返す時には費用はいくらかかるのですか?」
石川氏
「500円です」
反町キャスター
「それは返送料?クリーニング代?」
石川氏
「いや、お客様が返す送料の500円。ただ、我々がお客様に届けるのは無料です。ですから、返してもらう時だけ、お金をいただいていると。送る時は我々が負担しているというビジネスモデルですね」
反町キャスター
「SPAでしたか。メーカーがレンタルに手を出すというのは、これは初めてのケース?」
石川氏
「世界で初ですね」
反町キャスター
「楠木さん、これも路線転換のうちの1つになるのですか?」
楠木教授
「これはその極みですよね。つまり、何でそういうことをやる人がいないかというと、皆、やってはいけないと思っているから」
反町キャスター
「そうですよね。僕だって、売れるものを貸すのだったら、利益、自分のクビを絞めていることになるのではないかと、普通、思いますよね」
楠木教授
「ただ、もうちょっと引いて見てみると、冒頭にあった、現在のアパレル業界の規模が右肩下がり。これまでの服を、お店とか、Eコマースで選んで、シーズンがあって、買うという、ここまでの路線で言うと、皆、満ち足りているわけです。だから、洋服以外にもいろんな楽しいことがあるし、だから、こうなっているわけで。近づいて見ちゃうと、これまでの事業と食い合ってしまう。どうかなということで皆やっちゃいけないと思っているのですが、もうちょっと俯瞰して見ると、これこそ僕は、洋服を買うのにお金を払うということの何がいいのかが変わると思うんです。これまでの所有とか、お買い物をして精神が高揚するとか、自分のものとして着るというのかな。もっと石川さんに聞いていただきますけれども、試してみるとか、新しい可能性に挑戦するとか、普段だったら買いはしないけれども、着てみたいと。『買う』と『着る』ということを分離するということが、僕は、この事業の本質だと思っています」
反町キャスター
「『買う』と『着る』の分離というのはどういうことですか?」
楠木教授
「これまでは要するに、所有なわけですね、お洋服は。ところが、考えてみるとファッションは着て、楽しいものなので、もしかしたら、こちらの方がもともとのファッションという価値に、ストレートな答えを与えていると見ることもできますよね」
反町キャスター
「石川さんのところでつくる服のお客さんが増えていないという前提に立った場合、これまで買っていた人が借りるようになるわけではないですか。そうすると、服の売上げ自体が減るのではないかという、これはどうなのですか?」
石川氏
「僕達は2つの仮説があって、1つは、放っておいても、IT業界を含めて、レンタルサービスがやってくるので、我々が自分の店の売上げが下がってでも先にやらないと、ソニーが配信サービスに乗り遅れたように、我々も負けてしまうと。IT業界にこのままだととられてしまうと」
反町キャスター
「IT業界も服のレンタルを始めると考えているのですか?」
石川氏
「ええ。まず1つは。もう1つは10代前半の子達が、たとえば、ゲームにお金を使ったり、ライブにお金を使ったりしてファッションを可処分所得の中で使わなくなってきているというデータがあって、この子達を育てていかないと、ファッション業界は次がないなと思ったんですね。ですから、若干、自分達の直営店が減ってでも、10代前半の子達がもっとファッションビルや駅ビルで展開しているブランドをたやすく着られるようなサービスを提供しなければいけないと思って。どちらかと言うと、エントリーなユーザー。すなわち高校生、中学生3年生ぐらいの子達を育てなければいけないという想いで、このサービスをやったんですけれども、蓋を開けてみたら、なぜか50代の有料会員が結構いるんですね、お母さんです」
反町キャスター
「自分で買うのが負担になる人?負担ではないのかな。お金のある人達、どちらなのかな?」
石川氏
「いつも、たとえば、ファーストリテーリンググループのGUだとか、その他、ファストファッションで安いものを親と一緒に買っていた子達が、駅ビル、ファッションビルにあるearth music&ecologyをたった5800円で借りられるということになると、中高生の本人よりも親からするとお得感があるんですね」
反町キャスター
「50代の人は、自分が着るのではなくて、娘の分ね」
石川氏
「すなわちお母さんが毎月7000円、8000円、娘に服を買っていたのを、たった5800円で終わるわけなので、お母さんからすると非常にヘルシーです。娘からすると何着も借りるので、さらにファンションビル、駅ビルのブランドを借りられるということで、喜んでもらっていると」
秋元キャスター
「コーディネートとかも教えてくれるのですか?」
石川氏
「コーディネートの写真が何百パターンもありますので、コーディネートとして見ている人もいます。すなわち最初はレンタルを始めると直営店売上げが下がると思ったんですけれど、毎日コーディネートを見にきているので、買う人が増えてきているんです、店で。レンタルでお金を払っている人は、実は我々(の店)で1回も買ったことがない人が多くて。すなわちエントリーユーザーがかなりとれているんです。ですから、このサービスというのは非常に面白い構造で、これまで私達の店で買ったことのないお客様の65%がお買いになっている現状と、残りの35%、我々の店で買ったことがあるんですけれども、店で買う売上げも変わっていないという現状があって、直営店も落ちていない。新しいお客様が入ってきている。我々は最悪のケースでは、直営店が下がると思っていたのですが、現在その現象になっていないので、非常にポジティブな展開」

イノベーションが起きる環境は?
秋元キャスター
「安倍総理は、『供給面での天井に、今我々はぶつかろうとしている。民間の投資とイノベーションを拡大して、生産性を上げていくことが求められている』と述べていますが、安倍政権の経済政策はイノベーションを促すものになっていると思いますか?」
楠木教授
「供給面での天井という意味がよくわからないのですけれども、実際の天井は需要面にあるわけですよね。ほしいものが現在の状態だとない。それに対して新しい需要を喚起するというのがイノベーションですから、イノベーションは供給サイドよりもより需要に深く関わっている問題だという理解なのですけれども。ただ、それを政府の政策的な意思決定で左右するということはあまり期待できないと思いますね。と言うのは、進歩であれば、それは何がいいかと、価値基準が共有されているので、もっとよくするために、こういう補助金にしようとか、資源投入する時に正当性を獲得できるんですよ。イノベーションは、定義からして何がいいのかが変わってしまうので、それはすごくコンセンサスを社会的、特に政治的には得にくいことです。だから、政治的な文脈でイノベーションと言っているのは、99.9%が進歩のことを言っているので、そういうことをおっしゃっているのだったらいいですけれども、せっかくイノベーションという言葉を踏み込んで使うのであれば、何がいいのかが変わるというところまでいかないと、需要が生まれないと思うんですよ。と言うのは、いいという点では、我々は全ての面で満足をしてしまっているので、これ以上スピードの速いパソコンとかは要らないですよね。ですから、プラスアルファの需要は生まれないですよ。それを政治的なコンセンサスで推し進めようとするのはまず不可能。つまり、これまでの常識から言ったら、やっちゃいけないことなので。公的な資源、税金を投入できるでしょうか。僕はしない方がいいと思います、もちろん、リスクも高いですし、イノベーションは大切なのですが、そういう路線転換ができる発想なり、行動力がある人が個々の企業で勝手にやるべきで、政府ができることは邪魔しないこと。省庁レベルでの縛りがありますよね、業界の。そういうものを、もちろん、必要なものもありますよ、必要な規制もありますけれども、なるべく新しいことをやろうとする人の邪魔にならないように、規制みたいなものを整理していくということで、もっとできることはあると思います」
石川氏
「実は小売業界は生産性が非常に悪く、先進国の中でも日本というのはブービー賞ですね。売り方がこの20年まったく変わっていないというのがあってですね。ICタグを入れて、棚卸しが2時間で終わるようなシステムを入れるとか、今回の『メチャカリ』もそうですが、『メチャカリ』というレンタルサービスは24時間、勝手にシステムが働いてくれています。通信販売のウェイトも上げていっていますけれども、これも24時間働いてくれますね。こういうEコマースとか、ITを使って、もっと我々、小売業界も生産性を上げていく。ITにもっと投資をかけて、マーケットも喚起していきながら、そこであがった利益を現場の職員に労働分配していくと。そうすることによって、会社の生産性も上がり、従業員の給料も上がり、さらに会社の純利益も上がっていくので、ここに小売の経営者は踏み込んでいかなければいけないのではないかなと思っています」
反町キャスター
「この話が何で日本において進まないのですか?」
石川氏
「小売の業界において、ITのリテラシーが低いと思っています。最近、セブン&アイがオムニということで投資を入れてきたりしていますが、まだまだIT業界から見ると、非常に遅いことをやっているなということだと思いますね」

『全員正社員』廃止という選択
秋元キャスター
「全員正社員の制度を廃止したのはなぜですか?」
石川氏
「創業からの約20年、アパレルでは非常に珍しい全正社員制度というのを貫いてきたのですけれど、なぜ廃止にしたかと。働き方が多様化してきているということですね。具体的に言うと、地方に住んでいる短大生、専門学生が正社員だけを求めていないということです。日本男性はまだまだ比較的正社員を求めていますけれども、絶対に地元で働きたいとか、趣味、たとえば、バンドをやりながら働きたい。正社員になると週休2日しかないし、限られた時間しか練習できなくなる。であれば、働きたいのだけれども、自分の趣味の時間をとろうとしたら、正社員制度しかないストライプインターナショナルでは働けないと。そういう意見を、かなり座談会を持って、2年ぐらいで集めていったんですよ。全正社員制度というのは日本の社会にとっていいことだとやり続けてきたのですけれども、ただ、近年、若い人の考え方が大幅に変化してきて、こういう全正社員100%というのは、経営のエゴではないかなと思って、そこを1つの判断に、昨年の2月に経営判断として20年続けてきた全正社員制度を1回廃止して、2割アルバイトの枠を広げて、そうしたら一気に社員は難しいけれども、ストライプで働きたいという若い人達が集まってきて、充足率が8割ぐらいしかなかった会社が一気に100%に上がってきた。さらに入ってきたら、この会社がいいということで社員登用試験を受ける人が増えて、すなわちこの制度は体験入社のような制度になっている。1回、インターンシップだとか、アルバイトで入れてあげるということもこれから企業がやるべきだと思っていて、イメージとしたら、半年アルバイトで働いてもらったら、会社の環境は全部わかるので、ぜひ社員登用試験を受けてくださいというのが我々のスタンスですね。ですから、バイトを雇って利益を上げたいということのための制度廃止ではなく、我々の会社を見てもらうため(というのが)全正社員制度を廃止した理由になります」

女性の活躍と経営戦略
秋元キャスター
「ストライプインターナショナルは女性が全社員の94%、男性は6%。管理職も女性が65%いるということですが、女性の力を大事にされているのですか?」
石川氏
「そうですね。レディースのブランドが大半を占めていますので、レディースのブランド事業部の様々な判断というのがありますよね。たとえば、広告をうつですとか、この商品をつくるかですとか、そういう判断のできる女性を置いておかないと。そういうところまで判断ができないけれども、職歴の長い男性を置いておくとデザインも変な方にいきますし、広告宣伝も変な方に行きますので…。なので、判断のできる人を意思決定のところに入れていくのを繰り返しているだけですね」
反町キャスター
「必要なことは何ですか?査定制度ですか?」
石川氏
「細かいことを言うと腕を組まないとか、指を指さないとか、足を組まないとか、女性に対して圧力的な態度を男性がしないという、女性が意見を言える場をつくるということですね。さらに女性の育児、家事について理解してもらわないと、男性がそのへんを理解しないととんでもないことを言い始めますので、イクメン取得率も重要になってくる」
反町キャスター
「イクメン取得率はどのくらいですか?」
石川氏
「95%。会社が働きかけてやっています」

石川康晴 ストライプインターナショナル代表取締役社長の提言:『多様性』
石川氏
「多様性というのを日本の企業に提案したいと思います。まだB to Bを中心に、大企業は女性の管理職比率が非常に低いですね。1ケタのところも多いです。また、海外の現地法人を見てもかなり日本から派遣している職員が多く、海外の現地法人の役員クラスが現地化できていないという現状があります。また、大きな意思決定を男性がしていくという傾向があるので、もう少しいろいろな人がいろいろな意思決定に関われる組織を日本はつくらないと、真のグローバルということに組織が向いていかないのではないかなと思っています」

楠木建 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の提言:『誰も頼んでいない(イヤならやめろ)』
楠木教授
「これは自由意志。商売の1番大事な原則だと思うんですね。時々、経営者の方で『せざるを得ない』という人がいるんです。グローバル化せざるを得ないとか、多様性を高めざるを得ないとか、こういう分野に進出せざるを得ないとか。酷いケースになると、イノベーションをやらざるを得ないと。『せざるを得ない』と言い出したら商売はおしまいなので、僕はそういう方に誰に頼まれたのですかと聞きます。誰も頼んでいないですよね。イヤならやめろという話なので。商売の原点、これがイノベーションにとって大切なことで、今日の石川さんから学べるポイントとしては、イヤならやめろと申し上げたいですね」