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2016年2月29日(月)
G20会議米中欧の思惑 中国経済政策リスクは

ゲスト

田中修
日中産学官交流機構特別研究員
津上俊哉
現代中国研究家 津上工作室代表
矢嶋康次
ニッセイ基礎研究所経済研究部チーフエコノミスト

検証!G20財務相会議 世界経済『下方修正リスク』
秋元キャスター
「一昨日発表されたG20の共同声明のポイントを見ておきたいと思うんですけれども、世界経済、為替、さらには経済政策と3つの項目に分けて、それぞれ発表されているんですけれども、まずはこの中の世界経済について見ていきたいと思います。世界経済については、経済見通しが、さらに下方修正されるリスクが増している。最近の市場変動は、世界経済の実態を反映していないと、このような発表だったんですけれども、矢嶋さん、この2つの項目をどう見ていますか?」
矢嶋氏
「実際、私も経済見通しをつくる立場ですけれど、明らかに1月につくっている時点よりも、これから先を考えた時に、下方リスクというのを意識せざるを得ない状況になっていると思います、そういう意味では、この認識は正しいと思いますし、それから、もう1つ言えるのは、実態経済の動きに比べて、株価、為替の動きは非常に激しいので、ここで出てきている市場の変動は世界経済の実態を反映していないというところについても、その通りだと思います」
反町キャスター
「田中さん、この2点ですけれども、世界経済全体に関するここの部分の感想を聞きたいんですけれども、経済見通しが、さらに下方修正されるリスクが増しているという表現であるとか、世界経済の実態を現在の市場変動は反映していないという、この世界経済をめぐる共同声明をどう感じていますか?」
田中氏
「中国経済に関して言えば、もともと下方リスクというのがずっとあって、高度成長が終わって、中成長に向かって移行過程なので、潜在成長率が落ちているわけです。ですから、今後5か年の成長率の平均目標をもっと下げようとかという議論もあるぐらいで、高度成長が終わった以上はポテンシャルが下がってしまう。しかも、現在世界経済が弱含みなわけですから外需も弱いですね。それから、投資も現在そんなに伸びていませんので、中国は消費が支えているような経済ですから。そういう意味で、以前のようなリーマンショック以後の高い成長というのは到底無理だと思うんですね」
反町キャスター
「津上さん、いかかですか?世界経済に関する、この2点の表現。どのような気持ちで見ていますか?」
津上氏
「もう少し時間軸を長くとって見ると、リーマンショックから大ダメージを回避して、回復したと言っていたけれども、ここへきて、これだけ調子が悪くなってくるのを見ると本当に回復していたのかなというところをもういっぺん問い直さなければいけないのかもしれないし、原油が(1バレル)30ドルまで落ちるというのは2003年以降BRICSというだけでワーッともてはやされましたけれども、中国がその中で1番大きいんだけれど、その中国だけではなく、BRICS全体についてもバブルっぽい部分があって、そこが剥げ落ちるということもきているのかな。それと何か回復していると思って、利上げを再開したらそんなことはなかったということになっていてそういうふうな動きはまずいことになる。バイオリズムの周期が全部ここに2016年の頭のところで揃ってしまったというようなところがあるような気がするんです。何かそこに皆の読み違いというか、みたいなものがあって、重なってというか、同じタイミングで出てきたしまった、そういう間の悪さみたいなものを、私は感じますけれども」

中国・人民元の安定化策は
秋元キャスター
「G20共同声明の為替についての2つ目は、通貨の競争的な切り下げの回避。中国の人民元の動きですけれど、昨年8月の人民元切上げ以降、一時、上向いたのですが、そのあとも元安が進み、少し上向いている状況ですけど、最近、人民元が暴落するのではないかという危機感も出ているということなのですが、津上さん、この人民元安の要因、どこにあると見ていますか?」
津上氏
「折れ線に色をつけたものがありますけれど、これが上を向いている時は、マーケットはこれから元高になると予測して外貨を元に変えておけという動きが中心になっていることを示しているんです。逆もまた真なりで、下へこうなっている時は、これから元安だという、そういうムードになっているということなのですが、これを見ていただくと2014年の第2四半期ぐらいから、かなり一辺倒に、元はこれから安くなるというムードになって、特に昨年8月の元の切り下げ騒ぎあたりから、ドカーンと大きな流出が起きていると。これは資本流出と言って、皆、不安がっているのですが、このグラフからわかることっていくつかあって、1つは、2014年の第2四半期は何があったんだっけと言うと、不動産が全国的に、北京、上海まで含めて、どうも、あかんということになった時期です。そういう時期なので、政府はまた投資のアクセルを踏んで景気を下支えというのが、これまでのお約束だったんですけど、どうも習近平さんはそれをやらない。ニューノーマルと言っていると。あれはやらないという意味だよねということで、それは政策的に正しいと僕は思いますが、経済の先行きということに対して、それから、ドッと悲観論が高まったんですね。それ以降は何か急激に人民元が安く振れているということは、これは何を意味するかと言うと、ここからは私の推論ですが、現在起きている為替の大きな投機というのは、取引は誰がやっているのかということに対して、1つの示唆を提供してくれていると。それは、要するに、やっている中心は中国人。中国企業だということです。反応が早過ぎるんですよね。外国人がやっているにしては。そういう観点から見ると、ホームメイドの為替投機なんだと私は思っています。かつ、そこで何のためにやっているのかということなのですが、国内でよく言われているのは、これは中国だけではなくて、他の国もそうですけれども、お金がじゃぶじゃぶのアメリカのQEといった時代にドルの借金を相当たくさん短期でやっているんですね、中国企業も。他の国でもそうだけれども。そういう人達が、これから先、元安だってと。これは早めに繰り上げ償還をしておかないと、償還負担がどんどん膨らむよねということを思って、じゃあ、現在のうちに還しておけというので、必死に外貨を調達して、それで借金を返そうとしている。これが現在の元売り、外貨買いの大きな動力になっていると言われているんですよね。(中国人民銀行総裁の)周小川さんもインタビューで、それに近いことを言っているんです。だから、現在こういうふうなグラフから、我々が1番知りたいことは何かというと、現在の元安の流れというのはどんどん弾薬が補給されて、永遠に続く投機なのか、それとも暫く待っていれば、峠を越えて収束していくような性格のものか。どちらなのかということですね。中国の当局者は、これはいつまでも続く話ではないと言っているんですね」
反町キャスター
「待っていれば、また、戻って来る?」
津上氏
「だから、要するに、外債をとにかく繰り上げ償還というのが、だいぶ返し終わりましたよということになれば、おそらく収まるでしょうと」
反町キャスター
「将来的な元安を見越すとか、そういうところで投機的な動きが、もし、あるとすれば、たとえば、中国当局が頚城を解き放つというか、自由化をする。もしくは、大きな変化を加えて、そこで1回冷やすとか、そういう手段というのはとらないものなのですか、中国は」
津上氏
「むしろ実態はこの1年間、逆に動いたんですね。要するに、大きな物語としての金融自由化というか、規制緩和で人民元はそれによって、ドル、ユーロと並び国際通貨に出世をしていくという、あちらの方の路線に従って、むしろ規制緩和を重ねてきているものだから、だけど、元安。先は元安だよという地合の時にそうやって規制緩和をすれば元は安くなるのは当たり前です。ところが、安くなられては困るということになっているものだから、現在、莫大な量の介入をやっているわけです。これは自国の通貨が切り下がる方向に介入をしていったら、それこそ今度のG20でアウトと言われるんだけれど、そうではなく、切り下がらないように買え支える介入ですね。それはどこも非対称だけれども、それは大目に見ますという感じですよね。要するに、切り下げ競争になられると本当に世界は大変なことになるから、それをやってもらっては困るけれども、人民元は、むしろ暴落をしないように買え支えているのでしょう。それはいいかみたいになっているんですよね。何かマーケットを介入で歪めちゃいけませんと言うのだったら、どちらもダメだということになるはずだけれど、元高防止の介入はけしからんけれども、元安を防ぐための介入だったら大目に見ましょうみたいな。そこが非対称ですよ」
反町キャスター
「中国単体で見た場合に、元安はデメリットばかりですか?」
津上氏
「いや、だから、たとえば、輸出産業とか、そういうことを考えるとメリットもあるはずだけれど、この2年間ぐらいの中国経済を見ていると、金融当局とか、為替当局というのは驚くほど、輸出産業には冷たいですよね。為替が高くて、採算が苦しくて大変ですという人達に対して同情心がほとんどないです。為替とか、金融の当局には。むしろ強い人民元が出世をしていくだという、そちらのストーリーの方がずっと強くって、ああいう国の製造業は気の毒だなと見えるぐらいだったんですね」
反町キャスター
「田中さん、いかがですか?そのへんよくわからない。中国全体として元安はそんなに困ったことなのですか?」
田中氏
「いや、まさに労働賃金が上がっているので労働集約型産業と輸出が昨年ぐらいからマイナスになってきているんですね。以前は非常に強かったんですけども、マイナスになってきていると。そうすると、確かに元安になれば、労働集約型産業の苦境はかなり解消できるというのがあって…」
反町キャスター
「そうすると、かなり回復するのではないかと」
田中氏
「一方で、人民元がジリジリと2005年から上がってきている時に、いわゆる構造改革路線の人達は、日本の例でも、円高で、日本はがんばって、経済構造を構造替えしたのでしょうと。ぬるま湯でやっているといつまで経っても古い体質が直りませんよということで。ある程度、元高を受け入れながら、構造を高度化していく努力をしなさいという、そういう論を張っていたわけです。日本がまさにそうだったではないですか」
反町キャスター
「日本は円高の時に、そんなに強くなったのですか。円高に結構、我々は苦しんだ。うまく構造改革が進んだのですか?日本は」
田中氏
「たとえば、日本(円)が(1ドル)360円から380円に落ちた。そのあと、産業はアメリカに近づいたわけですね」
反町キャスター
「そちらの円高ですね」
田中氏
「まさにほとんど固定だったところから、グンッと変動をしていく世界に現在、移ろうとしている。そこで現在どうしようかというところですから。日本の1970年代前半の世界ですよね」
反町キャスター
「直近の1977年までというのは、あの時の円高の話ではなくて」
田中氏
「なくてです」
反町キャスター
「そうすると、日本のストーリーをそのまま持っていく時には、元安については、国としてはそちらで輸出競争力をもう1回高めようという話にならないのですか?」
田中氏
「それはそういう人達もいると思いますね。輸出産業を代表する人達はやるべきだし、ただ、一方で、そういうことを、ずっと日本でも1ドル360円を長くやっている時というのは、そこはある程度、ぬるま湯だった部分があるので、多少そういう元高圧力というのがないと、中国の、本当の産業の高度化が進まないのだと思っている人もいると。ただ、そこは、まさに景気が本当に悪くなっていけば、景気も元安の方がいいのではないかとか、相対的にまた強まってしまうのでしょうけど」
反町キャスター
「矢嶋さん、1点だけ。中国が元安にならないであろうという前提ですが、中国が一気に元安に進んだ場合に、世界の経済、通貨に対する影響はどうなるのですか?」
矢嶋氏
「これが昨年の8月、一挙に通貨安の方向に振りましたね。日本も、ヨーロッパも。だから、そういう意味で、世界の経済の第2位ですから。そこが思い切り為替の調整を一挙にやってしまうと、他の国がそれの煽りを受けるという形になるので、影響がないということは絶対ない。影響が大きいと思います」
反町キャスター
「それは今回のG20 の、この言いぶりというのもやめてくれよと」
矢嶋氏
「それが本音だと思いますね。中国がすごく動いたことに対して、日本は小さいですから、対応できないというぐらい大きいですね。だから、大国が大きなシフトをした時は、まさに慎重にやってほしい。そういう意味で、アメリカもそうですし、今回の中国もそうですし、皆がそういうところに対して、懸念を出して何とかしてくれというお願いをしたというのが、今回のG20だと思いますね」
反町キャスター
「そういう微調整というか、微修正というか、ちょっとしたお願いごとをずっとやっていけるわけでもないですよね?」
矢嶋氏
「はい」
反町キャスター
「いつの日かはわかりませんけれども、完全な為替の自由化をしなくてはいけないと皆、わかっているんですよね?」
矢嶋氏
「はい。わかっていますが現在、皆、足元が苦しいので何とか、現在苦しいのに、さらに重いものというのはちょっと勘弁してというのが、今回のG20の本音。各国の本音ではないですか」

『全ての政策手段』&各国の思惑
秋元キャスター
「2つ目の経済政策について見ていきます。成長、金融安定の強化に向け、金融・財政・構造改革など全ての政策手段を用いると。金融政策のみでは均衡ある成長につながらない。機動的に財政政策を実施。構造改革の早急な進展は中期的に潜在成長力を高めると、このようになりました」
反町キャスター
「矢嶋さん、まず金融・財政・構造改革など全ての政策手段を用いると、書いてあることは美しいですけど、全ての政策手段を用いるということは、これでやるよと各国連携し、この点で、1点集中で、皆でやるというメッセージは伝わってこないのですが、これは、つまり、各国ばらばらで思いついたことからやっていこうと。こういう理解でよろしいのですか?」
矢嶋氏
「何か起きたら、手を結ぶということは今回コミットしたと。逆に言うと、まだリーマンのあとのようなことが起きていないので、各国事情が違うでしょうと。その中で、自分達でやれることはきっちりやってくださいよというのがこのメッセージだと思います。金融・財政・構造調整はどこの国でも当たり前にやる話なので、当たり前のことを書いていると思っていただいた方がいいと思いますね」
反町キャスター
「表を用意しました。矢嶋さん、説明していただきたいんですけれども、現在言われた金融・財政・構造改革と3つありますよね。一応大まかに分けると4極に分けたのですが、たとえば、金融緩和に関してのスタンスというのは4極それぞれどういうふうに、同じなら同じで、違うなら違うで、ちょっと説明していただければと思うのですが」
矢嶋氏
「金融緩和というと、たとえば、現在、日本はマイナス金利です。EU(欧州連合)もマイナス金利ですね。中国はどちらかというと緩和気味という意味では緩和の方向に向いていますけれども。アメリカは現在、利上げをしていますから、そういう意味で、金融緩和と言いながら、世界の中でのバランスというのは違うことが起きていますね。その中で金融政策という言葉を書こうとすると、いろいろ各国に配慮した書き方になるということだと思いますね。たとえば、財政のところも現在お話あった中国が出るか出ないか。でも、周りの国からすると中国から出してほしい。中国で出してほしいという期待がありますね。期待値。EUは、日本から見ると、たとえば、アメリカも同じですけれども、ドイツはすごく黒字なので、現在こそドイツがやらないで、いつやるのというのがあるんですけれども、ドイツ自身は全然やる気がないというか、そういう意味では、各国期待が高いですね」
反町キャスター
「期待値は高いけれども、本人にやる気はない?」
矢嶋氏
「はい。まったくないです。アメリカもインフラとか、かなりボロボロというか。日本からするとあれはやらないとおかしいでしょうという意味でも期待値は高いですけども、ここも現在、選挙とか、いろんなのがあって、なかなかすぐ動くというのもちょっと難しいというのが現実です。という意味で、日本は逆に言うと、世界から見た時、すごく赤字な国なわけではないですか。でも、何となく国内的にはやりたくなってきている状況になってきているので」
反町キャスター
「それは選挙だからでしょう?」
矢嶋氏
「そうですね。そういう意味では、ちょっと各国が思っている思惑となかなか違うので。そうすると、財政についても各国が他の3極を見る見方と、自分のところの見方、実情が全然違うので、やれることをやりましょうという言葉にしか、たぶんならないのだと思いますね」
反町キャスター
「金融政策のみでは均衡ある成長につながらないという部分というのは、これはアベノミクス批判に見えちゃうんだけれども、違うのですか?」
矢嶋氏
「先ほどの大きな世界の図で見ると、アメリカは現在、ドル高で困っている時に、EUもマイナス金利でどんどん突っ込む。日本もさらに突っ込むと言っていますので、これ以上やって、アメリカ1極だけにお金が流れて、ドル高になるというのを、世界的に回避をしたいというのもたぶんコンセンサスとしては出てくると思いますので、金融政策だけではなく、たとえば、財政もやってちょっと内需を拡大して、世界経済をよくしましょうと。そちらのストーリーも少し考えましょうねというのが今回、出てきている。そういう意味ではニュアンスが変わってきていると思うんです」
反町キャスター
「日本に財政出動をしたがっている人がいるとすれば、これはチャンスになるわけですね?」
矢嶋氏
「まさにフォローというか、風は吹いたと思います」
反町キャスター
「結果、日本の借金がさらに1000兆円が1300兆円になろうが他の国々は心配をしないのですか?」
矢嶋
「今度G7で日本が議長国になるではないですか。今回、G20で財政のところで協調がとれたと皆思っていますので、これはG7でも同じ議論になると思うんです。そうすると、議長国の日本が何もしないというのは、ちょっとなかなか難しいですよね。そうすると、財政拡大を、選挙もありますから、考えている方からすると、外から言われたのもあるし、やるのでしょうみたいな議論がおそらく必要あると思います」
反町キャスター
「先頭を切って、身銭を切るみたいな?」
矢嶋氏
「そうですね。実際、先週、麻生さんが機動的な財政運営という言い方をされていたんですけれども、現在、実際には2016年度予算の審議をしている中での補正の議論ともとれますし、二階先生が経済対策ということを、もろ、おっしゃっていますから、そういう意味では、今回のG20後、そういうのがまた流れとして出てくるとは思いますね」
秋元キャスター
「結局、借金を背負うのは日本だから、外に言われてやるのも何だかなと、ちょっと腑に落ちない部分もあるんですけれども、それはしょうがないのですか?」
矢嶋氏
「言われてやるというよりも、どちらかと言うと、今度だんだんG7も見えてきて、内政的にやっていくという議論になっていくのではないかという、そちらの方が怖いですね」
反町キャスター
「怖いというのは、どういう意味ですか?」
矢嶋氏
「要は、何でもやらなければいけないじゃんという議論に、これまで一生懸命にどちらかと言うと財政をやって、消費税の話をやってきたんですけれど、だいぶそういうトーンがなくなって、さらに自分達でやらなければいけないというトーンにちょっとなるという、今回きっかけになるのではないかなという気はリスクとして思っています」

中国『4兆元景気対策』の影響
秋元キャスター
「機動的な財政政策の実施について、中国はリーマンショック後に4兆元、当時のレートで57兆円の景気対策を行いましたけれど、現在の中国経済にどういう影響を与えていると思いますか?」
田中氏
「非常に大きな副作用があるんですね。一時的には高い成長をして日本を抜いたということだったわけですけれど、今日に到るまで中国のいわゆる経済リスクもいくつかあるわけですが、皆、そこに端を発しているわけです。たとえば、住宅バブルとか、住宅問題というのもあまりに金融緩和しすぎたので余った金が住宅市場に流れ込んでしまった。バンキング問題というのも、金融緩和し過ぎて余ったら、銀行をはべらしていったわけですね。それから、現在、中国政府は借金まみれになっていますけど、それは4兆元のうちの1.25兆元ぐらいを中央政府に無理に割り当て、しかも、資金手当をしなかったので、債務まみれになってしまったというのがありますし、過剰設備問題にしても残りのところは無理やり設備投資をさせたので、そもそも過剰設備であったのに、さらに過剰設備投資をさせたので、どうにもならなくなってしまったと。ですから、現在の中国が抱えている経済リスクというのは、全てはそこから発していると言っていいぐらいで、それぐらいこれからも大きくのしかかってくる。秋のG20でもこういう問題の解決にはまだ5年、10年かかると財政部長が言っていたんですけれども、それぐらいに対策の後遺症が残っているということですね」
反町キャスター
「中国国内では、あれは失敗だったという議論はあるのですか?」
田中氏
「最初は、温家宝首相が在任中は、さすがに彼の失敗になってしまうので、彼自身も決して間違いではなかったと言い続けていたわけですけれど、彼が退任してからは変わり、副作用という言い方で強調されるようになっていて、李克強総理はバラ撒きはやらないのだとしきりに言っているのですが、暗にああいうことはやらないのだと言っているわけです」

『米利上げ』の影響&行方
秋元キャスター
「アメリカの利上げが世界経済に与えた影響をどう見ていますか?」
矢嶋氏
「世界No.1の国で、10年間大量に金融緩和をやっていたということ考えると影響がないという結論はあり得ないと思います。ただ、それをできるだけ少なくするために、皆がいろいろ懸念を示したのだけれども、影響が大きく出てきているねという、そういうたぶん話し合いだったのではないかなと思います」
反町キャスター
「そうすると各国からは新興国を中心として恨み節というか、そういう展開になるのですか、こういう時は?」
矢嶋氏
「やってしまったことはしょうがないので、この先、当初考えていたのは年4回ぐらいの利上げというのはもうないのではないのみたいなそういうトーンだったようには思います」
反町キャスター
「アメリカの利上げをどのように見ていますか?」
津上氏
「アメリカもさすがにこれ以上がんがん利上げをするという、そういう時代ではないということはもうわかりますよねみたいなことになっているのだろうなと思います。それでドルのトップ高が少しスローダウンするというのが、中国にとっても少し楽になる話ではあるんです。そういうドルにくっついていかないと元安と言われるし、くっついていこうとするとまた消耗が激しくなるしという、そういう意味では、少しほっとしていると思います」
田中氏
「アメリカも相当、昨年の秋は追い込まれていたと思うんですよね。非常に市場がアメリカ経済に対してうがった見方が強くなっていて、統計が出て、良くなるときっと利上げにするに違いないと言って、その方向に投機筋が動くと、利上げを見送るとそんなに経済に悪いのかと言っても、また動くという、そういう何をやってもやらなくても1回ごとの会議が終わる度に市場が動揺するという状態が続いていましたから、そういう憶測だけでどんどん市場が振れる状態に、多少は上げるんだというのでケリをつけたかったというのがアメリカだったと思いますけれど、それが予想以上に反響が大きかったと。そこは現在、市場というのは今年に入ってもそうですけれど、とにかく金融政策当局の動きに過剰反応するので、そこが非常にそれぞれの足を縛っているという感じがします」

日本『財政出動』の是非
秋元キャスター
「日本の財政出動の是非をどう見ていますか?」
田中氏
「まず現在の内閣の三本の矢がありましたね。最初の三本の矢というのはまさに財政出動が1つの大きな矢だったわけですね。その後、それだけではダメで、日本経済の体力強化というものをしなければいけないと。あるいは女性の活躍とか、介護問題による離職とか、新三本の矢に現在移ってきているわけですけれど、そういう財源が必要なわけですので、そういうところでしっかりと財源をつけていくと。あるいは公共事業的なものにしたって、高齢化社会になればバリアフリー化を進めなければいけないとか、いろんな介護施設をつくらなければいけないとか、いろんな形での公共投資が必要ですので、必要なのは新三本の矢に則ったものはむしろ出すべきで、それがまさに現在の補正予算であり、現在審議中の予算なわけですね。まずはそれをしっかり投じて、財政というのは必ず経済効果が出るまでに時間がかかりますから、執行されてから効果が出ますので、そこを見極めてそれでも何か問題があるとすれば、次を考えるという意味で財政出動はあってもいいと思います。ただ、その時にはしっかり財源の問題も考えないと、またソブリン・リスクの問題と財政が次の金融危機を生んでしまいますので、その意味での財源手当をしながらしっかりやるものはやるというのが大事だと思いますね」
反町キャスター
「どのくらいのものが必要かというのはありますか?」
矢嶋氏
「どのくらい必要かとなるとGDP(国民総生産)で1%みたいな話が出てくると。そうすると5兆円。金額が大きくなってしまうではないですか。GDP成長率ありきの議論をしないように、これから持っていくのがポイントだと思いますね。本当に必要なものを積み上げて、小さくてもいいと思うんですよ。財政運営を考えた時に、財政再建も非常に重要ですから。そこへの目配りがなくなってしまうのではないかなと思いますね」
津上氏
「複雑ですね。そういう財政出動という話になった時に、世論の何割かは、もう頼むからやめてと反応するような気がするんです。なものですから、本当に経済全体が、それをgood newsとして好感し、景気が切られて上の方へ行くかというとちょっと難しいのではないかなと、日本もそこまできちゃっているのではないかという気がしますね」

日本に必要な『構造改革』
秋元キャスター
「現在、日本に最も必要な構造改革は何だと思いますか?」
矢嶋氏
「何というよりも目的として潜在成長率を高めることを何でもやるべきだと思うんです。そういう意味で、競争政策というのにもう少し舵を切る必要があると思うんです。そういう意味では、言葉的には規制緩和という漠としたものになると思うんですけれども、ここ15年とか、20年ぐらいメニューとしてはいっぱい並んでいると思うんですね。それをスピードを上げて、いろんな規制緩和を起こして見て、ダメ元でやるというようなことをやらないと、現在の延長線上では、経済成長率は下手するとゼロと言われていますから、マイナスの世界が見えるというこの状況でやらないで、いつやるのと思うので、そこしかたぶんないのだと思います」

田中修 日中産学官交流機構特別研究員の提言:『中国頼みは危険』
田中氏
「以前プライムニュースに出させていただいた時には中国が日本を追い抜いて、これからアメリカも追い抜いていく、これからは中国の時代だと、だったんですけれども、その当時、私は等身大で中国経済を見なければダメだと、過大評価はダメだと、繰り返し申し上げていたんですけれど、まさに現在中国経済は急成長が落ちていって、構造問題をいっぱい抱えていますので、中国には構造改革をしっかりやってもらう。日本もしっかりと構造改革をやると。それぞれでがんばるということだと思っています」

現代中国研究家 津上俊哉氏の提言:『鳥の眼(鳥瞰)で世界を見る』
津氏氏
「今日の皆さんの議論を聞いてしみじみ思ったのが、各国の政策というのが、すごく相互に影響しあうと、制約しあうという世の中にますますなっているというところですね。だから、一国経済だけを見てというのは、日本も戒めるべきだし、中国の先ほどのワンタイムで人民元調整というのを勘弁してもらわなければいけないし、そういう意味では、世界全体を鳥瞰するというふうな、そういうちょっと視野を広く物事を見ていくというのが大事だなということをあらためて痛感しました」

矢嶋康次 ニッセイ基礎研究所経済研究部チーフエコノミストの提言:『各国成長率アップ』
矢嶋氏
「各国がんばらないとダメだと思います。各国の成長率、潜在成長率がどんどん下がってくような世界ではたぶん今日議論になった金融だったり、財政だったり、周りの国に何とかしてよという議論になってしまうので、自分達、各国でできる話を淡々とやるという、このスタンスが非常に重要なのではないかと今日あらためて思いました」