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2016年2月23日(火)
世界経済の現状と今後 『長期停滞論』日本は

ゲスト

小林喜光
経済同友会代表幹事
中島厚志
経済産業研究所理事長

世界経済の現状と今後
秋元キャスター
「最近の円相場と日経平均株価の推移から見ていきたいと思うのですが、円相場はアメリカが利上げを発表してから円高に振れ始めまして、今月に入って急上昇し、現在112円前後に推移しているということです。一方、昨年は2万円台をつけていた日経平均株価、今年になって下がり続け、現在は1万6000円台で推移しているということですが、まず小林さん、この円高、株安の状況をどう見ていますか?」
小林氏
「現在の段階では、1、2か月ですと、明らかに、油が急激に下がり、アメリカは本当に大丈夫だろうか。ヨーロッパの銀行の経営は大丈夫なのだろうか。中国の上海株、8月に1度は下がったわけですけれど、少し平行線を辿って今回それが顕著に出てきたということで、今年の夏、秋に関しては何とも言えないんだけれど、現在じっと我慢の時かと思いますね。それと、マイナス金利、ほとんど2日ぐらいは大きな効果があった。されど、今度それは円高、株安になっているというのが事実かもしれません。これはもう少し時間軸を長く見た方がいいなと。現在ここで性急に結論を出す時ではないだろうと、私は思っています」
反町キャスター
「この1、2か月。年が開けてからの急激な数値の変化というのを、これを、たとえば、ワンショットの状況と見るのか。非常に深刻な問題が、これまで浮上しなかった問題が表面化し、一気に起こって、これは少し長期的に見た方がいい懸念が噴出していると見るのか。ここはどうなのですか?」
小林氏
「悲観的なサイドで見る部分が7割、3割は時間がかかるけれども、戻るだろうという、そんな感じですね。私の感じでは」
反町キャスター
「全体の感触としてそういう感じですか?」
小林氏
「ええ」
中島氏
「円高自身、昨年1年間と、今年の昨日までで言うと、ドルを基準にするとドルに対して上がっている通貨は円しかないです。それ以外のユーロにしても、ポンドにしても全部ドルに対して切り下がっているんですね。しかも、足元の状況で、本来であれば、原油安とか、低金利とか、金融も、さらに緩和をしていますので、日本の経済自身勝ち組で、もっと持ち上がってもいいはずですけれども、まさに現在円高がすごく心配で、そこに、現在のドル自身が結構、構造的に高くなってきていると見られるところが、さらに、心配ですね。このグラフを見ていただくと、青がドル相場で、主要通貨全体に対するドル相場を加重平均して、上がドル高ですね、下がドル安で。赤が原油価格ですけれど、見ていただくと、これは過去からだいたい反比例する、逆相関のこういう関係があって。それで、足元はまさに原油高になっているところから一気に原油が安くなって、他方でドルが一気に上がってきているという局面ですね。これにはいくつか背景があるんですけれども、いずれにしろアメリカ自身、全体として見れば、他の国よりもはるかに1人勝ちみたいな状況にもなっていますし、この原油安の中でドル高というのは当面続きそうだということを考えると、ドルに対して唯一強い通貨が円だというのは、これはちょっとまずいという気がしますね」
反町キャスター
「その強さの根拠というのは、他の通貨が軒並み負けている中で、日本の円だけが強いのか。それは何かしっかりした根拠があるのですか?」
中島氏
「その根拠が薄弱ですね。通例言われているのが、だいたいリスクがある時にはリスクの少ない円が買いだと言われるわけですが、何で円のリスクが少ないのかというのは、これは説明があるような、ないような。一面としては、たとえば、日本の対外純資産残高というのが世界一とか、あるいは日本は経常黒字国だというようなことが言われたりするんですけれども、ただ、他方で、世界最大級の財政赤字ですし、これだけの原油安が、非資源国日本にとってプラスのはずが、景気が良くならない。従って、昨年10-12月、同じく非資源国のユーロ圏はプラス成長ですね。何で、そういう中で、円が買われなければいけないのか。しかも、足元はイギリスがユーロ圏からというのか、EU(欧州連合)から離脱するかどうかの国民投票をやるということを決めて、一応、ポンドは売られているのですが、買われている相手の通貨というのはユーロでも、ドルでもなくて、円ですね」
反町キャスター
「それは何か関係があるのですか?ユーロからのポンドの話と、円が買われる相関関係というのは」
中島氏
「相関関係…ただ1つあるのはリスクが低い。これは十分あまり説明ができないんですけれども、それと、マーケットは、皆で渡れば怖くないと、そこは大変危険なところですね。ですから、足元を、しかも、それが円高、株安とリンクしていますから。両方が一緒に下がると、こういうことに。あるいは円高ですけれども、円高になり、株安になるという状況が生じやすいということですね」

アベノミクスの成果は?
反町キャスター
「日本を取り巻く円高、株安の環境の中で、ここまでのアベノミクスについてはどうだったのですか?アベノミクスのここまでの成果、今後の見通し。そこから聞いていきたいのですが、いかがでしょうか?」
小林氏
「間違いなく、非常に良い成果が出たということが言えるかと思いますね。ですから、まず金融緩和を非常にドラスティックにやったことで円安に導いた。80円が120円までいった。これによってかなり輸出に限らず、海外で稼いだ金の換算益も出ていますし、そういう意味では、本当に経常利益が非常に、70、80%の会社が円高で過去最高益ということになった大きな原因だと思いますし、一般的には六重苦で、電力コストの高い産業にとっては七重苦と言っていたんです。ですから、為替はこれは大いなる良い結果だったと。法人税は今後、34.62から20%台に下がり、結果としては、外国人が日本に来るというのも含めて、よりイコールフィッテイングと言いますか、海外との差がまだ高いとは言え、普通OECD(経済協力開発機構)の平均が25%ですから。良い方向にきている。労働規制についても派遣法は一応法律が通りましたし、解雇法制なり、裁量労働のホワイトカラーイグゼンプションはまだ完全に法は通っていませんけれども、方向は見えてきた。通商政策についてはTPP(環太平洋戦略的経済連携)の署名にまで至った。それと温暖化対策の共同プロトコルでは、かなりハンディキャップがあったわけですけれど、COP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)のパリ協定合意で、そういう意味では、これもフェアな状況になりつつあるということで、6個、7個のうち5個はかなり改善した、ないしは方向が見えてきたということですが、日本という資源が何もない国で現在原発がほぼ止まっている中では、原料コスト、電力コストが、これは永遠の課題と言いますか、原罪のようなものですが、日本人にとって。これとて、油が下がったということで、かつてバレル120ドル、140ドルの時代がありましたので、それが29ドルというか、31ドルあたりというのは大変なメリットがあるということで、この六重苦については、この3年間の期間の中で、基本的には結構なスピード感を持って、政治はやったのだという認識で僕はいますけれども」
中島氏
「現在日本の経済はこれだけ原油が安くなって、本来であれば低金利等で勝ち組のはずなのに何で景気が悪いのだという話ですけれども、これを見ていただくと、これは実質の消費の前年比と、それから、実質の可処分所得の増減ですね。基本的にはよく一致をしているわけですね。ポイントは足元が両方とも下がっているということですね。これは賃金だけ見ると、実質賃金がマイナスに足元でなっていて、特に2年前は消費税の引き上げがあったのですが、その消費税の引き上げ分を打ち返すということができていないと。ですから、物価も打ち返せていないので、名目所得こそ、ちょっとプラスになってきたのですが、実質所得マイナスで、消費税を入れると、さらに、マイナスということで、その実質的な賃金水準は30年前の水準ですね。ですから、ここのちぐはぐさをいかに早く改善していくかというのが大きなポイントだろうと思うんですね」

賃上げと内部留保
反町キャスター
「何で賃上げしないのですか?企業は」
小林氏
「これまでの通念の中で労働分配率が徐々に下がってきている。これはある社会通念の問題のような気がするんですね。連合も含め、だいたい労使でやってきた。政労使という形で政府もかなりコミットなり、入ってきた中で、これまでの流れよりは賃上げはしたわけですよね。この2年、3年目に差し掛かっているわけだけれども、何でかというと、内部留保が多い割には、と言われますけれども、ですから、全体を自分の会社が潰れない部分においてどこまで上げられるかという、このあたりの議論というか、社会全体でその議論が足りないのではないかという懸念をしている。ただ、上げろという部分が多すぎて、あるいは、一方では、会社自体、どうしても違う投資にまわしたいという、配分というのは、別に何ら政策で決まるわけでもないし、法律で決まるわけでもないし、これこそ社会通念で、ある国においては、労働分配率は60%。あるところは50%という部分もありますから。これはそういう意味で、非常にずっと政労使的なことというのは、極めて統制的な世界になってしまいますので、あと3、4年ですね、そういう議論をする場に使っていくというのが必要かと思います」

『長期停滞論』と企業
秋元キャスター
「一昨年の11月に、アメリカのサマーズ元財務長官が、IMF=国際通貨基金の会合で、先進国が低成長時代に入ったとする『長期停滞論』を提唱し、大きな注目を集めました。そのサマーズ氏の長期停滞論を簡単にまとめましたが、リーマンショック以降、GDP(国内総生産)の水準が一国の経済全体の供給力を表す推計値である潜在GDPを下まわっている。勤労者所得の回復が遅い。実質金利がマイナス領域で推移しても事態が変わらないと、こういったものですけれども、小林さん、このサマーズ氏の長期停滞論をどう見ていますか?」
小林氏
「サマーズさんが見ているというのは、要するに、先進国で21世紀的な形の経済というのはモノが飽和して、人々の老齢化、場所によって人口が減っていく中で、従来のリニアな成長と言うのですか、人々が車を買い、家を建てという、そういうところがほぼ終了して、もう少しモノからストーリー、コト、あるいは娯楽なり、観光なり、健康なりという、そういう方向に質的転換をしていく中で、GDP的にはなかなか、まさに現在そこに書いてあったように、金利がマイナスになってでさえも、物が動かなくなったという。こういう本質的な問題を突いているような感じがします」
反町キャスター
「これはアメリカの話なのですか?日本も入っている話ですか?」
小林氏
「ですから、日本の、この失われた20年というのは、デフレーションという形で、単純にとられるのが正しいのか。スタグフレーション。完全に長期的な文明国というか、先進国の必然的に陥る飽和状態というか、経済の飽和状態という。要するに、モノというものが溢れ、人々の思考というのがどちらかというとモノからインターネットをベースにしたゲームであり、あるいはインターネットをベースにした売買であり、また、後ほど、出ると思うのですが、UBERみたいな、そういう新しいビジネス形態、ビジネスモデルの時代になってきますと、単純に何が成長かという、そういうあたりの議論をしていかないと、そもそも従来で言う成長は飽和に達したということではないかと思いますよ」
反町キャスター
「成長率が、実質賃金が、そういう議論というのはあまりしても意味がないのではないか、それを大きく騒ぐ必要がない?」
小林氏
「物差しが違ってきているので、だから、僕はGDPとか、GLI(国民総所得)という形で、外からお金を持ってくるという部分で、たとえば、GDPの、今年の、2015年度は平均0.7だろう、GLIだと2.0だろうという予想があるではないですか。そういうレベルの議論と、ちょっと違った意味で、そもそも21世紀も15年経った現在、ちょっと変えた方がいいのではないかと。また、それをしないと、人々、あるいは社会における高揚というか、満足度というか、社会の発展度というのを正しく評価をしていないのではないかと。常に線形というか、リニアに、時代が過ぎればずっとGDPが同化するなんて、こんなことあり得ないでしょう。21世紀、22世紀までずっとリニアで、線形で引っ張ったら、日本でもGDPは1000兆円を超えちゃいます、軽く。でも、それで人口が減っていて、いったいどういう社会が想定できます、無理ですよ、それは」
反町キャスター
「そうすると、現在の話を聞いていると、そういった認識を、たとえば、政治とか、企業の経営者とか、小林さんが見る範囲によって、皆そういう認識を共有していますか?」
小林氏
「いや、まだ全然していませんよ。相変わらずGDPというのは、政府がGDP600兆(目標)というのは、そういうことではないですか。そうやってスローガンを掲げて、皆さんを豊かにしようと。現在の世紀、現状ではまだ重要だと思うんです。1000兆円の借財を返すためにも。ただ、もうちょっと先まで見るとむしろそういったところの評価なり、物差しを明確にしつつ、社会はいったいどこに行くべきかというのを考えるべきだと思うんですよね」
反町キャスター
「たとえば、小林さんの三菱化学、原材料メーカーという会社は、そういう現在の話の中では、どういう立ち位置の変化というのを強いられていますか?」
小林氏
「モノをつくるという時代から、サービスなり、健康だとか、そういった方向。非常にストーリーになってくる時代、ソリューションを提供する時代になってくる。そういう意味では、鉄とか、化学はトンという重さがあったわけです。歴史的には、富国強兵、殖産興業の時代というのはどんな後進国でも最初ここから始まるわけですね。モノづくりから。非常にデベロップしていく中で、だんだんモノではなくて、モノも軽くなってくるわけです。医薬品とか、半導体、マイクログラムと。最後にサービスとか、サイバー空間というのは重さがないですから、そういう産業。ですから、かなり重いものから軽いものに経済は転換する。化学でもこれまでのコモディティケミカルというもの、現在、中国と争っていて非常に苦戦をしているものから、医薬品とか、機能化学品とか、最終的には人々がヘルスというか、健康を、病気になる前の予防医学とか、採血し、いろいろ肝臓の数値とか、全体を早く見てビッグデータを使って、人々の健康寿命を伸ばすというヘルスケアソリューションというビジネスに持っていく。そういう意味で、どんな産業も重さを軽くして、付加価値を上げていくというところにいくかと思うんです。そうしますと、かつての重化学、自動車は今後どうなるかは知りませんけれども、電機、特にエレクトロニクスが非常に苦戦をしている。そうすると生き方としてはサイバー空間を含め、相当サービス業、当然、サービス業の高付加価値プラス文明国、こちらの産業にかなり依存していく。それでGDPというのをどうカウントするかというのが、同じメジャーではもう限界に来ているのではないかと思いますね」
反町キャスター
「どう考えても、GDPの嵩を増すにはこちらの方が単価として…。そうでもないのですか?」
小林氏
「増しやすいですよね」
反町キャスター
「これは重さではないんだけれども、結果的に重いものの方が売れた方が、原発を輸出しますというものを含めて、こちらの方が明らかにGDPに対する跳ね返りは大きいですよね」
小林氏
「大きいはずですよね。それがだんだん当然、付加価値を上げるために、こちらにくる。そういう経済で、本当に現在のGDPというメジャーでいいのかという、そういう問題提起ですよね」
反町キャスター
「何にしたらいいのですか?GDPに代わる物差しは要らないのですか?持たない方がいい?」
小林氏
「いや、それを、要するに、これから経済学者も含め、我々も含め、皆で議論をするべきだと思うんですよ。新しい21世紀的な物差しが要るんですよ」
反町キャスター
「日本の収入源は軽い方になっていますか?」
小林氏
「いや、徐々にはそちらの(重い)方向に行っていると思いますよ。モノの時代、atom(原子)の時代から全部こちらのbit(データの最小単位)情報の時代に当然いく部分もありますけれども、googleみたいに、逆に自動車会社、部品会社を買収して自動運転の方向にいくという企業もありますから、この双方向でハイブリット化するのが今後の世の中だと思うんですよね。日本も単純なモノだけではない、サービスなり、こういう情報をどううまく組み合わせて、新しいイノベーティブな、そういう産業構造をつくるかというところが日本の生きる方向だと思います」
反町キャスター
「その産業構造の中では個々の労働者というのはどういう状況になるのですか?仕事があるのか?」
小林氏
「もともとこういったことをやれるbitなり、情報をやる統計学、コンピュータ・サイエンスなり、AI(人工知能)をものにできる、そういう人々はあまりに少ないですね。これこそ教育しなければいけない。そういう人達がかなりの部分を占める時代がくるのでしょうと、僕は思っているんです。だから、労働というやつが必ずしも重いものを持って運ぶというのではなく、ほとんど頭脳だけ、AI、あるいはロボット、そういう時代にますます人間の頭脳は、とりあえず必要になると思います。その先になると、ロボットそのものが人間を制覇するかもしれない。そういうSFなことはさておき、当座は、僕ら情報データベースの社会、ここに力を入れるべきだと思います」

『長期停滞論』と日本
秋元キャスター
「日本が長期停滞している理由は?」
中島氏
「世界の中でも先んじて少子高齢化が加速しているのが大きいと思います。従って、1つ必要なことは、抜本的な少子化対策をやらなければいけないということなのですが、ただし、これをやるためには当然、少子化対策費にお金を入れなくてはならない。成功例としてよく見えるのはフランスのケースですね。女性が働きながら子供を出産、育児できるような環境を備えていく、という1つのやり方だと思うのですが、たとえば、これやろうと思うと現在のフランスというのはまさにこういう少子化対策を含めた家族への公的な社会保障の支出がGDP比で3%近くあるんです。日本は1.5%ぐらいですね。15兆円です。まさに、その差をとっても、その半分、日本は1.5%ぐらいですから半分、7兆円とかですね。ですから、まさにここで大事なことは、抜本的な少子化対策をやるのだ、これはアベノミクスで企業にがんばってもらうことも、ある意味だとまったくお金がかからないということにはならないと思うんですけれども、いずれにしてもこの何兆というお金をどういうふうに捻出して、使うのかというところが、先ほど、消費税の話も出ましたけれど、まさにここのところがむしろ国民としてどういう覚悟で臨むのかという、そういう局面になっていることでもあると思うんですね」
反町キャスター
「新陳代謝が悪くなるという、そこはどうですか?」
小林氏
「どんどん新陳代謝しなければいけないのに、非常に遅いのが日本ですよね」
反町キャスター
「企業内の話?企業の廃業と起業の繰り返し?」
小林氏
「繰り返し、あるいは同じ産業の中でいいところをくっつけあって、強くする。弱いところは捨てる、そういう新陳代謝もうまくいっていない。非常に小さいものが長生きしちゃう、ちょっと弱そうなものも助けてしまう、それが正義だという、そういう基本的な価値観があるんですね。ですから、要するに、強いやつが勝って、イチゼロの世界というのと、皆が和をもって尊しとなす、皆が一反歩の土地で、俺の米はうまいぞと言って、トラクター農業はやらないという部分とか。産業でも醤油屋さんは日本に1400ぐらいあるんですよ。食品全体で3万社とか、6万社があるわけです。化学も2万6000社あるんですよ。10億円ぐらいの売上げから3兆円、5兆円までの会社を全部合わすとそれぐらいある。海外はそんなにないですよね。化学で言いますと、ドイツだったらBSF、アメリカですとデュポンとダウ・ケミカルが合併するのが皆、10兆円クラスに集約してくる。日本の場合は何千億円から1兆円ぐらいにすごく数がいる過当競争、この新陳代謝というのが難しいんですよ」
中島氏
「私も必要だと思いますね。と言うのは、特に日本の場合、中小企業が結局、支えられてしまうことが多いというのがあるんですね、実際には。たとえば、欧米のケースというのは、体力は、中小企業はないんだけれど、収益率は中小企業の方が平均として高いですね。それは新しく出てきて、活力があって、日本の場合はそういう企業をベンチャーと言い、そうではない中小企業と分けたりするんですよ、同じものですよね。生まれる時は皆、中小企業ですから、そういうところが日本の場合には収益力はないのだけれども、欧米はむしろ収益力が高いという、こういう違いになって出たりしていますので、むしろ全体としての活力を上げるというのは、大きいもの同士もきっちりマーケットの中で競争して合理的な組み合わせみたいなものができていくのも必要だし、それは裾野に到るまで新しい構造に変わっていくためにも、もっと加速化する必要があるんですね。ですから、廃業と開業で、廃業率は低いのはいいのだ、開業率が低いのが問題だってことが言われるんですけれども、本当は1セットですね、日本みたいに市場が飽和していると開廃業率を両方一緒に上げないと上がらないですね。ですから、そういう社会の中で、いかに開業率を高めたいか、活力ある企業を増やしたいかとなれば、むしろ活力があまりにない企業というのは何らかの形で、むしろ他の形で一緒になってもらうか、あるいは退いてもらうか、という形というのが欧米と比較すると日本の場合は2倍ぐらいのスピードがあっていいのかなという感じですね」
反町キャスター
「なぜゾンビ企業は撤退しないのか?」
小林氏
「黒字であれば、生き延びるというのもあります、あるいは赤字企業への何らかの援助、そういったものがこれまでは行われてきた。外形標準課税の議論でも企業がそこに存在することでいろいろなサービスを自治体等、そういうところから得ているわけですね。それは何らかの形で税金を払うべきだけれども、これまでは赤字ですと、そういったものが免除される。そういった法制を変更しない限りはゾンビ(企業)が永遠に存立してしまう。法人税を払わないままに生きていく企業が多すぎるので、そこは政策的な手を打たざるを得ない」

どう変える? 産業構造
秋元キャスター
「シャープの経営再建ですが、どう見ていますか?」
小林氏
「明日、だいたい決まるのでしょうけれども、要するに、テクノロジーが海外に逃げるという、そういう論点で議論している人もいますけれど、これはほとんどの会社は現在、海外の株主が3割から5割の会社の多い中で、完全にグローバルな社会においては、ましてや液晶というのは本当に旬なものかというのも含めると、有機ELとか、期待できるものかもしれませんけれど、完全にグローバルなベースでものを見るべきであって、政治は少なくとも日本国を見ますから単体損益だけど。企業というのは連結決算で見ていますし、株主に外人が半分ぐらいいる時代になってくると、国家としてテクノロジーを、たとえば、原子力なり、防衛的なものという例外を除けば、そこはグローバルにものを考えて、お金をどう日本に持ってくるのかという、そちらの方がメインになるべきだと思いますよ。テクノロジーというのは瞬時に盗られてしまうのだというぐらいの気持ちで、僕はやっていかないと、なかなかこういうグローバルなディールはできませんし、自然なことだと思いますけどね」

小林喜光 経済同友会代表幹事の提言:『差異化』
小林氏
「差別化というと一部差別用語みたいになりますので、差異化、discrimination。皆が太陽電池なり、皆がリチウムイオンバッテリーなり、皆が半導体、ことごとく競争優位性を日本は失ってきている。何かちょっと違うこと、他とちょっと違うこと。イノベーションは時間軸が10年、30年かかりますので、勝ち抜く基本の構造というのは日本人のちょっとした工夫、あるいは人とちょっと違うのだという、そういうところにもう少しこだわって、皆が行く方向はすごく競争が激しいので、目立たぬように、はしゃがぬようにそういった項目を見つけて、少しずつ儲けていくという、そういう時代がきているのかなと思います」

中島厚志 経済産業研究所理事長の提言:『人材力の発揮』
中島氏
「これは、確かに失われた20年とか、あるいは長期停滞論とかに日本が先行して陥ってしまっているとか、あるのですけれど、ただ、日本の国内を見るとまだまだ人材の活用の余地は大きいわけですね。たとえば、女性の活躍にしてもOECDの中で女性の活躍度合というのは測り方にもよりますけれど、最下位クラスの方にいますし、まだまだそういう意味では、余地はあるし、それから、先ほど教育のお話も出たのですが、まさにこれからイノベーションを発揮するというのは、どういうふうに我々あるいは企業がですね、人・物・金を使うかという、うまく使えるのかに尽きるわけですよね。ですから、より大きく使うというためには、それぞれの人についても、もっと人材力を上げなければいけないし、企業も人材力を上げるように投資をするというところが大きなポイントで、これが十分に世界の主要国と戦えるようにできてくれば、私は日本の活性化は間違いないと思いますね」