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2016年2月22日(月)
南シナ海ミサイル配備 中国軍事拠点化の核心

ゲスト

小野寺五典
自由民主党政務調査会長代理 元防衛相 衆議院議員
朱建栄
東洋学園大学教授
小原凡司
東京財団研究員・政策プロデューサー

中国ミサイル配備 南シナ海の現状は
秋元キャスター
「今回、中国がミサイル配備を行ったとみられる南シナ海の現状から見ていきたいと思うんですけれど、こちらの地図を見ていただきたいと思います。衛星写真でミサイル配備が確認されたのは中国本土の南、南シナ海、パラセル諸島にあるウッディー島。このウッディー島の海岸線に配備されたのが、HQ-9(紅旗9)と呼ばれる射程200kmのミサイル。その発射台が8基と伝えられているんですけれど。小原さん、このミサイルというのはどういったミサイルなのでしょうか?」
小原氏
「このHQ-9というミサイルは、地対空ミサイルで、地上、あるいは艦艇、海軍の船から、空から来る脅威に対処するためのミサイルです。もともとはロシアの技術を使っていまして、S‐300で使用されているミサイルを発展させたと言われています。もと120kmぐらいの射程距離だったものを、改良して200kmぐらいにしているんですけれど、このミサイルを車両に積んでどこへでも移動して撃つことができる。ただ、ミサイルだけでは撃つことはできないので、目標を探知するために、追尾するためのレーダーや、その指揮システムとワンセットで動くということになっています」
反町キャスター
「配備されたのはいつ頃だと見ていますか?」
小原氏
「こちらのパラセル諸島に配備されたのは、今回が最初ではないということですけれども、今回、アメリカが問題にしているのは、このミサイルだけではなくて、これが単に持って行っただけではなく、実際に基地の防御として使おうとしているということを言いたいのかと思います」
反町キャスター
「基地の防御というのは、つまり、どういう理解なのですか?」
小原氏
「実はこのウッディー島には昨年の10月に中国海軍のJ‐11戦闘機がミサイル弾薬を搭載して進駐したということが中国でも報じられています。これは11月1日の報道ですけれども、と言うことは、ここは軍事基地として使うのだと。海軍は、ここを中継基地として使うと言っている。そこを防御するためのミサイルということは、これは軍用機地として使って、さらにそれを防御するミサイルで固めると。こうした、これまでの、ただ、持っていっただけではなくて、基地化。さらにはその防御という軍事施設化がさらに強化されているということを示していると言えます。実際にここに戦闘機が配備されるということになると、J‐11ですと、行動半径が1500km。さらに、その航空機を運用する基地を防御するため対空基地まで、対空ミサイルまで配備するということになると、ここを1つの大きな軍事拠点として使うのだということになりますので。そうすると、軍用化しないと言っても南沙諸島ですけれど、とは言え、この西沙諸島から1500kmキロの半径。今後、さらに西沙諸島、場合によっては南沙諸島。中国の防御のためという理由で軍事化が進むのではないかということを懸念していると思います」
反町キャスター
「半径200kmまで届く地対空ミサイルがあるというので、ウッディー島を中心にして200kmの円を描いたんですけれども、小原さん、基本的なところを聞きたいんですけれども、普通、領海というと12海里。だいたい20kmぐらいですよね。この島のまず中国の領有権というのは、国際的にはどうなっているのですか?」
小原氏
「ここは1974年から中国はパラセル諸島全体を実効支配していると。こうした島の施設等は随分以前から製造されています」
反町キャスター
「そうすると、この南シナ海の方のいろいろ揉めているところと違って、こちらの、いわゆる西沙と呼ばれるあたりについては、領有権についての問題にはあまりなっていない?」
小原氏
「もちろん、ベトナムや台湾は領有権を主張しています。ただ、実効支配されている…」
反町キャスター
「新たに埋め立て、滑走路をつくる。そういうレベルの話ではないわけですね?ここは」
小原氏
「現在それをやっているわけではありません。上の施設は、十分使えるレベルにまでなってきていると」

地対空ミサイルの威力 狙いは
反町キャスター
「仮に、実効支配していることを前提とした場合に、半径12海里の領海というと、それよりはるかに大きなところまでに届く範囲のミサイルを持つこと。これは非難されるべき現象なのですか?それとも実効支配をしている以上、当たり前のことなのですか?」
小原氏
「これは空から来る脅威というのが、1つには非常にスピードが速い。これは航空機だけではなくて、航空機から発射されたミサイルも含んでいますから、自分に向かって飛んで来るミサイルというのは、12マイルまで待たないと撃てない、というのは困るわけですね。ですから、通常、対空ミサイルというのは射程を伸ばしておくものですし、それに対処できるようにはしてあるものですけれども、ただ、ミサイルは難しいのは、これは、自分に向ってくるミサイル等だけではなく、そこを飛んでいる航空機も狙えることになるということですね」
反町キャスター
「それともう1つ。先ほど、昨年展開されたJ-11は半径1500kmと言いましたよね。1500kmというと、南沙の方も全部活動範囲に入ると。こういう理解になりますか?」
小原氏
「そうですね」
反町キャスター
「その件に関しては、我々懸念すべき要素がそこにある。こういう理解になるわけですか?」
小原氏
「はい。中国は現在、南シナ海全体をカバーするような監視網を持っていません。ですから、中国はJ-11、あるいは空中警戒管制機を使って、南シナ海のパトロールをするんだということを既に言っています。そうした時にJ‐11の中継基地として、中国本土で、さらに南側から出られるということはそれだけ滞空できる時間が長くなるということですから。そういった意味では、中国にとっては南シナ海をコントロールするうえで、有利な基地になると言えます」
反町キャスター
「小野寺さん、この展開をどう見ていますか?」
小野寺議員
「まずここの場所ですけれども、ウッディー島というのが、確か中国は勝手に自分達が西沙、南沙、中沙ということで、3つの沙を使って、三沙市という行政区を勝手につくっていますが、その行政府の市役所をそこに置いていると聞いています。それから、ここには従前から、軍隊も常駐をしていたと言われていますし、もともと中国側から見たら、このウッディー島というのは、自分達の西沙における拠点で長年、ここを実効支配し、市役所も、行政機関もつくり、漁民も一部いると。ですから、これは私達の領土なのだ。自分達の領土において、こういう防空的な様々な装備を置くことは、これは問題ない。たぶんそういうことで今回、ここへの配備というものをしたのかもしれないと思いますし、それから、先ほど、小原さんがお話をされましたが、既に3回ほど、ここで私達が確認をしているだけでも、過去にミサイル配備の軍事演習をしています。ですから、初めて実は配備をしたわけではなくて、従前から訓練と称して、既に配備がありました。今回は、私どもとしては、訓練というよりはむしろ配備というふうに判断をすれば、配備としては初めてかもしれませんが、こういうミサイルの展開というのは、過去にも訓練と称してありましたので、唐突と言うよりは1つ1つやってきているのかなという、そういう印象を持ちます」
反町キャスター
「この西沙につくったことについてはどの程度の意義があるのですか?ミサイル配備をしたことを我々はどのように受け止めたらいいのか。ここはいかがですか?」
小野寺議員
「まず昨年の習近平さんとオバマさんとの会談のあと、習近平さんがお話をした中では、南沙という名前を出して軍事利用化しないという話をしていますので。実は、そこに西沙は触れられていなかったんです。そういう意味では、中国側の意識はその発言に本当は透けて見えたのですが、私達は何となく南沙というと、全部、南シナ海の印象があったので、よく読めば、なるほどそうなのかなというのが確かにあると思います。ただ、いずれにしても、ここにそれだけの戦闘機を配備すれば、広いエリアができるということは大変、大きな問題ですし、実はここにミサイルを配備して、レーダーがということは、この近くを飛ぶ航空機はだいたい、私も実際その音声を聞いたことがありますが、中国側が、この付近に私達がいますので気をつけてくださいと、事前にいろんな通報をいろんな無線でかけていきます。ですから、そういう意味では、これまで普通に飛んでいたので、そういう警報を、これは防空識別圏と別にしてくる可能性もありますので、あまり気持ちのいい話ではないと思います」

南シナ海『実効支配』の現状
秋元キャスター
「中国の南シナ海への進出、1950年代半ばにパラセル諸島の半分を占拠したことから始まります。1974年にパラセル諸島全域を支配。1980年代半ばにスプラトリー諸島に進出し、1988年にはスプラトリー諸島6か所を占拠しました。2000年代には、さらに南シナ海の南部へ進出していきます。2012年ですけれども、フィリピン・ルソン島西220kmにあります、スカボロー礁を事実上支配しまして、2014年以降、スプラトリー諸島において大規模な埋め立て、インフラ整備を行っていきます。さらに今年の1月には、スプラトリー諸島に建設をした人工島の滑走路で飛行訓練を行っています。朱さん、ここまでの話いかがですか?」
朱教授
「まず現在その図で、あたかも1950年代から次々と拡張しているという一面しか解説されていないと思うんですけれども、そもそも1946年に当時の中国は、南沙諸島まで、それは自分の、これは日本の降伏で回復した。それで主権を、西沙、南沙、全部回復したと宣言しているわけですね。その後、中国の内戦で、南シナ海のところには手が及ばなくなり、一方、西沙というのが、それは1954年頃ですけれども、台湾との戦いで、同じ中国人同士の戦いで中華人民共和国となったわけですね。その前に、フランスが入ってきたわけですね。別に他の国が盗っていって、中国がゼロから入ったというより、その時、いろんな事情で、むしろその前に中国の一部というところを宣言されて、当時の日本と台湾・中華民国との条約の前文に、日本が西沙諸島、南沙諸島を放棄したというところ、中国との条約まで書き込まれているわけです。そこの部分がまず1つ。第2に、現在なぜ2月16日にアメリカがこんなに問題にしたのか。それが中国の専門家の間でもいろいろ話が出ているんだけれども、アメリカとASEAN(東南アジア諸国連合)諸国との会議。それでASEAN諸国を対中包囲網づくりに巻き込もうという、ところが、それが最後の合意では、中国を脅威と、あるいは南シナ海というのを挙げなかった。アメリカは今回のことで実際の脅威というより、中国の脅威を煽って、他の国が皆、中国は怖いと。アメリカによる対中包囲圏つくりのために、今回つくった外交の戦術ではないかなと思われているわけですね」
反町キャスター
「中国側にしてみたら2月の上旬に、あの島にミサイルを配備する何か戦略的な必然性があったのですか?」
朱教授
「まずここで本当の配備かどうか私もわかりませんけれども、少なくとも言えることは今回、砂浜にトラックに積んだままで、そういうところに配備ということで、永久的な配備なのかどうか。それは正直言ってまだわからない部分があります。私もはっきりしませんけれども。ですから、これで中国は常にそういうところで、いろんな島で、この訓練を含めてやっていると。今回、配備した目的。私は直接ASEANとの会議で、だって、そこでASEAN向けにこれをやったということは、まさにアメリカに口実を与えるもので、ですから、それがASEANの会議と私はまったく関係ないと思っているんですね。全般的に、南シナ海での、西沙諸島での防衛の強化と。米中のもっと大きいサークルの駆け引きで言えば、これは韓国でのTHAAD(弾道弾迎撃ミサイル)防空ミサイルのシステムの配備で、それに対して中国はかなり強く反対をしているわけです。ですから、中国とアメリカの問題は単純に南沙、西沙、あるいは韓国ということだけでなく、この広い意味で、どこか駆け引きをしていると。さらに、私はもっと強く言えば、オバマ政権は現在、中国に対して、残りが1年しかないので、やれるところまで中国を詰めて、次期政権では中国と手を打つと。そういうようなところで米中の大きい1つの駆け引き。その中に入っているのではないかなと感じます」
小野寺議員
「この周辺の国も同じく、この周辺の島の占有を主張していますが、どこも、そこにわざわざ、たとえば、戦闘機を配備するとか、このような対空ミサイルを置くとか、そのようなことはしていませんね。ですから、言ってみれば、中国が1人で力による現状変更をしている印象を周辺国に与えている残念な事例だと思います。私は今回配備の1つのきっかけになったのは実は、先月1月30日に、地図にありますが、パラセル諸島の下のトリトン島というのがあると思いますが、航行の自由作戦ということで、アメリカの海軍の船がここを通峡したわけです。これに対して実は当時、中国の国内でもかなりいろんな世論が出ました。ですから、そういう意味で、中国政府としても何らかの、姿勢を示すという。そういう意味で、今回こういう配備があったのかなと。そこから、先ですね。これはおそらく中国の外交当局がもしかしたらちょっと見誤ったのかなと。米・ASEANの会議。これが16日ですから、そういった意味では、ちょうど準備をして配備をしたタイミングが、ASEANの会議にちょうどぶつかってしまったとすると、それがオープンになることは逆に言えば、中国に対しての脅威論がちょうどその会議で増してしまうので。よく中国にはあるんですね。軍事当局の部分と外交当局のズレというのがありまして、実は私が大臣を経験した時に、例の中国海軍の、日本の自衛隊の船に対するレーザー照射。あの時も軍当局のおそらくやり方だと、そのあと向こうの報道の状況を見るとなかなか外交当局にその動きが伝わらなかったので、かなり揉めた、混乱したことがありましたので、今回もおそらく30日の、アメリカの航行に関しての1つの牽制。ところが、それがちょうど準備をして、行われたタイミングが、米・ASEANの首脳会談にぶつかって、外交当局はちょっと困ったなというところが、もしかしたら、あるのかなと、私自身はそんな印象を持ちました」
反町キャスター
「小原さん、どうですか?タイミングについて、おかしいのではないのかと言う話と。小野寺さんは計算できていない、横の連絡が悪いという意味での話。どうですか?」
小原氏
「私は、これはアメリカ、中国共に意思表示があったのだと思います。アメリカはもちろん、米・ASEAN首脳会議に合わせて報道をすることで、中国の脅威を表したいと。しかし、中国は中国で現在、小野寺先生がおっしゃったように1月30日の、第2回の航行の自由作戦。これに何らかの反応をしなければいけない。実は第1回の航行の自由作戦、昨年の10月27日ですけれども、このあと中国の国内では2回目をやられたら持たないかもしれないとさえ言われていたんです」
反町キャスター
「それは南沙ではなくて、西沙であろうとどこであろうとも航行の自由作戦は中国にとってはきついものなのですか?」
小原氏
「はい。実は、中国は何もできないということを示してしまっているわけですね。ただ、追尾しかできない。警告しかしていない。1回は、中国の警告に従って、アメリカの艦艇が領海の外に出たと言えばいいわけですけれども、2回目、3回目となると、もうその言い訳はできない。実際にやったら、今度は衝突する可能性がありますから、これもできない。実は昨年の11月18日に米軍のB52という戦略爆撃機が、これはクワテロン諸島という、これは南沙諸島の一部で、中国は人工島建設している。ここから2マイルを飛んだと言うのですが、2マイルと言うと、下から見るとほぼ直上ですね。そこを、核爆弾を搭載することができる戦略爆撃機に飛ばれた。これについて米国防総省のスポークスマンが、わざわざ中国側からスクランブルの対応はありませんでした、と言ったんですよ。これは中国が何もできませんよ、ということを言ったのと等しいわけですよね」
反町キャスター
「でも、それに対抗するとしたら、スクランブル、戦闘機で迎撃させる以外だと地対空ミサイルを当ててみるとか、そういう話をすればよかったという意味ですか?中国側としてはもし力を見せるとすれば」
小原氏
「いえ、スプラトリー諸島の方にはまだそういったものを配備していませんから。しかも、これはスプラトリー諸島でやると緊張が高まり過ぎる。相互に、段階的に、相手の動きを見てやっているのだと思いますが、ただ、中国としては、アメリカの力に屈するつもりはないということをパラセル諸島で見せている。これはASEAN諸国に対しても見せる意味はあると思うので、中国は引く意思はないということをASEAN諸国も知ることになりますから。ASEAN諸国というのは、アメリカだけを見ているわけではなくて、中国も両方見ながら動いていますので、そういった意味で、米中双方にそれぞれ意図があって、この時期に配備をし、あるいはこの時期に報道をしたのではないかと思います」

中国の狙い、米、日本の対応は
秋元キャスター
「(アメリカは)『中国が日々、軍事化を増大しているあらゆる証拠がある。深刻な懸念がある。近く中国側と深刻な対話をすることになる』と中国を名指しで批判をしていますけれども、これに対して中国の王毅外相は『おそらく西側メディアのニュースをつくる1つのやり方だと思う』と発言をしています。そして、洪磊副報道局長は『自国の領土で防衛施設をつくるのは完全に正当で理にかなっている』と発言をしているですけれども、小原さん、この米中の発言の意図、どう読み取りますか?」
小原氏
「これはアメリカにとってみれば、中国が南シナ海の全体。正確に言えば、九段線内側ですけれども、領海化しようとしている。それを軍事力で抑えようとしていることの証拠だということです。それを1つ1つ進めているのだと。しかも、それを、アメリカを言い訳にしながら、それを進めているということですから、それについて確かに中国は話をする必要があるということだと思いますし、中国は先ほど、チキンレースをしているというお話がありましたが、チキンレース、双方とも非常に速度が遅いですね。現在すぐ衝突するというものではないんですけれども、ただ、その間にも中国は自分の乗っているものを補強しているというわけですよね。でも、その補強しているのは別に、自分の車であって、現在はパラセル諸島ですし、自分の主権の及ぶ範囲だということです。ですから、ここではアメリカと中国の言い分はそもそも違っているということですし、チキンレースは時間が経てば経つほど、現在の状況が続けば中国にとって有利に働くということになると思いますね」
反町キャスター
「ゆっくりとしたチキンレースというのはちょっとイメージがわかないのですが、普通キチンレースというのは、崖に向かって、ワーッと2人で走っていって、一生懸命にスピード感を競いあって、どちらがギリギリまで踏み込むか、その戦いですよね。それをお互いゆっくりと崖に向かって走っているというのは、これはどういう意味ですか?」
小原氏
「このチキンレースはお互いに同じ方向に向かっているのではなく、正面ですね。ですから、正面衝突してしまえば、強い方が勝つわけですけれど、現在のところ、お互いに正面衝突したくないものですから、相手の動きを見ながら少しずつ近寄っているということですね」
反町キャスター
「現状において有利なのはもちろん、アメリカですね。軍事力においては?」
小原氏
「はい」
反町キャスター
「アメリカは自分の方が絶対有利である状況にもかかわらず、一気に進まないのは、全面衝突するのは得策ではないと思っているから?」
小原氏
「それは、オバマ大統領だと思います。ですから、アメリカの国内でもホワイトハウスと国防総省の間で溝があると言われるのは、国防総省は相手の準備ができないうちに圧力をかけた方が相手に言うことをきかせやすいということですし、ただ、それは軍事力を使う、鉄砲を撃つわけではないにしても、そのプレゼンスを示すということですけど、オバマ大統領はなかなか軍事力を使うことには同意をしてくれないということだったのだと思います」
反町キャスター
「そうすると、本来だったら航行の自由作戦が中国に対して強烈な圧力をかけるのであれば、もっと頻繁に、2週間に1回ぐらいずつその辺の海域をぐんぐん走りまわった方がいい?中国に対しては」
小原氏
「はい。ステップの上げ方が遅いです。ですから、昨年5月20日、CNNに報道させたあとに国防総省のスポークスマンは12海里以内に将来入る可能性があると、そこで言っているんです。ただ、その承認を得たのは米中首脳会談。9月25日、26日の米中首脳会談があってからですから。それがあって、ようやく国防総省、米太平洋軍にその承認がおりたということなので、その間国防総省はフラストレーションを溜めていたと思います」
反町キャスター
「遅いと思っていますか?」
小野寺議員
「おそらく皆さん、そう思っていると思います」

南シナ海中国ミサイル配備 日本の対応は
秋元キャスター
「官房長官は『南シナ海における急速な埋め立て、拠点構築、その軍事目的の利用などは国際社会共通の懸念だ。我が国としてもこうした行為を深刻に懸念しており、既成事実化は認められないことをあらためて強調したい』と述べていますが、このミサイル配備を受けて、日本はどういう対応になるのでしょうか?」
小野寺議員
「日本は従前からこの南シナ海の問題について、実は東シナ海の問題が起きて以降、かなり同一のスタンスを持っていまして、これは力による現状変更はあってはいけないということ、これを一貫して言っています。この問題というのは、ASEANの国が現在1つの大きな塊になろうとしていますので、ASEAN自身の課題として私達は一緒になって応援していくというのが大事だと思います。ただ、残念ながらASEANの中にも斑模様で、この南シナ海の問題についてはそれぞれ評価と、中国との距離感がありますから、これは簡単ではないと思うのですが、とにかく繰り返し私達はASEANを1つのグループとして、そこで私達と問題意識を共有しようということになります。実は一昨年前のアジアの防衛大臣会合、シャングリラがあるのですが、そこで私が出た時に提案をしたのが日・ASEANの防衛大臣会合、これを定期的にやりましょうと。これまでやっていなかったんですね。それが現在、定期的に毎年行われることになりつつありますので、その中でアメリカだけではなくて、日本もASEANの国と力による現状変更があってはならないというスタンスで、国際的なルールに基づいての解決をということを中国側にしっかり認識してもらう努力が必要だと思います」
小原氏
「まず日本は南シナ海で起こっていることはなぜ日本にとって問題なのかということは明確にしておく必要があると思います。たとえば、よくシーレーン、海上輸送路の問題があげられますけれども、中国は先ほど、朱先生がおっしゃったように、国際社会の中で孤立しては目標が達成できませんから、民間船舶に手を出すことはまず考えられない。だったら、日本にとっては問題がないのかとなりますが、そうではないと思うんですね。中国が現在やっていること、たとえば、力による現状変更をもしやっているのだとすれば、その結果、できてくる国際秩序というものは、力のあるものは力によって国際秩序をどんどん変更できるという国際社会ができてしまう。それは日本にとって住みやすい国際社会でしょうかということです。ですから、それは、日本としては受け入れられないと言っているのだと思います。ですから、その中で行うべきことというのは必ずしも南シナ海の中だけではない。小野寺先生がおっしゃったように、他にも日本はできることがたくさんあるのだろうと思います。さらには軍事的に言っても日本の海上自衛隊の船がこの南シナ海でパトロールをするといった場合、中国は現在も軍事的な牽制を強めているのに、何か軍事的な衝突が起こった時に、日本は次に取るべきオプションがない。自衛権が発動できないからですね。次に取り得るオプションがない軍事行動というのは普通あり得ない。現在の安保法制ではまた軍事行動とも言えないと思いますけれども、中国からすれば軍事行動だと言われる可能性があるわけです」
反町キャスター
「でも、個別的自衛権は発動できますよね?攻撃された場合には」
小原氏
「正当防衛です。ただ、個別的自衛権は発動できません」
反町キャスター
「中国側は、未だにもしかしたら日本は南シナ海に来るかもしれないと思っているでしょう?」
朱教授
「そうですね。ですから、そこが現在、日中がいろんな意味で疑心暗鬼、互いに本当の相互信頼ができていないので、ついつい皆、相手の裏の裏を見て、日本が出てくるのではないかと、場合によって中国の極端な一部は、日本は先頭に立って何かをやる。私はそんなことはもう実際あり得ないと思いながらも、心理的に相当警戒があるのは事実ですね。それで先ほどおっしゃった割に冷静な議論というのをもっと日中間で率直に意見交換すること、この南シナ海、特にこの海全体のシーレーンを含めて、日本、中国、アメリカ、そして民間、アメリカが特に南シナ海について自由航行ということを主張するなら、共に民間の船に対しては絶対に手を出さないと、一緒に保障するとか、まず積極的に一歩二歩積み重ねていくというような努力が必要ではないかと思うんですね」
反町キャスター
「日本が南に行くのならば、我々は尖閣にも、北にも行くんだよというプレッシャー。そう見ていいのですか?」
朱教授
「私はそういうような側面というのは完全に否定はできないと思いますね。一方、日本周辺というのはただ日本向けではなくて、日本に多くの米軍基地があるわけですね。ですから、米中というところを、どうも中国は最優先にそれを考えて、当然、日本との関係も別のところも複雑にいろんなところが絡んでいると思います」
小原氏
「もちろん、それはあると思います。日本がさらに、積極的に南シナ海に関与をしようとすれば、中国はさらに牽制を強めると思います」

東シナ海への波及は
反町キャスター
「日中間の最大のポイントになっている尖閣諸島問題。南シナ海のことを目の前に置きながら、尖閣を日本は、中国はどのように捉えていくべきなのか?」
小原氏
「中国は尖閣諸島に対する日本の実効支配を崩すという姿勢は崩していませんし、オプションとして、これはいつでも獲れるような準備をしていくと思います。これは将来がどうなるかわからないからですし、世界にはその双方をきちんと治めるような世界警察というものはない。アメリカは過去でさえ世界警察であったことは、私はないと思いますが、そうした中で各国は自分で問題を解決しなければならない。将来がわからない間は、最悪な状態に備えることは必要。中国は自分の権利は主張しているわけですから、それを最終的には力でも獲る準備はするだろうと。日本はこれに備える必要はもちろん、あると思います。ただ、それがもちろん、意思表示のためでもありますし、将来の見通しがない中では準備は必ずしておかなければいけないだろうと。もちろん、最善なのはその準備を双方がしなくてよくなることではありますけれども、それができるまでの間はもちろん、中国も現在既に進めています。2014年1月に、2020年までに海警局は20隻増加すると。そのうち1万トン級の船が2隻、さらには4000トン、5000トンの船がある。こんな大きな船をさらに、既に東シナ海に配備をしていますから、こうした準備は進めている。このことを日本は理解しておく必要はあると思います」

朱建栄 東洋学園大学教授の提言:『日中改善の気運、大事に』
朱教授
「私は軍事専門家ではないので、外交全般で見れば、日本と中国は昨年いろんな問題を抱えながらも、前の数年間の最悪な状態から少しずつ緩和されて、中国人の日本への観光客というのが昨年また倍増し、今年に入ってからもまた増えているわけです。1月末の安倍首相の施政方針演説でも、中国に対してこれから仲良くやっていこうと。私は今年、日中は当然、北朝鮮の問題、南シナ海の問題、いろんな問題を抱えながらも、改善の気運というのは両国とも高まっているので、日中は久しぶりにハイレベルの経済対話を。中国の副総理が率いて数人の大臣がやってきて、一緒にやるというようなこともありますので、互いに気運ということを壊さないように日中関係を大事に積み重ねていこうということを提言したいと思います」

小原凡司 東京財団研究員・政策プロデューサーの提言:『力による意思表示と外交努力の同時進行を』
小原氏
「私は誰かが力によって秩序を変えようとした場合には、世界警察というものがない中では、力を見せなければ、意思表示ができない。こうしたことは日本も進めていかなければならないのだろうと。自衛隊はいつまでも何もできませんではなく、できるけど、しないのだという意思表示が必要。ただやっているだけではまったく構造は変わらないので、中国は先ほどおっしゃっているような脅威認識を持っているというのであれば、それをなくしていく努力を、外交による努力というものを、これはどちらが最初にではなくて、同時にやっていかなければならないと思います」