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2016年2月3日(水)
中国経済の深部と暗部 知り尽くす経済人3人

ゲスト

リチャード・クー
野村総合研究所主席研究員・チーフエコノミスト
柯隆
富士通総研主席研究員
宋文州
ソフトブレーン創業者

中国経済『減速』実態と行方 株価下落と政府の介入
秋元キャスター
「世界経済の不安の震源地といわれている中国。中国経済で現在、何が起っているのか。まずは中国の株式市場について聞いていきたいと思うのですが、株価の値動きを示す上海総合指数、昨年の6月からグラフにしたものです。昨年の6月には5166.35ポイントだったものが、現在は、2739.25と半分近くにまでなってしまっているんですね。特に今年に入ってからの株価の大幅な下落。世界の経済危機の震源地とも言われるほど大きな影響を与えています。柯さん、この中国の株価の現状、どう見ていますか?」
柯氏
「このグラフが見づらいわけですけれど、もし昨年の1月からとっていただければわかると思うんですけれども、急騰する前の水準に現在、戻ってきたというような状況で、昨年6月以降、ボラティリティというか、すごく変動したというのは、私から見ると当然の話ですよ。無理やり上げたものですから。マーケットの均衡水準に市場は戻りたいわけですけれども、その間で政府が無理やり介入して、売ってはいけない、警察を投入する、人民日報で社説を書かせるとか、ああいう無茶な介入をしたからボラティリティが大きくなって。だけれど、現在は1年前の下がる前の水準に戻ってきているものですから、もう少しすると、おそらく上場している企業の実力、いわゆる収益性からすれば、これくらいだろうというところにきているわけですから、徐々に安定してくるのではないですか」
反町キャスター
「だいたいこの線が妥当だと。現在の2、3日の3000ポイントぐらいが妥当な線?」
柯氏
「いやいや、もうちょっと2500、2600ぐらいがいわゆる現在、中国の上場している企業の実力ですね」
クー氏
「先ほど、柯さんからありましたように、これに政策が関与してしまった部分が非常にまずかったと思いますね。おそらく現在から言うと、もう一昨年になりますけれど、政府が株を上げるような話をいっぱいしてしまって、おそらくその目的は株を上げ、中国企業がそこで資金調達して、それで抱えている借金を返していけば、レバレッジ比率が下がってきて、それで健全な財務内容になると。それをおそらく目指して始めたんだと思いますが。その最初の半年はうまくいったわけですよね。そこからおかしくなるのですが、そもそも共産党が、株式市場にかけた政策をやると。資本主義の政府でさえ株式市場ほどコントロールしにくいものはないのに1番コントロール、全てをコントロールしていないと気が済まない共産党がこれに手をつけたというのは、私はとんでもないミス。共産党の基準で考えてもとんでもないミスだったと思うんですね。現在その結果、こういうことになってしまって、もともと皆さん慣れていないわけですから。いろんなことをやっているうちに、ますます何か話がおかしくなってしまったという感じがしますね」
宋氏
「僕は、クーさんは共産党がバカって、私もバカと思うんだけれども、現在、日本と似ているところは民衆の目をすごく気にするんですね、インターネット。中国の国内で株をやればわかるんだけれども、中国の投資家のレベルも低いので、下がったら全部政府のせいにして、儲かったら全部俺の腕がいいというやつだ。それが下がり出したら、株を止めろ、売買システムを止めろと、管理当局は何をやっているんだみたいなプレッシャーをかけるから、それで慌ててしまって、あれこれ政策を打つんだけれども、本当に打ったのかもわからないけれども、結局、現在、中国当局、現在の認識を聞いているとゆっくり下がる分にはいいだろうと。下がりきった方がいろいろ対策が落ち着いて打ちやすいから。急激な下がりは追証が間に合わないから。金融システムが破綻するから。スピードダウンをするための調整をするけれども、どこまで底かは気にしないということです」
秋元キャスター
「中国政府も、急落する株価を維持するために、様々な策を講じているわけですが、たとえば、今年の初め、株価が大きく乱高下した時には取引を一時的に停止するサーキットブレーカーを2回発動しました。しかし、想定通りに機能することなく、制度そのものが停止となってしまいました。株価を維持するために政府系の資金で、株式を買い入れる市場介入を行っています。一方で、大株主に対しては6か月間保有株の売却を禁止しました。この措置が、先月の8日に終了したのですが、現在は大株主が保有する株を売却する際に上限を設ける、新たな措置がとられています。さらに、株式市場の異常な値動きに影響を与える記事を掲載したとして、中国人の雑誌記者を拘束するなど、マスコミに対しても監視の目を強めているわけです。かなり力技のような気もしますけれども、クーさん、こうした中国政府の株価維持策をどう評価されますか?」
クー氏
「慣れていないのだろうなと思いますね。ただ、ある意味で、中国の株式市場というのは、世界のどこ国に比べても透明性が高いですよ。と言うのは、誰が売っているか、買っているか、リアルタイムで全部出てくるんです。当局はこれをずっと監視しているんですよね、朝から晩まで。こいつが売った、こいつが売った、この動きはおかしいなと。コンピューターで全部、そういうプログラムが入っていて、ちょっとおかしな動きがあるとすぐパッと出てくるんです。そのシステムは見事に機能をしていて上海の取引所と深圳の取引所でどんどん上がってくるわけです。この取引はおかしい、この取引はおかしいと。その場でこの人がどういう素性の方で、どういうバックグラウンドで、過去どういうことをやったかというのが全部データで出てきますから。そうすると、合わせてみると、もしかしたら、ここが組んでいるのではないかとか、全部わかるんです、あのシステムは」
反町キャスター
「透明性と言えば、透明性ですよね。そこまでやった時に、ここに外国人の投資家とか、資本を導入するかどうかという時、たとえば、欧米の投資銀行にとって、そこまで透明性の高いというのはどうなのですか?それは喜んで入っていくものですか?何を売ったり、買ったりしているのかが全部、中国当局に知られるようなマーケットに、いらっしゃいと言われて、行くものですか?」
クー氏
「彼らもわかっていますが、彼らはいくつかのそういう、中国の口座を使って、いろいろやるらしいんですけれども」
反町キャスター
「ワンクッションおくと、誰がやっているのかはわからない。でも、裏は見えているわけでしょう?」
クー氏
「すぐにわかっちゃうんですよ。現在、中国当局は一方で資本の自由化をしたい。SDR(特別引出権)に人民元も入るとか、そういうことになっていますから。そうすると、一方で自由化したい。しかし、変なのは入ってくるのは困るよねと。つまり、アメリカの大きなヘッジファンドか何かが入ってきて引っ掻きまわされては困る。だから、ここも1つジレンマですね」
柯氏
「クーさんの言ったことは、要するに、中国の取引システムのスクリーニング機能が高い。これは事実です。なぜかと言うと、上海のシステムをつくった時にニューヨーク、当時、ニューヨークが最先端だったから、最新の技術を入れたわけです。問題なのは最近のシステムを入れたんだけれど、制度が最悪な制度だから、システムと制度のミスマッチが起きるわけですよ。制度とは何かと言うと、いわゆる中国の職業監督管理委員会の恣意的な市場介入をやるわけですね。本来ならば、市場の機能と、いわゆる日本の金融庁にあたる証券監督管理委員会の機能は全然違うわけですから、どんな企業が上場できるのかというのは、だいたい普通の場合は市場が審査するわけですよね。東証なら、東証で。でも、上海は、上海の市場は審査する力を持っていないわけです。全部、政府がやるわけなので、これは僅か一例だけれども、この市場の最大の問題というのは何か言うと、たとえば、機関投資家の存在が弱すぎるとか、海外からクーさんが心配されるヘッジファンドが入って来るだろうと。実は、中国は現在、QFII・QDIIというシステムを入れて、いわゆる海外から投資にくる人というのは事前に申請してもらって、適格であることを認められれば投資してもいいと。しかも、枠が限定されているわけですから、そこはあまり大きなリスクをはらんでいなくて、最大のリスクは政府がどういう形で市場介入するか。先ほど、共産党の悪口を皆さん、言われているけれど、僕は共産党の悪口を言うと怖いので言いませんが、要するに、民主主義の選挙を経験していない政府が、市場との付き合い方というのはわかっていない。たとえば、株価が1年でこれだけ暴落して、これだけ変動していて、誰も記者会見やっていないと。これは不思議ですね。イエレンが利上げするためにどれだけ記者会見をしたか。これは市場とのダイアログですよ。微妙な表現で、アナウンスメント効果を狙って、喋って、投資家と市場がどう動くか。その目的が何かと言うと、ボラティリティを最大限に抑えるためですよ。何のアナウンスメントもなくて、突如、公安警察が突入するとか、問題なのは唐突な介入というのは市場に与えるショックの大きさ。その大きさがもろにマグニチュードとして、先ほど株価の変動にくるわけですから、こういうのは、たぶんすごく時間をかけて勉強をしていくしかないと思います」
反町キャスター
「マーケットとの対話について、これから徐々に習熟していこうという気持ちはあるのですか?現在みたいな関係の方がもしかしたら、党にとってはやりやすいのではないですか?」
柯氏
「敢えて大胆に申し上げると、朱鎔基元総理の時代。あの方はまだ謙虚な気持ちを持っていたんです。スタンフォードからアドバイザーを呼んだと。当時の証券業監督管理委員会のNo,2は香港から呼んだ。現在中国政府の中では外国人のアドバイザー、あるいは外国籍のアドバイザーは1人もいないと。だから、クーさんが呼ばれておかしくないわけですが。だから、そういうアドバイザーがいないわけですから。そうすると、本人達は、市場との付き合い方がわからない。適切なアドバイザーがいない。取り巻きしかいないのだから」

春節直前…消費マインドは?
反町キャスター
「たとえば、この2月、3月の中国の方からの日本への観光客というのは、宋さん、どうなのですか?」
宋氏
「まったく変わらないですね。株価と実態経済はどんどん関係なくなるのが、現在の世界ですよ」
反町キャスター
「それは中国に限らず?」
宋氏
「日本もそうですよ。だって、中国のGDP(国内総生産)の成長率が2013年、2014年、明らかに現在よりも良いんです。2012年も良かったんです。下がってもまだ2700ありますからね。買いませんよ、まだ。正直、あの時は、経済が良かったのに、株が安いです。昨年と一昨年上がった、明らかに悪くなってきたのに株が良くなる。だけど、経済と株価はまず関係ないという1点と、それから、中国の個人消費はGDPに対する比率が6割を超えたんです。これはこれまでにないことです。つまり、GDP全体が下がったのは、製造業の中の靴下とか、セメントとか、靴とか、服とか、付加価値の低いものがどんどん潰れて、東南アジアに移っていったのだけれども。意外と消費系は上がっているんです」
反町キャスター
「クーさん、現在の話。株価と経済の実態は必ずしも一致していない。これは僕ら毎日、毎日、株価が上がった、下がったと…。日本経済はとか」
宋氏
「それが古いんだよ」
クー氏
「株式市場には、教科書通り経済は動いていると思っている人はたくさんいるんですよ。つまり、中央銀行が何か金融緩和をしました。そうしたら、お金がうんと増えるのだろうと。増えるのだったら景気は良くなるから株が上がるだろうと。または、それをやった国の通貨が下がって、やらなかった国の通貨は上がっちゃうと。こういうことで、マーケットはずっと7年間反応してきたんですね。ところが、実際に見てみますと、どの国のマネーサプライ、つまり、我々が実際に使えるお金ですね。我々の銀行預金を全部足したのをマネーサプライと呼ぶんですけれども、全然増えていないです。どの国も増えていない。ところが、マーケットがあたかも増えたという想定で、滅茶くちゃに上がったりしたわけですね。為替だって大きく動いたのですが、たとえば、日本とイギリス。実際にどのぐらいマネーが増えたかというと、毎年毎年そっくりですよ。ほとんど増えていない。ところが、イギリスはリーマンショックのあとにとんでもない量的緩和をやって、2013年以降は、黒田日銀総裁がとんでもない量的緩和をやっているんですね。中央銀行は、供給している流動性だけは確かに増えているのですが、我々が使える、金が全然増えていない、にも関わらず、株価がそこまでいってしまったんですね。これはちょっと調整が入るかもしれないですね、どこかで」
反町キャスター
「中国の経済の話なので、これ以上はやりませんけれども、ただ、現在の話を聞いていると、アベノミクスおかしいよ、という理屈になりますよね?」
クー氏
「これは、他の中央銀行は皆、同じことをやってしまいましたから」
反町キャスター
「金融緩和をして、株価を上げて、それで経済をまわそうと。アイデア、そのものがおかしい?」
クー氏
「完全に破綻をしていますからね」
柯氏
「逆ですね。経済を良くして株価が上がる。株価を上げて経済を良くする、そんなロジックは経済学にないわけですし」
反町キャスター
「世界の中央銀行がそれをやろうと、少なくとも、アメリカも含めて、していたわけではないですか?」
クー氏
「皆、失敗している」
柯氏
「実態経済と株式市場との関係について言うと、いかなることも言い過ぎる、若干、ミスリーディングされるので、株価というのは、実態経済の期待値を表すものですから、よく天気予報、バロメーターと言われる。だから、まったく無関係ではない。でも、現在、足元の経済、リアルに表現しているかというと、そうでもない。世界の金融市場で1つの大きな特徴は、東アジアにおいて、イギリスの植民地だった国や地域では、いわゆる直接金融は強いです。証券市場、香港、シンガポールなど。でも、儒教の影響の強い国というのは、間接金融がメインです。日本もそうですし、中国もそうです。これは見事に分かれているんです。だから、黒田さんの間違っているところが、要するに、金融政策をやって、株式市場を動かして、それで実態経済を良くしようとする、ロジックが完全に狂っているわけで、日本の話は、これ以上は言わないとおっしゃったものだから。では、中国はどうかというと、同じような間違いを犯したわけですけれども。株価、上海の総合指数を無理やり上げる目的、おそらく実態経済を良くしようと。それは完全に間違っているわけですね」

過剰生産の今後と抑制策
秋元キャスター
「さて、中国経済の減速は世界中に大きな影響を与えているわけですが、中でも、中国の過剰生産が問題となっています。一昨日、日本国内トップの鉄鋼メーカーであります、新日鉄住金が第4位の日新製鋼を子会社化することを決めました。その最大の理由は、中国の鋼材の過剰生産によって価格が下落する中、国際競争力の強化をはかるためと言われているんですけれども、柯さん、このように中国の過剰生産が日本に影響を与えているわけですが、今後も中国の過剰生産というのは続くと見ていますか?」
柯氏
「その前に、日本の鉄鋼メーカーよりも、韓国の方が大変ですね。POSCOの方が。日本はまだ耐えられるぐらいですから。問題は、鉄鋼だけではなくて、いろんなオーバーキャパシティの過剰設備が出てきたのかということですけれど、普通、市場経済であれば、常に市場競争にさらされて、市場メカニズムで調整するわけですから、そんなに過剰設備は出てこないです。瞬間的に出てきても、たくさん溜まることはないし。中国の場合は、民営企業がたくさんあります。おそらく民営企業はそんなに過剰設備は持っていないと。持っていたら倒産をするわけですから。誰が持っているかというと、結論出ているけれど、国有企業ですね。国有企業が何でこんなに過剰設備を抱えるかというと政府によって保護されているから、市場競争にさらされることがないし、何かあったら政府が助けてくれるだろうと。いわゆるモラルハザードがあるわけですよ」
クー氏
「私は、国営企業の方とちょっとお付き合いが以前あったんですけれど、これは考え方によっては、国営企業というのは、株主は1人しかいないわけです。と言うことは、その人が本気で、そこに足を踏み入れて、何年間か、この企業を運営するとなれば、普通の人ができないような改革ができるわけですよね」
反町キャスター
「その人がちゃんとビジネスマインドと経験を持っていれば」
クー氏
「持って…。そんなにたくさん企業があるわけではないですから、それだけの数が集まっていればできる。国営企業の改革の一部はこういう発想が背景にあるんですね。つまり、株主が1人の企業だから、改革を進めようと思ったら、すごいスピードでできるはずだと。それは一理あるんですよね。ただ、そういう人間がちゃんといて、その人達が10年は底だと。10年は動かないとわかっていれば、いろんなことができますが、2年で変わるかもしれないと言ったら、これはなかなかできないです。だから、こういうところも全部整備をして、そういう優秀な人間を入れてやっていけば、私は、それなりの成果は期待してもいいのかなと」
柯氏
「中国国内の過剰設備の問題。これは市場メカニズムが機能しないマーケットでは、過剰設備は削減されない、繰り返し申し上げます。この鉄鋼に関して言うと、中国の鉄鋼メーカーがつくっている鉄と日本の鉄鋼メーカーがつくっている鉄。これは、基本は別のものですよね。日本は、いわゆる高付加価値の特殊鋼が圧倒的な大きなウェイトを占めていて、実は直接、中国の鉄鋼メーカーと競争しない部分が大きい。これは勘違いしないでいただきたい。問題なのが、中国の自動車産業がすごくたくさんの過剰設備を抱えているわけですから。そうすると、その特殊鋼を必要とする需要というのは下がってきている。これは、中国の鉄鋼メーカーが、特殊鋼がつくれて、それで値段が下がって云々ではないわけですよ。そこはいいですよね。だから、中国の鉄鋼メーカーと日本の鉄鋼メーカーが、基本的には100%競合していないですよ。むしろ、POSCOの方が苦しい」

『ハードランディング』は?
秋元キャスター
「中国経済のハードランディング、どういう事態を想定していますか?」
柯氏
「そもそも日本ではソロス氏と言われても、ほとんどの人はあまりこの人の話の相手をしないわけですけども、だからどうしたのという話で、だけど彼とバフェットの2人が中国で特に個人投資家の間で何か神様のような存在でして、すごく影響力あるわけですよ。それで彼らが中国の経済がとても有望だと、これまで言い続けていて、中国政府も非常にカンファタブルに感じていたわけです。今回ダボス会議で中国経済がハードランディングするのではないかとおっしゃって、これは謙虚な気持ちで話し合ったんですけど、たぶん現在の中国のリーダー達はこの話を受け入れられなくて、人民日報にアレを書かせたわけですけれど、人民日報の議論は別として、そもそもハードランディングとは何か。これは主観的な問題ですよ。どこまで下がったらハードランディングと言うのか、あるいはどうなのかと、非常に難しい話でして、ただ、1つ言えるのはほぼ全ての研究者が認めるのは、要するに、底が見えない状態がハードランディング。これはたぶん誰も反対しないと思うんです。中国経済の現在、最大の問題は現在がどうこうではなく、方向性、方向感が実は見えてこないわけです。株の下落ぶりからすると、6000ポイント以上から2700ポイント余り、この下落ぶりからするとハードランディングですね。それから、もう1つGDPの6.9%、多くの研究者があの数字がおかしいと。だけど、信用されている、正しいかもしれない、でも、信用されてない状況というのはまさにハードランディングで、ある人が言葉のうまい人がこれソフトなハードランディングと言っている人もいるぐらいで、その言葉の遊びは別として、現在の中国経済は明らかにソフトランディングはしていない、ハードランディングに近いハードランディングをしていると思います」
クー氏
「ソロスが言っているのは、中国で現在、資本流出が起きているということと、あまりにも大きな債務残高が、あらゆるところにできちゃっていると。これが彼のハードランディングの背景にあるんですね。まず資本流出ですけれども、これは変な金が中国に入っているのが、現在事実ですよ。上がるだろう、上がるだろうと、いろんな金が入ってきて、どうも中国の競争力が落ちていると。ドルが上がったのがもともといけないのですが、それで逃げ出そうとしている。でも、中国自体はまだとんでもない経常黒字国ですね。黒字国と通貨というのは、たまには下がりますけれど、基本的には貿易の実需がサポートしますから、日本が逆に長い間、円高で苦しんだように、中国だって、貿易黒字国、経常黒字国ですね。だから、そんなにガチャッといくような理由ではないと、通貨だけ見れば。よく皆、米ドルで比べるんですよ、人民元を。人民元を米ドルで比べると、何年前の数字まで落ちたと騒ぎますけれども、国際決済銀行、これはスイスのバーゼルというところが、実効レートというのを出しているんですね、中国の人民元の。実効レートで見ると全然下がっていないです。高いところでずっと推移していると。ただ、アメリカの実効レートがこの1年半にバーンと上がっちゃったので、それについていっていないだけの話ですよ。だから、対ドルだけで見ると、ワー、人民元は暴落かとなるんですけれど、その他の通貨と合わせた、実効為替レートで見ると、実は極めて高い状態。過去最高の状態がずっと続いています、この1年間。だから、ちょっと1つの通貨だけ見て、世界が崩壊するみたいな言い方は差し控えるべきだなと思いますね。債務残高の方ですけれども、これがハードランディングをどうやって引き起こすかというと、債務があるのに資産価格が下がった時にハードランディングが起きるんですね。ハードランディングは、たとえば、日本の例を考えれば25年前ですよね。本当に土地が下がっちゃって、日本の商業不動産がピークから87%下がった。土地本位制と言われた国で87%土地が下がれば、ハードランディングです。では、そういうことが中国で起きるのかということになると、まず起きていないというのが1つと、それから、過剰につくっちゃったものがたくさんあると、たくさんあることは間違いないので、そういうところでは問題が発生すると思うんですよね。思ったように売れなかった、ここまでしか売れなかった、借金をここまでしちゃったと。こういう企業は問題を起こすわけで、それはまた、銀行に跳ね返ってきますから、バランスシート不況になっちゃうと。でも、そうでないところは、まだ人は都市にどんどん動こうとしているし、まだ中国の農業人口は3割ぐらいいるわけですよ。現在の日本は十数パーセントで、オランダぐらいになると1%しかいないですね。と言うことは、このプロセスは続くんですね。だから、時間が経てば、結構、人が入ってきて、そんなに滅茶くちゃにはならない可能性もまだ残っている。もう1つ、では、本当にハードランディングになったらどうなのか。ハードランディングになると、借り手と貸し手の問題が同時に発生するんです。貸し手の問題というのは銀行の不良債権問題で、これが起きると銀行はお金を貸せなくなっちゃう、自己資本が足りなくなると、こういう問題が発生しますが、それに対する対応策は政府による資本注入ですよ。これは日本でも随分議論しましたが、私もこういう番組に出て随分、ちゃんと日本はやったんですけれども、大変だったんですよね。銀行に公的資金(投入)なんてとんでもないと国民の声がワーッと上がって、それを乗り越えるのが大変だった。私はそれを言い出した方ですからバッシング受けたのを覚えていますが、独裁国家だったらトップの方が、やれ、と言ったら20分でできちゃうんです。もう1つ、民主主義で非常に難しいのは財政出動。と言うのは、今度は借り手の問題になりますと、借り手は何しろ債務超過になっていますから、絶対にお金を借りないわけですね。ところが、一国の経済というのは誰かが貯金していたら、誰か借り手がつかないといけないわけですから、そういう状況になったら政府が買い手を使わなくてはいけない。日本は最終的にそれをずっとやってきたんですけれども、大変難しかった。ばら撒きか、とすごく叩かれたわけです。私も25年間、叩かれていましたけれども、民主主義だと、あんたが変なことをやったのでしょう、なぜ我々政府が尻ぬぐいをやらなければいけないの、税金で尻ぬぐいをと、こういうのが必ず出てくるわけですね、自己責任でしょうと。でも、確かに小さい問題の時は自己責任でいいですけれども、経済全体にこの問題がある時は自己責任論をやったら本当に全部潰れちゃうんです。それが大恐慌のアメリカになって、GDPが半分なくなった、1929年から1933年の間に。中国の場合は独裁ですから、トップが理解し、わかった、財政出動をやろうとなったら、できちゃうわけですよ。(中国は)ハードランディングがあっても、それに対応できる。独裁国家はこういう不況には強いです」

日中経済協力への期待
秋元キャスター
「中国に対して日本はどう対応したら言いのですか?」
柯氏
「現在、乱世ですからね、無茶な時代ですよ。今年の幕開けもまさに波乱の幕開けだったのですが、この乱世において最も重要なのは、私はリーダーシップだと思うんです。それから、もう1つが、グローバルの経済だから、一国で対応をしようとすると無理な話でして、国際協調が必要で。国際協調が必要と言っても、結局、リーダーシップが不在ですよ。私は、日本が強いのが各々の企業だと思うんですね。日本の企業は何が優れているかというと技術。中国の景気が減速すると、実は日本の企業は大事にされる。中国にとって日本企業というのは技術の源ですよ。中国は世界で2番目の経済だけれども、メイドインチャイナのブランドというのはまだ確立されていないですね。昭和40年代、50年代にほぼ全ての日本のブランドは確立したんですよね。なぜなのか、この違いは。要するに、基礎研究をあまりやっていない。イノベーションが起きないと。だから、中国にはまだまだ長い道のりが待っているわけですけれども、そこで日本企業に対して、私はもっと戦略的に中国をマーケットとして捉えるべきだろうと思う」
クー氏
「先ほど、乱世という言葉があって、本当にそうだなと思うのは、反腐敗運動が現在、暴走気味で、不況になったら通貨を大きく動かせない、アメリカとの関係があって。そうすると、今度は政府がお金を使って、財政出動で景気を支えるしかないです。だから、中国政府はこの半年、そういう意味で随分ハンドルを切ったんですよ。これまでは財政出動はやらないと。小さな政府で民間にやらせるんだとずっと言ってきたのに、この半年間、大きくハンドルを切った。ところが、あまりにも腐敗運動が進んじゃっているので、たとえば、ここに発注しろと上からくるんですけど、実際に地方政府が発注するかといったら、しないですね。A社に発注すると、B社がA社は昔こんなことやっていたと密告してくるわけですよ。B社に発注するとA社からそれがくるんですね。皆さん、怖がっちゃって、これは非常に大きな問題ですね。だから、反腐敗運動で動かなくなっている部分、これは地方政府でかなりの部分が現在、動かないそうですけれど、これを何とかまず乗り越えていかないと正常な状況には戻らない」
宋氏
「たとえば、現在進んでいる中国の企業と日本の提携を見るには、メリットが腐るほどある。チャンスもたくさんある。でも、やらないと。1つは、チャイナリスクと言って(いるが)、チャイナリスクではない、日中関係リスクです。昨年の投資は、日本は減ったんだけれども、でも、ヨーッロッパと東南アジアは増えたんですよ、中国への投資。日本は過去、チャイナリスクの代表である天安門事件の時でさえも、増やしてくれたんです。だから、チャイナリスクではないですね。皆さんの本音は、中国人も日本人も日中関係がいつ悪くなるかというリスクです、これは日中関係リスク。チャイナリスクと言ったら、アンフェアですね。もう1つ、成長は止まったと思って、行かない人はいませんから、僕ら経営者は。日本国内でも不景気だから売上げを減らしてもいいと思う経営者はいません。不景気だからこそ売上げを伸ばすチャンスが出てくる。景気を語るな、というのが経営者のコメントです。社員で景気を語るやつはだいたい仕事をしないやつですよ。お前と関係はないでしょうと。そういった関係にいると、中国のGDP、昨年6.8%は嘘と言う人がいるけれど、私は基本的に大きなミスはないと思う。せいぜい少なくても6.3%とか6.5%ある。それでも計算した場合は、皆さんは気づかないかもしれないけれども、これは東南アジアの、たぶんインドネシアと同じくらいのGDPですよ。つまり、中国は現在、実質があまりにも大きいから6%、7%の成長でも毎年1個、東南アジアの大きな国を生み出しているんです。そこで中国はリスクを感じるから、東南アジアに行ってみようという経営者の感覚は、私はアンバランスだと思う。もっとあまり一般論ではなく、もうちょっと実際に中国の経営者と付き合った方が早いと思う」

リチャード・クー 野村総合研究所主席研究員の提言:『次の15年を無駄にするな』
クー氏
「私は、日本と言うよりも中国の方に言っているわけで、中国の生産年齢人口は減少しているんです。日本と同じような状況に入りつつある。まだ、人口自体は減少していませんから、あと15年ぐらいあるんですね、人口が減少するまでに。この間に、一気にやるべきことを一切やらないと、人口が減少しているという国には、なかなか誰も投資をしませんから、現在の日本みたいに。その15年を無駄にするなと。15年、本当に皆さんが一生懸命やれば、中国は一流国、1人当たりGDPが、たとえば、2万ドルとか、そのへんまでもっていける、現在が最後のチャンスですね。そういう意味では、変な国境問題とか、あんなところで時間を潰すのではなく、そんなことをやって日本企業が入ってこなかったら、15年が無駄になっちゃうわけです。この15年が無駄になったあとは、次にこのようなチャンスが中国にくるのはおそらくまたとんでもない、もう200年待たなくちゃいけないかもしれない。そういう意味では、余計なことを考えず、本当にやらなくてはいけない中国経済の改革をやってほしいというのが、私の15年という意味ですね」

柯隆 富士通総研主席研究員の提言:『分水嶺』
柯氏
「現在の中国はどういう状況にあるかというと、一部の方、中国は転換点というか、ターニングポイントと言われている。私は分水嶺だと思いまして、分水嶺はどういう意味かというと、社会主義に戻るか、いわゆる民主主義の市場経済にいくか。先ほど、宋さんがおっしゃるニューエコノミーのところ、なぜ強いかと言うと、まさに至上メカニズムがちゃんと機能するところで皆、中国人ががんばるわけだから、だから、もっと市場経済の制度改革をちゃんとやって、国有企業をできるだけ早く民営化していくと。これが中国にとって残っている唯一の道だろうと思います」

宋文洲 ソフトブレーン創業者の提言:『最大規模』
宋氏
「中国経済はいろいろ問題はあるんだけれども、間違いない。でも、これは日本にとってどう見るべきかということです。たぶん間違いなく5年、6年後は、長くても7年、8年後は規模だけで言うと最大ですね。そうすれば、善くも悪くもきちんと見つめないと、ちゃんと客観的に中国を見ないと日本の判断は誤る」