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2016年1月12日(火)
幕開け波乱…中国市場 日中エコノミスト激論

ゲスト

津上俊哉
現代中国研究家 津上工作室代表
朱炎
拓殖大学政経学部教授
豊島逸夫
マーケットアナリスト 豊島&アソシエイツ代表

中国経済2016年予測 株急落『サーキットブレーカー』騒動
秋元キャスター
「中国株について聞いていきたいと思います。まず上海総合指数の推移を見ていきたいと思います。今年最初の取引だった4日に急落しまして、株価の急変時に取引を一時停止するサーキットブレーカーが発動されました。7日もサーキットブレーカーが発動され、開始28分で取引を停止する異例の展開となりました。ところが、サーキットブレーカーの頻発に市場が大変な混乱に陥ったため7日、中国当局はサーキットブレーカーの運用停止を発表します。それでも昨日は5%超えの下落だったのですが、今日はプラス0.2%と持ち直しています。このサーキットブレーカーですけれども、値動きが制限幅を超えると取引をやめ、投資家に冷静になってもらうことを狙った制度で世界各国の証券取引所で導入されているんですけれども、中国では今年1月4日から導入されて、株価が上下5%変動した場合は15分。再開後7%変動すれば終日取引が停止ということになっています。中国は今年からこのサーキットブレーカーを導入しましたけれども、その狙いは何だったのでしょうか?」
豊島氏
「これは2つ理由があるんですよ。1つは、ここで現在、世界連鎖株安、上海発が2回目だと。昨年1回、8月でやって、また今回やって。これは責任問題ですよ、証券取引監視委員会の。もう既に今回、証券取引委員会のトップが、首がすげ変わるのではないかという噂が、私の知り合いの、上海の金融筋でも出ていますよ。ですから、これはもう2度はできないという焦りみたいなものが監視当局にあったということが1つ。それから、2回目、8月と決定的に違うのはアメリカの利上げ。10年ぶりのアメリカの利上げというものが、今回はその直前にあったと。ですから、世界経済情勢が極めて脆弱な、あるいは不安定な状況で、しかも、年初いきなり北朝鮮の問題。それから、中東のテロ。原油が大きいですよね、原油の暴落と。こういう8月にはなかったような状況が今回はまとめて、たまたま出てきてしまったということで、危機感が、同じ株安でも今回ははるかに根が深いという危機感があったので、当局は、このサーキットブレーカーを、いきなり発動をすると、こういう行動に出たと。これは監視する方もはっきり言ってド素人ですよ、と言うのは、取引所のトップも、取引所のアドバイザリーもやったのだからわかるんですけれど、ほとんどワン・ツー・スリー、トップの1、2、3は党からの天下りですよ。党の貢献度が高いから褒賞人事として来ているんです。ですから、実際にレクチャーをしていてもまったくマーケット感覚がない。1つの例を言いますと、原油の価格の説明をしていたんですね。当たり前の話だけれど、原油の生産者が原油を売ったら原油の価格は下がりますと言ったら、その理事長さんがそれは違うと言うんです。何でですかと言ったら、売らせなければいいだろう。私は売ったら下がる。相手は売らせなければいい。話がまったく噛み合わない。今回もまったく同じ発想で、要は、今回の場合には下がっていると、では売らせなければいいだろうというので、ごく簡単な発想で、では取引を停止させてしまおうという、やや無謀とも言える措置をとってしまったと」
反町キャスター
「朱さん、どうですか?サーキットブレーカー制度、当初の目的通りに機能したのかどうか。それはどう見ていますか?」
朱教授
「もともとは目的が市場の変化、大幅な変化を防ぐためですね。しかし、現在の実行した、2回実施した結果としてはあまり効かないという結果ですね。中国市場は2つの特徴が、たぶん日本と随分違うんです。1つは、個人投資家の割合が圧倒的に多いんです。機関投資家が少ない。ですから、理性的なこと、あるいはいろいろファンダメンタルとか、見て行動するよりも、噂で動くということが多いですね。もう1つの特徴は、政府の介入が大きい。良い介入ならいいですが、今度の介入はあまり効かないでしょう。あまり効果は、予想した効果ではなかったんですね。ですから、普通の市場の動きよりも中国の特別な動きがあるということを私は感じました」
豊島氏
「そこに、先進国流のサーキットブレーカーをいきなり入れてしまった、というところに無理があるわけですよね」
朱教授
「はい」

止まらない人民元安
秋元キャスター
「中国株急落の主な原因となった人民元安について聞いていきたいと思います。こちらが人民元の対ドル相場の推移ですけれども、昨年8月に、人民銀行が人民元の切り下げを行ったあと、一気に急落。その後は落ち着いていたんですけれども、昨年の年末に下げ足を早めまして、年明けから、さらに下げが加速して、今日は、1ドル=6.5751元となっています。津上さん、そもそも中国が昨年の8月に人民元の切り下げを行ったその狙いは何だったのでしょうか?」
津上氏
「あの時は、当局の意図が全然読めなかったので、これは輸出振興のために元安誘導しているのではないかと、憶測が飛び交ったわけですよね。ところが、結果的にあとでわかってきたのは、まさにこの間、11月の末に、IMF(国際通貨基金)が管理しているSDR(特別引出権)という、通貨もどきの値決めをするためのバスケットを、4大通貨の、ドル、ユーロ、ポンド、円の5番目として人民元を採用するという話が内定しましたよね。まだ実行はされていないけれども。要するに、こうしたのをもらいたいがため、そうしてもらいたいのだったら現在の人民元の制度を、ここを変えたい、あそこをこういうふうにしてもらってとか、していただかないとできませんという宿題が、いろいろIMFから出ていたわけですね。その宿題を宿題の通りに果たすというのが、8月にやったことです。ただ、その結果として人民元が下がるという結果が随伴しちゃったものだから、そこで、元安の思惑とか、投機の波とかを生んでしまったわけですね。だから、僕は、あれは元安誘導をしたのだというのは、濡れ衣で、そこは、濡れ衣は晴れたんだと思う。ところが、この11月以降、11月の末に内定して以降、12月に入った途端に、ちょっと当局の方針が変わったのではないかという動きが出てきて、もう少し安値に持っていこうとしているのではないかと、新しい観測が出てきたものだから、マーケットが急に、おいおいというふうにまたちょっと投機の動きが活発になっちゃっているところがあるんです。このグラフは折れ線のところが、上を向いている時には皆、元はこれから強くなる、元高になるから、元を持っていた方がいいと思っている時には、これは上を向くんです。下を向いている時は逆で、これから元、値段が下がるから、現在のうちに手放して他に乗り換えた方がいいよという時はこうなるんですね」
秋元キャスター
「上のこれは何ですか?」
津上氏
「外為占款増減というのは銀行が両替とか、外貨を、買った時の金額というのを表しているんですけれども、このギザギザを見ると、2014年4月ぐらいから、春先ぐらいから、かなり一辺倒に皆、元が弱含みだと思い始めているという様子が表れているんですね。特に、このガクンと下がっている。これがまさに8月の制度改正を発端にして、人民元安の投機の思惑が、生まれた時がこれですね」
反町キャスター
「流出入というと、これは大量の資金が出ていったということですか、中国から。現象としてはどういうことになっているのですか?」
津上氏
「キャピタルフライトという言葉があって、要するに、外国人が一斉に金を引き上げて、引き上げられた側の国がガタガタになっちゃってという、1998年のインドネシアみたいにね。ああいうキャピタルフライトという現象がありますよね。これもそうなのかというとちょっと違うんです。と言うのは、こうやって元はこれから弱含みだから、外貨を持っていた方がいいぞという取引をやっている主力軍は、圧倒的に中国の企業と中国人です。外国人ではないです。そんなものだから、確かに皆、人民元から外貨に乗り換えているんだけれども」
朱教授
「一種の乗り換えだけれども」
津上氏
「乗り換えているんだけれども、では、オーナーはというと、オーナーは中国人のまま変わっていませんという状態ですよね。だから、いわゆるキャピタルフライトとはちょっと違います。ただ、人民元の現金のマーケットみたいなことで言うと、要するに、皆買ってくれないわけだから、ちょっとマーケットはプレッシャーを受けてという、そこのところの現象は人民元マーケットには出るんですね」
反町キャスター
「だんだんわからなくなってくるんですけれども、切り下げを主導しているのは中国の当局ですよね、ある意味においては。だって、翌日の設定、値決めをしていくわけでしょう」
津上氏
「ただ、マーケットが指し示した値段ということなのだから、そうだよねという、そういうことですよね。別に意図的というわけではない」
反町キャスター
「切り下げ、元がどんどん安くなってきた背景には当局の意向というのは、先ほどの話だとあるのですか?ないですか?どちらだと見ていますか?」
津上氏
「昨年の11月まではなかった。ところが、SDR入りが内定した途端に、はあー、内定したというので、そこから、ちょっともう少し安くなってもいいのかなという方向によろよろし始めた話になるんですね」
豊島氏
「先ほども言い始めましたけれども、今回の切り下げの直前にアメリカの利上げがあったわけです。そうしますと、もちろん、中国人の資本逃避というものもありましたけど、一方で、この量的緩和の間で大量のマネーを、中国人が債務という形で借りこんでいた。このマネーが一斉に回収される。マネーの逆流です。量的緩和マネーがいっぺんは、アメリカから中国に流れ込んで、その流れ込んだマネーが逆流するという現象が、今回は起こったというのが2つ目の、今回の大きな、なぜ人民元が下がったのかという理由ですね。人民元を低めに設定をしたという現在のお話がありましたけれども、これはあくまでも追認ですね。これはもし積極的にやるなんていう印象を与えたら、それこそ通貨、為替操作国ということで避難されますから。ですから、これは非常に人民銀行としては、気を使いながら、オペレーションを進めたということだと思います」
朱教授
「私から見ると、人民元の為替レートは、実は2005年から上昇をし始めた。元高になって。この主な理由は経済成長、あるいは国際収支の黒字。またアメリカからの圧力も強いんですね。だから、中国の金融当局から見ると、元が少しずつ上がらなければいけない。しかし、上がると輸出産業は苦しいのですから。政府は、実はそんなに上げたくない。しかし、これまでは、アメリカの圧力とか、いろんなことから上がらざるを得ない。しかし、2014年、2015年あたりは経済の成長で、これで少しはダウンをして、輸出も不振で、だから、元が上がらない、そういう環境が出てきた。それで、また2015年8月。それから、11月、12月。やっと、アメリカの量的緩和が終わって、それから、金利が上昇すると。またとないチャンス、そういうに考えて」
豊島氏
「市場原理に任せておけば、人民元は下がるわけですよね。だから、これは市場原理で下がったのであって、何も自分達が為替の誘導をしたわけではないということは、おっしゃるようにできるので」
朱教授
「そう。そう思われたくないからね」
反町キャスター
「その言い訳は、皆で、国際市場で受け入れられるのですか?これは、だって、中国の為替は基準値を政府が決めて…」
朱教授
「それと、もう1つの要因がある。人民元は現在国際化しているんですね。香港、ロンドン、シンガポールにオフショアセンターがあるんです。あそこで、国外で流出している、あるいは取引されている人民元がある。あそこで形成されたレートは、実は国内と違うんです。国内は規制が強いから、国外のレート、中国政府の介入が少ないから、比較的に、市場の、本当の需給を反映している。現在のところは、海外のレートが元安です。ですから、これはかえって国内の元レートを下げる要因になっているんです」
豊島氏
「規制がかかっていないマーケットは、市場原理が働くから、そうすると現在、お金が中国から出ていっているわけだから、人民元は下がるわけです。それをオンショア、つまり、国内の市場は規制がかかっていて人民銀行の管理下にあるから、下げるのを必死に食い止めている。つまり、現在、市場介入をしているわけですよ。どういう市場介入かというと、放っておけば人民元が下がるわけだから、それを買う。外為取引というのは、必ず何か買ったら別の通貨を売るわけだから。だから、何を売るかというとドルを売ると。その売るドルがどこからくるかというと外貨準備。現在減ったといえども3兆3000億ドルの外貨準備から賄うと。これの問題点は、現在、ただでさえ景気が減速しているところに、当局が規制された市場で、人民元を買うということは、市場から、つまり、中国経済から人民元を吸収する、吸い上げるという引き締め政策になってしまうんですよ。ですから、これが人民元、人民銀行が抱えている最大のジレンマ。一方、人民元を安くすれば、国際競争力が強まって、中国の輸出は増える。だけれども、これを放置すると、ますますお金が出ていってしまう。それを介入し、人民元を買って、ドルを売るというオペレーションをやると、今度は現在、緩和している経済を引き締める。こういう逆効果になってしまうと。だから、片や輸出は助かる。だけれど、実際に今度は国内の経済に引き締め効果が出てしまう。このジレンマが現在、最大の中国人民銀行が抱えている…」
反町キャスター
「国際通貨基金、IMFのSDRに人民元が入っていくという話があったではないですか、津上さんから。これはどういうものかというと、どこかの国際通貨基金の加盟国が非常に困った時に、そこから助けを借りるという、そういう意味?特別引出権はそういう意味ですよね?」
津上氏
「ええ」
反町キャスター
「人民元がそこに入るということは、人民元というのは、かなり信頼性の高い通貨でなくてはいけないという意味だと僕は思っているんですけれど、通貨の為替レートが2種類あって、国際通貨として認めることというのは皆、安心していいのですか、それは?」
津上氏
「それをはやく取り込んで、それをいわば、きっかけにして、中国に金融の自由化を、何とか促していくという、そちらの働きもあるわけですね。だから、お前らなんて、何点取れるまでは学校に入れないからというのがいいのか。それとも早期に入学をさせて、ちょっとここがあれだから、補習をしろとした方がいいのか。そこの戦術論があるのかもしれません」
反町キャスター
「そうすると、朱さん、現在の話、IMFが、要するに、中国人民元をSDRに組み込むことを認めたことは、中国にしてみたら喜ばしいことなのですか?それとも、宿題を負わせられて大変だなという、そういう両方あると思うんですけれども、どう見ていますか?」
朱教授
「確かにおっしゃる通りですね。まずとても喜んでいる。つまり、中国の人民元は、現在はまだ国際通貨ではありませんね。自由交換ができないです。だから、なぜかと言うと、資本、取引の資本自由化をしていない。中国は徹底的にする気はない」
反町キャスター
「する気はない?将来的に」
朱教授
「将来的にはやるんですけれども、でも、完全に自由化するとアメリカのヘッジファンドとか、いろんなところで攻撃をされるものですから、自分で守ることができないから、少しずつ自由化する。しかし、自由化していないから、国際通貨ではない、本当はSDRに組み入れることはあり得ない。しかし、中国の影響力は、そこまで大きくなったんです。宿題を残しながら入った。しかし、今度のように乱高下するんです。ちょっと不安定通貨のイメージを与えてしまうと、SDRの構成通貨になれば、他の国が準備通貨として使うのですから、いつも乱高下をすると準備通貨に使う場合はちょっと不便がある。ですから、今回、こんなに差があることは、SDRに組み入れても、中国の人民元の信用力を若干傷つけるのだと思います」

人民元安…周辺国への影響
津上氏
「何で12月から方針が変わって、元が弱くなってもいいようなことになっているかと、これはまったく憶測ですけど、もう1つの背景としたのは現在おっしゃったように国際的なイメージから言ったら、強い人民元といって胸張り続けた方がいいですけれども、それをやるためには、現在のマーケットから言うと、元買い、外貨売りの介入をガンガンやらないと維持できないですね。ただ、それをやると、外貨準備はどんどん消耗していってしまうわけです。1年半前、4兆ドルに届きますと言っていたわけです。もう現在、1年半で7000億ドルも減っちゃっているんです。それで、外貨準備の6割はドル建て債券ですからね。いや、元のレートを安定させます、強い人民元で守りますとやっていると、すごい勢いでドルの債権とか、何とかを売っていかないといけないということになると、これはちょっと国際金融、世界経済に対する攪乱要因になっちゃいますよね。中国はそれだけ大量にドル建ての債権を、アメリカの国債とかを、マーケットに売りに出せば、債権の値段が下がる。そうすると、金利は上がるということ。裏表ですから、イエレンさんがやっている、そのアメリカの利上げの横で、ちょっと、あなた、FRBでもない人がドルの金利をいじっては困りますみたいなことになっちゃうわけです。ちょっと、そこのところの問題にこれ以上、強い人民元で引っ張っていると、そういうような形で世界経済の攪乱要因を呼んでしまうという問題につながってくるということがあるものだから、ちょっと方向が変わりつつあるのかなと」
反町キャスター
「つまり、人民元がジリジリ安くなっているということは、周辺の世界経済の影響というのをどう見ていますか?」
津上氏
「これは非常に難しい、先ほど、豊島さんもちょっとおっしゃられていた。私もちょっと連想をしたんですけれども、人民元が安くなるのに任せたらどうなるかというと、たぶん今度は、途上国の、いわばドミノみたいな、通貨安が世界で起きちゃうんですよね。途上国とか、資源国とか、そういうところは将棋倒しみたいに通貨安になっちゃう可能性がある。そうすると、だいたいその中で、1、2か国は流れについていけずに、何かIMFに助けてくださいみたいな、通貨危機の国が出てきたりして、これは世界経済が大混乱する。それはまずいから、元のレートを安定させろというので、中国が外貨準備を取り崩すと、これはこれでまた何かという。どちらへ動いても、だたでは済まない、みたいなね」

低成長となった背景
秋元キャスター
「なぜ中国の経済は減速したのでしょうか?」
朱教授
「まず中国経済は約30年間高成長を続けたんです。高成長の中でいろんな矛盾、いろんな歪みがたまって、それで、現在表れてるんですよね。ですから、現在、構造転換しなければいけない。たとえば、これまでは輸出主導、あるいは外需主導です。これからは内需主導にしなければいけない。投資主導で経済成長したのですから、これからは消費主導しなければいけない。また、製造業主導で成長したものは、これからサービス業を発展させなければいけない。あと製造業の中でも、たとえば、労働集約的とか、低付加価値とか、そこから高付加価値に転換しなければならないと。その転換の中で経済成長は低くなるはずですね。いつか転換が終わったらまた成長に戻るんです。現在はちょうどこの調整の途中です。ですから、経済成長は下がる。2015年はまだ発表していないんですけれども、7-9月、6.9ですね。7%を切るんです。前年度は7%を切ることはたぶん決まっていると思います。ですから、これからもう少し調整することがあると思います。また、この調整の段階では、たとえば、環境対策とか、あるいは労働集約的な産業をクローズするとか、あるいは他の移転とか、いろんな傷みを伴う。ですから、こういうことは経済成長、低いレベルで我慢しなければいけない。これが、いわゆる新常態(ニューノーマル)です。いつかこの調整段階が終わる、あるいは新たな成長産業が育つとまた戻ってしまうということがある」
津上氏
「私はもっと悲観的でありまして、昨年10月ぐらいだったですか、ちょっと日付を忘れましたけれど、G20の蔵相会議というのがトルコのアンカラであったことがあって、そこのところで、財政部長をやっている楼財政部長という人が記者会見で、これから中国は5年ぐらい厳しい時期が続くと思うと言ったあと、ひょっとすると10年かもしれないと言ったんです。この楼さんの発言に注目する理由は、2年半ぐらい前に成長維持するのか、それとももうちょっと下げてもいいのかという問題について日本の感覚で言うと、これは閣内不一致と言われてもしょうがないというぐらいはっきりと見方が分かれた時があったんです。その時、成長率をこれからダウンさせても構造改革とかをしていかなければいけないという方の筆頭に立ったのが楼さんですよね。それから2年半経って、どう動いたか振り返ってみると、楼さんの言った通りに動いてきたんですよね。7.5から7になり、6.5になり。彼が権力者だというわけではないけれど、彼のような見方が現在政府の中で主流を占めて2年半やってきたんだねとことになっている。その人が5年ないし10年は厳しい時期が続くと思うということを言っているのは、僕は理由のあることだと思います。投資バブルをやっちゃって、破裂をするとは言わないけれども、後遺症を何とか堪えなければいけないと、ここで無理すると本当に大変なことになるから暫くはトンネルの中をじっと我慢していなければいけないという時期に入ったということだと思うんですね」

回復までの道のりとは
反町キャスター
「中国はバブル以降の日本の経済停滞を研究していると言う人がいるということですが」
朱教授
「私の理解として、中国は日本の失敗からよく学んだことが2つです。1つは円高です。急激な円高は避けること。ですから、これまで中国はずっと元高に抵抗していたんですね。これが1つ。もう1つはバブルのこと。つまり、バブル、泡はずっと大きくなるといつか弾けること。ですから、中国はこの5年間で実は不動産市場の温度を下げること。つまり、貯まったガスをガス抜きすることをずっとやっている。ですから、上がったり、下がったりして、一気に上昇させることをしないことは、ある程度日本の教訓からうまく吸収したものです」

『一帯一路構想』と経済政策
秋元キャスター
「一帯一路構想をどのように見ていますか?」
豊島氏
「私は欧州債務危機の時にアテネに何回か行ったんですけれど、たまたまそこで隣町のピレウスという大きな港の町に行った時に、これがその写真ですけれども、この港全体が現在、中国資本によって乗っとられようとしているという、こういう実態を見たんですよ。この写真はピレウスの埠頭ですけれども、青いクレーンと、ちょっと赤っぽい、赤茶けたクレーンの2つがあるんですけれども、青っぽいクレーンが中国系ですね。特に中国系が多い。ただ、これは色で識別している。一切中国語の表記がないですよ。これは現地の人達を刺激するから。既に労働争議が起きている。実際に、私が監視しましたのは、一帯一路構想の中で、バルカン半島の最南部というのは極めて重要なヨーロッパへの入口であると。ここに、しかも、そこの港。港というのは具体的に言うと、港湾設備会社含め、一切合切を、入札を入れて、チャイナマネーを入れようとし、また一部も入ってきているということで、中国がギリシャ財政危機のどさくさに紛れてと言うのかな、港を買って、しかも、アテネ国際空港。ここの利権も2020年から20年間の利権というものに入札を入れているんです。一方、ポルトガルに行きますと、ポルトガルも地政学的に極めて重要で、北アフリカ、それから、南アメリカ、北アメリカ、ヨーロッパを結ぶ、そこのポルトガルのインフラ、たとえば、発電所、エネルギー関係、そういったところにチャイナマネーが入ってきている。ですから、一帯一路構想で既に終着駅の方は手を着々と打っているわけですよ。これからその間を埋めようということだと思うんですけれども。これでもう1つあるのはイギリスですよね。イギリスに原発を入れました。ですから、そういう意味で着々と一帯一路構想をヨーロッパの方で、お金の威力と言いますか、お金の力で進めている。また、これはヨーッロッパにとっても多少悔しいことだけれども、現在、お金は必要だと。チャイナマネーが必要だ。受け入れざるを得ないと。言うことで、たとえば、イギリスの場合でも原発、中国製原発を入れることに関しては非常に強い世論の抵抗があったわけですけれども、敢えてキャメロン首相はそれでもチャイナマネー、中国製品を受け入れるということを表明した。ですから、全体として見ますと、一帯一路の終着駅の方は徐々に現在、固まりつつあるというのが私の印象です」

現代中国研究家 津上氏の提言:『木だけでなく森も見よう』
津上氏
「現在中国発のバッドニュースが世界を揺るがしているので、皆がチャイナリスクということに目がいっているのですが、震源地は確かに中国だけれども、それで被害を受けるのが震源地の中国とは限らないということに、皆さんの注意を喚起しておきたい。むしろ周辺の東南アジアだとか、東アジアとか、そちらの方が大きく影響を受けることもあり得るんですね。日本の株式市場の動きを見ていると、マーケットはまさにそれを心配しているという気がします。ですから、チャイナリスクというのはチャイナが傷む話とは限らんよという、そこのところを(見よう)」

朱炎 拓殖大学政経学部教授の提言:『消費の動向を確認すること』
朱教授
「つまり、中国経済は現在成長が減速する。産業にいろんな問題がある。ですから、投資も含めて、全て下がっている。しかし、消費活動あれば、経済がうまく回転している、あるいは所得も増加している。ですから、消費の動向を見れば、中国経済の本当のことがわかる。ついでに日本に来る観光客の消費行動も確認する必要があります」

豊島逸夫 マーケットアナリストの提言:『虫の目 魚の目 鳥の目』
豊島氏
「まず現場を見る虫の目、それから底流を見る魚の目、歴史的に俯瞰する鳥の目、この3つの目で中国を見ましょうということですね。たとえば、人民元の問題で言えば、投機筋と人民銀行が戦っている、流れを見れば、人民元が徐々に下がってきている。歴史の目で見れば、国際通貨制度の中で、変動相場がいいのか、固定相場がいいのか、これが歴史の目です」