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2016年1月5日(火)
佐藤優・山内昌之登場 2016年世界情勢と日本

ゲスト

佐藤優
作家 元外務省主任分析官
山内昌之
フジテレビ特任顧問 明治大学特任教授

2016年の世界情勢を読み解く 日韓合意『慰安婦問題』の行方
秋元キャスター
「年末の28日に日韓外相会談で合意しました、いわゆる従軍慰安婦問題について聞いていきたいと思います。昨日この番組に出演された菅官房長官ですけれども、慰安婦問題の合意について『1年以上交渉していたので、ここがまさに日韓50年という機に解決できるぎりぎりだったと思う。最終的かつ不可逆的な解決を確認し、政府が決めたことを、約束したことを、1つ1つ誠意を持って努力していく、これに尽きると思う』と話されて、慰安婦問題の合意と、最終的な解決を強調されたわけですけれども、佐藤さん、今回のこの合意で最終的な解決となると見ていますか?」
佐藤氏
「合意はしたんですけれども、合意を守るとは約束していないということになる可能性は十分にあると思います。というのは、12月28日の、これは産経ニュースですが、ここのところで、尹外相は、日本側の措置は、これは、かっこの中で、産経が入れたものです。着実に実施されることを前提に、慰安婦問題の最終的、不可逆的な解決を確認すると言ったと。ということは、条件付きですね。この前提というのは、誰がどう判断をするのかについて詰めていない。すなわち韓国の方が前提を満たされていないと言えば、これは別に合意を守らなくても約束違反ではないですね。それから、さらにもう1つあります。それはソウルの日本大使館前の少女像というんですけれども、これに関しても、韓国側は、関連団体と協議して、韓国政府として適切に解決するよう努力する。努力するという約束ですから、これは外交の世界で、努力の約束というのは拘束力が非常に弱いです。最大限努力しましたが、民間団体側が納得しないので韓国政府としてはどうしようもありませんという結果になっても、約束違反、合意違反ではないわけですね。ですから、非常に脆弱な合意だと私は見ています」
秋元キャスター
「山内さんの話を聞く前に、今回の合意内容をあらためて押さえたいのですが、日韓の合意内容です。軍の関与の下、多数の女性の名誉と尊厳を傷つけた問題として日本政府は責任を痛感。安倍総理がここからお詫びと反省の気持ちを表明。元慰安婦を支援するため韓国政府が財団を設立し、日本政府が10億円程度の資金を一括拠出。前項を実施する前提で慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認。韓国側からは、慰安婦少女像の扱いは韓国政府が関連団体との協議を通じ、解決に努力。このような内容でした。山内さん、どのように見ていますか?」
山内氏
「最終的かつ不可逆的な解決と、これは英語でここではirreversibleという表現が使われているのだろうと思います。この言葉というのは、実際に外交用語としては何回も約束を破ったりして信頼し難い相手と交渉したり、そこで何らかの措置をお互い認め合う。あるいは強制しようとする、守ってくれと。こういう場合に使われる用語だという、こういうケースが多いと言われているんですね。特に最近の日本が関わる交渉や外交、多国間外交で使われるのは北朝鮮に関して、北朝鮮の過去を巡る交渉で登場する以外にはあまり通常の外交交渉では使われないというぐらいの言葉だと言われているんです。従って韓国の側の立場や見方として言えば、この不可逆的という言葉はもちろん、もともと日本側が拘ったわけですよ。もう蒸し返さないということで。しかし、韓国側の元官僚はある意味で、非常正しいことを言っているんですね。正しいというか、ある意味で、ポイントを抑えたら、繰り返し、繰り返し、慰安婦問題に言及する韓国。つまり、自分の国について、日本側はある意味で、北朝鮮のようなレベルでの外交感覚、つまり、1つのことに対して拘って、和解といったものを閉ざすような、そういうふうなレベルで見ているのではないかと。だから、韓国側としては、これはある意味では侮辱を受けたと。こう解釈する人達がいるわけです。従って、この最終的かつ不可逆的なというのは、日本側からすれば、これをもって、まさに最後となすということだけれども、韓国からすればこの表現自身が本当ではないと、なぜこういうものを受け入れたのだという世論。これが既に起きていますし、これからそういう世論に押された時に、次の、朴さんのあとの政権がどういう態度をとるかというのは未知数ということになるわけですね」
反町キャスター
「朴大統領のあとの政権でどうなるかが問題だと先ほど言っていましたけれども、その意味を裏返した言い方をいうと、朴大統領の間はたぶん今回の日韓合意。ある程度は守られるだろうという、残り2年ですか。そのぐらいの賞味期限があるだろうと見ていますか?」
山内氏
「それは期待しないということですね」

サウジとイラン…国交断絶の衝撃
秋元キャスター
「続いて、中東情勢について聞いていきたいと思います。一昨日サウジアラビアがイランとの国交断絶を発表し世界に衝撃が走っています。まず基本的なところ、こちらで押さえ直していきたいと思うのですが、まずサウジアラビアはイスラム教スンニ派が多数を占める国家。イランはイスラム教シーア派が多数を占める国家です。国交断絶に至った経緯を見ていきたいと思うのですが、サウジアラビアが2日、反政府デモを主導し、宗教対立を煽ったなどとして死刑判決を受けていたイスラム教シーア派の有力指導者ニムル師他47人の死刑執行を発表しました。これを受けて2日夜から3日にかけてイランの市民が暴徒化しまして、首都テヘランのサウジアラビア大使館に火炎瓶を投げ込むなど、襲撃しました。こうした事態を受けてサウジアラビアがイランとの国交断絶を発表。昨日、バーレーンとスーダンもイランとの国交断絶を発表した、こういった流れだったわけですが、佐藤さん、この動きをどう見ていますか?」
佐藤氏
「サウジアラビアはむしろメッセージはイランだけではなくて、アメリカにも出していますね。要するに、これはちょっと非常に複雑ですけど、過激派組織のイスラム国というのが出てきました。このイスラム国というのはスンニ派に属するわけです。それで、このイスラム国の特徴というのが、日本から見ていると、ヨーロッパ、あるいはアメリカやイスラエルを相手に喧嘩腰であるというところが、強く見えるんですけれども、実際は、最初にやらなければいけないのは、シーア派を全部やっつけてしまわないといけないと。一昔前、日本の極左の、内ゲバの発想ですね。本当の革命をやるためには最初に敵対する他の新左翼グループをやっつけなければいけないという内ゲバ論理を持っているわけですよ。だから、イランとしてはISが出てきたら困るということで、本気で戦っている。そこにアメリカは目をつけたわけです。敵の敵は味方だから、ISと戦う前に一生懸命にやってくれるのはイランではないかと。そこで、イランという国は核開発をどうもしているのではないかという疑惑があると。その疑惑があるんだけれども、疑惑は疑惑として平和利用の研究をしているならいいのではないかということで、昨年7月14日に、アメリカが主導して、アメリカとイギリスとフランスとロシアと中国とドイツ。この6か国とイランの間で合意をつくるんですけれども、これは1万9000個ある遠心分離器のうち、6000個は残していいよと。これまでウラン濃縮をして広島型の原爆をつくることができるんですけども、その濃縮の秘密工場、地下工場は研究施設として残してもいいよと。国際原子力機関、IAEAの査察に関して、普通は無警告で査察をするわけです。ところが、軍事移設に関しては制限があるよということで、隠れて核開発をしてもいいですよというような、相当譲歩した合意をつくってしまったわけですね。それはイスラム国との戦いで、イランを味方にしたいから。それを見ていて、サウジアラビアはすごく腹を立てたわけですよ」
反町キャスター
「サウジアラビアからすれば、アメリカの姿勢は裏切りに見えるのですか?」
佐藤氏
「裏切りに見える。イランはイスラム国との戦いだけではなく、スンニ派全体をやっつけようとしているのではないのだろうかと。だから、バーレーンであるとか、あるいはイエメンですね。ここのフーシー派であるとか、あるいはサウジアラビアの中にも、東の方にはシーア派の人達がいるんです。こういうようなところのシーア派の人達をどんどんそそのかして、サウジアラビアの体制を脅かしているのではないかと。だから、いい加減、イランとの関係については見直してくれと言うんだけれども、アメリカは聞く耳を持たない。それに対する苛立ちがイランとの国交断絶という、かなりエキセントリックなことをすることによって、本当に僕達は怒っているんだよと。この雰囲気を出しているのではないかと見ています」
山内氏
「シーア派とスンニ派という、シーア派の盟主リーダーであるイラン、それから、スンニ派、メッカ、メディナの両聖地の管理者であるサウジアラビアという、この2つの大国では、言ってしまうと、宗派主義というものを自ら先頭に押したてたということです。その宗派主義というのが何かと言うと、国民、国家の単位で、物事を考えたりするような、我々が慣れ親しんだような考え方ではなく、その人物や、その街はスンニ派に属しているが故に悪い。こちらはシーア派に所属しているが故に討伐されるべきだと。こういう形で、集団の単位は我々国民という単位を1つ想像的なものとして頭に描くわけ、言っちゃうと。日本国民という形で考えますが、想像されるような共同体が宗派という想像された共同体。ここにシーア派がある。ここにスンニ派がある。これが最も重要な単位として出てきて、その形で同じ国民でありながら、イラクのように、シリアのように、スンニ派とシーア派が対立し合う構図が、これが宗派主義です。悪いことに、そこにさらにはIS、イスラム国という、スンニ派のイスラム過激派集団が出てきて、何を始めたのかというと、宗派主義だけでなく宗派浄化。これはセクタリアンクレンジングというのですが、昔、エスニッククレンジングがありましたでしょう、ユーゴスラビアで。ボスニアヘルツェゴビナにいる、民族的な種族としてのムスリムと言われる特異な民族がいたんです。そういうところに所属しているが故に集団として殲滅されなければいけないというのがセルビア人やクロアチア人の過激派、右翼、ナショナリズムの過激な主張であって、実際にそういうふうにやったわけ。国連は、武器の援助というものを制裁として、それはダメだという形でやったから、セルビア人やクロアチア人は隣国からの援助でできますが、民族的種族としてのムスリムは孤立してしまって、クレンジングされるままになったという時期があるでしょう。今回、我々が見ているのは、ISによるシーア派の攻撃に対抗して、実際シリアで戦闘をやっている集団はイランの革命防衛隊、コトス軍団と呼ばれる軍団がイランから行って、指揮、指導をしている。シリア軍というのは事実上解体されているわけですから。そこで、代わりにやっているのは、ロシアとイランですけれども、このイランが今度は、逆にスンニ派に対してセクタリアンクレンジング、宗派浄化をしようとしている。宗派対立や宗派主義だけではなくて、それがそういう形で、お互いを殲滅するという方向で進んでいた。しかし、これだけであれば、ISという、ある意味でテロリズムの集団というものと、それに対する国家としてのイランではなくて、革命防衛隊という隠れた集団がやっているということで済むのだけれども、今回、サウジアラビアとイランという国が、公然と国交を断絶するという、最も厳しい、次に起きる事態というのは、これは戦争ですよ、狭義で言えば。そういうものに近づくということを意味する。戦前だったら、国交断絶というのは、相手に、戦争行為をするよということの意思表現につながっていくわけですから、そこまで踏み込んだ。そこまですると、サウジアラビアにとっては、これまで国内において、東岸を中心に、ペルシャ湾を中心にシーア派がいるんですよ。このシーア派の問題を封じ込んできたわけ、何とかこれまでは。前のアブドラ国王の場合には。ところが、アブドラ国王が死んで、今回のサルマン国王になって、外交方針が非常に急展開し、非常に強硬になってきたんです。なったというのは、これまで国内であったパンドラの箱。つまり、シーア派とスンニ派の宗派対立、宗派的な衝突というものを回避しようと、そのためにパンドラの箱を開けないように努力をしてきた。力の限りを尽くしてきたんだけれど、今回のニムル師というシーア派のリーダー。実際には、彼は相当程度、国内において革命的先導、実際に反政府、反王室的な行動をしていたから、彼は許されなかった。しかも、暴力とか、そういうところにも関わったと。ですから、リアルな問題はそういうことです。このIS、イスラム国と革命防衛隊という構造と今度のサウジアラビア対イランという国家間の構造が結びついたらどうなるのかというと、これは我々も非常恐れている、中東における第二次冷戦的状況と、それから、もう1つ、別の種類の戦争というものが結びついたら何が起きるかと。これもあとから議論した方がいいと思うんです。そこが怖いという状態が今回、生まれたということです」

『イスラム国』…衰えぬ背景
山内氏
「我々、テロという言葉を使うのですが、テロという言葉だけでは、やはり理解できない時代がきている。ISはテロをやっているのですが、実際シリアで行われているのはもはや内戦でさえない。ロシアという大国が直接関与してきて戦争当事国になっている。イランも革命防衛隊を介して、戦争当事国になっている。ロシアほど明示的ではないけども。従って戦争が行われているのは、シリア戦争…」
佐藤氏
「そうです。内戦ではなくて国際的な戦争、本物の戦争です」
反町キャスター
「シリアを舞台にしたイランとロシアと、あとトルコも絡んでいるわけですか?」
山内氏
「トルコ、それから、サウジアラビア、湾岸諸国の一部」
佐藤氏
「意外と小さい国ですけれども、カタールですね」
山内氏
「カタールとサウジアラビアがかなり…」
反町キャスター
「それはイメージで言うと世界大戦という言葉にはならない?そうすると、この地域限定という意味ですか?」
山内氏
「いや、これは2つ解釈ができる。それは昨年パリで大テロが起きました。あの時、ローマ法王フランシス1世が、世界が非常にバラバラの状態だけれども、まとまりのない第三次世界大戦に入っているという表現を使った。ですから、そういう大きい意味で言うと、世界中のあちらこちらで、IS、あるいはそこにつながっていく集団や個人がテロを起こしていますね。パリで起こしたというテロ、シリアでは戦争が行われているわけ。そうすると、シリア戦争の部隊や戦線が、シリア国内だけではなくて、ISの方からすれば、欧米が出っ張って来て、戦争している。支援をしている。ロシアも来ている。それが今度はパリ、あるいは北コーカサスのチェチェン等で、そこでやることがテロと表現するけども、ISからすれば、これは限りなく戦争だと認識をしている」

『第三次世界大戦』の可能性
反町キャスター
「そうすると、いわゆる第三次世界大戦は第二次、第一次のような正規軍による対象的なものではなく、非正規の戦いであると」
山内氏
「国家間による戦争だけのイメージだとダメですね。二種類あって、これが1番複雑なのは国家間です。中東で現在、進行しているのは、異なる種類の危機が同時に進行しているからわかりづらい。それから、中東危機と言うより中東複合危機です。複合危機という意味は、この間もロシアとトルコが現在、緊張状態にあります。トルコが領空侵犯というようなことを言って飛行機を落として、緊張化していると。2つ目は、今回のサウジアラビアとイランです。こういう国家間の関係において緊張状態、あるいは準戦争状態になっている、そういうレベル。これは第二次冷戦的な状況が熱戦を伴うような形で、進行していることの1番わかりやすいケース、国家間関係。それから、2番目のケースが先ほど申した、IS、イスラム国対他の関係国家との関係。これはある意味で、ISというのは非常に古めかしことを言っているかもしれないけれども。彼らが直接否定しているのは、近代の国民国家とか、それから、国境の概念を否定したりし、それを超えたところで…。それから、武器や手法もインターネット、サイバー空間を使う戦いもやっていると。あるいはポストモダンですよ。このポストモダン型の戦争が同時に進行をしているわけで、ポストモダン型の戦争と第二次冷戦が一部熱戦化まで結びついたならば、何が起きるかと。それが従来型と違う第三次世界大戦になっていく。あるいは解釈によっては、フランシス法王のように第三次世界大戦の一部であると。第三次世界大戦だという解釈もある。私はそこまで現在、断定する根拠、勇気はないけれど、少なくともロシア、トルコの関係やサウジアラビアとイランの関係が非常に臨界点を超えた場合、熱戦になりますね。熱戦になった瞬間に第二次冷戦は非常に危険な領域に入るわけ。それと先ほど言ったISのポストモダン型戦争が結合していった場合、グローバルにいろんな影響を及ぼしていくから、これは質としては第三次世界大戦なると」
反町キャスター
「ISを支えている経済的背景をどのように見たらいいですか?」
佐藤氏
「まずその前にISというのはちょっとでかく見え過ぎている。ですから、ロシアやイラン、もちろん、アメリカもそうです。それから、サウジアラビアがプロ野球チームだとすると、これは草野球みたいなものですよ。強豪に見せる技術に長けていると、こういうことですね。ですから、ISは大きな氷山のように見えると。だけど、割り箸の先に氷をつけて海の上に上げているような感じですよ。下に氷山がどの程度あるのかわからない。下支えというのは非常に弱いです。そこのところをSNS、それから、インターネット空間を使ってでかく見せると。こういうことですよね。だから、ISによって殺されている人達の数と、ISが各国の空爆によって殺されている、戦死している数だったら、これはもう100倍以上の開きがあると思いますよ。ですから、そこのところにおいてはISというのはこの2年ぐらいは実は守勢にまわっているわけですよね。それを大きく見せているんです、ですから、あまりお金もかからない。と言っても、それは人質ビジネスであるとか、あるいは貧しい民衆を絞り上げてとる税金、それと、石油の密輸ぐらいで得られる額では足りない。となると誰か出しているやつがいる。だから、そこを疑っているのは、イスラエルの専門家達というのはどうもサウジアラビアとカタールが臭いのではないかということを非常に言いますよね」
反町キャスター
「それはISをサポートすることによって、イランを押さえたい?」
佐藤氏
「そうです。ですから、イランというのも、それに対する恐怖感、イランの脅威に対する認識というのは中東専門家と、それ以外の人の間でだいぶ開きがあるんですね。ですから、イランとサウジを見たら国の大きさもだいたい同じぐらいだし、油もサウジの方が出そうだし、サウジの方が強いのではないのか、アメリカとも仲が良いし、こういうふうに見ちゃうと思うんですけれど、かつてイランはペルシャ帝国でしたから。ですから、ローマ帝国より先に世界を支配していたのはペルシャ帝国だくらいの意識は、イラン人は持っているわけですよ」

佐藤優×山内昌之 2016年の世界情勢を読み解く
反町キャスター
「現在の世界を分析するにあたってプレモダン、モダン、ポストモダンという3つの視座、視点で見るべきだという話ですが」
佐藤氏
「これは『第3次世界大戦の罠』という本をつくるための対談をしている時に、山内先生からの強い示唆を受けた中でだんだん私の頭の中でかたまってきたんです。私は元外交官でした。そうすると、どうしても思考がモダン、すなわち国家が全てなので主権国家だ、あるいは人権というのは普遍的な価値だと。こういうことで物事を考えるのだけども、どうもそうではない要素がたくさんあると。たとえば、難民の問題が起きることにしても、これは、人、物、金の移動が自由になっている。国境の移動が自由になっているから起きる。これはポストモダン的なことですね。グローバリゼーションの中です。それと同時にイスラム国はSNSとか、インターネットとか、サイバー空間とか、ポストモダン的なものをすごく使っていますけれど、カリフ帝国の復興という近代より前のプレモダンです。これが動機になっている、宗教。それから、プレモダンな状況は、たとえば、地理ですよね。これまで第一次世界大戦に飛行機が入って来て、第二次世界大戦においては、三次元の戦争になってくるから、もう地理なんてあまり意味がないんだと皆、思っていた。ところが、現在でも山に逃げちゃったテロリスト集団は掃討できないですよね。ですから、捕まえられない。アフガニスタンでも、クルド人達が抵抗しているのも山に入っちゃおうと思って。チェチェンも、北コーカサス…。ですから、そこのところにおいてはプレモダンなところの地理というのが未だにすごく大きな影響を与えている。これまではプレモダン、モダン、ポストモダンという言い方を歴史の時間の流れと共に考えていますね。ところが、時間の流れでもうプレモダンのものはないと思ったら大きな間違いで、たとえば、星占い。星占いに結構凝る人いるでしょう。あれは完全に天動説ですよね。だから、星占いの世界には天動説が生きている。それと同じように、先ほどのローマ法王のような人というのは、古からの教えを伝えなければいけないということだから、プレモダンな感覚で世界を見ているから、普通の外交官達とは違うような、あれっ、第三次世界大戦みたいなのが段階的に始まってきているな、というのが見えちゃう。ですから、プレモダン、モダン、ポストモダンが同時に起きていると。こういうふうにしてみると、現在の複雑な国際情勢というものの複雑さがより論理化できるのではないかと、こういうふうに思っているんです」
反町キャスター
「日本人は地理的な感覚、宗教的な感覚、プレモダンで見るのは不得意ではないかと思うのですが」
佐藤氏
「必ずしもそうではないと思うんですね。と言うのは、たとえば、某公共放送で大晦日になると歌番組がありますね。しかし、率直に申し上げて、何であの程度の放送であれだけの視聴率がとれるのですか。あれは私、宗教行事と思っているんです。あそこでカオスを起こすでしょう。ワーッとどんちゃん騒ぎをして。そのあと11時45分になったところでお寺の鐘の様子が出てきて、そのところで今度はコスモス、秩序、それをつくることによって生まれ変わるんですよ。これは年次行事の中で。ですから、年が変わった時に、秋元さんは外国にいたのでよくわかると思うんですけれど、お正月で気持ちが新しくなるという感覚を持っているという人達は少ないですよね。年がまた1つ増したと感じるんだけれども、もう1回、新年だから新しいお宮参りに行ってと。この感覚にはなかなかならない。こういうようなことが埋め込まれている宗教性が日本人には結構あるんですよ。あるいは、最近問題になったのはインターネットショップでお坊さんの注文ができると。要するに、お葬式の時にお坊さんに来てほしい。しかし、お布施とか、そういったところがよくわからないし、面倒くさいから、インターネットで注文してお坊さん券というのを買うと。そうすると、連絡をして来ると。それに対して日本仏教会の方がとんでもないと。これはお布施の商品化だと。これだったら課税の問題が出てくるのではないかとか言って、現在そちらの業界では問題になっているんですけれど、インターネット的なポストモダン的なツールを使いながら、お葬式ということが心配で、死後のことが心配だから、お経をあげてもらわないといけないと。こういうふうになってくる。ですから、プレモダン的なものは生活の中に入っていますね。あるいは何でお中元、お歳暮の習慣が未だになくならないのか。贈収賄と別枠、あるいは税金だって、お香典、結婚式のご祝儀は課税されないですよね。こういうようなところというのは前近代的なものは習慣として入っているわけです」

山内昌之 明治大学特任教授の提言:『歴史的思考』
山内氏
「いろいろな事件が今日も起きました。昨日も、それから、年末も起きています。中東だけに限って見ましても。それをその都度、スポットで細かく考える、それも大事なことです。同時に、その問題を大きな歴史の流れや、歴史の構造の中で、あるいは地政学といったような枠組みの中で、そう考える。基本的に言えば、歴史的な知識や流れの中で大きな枠組みで考えるという。そういう歴史的な思考ということを私としては重視したいと思います。特にこういう光明溢れる時代についてはこのような大きな流れや筋道でモノを基本的に考える。そういう立場をしっかり持っておくことが大事かなと。これは自分ではそう心がけたいと思っている努力目標として申しているわけです」

佐藤優 元外務省主任分析官の提言:『真理は人を自由にする』
佐藤氏
「実は新約聖書の中にあるイエスキリストの言葉をちょっともじったんですけどね。嫌なこと、耳障りなこと、あるいはちょっと調べると面倒臭いことでも、それが真理につながることだったら努力をしてみることによって、これまでの偏見から解き放されて自由にモノが考えられると少し楽になりますよ、ということで、私のモットーとしている考え方です」