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2015年12月23日(水)
日本医師会会長に問う 診療報酬と医療費削減

ゲスト

横倉義武
日本医師会会長
松山幸弘
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

持続可能な医療とその方策 決定した診療報酬改定率
秋元キャスター
「まずは今週月曜日に決まりました2016年度の診療報酬改定率について、話を聞いていきます。今回の改定に関する概要ですが、厚生労働省が2016年度の予算編成において社会保障費の増加分を6700億円として概算要求をしていたんですけれど、財務省は1700億円を削減して5000億円にするように要求しました。そうした中で、今回の診療報酬の改定が行われたわけですけれども、医師の技術料などにあたる、この本体と呼んでいる部分が0.49%引き上げられる一方で、薬価は1.33%の引き下げとなりました。全体としては8年ぶりのマイナスとなる0.84%の引き下げとまりました。まずは横倉さん、この本体については当初マイナスになるのではという見方もありましたけれども、結局、プラスとなりましたが、医師会としてどのように受け止められていますか?」
横倉氏
「診療報酬の本体部分というのは、どういうふうなものに使われているかということを少しお話をさせてもらいますが、実は技術料の中には当然ながら医療関係者の人件費も、医師も、この中で医師の人件費というのが1割強でありまして、その他、医療関係職と言われる方の人件費が40%近くということであります。それと、もう1つの問題は、設備関係費、ランニングコストを書いてありますけれども、いわゆる病棟を新しくしたり、リニューアルをしたりというような建築費ですね。そういうものとか、電気代とか、ガス代の光熱費ですね。医療というのは特に電気をたくさん使うのが最近、多いものですから、そういう光熱費のランニングコストが入っている。それと、もう1つは医療機器・機材費ということで、医療機器の購入代とか、リース料とか、医療消耗品の備品とか、そういうものが含まれた形の本体、技術料ということになっていますと。それでこの本体が引き上げられると、医者の懐をなぜ増やすかという批判をよく我々マスコミから受けるのですが、こういう構造になっていることを1つご理解をいただきたいということですね」
秋元キャスター
「医薬品という部分についても、同じようなことが言えるわけではないですか?こちらも人件費が」
横倉氏
「医薬品費というのはもちろん、製薬メーカー人件費とか、いろいろありますよ。ただ、実勢価格と診療報酬で決めている価格の差額が出てくるわけですね。その差額を、医薬品費をマイナスに今度はできたと。実勢価格に基づいたものになりました」
反町キャスター
「実勢価格とはどういう意味ですか?それは診療報酬の中で決められたものよりも…」
横倉氏
「実際は安く仕入れられているというようなことですね。そういうものを」
反町キャスター
「医療現場においては現在そういう状況になっているということですか?」
横倉氏
「そうそう」
反町キャスター
「そうすると、今回マイナス1.33%というのは、薬剤師、ないしは薬剤の製薬メーカーからしてみれば、あまり痛くない?」
横倉氏
「それだけ利益率が下がるでしょうね」
反町キャスター
「もともとここで法的に定められている価格よりも多少安めに病院に卸しているのでしょうから」
横倉氏
「調剤薬局。現在、薬の場合は半分が調剤薬局に卸しているので、そういうものですね」
反町キャスター
「その意味で、現在横倉さんがおっしゃりたいのは、病院の方と違って、薬の方が弾力性、その値下げに対する体力の方は、こちらの方があると言う意味で言っています?」
横倉氏
「そうですね。実は医療関係者というのが、約300万人いるわけですよ。全国にね。医療機関というのも全国津々浦々ありますでしょう。だけど、その300万人の方々の給与も当然、アベノミクスで2%上げなさいとか、いろいろあるわけでありますから、そういうことを含めた人件費ということです」
反町キャスター
「松山さん、全体のバランスを見た時に薬代を下げて、技術料を上げたという、この医療費抑制という大枠においてナタを振るうのであれば、両方バスンと切るのかなと普通は思うんですけれども」
松山氏
「そういう意見の方もおられます」
反町キャスター
「薬代だけを下げて医療費の方を上げたという、この部分はどう見たらいいのですか?」
松山氏
「日本の場合は政治的な決着とか、いろいろな問題があると思います。現在最も影響が大きいのは財政の状況だと思いますね。高度成長期であれば近未来、暫く診療報酬プラスでも大丈夫だろうと、上げられますけれども、ご承知の通り、日本の国と地方自治体の借金の合計額はすごい金額になっていますから、それを考えると抑制気味にいかざるを得ない。私は、たぶん消費税の引き上げを2017年4月に延期したことも影響をして、2020年頃まで医療界にとっては非常に厳しい状況が続くと見ています」

医療機関の効率化と合理化
秋元キャスター
「さて、診療報酬の改定率についてこれまで様々な場でこのように発言しているんですね。『診療報酬の改定でプラス改定を行わなければ、医療崩壊の再来を招くことになる』と、医療現場の危機を訴えてこられているわけですけれど、横倉さん、現状、それほど病院の経営というのは危機的状況なのでしょうか?」
横倉氏
「医療崩壊の再来と言ったのは、実は2002年から2004年、2006年、2008年と4回続けてマイナス改定がありました。あの時に立ち去り型サボタージュとか、医療崩壊というのが非常に喧伝をされました。実際いろんなところで病院が閉鎖をされた。ですから、マイナス改定をずっと続けるとそういうことが起きますよということです。それと、もう1つ、冒頭に8年ぶりのマイナス改定といいましたが、2年前の改定の時も、消費税の時は、5%から8%に引き上げた時、消費税分というものを勘案するとマイナス1.26%というマイナス改定だったんですね。ですから、2回続けてマイナス改定、厳しい改定をすると、また、医療崩壊が起きますよということです」
松山氏
「現在、日本全体の医療機関が全体で赤字になっているかというと、そんなことはないと思うんですよ。そういう意味では、全国レベルで医療崩壊が進むということは、私は現在のところは何とかなるかなと思うんですが、では、地域別に見たらどうかというと、地域によってはそういうことが始まっているところがある。ただ、その始まっている理由の1つとしては、たとえば、病床数が多過ぎて過当競争になっている。逆に言えば、医療機関が過去、過剰な投資をずっと繰り返してきたと。その結果、現在、供給調整が始まったということですね。日本の医療提供タスクの最大の問題は、税金を投入されている国公立病院、国立病院と、自治体が設置者である公立病院と、さらには、国立大学の付属病院がかなり過剰投資の元凶になっている。その結果、それを放置しておけば、民間病院が煽りを受けるわけですよね。それは防止しないといけないと。たとえば、これは先生の方が詳しいかもわかりませんけれど、民間の医療法人は(損益率)2.1、2.0ということで、プラスを全体で保っています。一方で、その国立病院は、2013年度までは医療、経営改革でプラスになっていましたけれども、今回少しマイナスになっている。これはたぶん消費税の影響とかがあると思うんですけれど、公立病院が問題ですね。公立病院は、この調査のサンプル数というのは必ずしも全体を表しているわけではなくて、全体で見ると、年間、合計で8000億円以上の補助金が入っていながら、赤字で…」
反町キャスター
「8000億円の補助金を貰いながら、2014年度11.3%損益率?」
松山氏
「これはサンプル数が公立病院全部ではないと思います。集計する時は確か補助金抜きでやっていたと思うんですけれど、総務省が発表するデータでは補助金込みで発表をするんですけれども、年間8000億円が入っていて、収支トントンぐらいできていると。しかし、過去の累積赤字というか、未処理の赤字が2兆円ぐらいあるわけですね。そこを改革しないと実は地域医療提供体制がまともにならないと。民間が経営している医療法人と、いわゆる診療所は全体で見たら健全な経営を一応できていると。黒字ですよね。ところが、民間の医療法人とか、診療所というのは、補助金を貰っているわけではないですね。国立病院と公立病院は補助金が入っているわけです、特に公立病院に入っていると。ところが、たくさん入っている公立病院は地域の住民の医療ニーズに合った診療科目になっていなくて、過剰投資をずっと繰り返してきているわけです。それが結果的に、近隣の民間の病院の経営も圧迫するわけです。なぜかと言うと、公立病院が患者をとるために、高度医療機器をドンと入れたら、民間病院もそれに合わせないと」
反町キャスター
「お客を持っていかれてしまいますよね」
松山氏
「それで重複投資が起きてしまうわけです。それだったら、私はむしろ民間病院に補助金を出して、そこで高度医療機器を置くか、もしくは公立病院だけしてやる」
反町キャスター
「崩壊をするのか、しないのかという質問にしましょう。診療報酬を下げると医療崩壊が起きると横倉さんは言っている。医療崩壊が起こると思っていますか?」
松山氏
「私は思っていません。ただし、それは程度問題ですよ」
反町キャスター
「それはそうです。5%も6%も下げられたら民間企業は大変ですよ。医療崩壊が起きるという、横倉さんの意見とどこが違うのですか。何が起きると思っているのですか?」
松山氏
「それは、地域によっては、まず公立病院の経営がおかしくなっているところはいっぱいあるわけです」
反町キャスター
「収益性の低いところから、まず淘汰が進んでいくだろうと」
松山氏
「ええ。たとえば、北海道立病院が確か7病院あったと思うんですけれど、年間の医療収益が94億円、95億円で、累積している未処理の赤字が731億円あります、現在」
反町キャスター
「そういうところが、診療報酬を下げれば、さらに経営が苦しくなって、処理していかざるを得ない。つまり、崩壊ではなくて、淘汰なり、選択なりと、こういう理解でよろしいですか?」
松山氏
「そこはさらに問題があって、淘汰されれば、まだいい方で、公立病院だから、赤字でも税金で補填して、資金繰りをつけてもらえるわけです。だから、残ってしまうんです」
反町キャスター
「そうすると、地方財政を圧迫する?」
松山氏
「圧迫したうえに、民間の医療機関が大変なことになるわけです」
反町キャスター
「そうすると、診療報酬を下げると、経営効率の悪い公立病院はさらに悪化するにもかかわらず、資金援助があるから潰れない。かえって、ここのところに公的資金がつぎ込まれて、経営が維持されることによって、これまで健全に経営されてきた、民間病院が潰れるかもしれない?」
松山氏
「私は、そう見ています」
横倉氏
「現在、診療所が激減をしだした地域がいくつかあります。だから、どうしても人口が少なくなってくる。少なくなってくるけれども、人は住んでいるわけです。人の住むところに医療がいるでしょう、何らかの形でも。それが維持できなくなってきている地域が出だしたわけです。ですから、そのためには、本体というのをプラス改定しておかないというのは、先ほど申し上げたように、いろんな様々な医療関係者の人件費とか、光熱費がこの本体から払われているわけですからね」
反町キャスター
「ただ、現在の話を聞いていると、この公立病院、国公立病院の収益性の悪さが飛び抜けて目に付くわけではないですか?」
横倉氏
「医療コストが高いわけですよ。そこの改善はしなければいけないわけですね」
反町キャスター
「そこの経営努力。病院に経営努力を求めるかどうかという議論もあるかもしれません。ただし、明らかにやれているところと、やれていないところがある時に、どこも一律に救わなくてはいけない。どこも一律に潰れないためにちゃんとしたお金を手当てしなくてはいけない。たぶんこれは見ている人達は理解できないと思いますよ。そこは淘汰というか、選択というか、努力があってもいいのではないかという、どうですか?」
横倉氏
「だから、国民の皆さん、どこに住んでいても、健康保険は払うわけ。そしたら当然、サービスがないといけないでしょう。そういうところのサービスがだんだん減っていっている。これは国民としては納得できませんよね」
反町キャスター
「僻地医療の公立、国公立病院の収益体制の悪さと、この人達に対して公費をどんどん注ぎ続けていくことと、僻地への医療水準というのは完全にイコールですか?それは中核都市とか、地方の大都市における重武装した公立の悪い大病院を維持するかどうかという議論だと僕は思っています。現在の話は僻地の医療ですよね」
横倉氏
「その通りです。僻地医療です」
反町キャスター
「それだと話が違うのだと思うのですが、どうですか?」
横倉氏
「僻地のみならず中核市でも様々あるわけです。そういう地域というのは。医療提供が十分にできないところが。と言うのは、本体が上がったと言って、0.49%ですよ。1000円のものが4円90銭上がったぐらいなものですよ。そういうふうに理解をすれば、何もプラス改定というのが大変なことではない。それは2%、3%上がるなら別ですけれど、そうでないわけですからね」
反町キャスター
「松山さん、医療法人の病院経営における効率性。これは求めてはダメなのというか、求められないものなのですか?たとえば、公立病院に対して経営の効率を上げなさいというのはできないものなのですか?」
松山氏
「それはできている事例があります。それは山形県の県立病院と酒田市立病院が合併して、素晴らしい経営をして、黒字化しています。では、なぜ他にできないかというと、病院長が無能なわけではないですよ。要は、地方の経営の権限を握っているのは地方議会ですよ。院長先生が改革したいと思っても、権限がないわけですよ。議会が認めないといけないから。議会の人は、医療経営、地域医療経営なんて考えていないし、病院経営の素人ですから、できるだけ大きな病院をつくってほしいという」
反町キャスター
「要するに、票になるということ?」
松山氏
「票にもなりますし、自分のお金ではないからです」
反町キャスター
「結果的にそうなると、たとえば、過剰な設備とか、そういうものを畳んで、少し経営効率を上げたいと思う人がいても、それを地方の自治体が許さない?」
松山氏
「ええ。だから、公立病院の院長先生が、私に対して地域統合をしたいと、自ら言うわけです。そうすれば、地方議会から直接関与を受けなくなりますから」
横倉氏
「それはあるでしょうね。だから、今後の問題は、0.49%上がった本体をどういうふうに配分をしていくかが大きな問題だと思います。これから中医協でやりますけれども」
反町キャスター
「そうすると、いわゆる医療と経営の分離の問題とか、そういうことではないですね。よく医療法人のトップには、医者がいて、そこの部分というのが、経営のマインドのない人達がトップにいるのでうまくいかないんだよという、ステレオタイプでよく批判を聞くんですけれども、それはそうではなくてやろうと思っている人がちゃんと地方の中核病院にもいるんだけれども、国公立病院にも。それを地方の政治や自治体が許していないというのが1番大きな理由だと。そういうことですか?」
松山氏
「そうです。私はそう理解しています」
反町キャスター
「ただし、プロの経営者というのは必要なのではないですか?そうでもないのですか?」
松山氏
「たとえば、民間の医療事業体の中にも勝ち組というのはたくさんあるわけですよ。要は、その人達は、たとえば、一般的な病院だと急性期の方が偉いということで急性期をやらないみたいな病院設計をする人がいるんですけれど、それだと負けてしまうわけですよ」
反町キャスター
「負けるというのはどういう意味ですか?」
松山氏
「要は、医療技術の進歩と共に患者さんをどんどんはやく病院の外に出せるわけですよね。かつ高齢化と共に慢性期医療の患者が増えますから、その人達は急性期の病院に入院するわけではないですよね。そうすると、医療事業体がその地域で、ちゃんと成長するためには退院したあとも全て包括的にケアをしていくような事業体でないと、つまり、事業ポートフォリオ、診療ポートフォリオが地域住民ニーズに合っていないと」
反町キャスター
「急性期の患者さん、回復期の患者さん、長期の患者さん、要するに、バランスがとれないと、病院の経営がうまくいかない?」
松山氏
「ええ、それがちゃんとできているところは現在も収益がすごく安定していますよ。それを、私は国公立病院でちゃんとやるべきだと。核になるものをつくって、そこに他の民間の事業体が患者情報の共有を前提の下に参加をしていけるような仕組みをつくるべきだろうと。そうしないと、全体が倒れちゃうよということを私は申し上げているわけです」

『高額療養費制度』の見直し
秋元キャスター
「日本の医療費の現状ですが、年々増え続けているわけですけれども、2014年度は40兆円に達しているんですね。この増え続ける医療費を、今後どう抑制していくのか。この問題を考えるうえで、避けて通れないのが、医療費全体の36%を占め、年々増加している75歳以上の医療費です。2008年度には、およそ86万円だった、75歳以上の方の1人あたりの医療費。2014年には93万1000円に達しています。ちなみにこの金額が75歳未満の4倍以上だということですね。この高齢者の高額な医療費に関して、政府の財政諮問会議は現在の高額療養費制度を見直し、来年の年末までに結論を出すことを財政健全化の改革工程案で示しているんです。高額療養費制度というのは、医療費の自己負担割合は原則1割から3割ですが、病気ですので、高額の医療費がかかった場合、治療費がかかった場合、この制度で月毎の負担額に上限を設けています。その上限額は現在、年収と年齢によって決まっています。たとえば、入院で月に100万円の医療費がかかった場合、自己負担額は年収1200万円の人の場合、69歳で25万4000円ですけれども、70歳以上になりますと、およそ3分の1の8万7000円になるんです。年収が370万円以下であれば、4万4000円の負担で済むということですけれども、松山さん、高額療養費制度の見直し、今回、診療報酬の議論の中でも1度浮上して、結局先送りになったということなのですが、ここにメスを入れるということは、相当ハードルが高いということでしょうか?」
松山氏
「私は、高齢者であっても金融資産を持っている。もしくは所得が高い人に負担の増加をお願いするということは正論だと思うので、持っている方から出していただくというのは、これはもう避けられないのではないかと思っています。ただし、あとでも議論になるかもわからないんですけれども、そういう個人の価値観とか、判断に委ねるような給付と負担のバランスの問題に関しては、公的保健の中にオプションというか、選択肢をいくつか設けて、それを選んでもらうような仕組みを入れないと、いきなり増やすぞと言われた時には、お金を持っている人でもちょっと国民の中で納得しない人が出てくるかもわからない。海外ではそういうオプションを導入することで、選挙時の高齢者の不満を和らげるとか、いろいろな工夫をしているんですね。それをする時期にきているのではないかと思います」
反町キャスター
「そうすると、現在の話だと先ほどの表で言うと高額療養費制度。年齢による区分と収入による区分となっていますけれど、収入による区分をやるべきであって、70歳以上になったらいきなり3分の1にガタンと負担が減るような、そういうことはもうやめるべきだと考えていますか?」
松山氏
「究極的にはそういうことですね」
反町キャスター
「年齢ではなくて所得で加減をするべきだと。そういうことですか?」
松山氏
「そうです。その方が公平だと思いますね」
反町キャスター
「いかがですか。現在の話」
横倉氏
「所得に応じた負担というのは、我々はずっと常に言い続けてきているんですね。でありますので、高齢者であるが故に、ドンと8万7000円が上限というのはおかしいかもしれません。ただ、現在370万円から770万円という切りかたを、若い人の場合にしてあるのですが。そこらへんは少し現在のままでも良いのかもしれませんが、そのうえ、いわゆる1000万円以上の年収がある方という場合には少し負担を増やしていくというのはいいかと思いますよ」
反町キャスター
「この部分が先ほど、松山さんが言っていたところと絡んでくるのですが、たとえば、1000万円以上の所得を持っている人達が同じ100万円の医療を受けたことに対して25万円負担をすると。住民税非課税の皆さんだったなら、3万5000円で済むよと。こういう25万円から3万5000円まで、こうあるわけではないですか。たぶんそれの累進性というか、そのものをずっと続けていくべきだということもあるし、もしかしたら、それをもっと強めるべきだという議論かもしれないですけれども、ただし、それはいくら払おうとも受ける医療サービスはたぶん1000万円の方も、所得ゼロの方にしても同じですよね。基本的には?」
横倉氏
「基本的には一緒ですね」
反町キャスター
「そこの不公平感は、これが所得税だったら累進性があるからわかるんですけれども、この医療の保健制度から療養費、医療費に関しても、あなたはいくら以上の所得があるのだから、ここにいる所得ゼロの人の20倍を払ってくださいという、これはどうなのですか?」
横倉氏
「以前、日本医師会で国民調査をしたわけ。いわゆる経済格差を医療格差に持ち込んでいいのかどうかという国民の…」
反町キャスター
「逆の議論ですね」
横倉氏
「うん。そうすると、経済格差を医療格差に持ち込むべきでないという意見が、国民の中には多いですね。自分が病気した時には同じ医療サービスを、できるだけ受けてもらいたいという声が多いですね」
反町キャスター
「それは、だけど、その世論調査をしたら皆、それはそう答えるのではないですか?軽減税率を6割が賛成するのと同じ理屈ではないですか?」
横倉氏
「しかし、社会の公平を考えると、どうしても所得が多ければ、少し負担をしてもらう道筋はあると思いますよ」
反町キャスター
「それは、たとえば、大多数の人々が、私より所得の多い人にはもっと負担してくれよという感覚になるというのは、僕はこれは当然だと思います。でも、結果的に、たとえば、中間所得層ぐらいの人達が、実は住民非課税の人達に比べると、僕は、倍払わされているか、3倍払わされているのを目の当りにした時に、現在のような議論で国内はまとまりますか?」
横倉氏
「だって、現在69歳まで、その制度でうまくいっているのだから」
反町キャスター
「そこは、国民はここも、もしかしたら情報非対象、情報公開するのかどうかの話になっちゃうんですけれども、きちんとこれだけ情報を公開したうえで、国民の人達に、あなた方は同じサービスを受けるんだけれども、にもかかわらず所得によって医療費負担が違うんですよ、というところは徹底していくべきだと。今後も継続していくべきだと」
横倉氏
「そうです」
反町キャスター
「どうです?」
松山氏
「それは、そうしないといけないぐらい財政が厳しいということですよ。だから、私は現在の日本の財政を考えれば、仕方がないと思います。たとえば、オーストラリアの公的医療保険は2階建てになっているんですけれども、2階部分の保険料は受けるサービスが同じでも、所得の高い人ほど大きくなっています。これは、国民が合意しているわけで、大事なのは、所得の大きさにかかわらず、受ける医療サービスの質はほぼ平等ですという仕組みをまず軸としてつくると。その中でコスト負担について議論をするという方法しか、たぶん選択肢がないと。その時に、国民に一律、1つの制度を強引に一律適用をするのではなくて、国民の方にも自分で選ぶ権利を与えるという工夫を他の国は入れている、いろいろと。日本もそれを入れる時期に来ているのではないかと」
反町キャスター
「つまり、こういうことですよね。医療保険を1段と2段、こちらが1段目、こっちが2段目になるんですけれども、2つ分けて、こちらの方は、誰しも皆さんが絶対入る基礎的な医療保険であると。これは、要するに、皆、国民一律の同じ負担であると。ないしは基礎年金みたいなもの。ここの上の部分は高所得者の人達がそれに見合った負担を新たにつけると、その分何が良くなるのですか?先端医療のより高い医療サービスを受けられるということですか?」
松山氏
「オプションの設計にはいろいろな方法があるんですけれども、たとえば、以前、財政審議会の方から、外来診療をした時に、定額負担という話がありましたが、それを受け入れるのであれば保険料を少し安くしますよとか、それから、新しい高度医療をすぐ受ける時に、自己負担を2割でいいですよ。もしくは5割でいいですよという保険があった時、5割負担でもOKという人は少し保険料を安くしてあげるとか、そういう個々人の状態に合わせて選択できるような部分も少し入れていくということをしないと、新しい技術をどんどん国民に適用していくためのインフラが育たない」
反町キャスター
「医師会では、この件についてはどうなのですか?」
横倉氏
「これは、まだ、現在のところ議論は十分詰まっていないので、これから本当に財政が厳しい場合はこの議論をしていかないといけないですね」
反町キャスター
「財政が厳しくなった、もうなっているのですが、将来的打開策として、こういう2階建ての保険制度というのも、視野に入れるべき時期にきているというような考えですか?」
横倉氏
「そうですね。それと、先端技術がどんどん進歩していますでしょう。再生医療にしても。だから、そういうものを保険給付に入れる場合、たぶん現在の保険の財政ではパンクするでしょうからね。その時にそういうものを準備しておくということは必要かもしれません」

止まらない医療費膨張 健康寿命の延伸策
秋元キャスター
「ここから健康寿命をどう伸ばすかということについて考えていきたいと思うのですが、現在、厚生労働省は社会保障負担を軽減するために健康寿命と平均寿命の差の短縮を目指しています。どういうことかと言いますと、健康寿命というのは健康上の問題で、日常生活が制限されることなく生活できる期間のことです。男性の健康寿命が71.19歳で平均寿命との差が9.02歳あります。女性の健康寿命が74.21歳で平均寿命との差が12.4歳あります。つまり、この差の部分というのが、日常生活の制限のある不健康な期間ということになり、多額の医療費がかかる部分となるわけですね。健康寿命を伸ばすための予防医療も大切になると思うのですが、その場合、医師の役割というのもちょっと変わってくるのでしょうか?」
横倉氏
「私どもが、かかりつけ医というものを、ずっと持ってくださいねと言うのは、いわゆる健康な時から、健診の受診率を上げるためにかかりつけを持った人の方が、健診受診率が高いとか、そういうことがあるんですね。それとか、私ども運動指導ということも、スポーツ、健康維持の教育もしていますので、そういうこともできるわけで、40代、50代から、そういう取り組みをしっかりとやってくださいと。そのお手伝いをかかりつけ医がちゃんとやっていきますよということです。それによって健康寿命を伸ばしていこうと。65歳から健康寿命を伸ばそうと思ってもなかなか難しいですよ。若い時からちゃんとやっておかないといけないですね」
松山氏
「かかりつけ医というのを各家庭が持つ必要はあるんですけれども、問題は総合診療ができる医師の方が不足していると思うんですね」

『かかりつけ医』 狙いと課題
反町キャスター
「言葉の定義。かかりつけ医と、総合診療ができる総合医。これは違うのですか?」
横倉氏
「僕らは一応、一般の開業医の先生が、いわゆる消化器内科専門で開業しましたと言ったら、これは外国で言うと、専門医ですね。内視鏡ができるとか。開業されると、風邪の患者さんも来られるから、ずっといろいろ勉強して幅を広げるでしょう。そういうのがかかりつけ医ですよというわけ。総合診療は現在新たな学問の体系としてスタートして、幅広く、いろんな勉強をさせていこうということですよね。だから、現在のところは、医療提供体制としては、しっかりかかりつけ医というのを定着させて。かかりつけの中に総合診療の勉強をした人が入ってくるという形が良かろうと思っています。それで日本医師会として、来年4月からかかりつけ医の教育プログラムを各都道府県医師会にお願いをしてスタートさせます。それを受けてもらうことによって、よりかかりつけ医としての技量を上げていただくということにしようと思っています」
反町キャスター
「それは、要するに、かかりつけ医というのは普通の街の、普通の医者と考えた時に、総合医になる資格がない人達の職能訓練のように聞こえます」
横倉氏
「だって、これまで総合診療医という制度がなかったのだから」
反町キャスター
「そうすると、では、総合診療医の資格を取らせるということでもないんですね。現在の話だと」
横倉氏
「だから、総合診療医の資格を取らせる、将来的に取りたいという人はそういうカリキュラムをやっていただくような道筋を現在つくろうとしているわけですね」
反町キャスター
「それは、どうだろうか。たとえば、かかりつけ医という、技量というのか、レベルとか、広さ、フィールド、テリトリー。取り扱える広さというのは、医者としての能力として、かかりつけ医の医者としての能力と、いわゆる総合診療医と言われる人の医者としての能力というのは違うんですよね、おそらく。総合診療医の方が高いと、俗に言われるのは間違いなのですか?」
横倉氏
「日本の、一般の開業医の能力は非常に高いですよ、総合診療医として。勉強をしてきたから、現在の街で開業している方より能力が高いということはありませんね」
松山氏
「その点については、よくテレビで医療番組があって、視聴率が非常に高いわけですけれども、よくあるのは、ある原因不明の病気になって、医療機関を半年、1年はしごをしたけれども治らなかった。テレビ局にメールを送って、助けてくださいということで、総合診療のできる名医を紹介しましたということで、問診で病名がわかるわけですよね。あれを見ていると、現在のレベルのかかりつけ医の先生は、検査データだけで判断をして、その患者さんの全身を見る能力が不足をしていると思うんですよ。それができるのが総合診療医かなと、私は思っていて…」
横倉氏
「医師は皆、教育課程で、現在総合診療医がいう、問診とか、聴診、視診というのは全部やっているわけですよ。それに加えること、いろんな検査の能力を持っているというのが、現在の医者ですね。現在医師として養成の初めの部分。打聴診から始まって、病気履歴の聴取からというのは、1番、診断学ということで、我々全部やっているわけですよ。だから、それをもう一遍復活させようということ」
反町キャスター
「そこの部分というのは、いわゆる現在のかかりつけ医の皆さん方に、研修を義務化するという、そういう話ではないのですか?そこまでは考えていない?」
横倉氏
「義務化までは考えていない」
反町キャスター
「そこは、たとえば、最寄りの医者が、かかりつけ医の場合と綜合診療医の場合とで、僕は同じ人で、どちらかに行くとしたら、印象論から言うと、こちらに行ってしまいますよね、総合診療医の看板を掲げていたら」
松山氏
「だから、私が厚労省の官僚だったら、5年、6年後に、総合診療医ではないと看板を掲げられませんよ、というような…」
反町キャスター
「開業できないという意味ですか?それは」
松山氏
「そうではなくて、総合診療医という看板を、きちんと出せる人と出せない人とを区別すること。これはアメリカの地域包括ケア事業体の診療部長がおっしゃったんですけれども、お医者さんというのは人の言うことは聞かないと。と言うのは、プロとしての意識が強くて、人のいうことは聞かない。でも、データに基づいて科学者としての向上心を刺激すると走り出すと。それをどうやってやるかだと思うんですね。ですから、先生がおっしゃっていたように、全員がそうなるとは限りませんけれども、現在かかりつけ医をなさっている方が一生懸命に勉強をして、いわゆる総合診療医と同じレベルに、海外での家庭医みたいなレベルに達するということは十分にあり得ると思いますね。それも個人の努力の問題だと思うんですよ。それをサポートするのが政策ではないかと思うんですね」

『在宅医療』 今後と課題
秋元キャスター
「ここからは在宅医療について聞いていきたいと思います。厚生労働省は65歳以上の高齢者の増加や、国民の60%以上が自宅で療養を望んでいることなどを背景に、通院が困難な患者の自宅などを医師が訪れる在宅医療を推進しています。在宅医療を受けた患者数を見てみますと、年々増え続けていまして、2014年の在宅医療を受けた患者数は15万6400人と、過去最多となりました」
反町キャスター
「在宅医療をすると、家族の負担が増えますよね。そこはどういうふうに感じていますか?」
横倉氏
「そこを、いわゆる介護保険をつくった時には、社会で介護をやろうと。皆負担が大き過ぎるからと言ってやったわけです。しかし、病気で休んでおられる方、1番ほしいのは常に話し相手がほしいんだよね。そこのところの問題を、だから、コミュニティで、いわゆるお互いが助け合いをするという仕組みというのは、現在から重要になってくると思う」
反町キャスター
「それは制度ではなくて…制度ではないですよね?人間関係ですよね?」
横倉氏
「ボランティアですね。だから、今後の高齢社会というのはコミュニティづくりというのがすごく重要だと、私は思っています」
松山氏
「現在の部分は、制度のうえでは社会福祉法人が活躍できる場だと思うんですよ」
反町キャスター
「NPO(特定非営利活動法人)?」
松山氏
「NPOではないです。社会福祉法人。たとえば、特別養護老人ホームとかを経営しているところ。それから、障害者施設とか、児童養護施設を経営しているところです。その改革をするための法律が本当は今年成立する予定だったんですけれども、来年に延期されましたけれども、まず間違いなく成立すると思うんですよね。その時に業界の皆さんは、利益はあまり大きくなく、過去の利益は全て固定資産の施設に変わっていますということなので、では、ということで、現在、私が積み上げて計算をやっています。たぶん出てくる数字は、約2万の法人がありますが、借金を除き、金融資産が1兆7000億円。年間黒字が3000億円超という数字になるだろうと思います。まだ計算途中なので、確定値ではないですけれども。そういうのを踏まえて、実は現在出ている法律で全国のデータベースをつくるんですよ。約2万の法人の財務諸表を全部様式を揃えて、いくら実際、金があるのかというのを全部わかるようにするわけですよね。そうすると、私は現在、在宅ケアの関連でいろんな課題があるんですけれども、そこで活躍してくれる事業体は既にあるものを使って相当なことができるのではないかと思っています」
反町キャスター
「それは、言葉が悪いですけれど、利益を貯め込んでいる社会福祉法人に新たな任務を負わせるべきだという話ですか?」
松山氏
「端的に言うと、そうですね。ただし、重要なことは、現在既に模範的に財源を使い切って、どんどんやっているところもいっぱいあるんです。だから、私はそこに財源が流れるようにすべきだというために現在、計算を一生懸命やっています」

松山幸弘 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の提言:『医療保険を2階建てに』
松山氏
「私の提言は、医療保険を2階建てに、ということです。私は、これを実現するために医療政策を勉強していますので、今日、横倉会長から興味が多少おありだという話を聞きましたので、本日、招いていただきまして大変ありがとうございました」

横倉義武 日本医師会会長の提言:『生きがい作り』
横倉氏
「今後の高齢社会は生きがいづくり、先ほど、かかりつけ医の話とコミュニティづくりという話をしました。コミュニティをつくる中でも生きがいを持ってもらうというのが大事です。健康寿命を伸ばすために1番何が大事か。生きがいがあると、その目的のためにがんばるわけですね。ですから、生きがいをしっかりとつくっていこうということですね。それは仕事のうえでもいいし、隣の人のケアでもいいし、子供さん達のお世話でもいい。そういう自分のやりがいというのをつくっていくというのは大事だと思いますね」
秋元キャスター
「どうやったら1人1人見つけていけると思いますか?最初の一歩は?」
横倉氏
「第1歩は、現在60歳定年から65歳定年に伸びていった。65歳定年後の第2の社会貢献を何でやっていくかということが大事だと思っています」