プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2015年12月21日(月)
どう読む米利上げの波 日本の出口どう作る?

ゲスト

中島厚志
独立行政法人経済産業研究所理事長
早川英男
富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェロー
片岡剛士
三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員

米利上げの余波 世界・日本経済への影響は
秋元キャスター
「まずは今回の利上げに踏み切った理由について、連邦公開市場委員会、FOMCが出した声明を見ていきたいと思います。FOMCの声明のポイントですけれども、事実上のゼロ金利政策を終了し、金利を年0%から0.25%の範囲だったものから、年0.25%から0.50%の範囲へ引き上げるということ。2%の物価上昇目標を、中長期的に達成できる合理的な確信がある。これ以上のゼロ金利の継続は経済の弊害になる。利上げは緩やかなペースになると。こういったものですけれども。早川さん、この利上げのタイミングについてどう見ていますか?」
早川氏
「FRB(連邦準備制度理事会)としては、本音としてはできるだけ早目に利上げをスタートして、ゆっくりやっていきたいと思っていたんです。と言うのも、今回上げても、まだ金利水準0%台前半なので、コア物価との関係で見ると、まだ、実質的にマイナスですね。これからまだ上げていっても、暫く実質的にマイナスの状態が続くので、それが長続きすると、どこかの時点で賃金、物価が上がってくるかもしれないし、そうではなくても、資産バブルみたいなものが起こる可能性があるので、と思ったんです。ただ、それだったら、本当に物価が上がったら、あるいは資産バブルが起こってから上げればいいのだろうという議論はあるわけですけれども。そうなってから急に上げると、アメリカ自身よりも、よその国。特に、新興国にまで相当大きな影響が及ぶ可能性が高いので、そういうことはやりたくない。できれば、ゆっくりやっていきたい。ゆっくりやっていくのだったら逆にスタートは少し早目にしたいというのが、彼らが思っていたことだったので、本当はもっと早くいきたかったのでしょうけれども、なかなか雇用が改善して、物価が上がってこないので、待っていまして、今年の9月ぐらい、本当はいよいよスタートかと思っていたら、ご承知のように中国経済の混乱、その他があって、また3か月伸ばしてしまったと。ここはいよいよスタートだということで踏み切ったということだと思います」

米利上げの余波 マーケットをどうみる
秋元キャスター
「利上げに対するマーケットの反応はこのようになっていますが、16日ニューヨーク株式市場ダウが大幅上昇しましたけれども、その後下げに転じまして、18日の終わり値1万7129ドルと利上げ前に比べて600ドル以上、値を下げています。日経平均も利上げ発表後は450円ほど上昇をしたんですけれども、その後、乱高下しまして、今日の終値が1万8916円となっています。片岡さん、このマーケットの動きはどう見たらいいのでしょうか?」
片岡氏
「先週、FOMCで利上げの決定があった時は、これは比較的にマーケットは安定というか、むしろプラスというか、好感したんですよね。これはもともと利上げだけれど、実は利上げではないよと。要は、利上げという、マイナスのインパクトを極力抑えるような表現を、イエレンさんがかなりおっしゃっていたので。ですから、これはまだまだFRBとしては緩和的な施策を維持すると。ですけれど、先ほど、早川さんからもお話があったように、最初のタイミング、緩やかに利上げをしていくと。そういうニュアンスをかなりにじませつつ、出口に入っていくという話を言ったので、ですから、マーケット的には、利上げの負のインパクトという話が必要以上に深刻に織り込まれることはなかった。こういうことだと思うんですよね。ですから、そうした意味では、初日はまあまあ良かったと。ただ、2日目以降ですけれども、アメリカの株価自体は今年に入ってから、横ばいのような展開ですよね。ですから、これは単月というか、毎日毎日の動きで見れば、乱高下をしているわけですけれど、これがどんどん下がっていくのか。もしくはちょっと上がっていく基調になるのか。どうなるのかというのは、これからが判断材料ということでしょうかね」

新興国への影響
秋元キャスター
「今回の利上げで、先ほどから新興国への影響も出ていますけれども、早川さん、新興国で影響を受ける国というのは具体的にどういう国があるのでしょうか?」
早川氏
「まず最初の基本を少し、ちゃんと押さえたいと。要するに、3年、4年前まで、新興国は非常に調子が良いと言われてきたわけです。では、何で新興国がそんなに高成長を続けていたのかというと、基本的な背景が2つあって、1つは、中国の高成長。中国が高成長をすれば、中国がいろんなものをいっぱい輸入する。あるいは中国が高成長をすると、資源価格が上がるとうことで、新興国がハッピーだったと。もう1つは、アメリカの金融緩和で、アメリカが金融緩和をして、資金が新興国に流れ込むので、新興国が好調だった。だとすると、現在、新興国を巡る環境というのは、実は大きく変わりつつあるわけですよ。要するに、中国が減速しています。アメリカが金融緩和から引き締めに転じた。そういう意味では、新興国を巡る環境というのは、従来に比べて、かなり厳しい方向に変化をしていると。その結果、何が起こるかですけれど、ある意味で、中国が高成長して、アメリカが金融緩和をしている時には、こう言っては何ですけれども、ダメな新興国も皆ハッピーだったという状態だったんですね」
反町キャスター
「具体的には、どういう幸せが世界中にばらまかれたのですか?」
早川氏
「要するに、資源価格が上がれば、資源国は皆、良いですよね。あるいは中国が高成長をしてくれれば、中国にモノを輸出する国々、皆ハッピーですよね。それから、もう1つは、ちょっとややこしいですけれど、実は内需主導型の新興国には弱点があって、それは対外ファイナンスです。要するに、アメリカみたいな国だったら経常赤字でも資金が自動的に入ってくるので、良いわけですけれども、新興国が経常赤字だとお金を貸してくれる国がないですよね。非常に苦労をするわけだけれども、アメリカがたくさんドルをばらまいてくれれば、そういう国にもドルが入ってくるので内需主導型の新興国もうまくいく。ある意味で、皆うまくいった」
反町キャスター
「でも、その国というのは、つまり、借金して、内需に見合ったものを入れているということですか?」
早川氏
「そうです。ですから、要するに、そういう中国の高成長とか、アメリカの金融緩和という条件がなくなってくると本来のファンダメンタルズに基づいた選別が行われると」
反町キャスター
「選別は、つまり、淘汰という意味ですよね?」
早川氏
「そうなりますね。要するに、これまではダメな国も皆OKだったんだけれども、もともと新興国というのは、うまくいくのかどうかというのは昔から4つぐらいの基準で、評価をされるわけです。第1に政治的な安定。2番目、経常収支、3番目、財政収支、最後に通常、対外ファイナンスの形。要するに、短期で借金をしているか。直接投資が入ってくるのか。この4つの条件で○×を打って、比較的点数の良い国は順調だし、そうでないとダメだと。逆に言うと、過去何年間か、やや特殊な環境でダメな国でもうまくいった状態だったのだけれども、中国が減速し、アメリカがまだ強力な引き締めではないですけれど、方向が変わると本来の選別が働いてくるということです」
反町キャスター
「選別というと、この場合でいうとASEAN(東南アジア諸国連合)とか、BRICS、ブラジル、ロシア、インド…、南アフリカの方とか」
早川氏
「現在の基準で○、×を打っていけば、おわかりになる。1つずつやるのは時間がかかりますから。大まかに言うと、成績が悪い国と言ったら、ラテンアメリカにはいくつもありますね。べネズエラとか、ブラジルとか、かなり成績が悪い」
片岡氏
「アルゼンチンとか」
中島氏
「IMF(国際通貨基金)が最近、報告書を出していまして、この10年間で新興国、途上国の対外債務って8倍に増えたということですね。しかも、その増え方というのが、民間、かつ、いわゆる外から借りてくる外貨建てが多いという話ですよ。これは、良い時は外貨が入ってきますから、むしろ新興国の成長が高いので、株も上がるぞということで入ってくるんですけれども、悪くなると、こういうお金が真っ先に逃げるんですね」
反町キャスター
「具体的にどういう現象が起きるのですか?たとえば、新興国が発電所をつくりたいとか、線路を敷きたいとか、港をつくりたいとか、そういう時に資金を海外から引っ張ってくる、そういう前提での話ですよね?」
中島氏
「そういうものもあるんですけれど、これはどうしても国が表に出たりするわけですね」
反町キャスター
「一企業、民間企業?」
中島氏
「そうですね。民間部門ですから、むしろ設備投資に使えると。景気が良いから融資をやるぞと言うんです。その時はお金を借りる時に外からワーッと入ってきていますから、ドルで借りるかというのをやるわけですね。しかも、ドルというのは、銀行というよりはどちらかというと債権です。発行をする。ところが、債権を現在みたいな状況から、その債権のお金が必要だけれども、償還をしなくてはいけない。では、次、借りられるかというと借りられませんので。こういうことがポン、ポンと切れてくるわけです。従って、現在の状況というのは先ほど、お話がありましたけれども、かなり厳しくて、むしろお金の流れが変わった。もう1つは、資源価格高、資源価格安になっているんですけれども、ここが1つ大きなポイントで、中国の減速というのも大きいし、もう1つ、私はシェール革命、シェールオイルの増産が大きいと思うんです。と言うのは、現在は値段が安いからシェールオイルの増産も止まっていますけれど、これで値段がまた上がってくると、自ずとまた増産が始まるわけです。別にアメリカ政府が判断をするというのではなく、民間で儲かるとわかればやるというだけの話ですからね。と言うことは、今後とも、当面、原油価格はあまり上がらないということですね」
反町キャスター
「上がりそうになると、シェールが出てくる?」
中島氏
「はい。もう1つは、中国も現在構造転換をしていますから、中国の減速というのは、中国政府も現在ぐらいの成長率で今後ともいくんだと。こう言っているわけで、10%以上に戻るとは中国政府自身も言っていないわけですからね。従って、こういう状況の中だと、たとえば、ASEANの国々というのは確かに最初にアウトになる国々では決してないんですけれども、この条件というのは結構、逆風ですよね。要するに、中国に近い。中国との貿易で高成長してきた国々が減速の影響を1番大きく受ける。それから、資源国が、インドネシアとか、ありますから、そういう国が影響を受ける。そのうえお金もアジアは成長センターだといっぱい入ってきたのが、逆流をするという状況の中にあるんですね」
反町キャスター
「片岡さん、どうですか?どこがまずいのかという、地域別の星取り表を聞くつもりはないですけれども、そういう状況が」
片岡氏
「先ほどからお話になっている南米というのは、これはブラジルも過去、未曽有の落ち込みを…現在既に示していますよね。GDP(国内総生産)統計」
反町キャスター
「アメリカが利上げを発表する前からですか?」
片岡氏
「そうですね」
反町キャスター
「その見込みの情報が流れた時点で、そういう状況になってきている?」
片岡氏
「そうですね。ですから、原油安という話と、それから、ドルの価格ですよね。これはある意味、先ほどのアメリカの金融政策、ないしは新興国や対外経済の影響というのも、キーファクターになっているわけですよね。ですから、原油安がずっと続いていくということになると、これはアメリカの金融政策の影響もありますし、実需の悪化みたいなところもある。ある意味、世界的な生産量というか、需要の増減みたいなところ、原油価格が効いてきますので。ですから、ある意味、いろいろ試算によると、たとえば、世界の需要というのが1割から2割ぐらいは減るであろうと。こういったような話を」
反町キャスター
「原油価格がさらに下がるのですか?」
片岡氏
「既に織り込んでいると。そういった見方も可能ですよね。ですから、そうした意味で言うと、世界経済を何かしらの負のインパクトが襲うであろうということでしょうね」
反町キャスター
「それで、1番困るのはアメリカではないのですか?」
片岡氏
「アメリカも困る部分はあるかもしれませんけれども、ただ、アメリカ自体は、たとえば、GDPに占める輸出入の比重で言うと非常に内需国ですね。だから、むしろ世界経済、もちろん、それによってアメリカが何ら影響を受けないということではないと思いますが、たとえば、中国の悪化ということであれば、1番影響を受けそうなのは、外需比重が非常に高い韓国とか、ASEANの周りの国々ですよね。ですから、そこの国々にとっては死活問題だし、その程度の問題というか、国によって色分けはあると思いますね」

日米・量的緩和比較 日本の策をどう評価?
秋元キャスター
「アメリカの金融緩和政策と日本の金融緩和政策。ちょっと、こちらでおさらいしていきたいと思います。2008年11月から、アメリカは1回目の量的緩和で、サブプライムショックを和らげるために住宅ローン債を購入しました。2010年11月、2回目の金融緩和では、アメリカ国債の買い入れを開始しました。2012年9月からですけれど、3度目の金融緩和で住宅ローン債とともに、アメリカ国債の買い入れも継続となっていて、2014年の1月、緩和規模の縮小、テーパリングが行われました。このような流れで、アメリカが7年にわたり続けてきた、実質的なゼロ金利政策を先週ようやく解除したわけですけれども、一方、日本を見てみますと、日銀の黒田総裁が2013年4月に、黒田バズーカ第1弾として異次元金融緩和を実施。マネタリーベース、資金供給量ですね。2年間で2倍にしました。第2弾が2014年10月ですけれども、マネタリーベースを年10兆円から20兆円に増やし、年80兆円の拡大などを行いました。今月18日。国債を買いやすくして市場に流れるお金を増やすなど金融緩和を補完する措置の導入を決めました。アメリカは出口戦略へと至っていますけれども、日本の出口戦略への道。早川さん、どう見ていますか?」
早川氏
「まず出口戦略への道というのは、まだ暫く先の話なので、現在ちょっと、この時点で出口というのは、早過ぎると思います。アメリカの金融緩和との関係で見ると、基本的にはよく似たことをやっているんですね。もちろん、もっと、遡れば、2001年から2006年に日銀が量的緩和をやっていたとか、そういうのがありますけれど、今回の局面はアメリカが先にスタートし、比較的近いところをやっていると思ってください。アメリカは住宅ローン債も買っていますけれども、基本的には、長いものを、長期債を買うことによって長期金利を引き下げようということですから、日本でやっていることも基本は同じということですね。ただ、1点違いがあるのは、アメリカが、いわゆる量的緩和を始めた時の長期金利の水準というのは、日本よりずっと高いわけですね。3%とか、4%あったので、逆に言えば、押し下げる余地というのが随分あったわけです。それに対して日本の場合は、スタートする段階から、長期金利は1%がなかったので、なかなか長期金利を押し下げるという余地というのはあまり多くないわけです。逆に日銀はそういう意味で、インフレ期待に働きかけて、期待インフレ率を上げることで、実質金利を下げようとするわけですけど、逆に言うと、その分だけ不確実性は大きいわけです。要するに、単純に長期金利を下げるというのは簡単だけれども、期待インフレ率が上がるのは、どうやったら上がるか。どれぐらい本当は上がっているのかという問題もあるので、日本のやり方というのはアメリカ以上に不確実性が多いと。基本的には同じだけれど、不確実性が大きいということが1番大きな違いでしょうね。それから、もう1つ、敢えて言うと、実を言うと、もともと長期債を買うやり方というのは、低金利のところで長期債を買って、金利が上がってから長期債を売ると。あるいは売らないまでも、たとえば、金融機関に利子を払ってあげるというやり方なので、中央銀行は損失を被る可能性が高いわけですよ。実は、その点を突いても、アメリカは買った長期債の利まわりが高いので、そう簡単には逆ざやにはならないです。たとえば、アメリカの持っている長期債の利まわりは、平均2.5%ぐらいあるかな。だから、利上げし、たとえば、金融機関に支払う利子が0.5%になってもまだ大丈夫だし、来年1年間、仮に1%上がっても、まだ大丈夫。それまでたっぷり儲けているので、そんなに問題はない可能性はあるんだけれども、日本の場合は、持っている国債の利まわりがたかだか0.4%、0.5%なので、要するに、本当に2%のインフレが達成されて、金融機関に利子を支払うようになると、あっという間に逆ざやになると。だから、たぶん、小さな記事なので、あまりご存知のない方が多いかもしれませんけれども、今年から、日銀はそういう将来の損失に備えて引当金を積んでおくということをスタートしたわけですね。それは、逆に言えば、将来、大きな損失が発生し得るということなので、実を言うと、スタート時点の利まわりの違いというのは、効果の確実性、不確実性の問題と、それから、もう1つ、将来抱えるかもしれないロスというところで大きな違いがあるので、言ってみれば、アメリカの方が比較的やりやすい環境にあった一方で、日本はそれだけのリスクを、ある意味で、抱えてスタートしたと」

米・出口戦略に学べ 日本の『出口』はどこにある
反町キャスター
「アメリカは、QE1、QE2、QE3と量的緩和だと3回やっているとして、日本は異次元緩和、第1弾、第2弾、今回、補完措置もありますけれど、やっていることはだいたい同じようなものだという…」
早川氏
「おおまかに言えば、基本的には長いモノを買って、要するに、現在、短期金利はゼロになっちゃっているので、短期金利をこれ以上下げられないので、言ってみれば、長い金利を下げようということですから、それは、基本的にはアメリカも日本も同じです。ヨーロッパはどちらかと言うと、短期をマイナスにしてしまおうという、そちらに行っていますけれども、日米がやっていることは、基本的には長いのを下げていくということで、それは同じです」
反町キャスター
「そうすると、早川さん、アメリカが緩和を始め、日本が緩和を始める。この期間。日本が緩和をしなかった時期があるではないですか。これは何ですか?」
早川氏
「それは繰り返しになりますけれども、要するに、アメリカの場合は、そういうやり方があるけれど、日本の場合はずっと前から長期金利が1%割れなので、言ってみれば、それは本当に効果があるのかとか、それをやった場合のリスクはどうなのかという意味では、日本は慎重にならざるを得なかった」
反町キャスター
「ただ、リーマンショックが起きたあとに、アメリカがこういう対応をすぐに始めたと。日本はこの期間何をやっていたのかと言えば、財政出動でやっていたということになるのですか?」
早川氏
「いや、日本もいろんな、いわゆる包括的緩和という名前での金融緩和をやっていましたけれども、アメリカほど目立ったことはやっていません。というか、逆に言うと、この時期はアメリカが突出しているんですよね」
反町キャスター
「アメリカの方がリーマンショックに対する対応、仕掛けが早かったとうことになりますか?」
早川氏
「そうなりますね」
反町キャスター
「片岡さん、ここまでの議論。どうですか?どう感じていますか?」
片岡氏
「私は、リーマンショック時に日銀がきちんと金融緩和をしなかったことは問題だと思います」
反町キャスター
「これと同じタイミングでやるべきだったと?」
片岡氏
「ですから、当時の民主党政権も為替介入と称して、介入策をいっぱいやったんですけれども、ただ、為替介入は変動相場制の国、日本のような国においては効かないというのはある意味、常識で。ですから、これはある意味、たとえば、アメリカとか、欧州も含めて、緩和姿勢を強めたわけですね。アメリカの場合は、震源地のリーマンショックだったわけですから、だから、やらざるを得なかった。ただ、日本の場合は、当時の大臣の方とかが、蚊に刺されたぐらいのショックだったと。そういう話がありまして、かなり楽観視していたんですね。もしくは、たとえば、金融システムは痛まなかったから、金融緩和をする必要はなかったと。こういう議論にある意味、終始してしまった。マーケットから見ますと、要は、日本銀行としては、大規模な緩和策というのをやらないだろうなと。そういうような期待を生みだすことによって、結果的に円安という話が起こらなかったと思うんですね。だから、安倍総理ご自身も、当時は、政権担当する時には日本の金融政策をホットイシューに、全面に打ち出してくるという話はなかったわけですよね。そういうふうにあまり予想をしなかったんですけれど、安倍さん自身はアベノミクスという話の中で金融政策を大胆に転換するという話をおっしゃっていて、それがある意味、マーケットにも円安や株高というような流れを期待させる、大きなドライバーになったと思いますね。だから、これまでがちょっと遅かったと思いますね」
反町キャスター
「遅かった結果、アメリカが先に出口に差しかかろうとする時に、まだ日本は出口どころか、さらに広げているわけではないですか?」
片岡氏
「そうですね。入口のところですね」
反町キャスター
「その時差というのは日本にとってどういうものだと感じていますか?」
片岡氏
「遅れてしまったものはしょうがないと思いますよ。ですから、やらなければ、デフレからは脱却できないですよね」

黒田日銀総裁会見 日本は『手詰まり』か?
反町キャスター
「金融緩和の補完措置をどう評価されますか?」
片岡氏
「2つポイントですが、1つ目は、政権の姿勢をあと押ししながら、協力しながら、というのがあります。追加緩和かと言われると、そういうことではなく、ETFの買取りという話の逆を、たとえば、銀行関連株は売却をするという話になっていますので、プラスマイナスのネットで見ますと、買取り額は変わらないという話だと思います。2つ目の買い入れる国債の平均残存期間を長期化するという話についてはマーケットの中で、たとえば、これ以上、日銀が緩和を強めていくと、たとえば、担保証券として指定している国債が干上がってしまうのではないかという疑問が提示されていたんです。ですから、今回年限を長期化することによって、より長期の国債を買い増すという話と、担保となる対象の資産を拡大するという、要は、金融緩和を進めても、マーケットが心配しているようなことは起こらないですよという、現黒田体制の回答を示したのではないかと思います」
早川氏
「異次元緩和は短期決戦だったわけですよね。2年間という時限を区切って、市場の予想をはるかに上まわる巨額の国債の買い入れをやって、一気に勝負をつけようとしたわけですが、実際に起こっていることは、言ってみれば、長期化、持久戦か。そうすると、困ってしまったのは、毎月10兆円の長期国債を買い続けているわけだけれども、これは2年間だったら、10兆円を買っても問題なかったのですが、あと何年も続くのだとすると、皆が心配しているのは、そんなの続けられないでしょうということを現在心配していて、それが問題になっているわけです。今回の日銀の措置というのは、追加緩和ではないわけで、ただ、想像するに、原油価格がさらに下がってきました。それから、日銀が常に強調してきた期待インフレの各種の指標も下がってきたので、ここで何もしないと、日銀の、2%達成に対する決意みたいなものが疑われるので、何かしなければいけないと一方で思い、たとえば、買っている10兆円を12兆円にすると、持続可能な期間が、さらに短くなってしまう可能性がある。そこまで踏み込まない範囲内で、たとえば、国債を買う年限を長くするとか、そういうことをいろいろとやってみたのですが、そういうことを言うと、マーケットはやはり手詰まりですねというふうに思われてしまったということだと思います」
反町キャスター
「黒田総裁のマーケットとの対話というのをどう評価していますか?」
早川氏
「今回、正直言って、ここまでの失望が出てくると思っていなかったと思うので、多少読みが甘かったというのは事実だと思います」

景気浮揚に必要なこと
秋元キャスター
「なかなか景気が良くならない。なぜなのでしょうか?」
中島氏
「構造的にいくつか大きな要因があって、1つは先進国の共通の課題ですが、少子高齢化ですね。これが日本の場合、先行して進んでいますからね。なかなか労働人口は増えない。その分だけ成長力も高まらない。労働人口は減りだしていますから、成長力を下押しするわけですね。もう1つは、先進国共通の話ですけれど、生産性というか、全体としての経済が技術革新等々で成長が上がるということが見えなくなってきた。たとえば、アメリカでも1990年代のIT革命も過去の大きな産業革命と比べると、意外にインパクトが小さいではないかと。成長を嵩上げするというインパクトは。日本はアメリカより元気が必ずしもなかったわけですね。従って、1つは抜本的な少子化対策ですが、これは時間が大変かかりますから。やらないわけにはいかないですけれど、即効性はないわけですね。もう1つは、企業の活力をあげて、技術革新に向かってもっとイノベーションを加速するという、ここにもっと力を入れなくてはいけない。はからずも、企業を見てみますと現在収益は絶好調で、過去から見ると、最高益を更新しているわけですね。ところが、それに対してバランスがとれたビジネスの拡大意欲が出ているかというと、たとえば、賃金を見ても25年前の水準のまま。現在だったら、もっと雇用を広げて、良い人材を採ればいい、チャンスではないかとか。一方で、設備投資を見ても現在は低金利ですし、人手不足ですから、そういう意味では省力化をやる大きなチャンスです。でも、投資は緩やかにしか進んでいない。お金はいっぱいありますから、現在はそのチャンスを十分に活かしていないということで、企業にもっとバイタリティを持ってもらうところが大きなポイントになると思います」
反町キャスター
「日本の経済は新陳代謝が遅いのですか?」
中島氏
「大変遅い」
反町キャスター
「それは良くないんですよね?」
中島氏
「かつては退出が少ないというのは悪いことではなくて、参入が少ないというのが…。両方とも欧米の半分しかないのですが、参入を倍ぐらいにすると良いということが言われたのですが、最近わかってきているのは、両方ともワンセットだと。退出しないと、日本みたいに市場が飽和しているところだと入れないんですよ。ですから、退出、参入を共に高めるためにはどうするかというと強制的に退出させる必要はないので、もっと規制を緩めて、自由競争の中で退出、参入の競争をしてくださいと」

中島厚志 経済産業研究所理事長の見通し:『少し上向き』
中島氏
「理由は、原油安とか、低金利とか、通貨安の恩恵があるということに加えて、人手不足が深刻化していますから、賃金が一部上がり始めているんです。ですから、全体に今年より来年の方が少し上がるというふうに見ています」

早川英男 富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェローの見通し:『ぬるま湯続く』
早川氏
「おそらく今年は1%成長ぐらいですけれども、しかし、よく見ると、企業収益は過去最高だし、労働市場は完全雇用で、実は言うと皆が不満を言う状態ではないですし、おそらく来年も普通に考えれば、企業収益最高で、労働市場が完全雇用だったら、内需が弱くなる理由はないので、海外さえ安定していれば、そんなに悪いことは起こりません。ただし、日本経済は潜在成長率0.5%の経済なので、決して高い成長はできない、そういうぬるま湯状態が続くということです」

片岡剛士 三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員の見通し:『政策がカギ』
片岡氏
「来年ですと、参議院選挙がありますよね。ですから、現状、アベノミクス第2ステージだと、名目GDP(国内総生産)600兆円という話はありますけれども、目標設定はいいと思うんですけれども、中身がちゃんと詰まっていないと思うんですね。だから、こういったところも含めて、きちんと中身が充実することが、結果的に、ゆで蛙なのか、少し上向きなのかはわかりませんが、日本経済の状況をもうちょっと上向きにするのか、逆にもうちょっと下向きになってしまうのか、というところを分ける分水嶺になるのではないかなと思います。そうした意味においては、政策のデザインというか、アベノミクスの第2ステージであれば、状況に応じてこれまでの三本の矢を変えることも必要でしょうし、たとえば、日銀と政府の枠組みみたいなところも含めて、見直しをしていかなければいけないと思います」