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2015年12月17日(木)
韓国注目判決で考える 司法の独立言論の自由

ゲスト

丸山和也
自由民主党参議院議員 弁護士
金慶珠
東海大学教養学部国際学科准教授
高初輔
芝パーク綜合法律事務所 弁護士

産経前ソウル支局長に無罪判決 裁判の争点と判決の妥当性は?
秋元キャスター
「今日午後、韓国ソウル地裁で産経新聞の加藤達也前ソウル支局長に対し無罪判決が出されました。その発端となったのが、加藤氏がウェブ版に記載したコラム記事でした。その内容は、2014年4月、セウォル号の沈没事故発生当日、朴大統領が日中7時間行方不明だったというファクトが飛び出し、政権の混迷が際立つ事態になっていると。朝鮮日報の記事によればとしたうえで、大統領は当日、あるところで『秘線』と共にいた。相手は元側近で、当時は妻帯者で、あとで離婚したなど、大統領をめぐる噂の記事を引用していました。ちなみに、秘線というのは、秘密に接触をする人物ということです。これらの引用を受けて加藤氏は、おそらく大統領とオトコの話は韓国社会のあちこちで持ちきりになっていただろう。朴政権のレームダック、死に体化は着実に進んでいるようだとまとめています。丸山さん、まず今日のこの無罪判決という結果をどう見ていますか?」
丸山議員
「結果は予想をしていたよりもちょっと意外でしたけれども。ただ、ある意味、非常によくわかるんです。と言うのは、これは私の推測ですけれど、おそらく司法、検察です。告発団体から受けて、司法、検察がおそらく政権の意向、顔色も見ながら、やったと思うんです。これはいけると。だから、これは世論も支持をすると思ってやったけれど、起訴をする時に、有罪に持っていけると。裁判所も有罪を出すだろうと思ってきたのだろうけれども、最後の段階になって、外交部というか、政治が入ってきて、ストップをさせたというようなことがあったのではないかと思うんですね。だから、司法も場合によっては、こういう外交文書がありましたということをわざわざ証拠として出したということは、本当は有罪にしようと思ったんだけれども、政治的な圧力で、こうなったということで、ちょっと責任逃れというか、嫌がらせというか、そういうふうにも取れるんです。だから、ある意味で、二重に司法の独立を汚していると思います。二重という意味は、本来、韓国の場合、日本と違って憲法裁判所と、いわゆる司法裁判所と2つあるんです、流れが。それで4年、5年前から憲法裁判所で、非常に歴史問題とか、慰安婦の問題、戦時徴用工の問題とかで、日本に対して政府はきちんと責任を追及すべきだというような、憲法裁判所がそういう判断を度々示しているんです。そういう中で、非常に司法がむしろ政治を刺激するということ、政治のケツを叩くような。それは政権も、それを利用して来たと思うんです。ところが、いよいよ最後の段階、この件で言いますと、加藤さんの最後の段階で、しかし、ここまでだよ、ということで、政権がストップをかけたことで、司法は、何だ、面白くないではないかと。わかりやすく言うと。そういう部分です」

韓国司法と政府の距離感
反町キャスター
「丸山さん、指揮権発動と日本で言うではないですか。要するに、日本で言えば、法務大臣が捜査に対して…」
丸山議員
「検事総長を通じて」
反町キャスター
「ブレーキをかけるようなことが多いですね。促進する場合もあるかもしれない。今回の流れを聞いていると、韓国の外務省から法務省を経由し、最終的に裁判所に届いている。これは指揮権発動ということの変形みたいにも見えるんですけれども、そういうものではない?印象はどうですか?」
丸山議員
「これは法的な手続きをとってやったということではないと思うんですよね、指揮権発動のように、ストレートに政治の意向を、外交問題ということで、意向を伝えたということです。だから、むしろこれを裁判に受け入れて、これを公表すること自身が、司法の独立から言えば、自殺行為だと思うんです。本来の司法の尊厳から言えば」
反町キャスター
「自らの意思で決めたことではないことを公表している?」
丸山議員
「公表している。問題は、仮にそうであっても、伏せるということがあります。言わない。言わないで、伏せておいて、無罪判決を出すということもあるんだけれども、自ら言っちゃっているようなことはどう捉えたらいいか。恥も外聞もないみたいなところもありますし、政治に対する嫌がらせのようにもとれますし、あるいは政治と司法の喧嘩のようにも見えます、ここは。だから、司法と政治の関係が日本のように、日本でも問題がまったくないとは言いませんけれども、基本的には司法の独立ということが非常に脆弱だということを、私はこの一連の判決で感じました」
金准教授
「私はまったく意見が違います。三権分立に対する根本的な考え方が丸山先生は若干、問題があると思います。つまり、三権分立というのは、司法や行政、それから、国会、立法府がお互い完全に関わりなく、まるでお互い知らんふりして、一切関与しないことが分立ではなくて、それぞれの権限の中で責務があり、なおかつ協力すべきは協力し、お互いの領域に関与せざるを得ないことも当然あるわけです。今回は、私も、結果がこういうふうになることは先週末までに予想できませんでしたけれども、今回、韓国の外交部が出した文書というのはあくまでも日韓関係を考え、今回のことを善処してほしいという、そういう要請を出した。それを裁判所が公表しないのもおかしい話ですし、きちんと公表し、そうした行政府の要請というのも判決のどこかの参考資料にはなったかもしれません。大事なのは、韓国の…」
反町キャスター
「こういう要望を出すことはおかしくない?」
金准教授
「いや、おかしくないのではなくて、私はこれまで聞いたことないです。韓国においても極めて例外的なことです。しかしながら、ここから読み取れるのは、いわゆる外交的な努力を尽くしたという、ある意味、韓国外交部に対する、私は、肯定的な評価にこそなれ、これが何か司法に対する圧力で、文書1つによって、判決がまったく変わって、司法は嫌々ながらに、これを公表した、圧力に屈したと見るのはちょっと都合が良すぎるような気がします」
反町キャスター
「韓国外務省は、今回の判決後に、こうした経緯を踏まえて、日韓関係がさらに良くなることを期待するというコメントを出している。それは、韓国の外務省は、こういう形で敢えて介入と言います。こういう形の要望を出して、判決に介入することが、日韓関係の改善につながるという判断があったということですね?その感覚がおかしいのではないかと思うのですが、どうですか?」
金准教授
「まず介入ではないので、介入ということには非常に違和感を覚えます。それから、日韓関係に肯定的な影響を及ぼすことを期待するという同様の、全く同じコメントが、安倍総理、それから、岸外務大臣から出されています」
反町キャスター
「それは全然違います。こういう要望を出したのは…」
金准教授
「違う。今回の判決が、ということです」
反町キャスター
「それはわかる。この要望を出しておいてということ?」
金准教授
「これを圧力と皆さん、ご覧になりたいわけですよね。つまり、本来、裁判所は有罪のはずだと。有罪が正しいのだと。しかし、政治の力で、これを無罪にしたのだと。私はそう思いません。そもそも法理的にもお二人の弁護士さんがいらっしゃいますけれど、先生方。今回の名誉棄損の問題というのは、非常に法理的には議論の余地があると。名誉棄損は事実だけれども、それだけで名誉棄損の罪が成立するのではなくて、誹謗の目的があったかどうかも大事ですし、なおかつ自分が書いた内容が真実であると信じるに相当な、何らかの根拠があったという、その様々な条件が揃わないとダメなわけですね。だから、これはよく言う経済では、いわゆるインサイダー取引裁判のように、非常に結構、解釈によって大きく賛否が分かれる問題なので、今回判決が出る前に韓国外務部がいずれにせよ日韓関係を考えて、虚偽事実であるというのはある程度明らかになっている。ここは善処をお願いしたいと。今回はそういう、これは政治的な1つの努力であると見るべきであって、これをなぜ圧力と見るのか。私は若干、理解できないです。そもそも政治的な介入の問題は、私は今回ではなくて、検察が起訴をする、その段階。なおかつ裁判が長引いていく中で本来、当事者が、私は処罰を望まないと言えば、こうはならなかった」
反町キャスター
「それは大統領の話?」
金教授
「大統領もそうだし、チョンさんもそうです。そういう意味では、何らかの形で、韓国政治というものが今回の裁判に対し、どちらかと言えば、消極的な介入をしたが故に、問題がここまで大きくなったと見ることができるし、検察の起訴はそもそも、これは純粋に民間団体の告訴による起訴だったのか、政権の意向が含まれていなかったのか。その点は問い正して見る必要があると思います」
高氏
「1つは、法律的に名誉棄損に、名誉棄損罪が成立するかどうかという点からいうと、金先生がおっしゃったように、韓国の最高裁判所の考え方からすると、名誉棄損罪には当たらないという結論になる可能性も十分、これはあった事件だと思います。ただ、裁判長の訴訟指揮等を見ている中で、虚偽であることはもうはっきりしましたと。別の論点に移ってくださいとか、訴訟指揮を見て、非常に、支局長側に不利な感じがしていたと。従って、これが有罪になるのではないかと。何となく憶測があったと思うんですけれども、その意味では、出た判決は非常に、ある意味、適正な、妥当な判決であったという感じはします」

裁判の争点と判決の妥当性は?
反町キャスター
「虚偽かどうかと言えば、虚偽である。認識はあったかと言えば、密室的に知っていた。判断はできたのだろう。名誉棄損であるかと言えば、名誉棄損でもあると。ここまで積み上げておきながら誹謗目的はなかった。誹謗目的で書いたものではないという、その1点において、これまで積み上げた3段が全部チャラになるのですか?それは法理的にはそうなるのですか?」
高氏
「そうです」
丸山議員
「むしろ現在の判決理由を読んでいませんけれど、聞いた範囲では有罪の論理です。ほとんどが有罪です。9分9厘。そこで最後に言論の範囲、言論は尊重されなければならないということで、コロッとヒックリ返しているだけで、ずっとつながりを読んでいたら有罪のための論理づけではないですか」
高氏
「結局、最高裁の判決からすると、誹謗の目的というのと、事実の公共的な利害に関することかどうか。つまり、これは大統領の、いわば空白の7時間に関する業務執行上の問題。その動静の問題ですから。極めて公共的な問題です。公共的な事実に関する時には、誹謗の目的の認定は後退すると。だから、いわばこちらが認められるなら、こちらが薄くなるというような関係にあると韓国の最高裁も言っているわけです。従って、ここで誹謗の目的を否定して、犯罪の成立を否定するというのは、あり得る手法です」
反町キャスター
「そこで、それまでの積み上げを全部チャラにするというのはありなのですか?」
丸山議員
「技術的にはあり得ます。あまりにも、それはテクニカルで、全体としてバランスを崩す技術論だと思うんです。だから、これはすんなりいけば、有罪になるところを無理してというより、誹謗の目的はなかったという主観的なところに、非常に重きを置くような形で。だから、しかも、大統領は公人だという形で、ずっと理屈つけでセーフにしてしまったという、非常に苦しい判決です。これは」

産経前ソウル支局長 生出演! どう見る?『無罪判決』
秋元キャスター
「ここで、先ほど、無罪判決が出ました、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長に中継で話を聞いていきます」
加藤氏
「弁護士と打ち合わせ、検討の結果、執行猶予の付いた有罪判決の可能性が高いということを伝えてきてはいましたので、そういう意味では、ちょっと意外な感じがしたようでした」
秋元キャスター
「加藤さん、スタジオに現在、来ていただいているゲストの皆さんから質問があるということですので、ちょっと1人ずつ、聞いていきたいと思います。金さんいかがですか?」
金准教授
「裁判の内容の中で、ご本人として、納得ができない部分もあると。それは、おそらく事実でないということ、ある程度、推論できたはずだ。密室の認識というような部分ではないかとも思いますが、もちろん、そうでないかもしれません。ただ、私がこれと関連をして、1つ質問があるのは、裁判の過程の中で今回書かれた記事の内容。朝鮮日報の記事の一部引用。それから、いわゆる証券街の消息筋の話としての引用という、ご本人は直接、取材にはあたっていない記事であるとなっているのですが、事実の部分と、それから、こういうふうに直接、自分で取材せずに記事を書くことというのは、よくあることなのでしょうか?その点はどうですか?」
加藤氏
「最初のご質問、もう1度おっしゃっていただけますか?」
金准教授
「ご本人が今回の判決文の中で、納得できないものもあったと、先ほど、記者会見でおっしゃったように思うのですが、その部分が具体的にどこなのかということですが?」
加藤氏
「先ほど、先生もご指摘になっていたように、まず噂を噂として伝えることが、そもそも罪に問われてしまうという、このことがまずもって非常にショッキングな出来事ということになると思います。それから、もう1つは、こういうことはよくあることかとおっしゃいましたが、お尋ねですが、今回の法廷でも世界中のメディアのあり方、取材の手法について、いくつかの事実が示されたわけですけれども、特派員の業務においては、これはよくあることということが言えると思います」
金准教授
「噂を噂として伝えたとおっしゃいましたが、では、噂であるからには、その真偽に関してはどのように判断をされていたのですか。ただの噂話であれば、通常それは、おそらく真実ではないだろうと思うことも、常識的な判断だと思うんですけれども」
加藤氏
「まず噂は真実であるかどうかという前に、噂を社会現象として捉えて、それを伝えていくということです。最高権力者にはそういうことを受忍する義務が当然にあると思っていますし、たとえば、クリントンさんが、かつてモニカ・ルインスキーとの問題があった時に、皆、噂の段階で書いていました。それから、オバマ大統領は、もしかするとイスラム教徒かもしれないという話についても、アメリカのメディアは報道をしているし、それから、特派員も書いています。こういった話について検証したのかどうか。おそらく検証をしていないのではないか。これも推論に過ぎない話になるんですけれども。ただ、そういったこと、指導者の性格とか、属性とか、有権者に対して、あるいは国民に対して、その知る権利を保障された社会では自由に論じられていいことだと思っています」
丸山議員
「2つお聞きしたいんですけれど、私は司法にずっといた立場から、司法権独立ということを非常に大事に思っているのですが、今回は外交部から、直前にそういう文書が検察を通じて裁判所に出されたということで、これが場合によってはある程度、功を奏して、無罪判決に至ったのではないかと。結果に対しては喜ばしいと思うのですが、司法権の独立という意味から考えますと、政治が司法に介入する点から見ると非常に由々しき問題だと思っているんです。これが1点。それから、ここ数年見ていますと、韓国の司法というのが、非常に、たとえば、慰安婦問題とか、戦時徴用工に対する賠償の請求の問題とか、現政権を突き上げるような形で、むしろ司法が暴走してきているというように私はずっと感じているんです。そういう想いを持っているのですが、それは今回、ギリギリのところで、また別の政治がグッと止めたという感じに受け止めているのですが、加藤さんは長年、韓国におられて、最近の司法の動きといいますか、司法権の独立という観点から見て、どのように思われますか?」
加藤氏
「まず司法の独立について、1つは今回の提出された文書がどういう意味を持つかということです。先ほど、記者会見がこちらで開かれた時には弁護士の見解として、判決文を裁判長が書き上げるまでに、相当な時間がこれまでにあったわけです。相当に早い段階で、判決の文章を書き上げていただろうという見方をしています。私も、それはこれまでの弁護士との情報、意見交換であるとか、自分自身のある意味取材においても、そうだろうなと思っているのですが、そうだとすると、2日前になって出されたこの文章がその判決に対して、いかほどの影響があったのだろうかという気がします。おそらく結論部分が以前から書かれていたものを揺るがせることなく、そのまま読みあげられたのだと、私は思っています。それから、韓国の司法の暴走ということをご指摘になりましたけれども、慰安婦の問題であるとか、徴用工の問題であるとか、私もこれまで取材をしてきましたが、これは行政による司法への介入とか、そういうことではなくて、司法が、世論であるとか、民意であるとか、韓国の場合は、往々にして情緒、国民情緒と言われますけれども、これが非常に司法に対して影響があると見られていますし、私も取材の結果、そういう事例をいくつか見てきました。ですから、制度的に独立しているものの、常に韓国の司法というのは、民意を、国民の情緒というものを相当に勘案しながら、判決や様々な判断を示してきたものであろうと。今回も、そういう意味では、裁判長は随分民意に気を使ったところもあるのではないのかなと思っています」

日韓論客が緊急検証
反町キャスター
「韓国の三権分立、日本の感覚とは違うのですか?」
高氏
「基本的なイメージは一緒だと思います」
反町キャスター
「量刑参考資料として読みあげた。チェックバランスで、これは当たり前のことなのですか?」
高氏
「これは量刑参考資料として提出されたということのようですけれども、まず犯罪事実があったか、なかったか。つまり、有罪か無罪か。それから、有罪だとしたら量刑をどう決めるかという問題について、いわゆる日韓関係の現状というのが、それを判断する材料になり得るのかという問題が…」
反町キャスター
「でも、なったからそう言ったんですよね、裁判長は、違うのですか?」
高氏
「それはちょっとまだわからない。量刑参考資料として出されたから裁判長としては言わざるを得ないと、証拠としては」
反町キャスター
「参考にしたかどうかはまだわからない?」
高氏
「それはわかりません。たぶん裁判所としてはそういうものが証拠なり、あるいは量刑参考資料として出てきた以上は、出さざるを得ないというか、と言うのは、加藤さん側、弁護人側もそれを認めたわけだから。つまり、本来から言うとこれは関係ありませんよと。関連性がないと。本件事件には関連性がないと言って、この証拠を却下することもあり得るわけです。だけど、当事者が、検察側が提出し、被告側がこれを認めますというのであれば、裁判所としては一般的には採用するでしょうね」

韓国の司法制度は健全か?
高氏
「量刑参考資料として出したとするではないですか。今回たまたま無罪だったから、この量刑参考資料というのは使われていないのだろうと、無罪だから」
反町キャスター
「量刑参考資料というのは無罪にすることの材料にはならないのですか?」
高氏
「ならないでしょう。犯罪事実があるか、ないかということで、犯罪事実があって有罪になった場合に、その人を懲役何年にするのですか、あるいは罰金にするのですか、執行猶予をつけるのですか、宣告猶予つけるのですか、というところで量刑参考資料が生きてくるわけですよ。だから、そこに影響を与えるようなものを外務省が文書として提出するということは、ちょっと司法権の独立に不安を抱かせる側面はありますよね、そこは。そこは配慮してないという感じはします」
金准教授
「私は、この問題をそもそも日韓の政治的な問題として捉えていたのだけれど、きょう韓国の三権分立の話になるので、敢えて申し上げますと、韓国の行政と司法の関係というのは民主化以前、完全に行政に乗っとられた、そういう形での司法というものに批判が集まっていたわけですね。しかし、民主化以降、司法というのは、独立というものを果たしていった。その動きは様々な1つの流れとして出ていると。先ほどから韓国の司法が世論とか、国民感情とか、そういうものに耳を傾けるとおっしゃるんだけれども、見方によっては民衆の声、あるいは国民の意見、常識、こういったものに耳を傾ける司法になりたいという意味での独立的な声は出てきていると思いますね。その意味で、過去のように行政が司法に簡単に圧力をかけられる。こうしろ、ああしろと決められるという状況ではまったくないので、むしろ何らかの司法への影響をどういう形で我々が示していくべきかという時に、私は今回のこの文書が非常に手続きとして未熟であると。それこそ例がないこととか、もう少し洗練された形でも良かったのではないかという意見には耳を傾けますけれども、そういう状況の中での韓国の先ほどから言っているように行政府としての問題が日韓関係において、これ以上それこそ足かせになってはいけないという意思を伝えたのだと思います。ただ、それを司法が、ああ、そうですか、と言って、聞く時代では本当にないのだということを、今回の判決もおそらく加藤さんの弁護士を含めて皆が、おそらく前から無罪が出ていたのだろうと。検察がああいう形で、ある意味、無理に起訴したにも関わらず、既に無罪判決というものが出ていただろうと見るのも、同じ流れだと思います」

丸山和也×金慶珠 韓国司法と政府の距離感
金准教授
「私は、そもそもこの問題が日韓関係でこれだけ大きな問題になったのには、検察のいわゆる戦略ミス、最初の。それは十分に私も認識しています。しかしながら起訴はすべきではない。簡単に言うと、放っとけばいい話をわざわざ起訴し、これだけ大きな問題にしたと思っています」
反町キャスター
「韓国の司法は世論や国民情緒に影響されるということで当たりですか?」
金准教授
「この問題を率直に申し上げると、世論に影響されたというよりは、市民団体が起訴したあと、朴槿恵さんの側近、国会議員達が次から次へとこの問題は最後まで追求してやるというような発言もしているわけですよ。だから、むしろ世論というよりはある程度権力の何らかの顔色を伺った、そういった判断ではなかったか。それがまず1つですね。しかし、これがここまで大きな問題になったのは、何も韓国だけの責任ではなくて、私は産経側、それから、日本の政治というものにも大きな責任があると思います。今回の問題は確かに報道の自由の問題ではあるけれども、報道する側の良識と責任の問題。それから、政治の報道利用という問題など、様々な点を投げかけているんですね。今回の件、この前、私が申し上げたように当初、初期の段階では間違えました、謝りますではなくて、たとえば、この問題が日韓でこれだけ問題になってしまって、遺憾に思うというぐらいの意思表明でもあれば、産経新聞からです。そうすれば、これは起訴まで、最後まではいかないのではないかというような話は聞いていると思います。それを最後まで拒否し、それは産経なりの判断があったと思うんですね。しかしながら、一方、韓国で裁判にかかっていて、やっと出国が認められた加藤支局長を安倍総理が自ら、まだ判決も出てないのに、会って励ますというような、これは誰がどう見ても、韓国と戦う日本の報道の自由、言論の自由に映るわけですよね。ですから、お互いがこの問題を非常に大きくしてしまったと。ところで、この問題をこのまま大きく持っていくとして、それこそ慰安婦問題もここ数十年なかなか解決できない。この問題は、慰安婦問題と質が違って、そんなに多くの犠牲者がいる話でもないわけですから、そこはいろいろ行き詰まっているけれど、ちょうど明日、日韓基本条約発効ということもあって、大きく歩み寄ったんだと思います」
丸山議員
「同じことがあれば日本の検察が、たとえば、韓国のそういうジャーナリズムの人を日本で起訴するとか、やりませんよ、そういうバカげていることは。だから、歩み寄ってやろうという、韓国側も努力しているんだと。それはわかりますよ。だけど、努力の仕方の問題が大事ですよね。だから、行政の中で司法がやや、検察も含めて、やや国民感情を非常にこう微妙に反映するというけれども、暴走しているんです、僕から見ると」

韓国の言論・報道の自由 聞きたい事、言いたい事
秋元キャスター
「視聴者からの質問ですが『韓国政府は今回の判決言い渡しの場を外交に利用したと思われる。韓国政府が日韓関係を考慮すべきとの表明を出し、あたかもそれにより判決に影響を与えた印象をつくることによって、今後の慰安婦問題等の対日外交において、日本政府に対して貸しをつくることが狙いであったと見るべきではないか』とのことですが」
丸山議員
「そういう見方もできますけれども、貸しをつくって、もともと加藤さんが言っているように、当然の結果なのだと、むしろ長い間、被害を被ったのは俺らだと。まだ許さないよというような気持ちではないですか。ただ、政治的には、1つトゲが刺さったのが抜けたということで、話はしやすくなると思いますね。特別、日本が向こうから貸しを受けたとか、そういう問題にはならないと思いますけれども。結果的には良かったと思いますよ、この判決は。問題にしているのは、韓国の司法の独立という大きな根本的な問題だから、問題が非常にあるということを、これを忘れちゃいけないという」
金准教授
「私は圧力とはまったく思っていません。先ほど加藤さんおっしゃったように、その文書が出された段階で既に判決文は書かれていただろうと見るのであれば、そういう何らかの政治的な思惑で出してきたと。政治には何らかの意図がありますから。現在韓国政府が強く望んでいるのは、慰安婦問題の解決ですし、これが日本に対して貸しをつくることではなくて、雰囲気を一定にさせたいという意思の表れとして見られると思います」
反町キャスター
「もう1つ視聴者から。『そもそも起訴する事案ではなかったのではないか』とのことですが」
高氏
「司法というより検察。司法に関して言うと、民意云々というのを受け入れているというのは置いておいて、本件については検察が権力の意向を受けて、起訴してしまった。最初に過ちがあったような気がしますね」