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2015年12月15日(火)
増える難民と悩む世界 曽野綾子氏が大胆提言

ゲスト

曽野綾子
作家
藤巻秀樹
北海道教育大学教授

ヨーロッパのシリア難民
秋元キャスター
「シリア難民の現状から見ていきたいと思います。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によりますと、今月10日時点のシリア周辺国へ逃れたシリア難民の数、2011年12月から数えて439万人にのぼっています。ヨーロッパにおける、昨年のシリア難民の認定状況を見てみますと、ドイツが2万3860人で、スウェーデンが1万6295人。ブルガリアが6405人。オランダが6175人。デンマークが3985人となっていて、データは昨年のものですので、今年はもっと増えているとは思うんですけれども」
反町キャスター
「藤巻さん、ヨーロッパを見た時に、ヨーロッパにおけるシリア難民の受け入れをどう見ていますか?」
藤巻教授
「ドイツ、フランス、スウェーデンといった国はもともと人権意識が高くて、難民受け入れに積極的ですけれども、今回見ていますと、ドイツの突出ぶりというのですか、それが際立っていたという感じがします。東ヨーロッパの国は、非常に拒否的とも言えるような態度をとっていましたし、EU(欧州連合)の中で揉めていましたし。イギリスは、例のトルコの海岸にシリア難民の子供がという、あれで一気に変わって、キャメロン首相は受け入れを積極的に言ったんですけれども、そういう紆余曲折はありましたけれど、一貫してドイツが積極的だった。これはドイツは憲法で、ナチスの反省等もあって、人権というのですか、難民を庇護しなければいけない。迫害を受けた人を庇護しなければならないというようなことを憲法で謳っていますので、そういった人道的な要素と、もう1つ考えなければいけないのは、ドイツは合計特殊出生率が1.3%ですか。日本と同じように少子化が進んでいる。将来、人口はフランスに抜かれるというようなことも言われていますけれども、そういう意味で、労働力というようなことも考えたのではないのかなという気はします」
反町キャスター
「現在、たとえば、ヨーロッパ各国のシリア難民の受け入れの背景には人道主義とか、先の大戦に対する反省があるというのがベースにある。理想論に立脚した難民受け入れというような話にも聞こえるんですけれども、現在、その状況、たとえば、大量に難民の人達が押し寄せることによって、いわゆる理想から現実にシフトし、消極論と言おうか、排斥論と言おうか、そういうのも出てきているではないですか。その状況はどうなっていますか?」
藤巻教授
「そうですね。理想に走っていたわけですけれど、パリの同時多発テロもありまして、難民の中にテロリストが紛れ込んでいたとか、また、想像を超えた難民がドイツに殺到したというところで、現在、ドイツ国内でも最初、歓迎ムードだったんですけれど、反対論が現在、強くなってきています。極右政党のペギーダというのが排斥運動をやっていますし、国民世論も変わってきています。メルケル首相の支持率も下がってきています。そういった意味では、メルケルさんは非常に現在、困っている。そういうような状況で、現実に直面をして現在大変なことになっているというのが実際のところだと思います」
反町キャスター
「つまり、きれいごとでは済まされないところまで、話が…。それは、藤巻さん、状況として、要するに、大量の難民が押し寄せて、事件やら悪化していることなのか。それとも、先ほどの、現在言われたフランスの同時多発テロによって受け入れる側の心理、心境に変化が現れたのか。これはどちらが理由なのですか?」
藤巻教授
「心境に変化が出てきているというんですね。要するに、予想を超える人達が押し寄せて来ているということと、テロの影響です。現在国境管理とか、要するに、治安対策とか、そちらの方に国民の目がいっていますので、だんだん人権的な考え方で受け入れようというような流れが少しずつ変化しているというような感じがします」
反町キャスター
「曽野さん、現在のヨーロッパにおける移民政策のブレというか、変化。どう見ていますか?」
曽野氏
「私は、メルケルさんという方は、政治家としてはあまり複雑じゃない。だって、移民を、よくわかりませんけれども、これは良い人、これは悪人に走る人と分けられない。受け入れるということは、込みで受け入れるということです、何もかも。込みで。それを読めなかったのはおかしいし、またそれで裁けないと私は思います。だけど、受け入れる時は、犯罪者も何もかもいろいろありますよね。私みたいに高齢者だとか、足が歩けないとか、いろいろ。そういうのも込みで受け入れることですから。良いのだけ取ったら大変な問題です、これは。ですから、その覚悟というのが国民にあるかどうか。覚悟だと私は思います」
反町キャスター
「藤巻さん、確かにドイツの移民の受け入れに向けてはうちの番組でも、ドイツの大使をお迎えして聞いたりしたことがあるんですけれど、ある程度、シリアから流出、難民です。遠路はるばるドイツまで来るには、ある程度の財政力を持っている人であったり、ないしは高いモチベーションを持っている人だったり、高い学歴を持っている人だったり。意思が強いとか。そういう人達を受け入れたいという打算があった一面と、現在、まさに曽野さんが言われた、受け入れる以上は覚悟を持って、あらゆる階層の人達、悪い人達も受け入れなければいけないという話、ヨーロッパで、特にドイツはどうなっているのですか?」
藤巻教授
「9月の初めに、積極的に、ドイツが難民を受け入れると言った時に、ドイツの経団連ですね。経済界は皆、賛成だったんです。難民というのは若いし、優秀だし、能力がある人が来ると。そういう意味では、現在、ドイツは失業率が4.7%ということで、EUの中で、1人勝ちで経済が良いですから。そういう人達を労働市場で活用したいということを、経済界では盛んに言っていたんです。既にその頃、極右勢力が難民の収容所を襲ったり、そういう反対運動も出てきたりした」
反町キャスター
「それは同時多発テロの前ですよね?」
藤巻教授
「前ですね。メルケルさんはそういうところで批判されると、困っている人に手を差し伸べる、それによって批判されるとすれば、それは私の国ではないと。その段階では非常に突っ張っていたんです。ところが、その後、全部の人がドイツに来られるわけではないと。要するに、難民かどうかをきちんと審査しますと。経済移民と言うのですか、要するに、お金、経済状態が苦しくて来るというような、そういう人は受け入れないと。政治的な迫害とか、紛争で家を失ったとか、そういう人は受け入れるけれども、そうではない。経済的な理由で来る人は受け入れないとはっきり言っていますので、メルケルさんの発言を見ても変化が見られると思いました」

日本に来る難民の現状
秋元キャスター
「ここから日本における難民の受け入れ状況などを見ていきたいと思うのですが、昨年日本に難民申請したのは5000人でした。難民申請した人の国籍の内訳ですけれども、ネパール国籍の人が最も多くて、トルコ、スリランカ、ミャンマー、ベトナムとなっているんですけれども、この難民申請をした5000人のうち、実際に難民として認定されたのは11人でした」
反町キャスター
「5000人希望したうちの11人という、この日本の間口の狭さというのは、これは理想と現実ということから言うと、日本は受け入れるべきであるという理想を、ちゃんと持っているのか、ないしは現実に受け入れたら大変なのだよという…」
曽野氏
「むしろ11人の(受け入れた)理由を聞きたいぐらいですね。どうして、たった11人を入れられたのか。私は普通に考えますと、1番大きな障害は宗教上の理由だと思います。イスラム教徒は豚を食べないし、それから、ヒンドゥーだったら牛肉を食べないし。それに対する、彼らはハラールと言っていますけれども、非常にきついものだけれども、日本人はそんなもの、豚は食べなければいいけれども、うるさく言うなよみたいなところがあって、それが逆撫でするんですね、彼らの神経を。私は、シンガポールのチャンギー刑務所というのを見学したことがあるんです。受刑者の食事がちゃんと分かれています。豚を食べない食事、牛が出ない食事、それから、ユーロピアンという、チャイニーズと分かれている。だから、そういうことは、だんだん日本の刑務所あたりでもできているようですけれども、そういうことが摩擦の種になるんですね」
反町キャスター
「これは、たとえば、それが異文化、異なる宗教に対する理解は、日本では低いと?」
曽野氏
「低いどころか、やらない。私は小学校から週1とは言いませんけれども、月に何回か宗教の時間をつくるべきだと思います。これを信じろと言うのではなく、キリスト教のグループと、イスラムの。それから、クリスチャンと。それらの特徴を教えて、どのクラスにも出たくない子はこの時間からソクラテスでも、アリストテレスでも、プラトンでもいい、哲学を読ませるべきだと。そういうことをまったくしないから、この背後は神ですよ。先ほどから問題になっているのは」
反町キャスター
「その5000人のうち11人しか通らなかった理由というのは、あとで、藤巻さんに聞きますが、その前に、日本が5000人のうちの11人しか受け入れない理由の1つとして、日本の異文化とか、様々な宗教に対する寛容さ、理解、それが足りないというのがベースにあるのではないかという意味で言っていますか?」
曽野氏
「足りない、ないですね。教えなかった」
反町キャスター
「でも、曽野さんみたいな人がいるではないですか?」
曽野氏
「でも、私がどれだけアフリカへお誘いしても、ほとんどの人は来ませんもの。是非おいでください。男達の10人のうち2人いるか、いないかです。なぜと言っても、いいですよ、来なくたって。だけど、マラリアがあるでしょう。危険があるでしょう。酒が飲めないでしょうという国もあります、イスラムで。それから、何かわかりませんけれども、行きたくないと、日本から」
反町キャスター
「そういう共有しているもの。それが結局はこの結果につながっているという、こういう考えですか?」
曽野氏
「そうだと思います」
秋元キャスター
「藤巻さん、5000人が難民申請をして11人。多い、少ないを含めて、どう見ていますか?」
藤巻教授
「他の先進国に比べると少ない。理由は、僕は2つあると思うんですね。1つは、日本の難民認定が非常に厳格ということです。それはどういうことかと言いますと、難民条約に難民の定義があるんですけれども、それは人種、宗教、国籍、もしくは特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見を理由に迫害を受けるおそれのあることということですね。つまり、政治難民ということですね。つまり、政治的迫害を受ける人というのを日本の法務省はそれを文字通りに解釈をして、たとえば、シリア難民も政治難民もいますけれども、紛争難民というのもいるわけですね。そういう人は対象にしていないですね。欧米は幅広く難民の定義というものを考えているんですけれども、日本の場合は非常に狭く考えていると」
反町キャスター
「それは端から定義の時点で受け入れの間口が狭いということですか?」
藤巻教授
「そういうことですね。もう1つの理由は、なぜこんなに厳格かということと絡んでくるんですけれど、日本は移民を入れていませんよね。専門的、技術的能力のある外国人しか入れないということで、移民は安倍首相も移民政策をやらないと言っていますから。移民に近いような人達は入ってきているのですが、そういう移民政策がないということころが、難民を受け入れても、その後どう社会に統合するかとか、ビジョンがありませんよね。そういうこともあって非常に慎重になっていると。なおかつ国民的な同意が得られていない、移民を入れるということについて。だから、難民についても厳しい状況が続いていると」

『難民』受け入れの是非
秋元キャスター
「先月、国連難民高等弁務官のグテーレス氏が来日して、記者会見を行いました。その時に、グテーレス氏はこのように発言をしています。『日本は現在難民受け入れに関しては圧力を受けているわけではない。今こそ、こうした難民認定に関わる制度を改革するにはうってつけの状況だと思う』と述べ、日本政府が難民受け入れを拡大することを期待しているわけですけれども」
反町キャスター
「このグテーレスさんの言っていることを、そのまま受け入れるかどうかは別ですけれども、今こそ、改革するにはうってつけの状況だと思うと、難民受け入れに門を開いたらどうだという、そのタイミング。現在というのはどう感じますか?」
曽野氏
「いや、そんなにできませんね。改革の中にはまず宗教に対する理解が要ります。宗教がない国は、日本以外はあまりないですね。皆、大変な宗教を持っている国ですからね。宗教というものはどういうものであるか。神と人との関係というのはどういうものかというのをわからないとちょっと解決できないと思います」
反町キャスター
「簡単に今月から何人を受け入れますからという話ではなく、その前提となるような、文化感覚というのですか…」
曽野氏
「別に深くなくてもいいですけれどね。豚を食べさせてはいけないのだと。豚を使ったまな板を一緒に野菜を切るのには使わせないというぐらいのことも、一般的には知られていないです」
反町キャスター
「機械的に数を増やす。来月から20人とか50人とか、そんなレベルの話ではないですね?」
曽野氏
「どうなのですか、同じ宗教でもかなりいい加減な人もいるんですってね。たとえば、牛は神聖だ。でも、それは母国の牛が神聖であって、日本の牛は違うと言っている人がいる。面白いですね。そういう人も(いる)。ずっと神戸牛とか、おいしいのがある」
反町キャスター
「あれはおいしいから、ヒンドゥーが食べない牛とは違う牛だという話?」
曽野氏
「違うとおっしゃる人もいましたよ。でも、だから、人間というのはそれほどに違いますからね。一概には言えませんけれども、宗教に対する恐れがない、日本は」
反町キャスター
「藤巻さん、いかがですか?日本はちょっと間口を広げることが可能なのかどうか。検討すべきタイミングとしてはいつなのかという、そこはどう感じますか?」
藤巻教授
「難民というのは、日本も難民条約に加盟をしていますから、人道的に困っている人がいたら助けるという、そういう側面もあるので」
反町キャスター
「それは加盟をしている国は受け入れ義務があるのですか?」
藤巻教授
「そうですね。ただ、どういう人を受け入れるかというのは、それぞれの国に任されているわけです。だから、裁量を持っているんですね。だから、現在のシリア難民を日本の場合は、戦争難民というような位置づけをすれば、日本は条約難民。政治的難民しか入れていませんので。そういうこともできるわけですけれども。世界へのイメージとして、日本も人権に配慮をしているというアピールはした方がいいと思うんです。だから、ドイツみたいに何十万人というのはとても無理です。だけど、100人でも、200人でも象徴的な意味で難民を受け入れると。現在、日本はミャンマーや、タイの難民キャンプにいたカレン族の人達を第3国定住という形で、100人ぐらいですけれども受け入れているんです。いろんな地方、いろんな都市に分散して、日本語を教えたり、就労訓練をしたりし、農業とか、工場とか、建設現場とか、そういうところで働いてもらっている。そういう枠組みで少しずつ入れるというようなことを考えたりするのも1つの考え方です」
反町キャスター
「総理は何をしているのかというのも変ですけれども、先般、シリア、イラク難民支援解決のために970億円の支援の表明をしましたね。この政治決断によって、数を受け入れることもできる。でも、現在のところ、現状のところ戻ったとは言いませんが、金銭による支援というところに軸を移している。これはシリアだから遠いからというところで片づけていいのか。それとも別のアプローチとなっているのか。ここはどう見ていますか?」
藤巻教授
「970億円でしたか。これを出すということは、大変な貢献だと思いますし、UNHCRに日本は非常に資金を拠出しているので、ヨルダンとか、トルコとか、現在1番大変なのはヨーロッパ以上に、その周辺国ですよね。難民をたくさん抱えていると。そういうところを支援するというのは、非常に国際貢献として良いと思うんですけれど、ただ、人は入れないよというのはイメージが悪いですよね。だから、日本として可能な範囲内でと言いますか、万人とか、そういうことではなくて、先ほども言ったように、100人でも、200人でも、象徴的な意味合いとして受け入れるという判断があってもいいし、安倍首相はあの時に、人口問題として申し上げればという発言をされました。移民を受け入れますかという質問への答えならわかるんですけれど、難民というのはちょっと答え方がピント外れで、ちょっと側近の人達というか、外務省の人達も、ちゃんとレクをしていたのかなと思うぐらいですけれども、だから、ちょっとそういう意味では、まだ日本がたくさん難民を受け入れるという準備ができていないので、現在、すぐ大量に受け入れるのは無理だと思うんですけれども、国際社会へのアピールとして、日本は人権にも配慮をしているんだと。そういう姿勢を示していただきたかったというのは思うところですね」
反町キャスター
「曽野さん、現在の、藤巻さんの970億円。お金もいいんだけれども、いくつか実際に受け入れる姿勢があってもいいのではないかという指摘、いかがですか?」
曽野氏
「私は、極めて個人的なことですけれども、UNHCRを信じていないです。お金がどこにいってしまったかがわからない。私は1度だけUNHCRに対して、どこかの時に難民が発生して、テントも足りないというので、私は小さなNGOで働いていましたけれど、テントの大きさの何張かによってお金を出しますと。しかし、私は、お金くださる方に対して、国連難民高等弁務官事務所のテントにどれだけ出すからと言いたいから、テント屋に払わせてくださいと。別に私達の名前を入れるようにと、UNHCRと入れても構わないのだけれども、受け取ってくださいと言ったら、ダメでした。UNの受取りしかダメでした。私は、それはダメだと。出資しませんでした」
反町キャスター
「そういうことから言うと、総理が970億円の支援を表明したことは、もしかしたら無駄になるかもしれないという心配をしているのですか?」
曽野氏
「いや、ここだけではなくて無駄になると思います。UNの財務状況をもっと公開でき、調査できるような状況にしておかないと私は信じられません」
反町キャスター
「それはそもそも論になってしまうんですけれども、では、難民の問題に対して正直言ってしまうと、受け入れるか、お金を出すか、どちらかの選択と言った時に、曽野さんはどうしたらいいと思っているのですか。これまでの話だと文化的な違いがあるから受け入れるのは難しいよね。お金を出すからと言っても、お金を出してもどこにいくのかわからないから難しいよねと。そこはどう考えますか?」
曽野氏
「私は、個人的に対象物があって、そこにお金を出すのが1番いいと思っている。国家間はダメだと思いますね」
反町キャスター
「藤巻さん、なかなか国のレベルで、大きなレベルで、たとえば、NGOからNGOなら現在チェックできると思うんですけれど、国レベルでやれることはなかなか限定されてしまうと思うんですけれども、現在の曽野さんの話はどう感じますか?」
藤巻教授
「だから、先ほどの970億円もどういう使途に使われるのかということは僕ら納税者としてちゃんとチェックをしなくてはいけないなと。現在、お話を伺って思ったんですけれども。確かに周辺国が困っているので、そこにお金を出そうということですけど、それが本当に難民支援に使われるのかどうかということになってくると、現在のお話を聞いていても非常に心配ですよね。だから、ちゃんとそのへんをチェックしていただきたいなというのはあるんですけれども、そういうことを言うと、国と国というと…」
曽野氏
「970億円というのは、たぶん難民支援とは別の政治的問題だと思いますよ、私は」

難民・移民受け入れのあり方 在留外国人の現在
秋元キャスター
「外国人労働者について、愛知県豊田市で取材されたということですが、どういうことを知りたいと思って取材されたのですか?」
藤巻教授
「それは前段がありまして2005年、日本の人口が初めて減少したということで、一斉にマスコミが日本の人口が減ったと大騒ぎしたんです。その時、僕は、地方はとっくに人口が減っているではないか、日本の未来を探るには地方をまわることだと思ったんですね。日本のいろんな地方をまわって人口減少社会とはどういうものなのか。東京にいたらわからないですよね、人口減少と言ったって。それでまわったら、たとえば、新潟とか、東北の農村に行ったら、農家の長男のところにお嫁さんが来ないんです。跡継ぎがいないという深刻な問題になっていました。いかに結婚相手を探すかが大きなテーマです。そこにフィリピン人とか、中国人とか、韓国人のお嫁さんがいたんですね。それから、愛媛県の今治市、タオル産地ですけれども、ここはかつては四国中から若い女性が、働きたいと来ていたんですね。現在は銀行がある、デパートがある、日本人の若い女性が来ないですよ。そこで働いているのは、日本人はパートの主婦、年配の方です。若い女性は全員中国人だったんですよ。要するに、中国の技能実習生という形でそこで働いている。東海地方とか、北関東に行ったら、工場現場に日系ブラジル人がいたんです。要するに、人口減少社会というのは外国人が入ってくるんだということを直感したんです。これはもう入れる、入れないではなくて、入ってくると。だったら入って来た時にどうなるのかというので、愛知県豊田市の保見団地に行って何が起こっているかを見ようと思っていたんです。そこは人口9000人ぐらいの団地ですけれど、当時は半分が日本人、半分がブラジル人、ペルー人もいましたけれど、要するに、団地の中で2つのコミュニティが交わっていないんです。交わっているのはNPO(特定非営利活動法人)とか、NGO(非政府組織)の、ブラジル人の子供達に日本語を教えるとか、そういう人達は、日系ブラジル人の子供と日本人のだいたい女性です、主婦ですね。その人達が接点を持っている。あとは自治会の代表みたいな人がゴミ問題とか、日系ブラジル人は日本と生活習慣が違ってゴミの捨て方もわからないというので、夜間の騒音とか、ゴミ捨てルールの問題とか、いろいろトラブルが多いですね。そのトラブルが起こって接触しているみたいな。日常的にはほとんど交わっていないですよ。これは大変なことだなと思いました」
反町キャスター
「移民とか、難民を、何万人のロットで受け入れ始めたら、その問題が一気に顕在化するという、要するに、現在の話を聞いていると受け入れは慎重にならざるを得ないという…」
藤巻教授
「受け入れようとしているんですよ。安倍首相はだって介護、建設、それから、造船、こういう分野(の人)が足りないというので技能実習生という形で入れてるんですよ。この技能実習生というのが非常に問題ですよ。低賃金の労働者として使っているわけですね。技能実習生というのは、本来途上国の支援のために人材育成のために受け入れる仕組みですよ。それを安い賃金で使う労働者として使って、失踪がいっぱい起こっているんです。その失踪者が難民申請をするというケースも出てきているんです。だから、実態は日系人だってことでブラジル人とか、ペルー人は例外的に入って来て、外国人労働者として働いていると。もう1つが、技能実習生という形で入ってきているわけですね、外国人労働者が。それは、日本は移民を入れないというのを看板にしているので、先ほどから言っているように社会統合政策がないです、移民をどう日本社会に入れるのかというね。ドイツはなぜあんなに難民を入れるかというと、ドイツは2005年に移民国家宣言をやったんですね。要するに、ドイツはガストアルバイターということでトルコから労働者をたくさん入れて、ゲストワーカーということですよね、英語で言うと。だから、一時的な人で帰ってもらう人だと。ところが、帰らなかったわけですよ。それでドイツは移民国家ではないと言っていたけれど、2005年にこれはやらなければいけないということで、ドイツ語教育を一生懸命始めて、統合コースというのをつくって、トルコ人を一生懸命ドイツ社会に統合させようという、そういう下地があるので、今度の難民も受け入れられるところがあるんですね。日本はそれがないです。だから、日本語ができない外国人がいっぱいいる。あるいは子供達も日本語が不十分ということではいけないので、日本社会に入ってもらうためにまず教育をしっかりやると、そこをきちんとやらないと。文科省もわかっているんですね。私は、文科省の外国人児童支援の教育会議の有識者会議というのができて、その委員もやっているんですけれども、そのへんの問題に気づいて、これから日本語教師を、外国人児童に対する日本語教育を一生懸命やろうという流れになってきているので」
曽野氏
「私、不思議だと思うのは日本人は外国人を呼ばないですね、家に。私は割と呼ぶんです、平気で。日本では、大根と油揚げ煮て、何だか怪しげな味だけれども、これで味を濃くすればおかずになって、子たくさんの子はそれでたくさんご飯食べられるといちいち解説つきで出すんです。だけど、なぜか呼ばないですね。それが非常に大きなネックだし、外国人は阻害されていると思うらしいです」

異文化は理解できるのか
反町キャスター
「ヨーロッパの移民政策を見てきて、日本が異文化を受け入れるうえで参考になるケースにはどんなものがありますか?」
藤巻教授
「ヨーロッパというのは現在この局面で見るといろいろ問題を抱えているように見えますけれど、いろいろ文化との交流と言いますか、他文化との交流を非常に大事にしてやってきていると思うんですね。日本人の問題は経験がない。島国で接触がないことだと思うんですよ。でも、たとえば、東京の新大久保に行きますと、新大久保と言うと皆さん、韓流で韓国人がたくさんいらっしゃると思うかもしれませんけれども、イスラム系の人もいっぱいいるんですよね。ミャンマーの人、インドの人、いろんな人がいるんです。そこにインドのイスラム教徒がいまして、インドは世界3位のイスラム教国と言われたんですよ。びっくりしたんですけれども、インドは13億人の人口がいますから、1割がイスラム教徒ですから、1億3000万人ですね。インドネシア、パキスタンに次いで多いワケですね。そういうことを知るとか、あとネパールの人と知り合うとネパールの話で、ネパールの国が現在どうなっているとか。中国朝鮮族という方が大久保にいるんですね。これはかつて朝鮮半島から中国に移った中国の少数民族の人達ですけれども、その人達は中国語、韓国語、日本語の3か国語を喋るんですよ。だから、東アジア人という、現在、東アジアは仲が悪いですけれども、そういう人達もいるとか、面白いですよ、とにかく。だから、僕はエチオピア人の友達もいますけれども、ミャンマーの人もそうですけれど、いろんなことを教えてもらえるんですよ」
反町キャスター
「フランスのやり方、イギリスのやり方、全部内容は同じなのですか?」
藤巻教授
「違います。イギリスは多文化主義と言って、多文化を受け入れるけれど、別々に暮らすんですね。フランスは同化主義ですよ。小さい頃から、あなたはフランス人です、フランス社会に入りなさい、とやるんだけれども、最後のところで差別があるんですね」
反町キャスター
「ヨーロッパは移民政策において手詰まりになっている?」
藤巻教授
「そこはインターカルチャル構想がありまして、多文化を尊重しながらも交流するという。多文化で放って置くのではなくて、社会に統合するというような」
曽野氏
「私は、必ず失敗があると思う。失敗込みでいいです。失敗するんです、これは。完全に成功するわけがない、最初から。だから、イギリス流失敗とか、フランス流失敗、日本流失敗があると思う。それでいいのだと思います。それを体験しながら生きていくということが人生ですから、他のところでも。別に移民政策だけ失敗するのではないと思います。でも、生きていければいい。とにかく今日、おなかがすかないで、生きていければいい」

作家 曽野綾子氏の提言:『慈悲は人間の神に対する義務』
曽野氏
「慈悲というのは努力を伴うということですね。心から喜んで、ではないです。それは何に対するかというと相手ではないです。神というものが人間を見ていて、神でも仏でもいいですけれど、そういう人間を越えたものに対する義務です。やらなければいけない」

藤巻秀樹 北海道教育大学教授の提言:『共通点に目を向けよ』
藤巻教授
「異文化という違いばかりに目がいっちゃうんですけど、人間というのは共通点の方がはるかに多いですね。親子の情愛とか、夫婦の愛情とか、子を想う心というのは世界共通ですよ。僕はいろんな外国人の人と話していると、異文化というものは楽しさでもあり、おもしろさでもあるんですけれど、人間としての共通の価値観というものを共有している。そこに目を向ければ、うまく異文化の人とも付き合っていけるのではないかと、そういう意味で書きました」