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2015年12月3日(木)
ロボットに新たな使命 終着点は『不完全』?

ゲスト

岡田美智男
豊橋技術科学大学情報・知能工学系教授
川上浩司
京都大学デザイン学ユニット特定教授
黒崎政男
東京女子大学教授 哲学者

人口知能AI時代 ヒトはどう生きる?
秋元キャスター
「岡田さんの研究例から見ていきます。ゴミ箱ロボットというロボットのVTRですけれども、現在、動いているのがロボットですね?」
岡田教授
「そうです。ゴミ箱ですけれど、ゴミを見つけるんだけれど、自分で拾えないので、ちょっと人の方にすり寄っていくと、人が思わずゴミを拾ってあげてしまう。そういう非常にシンプルな、取り立てて説明をすることもないんですけれども。こういう何の役にも立ちそうにないようなロボットが飄々と動く中で、ちゃっかり人の助けを引き出しながら、結果としてはゴミを拾い集めてしまうことができる。そういうことですね。これをどう考えるかですが」
反町キャスター
「これは、最初からこういうロボット?要するに、ゴミを見つけ、接近して、ここにあるよと伝えるところまでを狙ったロボットなのですか?それとも技術的な問題として、ゴミを見つけて、接近して、ピックアップして、バスケットに入れることが難しいので、ゴミの前で止まる、意図的に最初からこれを狙っていたのですか?」
岡田教授
「どうですかね。そのあたり…いろいろ難しいんですけれど、普通ゴミを拾い集めるようなロボットを考えようとした時に、ゴミを高度のセンサーで見つけて、それを手でゴミに近づけて、掴んで、またゴミ箱まで移すというようなことをやると意外と大変ですよね。火星で鉱物探査をするように大がかりなものになってしまって、我々の生活の中に、そこまでオーバースペックなものが必要なのかというところがありますよね」
反町キャスター
「たとえば、ゴミを、ペットボトルを拾ってポンと中に入れてもらったあとにちょっと身悶えするではないですか?これは普通、何?みたいな」
岡田教授
「まず人に近づいた時に頭を下げるのは何か入れてほしそうな感じしますよね」
反町キャスター
「これも、要するに、グッと傾けるのは、ここに入れて、ゴミを入れてねという」
岡田教授
「そうですね。それで、そのあと人が入れてあげる。センサーを使って、ゴミを入れてもらったので、また頭を下げるという。それを人が勝手にお礼をされているように感じると思います。そういうものですよね。同じ仕草をしているだけですけれど、人の捉え方が違う、場面によって。それを狙っていることになりますね」

【不完全ロボット】の意義
秋元キャスター
「ロボットというと、どうしても役に立つものというイメージがあるのですが、役に立つ、立たないという意味でいうと、岡田さんの、このロボット役に立つのですか?」
岡田教授
「十分役に立つと思うんだけれど。僕はあまり役に立つ、立たないという議論をしたくなくて…。人との関係性をどうデザインするかというようなことですね。何々をしてくれるロボットという形容詞を付けてロボットを考えてしまうことが非常に多いですよね」
反町キャスター
「そうですよね。普通。だって人間の助けになるものですよね」
岡田教授
「何をしてくれるロボットとか、何かをしてくれるロボット。でも、そういうものをたくさんいろいろアイデアを出す中で、結構、飽きてきたというところがありますね。飽きてしまった。むしろ、たまには人の手助けを引き出すような。ちょっとずるいというのか、他力本願なロボットがあってもいいのではないかとか。あるいは人の手助けをうまく引き出しながらも、目標を達成するという意味では、社会的なスキルということで考えるとなかなか賢いですよ。そういう賢さは、これまでのロボットにはあまりなかったものですから、そういうことがいいかなという」

デジタル時代の人間哲学 不便だからヒトが活きる?
秋元キャスター
「続いて川上さんの研究について聞いていきます。川上さんは、私達の身の周りには不便な方がいいものもあるという発想から不便益という考え方を提唱されていて、いろいろな研究を進めているということですが、不便さから得られるメリット、不便益。8つの例で、能力低下を防ぐ。上達できる。工夫できる。信頼できる。発見できる。理解できる。主体性が持てる。俺だけ感があるなど、ちょっとこれだけ聞いてもイメージが湧きにくい方も多いかと思うんですけれども、川上さん、具体的にこれはどういう研究をされているのですか?」
川上教授
「いろんな事例を探し、これは不便だから、すごく良いことがあるよねというのをかなりコレクションしています。それをコレクションしたら、どんな不便がどんな益をもたらすかというのは、これは分類できちゃうよねと。分類をした結果、不便からよく得られる益はこの8つだなと。こうなったんです」
反町キャスター
「京都の学生の方からメールがきているんですけれども、『不便で情報を得るにも苦労した時代。そういう古き良き時代の方が人々のつながりが強く、幸福感も高かったのではないでしょうか』とのことですけれども。そういう気持ちで、この不便益というのに入っていったというのはあるのですか?」
川上教授
「入ったきっかけは、それではないですね。きっかけは、それではないのですが、いろいろな事例を聞いていると、それにつながる話はたくさんありますよね」
反町キャスター
「そういうものもやっていくうちに視野に入れていたと。要は、やたらと便利よりも、多少手間がかかった方が、不便な方が手触り感とか、幸せ感があるんだよねというところ。8つの例の中にも、特に上達できるとか、俺だけ感があるとかというのは、まさにそういうことですよね?」
川上教授
「そうですよね。だから、もう上達できなくてもいいから、便利になった方がいいやと。何もしなくて済む方がいいやという人ももちろん、いらっしゃるんですけれど、上達できてうれしいという人もいるわけで、それこそ幸せ感ですか」
反町キャスター
「その例でちょっと用意をさせていただいたのですが、『かすれるナビ』というのをこの不便益の1つの例として、今日説明いただこうと思うのですが。これは、どういうことなのですか?」
川上教授
「ナビゲーションシステムは、正確で明瞭な情報を出してくれるのが便利ではないですか。(それでは)便利過ぎるということで、いったん通ったら、その道が少しずつかすれていくという仕様にしたんです」
秋元キャスター
「ナビの画面がかすれていくということですか?」
川上教授
「そうです。だから、いっぺんずっと通りますと、周りがかすれていますよね。たぶん3回ぐらい通ると真っ白になって、周りに何があるかが表示されなくなって。あとたくさんかすれていますけれども、これはたぶん曲がり角で、ボーッとここはどこだとか、いろいろな周りを眺めたので、速度がゆっくりだと、たくさん隠れるようにしています。さくっと次のコーナーまで行って、ここのコーナーでまた迷ったみたいな。そういうふうにその人がもういっぺん通って、町の周りを見て町の情報が頭に入っているだろうということで、こちらからは情報を消してしまえと」
反町キャスター
「技術的には普通のナビよりもこちらの方がレベル?ハードルが高そうですよね?」
川上教授
「難しいです」
反町キャスター
「難しいですよね。この人の行動のパターンも記憶し、ここでグルグルまわったなというと、そこはスーッと薄くなっていると。滞在時間が長かったりしたら、スーッと薄くなったりする。そういうシステムをつくられたわけですよね」
川上教授
「そうです」
反町キャスター
「結果、これによって、たとえば、不便益、いわばこの8つの不便益的に言うと、かすれるナビを使うことによって、その人間は8つのうち何かメリットを得て、幸せ感を得たりするものなのですか。あまりそこは結びつけない方がいい?」
川上教授
「そこは結びつけてください。能力低下を防ぐというのは街並みを覚えているんです。ちょっと実験をしたデータがあるんですけれど、普通のナビゲーションシステムと、それから、かすれる機能をつけたもので何人かの実験参加者を募って、実験してみたのですが、まずこちら側ですけれども、これは地図を書いてもらって、あとから」
反町キャスター
「ナビを使って歩いたあとに歩いたところの地図を描いてもらうんですね?」
川上教授
「そうです。普通のナビを使うともちろん、同じところを1回グルッとまわるよりも、2回まわってくれた方がいろいろと覚えているのは、もちろん、そうですけれども、かすれるナビを使うと2回目まわった時に、すごくよく覚えているんです。これはたぶん1回目回った時にかすれてしまって、俺、ここに情報あるからと思って安心していたのに、かすれ幅があると。これはやばいというので、これは自分の頭に入れなくてはと思ったのではないかなと」
反町キャスター
「黒崎さん、こういうのをどう感じますか?」
黒崎教授
「我々のテクノロジーは皆、テクノロジーを進歩させていくのはどういうことかというと、自分がやるべきことを代替でやらせるとか、あるいは拡張をしてやらせる。だから、スコップを発明して、ちょっと手でやるよりは大きくしてやる。ブルドーザーでこうやるともっと100倍も掘れると、どんどん拡張していくのが人間のテクノロジーですけれども、コンピューター関係とか、こういう関係というのは、自分の神経系の拡張と言いますか、神経系の代替なわけですよね。だから、これまでの身体系とか、物理的拡張と違って、コンピューターや、こういう世界というのは自分の神経、見るとか、聞くとか、考えるとか、そういことをコンピューターにやってもらうというか。と言うことは、何をやっているのかというと、コンピューターがどんどんこういうことをやってくれる。こういうふうに便利にしてくれるというような、我々が自分でやっていることを代替、アウトソーシングしていくという形で便利になっていく。だから、便利になるということはどういうことなのかというと、このボタンを押せばどうなり、このボタンを押せば写真が写りというのが便利だとすれば、それは自分が写真を写すことの意味とか、お米を炊く焚き方とか、自分が炊くというよりは、ただボタンを押すと炊けているわけですよね。ボタンを押すと写っている。本来、自分がやりたいというか、やりたかったことが実はその本質が失われていっているのではないかということをきっと不便という形で、それが我々に現生していく。不便だというのは自分で考えて、自分で働ければいけないという、まさに自分がそれをやっているということの意味ですけれども」
反町キャスター
「退化しているのですか?人間は」
黒崎教授
「と思います。見ようによっては。退化というのは自分の外に全部置き換えていっているわけですね。だから、自分がこうやって、こうやらなければいけなかったことを、ボタンを押せばやってくれる。だから、自分が何かをやりたいという時には、ボタンを押すこと、何かをやりたいというのはこのボタンを押すことで、何かしたいということはこのボタンを押すことになってしまったわけです。それは便利の極限なわけですけれど、しかし、自分がご飯を炊いたり、自分が写真をとったりという、自分がやるという自分のコミットがなくなってしまって、自分の技術やノウハウを全部外に出してしまうというか、全部失ってしまうと。そういうところで、何で我々は生きているのか。何でこんなものをつくっているのかということ自体、意味が欠落していくわけですよね。便利になり過ぎると」
反町キャスター
「川上さん、現在の話はいかがですか?」
川上教授
「実はあまり哲学的な話までもっていくと、皆さん不機嫌な顔をされるので、できるだけ、そういうことは言わないように、これまで隠していたのですけれども、実は本質的にはその通りだと思うんです。要するに、生まれてこのかた、まったく動かなくていいですと。働かなくていいです、そのままずっと寝ていてくださいと。寿命がくるまで何もしなくていいですと言われたら、本当に、お前は幸せか、不幸せか。極論ですけれど。そうではないだろうと。何かをやるために生まれてきたに違いないみたいな意識は、実はこれまで言ったことはないですけれども」
黒崎教授
「言ってしまいましたね」

ヒトとロボットの共存 真のコミュニケーションは…
岡田教授
「これは相手の目線を気にしながらたどたどしく話すロボットということですよね。うちの娘が小さい頃、小学校から帰って来た時に、一生懸命に今日あったことを話そうとする。えーっと、えーっと、先生がねと。お母さんが、ちょっと目を外していたりすると、あのね、今日ね、聞いている?とか言いながら。ですから、言葉というのは大変、個人的な活動だと思われがちですけれども、常に相手の、聞き手の、あなたの話ちゃんと聞いていますよというメッセージをリソースにしながら、言葉を調整しているんですね。そういうものをつくってあげると、あのね、えーっとねとか、言い直したり、言いよどんだり。非流暢な発話になってしまうんですけれども、非流暢な発話が聞きにくいかというというと、そんなことはなくて、実はこのロボットの、一生懸命に語りかけをするような、先ほど、意思を感じたり、あるいはこちらにあわせて話しているので丁寧さとか、優しさを感じたり、聞き手も入り込んで、一緒になって会話をつくっていくので、何か気持ちも伝わってくる。あるいは聞き手として参加することがちょっとうれしいような感情を生み出すということがあるんですね。NASAの話は、今日あったニュースを一生懸命に話したんだけれども、途中で物忘れしてしまって、えーっと、と言うと、聞き手としてはそこに参加、一緒に考える。そういう共感的な会話を引き出しやすいというのがあります。プロテイジエフェクトというらしいんですけれども、自分が学ぶより、自分よりも年少の子供を教え込む方が熱心になって、それで結果として学んでしまうというような効果があるんですね。この場合もロボットのたどたどしい発話とか、あるいはちょっとした物忘れに対して、子供がそれは何?ということで、一生懸命手伝う中で、子供達の学びを促すことができるのではないかとかですね。ですから、テキストのやりとりよりむしろ現在、聞き手、話し手と、お互いの立場を調整して、役割を調整して一緒になってその場をつくり上げる。ちょっとした調整があるだけで心を感じたりするわけですよ。ところが、自動販売機からありがとうと言葉を発した時代があったんですけれども、あれを聞いても、お礼の気持ちとして伝わってこないよというようなことがありましたね。あそこに少し場を共有させて、調整させるということを、もう少し設けてあげると、ちょっとした心を感じてしまって、販売促進につながると」
反町キャスター
「たとえば、テレフォンサービスがあるではないですか。電話をかけるとまず自動メッセージがずっと流れて、無機質な、無意味な2分間。あれが、たとえば、現在の話になっていて時々、えーっと、何を言っていたんだっけと言われると。いらいらする人は嫌かもしれないけれども、そういう意味で言っています?」
岡田教授
「そうですね。結局、音声合成、テキスト音声合成だと、非常に堅い、流暢な言葉だけど、そこに気持ちをあまり感じないという。必ずしも伝わることにつながらないというのがあって、時々、調整をするとか、えーっと、あのーと相手に合わせながら調整してあげると心を感じる」
黒崎教授
「感じるんですよね。だから、あたかもロボットが自立的な、自分の意思を持って歩いているように我々は見ているわけ。でも、基本的には、ロボットはこれからも、暫くずっとそんなシステムは持たないですよ。ただ、我々が見た時に人間性を感じるようなインタラクションができれば、それは、我々はこの子は心を持っていると認定する形でロボットは成立していく。だけど、工学的には単なるプログラムに過ぎないと。そういうことが現在、ロボットが怖い、どうなってしまうんだろうか、今後。鉄腕アトムみたいなものが出てきてしまうのではないだろうかと言いますけれども、基本的にそれはほとんどあり得ない。あり得ないんだけれども、2足歩行をし、自分に反応してくれるような。そういう存在に我々は意味を投げ込むわけです。2足歩行を歩くのを見た時に、10年前ぐらいですけれども、何か親しい存在、何か友達のような感じがする。でも、機械です。だけど、2足歩行し、しかも、こういう、もし先ほどみたいな反応系を入れてあれば、我々は、それは心ある存在としてみなしますよ。だけど、それは錯覚というか、我々がそういう構えで世界と向きあっているからであって、常に何か意味を捉える。何か常に心を感じるものとして、我々はそういう構えで生きている」

デジタル社会の人間関係
秋元キャスター
「川上さんが提唱されている社会実験の1つには『猫メディア』というものがありますが、これはどういうものすか?」
川上教授
「現在いろいろなコミュニティに入るのはとても簡単ではないですか。パッと入って、気に入らなかったらパッと出ていって。でも、そこで発生するコミュニティは、薄っぺらい感じがしません?そのコミュニティに帰属することの意味はそんなになくて、本来人と人とのコミュニティはそういうものではないはずだということで、現在のSNSが便利すぎると。不便にしてやれと。それである野良猫好きコミュニティというのを考えて、だけど、そのコミュニティでの情報交換はSNSを使うんです。使うんですけれども、そのコミュニティに入るためには、タマならタマという、その人が勝手に名前を付けた野良猫ととっても仲好しになって、抱っこさせてくれるぐらい仲好しになったら、初めて首輪に着いているQRコードをカシャッとやって、そうしないと、このコミュニティに入れないと。ただ、そうやって入ると、同じぐらいそのタマと仲好しになっている人しかそこにはいないわけです。だから、物理的に離れてはいるんですけれども、たぶん直接会ったことはないのだろうけれど、ある1つの野良猫を介した形で密なコミュニティができるだろうと」
反町キャスター
「簡単で薄っぺらいものとは違うものをつくることによって、何か人間関係における問いかけみたいなもの、ないしSNSはある意味、最先端技術の集積みたいなものだとしたら、それに対するアンチを見せたかった、そういうことでもあるのですか?」
川上教授
「そうです。アンチであり、しかも、もう1つは不便益のことをノスタルジーではないかという人がいるんです。そうではなく、もし濃いコミュニティをつくりたかったら、村社会に戻れって言えばいいですよ。だけど、そうではないだろうと。たとえば、村社会にあったような濃い関係みたいなものを、現在のテクノロジーを使ってこのあとに実現するにはどうしたらいいのかというのが不便益で、そうすると、現在みたいなQRコードとか、SNSとか、そういうのをベースにしたうえでの、村に戻るのではないけれど、濃いコミュニティのあり方を探る、その1つの試みですね」

人工知能AI時代 ヒトはどう生きるべきか
反町キャスター
「パソコンがダメな人もいます。デジタル・ディバイド。本日の議論の、外の人達がいるわけです。そういう人達に技術とインターフェースの便利さを感じさせるのは可能なのか?」
岡田教授
「ちょっとロボットの話に戻っちゃうかもしれないんですけれど、最近お掃除ロボットというのがありますよね。あれは勝手に部屋を掃除してくれるとても便利なものですけれども、暫く同居してみると、彼らの弱さも気になってくるところがあるんですね。たとえば、部屋のケーブルに捕まって、そこで立ち往生してしまうと。あるいはちょっと段差に弱いとか、それから袋小路に入ってしまう、そういう弱さがだんだんわかってくると、お掃除ロボットのスイッチを入れる前に、コードを片づけるとか、椅子を並べ変えてあげるなんて、そんなことやっているわけです。そうやって暫く部屋を見てみると、部屋はとてもきれいになっているということがあるわけですね。では、その部屋を片づけたのは誰かと考えると、自分が片づけたわけでもないし、そのお掃除ロボットが1人でやったわけでもない。一緒になって部屋を片づけたというようなことですよね。お掃除ロボットは我々を味方に引き込んで一緒に部屋をきれいにしてしまったという、そういうシステムが、ちょっと弱さが見えてくるというか、見える形になっていると、我々が参加する余地を与えてもらえるという、そこで楽しみが生まれると、一緒になって掃除をしてしまう、部屋をきれいにする新たな価値が生まれる。これはそれほどデジタルを理解していなくても、日常の高齢者の方がお掃除ロボットと一緒になって部屋を掃除するような場面がどんどん出てきてもいいかなという感じはするんですよね。そういう入口はあるかなと思いますね」
川上教授
「不便益もアプローチの1つだと思っているんです。と言うのは、便利なものはブラックボックスが多いですよね。因果関係がないというか、スイッチを押しちゃったら何かこうなっちゃう。デジタルのものは全部お約束ですね。このスイッチ押したら、こうなるというのはつくった人のお約束でしかないので、不便なものというのはそうではなく、不便なだけにそんな一足飛びに何か機能がバンと起きるわけではなく、その中の因果関係が見えてくるとか。それから、何でこれがこうなっているかと物理的なフィールドワークを使いながら、その仕かけを密かに教えてくれるみたいなところがあるんです、モノに触るので。そういう意味では、現在デジタルが便利すぎるから触れないという見方をすれば、ある種の不便を持ち込むことによって、現在デジタルが触れないと言っている人も、ああこういう仕かけなのねとわかるようになるのではないかなと期待していますけれど」
黒崎教授
「難しいですよね。とにかくブラックボックス化していっているから、自分で考えなくなる。だから、ただの約束事で押していく。だけども、一方では『らくらくホン』みたいなのも押せば(電話が)かかるようになるからという意味では究極にあるわけですよね、ブラックボックス化の。だから、そこのせめぎあいというのはブラックボックス化してこそデジタル・ディバイドを乗り越えられるという側面もあれば、ブラックボックス化したことによって、我々はますますその機械のあり方から離れていくという、そういう両面があって、それはなかなか難しい問題だと思いますけれど、ただ、ブラックボックス化するということは自分で考えなくなる、自分でやらなくなる、全部を外に委ねるという形がとにかく進行していることだけは間違いないと。いろいろな世代の差というのは確かにあって、我々がこの世代に生まれている時はアナログの世界も知っていて、デジタルも知っている。だけど、デジタルの世界に生まれてきた人はデジタルしか知らないから、何の不自然さも思わないという、そういう世代間の差というのは常に存在してきている。そこはなかなか解消しにくいと思います」

岡田美智男 豊橋技術科学大学情報・知能工学系教授の提言:『弱さの情報開示を! 人もシステムも…』
岡田教授
「これは人だけではなくて、システムもそういうものが必要なのではないかということですね。現在人に弱さをなかなか見せられない社会になっていて、少し強がっているところがあるんですよね。たぶん人工知能のシステムもそうだと思うんですけれども、人工知能システムは完全ではないわけですけれど、どこか周りの期待にあわせて強がってしまう、弱みを見せられない。時々、先ほどの掃除ロボットのような形で弱さというものを少し情報開示してくれると、そこに人が手助けする余地が生まれてくると。誰でも参加して貢献できるのではないかなということですね」

川上浩司 京都大学デザイン学ユニット特定教授の提言:『不便を楽しみましょうよ』
川上教授
「たぶん便利の方が楽ですけれども、不便な方が楽しいことが多いと思います。そういう気持ちの持ち方ですよね。本当に不便に苛まれている人に、これが言えるのかと言われると、ちょっと不謹慎な気もしますけれど、でも、不便にも良い不便と悪い不便があると思います。本当に良い不便というのはその時、短期的には苦しいかもしれないですけれども、実は心の奥底で楽しいと思っているはずなので、それに気づいてもらうといいかなと思います」

黒崎政男 東京女子大学教授の提言:『能力のアウトソーシングを自分にとりもどす』
黒崎教授
「テクノロジーというのは、全部外に自分の能力をやってもらう。人工知能というのはまさに自分の知能とか、自分の想いとか、そういうものまで外に出してしまう。だから、計算できなくてもいい、漢字が書けなくても見ればいいです。知識を覚えなくてもウィキペディアを見ればいいです、というふうにどんどんアウトソーシングしていくと。その中で自分の生きていく意味とか、そういうものも一緒に空になってしまう。そういうことから転向すると言いますか、自分でやってみる」