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2015年12月1日(火)
ボーナス季節に懐の話 賃上げへの道徹底議論

ゲスト

野口悠紀雄
早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問
山田久
日本総研調査部長・チーフエコノミスト

「賃金」の現状と今後 どう見る?GDP2期連続マイナス
秋元キャスター
「まずはGDP、国内総生産の推移から見ていきたいと思います。今年7月から9月期のGDPの速報値。物価変動の影響を除いた実質で前の3か月と比べマイナス0.2%。年率に換算すると、マイナス0.8%となり、2四半期連続のマイナスとなりました。まずは野口さん、この現状をどう見ていますか?」
野口氏
「GDPの伸びが停滞しているのは、私は、基本的には消費支出が中期的に見ても伸びないということだと思っています。その原因は、賃金所得が伸びないからだと、私は考えているわけです」
山田氏
「従来の日本は、カーブ局面というのは輸出が伸びたんです。輸出が引っ張って、利益が出て、賃金が増えていくというサイクルがあったんですけれども、これは1980年代の前までですね。その後、バブル崩壊して、暫くそれがなくなって、輸出が伸びた。利益が出て、設備投資が増えたというのが1990年代に起こったんです。ところが、2000年代に入ってからは、特にリーマン(ショック)以降ですね。輸出も伸びなくなった。だから、本当に最後は消費を伸ばすしかないんだけれども、根本のところ、賃金が伸びてこないというのが、本当のところだと思いますね」
反町キャスター
「野口さん、先ほどの消費が伸びない理由なんですけれども、こういう図を用意しました。売上高、売上げ原価、営業利益、人件費。この4つの数値から見て、消費が伸びない背景。説明いただけますか?」
野口氏
「1番右側にある人件費というのがあります。それがマイナスです。これは全産業で、全部の企業の数字ですけれど、だいたい2011年、2012年。つまり、安倍政権の発足前と、それから、2014年を比べてみますと減っているんですよ」
反町キャスター
「2011年から2012年度の平均と2014年度の差額というのは?」
野口氏
「アベノミクスの前と後ということですね」
反町キャスター
「アベノミクスの評価として、この4つの指標があると。こういう理解でよろしいですか?」
野口氏
「そういうつもりです。人件費がだいたい率で言いますと、この間に4%ぐらい下がっているんですよ。これはかなり大きな下落ですね。それが消費を抑えていると」
反町キャスター
「そうすると、今日テーマとなっている消費に直結するのは、ここですよね?」
野口氏
「そうです。人件費です」
反町キャスター
「人件費。つまり、給料ですよね。そうすると、基本的な質問から言うと、売上高が、アベノミクスの期間の間に、売上高が、こんなに、20兆、全産業、全規模で伸びたにも関わらず、所得が減っている」
野口氏
「それが問題だということですね」

売上高と人件費の関係
反町キャスター
「理由はいろいろあると思うんですけれども、普通は売上げが伸びたら、給料が上がっていいものではないかと思うのではないですか?」
野口氏
「これは、輸出産業の場合はドルで見た売上高が変わっていないです、ほとんど。しかし、円安になると、円で評価した売上高は増えるでしょう」
反町キャスター
「80円が120円になったから?」
野口氏
「そういうことです」
反町キャスター
「それだけのことですか?」
野口氏
「それだけのことです。売上高の増加分だけ利益が増えているんです。要するに、何も変わらないで、計算上、増えてしまったということです。これが株価を上げているんです。株価に関係しているのは営業利益です。消費に関係しているのは人件費。だから、株価が上がって、消費が落ち込む。従って、先ほど申し上げたように、GDPが増えないと。経済が停滞している。株価が上がって、経済が停滞しているという理由はそれです」
反町キャスター
「なぜ企業は人件費にお金を割かないかという理由とはまた違う話になりますよね。結果としてそうなっているという話?」
野口氏
「違います。それは企業が合理的なことです。現在、申しましたように輸出産業の場合は、実態は何も変わっていないんですよ」
反町キャスター
「たとえば、輸出台数、製造台数。車で言うんだったら」
野口氏
「台数はあまり関係ない。変わっていない、ドルでは。だから、変わっていないです。しかし、円安になれば、円で評価をした輸出代金は増えるでしょう。他が変わっていないのだから、利益が増えるんですよ。それで株価が上がるんです」
反町キャスター
「そうすると、たとえば、企業の経営者のマインドから言うと、これは、山田さんにも聞きたいところですけれども、たとえば、自動車メーカーにしましょう。車を、たとえば、100万台、これまで輸出のため、つくって、売っていました。100万台は、アベノミクスの時と台数がほとんど変わらないけれども、為替が80円だったのが120円になったおかげで、為替の大きな利益が飛び込んできたと。この状況下においては、経営者は、では、これで賃金を増やそうという気持ちにならないという、その経営者のマインドは?」
野口氏
「だって、生産は変わっていないわけですもの」
山田氏
「おそらくボーナスぐらいは増やすんだと思いますね。一時的に利益が出ているということであれば、ボーナスを増やします。ところが、いわゆる春闘でいうベアというもの、基本給の部分を増やすには国内での事業が持続的に拡大していくという、そういう確信がないと、本気ではなかなか増やしてこないということだと思いますね、基本的には。そういう状況で、また、そこまで企業のマインドというのは前向きになっていないと思います」

業種別に見る売上高と人件費
秋元キャスター
「野口さん、企業の売上げが上がっているのに人件費が減る傾向が特に強い業種というのはどこでしょうか?」
野口氏
「この図をご覧いただきたいのですが、まず下の図をご覧ください。これは製造業の資本金10億円以上、つまり、大企業ですね。これは輸出産業だと考えていただければいいと思います。輸出産業というのは大企業なので。ここで特徴的なことは、まず売上高、1番左のグラフが伸びていますね。これは、期間は先ほどと同じ期間の増減を示しているのですが、売上げが伸びている。売上げが伸びているのは、先ほど申しましたように、円で評価した輸出の代金が増えているからですよ。その証拠に、売上げ原価は増えていない。むしろ減っているんですよね。つまり、生産は増えていないですね。実態は何も変わっていない。だから、計算上、売上げが増えたからほぼそれと同額だけの利益が増えたんですよ」
反町キャスター
「仕入値の価格は変わらずに、為替で売上げが伸びて、それがすなわちそのまま営業利益にきてしまっている?」
野口氏
「そうです。しかも、営業利益というのは、売上げに対する比率が2%とか、3%ですから。だから、売上げがそれだけ…。売上げの増加というのは、率でいうと3%ぐらいですけれどね。でも、利益の増加率というのは、ものすごい増加率です。30%を超えるんです。1番右のグラフが人件費ですが、これはほとんど変わっていません。つまり、大企業は人件費をほとんど減らしていない。ほとんど手をつけていないということです。要するに、実態は何も変わっていないということです。人件費を減らしているということもないんです、ここでは。大企業は」
反町キャスター
「では、つまり、雇用者は、ほとんど変わっていない?」
野口氏
「変わっていない」
反町キャスター
「人を増やしていないし、減らしてもいないし、人件費も変わってない?」
野口氏
「変わっていない。生産も変わっていない。生産も変わっていないというのが、あとで小企業に重要な影響を与えるんですがね。その前に上の青いグラフを見ていただきたい。非製造業も人件費はあまり変わっていません。ですから、非製造業も人減らしとか、賃金を減らすということはあまりやっていないですね。ここでも、売上げは増えていますね。ただし、原価は増えていますね。それは、輸出産業とは違うんです。つまり、売上げが増えれば、仕入も増える。当然のことですよね。ただ、その売上げが増えたなら、それに比例して、本当は人件費を増やしていいはずですが、人件費はむしろ若干マイナスですから。だから、そこで節約効果があって営業利益が増えたと。こういうことになっているんです。だから、大企業の利益が増えている理由というのはこれです。ところが、小企業にとっては大変大きな問題が生ずるわけで、特に製造業がそうですが。製造業は、売上高はまず減っているんですね。これは先ほどの大企業とちょうど正反対。大企業が輸出で増えましたね。ところが、先ほど申し上げたように生産は増えないですよ。だいたい小企業というのは下請けと考えていただければ、小企業にとっては注文が増えないわけですね。他方、部品は海外移転していますから、小企業に注文が来なくなるわけですね。だから、売上げが減っちゃうんです」
反町キャスター
「これはちゃんと見てほしいのは、大企業がプラスにグッと伸びているけれども、中小企業は、これは明らかにゼロからマイナスに沈んでいます」
野口氏
「ほぼ同じだけ。だから、当然生産を縮小するわけです。売上げも減っています。原価と同じだけ。しょうがないので人件費を減らしているんです、中小企業は、製造業の。その結果、営業利益は若干、現在プラス、マイナス、ほとんどゼロぐらいにとどめているんです。つまり、どういうことかと言うと、小企業は売上げが減るから企業を存続させるために、止むを得ず人件費を減らしているんですね。よく人件費を減らして、利益を貯め込んで、貪欲な企業だというイメージを持っていらっしゃる方が多いと思うんですが、小企業はそういうことではないんですよ。これは止むに止まれぬ行動です。売上げが減っているわけですからね」
反町キャスター
「アベノミクスをやる最初の時から、そういう議論が一部にありましたよね?」
野口氏
「もちろん」
反町キャスター
「大企業優遇、大企業にメリットがあるのではないかという話がある中で…」
野口氏
「そうです」
反町キャスター
「でも、現在さすがに言わなくなりましたけれども、一時期、トリクルダウンという話があって、ないしはその牽引車理論みたいなのがあって」
野口氏
「そうです」
反町キャスター
「大企業が、強い企業が引っ張っていくのだと。そこからだんだん水が染みていくのだと。この話は」
野口氏
「つまり、現在申しましたのはトリクルダウンが生じていないということですよ。製造業の大企業の利益が増えたと言いましたね。トリクルダウンではその利益は中小零細企業にも及んでくるだろうと言ったのですが、先ほど言いましたように生産が増えてないのですから。量的な拡大を伴わない営業利益の増加ですから。そもそもトリクルダウンは生じないです。逆に、売上高は現在ご覧いただいたように減っちゃっているんですよね。逆です」
反町キャスター
「そうすると、じゃあ、今日のもともとのテーマである、賃上げに、大企業、製造業の経営者が賃上げに頭がいくか、いかないかと言うと、そこには何か大きなジャンプ、乖離があるような気がするんですけれども」
野口氏
「だって、製造業の大企業も何もやっていないわけですから。利益が増えたからと言って、人件費を増やしたら、そんな経営をしていたら、企業は潰れますよ。それは非合理な決定ですから」
反町キャスター
「大企業の経営者が賃上げをするのかどうかの決定というのは利益ではない?どうなのですか?
野口氏
「利益を最大にするというのは、いかなる企業にとっても最大の目標です。それを追及しなければ企業は潰れますよ」
反町キャスター
「山田さん、いかがですか?現在の話」
山田氏
「アベノミクスはデフレ脱却ということを言っているわけですね。これは、方法論はちょっといろいろ議論があるんです。金融政策をここまでやって、それに問題があるのかと。なるほど、大丈夫かという議論はあるんですけれど、私自身はデフレ脱却というのは1つ日本が次のステップにいくためには必要なことだと思っているんですね。現在の関連で言うと、敢えてアベノミクスの考え方を擁護するとすれば、大企業の上がった利益を使って、新しいビジネスに出ていくと。事業構造転換をしていく。そこで新しい分野でやると、競合しているところがないので、価格を上げ易いですね。そこで利益を出して、価格を上げる。そうすると、モノの価格が少しずつ上がり始めるという、いわゆるデフレマインドが緩和されてくる。野口先生がおっしゃったように中小企業は非常に厳しいですね。これはすごくデフレ圧が強いわけで、モノの価格が上がらない。ここが少し上がってくれば、全体に波及していくという。そういうことは、敢えて弁護すると、あるのかなと思いますね。ただ、そういう形ではうまくいっていないというのは、日本企業全体としてコスト削減。賃金抑制ということよりも、むしろ事業構造転換をしていく。労働移動が起こって、新しい事業のところに人が移って、賃金も上がっていくという、そういう動きが出てこないと、動かないですね。現在、とりあえずきっかけとして、円安でもって利益は出ているのだけれども、そこを本来は事業構造転換のところに使わないとダメですけれど、でも、そこは未だに規制改革、あるいは労働市場改革とか、いわゆる政府が旧三本の矢で言っている成長戦略のところにかかわってくるわけです。ところが、この部分はある程度進んだ部分もあるとは言え、全体としてあまり進んでいないという形の評価だと思いますので。だから、そこの部分が動いてくるのかなと。繰り返しになりますけれども、賃金、これまでは雇用優先するために賃金を抑える。ここを、賃金を上げると。そのための労働移動がある。一時的に雇用が失速するということもあり得る。でも、そこは次の産業に移していくんですね。そういう考え方の転換というのが起こってこないと、事業構造転換が起こって、本当の意味で、賃金が持続的に増えてこないということです。そこのステップが現在起こっていないという」

「賃金」の現状と今後 法人税減税と賃上げ
秋元キャスター
「法人税減税、これは賃上げにつながるのでしょうか?」
野口氏
「2つの意味で間違いですね。第1は、先ほど来、見ていただいているように賃金総額が減っているというのは零細中小企業です。大企業ではないです。法人税を納税している企業というのは日本企業全体の3割ぐらいしかないですが、大部分は大企業であって、中小零細企業は納税してない企業が多いです。ですから、法人税をいくら動かしたところで何も関係がないです。それが第1の理由。それは簡単な理由ですが、第2の理由は原理的な問題なのですが、法人税を減税すると、賃上げとか、設備投資が増えるというふうに考えている人は、どうも内部留保というのは企業がお金を貯め込んでいて、それを賃金、設備投資とか、そういうものに振り分ける、その分け前を決めるというふうに考えているんですね。そうではないです。内部留保というのは、企業がいろいろな決定をしたあとに残るものですよ。それで法人税というのは利益にかかるんです。これは非常に重要です。法人税は社会保険料のように賃金のコストとか、そういうことに影響はしないです。利益にかかるんです。つまり、企業がいろいろなことをやって、最後に残った利益にかかるのが法人税ですよ。と言うことは、法人税を減税すれば何が起こるかというと、内部留保が増えるんですね。当たり前のことです。賃金が増えるというメカニズムはないです。設備投資が増えるメカニズムもないです。繰り返しますが、賃金とか、設備投資というのは、民間企業がいろいろな指標を見て、利益を最大にするようにして決めるんですね。そこで賃金も、設備投資も決まって、それで利益が決まって、それに法人税がかかるんですね。だから、法人税を減税すれば、残るものが増えるだけです。その結果、経営者の報酬とか、株主の利益は増えます。内部留保が増えることによって、賃上げにはならないです。設備投資にもなりません」
反町キャスター
「理詰めでいくとそうなるのですか?」
山田氏
「そうですね。法人税の引き下げというのは実はヨーロッパで結構やったんですね。その時の議論というのは立地競争力という話をよくしていました。と言うのは、ヨーロッパの場合、陸続きなので、法人税が高いと、隣の国が低いとそちらに工場とかを簡単に移せますよね。だから、そういう理屈で、ヨーロッパでよく議論されていました。日本もそういう観点から言うと、日本は陸続きではないので、ヨーロッパほどではないのですが、ただ、一部、たとえば、人材育成拠点をシンガポールに移そうとか、研究開発の一部を外に移そうという動きがあるので、私はそれはそれでまったく意味のないことではないのではないかと思っています。ただ、賃金とか、設備投資をそれによって企業が増やすかと言うと、設備投資とか、特に賃金のうちでもいわゆる基本給と言われるベアというところにかかわるところというのは企業が将来にわたって事業が拡大するという確信がないと増やさないですね。手元の、まさに内部留保とか、キャッシュフローが増えても、要は、成長するものが出なければ、たぶん出てこない。だから、これはそういう意味では、私はまったく意味はないとは言いませんが…」

内部留保… ため込むワケ
反町キャスター
「企業の内部留保が膨らんでいるのは、アベノミクスが寄与している?」
野口氏
「利益が増えたから企業の内部留保が増えたと言いました。多くの人が誤解しているのは、内部留保というのは何か企業がタンス預金して、無駄に使っているのではないかと思っているんですよね。だから、活用しましょうと言っているのですが、そんなことはないわけで、設備投資が増えないのはそうかもしれないけれども、それは設備投資の、要するに、利益がないからですよ。それが問題なのであって、内部留保を減らしたいなら法人税の負担を上げるべきですよ。もしですよ、先ほど言いましたように、たとえば、中小零細企業が困っているということであれば、その財源を使って給付すべきです。それが所得再分配政策ですよ」
反町キャスター
「内部留保354兆円をどう見たらいいですか?」
山田氏
「たぶん、もうちょっと一般的に思われている内部留保というのは、手元流動性ということと何となく取り違えているというのですかね。企業というのはお金をいろんな形で調達してくるわけですね。それを持って、たとえば、設備投資をしたり、研究開発をしたりとか、残ったお金はとりあえずお金で持っているわけですね。内部留保というのはお金の調達の仕方のうちのもともと持っているこれまで稼いだお金ということで、お金の調達の話をしているんですね。要は、十分使っていないのがあるのはそれを使っていないという話ですから、だから、現預金のようなものが増えているかという話ですね。それで見ると、確かにちょっと増えているんです。だから、たとえば、減税して、減税するだけだったら、逆にお金を使わなかったら現預金が増えるだけですね。そうではなく、使わせるためには企業が使う気になる、要は、それというのは国内市場が規制改革などで、こういうビジネスのチャンスがあるんだ、ということで、企業がここに投資しよう、という、そういう気持ちにさせるようなことを政府がやっていかないと。私は官民対話というのは本来、これはおかしな話だと思うんですよ。企業の活動に対して、ただ、すごくデフレで、長くこういうのが続いてきた、政府はそういう考え方です。だから、放置すると、縮小均衡になるから、これは必要悪だけれども、やると。たとえば、設備投資を10兆円増やしてくれということで経団連会長が出されました。この時に条件をつけたんです。たとえば、TPPを進めるとか、法人減税するとか、労働市場改革するとか、そういうことをやれば10兆円ぐらい増えるという言い方をされているわけです。だから、私はそういうのを逆に強く要請すればいいのではないかと、お互いに。だから、もっと言うと、企業も確かにいろいろな環境の中で後ろ向きになっている。それを前に押すためには政府がある程度引きずり出してきてやるようなところがある。でも、一方で政府がやれていないこともいっぱいあるわけですよ。規制改革ができてないわけですから。そこに対して企業が我々も投資する、逆に言うと、投資をするにはこの条件で進めてくれということでもっと政府に詰め寄るというのですかね。そういうふうにやるとちょっといい方向に動くのではないか。そういう発想を持てば、官民対話もうまく使えるのではないかなという」

賃上げ実現の方策
秋元キャスター
「持続的な賃上げをするためには経済対策と同時にどういう対策を打つべきだと考えますか?」
野口氏
「経済対策ではなくて、産業の構造を変えるべきだと思います。アメリカの賃金、所得の増加率、この3年間で12%ぐらい上がっている。それで分野によってはもっと高い率で上がっている。こういうことは可能ですね。これが1つのモデルです。だから、日本でこのようなことが実現できるかどうかということが問題だと思います。それは法人税を減税するとか、そういうことではなくて、産業構造として付加価値の高い、生産性の高いものができるようにすることですね。これは雇われている人の賃金の所得ですよ。ただ、たとえば、新しいITの分野で、新しい仕事をやる。そういう場合、必ずしも雇われるわけではないです。自分で仕事を始めちゃう場合もある。その場合にはすごい所得が生じているわけです。それはここには入っていません。そういうこともアメリカでは生じているわけですね。たとえば、最近、タクシーの配車でUberというスマートフォンのアプリができ、この企業はこの間、上場したかな。時価総額が日本円で言うと約6兆円ぐらいだと言われているんです。6兆円というのはとんでもない金額なので、日本で時価総額が6兆円を超える企業というのは確か12社か、13社ぐらいしかないです。もう1つ、たとえば、フィンテックという金融にIT技術を導入する。この分野でもPaypalという企業が今年の7月に上場しました。時価総額が6兆円でした。金融の分野で、日本で6兆円を超える時価総額の企業というのは、みずほがそれぐらいですね。だから、三菱UFJとみずほぐらいのものが突如表れてしまったということです。そういうことも生じているんです。だから、賃金の所得が増えているのではありません。そういうことも生じている。つまり、客観的な技術としては、そういうことも起こっているということです。だから、それが日本で実現できるのかどうか。残念ながら、日本ではそういうことが起きていないです。先ほど、申した上場前に時価総額がすごい金額になっちゃっている企業のことをよくユニコーンと言うのですが、一角獣です。魔法みたいにやられて。アメリカで何社もあって、中国でも出てきています。日本ではゼロですね。だから、日本でなぜそういう企業が出てこないのかということを考えて、それは規制ですよね。単純に言えば、規制です」

野口悠紀雄 早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問の提言:『規制緩和による生産性向上』
野口氏
「いろんな規制がありますが、1番規制が強いのが金融だと思います。そこが1番強い。1番難しい。でも、金融でも非常に大きな技術革新が進んでいるんです」

山田久 日本総研調査部長の提言:『春闘の再建と労働移動』
山田氏
「単純な春闘をそのまま復活するのではなくて、一種の有識者による第三者機関のようなところをつくりながら、賃金の妥当な引き上げの目安を示すということと、衰退産業から成長産業に人が移っていくような仕組みを、北欧を参考にしながら、いろいろなセイフティーネットを整備していく、これが必要ではないかと思います」