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2015年11月18日(水)
国際社会の不安と外交 『無法者』への対応は

ゲスト

岸信夫
元外務副大臣 自由民主党衆議院議員
渡部恒雄
東京財団上席研究員
加茂具樹
慶應義塾大学総合政策学部教授

仏同時多発テロと国際情勢 テロ対策と日本の姿勢
秋元キャスター
「今日、フィリピンのマニラで始まりましたAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議ですけれど、先週金曜日パリで発生した同時多発テロを受けまして、首脳宣言にテロ行為を非難する内容が盛り込まれる見通しです。また、トルコで開催されたG20でもテロを強く非難する特別声明が採択されました。安倍総理も会議や会談の場で発言をしています。まずG20ではテロの根底にある暴力的過激主義への対策や過激主義を生み出さない社会の構築が重要と話をしています。フランスのファビウス外相に対しては、日本はフランスとともにある、できることは何でもすると、このように語っているのですが、岸さん、パリの同時多発テロを受けたこの安倍総理の発言をどう聞きましたか?」
岸議員
「G20が開催中に発生したテロ、大規模なテロということで、現在おっしゃったように特別声明も、強い口調での声明でありまして、そこで3か国がテロに対し、いかに団結をしているところを見せるか、これが大変重要だったと思うんです。そういう意味で、日本もテロとの戦いの一員であるということを表明したものだと思います」
秋元キャスター
「フランスのオランド大統領が過激派組織イスラム国に対し、あらゆる手段をもって行動することを宣言しているわけですけど、日本はフランスに対してできることは何でもすると話していますけれども、具体的には何ができるのでしょうか?」
岸議員
「たとえば、日本が直接的に欧米諸国と一緒になって実力行使ができるのかと言ったら、なかなかそこは難しい部分があるかもしれません。ただ、過激派主義を生み出す貧困。特に、その問題ですね。そうしたことに対しては、日本も様々な手段を持っていると思います。それから、たとえば、警察等の治安意識に対する啓蒙を含め、日本ができることというのはいろいろあると思っています」
反町キャスター
「総理のこの部分、暴力的過激主義への対策と過激主義を生み出さない社会の構築。要するに、殴るだけでは収まらないよと言っているように聞こえるのですが、渡部さん、この言葉をどう感じていますか?」
渡部氏
「テロ対策の基本で結局、何で自爆テロまでやろうとする人達がいるかと言ったら、それは絶望的な社会の状況とか、経済の状況があるからでしょう。それをつくらないというのが大事なので。ただ、すぐにそれは達成できないけれども、まずそこに対して、日本ができることは、経済支援もあれば、あと能力構築支援と言って、たとえば、警察の力とか、能力とかを、政府がちゃんとうまく機能させるものを手伝うのもあるし、あと実は大事な大事なお膝元、つまり、APECとか、あるいはTPP(環太平洋戦略的経済連携)をやっているところ、東南アジアの国々。ここはイスラム人口が多くて、実際にイスラム国に参加しているような人達もいるわけです。ここで経済を安定させ、平和にして、そういう環境をつくらないというのも、実は日本の仕事で相当、日本はやっているんですよ。たとえば、フィリピンのミンダナオでの内戦状況の停戦をやっているわけです。そういうことを、だから、日本は近所というか、足元でやりつつ、かつアラブとか、アフリカには相当の経済援助をしていますから、そういうことをやればいい」

首脳会議での安倍外交 TPPめぐる米中の思惑
秋元キャスター
「今日から、フィリピン、マニラで始まりましたAPEC、アジア太平洋経済協力会議首脳会議では、貿易の枠組みとしてTPPをベースに広域自由貿易圏をつくり上げたいアメリカと中国とのせめぎ合いが大きな焦点となっています。そうした中ですが、APECの首脳会議に合わせて、TPPに参加する12か国が大筋合意後、初めて首脳会合を開きました。現在、APECに加盟する21の国と地域、12か国がTPP交渉で大筋合意をしています。見てわかるようにAPEC加盟国とTPP参加国というのは重なる部分があるんですけれど、このTPP首脳会合では『TPPを通じて新しい貿易モデルをつくることを確認した』という共同声明が発表されました」
反町キャスター
「加茂さん、どうですか?今回の共同声明は、TPPを通じて新しい貿易モデルをつくることを確認したという、この言葉。中国から見たらどう見えるのですか?」
加茂教授
「中国から見ると、第一に自分達はある種、包囲されていると。そういう認識は一部である。ただ、同時に、自国の中の経済改革を進めて、引き続き、安定して成長をするためには国内改革をしなければいけないと。こういう機会を通じて国内における改革を進めていくことができるという議論もできると、国内にはあるわけです。だから、WTO(世界貿易機関)に入った時も、国内で大きな議論があって、入ることによって、自国の改革を実現したという経験があるので、中国自身からすると包囲されつつも、でも、国際社会の経済に関するルールの中に自分達も入って、ルールを一緒につくっていくというか、影響力を行使するという、こういう選択肢も十分、彼らは考えているんだろうと思います」
反町キャスター
「一時の日本みたいな感じで、外圧を使って、国内の改革を進めようとするグループがいるみたいに聞こえるのですが、そういう理解でよろしいですか?」
加茂教授
「そういう理解でよろしいと思います」
反町キャスター
「一方、外圧を使って、この場合、TPPは外圧だという敢えて言い方をすると、その外圧を使って国内の構造改革を進めたいという一派がいる一方で、そうではない人達も当然いるわけですよね。その両者のせめぎあいというのは中国の国内において現在どういう状況なのですか?」
加茂教授
「ここをまさに現在進めているというか、たとえば、最近、開かれた中国共産党の大会でも、5か年計画を出した中にも、自国の経済改革を進めていくという議論が非常にたくさん入っているわけですね。ですから、現在まさに議論をしている最中ということなのだと思いますね」
反町キャスター
「アメリカはそれをじっと見ているのですか?」
渡部氏
「少なくともオバマ政権は巻き込んでルールに入ってくれることを期待して見ているわけです。ただ、もちろん、経済の部分と安全保障の部分は違うからそれはそれぞれに違う理屈で、トータルでバランスをとろうとしているということだと思いますし、もう1つは、中国の人は、そこは絶対に言わないと思うんですけれども、長い目で見てください、中国の経済。ちょっと先が心配だなと思っている人達は中国の中にもいると思うのですが、それだったら、外の世界から孤立するよりもむしろ巻き込んで、外をね。中国の長期的な経済のところに他の国も、これはToo big to fail。銀行でもありましたが、中国のToo big to failだったら皆、協力してくれるでしょう。そういう可能性だってたぶん先を見ている人は考えているのではないですかね」
反町キャスター
「中国にそういう人がいるのですか?中国の内部においても世界第2位のGDP(国内総生産)までいけば、もしも様々な中国国内の経済問題やら何やらも含めて、転びそうになったら潰すわけにはいかないだろうと、皆が助けてくれるぐらいまで、我々は強くなったというこんな認識があるのですか?」
加茂教授
「これまで中国が成長をしてきたというのは、国際秩序の中で、経済ルールに寄り添うようにして発展してきたということは皆、わかっているし、ですから、その中に自分達が入っていって、一緒にゲームをやっていくということは自分達にとってメリットがあるとか、意味があると考えている人は確実にいます」
反町キャスター
「渡部さん、そうした中、アメリカが中国をどう見ているかという話で言うと、現在オバマ政権はTPPを通してと言いましたけれど、ヒラリー・クリントンさん、この間、何か違うようなことを言っていましたよね」
渡部氏
「いや、選挙ですから、あれは」
反町キャスター
「真剣に受け止めなくていい?」
渡部氏
「何でなのかと言うと、実はTPP、安倍首相が言った話というのは、実はズキンときているのはオバマ大統領で、ちゃんと国内手続きをしなければ絵に描いた餅というのはアメリカの話ですよ。つまり、アメリカは選挙のシーズンが始まっていますから、アメリカ、特に民主党支持の大きな組合がAFL-CIO、これは既に今年の最初の段階で、自分達の資金管理団体で、政治家の献金、全部いったん止めているんです。これからTPA(貿易促進権限)という大統領貿易権限を与えるものと、TPPと両方投票した議員には金を一切出さないからと言っているんですよ、現在も」
反町キャスター
「もうそういう状況になっているのですか?」
渡部氏
「そういう状況に既に今年の頭からなっているので、それは選挙をやる時、民主党で選挙をやる人は、間違ってもTPP支持なんて言ったら選挙にならないですよ。自民党だってJAを意識しながら、いろいろやっているのと一緒ですよ」
反町キャスター
「そう考えると、いわゆる民主党政権であるオバマ政権が労働組合から、そういう資金的な、人的な様々なサポートがこないかもしれないという中で、今度、議会の批准というのはどうなっていくのですか?」
渡部氏
「現在の時点では、観測としては、選挙前は無理だろうね。選挙後も新しい政権によっては難しいかもね、その間にやりましょうと。実は11月の頭に選挙が、来年あるのですが、それから、新しい政権と新しい選挙でできる議会で、始まる前に1か月ちょっとぐらいレームダックセッションというのがあるんですけれども、ここでやるのではないかという話がワシントンではあるぐらい、結構すり抜けながらいくのではないかと」
反町キャスター
「選挙前では、とても平場で、民主党所属の国会議員に対して賛成しろとは言えない?オバマ政権にそこまでの力はない?」
渡部氏
「だって、今回TPAは共和党が賛成してやっているのですから。ところが、共和党は何もオバマの手柄になることに投票をする義務はないでしょう。ということを考えると、選挙後の、次の政権前ぐらいのところはギリギリ。本当のところはわからないですが、そのぐらい実はアメリカの国内で、特に組合を中心としてTPPに対する風当たりは強いということです」
反町キャスター
「岸さん、アメリカのTPPに対する姿勢というのをどう見ていますか?」
岸議員
「いずれにしても、オバマ政権としてはTPPの早期成立ということだと思います。政治環境というのは、どこの国でも抱えているわけですから。その中でいつ議会の批准ができるか。これは本当に難しい問題だと思います。これは日本も同じですね。来年、参議院選挙がある。一応TPP対策、自民党もとって、やりましたけれども、選挙前にきちんとそういう対策を出して、そのタイミングとして、まだ、TPPができてもいないのに、現在から出す必要はないのかもしれないけれども、1つは、それぞれの国民が不安に感じる部分というのはあるわけです。そこをまず払拭してあげると。アメリカにおいてもそうだと思うんですけれども、そういうことのために相当汗をかかなければいけないのだと思います」

APECでの南シナ海問題
秋元キャスター
「今回のAPECでは、本来の議題である経済や貿易の問題とは別に、南シナ海の問題がどのような形でとり上げられるのかも大きな焦点となっています。ここで米中のしのぎあいが続いているんですけれども、アメリカは、APECで南シナ海の問題を提起する姿勢をとっているのですが、中国は今回の議長国であるフィリピンに対し、主要議題としないように働きかけを行っていました。アメリカは同盟関係にあって、中国の南シナ海の領有権を巡って争っているフィリピン。議長国としては、南シナ海の問題を積極的にとり上げないという立場をとっています。ただし、他国が議論をすることを止めるということはしないという姿勢を見せているんですけれども、渡部さん、今回のAPECで、アメリカは南シナ海問題を提起することになるのでしょうか?」
渡部氏
「この前にASEAN国防相拡大会議ADMMプラスがあって、同じことをやろうと思ったんですよ。アメリカと日本とオーストラリアで提起しようと思ったなら、中国がブロックをして、かつASEAN(東南アジア諸国連合)の国々は、基本的には、親中の国と、フィリピンみたいに中国を警戒している国に分かれるので、まとまりを重視するからなかなかそういう話は表には出てこないということはわかっているので。でも、いろいろ牽制球としてちくちくとやったりはするでしょうね。だから、フィリピンとは、そういう話をするし、フィリピンもたぶんどちらにしろ出ることはないだろう。つまり、航行の自由、南シナ海というものがここで出ることはないだろうと想定しながら、でも、どこかで話すとか、メッセージを送ろうと思って、そういうせめぎあいをたぶんするのでしょう」
反町キャスター
「出ないですかね?渡部さん、出ないと思っているのですか?」
渡部氏
「出ないということ。邪魔されて出ない。だって実際ASEAN各国の国防相会議でダメだったのですから。あの時は、特に異例の、共同宣言が出なかったんです。だから、共同宣言を出さないというわけにもいかんでしょう、ここでは」
反町キャスター
「そうすると、たとえば、誰かが自由討議か何かの場で、こう言って、何とかしろみたいな。水面下で、ドラフトをまとめる段階で入れるということになると、最終的に共同宣言も出ない形で、流れてしまうリスクをとってまでチャレンジをするか。ここまでアメリカは考える?」
渡部氏
「そう。そこまでをリスクをとるか、とらないかを、たぶんアメリカも考えるし、フィリピンも考えるでしょう。議長国だからASEANとの関係の中で重要だし、その中で、ヒョロッといくのかもしれないし、いかなかったのなら、無理強いというか、無理押しはしないという感じになるのではないですか?」
反町キャスター
「アメリカ、フィリピンの首脳会談後の共同記者会見で、オバマ大統領は『中国は南シナ海での岩礁埋め立てや軍事拠点化を、直ちに中止すべき』と。それに対してアキノ大統領は『南シナ海の航行・飛行の自由は国際法に基づいて維持されなければならない』と。共同記者会見で、2人でこういうふうにAPECの前に言ったというところで、何かこのへんでガス抜きというか、言ったぞ、ここでおしまいみたいな可能性もある?」
渡部氏
「あると思います。それはフィリピンが議長国だから。議長国の顔をつぶせないし、それと、もう1つ、たぶんやることはやっているわけです。実は南シナ海の話は米中首脳会談で何とかしたかったわけです。ところが、まったく南シナ海の話は合意ができずにそれで何にも出なくて。そのあとにアメリカがイージス艦を派遣するわけですよね。南シナ海というところにつながっているので、そういう意味で、やることはやっているわけで、しかも、ASEAN拡大国防相会議でもやっているので、あまりやり過ぎて、別のライン、つなり、先ほど言ったように、TPPとか、経済では中国を取り込もうと思ってやっているのだから。そのへんのバランスをとるのではないですか」
反町キャスター
「中国もそういうアメリカの感覚というのは理解しているのですか?」
渡部氏
「していると思いますね。それは、こういうことを言っていても、とことんこの問題で中国を攻めるつもりはないぞというタカくくり感というのはあるのですか?」
加茂教授
「このレベルであれば、中国はとれるものはとれていますね。だから、これでおしまい。これでいいと」
反町キャスター
「何か釈然としないんですけれども、こういうものですか?国際政治というのはそういうものですか?」
岸議員
「もちろん、相手のあることですから。自分の主張を100%受け入れさせることは、これはなかなか難しいわけです。それぞれの経済だけではなくて安全保障もある。様々な問題が絡んでいて、それぞれの貸し借りと言っては変ですけど、お互いの関係がありますから。立てるところは立てるし、折れるところは折れる、あるいはより相応しい場で提出をしていく。そういうことはあるのだと思います」
反町キャスター
「渡部さん、一方、もしもAPEC、ないしは首脳会談の場において、南シナ海問題が、平場で、誰か首脳が、オバマ大統領なり、安倍総理から、もし出た場合によくこの問題になるような韓国、ないしはロシア、インドネシア。こういった国々がどういう発言をすると想像されますか?そういう各国の首脳の発言を求められた場合は」
渡部氏
「まずロシアに関して言えば、これは現在の、そもそも現状を一方的に変えてはいけないという原則の問題ということになるとロシアも引っかかるわけで、ロシアと中国はそこでは共闘というか、あるんです。たぶん韓国は、そこは気をつけると思うんですよ。韓国はこれまでも中国をあまり刺激しないようにしてきているから」
反町キャスター
「米韓首脳会談であれだけ注文されても、まだ、言わない?」
渡部氏
「オバマ政権はそんなにきつくはないわけですよ。何とか逃げ切れるわけです。それもあるので、そこは、だから、オバマの良いところでもあり、弱いところでもあるということだけれども、実際に次のコーナーにいくわけですけれど、今回は中国の根まわし上手というのがあって、ベトナムのところに既に行って、ベトナムには甘いことを言っているし、フィリピンにも相当なことを王毅さんが行って、やっているわけですよ。そこはアメリカがそうやることも、あるいは日本がそうやることも想定し、中国側も動いているので、そこはこちらだって、こちらというのは日本、日本だって、アメリカだって、たとえば、東南アジアの国に、日米をとるのか、中国とるのか、みたいにはさせられないし、するべきでもないわけですよね。そういう駆け引きというのは、常にあるということだと思います」

中国外交戦略とアジア情勢 『平和外交』の本音とは
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【最近の主な中国のアジア外交】
9月 インドネシアの高速鉄道計画で中国が資金援助を提案
10月31日 中韓首脳会談 → 経済を中心とした強い結びつきを示す
11月1日 日中韓首脳会談〈韓国〉
11月5日 中・ベトナム首脳会談〈ベトナム〉 → 領有権問題の平和的解決 経済、貿易、投資などでの協力強化で一致
11月7日 中・台首脳会談〈シンガポール〉 → 「両岸(中台)の平和と発展」を確認
11月10日 王毅外相・アキノ大統領会談〈フィリピン〉 → APEC首脳会議で、南シナ海問題をテーマにしないことを要請
11月11~12日 タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムと外相会談〈雲南省〉
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秋元キャスター
「中国のアジア外交の狙いというのは?」
加茂教授
「中国の外交をこの部分だけ切りとって考えるというのは適切ではないと思うのですが、習近平政権になってから、胡錦濤さんは、これまで中国にとって良い国際環境になるのを、待ちの姿勢だったのが、既に中国が力を持っているということで、ある種、打って出ると、こういう対外行動の方針に変わったというのが、平たく言うと大きな流れで、その中で中国にとってみれば、この周辺地域の安定外交というのは、習近平政権にとっての重要な政策課題になっていますから、その意味では、中国をとり巻く国際環境を安定化させる。また、大きな会議があるタイミングで地ならしという、そういう想いがあったのだと思いますね」
反町キャスター
「長期的視野に立って、外交していると見た方がいいのですか?」
加茂教授
「現在の中国のこういった外交をどう評価するかというのは、2つ大きな見方があって、1つは内政の観点から見ると、習近平さんが国家主席になってから外交でどれだけ成果をあげたのかと、こういう疑問を上げる分析の仕方もあると思うんですね。たとえば、米中関係もしかり、日中関係もそうであるし、南シナ海もそうだし、国内で言えば、香港であったり、新疆であったり、いろいろな意味で、その対外行動という文脈において必ずしも成果をあげられていなくて、従って、習さんが国内政治においてしっかりと周辺外交をきちんとコントロールしているのだということを見せるために、積極的に行動をしたという見方もできるかもしれない。一方で、中国にとっては自らの国の繁栄と発展のために必要な国際空間を整えていくというのが大きな戦略なわけですから、なおかつ中国自身として引き続き安定的な6.5%程度の経済成長を持続していくという見通しのもとで、時間を自らに有利であるという感覚で一歩一歩自分の勢力圏というか、発言する空間を拡大していくという、その戦略の1つと考えていいかもしれません」
反町キャスター
「偉大な中国の復活というのは、習主席が言っている1つのスローガンみたいになっていますが、これはどう見たらいいのですか?」
加茂教授
「中国の外交を評価するのは難しく、習主席に限らず、中国の指導者の歴史はその前のアヘン戦争以降、外国に侵略されて、主権を奪われ、領土を奪われた。この歴史の過去の経験があるわけですね。その失われた過去、中国の本来ある姿に戻したいという願望がずっと続いているというのが第1ですね」
渡部氏
「主権と主権の戦いになったら、あとは力ですよ。残念ながら、我々はそういう世界にまだ生きているんですよ。ただし、主権と主権をぶつけあって、戦争をしたら損をするということもわかっているわけですよ、ある程度。中国はそこもわかっているから、せめぎあいをしている」

中台首脳会談の意味と今後
反町キャスター
「中台の首脳会談が先日、シンガポールで開かれました。これは初めてですね。この首脳会談というのはどういう意味があって、今後どういう影響を出すと見ていますか?」
加茂教授
「これは国内政治的には習近平政権になってから、両岸関係というのは胡錦濤さんの時代から比べ、うまくいっていませんから、私はキチッと対話問題をコントロールできるんですという国内政治的なメッセージと、間もなく台湾で行われる総統選挙と立法院の選挙に対する影響力を行使するというのが習近平氏の目的ということだと思います」
反町キャスター
「総統戦があって野党が勝つだろうと言われていますよね。次の総統は今回の中台の首脳会談をどう評価するのか?私は関係ないと言うのか、引き継がなければいけないというのか、次の政権にどのような影響を与えるのか?」
加茂教授
「基本的には前者でしょうね。関係ないというスタンス。ただ、会ったことによって台湾の国民党に対する評価は少しあがったという局面があるので、現在のままで苦しい、非常に厳しい選挙結果になるよりも少し好転するかも知れないという国民党の判断が、馬英九さんにはあったと考えられると思います」
渡部氏
「今回の場合、特に習近平氏という人にとっては、国内向けの要素が強いんですよ。だから、彼らにとって、台湾は自分の国の一部だから、統一のための努力をしているという姿を見せなくてはならないわけで、それに関して言うと、現在がチャンスですよ。なぜかと言うと、次にトップになる可能性の高い蔡英文さんという方は、基本的には1つの中国という合意に、1992年の合意と言われているんですけれど、これには乗っからないです。民進党の人は、簡単に首脳会談ができないだろうというのはわかっているわけです。だから、その前に、現在のうちに馬英九さんとやっておこうという、直前で。実はこれは馬英九さんが最初から頼んでいたんだけれども、ずっと返事がこなくて、直前でどうも乗ってきたという思惑ですけれども、これはどちらかというと中国は国内向けでしょう」

ドルVS人民元 通貨めぐる米中の思惑
秋元キャスター
「中国はこれまでもSDR(特別引き出し権)に採用されるよう働きかけを行ってきたということですけれども、どういう狙いがあると見ていますか?」
渡部氏
「基本的に中国というのは特に国内向けには世界の一流国家、GDP世界2位なのだから、そこをアピールしたい部分もあるし、しかも、人民元は、実際は本当に使われているんです。そこにちゃんとした国際通貨というステータスを持つことによって、それで機能的にも、それから、名前的にも、どちらも名実共に元というのは世界通貨だと言えるわけだから、これはもちろん、望んできたし、やっとなったかと。それは働きかけてきたでしょう。それにIMF(国際通貨基金)には中国の専門家が結構いっぱいいるんですよ。どちらかと言うと、アメリカは警戒していませんよ。なぜかと言うと、要するに、これは結局アメリカというか、国際金融のルールに入ってくることであって、別にチャレンジしようとしていないわけだから、ゼロサムゲームではないから、あまり気にしてないし、かえってこの中に中国が入って、先ほど言ったTPPと同じですよ。国際金融のルールの中に入ってくることは悪いことばかりではないですよ」
反町キャスター
「中国はある程度縛られることを覚悟して、メジャー通貨の中に入ってくる?」
渡部氏
「ある程度、覚悟もあるでしょうけれども、あと、なかなか入れなかった理由は何かというと、そこまで経済と金融の仕方がソフィスティケートされていなくて、現在もまだまだ途上です。そこがポイントであって、だから、それでも学んで、より国内の金融市場を整備してというのは、実は世界にとってもそうで、たとえば、中国のマーケットがすごく脆弱で、突然倒れられたら困るのはどこですかと。それは日本もアメリカも世界中、そうですよね」
加茂教授
「中国は自分達の発言権、影響力を高めるために制度の中に入っていく。既存の制度を使いながら、その中で発言力を高めていくのが、中国が現在行っている取り組みだとすると、これも発言力を高める1つの重要な方法だと思います。入ることによって、いろいろな拘束がありますけど、入ることによって自分達がほしい、あるいは実現したいルールのメーカーになれるというのは彼らも考えている。メリット、デメリットを考えたうえで、入らなければいけないと考えているわけです」

加茂具樹 慶應義塾大学総合政策学部教授の提言:『強靭な適応』
加茂教授
「中国の発言力がこれから高まっていく中で、中国が既存の国際秩序に対してチャレンジングな、調和がとれない行動をとり続ける可能性もあるとすれば、うまく中国を我々の中に取り込んでいく、その意味では、極めて時間がかかるし、忍耐力が要ります。という意味で、強靭な中国の台頭への適応をする外交が必要なのではないかと思います」

渡部恒雄 東京財団上席研究員の提言:『長期的視野』
渡部氏
「中国だけではなく、実はイスラム国とかもそうだし、長いところで、視野で、考えていかないと、短期間で一喜一憂していてもしようがないので、自分達でしっかりと先を見据えるように、そういう考え方をしないと、ついていけないのだと思います」

岸信夫 自由民主党衆議院議員の提言:『連帯と包摂』
岸議員
「常に日本の外交力をいかに強くしていくかは党内でも議論しているところですけれども、外交というのは軍事力と、本当の外交があります。これまで日本がずっと外交でもって周辺地域の国々と信頼関係を築き上げてきたわけです。であるからこそ平和安全法制もすんなり受け入れてくれた。信頼している日本だから大丈夫だということがあったのだと思います。その中でASEANの国々、あるいはアフリカもそうですが、連帯関係を強めてきている。まずそれをしっかりしていくことが地域の平和と安定につながっていくと思います。そのうえで、そこになかなか乗ってきてもらえない人がいると。その人達をどうするか。はじくということではなくて、まず連帯感を醸成したうえで、来ませんかということが必要になってくるのではないのかと思っています。その包容力も持ちあわせていかないといけないのかなと思います」