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2015年11月4日(水)
櫻井よしこの着眼点は 日中韓首脳の表とウラ

ゲスト

櫻井よしこ
ジャーナリスト 国家基本問題研究所理事長
天児慧
早稲田大学アジア太平洋研究科教授

3年半ぶり日中韓首脳会談 日中韓それぞれの本音
秋元キャスター
「1日に韓国ソウルで行われた日中韓首脳会談から今後の日中関係を読み解いていきたいと思います。日中韓の共同宣言の主なポイントです。歴史を直視し、未来に向かうとの精神の下、2国間関係を改善して3か国協力を強化することを合意しました。また、日中韓首脳会談の定期的な開催を再確認し、2016年に日本が議長を引き継ぐことを期待することとしました。経済分野では、日中韓自由貿易協定、FTA(自由貿易協定)の実現のための交渉を加速。さらには北朝鮮の非核化に関する認識を共有し、6者協議開催のため共同の取り組みを継続することなどが共同宣言の中に盛り込まれましたけれども、まずは、櫻井さん、今回の会談、およそ3年半ぶりに開かれましたけれども、どう評価されますか?」
櫻井氏
「日中韓の分け方というものが、おそらくこれからもっと激しくなっていくのであろう。世界の2つの陣営と言いますか、冷戦ではないですけれども、日米を中心とした陣営、中国、もしくは日米VS中国、ロシアというような、すごく大雑把に言って、2つの世界に分かれていくような傾向をちょっと象徴的にその第一歩として見せたような、そのような感じを私は受けました」
反町キャスター
「いかがですか?天児さん、中国側から見たら今回の日中韓の共同宣言というものは、得たものを得たという感じなのですか?」
天児教授
「中国としては、かなりダイナミックな戦略展開をしようとしていると思うんですね。その中で、一方的に中国は強硬外交だというイメージがこれまで少しついてきていると思うんですよね。その方針を転換している段階ですから、そういう意味では、今回、日中韓においても、前向きに国際協調的な、そういう方向で合意をしたというイメージをつくるということは、中国にとっては非常に重要な利点だと思いますね」
櫻井氏
「現在の天児さんの見方はその通りだと思うんですけれども、もう1つ捻って、裏から見ていくと面白いと思うんです。中国がなぜイメージを変えなければいけなかったか。中国はそこまで悪いイメージをつくってしまって、追い込まれてしまって、これまで、中国は自分に対する批判があっても平気で、バリバリ進むところがあったんですけれども、現在は、ここはちょっと孫子の兵法で、あまりにも状況が厳しくなると、ちょっと引くという、引かせてしまったというところにおいて、今回の日中韓の首脳会談、私はなかなかうまくやったと思っているんですね」
反町キャスター
「日中韓の中身を明かさない首脳会談。中国側から見た時のメリット。それをどう見ていますか?」
天児教授
「ちょっと言いましたけれども、非常に微妙な問題が、歴史の問題にしても、それから、領土の問題にしても、これは具体的な話をして、討論して、それが明かされていくと、またそれはお互いに平行線であったとなっちゃうでしょう」
反町キャスター
「朴大統領よりもはるかに、いわゆる習近平、李克強体制の方が強いのでないかと僕は思っちゃっているんですけれども」
天児教授
「現在あまり強い中国をアピールすることが…、先ほども言いましたけれども、中国脅威論がこれだけ広がってきて、昨年のASEAN(東南アジア諸国連合)の拡大会議では、中国がある意味で孤立するような事態さえあったわけでしょう。それじゃ、非常に、習近平氏の将来的な、大きな戦略というのか、構想というものがうまくいかないわけで。そこで先ほど、孫子の兵法の話がありましたけれど、そこで1回引いていくという、平和外交、あるいは国際協調外交というものを展開する段階に来ているわけですよ、彼らは。そういう中でこの会議があまり対立点ばかり表に出てくるというのはまずいと。しかし、表に出せば、対立点は出るしかないわけですから、そこのところでは抑え込もうという話だったのだろうと思うんですね。だから、中国が日中韓の3か国の中で韓国との関係を非常に重視してきたということは、1つの大きなポイントだろうと思うんですよ。韓国にしてみれば、朴さんは非常に孤立した状況なのですが、1番大事なのは、1つは経済ですよね。経済の立て直しというのは今や中国との経済関係を強化するしか、当面、展望が出てこないという現実がありますね。それから、朝鮮半島の問題。これも中国を取り込んでいくというか、中国との関係をうまくしていかないと、北朝鮮との話は前に進まないということがあるわけですから。そういう意味では、朴さんは、中国に対して非常に配慮をしていくと。ですから、南シナ海の問題でも、韓国だって、あそこを随分通行しているわけですから。貿易量が非常に大きいわけですから。だから、そういう意味では、航行の自由ということは、韓国だって本当は言いたいわけですよね。言いたいけれども、中国に配慮をするという。そういう面で1つ見えない部分がかなりあったのではないかなという気はします」
反町キャスター
「中国から見た時、韓国、日本と2つの国を見た時に、マークするのは日本だけだ。もう1つの国は事実上、言うことをきいている国だから、握れるから、問題ないと。そんな意識で現在、中国は韓国を見ているのですか?」
天児教授
「そこまではいっていないと思いますよ。韓国の中にも中国脅威論が広がっているということは、これはいろんな韓国の、朝鮮日報だとか、東亜日報のデータを見れば、あるわけですよね。それで、韓国の、まさに、朴槿恵のブレーンの人達だって結局、中国に対する警戒感というのは、これは私的にはいろいろな形で出しているわけです」
反町キャスター
「体が言うことをきいていない感じですね」
天児教授
「ですから、それは現在、韓国にとって中国が必要だという、絶対的に必要だという意味で、韓国は、中国を取り込めると思っていると思うのですがちょっと状況が変わってきた時に。しかも、安全保障の面で言えば、アメリカの存在というのを韓国だって無視するわけにはいかないわけですから。そうすると、そこで韓国のスタンスが揺れるということは、それは計算の中に入っていると思います」

『昼食会なし』の舞台裏
秋元キャスター
「今回の日中韓首脳会談の議長国である韓国は、日本と中国に違う対応をしているんですね。中国の李克強首相は今回、公式訪問ということで、韓国は歓迎式典や晩餐会を開催しました。一方、安倍総理は実務訪問のため、歓迎式典はなく、日韓首脳会談後は昼食会もなく、総理含め、日本側はソウル市内の焼肉店で食事をすることになりました。櫻井さん、この韓国側の対応をどう見ますか?」
櫻井氏
「韓国の友人に、何人も電話をして、韓国の人はどうなのですか、こういう場合は。会議が終わったのは…」
反町キャスター
「11時50分」
櫻井氏
「ちょうどお昼時ですよね。お友達でも、こういった時にお食事を出すのはどうなのと言ったら、いや、自分達にも理解できない。だから、韓国人のスタンダードとしては、こういったことは本当に友人に対してすべきことではないというような、一般の韓国の方、少なくとも、私の友人は皆、そう言うんですね。でも、しかし、そのようなことが起きてしまった。私は本当に笑っちゃったんですけれども、朴大統領は、ご自分がお昼も差し上げないことを知っていながら、これからどうなさるのと聞くこと自体、少し配慮が足りないというか、絶対、気が利かない。安倍首相が、焼肉を食べに行くと言った。これはクリーンヒットだと思いましたね。そこで、ロッテホテルの、日本の懐石料理なんて言ったら、ちょっと、あれだけれども。焼肉を食べに行くというのは、これはスカーッとして。これは、安倍さんに高々と軍配を上げたいと思って。韓国がもてなしてくれないことに、僕は気にかけていませんと。もっと大事なことを気にかけているんであって、お昼ご飯がどうこうなんて気にかけていませんと。いろいろと調べてみたら、事前に官僚のレベルで、大統領主催の昼食会をするから、だから、今年いっぱいで慰安婦問題を片づけるということに合意をしてくれとか、という要請があったらしいんですね。産経新聞でしたか、書いていましたけれども、昼飯ぐらいで国益を損ずることはできないよねと、安倍総理が笑って、一笑に付して突き放したんですって。私は、それは本当に正しいことで、もう堂々と焼肉ぺろぺろ食べたらいいなと思いましたよ」
天児教授
「外交関係に関して言えば、公式訪問でしょう。この上に国事訪問があるわけですよ。国事訪問、公式訪問、実務訪問、私事訪問と。中国がおそらく日本との扱いに差をつけろと。俺の方を上に置けということを、韓国に強く要求したのではないかなという気がするんですよ」
反町キャスター
「そうすると、今回の訪問の扱いは中国にとってはよくやってくれた感があると?」
天児教授
「そうそう。そういうふうに、たとえば、オバマさんに、習近平氏が会いに行った時に、いろいろ要求をしているわけですよね。だけど、それをオバマが蹴っちゃったというのがありますよね。事前に、そういう首脳会談を行う時に自分の立ち位置をできるだけ高めさせるというアクションを中国の場合はよくとると思うんです。そういう意味で、今回3か国首脳会談を開くと。しかし、今や我々が1番上だということを形に表れるように見せろという要求をした可能性は…。これは推測ですけれども」
反町キャスター
「いろいろな国から嫌われたくないと思っていながらも、その部分は抑えきれない?」
天児教授
「ええ」
反町キャスター
「自分の、自己顕示みたいな部分というのは抑えきれないものなのですか?」
天児教授
「ええ。それで朴さんとして見れば、中国の要求に関しては非常に現在、弱い立場にありますから。いろんな形で受けざるを得ないということで、日本の場合には、実務訪問に格下げしていると。それから、実質的な話に関して、安倍さんとの話に関しては結構、安倍さんも中身があったよというお話ですよね。ですから、あの中で、見えない部分では結構、日韓の中である程度、ポジティブな成果が得られたかもしれない。しかし、それを外にあまり見せちゃうと、中国に何か言われるかもしれないとかね、そういうことも懸念しているのかもしれない。つまり、非常に北京を意識した形で朴槿恵さんの対応というのが読み取れるのかなと」
反町キャスター
「習主席にしても、李首相にしても、朴大統領に対しては、この人とは仕事ができる。話し合えると思っているのですか?それとも、イコールパートナーとして見ていなくて、いわば言葉として悪いですけれど、彼女をアンダーコントロールに置いているという、そんな意識で見ているのですか?」
天児教授
「下に見るという感じはありますよね」
櫻井氏
「中国の人達と話をしている時に、朝鮮半島のことを話す時は、完全に下に見ていますね。これは驚くぐらいの下の見方ですよ。私達日本人の方がいろいろと文句を言いながらも、韓国人が好きですし、いろんなことを言われ、時々私達もカーッとなりながらも、それでも仲良くしていかなければという思いがあって、日本人の方がよほど朝鮮半島の人々に対してはあたたかい気持ちを持っていると思いますね」
天児教授
「中国は日本に対して対抗意識があるんですよ、すごく。自分の方をとにかく上に位置づけさせようという意識があるけれども、なかなかそういうわけには日本はいかないというところでの、非常にライバル意識みたいなものが中国にはありますよね、日本に対して。だから、その関係というのはちょっと複雑というか、微妙ですよね」

『歴史を直視』が示す意味
秋元キャスター
「歴史を直視し、未来に向かうとの精神の下、2国間関係を改善して3か国協力を強化するというものの中で、中国と韓国が明記するように主張していた、歴史を直視し、という文言と共に、日本が主張していた未来に向かうという文言が入っています。会談の中でも、中国と韓国が歴史認識にこだわる中、安倍総理は特定の過去にばかり焦点を当てる姿勢は生産的でない。日中韓協力の前向きな歴史をさらに紡いでいきたいというふうに、2人に未来志向の姿勢を促したわけですけれど、櫻井さん、この歴史認識に対する安倍総理の姿勢。どう見ていますか?」
櫻井氏
「確かに、日本人は歴史を直視し、とか言われると、また、特定の、それこそ彼らの言うかぎかっこつきの南京大虐殺とか、慰安婦問題とか、そういったものを未来永劫忘れずに反省しろという意味に取りがちですけれど、この歴史を直視するというキーワードはこちらから相手にも、あなたも直視してねと言えるんですね。だって、歴史を直視すると、デタラメで、本当に憎むべき国というのは中国だというのは明らかになりますよね。だって、ありとあらゆる面で歴史を捏造しているのが現在の中国ですよ。だって、中国が歴史を捏造しているというのは、日本との歴史だけではなく、チベットとの歴史もそうだし、ウイグルとの歴史もそうだし、インドとの歴史もそうだし、アメリカとの歴史もそうですよ。これは皆、それぞれの国が個別に考えているものですから、なかなか連携は現在はできていないんですけれども、日本は本当に歴史を直視しましょうと、世界で何が起きたのでしょうかということを、それこそ問題提起して、それぞれの国との関係を、中国との関係を洗い出すというのも1つの手だと私は思います」
天児教授
「現在、櫻井さんがいろんな歴史を中国が改竄をしているというお話をされたけれども、1番大きな問題は、中国が自らの歴史を変えているということですよね。非常に深刻な問題。だから、私は現在でも、留学生が非常に多いですけれども、留学生達と話をする時に、たとえば、文化大革命の話、大革新の話をするんですね。興味津々で聞きますけれども…」
反町キャスター
「(学生達は)知らない?」
天児教授
「知らないです。事実を知らない」
反町キャスター
「天安門事件は?」
天児教授
「天安門事件も詳しくは知らないですね。現在の学生はね」
反町キャスター
「あれは1992年でしたっけ?」
天児教授
「1989年。現在の学生は89年以降に生まれた学生がほとんどですから、それもかなり過去になってきましたね」
櫻井氏
「文化大革命のことだって知らないですよ。文化大革命でそれこそ1000万人とか、2000万人の人が殺されたわけでしょう。そういったことも知らないと。ですから、歴史を直視しましょうね。中国の皆さんも、習近平さんも、李克強さんも、皆直視してくださいと、私は、これは日本が逆のカードとして使えると思いますし、現在、世界が怒っているのは、たとえば、南シナ海のことでも、歴史を中国は曲げているわけですよ。だって、南シナ海は2000年前から中国の領海だったというんでしょう。2000年前とはどういう時代ですか。我が国は縄文時代が終わって弥生時代ですよね。中国では前漢と後漢の間の時代で、その頃から、あそこには、いろんな三国時代とか、いろんな勢力が入ってきて、1つのまとまった系統立った政府がないわけで、2000年も昔に南シナ海の領有権が定まっていたはずがない。そのことをどういうふうにか、自分達を正当化しようとするので、捏造した歴史を南シナ海を舞台につくっているわけですね。だから、皆が中国は歴史を捏造するということを、具体的事例をもって知っているわけですから、この歴史を直視というのは、日本人は後向きに考えないで本当に直視をしましょうと、すごく良いことだと思いますよ」
反町キャスター
「中国は歴史を直視しろと言われて、自分の歴史を直視するのですか?」
天児教授
「中国について私が現在、言いたいことは2つあるんですね。1つは歴史の考え方が違うということです。要するに、我々は、歴史というのは事実に基づいて何があったか。なぜそういうことが起ったのか。どういう意味があったのか。こういうことを、歴史を掘り起こすことで、事件というものを認識し、こういうことを起こしてはいけないとか、今後、教訓としなければいけないとか、そういう議論をするわけですよね。ただ、中国の場合は正史というものがありまして、王朝史です。長い明朝の時代だとか、何とかという。その王朝史というのは、これはその王朝に勤めているそういう歴史家がつくっていくわけです。つくっていくんです」
反町キャスター
「事実とは限らない?」
天児教授
「そう。ストーリーをつくっているんですね。ですから、それは権力を正当化するための道具として、ずっと中国の中ではそれが生きてきたということです。それは、現在の中国共産党の中でもそういう王朝史のそういう正当性の議論というのはあるんですね。ですから、歴史という認識が、我々が言う歴史の認識とまったく違うということを、まず、我々は考えておかなければいけないということ。それから、もう1つは、それでも、現在、櫻井さんがおっしゃられたような、歴史を直視する人々が現在の中国若手研究者の中にすごい勢いで増えているんです」
反町キャスター
「弾圧されていないのですか?」
天児教授
「弾圧されている人もいます。もちろん、いますけれども、中国の現在の権力者自身も事実をきちんと学習し、研究して、歴史をもう1回つくり直さなければいけないという認識は持ってきているわけですね。だから、たとえば、現在、非常に政治的な意味ですけれど、台湾との統一の問題がある。台湾との統一の問題を議論する限り、これまで中国共産党が教えたのは、国民党は賊だったわけですよね。敵だったわけですよ。だから、国民党の評価というのは一切してはいけなかった。ところが、最近の研究の中では国民党の党首というものをもう1度、きちんと見直すということがかなり一般化しているんです。それ以外の部分でも、いろんな形で歴史を、事実、資料に基づいて、歴史をきちんと勉強しようという研究者も、それは驚くほど増えてきています。我々はそういう連中とここ何年間は議論しているんですけれども、これはひょっとしたら、日本が少なくとも、中国の研究に関してこちらも本気でやらないと、あちらには資料がたくさんあるわけですから、やられちゃうかもしれないぐらい、現在、若い世代は、それをやっているんです。それが面白いのは、これは数年前になりますけれども、上海で、ニューヨークタイムズが記事にした、毛沢東が忘れた中国とか何とか、というタイトルで、それで中国の歴史教科書の中に、毛沢東の言葉が本当に少なくなっちゃって、むしろビル・ゲイツの話とか、こういうのが出てくる教科書が実は上海でつくられていたんですよ。これは最後に、出版直前で、党中央の宣伝部が入り込んで抑え込まれたんだけれども、その人達はまだ健在ですよね。そういう人達が上海の中の歴史をつくっているのですが、それは革命史観ではないです。近代史観です。本当の歴史です」
反町キャスター
「その人達が、表だった、主流になるような時代がくるか、こないかによって、中国が歴史を直視できるかどうかは変わってきますよね?」
天児教授
「私はそう思います」
反町キャスター
「でも、現在まだその時代ではない、もちろん、ないですよね?」
天児教授
「ないです」

日中首脳会談から読み解く 中国の海洋戦略…東シナ海
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【『日中首脳会談』主なポイント】
・戦略的互恵関係に基づく関係改善の勢いをさらに強める
・来年の早い時期に日中ハイレベル経済対話を開催
・海空連絡メカニズムの早期適用に向け積極的に努力
・東シナ海ガス田の共同開発をめぐる協議の再開を目指す
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秋元キャスター
「東シナ海ガス田の共同開発協議の再開を目指すことに合意した、その真意は?」
櫻井氏
「日本と中国の間にそれぞれ思惑があると思います。中国の方から見ると、これまで南シナ海の例を見ると、南シナ海で起きることは必ず東シナ海でも起きると考えた方がいいと思うんですね。南シナ海では協議をしましょう、やりましょうと言って、実際に協議をしたり、しなかったりしながら、その間にどんどん実績をつくって、現在は7つの島を埋め立てて東京ドーム174個分ですか。甲子園だと260個分くらいの土地をつくっているわけです。滑走路を3本つくって、(南シナ海に)アメリカのイージス艦が入りましたけれども、本当にどうやって原状回復するのかということになると非常に難しい。つまり、つくった方が勝ちという状況の中で中国はどんどん進んでいくわけですね。東シナ海でもいつの間にか、12個も新しいものをつくっていて、現在も工事が進んでいますね。では、東シナ海は本当にそれだけ多くのガス田を建て、ガスが採れるのかというと、そこまでではないと見られているんです。おそらくこれは、いくつかは紛れもなく軍事転用のためだろうと言われているんです。その工事を続けながら、2008年の合意に戻りましょうと言うのは、中国の側からすれば、これは1つの口実になったという見方があるだろうと思う。日本の側から言うと、2008年の合意というのは、意外に日本にとっては有利な条件だったと言われているんです。ですから、日本はもしこれが本当に実現したらいいのではないかという想いがあるでしょうし、中国は現在申し上げたように反対の想いがあるのではないか。その中で現状が続けば、これ東シナ海は南シナ海と同じことになりかねませんから、私は実はこのことに脅威を感じています」
天児教授
「ちょっとこれは分析が難しいのだけども、1つ言っておかないといけないのは、共産党の党内抗争の問題が絡んでいる。かつて2010年の漁船、2012年の島をめぐる戦い、これは石油派という周永康を中心とした江沢民系のグループ、これが軍も江沢民系の人が握って、エネルギー部門でも江沢民系が握っている状態で、胡錦濤氏、温家宝氏がいくら日本といい関係にしようとしても、その1つのシンボルとして、共同開発をやろうというところで合意したんだけれども、動かなかったわけですね。それを何とか動かそうとして踏み込んだのが2010年だったわけですが、これが逆に中国側の反発を受けるようになって、こじれてしまった。現在は、外から見るとですよ。この石油派と、それから、江沢民系のグループが潰されたように見えますよ。そこでこの話が出てきているということが1つね。それから、もう1つは日本と中国との経済協力を中国側としても進めたいと。これはよく言われる新状態、ニューノーマル。経済が減速してしまう、減速している中で中国はもちろん、EU(欧州連合)だとか、イギリスだとか、あるいは一帯一路という形でかなり壮大な計画を展開しているわけですね。たくさん外資を持っているわけですから。ところが、本当に中国の経済を立て直す力に彼らはならないわけです。そこで日本の役割、特に経済の問題、それから、環境とか、あるいは少子高齢化になっていく中国の中でのそういった社会福祉のシステムとか、こういったものが必要になってくる時に日本の援助というか、支援、協力というものを必要とするというのがあるんです。そういう中で日本がこれまで共同開発とずっと言い続けて、それに対して見向きもしなかったんだけれども、共同開発も1つのカードとして、日本に対する…」
櫻井氏
「1992年の領海法というのがありますね。これはもう中間線も認めないで、沖縄海溝のところまで全部中国のものという。これは絶対に譲っていないわけです。だから、その延長線上で台湾も南シナ海も全部中国のものだという主張を展開しているわけですね。だから、この東シナ海はほとんど全部中国のものという前提で、現在まだ中国は中間線の日本側に出てくることはしていない。なぜならば、日本に力があるし、日米同盟があるということですね。力関係から言って現在は無理だと。もうちょっと待てばどうにかなると思っているのだろうと思いますね。私は、この中間線を彼らが守るとは思っていません。それから、このガス田を、ガスのためだけではなく軍事転用する可能性というのは本当にあると思うんです。軍事転用する時に、日本にどういうインパクトがあるかということをよくよく見たら恐ろしいくらいですね。中国大陸からは、沖縄から南西諸島までの情報はとることはできないわけですね。あまりにも遠すぎて、地球が丸いですから、届かない。ところが、中間線のあたりまで出てきてしまいますと全部、沖縄南西諸島の自衛隊、それから、アメリカ軍の情報を偵察することができるんです。そうなると、中国の攻撃の射程内に、それから、情報収集の射程内に全部入ってしまうということで軍事的に非常に日本が不利なところに立たされる。日本だけではなく、アメリカも立たされる。軍事というのはすごく大きな要素ですよ。中国は経済と軍事の両方でやっていきますけれども、軍事力を確立した時には中国はすごく大きな態度をとるということが、南シナ海のことでよく見えてきますよね」

中国海洋戦略…南シナ海
秋元キャスター
「南沙諸島にアメリカがイージス艦ラッセンを派遣したことについてはどう思いますか?」
櫻井氏
「一言で言えば遅すぎる。でも、もちろん、送り込まなければ、送り込んだ方がいいわけですから、いいんですけれども、このラッセンを送り込んだのが10月27日ですよね。その前に10月15日に、オバマさんはアフガニスタンから2016年までに兵を引くと言ったのを、来年2017年まで5800人ぐらいですか、置きますよと言いました。そのあとにラッセンを入れました。ラッセンを入れたあとの3日後に、今度はシリアに特殊部隊を入れると言うんですね。どのくらい入れるかと思って見たら50人か、それ以下だと言うんですよ。いずれにしてもアメリカが少し前に出てきたという印象を与えるんですね。いずれも送り込み方がすごく変ですね。これまでのアメリカの戦略上からは考えられないような逡巡と、それから、恐々と送り込むというね。しかも、情報発信をほとんどしていない。ラッセンを入れた時も映像をほとんど出さなかったし、どういう活動をしているのかも出さなかった。ホワイトハウスが国防総省に絶対に出すなと、オフレコをかけたわけですね。聞かれた場合は答えなくていい、否定しなくてもいいから、普通に答えなさいと。だから、情報は出さない。アメリカ軍が何をしているのかというのをなるべく知らせない。中国を刺激しない。そこのところをすごく気にしているわけです。だから、中国に対して出すぞ、出すぞと何回もメッセージを送って、中国が十分に悪口を言ったり、ある種怒りを収めたり、アメリカがやってくるぞという予定調和の中で入れてしまったということの意味を考えると、南シナ海問題はアメリカがきちんとした行動をとらない限り容易ならざる事態になりかねないと思います。現在、ハリー・ハリス太平洋軍司令官が北京に行ったり、アメリカの国防長官が中国の国防長官と話をしたり、いろんな場面で話し合いがありますね。お互いにすごく衝突を避けたいという気持ちを確認しあっていますけれど、そうかと言ってどっちも一歩も引かない。アメリカが引いてしまったら南シナ海は完全に中国の海になります。南シナ海沿岸のベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピン、こういった国々は中国が怖いものですから、ここはゲームチェンジになると思いますよ。完全に局面が変わってくる。だから、アメリカも引くに引けない。けれど、これ以上強行には出られない。中国は絶対に引かない。この南シナ海の問題は日米VS中国か、日米VS中露の大きなある意味での対立構造の1つの始まりの事例になるやもしれないと。ここをうまく皆が危機管理をして、ここでぶつからないように危機管理をして、何とか国際社会の秩序というものを私達が馴染んでいる国際法とか、話し合いとか、平和的手段によって守ってくということをやらなければいけない。とても大事な局面で、そこで日本の果たす役割はすごく大きいと思っているんです」

ASEAN『共同宣言』見送り
秋元キャスター
「米中の緊張がASEANで異例の事態を引き起こしたわけですけれども」
櫻井氏
「これは、マレーシアとか、ASEAN諸国、小さい国々は仕方がないですよ。力がないですから。今年でしたか、シンガポールのシャングリラホテルで例年のようにアジア安全保障会議がありましたね。昨年と今年はガラッと変わったんです。昨年は人民解放軍のNo.2の方が来て、副総参謀長が来て、激しく日本を非難し、アメリカを非難したんですね。今年は孫建国さんという人民解放軍のNo.2の方が来て、中国は平和的な話し合いで、皆のために良いことをしています、我々は覇権を求めることはしませんと嘘八百を言ったんです。アメリカのアシュトン・カーター国防長官が航行の自由といつも言っているようなことをおっしゃって、中国を本当に非難したんですけれど、今年の中国代表も馬耳東風で、いけしゃあしゃあとして、知らん顔をして、記者団が、あなたが言う皆がwin‐winで、中国が皆に幸せをもたらすとはどういうことだって言ったら、全て答えは私のスピーチの中にありますと言って、返事もしないで帰っちゃった。完全な開き直りです。このような中国を迎えて、シンガポールのリー・シェンロン首相が何を言ったか。これがすごく大事です。ホスト国の首相として彼が今年は基調演説をしたんです。あまりにも面白かったので書いたんですけれど。太平洋が2つの大国を受け入れるのに十分な広さがあると、中国が言うのは極めて適切であると言うんです。ベトナムやフィリピンが南シナ海でガス田を開発してちょっと掘ったではないですか。掘っているのは中国だけではないんだと。自分の同僚のベトナムとか、フィリピンを非難したんです。日本に対しては、日本は過去の過ちを認め、日本国民は右翼の学者と右翼政治家による非常識な歴史の歪曲をはっきり拒否すべきだと、村山首相は一般的な意味で謝罪したが、慰安婦や南京大虐殺については曖昧にしようとする意図が見えると言って日本をすごく非難したんですよ。シンガポールのリー・シェンロン首相がですよ。これは中国に対してすごく気を使わなければいけない状況が生まれているということですね。マレーシアもそうですよね。東南アジアの小さい国々が私達のように、日本のように、日本は大国ですよ、何と言っても大国ですからね、我が国のように、力がある国のように、きちんと原理原則を言い続けるのを期待するのが無理。だから、彼らがちゃんとそのようなことを言える状況をつくってあげなければいけない」

天児慧 早稲田大学アジア太平洋研究科教授の提言:『中国の強まる平和協調外交にも対処せよ』
天児教授
「中国はこの間、強硬路線ということばかり言われてきていますが、これから主流は、平和協調外交を展開する。これは非常に戦略的に展開するわけですから、我々も中国を強硬路線一辺倒の中国という目だけで見てはダメだと思います」

ジャーナリスト 櫻井よしこ氏の提言:『自らを信じて堂々と進む』
 櫻井氏
「安倍政権がしていることは、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)をつくって、経済だけではなく価値観の連携をつくるということと、それから、安保法制をやり遂げて日本が自力で自分の国を守る第一歩を踏み出した。この姿は正しい方向で、これは世界に責任ある国としてのメッセージを送れますし、中国に対してもきちんとした日本を侮ってはいけないというメッセージになると思いますから、この道でいけばいいかと思います」