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2015年10月28日(水)
ユネスコ前トップ語る 記憶遺産『南京事件』

ゲスト

山本一太
自由民主党参議院議員
松浦晃一郎
前ユネスコ事務局長

『南京事件』世界記憶遺産に 申請・登録までの問題点
秋元キャスター
「まず今回、南京事件の資料として、どういったものが世界記憶遺産として登録されたのかということですけれども、中国の報道によりますと11の資料が登録をされています。日記ですとか、アメリカ人や旧日本軍などが撮影をしたとされるフィルム、写真、南京軍事法廷での判決文。それから、証言、市民の上申書などです。資料は、まだ公開されていないので、具体的にどういうものなのかということは紹介できないのですが、こちらの申請書は公開されているんですね。この中で犠牲者の数について、東京裁判で20万人以上の中国人が殺されたという判決が出されていると。南京軍事法廷は少なくとも30万人の中国人が殺されたと結論づけたとしています。しかし、この犠牲者の数に関して、日本の外務省は被害者の具体的な人数は諸説あり、正しい数を認定することは困難という考えを示しています。松浦さん、このように日中の間で未だに議論の対立をしているこの南京事件を世界記憶遺産として登録をした、ユネスコの判断。これは正しい判断だったのでしょうか?」
松浦氏
「今回の登録は一方の当事者が出した文献について、その当時者の言い分だけを聞いて登録をしたもので、残念に思っています。もう一方の当事者である日本が、中国が出した文献について、もちろん、内容も知らされない、のみならずコメントもできない形で登録をされた。ですから、本来であれば、中国が出した文献に対して日本側がコメントする機会を与えられて、文書でできればコメントを出し、そういう両方の意見を踏まえて、ユネスコの関係委員会。登録小委員会というのがあります。9人の専門家からなっています。国際諮問委員会というのがその上にあって14人の専門家からなっています。そこで両方の意見を見たうえで結論を出してほしかったなと思います。残念ながら、現在の制度はそうなっていないところが問題の1つだと思います」
反町キャスター
「決め方自体には瑕疵はなかったのですか?」
松浦氏
「決め方自体というのは?」
反町キャスター
「いわゆるルール上は」
松浦氏
「それは現在のルールに沿っていたと。裏返しで言えば、ルールに反していたという議論はしにくいですが、ただ、私も透明性がないものですから、たとえば、国際諮問委員会でどういう議論が行われたかというのはよく存じませんけれども、日本側も最後になって日本側の考えを国際諮問委員会の委員に伝えて、なるほど、日本の言う通りだと考えてくれたメンバーもかなりあったようです。ですから、国際諮問委員会では通常は簡単にコンセンサスができるわけですが、今回意見が割れて大議論があったようです。しかし、最後は投票で、残念ながら、賛成が…」
反町キャスター
「それは多数決で決まってしまうものなのですか?」
松浦氏
「そうです」
反町キャスター
「そうなると、ルール通りにはなっているけれど、透明性が担保されていない、確保されていないルールがそこにあったという、こういう理解でよろしいですか?」
松浦氏
「そういうことです」
秋元キャスター
「山本さん、今回のこのユネスコの決定をどう見ていますか?」
山本議員
「今回のユネスコ側の対応、ボコバ事務局長に個人的に何の恨みもありませんが、極めて不愉快だし、ユネスコの活動としては不適切だと思います。それはこのあと、いろいろと話題になると思うのですが、世界記憶遺産の制度的な欠陥。複数の国が、重大な利害関係者になり得る申請が、つまり、一個人とか、あるいは1か国とか、ある団体の一方的な意思で、申請がされてしまう仕組みになっていて、なおかつ申請をした人にしか、先ほどおっしゃった諮問委員会の議論にも加われないと。これはある意味で言うと、致命的な欠陥であって、逆に言うと、これはおそらく日本政府にとっても想定外だったのは、この仕組みを中国がこういう形で政治利用するところまではなかなか考えが及ばなかったなと」

審査過程の透明性は?
秋元キャスター
「既に2009年に中国国内で世界記憶遺産への登録に申請をしようという提案がされていたんです。5年後の2014年の6月。中国外務省が南京事件に関する資料の登録申請を行ったと発表しました。登録に向けた審査ですけど、専門家14人で構成されるユネスコ国際諮問委員会で、非公開で審議をされて、勧告が行われます。勧告も、内容も非公開ということです。最終的にユネスコ事務局長のボコバ氏が承認して、今月の9日に登録が発表されたということですけれども、松浦さん、この審査の過程でユネスコ側から日本に対してこういう登録がきていますけれど、事実の確認、大丈夫ですかというような問い合わせはないのですか?」
松浦氏
「もちろん、なかったし、逆に中国に対しても、ここで私がユネスコにいた時に、ユネスコのどこを指すか明確にするのに事務局という言葉を使い、ユネスコ事務局に対し、要求しても、中国の了承なしに日本側に渡せませんということで、渡してもらえなかった。さらに言えば、ですから、それを貰ってコメントを出したいと言っても、そういうことはできなかったと。世界記憶遺産についてのゼネラルガイドラインというのをユネスコが決めています。これは事務局だけではなく、メンバー国と一緒に決めているわけですけれど、これを見ますと、国際諮問委員会が勧告するのではなく、そこで承認か、承認しないかを決めるという」
反町キャスター
「勧告というか、決定ですね、事実上」
松浦氏
「決定です。ただ、ユネスコの事務局長が、それを英語で言えば、endorseですが、そのendorseをどう訳すかはありますけれども、私は追認という言葉を使っていますが、その追認がなければもちろん、成立しないですけれども、よほどプロセスにおいて大きな欠陥がない限り、追認は拒否できないということです。私が10年間、事務局長をした時に5回上がってきました。私も1件1件、丁寧に見ました。ただ、当時は先ほど来申し上げているように一切そういう政治的なことは出てきませんでしたから私は喜んで追認しました。そこで注意しなければいけないのは、このガイドラインはネットでもちゃんと公開されています。そこで書いてあることは現在申し上げたようなことで、勧告ではなくて、そこで登録の可否を決めると書いてあったんです。しかし、事務局長がendorse、追認しないと、最終的な決定は成立しない」
秋元キャスター
「そうすると事実上、ここまでの段階で抗議するなり、何なりというのを終えておかないと、下に行ってしまったら、もう遅いということになりますか?」
松浦氏
「そういうことですね。ですから、ユネスコの国際諮問委員会というタイトルが誤解を与えると私は思います。ですから、重要なことは、そこの国際諮問委員会で、今回、慰安婦がまさに却下されたんですけれども、南京は認められました。全部で80あまり出たうち、半分が認められて、半分が認められていないですね。ですから、そのへんのことをしっかり日本としても、情報入手は難しいんでしょうけれど、検証をする必要はあると思います。ですから、先ほど申し上げたことに戻れば、プロセスにもっと透明性を持たせる形に制度改革をしていくということが必要で、これは、ユネスコの事務局、ボコバ事務局長も私に非常に強調していた点です」

ユネスコの問題と日本の対応
反町キャスター
「現在の日本が国として、あまり興味を持たなかった世界記憶遺産に、たとえば、これは想像の世界で、対日の国際プロパガンダ戦争を仕かけることにおいて、では、何で日本を叩くんだとやった時、中国がこんな資料を集めましたと。これをもってどうやって戦うんだ、国際世論の場においてと、中国の人達は考えた時にここの部分に目をつけた。世界記憶遺産に目をつけたわけで、では、ここに南京の話と慰安婦の話を打ち込んでみようかと彼らが考えたのだとすれば、国際戦略上、日本が盲点を突かれたということになりますか?」
山本議員
「かなりその考えに私は近くて、虚を突かれたと。これは松浦事務局長が、何度もおっしゃっている通り、今回、起こっていることというのは当初、想定されていた事態ではないんです。だって、これまで世界記憶遺産ができたあと、こんなふうに1つの国が他の国が支持を出したことについてクレームしたことは、たぶんないし、それによって取り消すとか、取り消さないという話になったこともないと思うんです。おっしゃったように、中国がこの仕組みをある意味で言うと、悪用という言い方かわからないですけれど、活用して政治利用しようとしたという状況が良くないんだと思うんです。もちろん、世界記憶遺産とつけた理由はいろいろとあるんだと思うんです。これを世界記憶遺産ということを、たとえば、踏まえて、観光戦略につながりますよね。私は群馬県出身ですけれども、群馬県と言えば、たとえば、今回、世界記憶遺産で上野三碑というのが登録になったんです。古碑ですけれども。古い碑ですけれども。これによって、たとえば、もしかしたら、観光キャンペーンにも使えるかもしれないということで、いろんな意味で、遺産とつけたのかもしれませんが、これは元の言葉は、memory of the worldですから。世界の記憶であって、heritageは全然入っていない。もう1つは、根拠は、条約でも何でもなくて、ユネスコの事業なわけです。だから、歴史的に意味のある資料を、これも事務局長がおっしゃいましたが、保護するのはいいのですけれど、この中に、たとえば、提出された資料の中の中身が歴史的に事実なのかどうかを判定するみたいな、そういう主旨はないです。にもかかわらず、中国がこれをある意味で言うと、政治利用したことによって、これまでのゲームのルールが変わったんだから。だから、これはしっかりと取り組まなければいけないということだと思うんですよね」
反町キャスター
「どちらが先なのですか。中国が目をつけたのが、それが先だと思った方がいいのですが、ないしは、そういう今回のような想定をしていなかったところ。そこがそもそもの間違いだったのですか?どちらが問題だと感じますか?」
松浦氏
「両方でしょうね」
反町キャスター
「政治的に、たとえば、もともとは、本来だったら文化的なものであるはずの文化記憶遺産に政治的なものがこういうふうに入ってきてしまったもの。この経緯というか、現実というのは前の事務局長としてはどうにもならないと感じますか?」
松浦氏
「ですから、先ほど申し上げたように、今回のプロセスは非常に残念ですけれど、ただ、こういうのを、たとえば、中国が提案するのがこのシステムの主旨に反するという議論はできないと思うんですね。しかし、中国が出してきた文献に関してゼネラルガイドラインに2つの重要な基準があるんです。出てきた文献に世界的な価値があるかどうか。それから、もう1つ、出てきた文献が本物であるかどうかと、2つの価値の基準を満たしていなければならないんです。ですから、その基準を満たしているかどうかは国際諮問委員会で本来議論をしなければいけないので、そういう時に一方の当事者だけの意見を聞いて、2つの価値があると判断するのは適切ではないので、もう一方の当事者の意見もしっかりと聞いて両方の意見を踏まえて判断するべきなのが、現在そういうシステムになっていないと。従って、日本は会議場の外でキャンペーンをしましたけれども、会場の中でしっかりしたプレゼンテーションをする機会が与えられなかったわけです」
反町キャスター
「もしかしたら中国側はその中にいてプレゼンをしていた?」
松浦氏
「していない」
反町キャスター
「していない!それはしていないのですか?僕はすごく心配になって、一方的なプレゼンのあと、出てきたところでその人達にあと追いでやろうとしていたのかなと」
松浦氏
「そういうのはないです。それは中国が文書を出しているけれども。ただ、中国はしっかりした、そういう学者のネットワークには入っているんです。ですから、現在、申し上げた14人の諮問委員には入っていません。しかし、その下に、地域別委員会があります。ですから、アジア太平洋世界記憶遺産委員会というのがあります。これはもちろん、別建てですけど、この議長は中国です。副議長は韓国です。中国は、現在のアジア太平洋世界記憶遺産委員会は、2年に1回総会を開きます。これまで何回も開いています。中国で開いています。ですから、このメンバーと国際諮問委員会のメンバーは違います。違うけれど、人的なネットワークはそういうことを通じてできあがるわけです。それに関してはアジア太平洋世界記憶遺産委員会には、日本は招かれても学者は出席していないですよ。2年に1回開かれています。ですから、私は来年、春、ベトナムのフエで総会が開かれます。これには是非、日本の学者に行っていただきたいということです」
反町キャスター
「日本の学者が行かない理由は何ですか?」
松浦氏
「1つは、日本の学者が、世界記憶遺産というシステムに、従来から関心を持っていなかったということと、そういう学者、たとえば、個人のお金でいってらっしゃいと言っても無理でしょうから。そういうものをしっかり支援する政府の体制ができていないと」
反町キャスター
「中国、韓国は、それは官費で?」
松浦氏
「もちろん、そうです」

ボコバ事務局長と中国
秋元キャスター
「ボコバ事務局長は、今年の9月、中国北京で行われた抗日戦争勝利70年記念式典に出席をしています。左から2番目の女性ですけれども、ボコバ事務局長ですけれど、どういった人なのか。ブルガリア生まれの63歳で、ブルガリアの外務大臣や国会議員を務めているということです。松浦さんのあとを受けて、2009年にユネスコ事務局長となりました。抗日戦争勝利70年記念式典出席のあと、南京事件の世界記憶遺産の登録ということで、このボコバ事務局長と中国の関係というのが気になるわけですけれど、これはどう見たらいいのでしょうか?」
山本議員
「潘基文事務総長が抗日70周年の中国の北京の行事。特に軍事パレードに出席したというのは本当におかしいと思って、申し訳ないですけれども、極めて不快に思っているのですが、ユネスコの事務局長が行くというのもちょっと私はどうかなと申し訳ないけれど、思うのですが、前回のボコバ事務局長の軍事パレードへの参加、今回の南京事件の資料の登録。ここには中国に対する気遣い。つまり、国連事務総長という目標を達成するための意図が働いていると疑われても仕方がないのではないのかなと思います」
反町キャスター
「いかがですか?」
松浦氏
「10月7日にお会いした時に、むしろ彼女の方からこの世界記憶遺産のプロセスは透明性を欠いていて、これは変えなければいけないということを、彼女の方から持ち出しました」
反町キャスター
「松浦さんに対してですか?」
松浦氏
「ええ、私に対して。それは本音です。これは変える必要があるということで、私が言おうと思ったら、先取りされまして彼女も非常に困っていました」
反町キャスター
「それは先輩に対して、怒られる前に、機制を制して言い訳を並べたと。そういう形ではない?」
松浦氏
「そうではないです。それは彼女も私も長年の付きあいで、彼女が立候補をした時に、他に8人いて、彼女を入れると9人です。彼女が国会議員の時から知って、その時に当時のタルノボフというブルガリアの大統領から、いずれ私の後任を狙って立候補するからよろしくと言われて、ユネスコ事務局長に出すからと、是非いろいろ教えてやってくれと言って以来の付きあいなものですから。ですから、彼女は、私に対しては、言わないことはありましたけど、嘘を言うことはないと私は思って。これに関してはこれを彼女は推進したということは、私はないと。ただ、いずれにしても事務局の役割は限られているのを、それを理論的には追認を拒否するという選択の余地はあり得ますけれども、先ほど申し上げたように、よほどの欠陥がない限り、それはできないですね」
山本議員
「松浦事務局長がおっしゃっていることだから、私はそのまま受け止めるというか、本当だと思うんです。もしボコバ事務局長が本当にこの件に問題意識を持って困っているのであれば、たとえば、松浦事務局長のような方からも十分働きかけていただいて、ここからのプロセスが大事なわけですね。2年後にはもう1回、世界記憶遺産の話で、慰安婦の問題が議論になってくるんですよね。そこに向けて、日本としてははっきり言って、世界記憶遺産改革の旗を上げなければいけない。そのためにはもちろん、事務局長の理解も得なければいけない。できるだけ、これから賛同してくれる国を募っていくわけです。現在、馳大臣の号令のもとでいろいろ現在ユネスコの問題点を洗い出していて、提案をつくっているんだと思います。おそらく今年末ぐらいまでには、ちゃんとつくっていると。それをおそらくこれからユネスコの執行委員会か何かにかけていく。その過程で本当に現在、私は、事務局長が言っていること、本当だと思いますけれど、ボコバ事務局長が今回のことについて心を痛めているというか、懸念を持っておられるのであれば、それこそ事務局長から働きかけていただいて、日本が改革の旗印をしっかり持ってこの世界記憶遺産の現在のおかしなシステムを変えていくという方に結びつけていければいいなと思います」

分担金見直しの是非
秋元キャスター
「日本の対応策として分担金の見直しについてはどう考えますか?」
松浦氏
「私は分担金の停止というのを今の官房長官の発言はいろんな可能性を含めて、その可能性の1つとしておっしゃっているわけで、その時の官房長官のお気持ち、つまり、非常に日本として納得できない決定が行われたことに対する不満表明だったと思うんです。しかし、今後の日本のとるべき道という点から言えば、システムを変えていく。そのためには事務局と組んで、かつ同志を募って、執行委員会でそれを決めていくという積極的な対応が求められているわけです。そのために分担金を止めるということは義務が残るわけです。ですから、仮に2年後に日本が再開すれば貯まっていた分は全部払わなければいけないんです、その2年間は。しかし、日本はだんだん発言権が減って、とても制度の改革などには積極的なイニシアティブがとれなくなると。分担金でユネスコの活動、あるいは事務局で働いている職員の給料等を出していますから。もちろん、現在ユネスコと日本のパイプはこんなに太くなっていますね。教育文化を通じて。教育の例で言えば、ユネスコスクールは、日本は1000にも及んでいるんです。それから、ユネスコの事務局でも50人弱の中堅幹部、いわゆる幹部は残念ながらいませんけれども、中堅の幹部は日本の職員、それもほとんど女性です。と言うのは、ユネスコは、英語とフランス語で仕事ができるというのが必要条件の1つになっているものですからね。男性は残念ながら、そういう人が少ないですね。女性だと英語、フランス語、両方ができる人が幸いに多いものですから、そういう人達の給料も分担金ですから。そういう人達が、日本が分担金を払わないからと言ってクビになるということはもちろんないけれども、非常に肩身の狭い思いをすることになる。現にそういう人達から私にも電話かかってきました、女性です。これは日本政府、本気ですかとそういう照会がきている。ですから、繰り返しになりますけれども、分担金の停止というのは日本の見地から見てですよ、最悪の選択だと思います」
山本議員
「私も基本的に事務局長のおっしゃった考えに近いと言うか、おっしゃった通りだと思うんですね。官房長官が分担金の拠出も含めて関係を見直さざるを得ないと言ったと。それから、自民党で、与党で言えば、二階総務会長が本当に分担金を払う必要があるのかと言ったと。これは正直言ってよくぞ言ってくれたと思います。つまり、今回のユネスコの対応について政府として非常に不愉快に思っている。それから、与党としても、議会としても非常に不愉快に思っているってことを発信した。これは非常に意味があったと思います。ただ、実際に事務局長もおっしゃいましたけれども、現在日本が義務として払っている分担金を止める。このことが戦略としていいかというと、一言で言うと、稚拙だと思うんですよね。いくつか理由があって、事務局長もおっしゃっていましたけれども、だって、これから、2年後の慰安婦の登録も含めたこういう動きを阻止するために、世界記憶遺産制度の改革をやっていかなければいけないと。事務局長がおっしゃっていた執行委員会。五十何か国あるのでしょうか。この執行委員会で日本の提案を出していかないといけない。執行委員会は1年に2回あるんです。たぶん次が、私の記憶では来年の4月ですよ。と言うことは、2年後の国際諮問委員会の議論まで3回ぐらいできるわけでしょう。これからやらなければいけないということは、できるだけ日本の提案に賛同できる国を募るというところですよね。それによってできれば作業部会みたいなものもつくると。松浦事務局長からも働きかけていただいて、それをやってかなければいけない時に、日本は分担金を払いませんと言って、本当に仲間が増やせるかということをよく考えなければいけないと思うんですね。それと、もう1つは、これは良く聞く話ですけれど、ユネスコはいろんな活動やっているではないですか、世界遺産だけではない。本当にありとあらゆる活動をやっているわけであって、アメリカが現在、分担金を止めている。1票もないではないですか。アメリカはもちろん、ユネスコで影響力ありますけれども、たとえば、世界遺産委員会とか、世界無形文化遺産委員会とか、いろんな委員会におけるおそらくアメリカの発言力は落ちていると思います。私が聞いた話では、正確なところはわからないところもあるんですけれども、たとえば、国際海洋学関係の委員会があるわけですよ。これはだいたいメンバーは選挙だから。だいたいアメリカはどの選挙でも1番か2番だけれど、どうも分担金を止めて以来、苦戦しているらしいんですよ。だから、これを見てもわかるように、日本が分担金を止めたらいろんなユネスコの活動において松浦事務局長の時に築き上げた信頼とか、絆があるわけですよ、日本の実績というものが。だから、確かに今回のことは非常に不愉快ですけれども、日本政府がユネスコに影響力がないかと言うと、私はあると思います。だって、これまでの日本の世界遺産の登録だって、かなりユネスコは好意的ではないですか。群馬県のこと言ったら申し訳ないですが、富岡製紙工場、富士山の時もちょっとゴミの問題でもめても結局、文化遺産として登録できたということもあるから、だから、もう1回言いますけど、もちろん、いろいろ不愉快な面はありますが、これから改革を進めてくためには、分担金を止めるという選択肢ではなくて、貢献は維持しつつ、改革の旗を振るために何がいいかということを考えていくべきではないでしょうか」

中国『慰安婦問題』再申請か どうすべき?日本の対応
秋元キャスター
「中国政府は、慰安婦問題資料の申請については『中国以外に他の国も慰安婦問題の被害国なので、ユネスコ国際諮問委員会は世界記憶遺産の申請規定によって関連国が共同で申請するよう奨励した』と話しています。これに対してユネスコの報道官はそうした事実は把握していないと否定しています。中国の言うようにこのユネスコから共同申請を奨励されたと、こういうユネスコから申請に向けてアドバイスのようなことというのはあるのですか?」
松浦氏
「それは考えられないですね。ユネスコの事務局が否定していると。まさにそのことを示していると思います。しかし、中国、韓国が共同で2年後を睨んで準備しているということは間違いないと思います」
山本議員
「一言で言うとまさしく日本の外交力が試される場面が続くと思います。相手の資料が公開されなかったとしても、情報収集して、なぜ慰安婦に関する資料を登録することがおかしいかということを内外に訴えていかなければいけない。全部を取り消すことができなかったとしても、関係国にここらへんはおかしいんだと認識をさせることは大事なので、ユネスコ改革の問題点を洗い出して、提言をつくって、がんばってくださいと馳大臣に言いに行きたいと思います」

国連安保理は機能不全? 安保理改革に向けた方策
秋元キャスター
「安保理改革についてどう考えていますか?」
山本議員
「何で安保理が機能不全なのか。もちろん、これは事務局長のご意見も聞きたいんですけれども、世界が複雑になっているということもありますけれど、国連が非常に機能しにくくなったのは安保理がいびつだからです。これは絶対やらなければいけない。長い話を短く言うと、安保理改革が盛り上がったというのは過去に2回しかありません。私が政治家になったのは1995年ですけれども、1993年に作業部会というのが始めてできたんです、安保理改革の。それが1997年にラザリさんというスリランカ出身の国連総会の議長が出てきて、初めて関係各国の国連代表部を歩いて案をつくったのですが、その時、国連改革、安保理改革に反対する人達のグループをコーヒークラブと言うんです、これは自分達はとにかく常任理事国にはなれないけれども、ライバルには絶対させたくないという。たとえば、イタリア、パキスタン、韓国、アルゼンチン、そういうところの妨害で失敗をしました。私は1999年に政務次官になってニューヨークに行って、佐藤国連事務局長に会った時もまだ熱は残っていたんですけど、コーヒークラブの妨害でなかなかうまくいかなくて、停滞をした。それが2003年にイラク戦争があって、アナン事務総長がハイレベル委員会というのをつくって、もう1度機構改革をやろうということで、2005年に小泉総理が、戦国武将みたいな小泉総理がG4グループをつくって日本、ドイツ、インド、ブラジル。これで決議案をつくった。だけれど、残念ながら多数派工作がうまくいかずに結局、その決議案を総会にかけられなかった。この2回しかないですね。特に2005年は千載一遇のチャンスだと思っていたので、非常に残念で。当時、日本の負担金も20%近かったです、2000年は。現在10%を切るとこだから、極めて難しい状況にはなったのですが、今回、総理が行って、11年ぶりにG4グループの首脳会談をやった。ここを契機にもう1回、何とか安保理改革の火をもう1回燃え上がらせてほしいなと思っています」

松浦晃一郎 前ユネスコ事務局長の提言:『国際的に活躍できるリーダーを目指せ!』
松浦氏
「国際的に活躍するリーダーを、特に若い方に目指していただきたいと思います。私が言う国際的に活躍するリーダーというのはもちろん、理想的に国連ファミリーの機関のトップですけれども、必ずしもトップでなくても、No.2でもNo.3でもいいし、さらに言えば、国際的な企業、国際的なNGO(非政府組織)、そういうとこのリーダーでもいいと思います。そういう国際的な活躍をする日本人が1人でも多く出てほしいと思います。国連ファミリーを見ますと、1990年に私がユネスコの事務局長になった時は、私を入れて(日本人は)3人でした。中国人も韓国人もゼロです。現在は逆転しています。日本人はIAEA(国際原子力機関)の天野事務局長1人ですね。他方、中国や韓国はどんどん増えてきています。非常に残念な時代。是非若い人に国際的なリーダーを目指していただきたいと思います」

山本一太 自由民主党参議院議員の提言:『ネバーギブアップ 国連安保理改革』
山本議員
「1997年、それから、2005年、過去の2回の盛り上がりに比べて安保理改革は日本にとって、特に常任理事国入りは、ますますいろいろな意味で難しくなっている。これを諦めちゃったら国連の将来はないと思います。日本の存在感を高めるためには国連で活躍する人材を育てないといけないと思います」