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2015年10月22日(木)
中国『元』の国際戦略 習主席訪英と蜜月の裏

ゲスト

山本有二
自由民主党衆議院議員 元内閣府特命担当大臣(金融担当)
浜矩子
同志社大学大学院ビジネス研究科教授
柯隆
富士通総研主席研究員

7%成長の限界か? 中国経済の実情とリスク
秋元キャスター
「中国の通貨人民元の話に入る前に、まず今週明らかになった中国経済の現状について見ていきたいと思うのですが、中国の今年7-9月期のGDP(国内総生産)成長率ですけれども、実質で前年同期比6.9%とリーマンショック後、維持されてきました7%成長を割り込む結果となりました。柯隆さん、中国の経済指標というのは、中央政府の思惑によってある程度調整されているとも言われていますが、このタイミングで7%割れという数字が出てきたことについて、どんな背景を推測されますか?」
柯氏
「まず中国のマクロ経済統計の信憑性の話は議論しないという前提で、この6.9%の意味合いを申し上げると、第1四半期と第2四半期、いずれも7%。しかも、成長率の目標の7%とまったく同じ数字でしたので。ここでもしもまた7%の数字を出してしまったら、これはさすがにマーケットが舐められるということになるわけで、要するに、どれぐらいの数字を出すかという政治判断になるわけですけれど、6.9%の意味合いというのは、少し減速していることを認めつつも、コントロール可能な範囲の中だよと、市場にメッセージを送って、安心してもらうと。だから、月曜日、この統計が出た時に東京もニューヨークも上海も大きく暴落していない。そういう意味で、中国政府が責任を持っていると言えるかもしれません」
反町キャスター
「つまり、GDPの数字をもってマーケットと対話をしているかのような、そんな印象を受けるんですけれど、現在、柯さん、発言の頭でマクロ経済の指標への信憑性を議論しないという前提で言うならばと話しながらも、途中で、どのぐらいの数字を出すかという政治判断と言いました。これはどういうことですか?」
柯氏
「現在、中国経済の、いわゆる実際の、どれぐらい成長しているかという議論を、もしもするとすれば、アメリカと日本の専門家の間での1つのコンセンサスはだいたい4%、5%程度ですよ、成長率。極論をする人はマイナス成長とか言っている人もいるんだけれど、それはあまり気にしない方がいいと思うので、だから、4%、5%成長。もしもそれを発表してしまうと、たぶん東京もニューヨークも上海も暴落するわけですから。それは大きなショックを与えると。それは避けつつも、では、どうすればいいかというと、6.9%ぐらいが政治判断として妥当ではないかと、ポリシーメーカーが見ているのでしょうね」
反町キャスター
「それは、つまり、6.9%という数字は、中国政府のみならず、世界が皆、その数字をもって安心する?した?安心した数字だったとそういうことでよろしいですか?」
柯氏
「安心していないでしょうね。安心していないので、ただ、要するに、中国政府がこの数字を発表するというのはある程度、中国は責任を持たなければいけないわけですよ。何かあった時にコントロールしてくれるのではないかという、100%は信頼をしていないんだけれども、一応期待はしながら、備えもしているというような状況ですね」
反町キャスター
「山本さん、中国のGDP6.9%という数字に対する印象と、そもそも現在マクロ経済の指標の信憑性という話が出たんですけれど、中国の経済統計に対する信憑性、どんなふうに感じていますか?」
山本議員
「信憑性を疑い出すと、我々は議論ができなくなるから、別な場面でやった方がいいのではないかと思います。特に6.9%というのは、全人代で李克強さんが指摘したのは今年7.0%前後で推移するだろうという話をしているわけですし、IMF(国際通貨基金)の予測では6.8%と言うわけですから、この想定の範囲の中にうまく収めているのではないかと。そう考えれば、それほど特別な事件や事故が起こっているというようには見えないですけれども」
反町キャスター
「浜さん、中国の統計に対してどういう想いで数字を見ていますか?」
浜教授
「先ほど、柯隆さんが言われた6.9%で出るのは、4%、5%だろうということだという、そういう感じで理解をしていればいいという感じだと思いますけれど、ちなみに言えば、この数字というのは前年同期比です。前年同期比で7%から6.9%に下がったということは、日本で言っている前期比ベースでは、たぶんマイナス成長になっていると考えて然るべきことだと思います。だから、要は、この6.9%という数字から我々が読みとるべきことは現在の勢いとしては既にマイナス成長の圏内に入ったと理解すべきところ」

人民元の国際化戦略 中英『蜜月』の背景は?
秋元キャスター
「ここから今週イギリスを訪問中の中国、習近平国家主席とキャメロン首相の首脳会談の結果など、両国の関係強化について見ていきたいと思います。まず金融に関する連携としましては、ロンドンで人民元建ての中国国債を発行すると。これは中国本土、香港以外では初の試みということです。両国の中央銀行から人民元とポンドを融通しあうスワップ協定の拡充が発表されました。さらに、経済活動の連携も協議され、高速鉄道や原発など中国国営企業の参入と合わせ、総額7.4兆円規模のインフラ共同事業も合意されたということですけれども、世界的に知られる金融街のロンドンのシティで人民元の取引きが活発になるという見通しですけれど、柯隆さん、この中国側の狙いについてどう見ていますか?」
柯氏
「中国が1つ警戒しているのは、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の包囲網があって、その前に、中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)をつくりまして、もう1つは中国国内の景気が落ち込んでいるがために外需を拡大する。今日、話が出ていませんけれども、インドネシアでの高速鉄道受注に成功をして、タイもとりましたから、今回イギリスもやるというわけですから、おそらく今回のイギリスの対応を見ていると、かなりの高い確率で、中国はイギリスの高速鉄道がとれるのではないか。しかも、原子力発電所も受注に成功しているわけですから。ただ、それをサポートする金融インフラ整備をしなければならないので、金融インフラで1つ、まず決済通貨としての役割、すなわちオフショアマーケットをロンドンにつくると。これはもうお互い合意をしているので。それで、国債、いわゆる中国の人民元建ての国債市場なのですが、ユーロ人民元マーケットを整備していくと、中国の対ヨーロッパ、ロンドンを拠点とする、その投資を支える金融インフラ、あるいは制度の枠組みが整備されるわけですから。ただ、誤解されると困るので、リザーブ通貨として、準備通貨として、中国の人民元が国際化するのはまだまだ我々に見えないわけですから。まだ、20年、30年はかかるだろうけれども、とりあえず実態経済については、この2つにおいて、だいぶ前進をしたと言っていいと思います」
反町キャスター
「基本的なことを1点。たとえば、中国からイギリスにインフラを輸出する時に中国の元が国際化をしていなくてはいけないという理由は?」
柯氏
「中国が、結局、狙っているのが、決済通貨としてのウエイト。現在、円を超えているわけですけれども、もっと高めていくと。すなわち経常取引において、中国は人民元の重要性を、世界への、国際金融市場において高めていくというのと、もう1つが国債の投資、プラントエンジニアリングの輸出において、将来的にはドルに依存せずに、人民元を使ってもらうというのが1つの狙いとして、見え隠れしているわけですね」
山本議員
「ここで私がちょっと本当にそうなのかなと思うのはキューフィー(QFII)という制度がありまして、中国国債を発行する時に、しかも、外国に売る時に、株とセットで売ると。そうじゃないと、つまり、枠だけしか売っていないと。つまり、株式と国債が一緒にならないと買えないよというような規制がかかっているわけです。だから、ロンドンの市場で、自由に右から左まで誰が買っていいよというマーケットに、本当に中国国債が出てくるのかなというような疑問があるんです。と言うことは、国債ではなくて、手形、中国銀行が発行する手形が、ロンドンで取引されるというだけのことではないのかなと思ったのですが、それはいかがですか?」
柯氏
「現在、大臣がおっしゃられたことがとても重要で、すなわち中国は将来、人民元を国際化する時に何が必要かというと、資本輸出能力ですね。円は、国際化できなかったことというのは結局、この国から円が海外に出ていかなかったんです。円の調達が難しいわけですから。だから、それで中国はすぐには大臣がおっしゃるように難しいんですね。ただ、この枠組みだけとりあえずつくって、そこに人民元が、外へ出て行けるようなインフラ道路だけを整備をして。だから、資本輸出能力を少しずつ高めていくんだけれども、これを性急にやると、逆にこの道路ができたからと言ってどんどん出していくと、今度は金融危機が起きる可能性、通貨危機が起きる可能性があって。すなわち国内の金融制度の改革がまだ進んでいないということがあって、とりあえず今回は対外的な部分のインフラが、まず道路を整備して、国内はこれから時間をかけてゆっくりやっていって今日、明日、明後日ですぐに人民元の国際化というのは、私はあり得ないと思います」

英国金融シティに中国国債
反町キャスター
「山本さん、僕らのまとめではロンドンのシティのマーケットで、人民元建ての中国国債を発行できるようにしますと、僕らは平たくこういうように報道をしているんですけれども、現在の話だといわゆる中国国債なるものを自由に売買できることではなくて…」
山本議員
「たとえば、日本の国に対して、中国人民銀行は割り当てをしてくれないですよ、国債の。日中金融会議で、協力会議で、日本にはやりませんよと、我々合意しているわけですよ。と言うことは、勝手に市場で売買できるような段階にはないので」
反町キャスター
「中国国債が?」
山本議員
「ええ。将来的にやりますというメッセージだったらわかるんです。もう1つ重要なことは、ロンドンはいつも世界の中心でないとダメだと、シティは思っている節があって、いつもニューヨークとロンドンのマーケットの戦いの位置にあると、いつも思っているんです。このロンドンというのが焦りを持っているのは、中国のマーケットが、どこでいろんな商いを始めるのか。これまで外為特会、中国の人民の。3兆ドルある、その米国国債をどこで買っているかというと、ロンドンで買っているのではないかと。つまり、香港があったし、長い間、香港とイギリスで付き合ってきた。その前、アヘン戦争は別として、長い歴史の中で、香港を持っていたことによって、イギリスは中国とちょっと我々が感じられないぐらい深いパイプがあるのではないかと。そのことにおいて、ロンドンは、ニューヨークには負けないよと。ルクセンブルグに負けないよというような、中心主義的なシティのものの考え方が、こうなっちゃったのではないかと。ちょっと先手を打った。リスクをとった。特に、私が思ったのは、AIIBに、イギリスが手を挙げる前にルクセンブルグが手を挙げて既に入ってしまっているということは、そこではもう競争の社会ができ上がっているのではないかなと。そう思ったんです」
反町キャスター
「早い方が少しは有利になるのではないかと?」
山本議員
「それは習近平氏と約束をする方が、どんなにAIIBと約束をするよりはやいでしょう。ロンドンは、だから、中国の国債を将来どれだけ拠出するかはわかりませんが、その時は、中国はロンドンで商いをされるよというのが金融常識になってくるのではないですか」
反町キャスター
「柯隆さん、中国はロンドンに対して特別なそういう想いがあるのですか?」
柯氏
「それは前大臣が大事なお話をおっしゃったんだけど、要するに、駆け引きなので、来週、確かメルケル氏が北京に行くはずですよ。だから、ロンドンがニューヨークを心配しているよりも、フランクフルトにとられるのは嫌だし。だから、ヨーロッパの皆さんが、お互い何か競争をしているというか、駆け引きしていると。中国はそれをうまく利用しているというか、そこはたぶん浜先生が1番詳しいと思いますけれども」
浜教授
「現在、山本さんのお話の中に焦りという言葉が出てきましたね。これはすごく重要なキーワードだと思いますね。これは現在出ている、英中蜜月というのは両方の焦りの表れだと思います。中国側では、7%割れの成長力の低下というのがあるし、だからこそ、どんどんインフラの輸出とか、原発の輸出とかを押さえておかなくてはいけないというのもあるし、だからこそ、外に向かって見栄を張らなければいけないという、国債だって、外で起債できます。人民元、いちいちドルに替えなくても世界で使えるようになりますと。こういうのを一刻もはやくイメージづくりをしたいという焦りが。一方で、イギリスもおおいに焦っていてEU(欧州連合)離脱の話というのもあります。そういう中で、イギリス、ここにあり、という健在ぶりを示したいと。大陸、欧州とは一味違う形で中国ともこんなに接近できまっせという姿を見せたいというので、両方の焦りがすごくいい塩梅にくっついて、こういう状態をつくり出したと思いますが、焦りには当然落とし穴があるので。現在の、イギリスのなりふり構わず何でもやりますと。はしたないですよね。はしたないのは、ある意味で、イギリスの特性で、実利さえ得られれば、別にフランスみたいにいつも格好つけなくてもいいというのが、ある種、イギリスの海賊魂でありますが、それにしても今回のようにバッキンガム宮殿にも泊まってくださいとかいう。あれはちょっとあまりにも焦り方が高じて、海賊魂のゆとりというものを失っているという、ちょっと目もあてられない姿だなと」
柯氏
「ごめんなさい、イギリスというのはそんなに困っているのですか?」
浜教授
「困っていると言うか、その存在感を示さないといけないというのがすごくあると思います。先ほどのフランクフルトとの関係における、ロンドンの威信回復というのももちろん、ありますし、このユーロ圏においては、ユーロ圏を中心として統合欧州はメルケルさんがすごく素晴らしいリーダーということになっていく。だんだん影が薄くなってきていると。そうではないぜと。我々には大陸欧州に真似ができない海賊的な、格好をつけている殿様達にはできない対応があるのだというのを、今回、全面的に示そうとしたというところがあると思うんですね」
反町キャスター
「では、政治の合意によってマーケットが従うのか、ないしはマーケットの要望に政治が突き動かされたのか。これはどう見たらいいのですか?普通、政治家だけが、首脳同士がこうやろうと言っても、マーケットがそれに対し、しれっと、俺は中国の元建ての国債の取引きはしないよという反応も理論上はあり得ると思うんです。ただし、そうではなく、これはマーケットも含めて歓迎するのか。それはマーケットが、シティが、中国ともっと取引できるようにしてくれと政治を突き上げて、こういう首脳会談の結論に至ったのか。どちらが主導なのですか?」
浜教授
「シティは間違いなく突き上げているでしょうね。これはイギリス、中国、双方ともこの市場というもの、マーケットというものに振りまわされているという面があると思います。だから、焦っているから振りまわされるわけです。だいたい市場とは何?市場が振りまわす、市場が決めるとか、『市場さん』という人がいるのですかという感じですが、そういうふうに市場の言うことを聞かなければならないとか、市場の要望に応えなければいけないと市場を人格化して意識し始めると、非常にとんでもない方向に行ってしまう。ただ、ともかく株を上げなければいけない、円を下げなくてはいけないとかというのと、そこは同じですけれど。ただ、彼らはいずれも市場に振りまわされていると思いますが、だけど、それに対応したつもりでやった今回の一連の合意が『市場さん』が拍手喝采してくれるかというと、それはこれから見ていかなければいけないし、あまりにも、全て他の条件を無視して、イギリスがすり寄っているというようなところには、それこそ国というものに対する信頼性。こういうことをやる国、大丈夫かな、という想いというのが世界の投資家にも結構広まっていると思いますし、人権のこととか、一切無視する、なりふり構わぬ姿が信頼足るや、というような雰囲気は結構出てきていると思いますので、両方、頭を冷やして考え直した方がいい面が多々あるのではないかと思いますね」

ポンド・ドル・ユーロ・円… 勢い増す人民元との協調は
秋元キャスター
「元の位置をどう見ていますか?」
柯氏
「議論する時、定義をはっきりしないと一般の方が混乱するんですよ。元の通貨の国際化と通貨のハードカレンシー化と基軸通貨化、これは全然意味が違うわけです。中国の人民元はまず基軸通貨にはなれません、現在の段階では。向こう何十年かかかりますが、永遠になれないかもしれない。人民元の国際化と言った時に、この話が出てくるのですが、国際貿易において決済通貨、なるべくウェイトを上げていく、その目的は何かというと、現在ほとんどドルが大きなウエイトを占めているので、そうするとドルが急変した時に、すごく為替リスクを負っちゃうわけですので、だから、場合によっては特に中国と国境を接している国々、ロシアとか、モンゴルとか、ベトナムとか。人民元で値段を決めて取引きしようねというのは、これは中国で言うと人民元の周辺国化。周辺国において人民元の国際化を進めようと。もう1つは国境を接していないんだけれども、たとえば、インドネシア、マレーシアという域内の国々、これは人民元の域内化と言いますか、地域化と言いますか、英語で言うとリージョナライゼーションを進めようと。2つがだいたいできている。だから、そのオフショアマーケットはどこにあるか、1つは香港、シンガポール、もう1つは東京も指定されたんだけれども、ちょっと日中関係がこうなっちゃっているから、延期しているので、その関係で人民元は円を抜いたわけです。もう1つが資本勘定、すなわち準備通貨として持っていてもらうために、簡単ではいけない。何よりも中国は資本取引、自由化していませんから、だから、中国は貯蓄通貨として外国人に持っていてもらう。先ほどのロンドンもそうだけれど、これは枠組みだけを覚え書きにサインしておいて、実際のアクションは当面あり得えません」
反町キャスター
「AIIBアジアインフラ投資銀行とか、シルクロード構想とかがあるではないですか。ああいう現在、中国が掲げている地域の経済連携を強化する考え方とか、構想は基本的に全部域内で、元で決済をするのが前提ということになっているのですか?」
柯氏
「いや、現在はドルが大きなウエイトを占めるけれども、将来的には次のステージ、アフリカ、中東とのブランドエンジニアリング高速鉄道、油田の開発、ここはいずれ人民元のウエイトを上げていこうねと、相手と合意さえすれば。そういうのを狙うわけ。足元ではできません」
浜教授
「国債決済通貨に占めるシェアの数字が何を意味しているかというと、要するに、これはそれぞれの通貨の足の長さを示している。自分の国の中でしか通用していない通貨というのは全然足が生えていない。ちょっと近場まで行けるのは短足だけれど、一応足は生えたという感じ。すごく遠くでも、第3者の間でも自国通貨使ってもらえているすごい足長通貨になっている。ドルももっと昔は足長だったんですね。だけど、それがだんだん足が短くなって、その分他の通貨の足が伸びてきているという感じなわけです。その中で人民元はもっともっと足長通貨になっていきたいというわけで、自国の為替リスクの回避ということもあるし、足長の方がカッコイイではないかというのもあるわけですが、ただ、そこでこれから気をつけていかなければいけないことは、足長の通貨になるということは、それに伴うそれなりの足長おじさんらしい責任があるんです。だから、自国通貨の価値をちゃんと守っていかなければいけない。あまり乱高下するようでもいけないし、自国通貨が足りなくなっちゃうというのもまずいから、世界に対してちゃんと自国通貨を供給していかなければいけない。しかしながら、供給過剰になってもいけないということで、だんだん自分のことだけを考えていればいいという状況ではなくなっていくわけですね。そのことについての覚悟があるかということですね」

国家の信頼とグローバル金融
反町キャスター
「かつて日本が世界のGDPの15%を持っていた時代、日本は国際通貨を目指した時には腰が引けていたのか?」
山本議員
「腰が引けていたのではないけれど、日本人流の遠慮というのがあって、私はそれで失敗したような気がします。チェンマイ・イニシアティブと言ってアジア通貨危機以降、日本が全ての通貨を、アジアを全部まかなっていきますというように宣言はしたものの、そのあと、円は広がらなかったんですよね。特に私が感じるのはODA(政府開発援助)で日本が支援をします。支援をしたけれども、WTO(世界貿易機関)があって自由競争になった場合に、日本のお金だけれども、日本の国の会社が受注できなかったというケースがたくさんありますね。これを、たとえば、円建てで契約しますという条項が1つ入っているとほとんど日本の会社が受注することになります。と言うのは、どういうことかというと、その国で円がなければ円建てで支払いができないわけですから。その国が円を持とうとするわけです。そういう円建てメリットがずっとあるわけですね。だから、円建てでやれば、自国競争力も高まるし、貿易も拡大をするという意味でも通貨のマジックで、私は実体経済にも必ず呼び水が出てくるというように思いますので、シェアを広げること。逆に、卵か鶏ですが、実際の契約が円建てで各企業を海外でやってくれていれば、それは自動的に円のシェアは広がっていたのではないかと思います。海外の取引については、日本は少し未熟なところがあったということが1つの原因になっていたと思います」
浜教授
「なぜシェアが上がっていくのか、足が長くなっていくのかというのは、人が、誰もが持ちたいと思う通貨である、この通貨で決済すれば大丈夫だ、これを持っていれば資産価値があると思ってもらえるかどうかというのがまずは基本中の基本であって、信頼性がないものはいくら営業して買ってくださいと言ってもそう簡単に持ってもらえるわけではないということですね」
反町キャスター
「円は安心通貨と言われるではないですか?」
浜教授
「ごく最近はダメですが、ある時まではそういう雰囲気がだんだん出てきていたわけです。現在は政策が円の価値を下げようとしているわけですから、そんなものは信頼されませんので、だけれど、通貨というのは人がこれは通貨だと認めて初めて通貨なのであって、国際通貨です、決済通過です、と宣言したって単なる紙切れと言われてしまえば、それでおしまいなわけですよね」
反町キャスター
「中国は、そういう責任を負うつもりがあるからこそ国際通貨としての中国元というのを進めていきたいということなのですか?」
柯氏
「元の国際化のメリットは享受したいという気持ちはあるわけですね。国際化した時のデメリットをどう認識するかというのは実はまだ十分に認識されていなくて、中国は。要するに、決済通貨だけではないから、人民元というのは中国以外の国で流通しなければいけないので、その時にマネーサプライと言って通貨の供給量、自国で流通する以上にどんどん出て行くわけですから、そうすると、1つ重要なポイントは金融政策が非常にとりにくくなりますね。もう1つ、下手にやると、世界中から最も取引盛んな相手からバッシングされるわけですから、これは、要するに、アメリカが長い間経験した、ダラーライゼーション、ドル化、南米で起きたああいうことを中国も経験するわけだ。この準備、備えはまだ中国はできていないので、ですから、この議論をするのは時期尚早、はっきり言うと。だけど、この段階でむしろ議論しないといけないのが中国国内の金融制度の改革、国有銀行の民営化、国内の金融市場の整備、これが法制化、透明性、説明責任を果たしていかないと、信任というのは得られるか、得られないですよね」

山本有二 自由民主党衆議院議員の提言:『市民生活向上』
山本議員
「通貨も貿易も全てこれは市民生活が向上していくとだんだんと正常化されていくと私は信じています。ですから、中国が1つのマーケット、いわばEUのように我々アジアが協力するにも、1人1人のアジア人の市民生活向上ということが条件になるような気がします。それがG20の意味ではないかと思いますし、先進国入りということは、それで貿易も通貨も健全になってくるというように思いますので、キーワードは市民生活向上というように思っています」

浜矩子 同志社大学大学院ビジネス研究科教授の提言:『無極時代のささえ合い』
浜教授
「これが現在の時代の通貨関係のあり方だと思いますね。誰かが、我こそが基軸通貨だとか、極になれると、そういう時代ではないということで、突出した強さのない者同士が助け合い支え合っていくというのが今日的な通貨関係、経済関係だと思います」

柯隆 富士通総研主席研究員の提言:『人民元経済圏』
柯氏
「中国としてがんばろうとしているのが人民元経済圏の形成。東アジアを軸として、人民元の国際化を進めながら、人民元経済圏を形成していこうと考えていると思います」