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2015年10月9日(金)
中韓経済激震のTPP 隣国に活路はあるか?

ゲスト

津上俊哉
現代中国研究家 津上工作室代表
柯隆
富士通総研主席研究員
朴英明
韓国経済アナリスト KRNニュース代表
金慶珠
東海大学教養学部国際学科准教授

中韓『激震』のTPP 日本経済への効果
松村キャスター
「今週、巨大な自由貿易経済圏を誕生させる、TPP、環太平洋経済連携協定が大筋合意されました。これにより人口およそ8億人。12か国のGDP(国内総生産)を合わせると3100兆円の経済規模となりまして、世界のGDPの4割近くを占める、世界最大の自由貿易圏が誕生する道筋が開けたわけですが、ちなみにGDPは、EU(欧州連合)は世界の23.6%。中国は13.3%。韓国は1.8%となっています。TPPが大筋合意したわけですけれども、日本の経済にどういう効果、影響がまず考えられますか?」
津上氏
「関税がゼロになるというのはそれなりの影響はあると思いますが、ただ、もともとの、昔、たとえば、30年ぐらい前に比べると、関税はそんなに高くはないですよね。それがさらにゼロに近づくというのは、そんなに大きな効果はないのかもしれない。ただ、農業が典型ですけれども、現在、日本の農業界は皆、これは大変なことになったと。ここまではいかんと。何とかしなければいけないという危機感を皆、持っていますよね。この危機感がまさに生産性向上とか、新しい付加価値の創造とかのドライバーになると思うんですよ。そうやって皆ががんばるということが経済を活性化するという、弾みをつけたという意味ではすごく大きいと思います。TPPらしいルールメイキング、グローバルルールメイキングに遅れずに参加しているというところは、こういうところで遅れがちな日本にしてはまあまあいい線をいっていると。そういう効果はあると思います」
反町キャスター
「行って来いだとプラスですか?」
津上氏
「それはプラスだと思います」

中国はどう見たか?
反町キャスター
「TPPの今回のとりまとめ、大筋合意を受けてアメリカのオバマ大統領は声明でこういう発言、コメントを出しています。『中国のような国に世界経済のルールを書かせることはできない』安倍総理は安倍総理で6日の記者会見で『日米がリードして、アジア太平洋に自由と繁栄の海を築き上げる』と、こういう話ですけれども、津上さん、このオバマ大統領の発言、名指しですね。中国のような国に世界経済のルールを書かせることはできないと。どう感じますか?」
津上氏
「言っちゃったなあという感じですね。結構、インパクトがあると思いました」
反町キャスター
「それは狙い?平場で、国の名前を挙げてまで言う。しかも、米中首脳会談の直後です。この意味というのは、つまり、米中首脳会談においてよっぽど嫌な思いをしたのかとか。中国に対してある意味、見切った部分があったのか。ないしはもともとこういう発言をすることを計算づくで進めていったのか。どう見たらいいのですか?」
津上氏
「アメリカの国内政治上は、これから、まさにTPPをちゃんとセットしなければいけないというのは大仕事で、そこに向けてまだいろいろやらなければいけないことが残っているということを示しているのではないかと思います。と言うのは、ヒラリーさんは大統領選挙中に『私、現在の段階では反対』と言いましたよね。相当、重たい課題なので、最終的に実現するためにいろんな形で、こういう意味もあるんだよということを、大統領が強調するとか、次期候補はちょっとこのままでは賛成はできないとか。内政にとっては重たい課題だよなということが透けて見えてくるような気がしますね」
反町キャスター
「柯さんはいかがですか。どう感じますか?」
柯氏
「自由経済をやる時に、自由な貿易をやる時に、1番大きいマーケットを持っている国の方が得というか、勝ちです。小さな国は国際貿易をいくらがんがんやったって負けるわけですから、そこはまずアメリカからすると、危機的な感情を持つわけですけれど、1つ付言させていただきたいのは、現在、経済学では実験経済学というのが流行っていまして、あるアメリカの若い教授が、時間もあって、こういう実験をやったんですよ、アメリカで。1週間まったく中国のモノ、メイドインチャイナのモノを買わずに生活できるのかどうかとやろうと思ったんだけれど、それでスタートをした直後に、恋人の誕生パーティーをやるということでケーキを買ったんだけれど、蝋燭が見つからない、メイドインチャイナ以外。その実験の1時間後に、これは破綻したわけですよ。これだけ中国経済に依存をしているという証拠で、アメリカが何を考えるかというとサイズでは対抗できませんから、ルールづくりで対抗しようねという話になると思うので。この話はそういうメッセージで、ただ、敢えて言うとすれば、我が国に昔からこういう言葉があるんだけれども、『上に政策有り、下に対策有り』というわけですから、ルールをつくられても我々はそのルールを破る方法はいくらでもある。たとえば、WTO(世界貿易機関)に、2001年に入ったわけですけれども、あの時、約束をした、いろんなアグリーメントでサインしたものは履行されていないですよ。どうにもならなくて。そういう意味で、感情的に言っているけれど、どれだけの実効性があるのかというのがおそらく最終的には中国経済がどこまで成長するかにかかると思うんです」
反町キャスター
「そうすると、北京はこのオバマ発言を笑っているかもしれない?」
柯氏
「笑っているかもしれないではなく、笑っています」

韓国経済 減速の現状
松村キャスター
「TPP交渉に参加しなかった韓国経済の現状を見ていきたいと思います。韓国の主な経済指標を見てみますと、経済が好調だった2007年、そして2014年の対前年増加率を比較して見ますと、経済成長率は3.1%。投資増加率は3.2%。個人消費も1.8%と、いずれの数字も、過去に比べてマイナスとなっているんです。また、IMF(国際通貨基金)の経済成長見通しでも、2015年、2016年共に引き下げられているということです。朴さん、この韓国の経済の現状はどうなっているのでしょうか?」
朴氏
「ちょっと酷いですね。だいぶ弱ってきました。マクロ経済指標的に見ますと今年の4-6月期で、実質の国内総生産が、前期比で0.3%しか上がっていないんですよ。5四半期連続でゼロパーセント台。非常に微増ですよね。これは、2009年のリーマンショック時以来の低い水準ですよ。だから、そういう意味では、ちょっと低迷している。もともと韓国は家計収支が、家計が債務負担が多いですから、消費があまり伸びないんです。もちろん、富裕層は結構いろいろ買っていますけれど、一般的には消費が伸びず、内需が伸びづらい体質にあります。そこにもってきて、最近は世界的な景気の低下で、輸出がだいぶ落ちてきたと。特に先ほど来、お話になっている、韓国は43%の輸出依存度があるんですけれども、全部の輸出依存の中の26%。韓国の全輸出ですよ、100とした時の。4分の1は中国に依存をしているんですよ。その中国向けの輸出が相当現在、減ってきていまして、たとえば、現代自動車というのは、先月かな、6月かな、3割減ですよね。上半期の輸出がね。対前年比で3割減です。ですから、相当輸出にブレーキがかかってしまったと。内需依存型が委縮し始めたということが1つ。それと、国内での消費が低迷をしていますから、デフレ化が進んでいっているという、これが韓国経済の低迷のアレですね」
金准教授
「一言で言うと、韓国経済の構造的な問題ですよね。財閥中心の輸出依存に基づく経済成長政策です。その財閥の収益が悪化していると。輸出への依存、最新のデータだと、GDPに占める輸出依存度が54%にものぼる。日本がだいたい16.5%ぐらいですから、その3倍ぐらいですね。市場規模がもともと小さいので輸出中心。ところが、こうなると世界経済の影響を受けやすい。だから、鈍化しているというのも、これもある程度避けられないと思うんです。ただ、一方で、こういうふうに財閥の業績が悪くなると設備投資ですとか、雇用ですとか、そういうところを控えるようになる。消費が委縮すると。それに、たとえば、MERSみたいなものが今年、特に重なって中国からの観光業が、そういったサービス業も打撃を受ける、小売業も含めて。こういったことが現在限界に達しているということだと思います。ただ、韓国はこれまでそういう限界があっても、また世界経済が変動すれば、それに合わせて、また成長に転じるというようなことを繰り返してきたわけですが、今日のテーマである、いわゆるTPPのような、そういった日本との競争というものを本格的に考えていくというと中小企業、部品ですとか、素材ですとか、そこらへんの特化された技術を持つ中小企業を育てていくという努力をしなければいけない。朴政権も当初、いわゆる構造経済というスローガンのもとで、財閥中心から中小企業の育成という、そういうスローガンだったのですが、いつの間にか財閥依存に戻ってしまっているんですね。だから、現在、韓国経済の見通しとしては、それでも2.7%ぐらいは成長をするだろうと見込まれているのですが、根本的な構造改革というものがないと世界経済にどうしても左右され過ぎてしまうというのが短所としてあります」
反町キャスター
「財閥の弊害というのは?」
金准教授
「要するに、産業構造がピラミッド型になっていると。財閥は財閥でビジネスをし、中小企業は中小企業で独自にビジネスをするのではなく、財閥の下に下請けがあり、その下に孫請けがありという、その全てがつながっている構造ですから、上の財閥が受注を出したり、投資をしたり、雇用しない限り、全て下にまで影響が及ぶわけですよね。これまで財閥が儲けていた時には韓国経済はいいのかというと、財閥は儲けるんだけれど、それを社会に還元しない。設備投資にまわさない。だから、格差が生じるのだという問題が国内で問題になり、現在それよりもさらに状況が厳しく、財閥自体も儲けが悪くなっているというところに危機意識が高まっているのは事実です」

韓国 参加の可能性
松村キャスター
「今週の火曜日、韓国の崔炅煥副首相は大筋合意に至ったTPPについて、このように発言をしています。『TPPに参加する方向で検討していく』。また、自由貿易は日本より韓国が進んでいるという前提で、TPPにより、日本が多少有利になる面もある。公聴会などの手続きを経て、参加の是非や時期を決める」
と話をしています」
反町キャスター
「この副首相の発言。気になるのはTPPによる、多少日本が有利になる面もあるという、国会における発言ですよね。たとえば、日本の国内の国会で、通商政策を議論する時に、特定の国の名前を挙げて、我が国が何かすると、どこそこの国より有利になるとか、不利になる。こんな議論はないですよ。何で韓国の国会において、副首相ともあろう方が、とは言いませんけれども、日本にとって有利になるとか、我が国と日本を比較してどちらが有利になるとか、こういうベースで産業政策を決めるのですか?どう見たらいいのですか?韓国の政治文化の話かもしれないですが」
朴氏
「まさしく。はい、そこです。残念ですけれど、現在、反日の意識が高いですから、そこの部分を出しておいて、私は、これは日本が有利になることがわかっているんだよと。でも、韓国がこれから経済を伸ばしていくためには避けては通れない。少々のコストを払ってでもこの道を行かなくていけないんだよという言い訳に聞こえますよね」
反町キャスター
「それはTPPが、日本が多少有利になる面もあるということは、だから、皆入ろうよという、日本カードを使って、レバレッジをかけているのですか?」
朴氏
「現在、実はメディアも、政治家も、金さんが話をしたように、左右に結構触れているんです。入るべきだとか、もう遅かったとか。それから、逃した魚はでかかったとか。何をやっていたのだとか、あるいは入る必要はまったくないとか。いろんな議論があるんですけれども、基本的には、韓国は入る方向でいくでしょう。ただ、以前2009年に、実は、韓国はTPPに参加しようとしたんですよ。手を挙げたんですけれども、そのあといろいろ調べてみたら、どうもメリットがないと。不利益だということで、1回退いたんですよね。それはなぜかと言うと、現在、製造業の競争力が日本とは桁違いにないですよ。日本の方が桁違いに強いですから、そこをやっても日本製品が韓国に入ってくるだけで、逆に韓国の製品が日本に入っていけるかといったら、入っていけるのはせいぜいサムスンの携帯電話ぐらいで、現代自動車、あれだけ強い自動車会社が、日本から全部撤退しているんですね。日本国内で韓国製品ブランドというのは、認知度がないわけですよ。だから、ここはやってもしょうがないよねという形で撤退したと。ところが、大きな流れとして2013年に実は韓国はもう1回入ろうとしたんですよ。TPPに。手を挙げたんですよね、入りたいと。その時、アメリカが韓米でFTA(自由貿易協定)をやっていたから。それをやってからにしようよと」
反町キャスター
「2007年にまとめた米韓FTAをちゃんと韓国は批准をしなさいと。そのうえでTPPの話をしなさいと」
朴氏
「しました。今度2015年、今年の3月ですよ。また入ることに決めて、ハワイで行われた主席交渉官会合に、韓国側がオブサーブで参加をしたいとアメリカ側に申し出たんですよ。そうしたら、来る必要はありませんと。アメリカに言われてしまったんですよね。来なくてよろしいと。今度は4月。1か月後に、今度は正式に入ることを前提で参加をしたいから、もう1回、その会合に行かせてほしいと声をかけたところ、アメリカ側が言ったのは、いずれ韓国には入ってもらいたいと。ただ、それは現在ではないと。だから、そこらへんがよくわからない」
金准教授
「そのへんは情報がちょっといろいろ飛び交っているところがあって、本当に内幕はどうなのかというのはわからないですよね。ただ、アメリカとしては2013年当時、米韓FTAを何とかきちんと軌道に乗せて、国会で批准はされたけれど、その後、いろいろ“毒素条項”を巡って修正協議もあったので、そこを落ち着かせてからということがあった」
反町キャスター
「直近のハワイとかにおける交渉官会合でもダメというのは?」
金准教授
「私はそこまでアメリカが韓国を牽制するから来るなとか、そういうことではなかったと思います。(アメリカは)おそらく日本との交渉とか、戦略を練るうえで、韓国に会う時間は、余裕はないんだというようなぐらいだったのかもしれません。基本的に、現在アメリカの高官を含め、韓国は常にゼロ順位であると。もし入るとすれば、次は韓国だということを言っているので、大事なのは、韓国は、日本のメディアで一部報じられているように中国に気を使ってTPPに入らなかったとか、そういう話ではまったくなくて、韓国経済の優先順位を考えれば、TPPはそんなに急務ではなかったと。どちらかと言えば1回断っているのも事実ですから、2013年の段階では。その後、中国とのFTAを優先的にやっていったというもの事実なので、優先順位の面で、TPPがこんなに…」
反町キャスター
「金さん、逆に言うと、アメリカから見たら、その韓国の両方を見て、天秤にかけているところが気に入らないから、身ぎれいにしてから来なさいよと言われたのではないの?」
金准教授
「いえ、私は…」
反町キャスター
「そうと言っていますよ」
松村キャスター
「途中参加をするには条件があるということですね。みずほ総合研究所の菅原さんにお聞きしたところ、12か国の全ての合意が必要。さらに全ての既存ルールの受け入れが要求されるということで、朴さん、これはどうでしょう。問題ないですか?」
朴氏
「いや、問題ですよ。だって、1番アレなのは日本ですよね。日本との交渉ですよ。日本に一応頭を下げてというか、交渉の場になって、当然、日本側からは高いハードルの要求を突きつけられますよね?」
反町キャスター
「そうですかね」
朴氏
「いや、わからないけれども、当然そうなると思いますよ」
金准教授
「いや、そういう構図になりにくい。韓国がやめると言えば、それまでだし、日本がこういう無理なことを言ったから、韓国がやめるんだというメッセージが出たら、これは日本としても困る」
反町キャスター
「日本に政治問題と絡めたりしたら…」
金准教授
「日本がリーダーシップをとる。安倍総理が言ったように、そのために1か国でも、中国を含めて、この交渉で日本の役割というのは、もっと大局的に物事を判断していくと思います」
朴氏
「いや、それは、日本の役割はそうあるべきだと思いますよ。しかし、当の韓国の世論が反日で、日本に何でここまで譲歩しなければいけないんだという議論になったら」
反町キャスター
「でも、12か国全部、全ての合意というのは、つまり、他の国に、それぞれ形式的に、全部に話をして既に今回まとまったルールを別に日本と特別にという意味ではなくて、今回まとまったルールを飲みますよねと。手続き的にはそういうプロセスだと思うんですけれど、その議論を、今言ったことをやるので、もう韓国の国内においては、12か国を相手に参加依頼をすることは日本に頭を下げているような印象ととられるのですか?」
金准教授
「実際の交渉は韓国が1か国で臨むのではないです。現在、第2次グループとして参加の表明をしているのは、インドネシアとタイがあるんですね。ですから、ここは連携をしながら、このTPPの12か国と戦略を練る」
反町キャスター
「僕が聞きたいのは、韓国の国内です」
金准教授
「韓国の国内世論が云々ということで、疑心暗鬼になって言えば、これはもうきりがない話ですよね」
朴氏
「きりはないけれども、現実問題、メディアとしてはそこを切り口としてこうなるよと。そういう現在だと思います」
反町キャスター
「政権批判のツールとなってしまうと。TPPに参加を表明することが、メディアや野党の与党批判の材料になってしまうのですか?」
朴氏
「そこまでいかないと思いますけれど、経済的な政策決定の中に、現在残念ながら、日本カードで入ってきているわけではないですか。対日批判とかね。だから、そこの部分は本来、分けて考えなくてはいけないのですが、ナーバスというか、そこは難しいところですよ」
金准教授
「敢えて言うならば、農業など、産業別に相当、TPPの参加を、また、反対をしてくる動きはあります。そういった反対に、日本に有利な交渉の内容が重なることで、メディア的に感情としては日本に有利で、韓国に不利であると。昔、日本と韓国の経済的格差がすごく大きかった時代に日本の経済に乗っ取られる。つまり、日本の優秀な部品が韓国市場をまた乗っ取るのではないかというような議論は、これは韓国内ではあり得ますけれども、米韓FTAの時も相当な世論の反対を押し切って、ここは政府のリーダーシップで進めるしかない問題なので、韓国が入るという判断をしたからには、そこは大統領制の韓国では強力に進めていくということは言えると思います」
反町キャスター
「大統領の任期、あと2年ちょっとですよね。そこです。つまり、事実上のレームダックに入ってしまったのではないかと言う人すらいる中で、進めるパワーがあるかです」
金准教授
「それは違うんです。国際問題となるとむしろ決めて辞めるんです。そちらのパターンの方が多いです」
反町キャスター
「そちらのパターンの方が多い?」
金准教授
「はい」

中国経済 減速の現状
松村キャスター
「中国経済を経済指標を見てみますと、かげりがあると。どのように見ますか?」
津上氏
「想定の範囲内という。だから、言ったでしょうという感じがしますね。過去6年が投資頼みで、かさあげしてきたことが強すぎて、いつまでも続けられないので、反動がきたわけですけれど。この経済状況がグッと反転して、底打ちして、力強くというのを狙ってはいけないと思うんですね。暫く静養と。共産党の経済運営というのも、ニューノーマルという言葉がありましたけれども、基本的にはその方向をいっていると思います」

中国 参加の可能性
松村キャスター
「中国がTPPに参加する可能性は?」
津上氏
「すごくアバウトに言えば、ずっと一線を画して、参加しない道を歩み続けるというのは、必然は何もないです。長期的には合流というのはあり得るのではないのというのは、その通りだと思います。各論的に国有企業のところは障壁があると言われていますが、それ以上にeコマース、電子商取引とか、サーバーを中国の国内におけばとか、通信の遮断をしてはいけないとか、中国がこれは飲めないのではないのというのがいっぱい書いてあるというのが、最近になって発表されたのを見て、ありゃ、と思ったんですよね。各論、実務的な話としては2、3年のうちには入れるという話ではなさそうだという感じがしました」
反町キャスター
「TPPの21分野、中国にとって1番高いハードルになりそうなのはどれになりそうだと?」
津上氏
「政府調達、競争政策、電子商取引、国有企業、そういうところが脂っこい部分だと思います。国内制度に関わるところになればなるほど、これは相当もめそうだなと」

中国 覇権戦略の野望
反町キャスター
「RCEP(東アジア地域包括的経済連携)やAIIB(アジアインフラ投資銀行)、中国側の経済圏がどのくらい強くなるかというのは、中国は急ぐわけですよね?」
柯氏
「急ぐのですが、今日なぜかもう1つの議論がまったく出てきていないのはTPP、外交と安全保障上の、列島線の役割、中国は最も警戒しているところです」
津上氏
「地政学的なライバルの関係ということですよね。米中ですね。私はキャリアが通商交渉に近しいものですから、そちらの頭で考えると、不純物を通商の世界に持ち込むのはやめてよという感じですよ」
金准教授
「敢えて一言言えば、RCEPは緩いけれども、まとまりにくいのは、ポイントは日中ですよね。TPPはアメリカ主導。RCEPは中国主導で、(アジアの)国が参加する形で収まるのかというと、日中が妥協することができるかにかかっているけれど。日本政府にその意思があるのかにかかっていると」
柯氏
「TPPは、経済合理性以上に外交・安全保障上の役割というのが大きいというのは否定できない事実でして、建前としては言えないというのがありますけれど。中国としては最も警戒しているのは、そこですよ。経済的な列島線が敷かれた時、中国の企業、特に国有企業がそうですが、我々はどう戦うかというのが問われるわけですね」
反町キャスター
「北京にとっては、TPPに参加することは自国の安全保障を犠牲にするという感覚で見ているのですか?」
柯氏
「逆です。この段階で判断はくだせないのですが、仮に入るとすれば、むしろ列島線を突破する」
反町キャスター
「なるほど、TPPに参加することは攻めの判断になるんだ」
柯氏
「そうそう」

日中韓経済連携の行方
松村キャスター
「日中韓の連携をどのようにしていけばいいと?」
津上氏
「TPPが成立するということが決まりましたので、日本にとってはゲインなので、この勢いを駆って、日中韓3か国のFTAの具体的な交渉を進めようと。攻めに行くべきだと思いますね。作用、反作用とか、相互作用で動いていくものなので、そこらへんの力学を利用しながら、日中韓は進めてほしいですね。それでTPPといいバランスになっていくわけです」
柯氏
「日中韓は簡単には成立しないと思っていまして、経済の連携には、必ず政治的な信頼がなくてはいけませんから。問題なのは、日中と日韓ですね。この信頼性をどう構築していくか、あるいは土壌をどう醸成していくか。それが大きな問題として浮上してきているわけですから、安倍政権はそこまで思い切ってやれるかどうか。もう1つ重要なのは、かつては1980年代、1990年代、日本の政治、あるいは中国の政治において、長老がいて、現役のトップはいろいろな立場の問題があるけれど、長老達が調整役として相互訪問してくれて、何となく雰囲気をつくってくれた。現在は、それはなかなかいなくて、1番困っているでしょうね」

金慶珠 東海大学教養学部国際学科准教授の提言:『政熱経冷』
金准教授
「かつて中国と日本に感情的なぶつかりがあって、レアアースの輸出をする、しないとなった時に、政熱経冷と。政治というのは時に熱くなるけれど、経済というのは冷静に対応すべき課題であると。これにおいては韓国も含め、どの国も合意できるところだと思うんですね。現在、新しく秩序とか、ルールが変わりつつあるこの時期だからこそ、こういった姿勢はアメリカも含めて求められるのではないかと思います」

韓国経済アナリスト 朴英明氏の提言:『五十年の計』
朴氏
「私の友人で日本のグローバル企業のトップがいるんですけれども、その方が先日、シンガポールの首相と話された時、彼が日中のしこりについて尋ねたところ、時間でしか解決はしない、どの国も戦争した当事者は和解するのに数世代は要するとおっしゃられたわけですね。シンガポールは、急激な中国の減速については、定期的に国家戦略を見直しをするとおしゃっていた。なぜ50年かと、現在掲げている政策は、任期は5年だけれど、10年から15年先を見ようではないかと。50年後の国づくりを考えてやっているのだと。私は敢えて50年の計と書きました」

柯隆 富士通総研主席研究員の提言:『合従連衡』
柯氏
「地域連携というのは2つの結びつきがありまして、1つは価値観、イデオロギーの結びつき。冷戦時代そうでしたが、現在、冷戦は終わったので、利益の結びつき。TPPはまさにそうなのですが、利益が共有できるところは皆一緒になろうという考え方なのですが、安全保障とか、外交の問題もあるわけですから、安倍さんが昔言っていた価値観外交という匂いがするわけですから、合従連衡は複雑系のスキームになるのではないのかと思って、こう書きました」

現代中国研究家 津上俊哉氏の提言:『競争と協調』
津上氏
「競争と協調のバランスが大事だと。日本の中国に関する議論を聞いていると、対抗するとか、牽制するとか、ちょっとそちらに一辺倒になり過ぎていると思うんですね。そこのところのバランスをとらないと。たとえば、東南アジア、新幹線の売り込みや何だというと、日本が中国対抗、中国牽制みたいな話ばかりをすると、日本と付きあうのがしんどくなってくると思うんですね。結果的に日本は浮いてしまうと思うんです。日本もそこのところでバランスを考えないと、そういう意味で、バランスというのは、日本は安保法制も仕上げたし、TPPも実現したという大きな区切りですから、ここらへんでチェンジをしてもらうといいなと思います」