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2015年10月6日(火)
独VW不正問題の背景 企業体質とガバナンス

ゲスト

古屋圭司
自由民主党モータースポーツ振興議員連盟会長 衆議院議員
清水和夫
国際自動車ジャーナリスト
中西孝樹
ナカニシ自動車産業リサーチ代表

独フォルクスワーゲン不正問題 自動車専門家はどう見たか
秋元キャスター
「フォルクスワーゲンの不正問題。簡単に流れを振り返っていきたいと思います。先月3日、アメリカの環境保護局がドイツのフォルクスワーゲンに一部ディーゼル車が違法ソフトウェアを使って規制逃れをしていると通告し、フォルクスワーゲン側も認めました。それにもかかわらず自ら公表をしなかったため、18日に環境保護局がこの不正を発表しました。この不正にはおよそ2兆円の罰金が科せられると見られています。22日、フォルクスワーゲンは同じ型のエンジンを搭載した車両が世界で1100万台規模にのぼる可能性に言及し、翌23日にはウィンターコルン会長が辞意を表明しました。24日、ドイツの運輸大臣は、フォルクスワーゲンがヨーロッパでも同様の不正を認めたことを明らかにし、25日には、ドイツ国内で販売された不正車両はおよそ280万台にのぼると発表しました。また、同じ日にポルシェのミュラー氏がフォルクスワーゲンの新会長に就任し、新組織が発表されたということですけれど、清水さん、今回の不正問題をどのように見ていましたか?」
清水氏
「現在いろんなことが言われていますけれども、まずなぜやったかというよりも、何をやったかという、ファクトのところをしっかり見ていかないといけないと思うんですけれども、それにはディーゼルエンジン、あるいはガソリンエンジンもそうですけれども、特に窒素酸化物と言われているNOXですけれども、これが試乗では40倍も出てしまったということが言われていますけれども、実は基礎知識としてガソリンエンジンもNOXが出るんです。しかし、三元触媒という非常に優秀な掃除機みたいなものがついていますから、NOXをどんどん浄化をしていくんです。窒素と水に分解できるんですけれど。この三元触媒が実はディーゼルには使えないんです。ですから、ディーゼル車を、NOXの規制をアメリカではガソリンと同じレベル。ディーゼル車だからゆるいということは、アメリカの規制はないので、ガソリン車と同じレベルまで低減してくださいとなると、非常にアメリカではディーゼル車が難しかったんです。そこで今回の不正プログラムと言われているものが、試験を受ける時に室内の中に車を入れて、縛って動かないようにして、タイヤだけローラーで回して、それで排気ガスの量を調べるんですけど、そういう室内試験の時にだけ窒素酸化物等の有害物質をガンガン浄化できるような三元触媒と違った、たとえば、白金触媒とか、尿素SCRという触媒があるんですけれども、ガソリンエンジンとは違う触媒を使わなければいけないんです。この触媒と、もう1つは、これもちょっと難しいのですが、EGR(排気再循環)という装置で、排気ガスをもう1回シリンダーの中に入れちゃうんです。EGRをかけるとすごくNOXが低減できるんです。それで試験は受かるんですけれども。ところが、EGRをガンガン入れちゃうと、走らない、燃費は悪い。そこが二律背反してしまうんですね。ですから、ディーゼルエンジンはもともとトルクが大きい、力強い、あるいは燃費がいいというのが売りだったんですけれども、厳しい排ガス規制をクリアするために、たとえば、EGRのような装置をガンガンかけると、試験は受かるんですけれども、実際に市場に出したら、お客さんから文句が出ちゃうと。ですから、そこを試験の時だけ不正プログラムで浄化装置を働かせ、実際に町の中に出た時は浄化装置を無効にするプログラム。これが英語でディフィートデバイス(無効化機能)と言われているんです。無効化機能と日本語で訳されていますけれど、これはアメリカで、法令で違反ですね。特にカリフォルニア州は、昔から厳しく禁じていましたから、それをやってしまったというのが今回の経緯の発端です」
古屋議員
「ここまでやったというのは、未だに実は信じられない気持ちです。だから、それだけ自動車業界のグローバル競争というのがもう過激になってきているというところの、1つの象徴の、ちょっと信じられない事件だなと、そういう印象を持っています」

原因と背景を徹底分析
中西氏
「フォルクスワーゲンという会社は結構社会的な責任というか、環境とか、そういう工場の安全だとか、CSR(企業の社会的責任)という、社会的責任にすごく重きを置いている会社です。歴史的な背景はもともと公益会社からスタートしていますので。そういう意味でも、この会社がどうしてどういう経緯で、この不正行為になってしまったのか。正直言って、私にはその全容がつかめていない、真相がはっきりしていない段階ですね。ただ、事実は間違いなく不正行為はあったということで、今後事実関係をちゃんと見極めながら、会社として再生を果たしてもらいたい。とにかくこの問題は、本当にフォルクスワーゲン一企業の問題ではなくて、欧州経済にも影響を及ぼすでしょう。ユーザーの自動車から受ける便益です、そういったものにも大きな影響を受ける。あるいは地球の温暖化を本当に止めるだけのCO2の排出を抑制できるのかと。地球規模の問題だと。そう考えると本当に一企業だけの問題ではなくて、大きな社会問題を巻き起こしていると。そういう問題の発展があるのではないかと危惧しています」

違法ソフトの実態とは
秋元キャスター
「今回の不正問題について、フォルクスワーゲングループジャパンは、このようにコメントをしています。『フォルクスワーゲングループジャパンは、本社同様、今回の事態を非常に深刻に受け止めています。また、これまでフォルクスワーゲンに信頼を寄せていただいたお客様、日本の皆様には、多大なるご迷惑、ご心配をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます。ドイツ本社では、既に多くの改革が実行され、原因の追究につきましては、社内のみならず第三者機関とも協力をして、急ピッチで進め、適宜、情報を開示しています。フォルクスワーゲングループジャパンとしましては、本社が開示した、本件に関する全ての情報をできるだけはやく、日本の皆様にお伝えしていくことを第一に、情報収集に当たっています。弊社としても責任を持って、引き続き、これに対処してまいる所存でございますので、ご理解を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます』ということです。また、社内調査の進捗状況につきましては、対象となるエンジンがEA189型というディーゼルエンジンであったことが明らかになったことと、フォルクスワーゲン本社が技術的な解決方法及び対策を10月末までに関係当局に提示するとしています。また、不正のあったエンジンを搭載した車について、日本への輸入はなかったということです。基本的にはまだ情報収集の段階ということですけれど、そのフォルクスワーゲンが使ったという違法ソフトですけれども、これはフォルクスワーゲン独自が開発したものなのか、どうなのか。ここはどうですか?」
中西氏
「報道ベースになるんですけれども、2007年頃です。ドイツの同じサプライヤーであるボッシュが開発して、フォルクスワーゲンに納めているという事実があるようです。もともとボッシュというのはインジェクターフューエルとか、エンジンマネージメントのソフトを提供したので、そのソフトをもとにどういう味つけのエンジンにして、どういう走りにするのかというのは、今度は自動車メーカー側がいろいろそのソフトを今度、組み込んでいくわけです。その意味で言うと、ボッシュにしてみれば、様々なタイプのソフトウェアを提供して、それをフォルクスワーゲンが今回、そういうディフィートデバイス化するような形にして組み込んだと」
反町キャスター
「要するに、ボッシュはフォルクスワーゲンに対して排気ガスから窒素酸化物を取り除くシステムを提供したのか。それとも、必要ではない時、ないしは不正のため、そのシステムを稼働するようなプログラムを提供したのか。どういうことだったのでしょうか?」
中西氏
「一言でいうと、ボッシュはエンジンマネージメントソフトを提供しているわけです。エンジンマネージメントソフトは、最適な状況でエンジンが燃焼をして、浄化装置がちゃんと機能するようなコントロールをするソフトを提供しています。ですから、試験時にちゃんと解決する浄化機能があるわけです。それがちゃんとできるようなエンジンの回し方をする。それは正常な状態です。ところが、そのソフトの中には、たとえば、突然、エンジンが壊れるみたいな、異常に陥ったりだとか、あるいは触媒があたたまる前に、強力に使ってしまうと触媒が壊れてしまうので、持続性を高めるためにいったん浄化機能を切る。そういうソフトも実は入っているんです。それは一般のエンジンの中に当たり前のように入っていて、そういう機能があるわけです。ところが、そこにこいつは試験中だということを判定して、その時は普通に動かす。ところが、外に出て一般走行と判断した時には、その機能を切って、どちらかというと走りを楽しむ。そういう切り替えをするのがディフィートデバイスと言われているもので、何か悪魔の装置があるわけではなくて、実はエンジンの中にはそういうのを止める機能というものがあるんです。そういうものを含めてエンジンマネージメントソフトという…」
反町キャスター
「そうすると、ベンチテストの時だけ排ガス浄化機能を作動するようにつくったのは、ボッシュなのですか?フォルクスワーゲンなのですか?」
中西氏
「ボッシュです」
反町キャスター
「ボッシュがそういうソフトをつくったことに、そこに悪意があるのではないかと僕には思えます」
中西氏
「それは誤解です。あくまでも排ガスをクリアできる、そういうエンジンの機能をボッシュがエンジンマネージメントシステムとして、いろんな補機は必要ですけれども、そういうソフトをつくって提供しているわけで、これには何の不正もないわけだし、悪もないわけです。エンジンにはある時に突然、排ガス機能を止めなければいけないという異常時とかもありますから」
反町キャスター
「異常時はわかります。今回、僕らが聞いている限りでは、たとえば、ハンドルが動かない状態、ないしは低速でずっと同じ速度で走っている時は、その状況をコンピューターが感知して、検知して、その時点でエンジン浄化装置を作動させるようにプログラムができている。これは悪質だと、普通は思います。違うのですか?」
中西氏
「解釈の問題もあるんですけれども、要するに、フォルクスワーゲンがつくったディーゼル車というのは、規制にマッチしている浄化機能を持っているわけです」
反町キャスター
「その場合は燃費とパワーがダウンするんでしょう?」
中西氏
「犠牲になります。ですので、一般の走行時に、いわゆる排ガス浄化機能を切るわけです。それで結果としてより走りが高まるようなエンジンのマネジメントをすると。悪用をした部分はフォルクスワーゲンです」
古屋議員
「実際にこういうエンジンのマネジメントシステム。ボッシュは、ディーゼルでも、いわゆるスーパークリーンディーゼル。コモンレール式の、これは1番研究をしてやっている。だから、あらゆるシステムのノウハウがあるんですね。だから、それぞれの会社に対し、うちらにこういうパッケージングがあります、こういうソフトもありますと、全部提供をするわけです。今度はメルセデスも、BMWもそう言ったディフィートデバイスというのは、自分達は使っていない、採用していないと。提供をされているのはボッシュですから。と言うのをはっきりCEO(最高経営責任者)が宣言をしているんです。だから、結果としてフォルクスワーゲンはそのシステムを採用したということです。いろんな組み合わせをすることによって、先ほど、中西さんが言ったように、別に合法的な組み合わせというのは可能です。私は技術的なことは承知していませんけれど、そう視聴者の皆さんは考えていただければいいと思います」
反町キャスター
「先ほどから同じ質問を繰り返しているんですけれど、おわかりになりますか?」
清水氏
「つくったのはボッシュかもしれませんけれども、自動車の最終責任はあくまでも自動車メーカーです。ですから、自動車メーカーがこういう仕様で、いついつまでに、いくらでコンピューターシステムをつくってくださいと、サプライヤーに投げるわけです。そういう意味では、ボッシュは言われたことをやり、その最終責任は自動車メーカーですから。その中で、ただ、ドイツの場合はボッシュの方がどちらかというと、ディーゼルの経験が多いし、非常に高圧燃料噴射とか、全部ボッシュが、システム全体でコンピュータプログラムだけではなく、インジェクターとか、全部、ディーゼルのユニット全体のビジネスをやっていますから。でも、ボッシュがこういうやり方があると言ったとも思えないし。もともとディフィートデバイスは、ヨーロッパは2000年頃から禁止するんですけれど、1990年代は禁止する法律がなかったんです。ですから、どんどん世界各国の規制が難しくなってくる時にどうしてもそれをやらざるを得なかったというのは自動車メーカー側にもあったと思います」
反町キャスター
「現在の話だとその責任、はっきり言うとどちらが悪いかという話です。そこははっきりしないのですか?」
清水氏
「悪いのは自動車メーカーです。エアバックの問題も、タカタよりも最終責任は自動車メーカーにあります」
反町キャスター
「製造者責任という意味で言っているのですか?」
清水氏
「そうです」
反町キャスター
「パーツを提供する側というのは、あくまでそれが最終的にどんな悪意を持って使われるかどうかは、責任は負わない?」
清水氏
「と言うか、自動車メーカーがどういうプログラムかというのは、全部わかっているわけですから。わかったうえで使っているわけですから。仮にそこに不正プログラムが入っていたとしたら、それを使った自動車メーカーに責任があるんです」
反町キャスター
「ボッシュがこのプログラムを使えば『ベンチテストではセーフです。その代わり路上に出たらまき散らします、そういうソフトです』と説明をして、そういう意図でつくったとしても、ボッシュには責任は問われずに、使ったフォルクスワーゲンが悪いとなるのですか?」
清水氏
「そのへんはあとでロイヤーがどういう判断をするのかわからないですけれども、倫理的にはそういうものをつくってしまうボッシュにも何らかの責任が…」
反町キャスター
「エアバックの時だってタカタの責任がと問われているではないですか。ボッシュには何でいかないのですか?」
清水氏
「これからいくと思います」
中西氏
「実験用につくったソフトと報道にあります。ちょっと事実関係の確認ができていませんが」
反町キャスター
「それをフォルクスワーゲンは一般車に搭載した?」
清水氏
「実験用につくったので、ボッシュは、フォルクスワーゲンに対し、これは量産車には使ってはいけませんという内部文書が、フォルクスワーゲン側から見つかっているんです。ですから、そのへんがまだファクトが出てきていないので」
秋元キャスター
「フォルクスワーゲンは過去10年間で、販売台数をおよそ倍に伸ばしていて、首位を争うトヨタとゼネラルモーターズに肉迫し、今年の上半期には初めて首位に立ちました。こうした中、今回の不正が明るみになったわけですけれど、順調に販売台数を伸ばしていたわけですね。そういった状況の中で、清水さん、なぜフォルクスワーゲンは不正を行ってしまったのか?」
清水氏
「なぜと言うのは本当によくわからない。もう少しファクトが出てきていろんなことがわからないと、なぜやったのかというのは。あまりにもトップダウンだったということと、コスト。ゴルフというクラスで見れば、他のメーカーが、たとえば、メルセデス、BMWがやっていない高い車ですから。ゴルフは日本では250万円から350万円ぐらいの間です。ですから、メルセデス、BMWは、そこにたっぷりコストをかけられると。これも私見ですけれど。そう言った意味で、ゴルフクラスというのは非常に価格的に厳しかったというのがあったと思うんです」
反町キャスター
「そうするとお金をかけずに環境基準をクリアし、しかも、アメリカで、要するに、クリーンディーゼルとして売り出すためにはこの方法しかなかった。そういう理解でよろしいですか?」
清水氏
「技術はある会社ですけれども、もう少しコストを…」
反町キャスター
「技術がある会社だったらやらないでしょう?」
中西氏
「古いエンジンですから。最新型ではないです。ユーロファイブだけに適用したエンジンですので、これが導入されたのが2008年です。ですから、開発していたのが2005年とか、2006年、そういう時期に開発をしていたと。ところが、カリフォルニアのNOXの規制がいちはやく非常に厳しい水準、確か、2004年ぐらいから0.04グラムになるんです。ユーロファイブから見るとかなり厳しい。その当時のユーロファイブから見ると、たぶん、5分の1ぐらいの水準が要求されたので、技術的にあの当時は厳しかったと思います。ですから、NOXをクリアしながらフォルクスワーゲンの特徴でもある走りの良さみたいなものを両立するのが1番厳しい時期のエンジンだということは間違いないです。現在のユーロシックス対応の新型エンジンは、現在の段階ではフォルクスワーゲンは問題ないと言っているわけで、技術は進化しているわけです。ですから、あの当時のNOXの問題を考えた時に、何らかの理由で、何らかの彼らのジャスティフィケーションがあって、不正なソフトを用いて、こういった検査と実走行のディスクレパンシーと彼らは呼ぶんですけれども、そういった差を生むエンジンをつくったというのが背景だと思います。皆さんが言われるのは、プリウスが、非常にアメリカで売れていた時期ですから、プリウスに勝つような、そういうエンジンの車をクリーンディーゼルとして打ち出したいというのがあったんです。あの当時だと」
清水氏
「1997年にプリウスが出た時も、隕石を落としたようなショックで、こんな車もあるのかということで、打倒プリウスに、ずっとフォルクスワーゲンは、プリウスを打ち負かす。それこそディフィートすることが…」
反町キャスター
「それは、特にアメリカ市場においてということですか?」
清水氏
「アメリカだけではなく、そういうニュースは全世界に高まりますから。つまり、環境技術で、ハイブリットVSディーゼルみたいな構造が2000年以降、ずっと起きていたんです。ですから、それに対して、ヨーロッパは、特にフォルクスワーゲンはディーゼル技術で、ガソリンハイブリットを打ち負かして、燃費世界一。ただ、そのためには排ガスがディーゼルの方が厳しいですから、そこで何らのトリックを使ってしまったと」
古屋議員
「フォルクスワーゲンはこれだけ現在グッと落ちました。実は苦戦をしているのはアメリカです。4%ぐらいしかないです」
反町キャスター
「シェア?」
古屋議員
「そうです。実はBMWとか、ベンツは2%ぐらいですけれども、先ほど、清水さんがおっしゃったように、値段が全然違うんです。そもそもBMWもベンツも200万台ぐらいです、せいぜい生産台数は。それがフォルクスワーゲンは1000万台。だから、アメリカにもかかわらず4%しかないというのは、アメリカ市場に風穴を開ければ、何とかなるだろうと。こういうようなことがたぶんあったと。これは経営戦略上あっても不思議ではないですよね」
反町キャスター
「ディーゼルエンジンで環境基準をパスするためには、たとえば、メルセデスやトヨタはつくっているかもしれませんが、その代わり高い車があると。大衆車をマーケットとしているフォルクスワーゲンが使えるディーゼルエンジンをこれからも提供し続けることができるかどうか。そこはどう見ていますか?」
中西氏
「ハードルは、これは規制の置き方にもよると思うんですけれども、ハードルが高くなっているんです。今回の問題であぶり出したように、1つの本質というのは、小さなエンジンで規制を、排気ガスも、燃費も、走りも全部をこなすことがかなり難しいということが少し見えたと思います。たとえば、アメリカでもアウディの大きなエンジンは問題を起こしていないわけです。メルセデスもおそらく、大きなエンジンは中心としているのであれば、それを両立させることはそれほど困難でなかったかもしれないと。であれば、小さなものでやっていくということはかなりハードルが高くなっていると」
反町キャスター
「コストとの兼ねあいという意味ですね?基本的には」
中西氏
「コスト、技術、両面です。だって、いわゆるトレードオフであるもの、両方、トレードオフしていかなければならない。そういう技術的に、小さなエンジンというのは、負担が大きいということだと思います。ですから、今後の規制がどういう方向に向かっていくのかに応じて、比較的大きな車が売れるメーカーの方がそういった規制対応は楽で、小さな車を中心に売るメーカーの方が十字架を背負うという、こういう構造変化をつくるきっかけになる可能性があると思います」
反町キャスター
「古屋さん、日本の自動車メーカーもディーゼルでがんばっている会社があります。今回のフォルクスワーゲンのこういうことが日本のディーゼルエンジン業界に対して、何かダメージを与えるのではないかというのはどうですか?」
古屋議員
「それは非常に重要な指摘で、今度、ディーゼルが全て悪者だというと、一言でいうと風評被害です、これは。たとえば、ベンツやBMWが、我々はデバイスを使っていませんということをパッと言ったのは、それを懸念していたのでしょう。だから言った。あるいはプジョーとか、シトロエンも5割近くがディーゼル車ですから。日本で見れば、マツダが現在ディーゼル。現在、日本はかつて石原都知事がNOXをこうやってやった時に、あれは旧型のディーゼルだから、あれだけ出たんですけれども。新しいタイプはまったく出なくなったんですけれども、それで50万台ぐらいあったディーゼル車が2万台とかガタ落ちして、現在マツダががんばって10万台ぐらいの登録にはなってきていると思うんですけれども、本当にディーゼルは悪い、という風評被害というのは絶対食い止めないといけないです」

経営体制と企業体質
秋元キャスター
「フォルクスワーゲンの現在の経営体制はどうなっているのでしょうか?」
中西氏
「まず特殊な会社の成り立ちがあるということでフォルクスワーゲンという会社はもともとはビートルを作る公益会社であった。それがその後、民営化されて以降、現在の株主の持ち株体制になっている。まずニーダーザクセン州はフォルクスワーゲンが本社のある州で、そこが20%を持っていて、ずっと政治的な支配力を非常に強くしているし、かつフォルクスワーゲンとドイツの政治との非常に強いつながりを持ち続けているというのが1つのポイントとなっている。実はもともとビートルの設計をしたのが有名なフェルディナント・ポルシェ博士ですね。その一族が、持ち株会社、基本的に100%株を支配しています。こちらの持ち株会社が50%以上の出資比率で、フォルクスワーゲンの支配をしている。つまり、実質的にポルシェ家とピエヒ家がポルシェ博士の末裔ですが、フォルクスワーゲンという会社を所有している、そういう構図になっています。ですから、そう言う意味においてはヨーロッパに、比較的会社が、いわゆる優先株みたいなものを使いながら、会社を所有するケースが多い。このへんは実は株を所有していないが君臨している豊田家とトヨタ自動車の関係とは少し違うところですね。ポイントはこのピエヒ家がここ暫くは非常にその影響力が非常に強くて、ピエヒ家のフェルディナント・ピエヒさん、非常に有名な方なので皆さんご存知の方も多いと思うんですけれども、彼が実に22年間実質的に独裁者として会社をかなり独善的に経営してきたと。そういう歴史を持っています。ですから、その中ですごく厳しい結果主義みたいなところで、社員は若干その恐怖政治の中で怯えて、結果を出さなければいけない、そういう意識を持ち続けてきた。そういうところがあります」
中西氏
「結果主義が非常に厳しかったのは間違いなくて、非常に厳しい信賞必罰な人事があったことも事実ですね。結果を出したいという想いは間違いなく皆のプレッシャーであったということは、これは言って差し支えないと思いますね」
清水氏
「フェルディナント・ピエヒさん、ウォルフガング・ポルシェさんがジェネーブに行った時に、日本食の、鉄板焼き屋さんで、ポルシェ家の2人が食事しているのを、同じレストランにいたことがあるのですが、あの時から仲良くなったり、内輪もめをしたりと話は聞こえてきたのですが、1970年代にレーシングカーをつくったり、エンジニアとしては天才的なエンジニアですね。女系の方がおじいさんのフェルディナント・ポルシェ博士の1番DNAを色濃く受け継いだのが現在のピエヒ会長」
古屋議員
「フォルクスワーゲンは日本でも人気のある車種ですよね。それがこういう信じられない事件を起こしてしまったということは、私も実はフォルクスワーゲンを家族で乗っていたことがあります。ユーザーのきめ細かい対応をしているかというと、具体例を申し上げますね。私は非常にマニュアルミッションが好きです。車好きですから。うちの家内も実はマニュアルミッションが好き。日本車でほとんどマニュアルミッションがなくなって、当時ゴルフのGTIというマニュアルミッションがあったので、それを買って、乗っていた。5年乗ってリースの時期が切れたので、今度は新しいものをまた買い換えようとした瞬間に、ゴルフのGTIにマニュアルミッションがなくなっちゃったんですよ。だから、それでゴルフから離れましてね。そういう細かいところまで配慮していると、コスト高になるからやらない。そういうところに結果至上主義か何かの影響が、そんなに大きなマーケットではない日本にまで影響したのかなということだと思いますね。他のメーカーは、マニュアルミッションをつくっていますから」
反町キャスター
「成り立ちとして公益企業ということでしたが、公益を考えるというのはいい意味でなのか、政府と癒着しているという意味なのか?」
中西氏
「フォルクスワーゲンはもともと国民車をつくる会社としての成り立ちがあるという背景があると。現在でもニーダーザクセン州が20%の株主である。大株主です。ですから、いわゆる地元との関係、地域社会との関係、現在はそれが政治との強い結びつきの意識を持っている会社であることは間違いなくて、フォルクスワーゲンというのはドイツの国家を支えている、ドイツというのは自動車に対する経済の依存度が日本以上に高いんですけれども、フォルクスワーゲンイコール国家なりみたいなそういう意味あいがあるんですね」

自動車産業…今後の行方
秋元キャスター
「今後フォルクスワーゲンは会社としてどうなってしまうのでしょうか?」
中西氏
「それなりの影響を受けることは間違いない。まずは販売台数に直接的な影響が出てくる可能性があります。2つ目には、法的な対応ということで巨額な制裁金。アメリカだけで最大2兆円と言われているが、これはあくまで最大ということですので、たとえば、2014年にGM(ゼネラルモーターズ)の事故がありました。リコール問題ですね。あれも当時は最大3兆円と言われていましたけれど、実際は900億円で和解が成立していますので、あくまでもあれは最大という意味ですね。ただ、世界全部を考えていけば、そんなに小さな金額で終わるとは思えない。非常に重大な財務的問題を抱えることになる。はやく信頼を回復し、販売を正常化し、財務体質を改善していくことを今後目指していかないとダメですね」
反町キャスター
「自助努力によって企業体質は改善できるという話で話していますよね?なぜそこまで期待できるのですか?」
中西氏
「フォルクスワーゲンは自分で変わろうとしていたと思います。たとえば、フェルディナント・ピエヒさんは今年4月に辞任に追い込まれている。ピエヒさんはアメリカの事業がうまくいっていない、かつ買収もした拡大路線をとりたいと。それに対して今回辞任した社長のウィンターコルンさんはもう少し足場を固めたいと。この2つが対立した。当然この戦いはピエヒさんが勝つと思っていたわけですけれど、結果としてピエヒさんのあまりにも独善的なやり方に対して監査役会が同意しなかったんです。ですから、それで驚きの、本当に追い出されるような形で会社を追われまして、フォルクスワーゲンもこの経営の近代化、ガバナンスの公正化をやっていこうというところにまさに一歩踏み出そうと。新しい監査役会長を選任して、どうのこうのと、実は1週間前の出来事。ニュースが出てきたのはそのタイミングです。ですから、フォルクスワーゲンの中には近代的な経営、あるいはガバナンスをちゃんと管理する。コンプライアンス意識もきちんとやっていこうという体制をまさにつくろうとしていた。そういった段階でこういう問題が起こっている。危機というのは会社を大きく進化させるものだと思っていますので、今回、新しく社長に上がったミュラーさんですか、本当にドイツで言えば見習い工から叩き上げてきた苦労人であるし、非常に調整が上手な方だとも聞いています。彼を中心に一気に膿を出して近代化してくチャンスでありますので、もちろん、不正は許されるものではないですけれども、私は企業として十分再生できるチャンスがあると強く確信していますね」

古屋圭司 自由民主党モータースポーツ振興議員連盟会長の提言:『フェアな競争力で活き残る!!』
古屋議員
「自動車産業に限らず、世界でグローバルな戦いを挑んでいる企業は、フェアな競争で活き残る。ただ単に生き残るのではなく活力をもって活き残っていくことが結果として業界を推進し、経済発展にもつながる。そういう意味でフェアな競争力で活き残る」

国際自動車ジャーナリスト 清水和夫氏の提言:『本当にいいクルマとはなんだろうか』
清水氏
「最近、安全環境基準がどんどん厳しくなっていくと自動車メーカーも厳しい基準をクリアするのが大変ですけれど。本当にいい車とは何なんなのだろうかと、世界中の自動車産業がもう1回、原点に立ち返って考え直してほしいと思うんですね。そういう意味では、現実の走りの中でのエミッションをやはり途中でチェックしないと、最初の試験問題だけ通しても現実的ではないなと。そこは教訓だなと思います」

中西孝樹 ナカニシ自動車産業リサーチ代表の提言:『持続的成長』
中西氏
「これは企業だけではなくて、社会も同じだと思っています。たとえば、トヨタ自動車の品質問題も結果として身の丈を超えた成長があった。それを反省して、トヨタは非常に立派な会社になった。フォルクスワーゲンにとってみても再び自分達にとって持続的に成長できる力は何なのかを考え直す必要がある。もう1つ大きな問題になっているのは、環境というものはそう簡単に実現できるものではない。ただ我々は正義としてそれに立ち向かっていかなければいけない。ところが、ディーゼルを悪いエンジンとして殺してしまうと、ガソリンに跳ね返ってくる話で、ディーゼルとガソリンは石油精製品の連産品ですので、適切な需給バランスを保ちながら、社会の究極的には、我々はCO2を削減していく低酸素社会をつくらないといけない。持続的な社会をつくる技術はどういうものかを考えていく時期なのだろうと思っています」