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2015年9月30日(水)
安倍外交『新章』検証 国連総会と世界の行方

ゲスト

岡本行夫
外交評論家
鈴木佑司
法政大学名誉教授(前半)
内藤正典
同志社大学大学院教授(後半)

検証…安倍首相“国連外交” 評価と注目点は
秋元キャスター
「安倍総理は26日にニューヨークを訪れて今日まで精力的な外交を展開しています。日程ですが安倍総理到着後、すぐ行われました、インド、ドイツ、ブラジルの4か国の首脳会議への出席を皮切りに、各国首脳と会談を行いまして、28日には韓国の朴槿恵大統領と立ち話をする機会もありました。昨日は、ロシアのプーチン大統領と首脳会談とか、日・太平洋島嶼国首脳会合に出席しています。今日は、一般討論演説や、アメリカのバイデン副大統領との会談を行っています。安倍総理にとっては新しい安保関連法成立後、初めての外遊ということになったわけですけれども、岡本さん、今回の国連外交、どこに注目をされますか?」
岡本氏
「1つは、イランのロウハニ大統領、そのリストには出ていませんでしたけれど、ロシアのプーチン大統領ですね。アメリカのバイデン副大統領はどちらが持ちかけた会談かというのに、私は非常に興味がありますね。日本側が要請したのか、それともアメリカ側がセットしてきたのか。アメリカがセットしてきたとすれば、それは今度の安保法制を成立させた安倍首相に対し、勇気づけ、アメリカとしての評価を示すという意味があるのでしょう。同盟基盤をもっと固めるという。その他、朴槿恵大統領と立ち話というのはかなり意味深長です。これまでも会議の出席者の中身を見ますと、まったくマスコミのいないところで2人で和やかに話をしたというケースがあるらしいです。だけれども、朴槿恵大統領の方がそういうイメージが表に出ることを極度に嫌ってきたと。ですから、韓国国民向けには日本に対してきつい姿勢を示し続けなければいけない。ただ、今度はそれを許したというか、むしろ公の場でやったわけです。と言うことは朴槿恵大統領もさすがに日本に対してあまりにも強硬な姿勢を維持できなくなってきたということを、ご自分でも自覚するようになってきたのかなということですか」
鈴木名誉教授
「安倍さんは国連でも、他の首脳との会談でも、実に伝統的安全保障ではなく、集団的自衛権の問題ではなくて、非伝統的なPKO活動をしっかりやります、難民支援援助をしますよ、という非伝統的安全保障で、日本は国際貢献をしっかりしますと。こう演説をされた。いったい国内で安保法制でがんばった理由は何だったのかと。この両方をきちんと説明をしないと、バランスのとれた安全保障政策を説明したことにはならない。安倍さんの心の中にある日本という国は、ある意味でいうと、普通の国ではやっていけない、大国として世界社会と関わっていくという、一種の宿命みたいなものを持っているという認識はあるのではないかと思うんですね。もともと長州藩だった人はそういう考え方が多いと思うんですけれども、お爺さんも、大国として日本は世界の中である役割を果たしていくと。従って、その大国らしい大国として、ブラジル、インド、ドイツ、日本と、4つで安保改革をやる。その意味で読み取っていくとすると今回、安全保障はアメリカと、伝統的でない非安全保障は国連でと。何となく日米基軸、国連中心、アジア重視という伝統的な日本の、岡本さんが最も長く関わられた日本の伝統的外交政策を表明したのかなと」
反町キャスター
「新味がないということになってしまいますね」
鈴木名誉教授
「新味はないけれども、最もオーソドックスな。思ったほど右寄りのナショナリズムではなくて、意外に日本の中道的な外交政策を考えているのかなということを感じました」
岡本氏
「鈴木さんが言われたように、日本は大国としてやっていくんだと。その最初の関門としてというか、何よりもの証として、国連の常任理事国になるんだという、これはつまずく可能性があると思います。日本がこの前、安保理常任理事国になろうと思って、必死のキャンペーンを世界中でやったということがありました。その時は、日本が国連の安保理常任理事国になる、拒否権は持たなくても。そのために国連憲章の改正が必要ですから共同提案国がいくつかないといけないと。ブラジルとインドはいるんだけれど、それだけでは足りない。だから、4か国がそれぞれ地元で、出身地域で応援団を集めましょうということになったんです。日本もアジア諸国から共同提案国になってほしいと。その結果、どこが手を挙げてくれましたか。アフガニスタンとブータンとモルジブと、この3つだけです。日本の共同提案国になってくれたのは。では、その時、2005年、2006年の時代(と比べて)、現在の方が、日本がはるかに仮に信頼を勝ち得て、アジア諸国が皆日本のために共同提案国になってくれるか。必ずしもそういう状況ではないし、そうするとまた惨めな失敗をするということが、現実のものとしてあるのであれば、あまり期待感を高めると、そのあとの跳ね返り、失望が大きいですから。そこを慎重にすべきだと思いますね」

ハイデン副大統領との会談
秋元キャスター
「今回、オバマ大統領との首脳会談は行われなかったんですけれども、今日バイデン副大統領との会談が行われました。その会談の時の内容ですけれど、日本で安全保障関連法案が成立したことについて、安倍総理は、成立によって日本の平和はより確かなものになる。地域や国際社会の平和のために、日米で一層緊密に連携をしたい、と述べたのに対して、バイデン氏は、日米同盟強化に向け努力を続けていることに感謝すると述べました」
反町キャスター
「感謝するとまで言っておきながらも、たとえば、我々のような番組で議論をした時に、何か有事があって、アメリカ軍が何らかの対応をする時に、後方支援の要請みたいな、こういうことにはなかなかならないという意味?」
岡本氏
「かえって安倍首相は、自衛隊の運用については慎重にならざるを得ないと思うんです、国内政治を考えれば」
反町キャスター
「法律を通して、慎重になっている?」
岡本氏
「そう。これで自衛隊を紛争地域に遣った、危険地域に遣った。その結果、自衛隊の中に万一にも犠牲者が出てしまったら、これは本当に日本中、蜂の巣を突いたような騒ぎになりますよ。それみたことかと。あんな暴虐な法律を通したから、こういうことになるんだと。そうすると、来年の7月の参議院選挙は、安倍さんにとって最も重要な政治プログラムですから、そこが危なくなる。ですから、少なくとも来年7月末までは低姿勢でいくと思います。低姿勢という意味は、おとなしい政策の運用でいくと思います」
鈴木名誉教授
「バイデンさんとの会議で、安保法制について、堂々と議論したと報道をされていますので、日米の枠で止めておくということが、アメリカが考えていることなのかと。つまり、日米連携はやがてオーストラリア、ニュージーランド、ASEAN(東南アジア諸国連合)と。順番に、この日米を基軸とした、広い意味でいうと安全保障ネットワークをつくっていくという、その中核に日本はきた。でも、そこにいてね、ということです、たぶん。もう1つ、これは、岡本さんにも聞いてみたいと思うんですけれど、日米が固くなったぞと。つまり、集団的自衛権というのは自国を守るのではなくて、相手を守るわけですから、他国を。これができるとなったら、下手したら、尖閣列島で日本の側が自信を持ち過ぎて、中国の船に撃ってしまう危険性が起こった時に、アメリカがどう考えるかというと、日本の戦争に巻き込まれる危険性があると。これをいったいどうやって防ぐかということは、今度はアメリカの課題になると思うんです」
反町キャスター
「アメリカが巻き込まれることを心配する?」
鈴木名誉教授
「当たり前ではないですか。日本と中国が接触事故を起こした時に、アメリカは集団的自衛権で、日本に対して何もしないというわけにはいかないと思うんです。絶対に行かないです。と言うことは、安倍さんは慎重にならざるを得なくなっているというか、まったくしません。つまり、日中間のリスクマネジメントやリスクが、そもそも起こりにくくなるという工夫を徹底的にしない限り、アメリカがやむを得ず巻き込まれるという事態を避ける方法はないわけです。もしアメリカが知らない、あなたが自分でやれと言ったら、日米同盟は何だと。べらぼうなスイングが起こってしまいます。そういう意味で言うと、変に理解を持っていって、ややタカ派的な人達がイケイケ、ドンドンで、もう大丈夫だ、反撃しろと。こうなることを最も警戒をしなければいけない時期にきているのではないだろうかと。日米とも」

南シナ海めぐる攻防
秋元キャスター
「安倍総理の訪米直前に、アメリカのオバマ大統領と中国の習近平国家主席による米中首脳会談が行われています。その時の共同記者会見の発言ですけれども、中国が滑走路を建設するなどの軍事化を進めている南シナ海の問題では、オバマ大統領は重大な懸念を示したのに対しまして、習近平国家主席は南シナ海の諸島は中国固有の領土としまして、軍事化の意図は否定しました。その他にもサイバー問題でも意見が対立しています。また、習近平国家主席は、あらためて新たな形の大国関係の構築を訴えたのですが、オバマ大統領は、両国の立場が違う問題に率直に対処すると答えまして、両国の溝の深さがあらためて浮彫になったわけですけれども」
鈴木名誉教授
「思い出してみると、中国は孤立、自立性共産主義が1980年代にガラリと変わって、市場経済を導入し、ある面でいうと資本主義社会の中で生き残ると、大転換をしたわけです。それを応援し、豊かな社会にすることが、中国が孤立することをやめさせ、中国自ら国際社会の一員になってくるだろうという期待がアメリカにもあった。もちろん、日本にもあったと思うんです。高度成長をしてみたら、すごく経済格差が、独裁がすごく強くなってしまう。民主主義が後退をする。こういう、いわば権威主義支配体制の典型のような格好ができてくる。この時に、経済が発展しなくなったら、政治もおかしくなるというのが、他の権威主義支配体制の共通の特徴です。そういう意味で、中国がこれを突破して、中進国から先進国に動くための、様々な社会政策や、あるいは民主化というものをとるということがもしあれば、アメリカはこんなに厳しい対応はしなかったと思うんです。しかし、中国がとった政策はますます反民主主義になっていくし国際社会のルールを無視するし、ある面でいうと国内社会の大変な格差ができる。このことが実は世界大の問題になっているということをアメリカは認識せざるを得なかった。我々も認識せざるを得なくなってきた。というのが中国に対する警戒心が強くなっていることではないかなと。今回の米中会談というのは、あらゆる点で、最も中国にとって苦かった首脳会談ではなかっただろうかと。ほとんど合意らしい合意はできなかったし、中国の言い分は通らなかったし、説得力も経済が悪くなっていたのでなかったし、経済界すら、アメリカの経済界ですら、背中を向けてしまう」
反町キャスター
「(ジャンボジェット機)300機を5兆円は効果ないですか?」
鈴木名誉教授
「ないと思います。だって、スケールがばかでかいではないですか、現在、中国自身のスケールが」
岡本氏
「サイバー攻撃というのが、これは効いています。アメリカが調査したところでは、人民解放軍には61398というナンバーのついた部隊があって、2000人から3000人のハッカー達が人民解放軍から選抜されて、それで集中的にアメリカの企業を攻撃している。習近平主席がいつも言うのは、中国も被害者だと。それでこの間、アメリカの情報関係者とこんな話をしていたら、彼は笑ってしまうんです。中国は、自分達が攻撃をされているだろうと。そう言うだろうと。なぜかと言うと、俺達のところへとにかくウィルスがどんどんくると、情報を盗もうとしているやつ。どこからきているんだと言って、こちらから追跡をしていくと、それは全部、中国のコンピューターにいってしまうんだと。だから、それをもって攻撃すると、自分達を攻撃すると言っているんだと。要するに、これまではハッカーがやってくるとか、せいぜいもう少し大きな組織が、アメリカの企業を狙いうちする。ところが、国家が企業を攻撃してくる時には、これは企業側としてはどんなに防壁を高くしてもダメだと。中国は総力を挙げて、アメリカの技術を、産業技術を盗み出しにきているということで、それは怒り心頭に走っているんです、アメリカの産業界は。何か彼らが議会に陳情をするというようなことを通じて、アメリカの中国に対する地合いを、非常に悪くしています」

今後の日米・日中関係は
反町キャスター
「もう1つテーマとして新たな形の大国関係。新型大国間関係は習近平さん、2013年でしたか、カリフォルニアでオバマ大統領に言って、この時はどうだったのかという感じもあるんですけれど、この言葉にこだわる中国の狙い。アメリカはその言葉に対して、どう受け止め、どう反応をしたのか。岡本さん、どう見ていますか?」
岡本氏
「新興国の中国と、これまでの大国のアメリカが衝突しなくても、両者は共存をしていけるのではないかと。それぐらい太平洋地域は広いではないですか。いわば、それがレトリックというか、表現のあやだと思っていたんです。ところが、いろいろと中国の軍事関係者が言うのはどうも彼らが意味するところは太平洋分割論だと。コンドミニアム論と言いますけれども、東半分はアメリカが獲っていいと。自分達は、西半分を貰うと。少なくとも第二列島線、東京から伊豆諸島を通って、小笠原諸島を通って、グアム、サイパンを通って、パプアニューギニアに至る、日本の前の太平洋地域ですね。そこは中国の影響下に置くということで、接近拒否能力、つまり、アメリカの艦船も敵意をもって接近することができないぐらい、中国がそこで実力を持つんだという、この戦略を彼らが着々と進めている。そういうことを考えあわせると、新しい、新型の大国関係というのは、要するに、西太平洋地域で自分達が自由にやる。それをアメリカが黙って見ていろと。こういう意味かと、アメリカは現在、気づき始めているんです」
反町キャスター
「そうすると、当然この話というのは、中国側から何回も新しい関係と言っても、アメリカはずっとノーと言い続けると。こういうことになるわけですか?」
岡本氏
「アメリカは警戒感を持っているでしょう」
反町キャスター
「鈴木さんはいかがですか。この新しい大国関係。中国の提案を、どう見ていますか?」
鈴木名誉教授
「私は、アメリカが、中国に対して示す態度が中国の政権の安定に非常に深く関係をしていると思うわけです。つまり、新型大国関係でも何でもいいですけれども、中国を受け入れ、中国に有利なような形での協力をしてくれ続けることが、現在の共産党政権にとってみると、イデオロギー的正当性を失いつつあるし、国内的な様々な問題を抱えている時に、アメリカが受け入れてくれていることがどんなに共産党政権にとって重要なことなのか。つまり、日本を叩けばいいと、反日運動で。何とか共産党の正当性を確保していこうという伝統的やり方ではもはや中国の国民は納得しない。それどころか、現実にすさまじい格差があり、これだけの汚職もあり、これだけの共産党の、ある面で信頼性を失っている時に何が正当性というものを強固にしていくのだろうか。経済成長、これはアメリカの支援が絶対必要です。そのためには安全が保障されなければいけない。つまり、アメリカとは戦争が起こらないということがどんなことがあっても必要になりますから。そんな意味で、新型大国関係というのは米中関係と、一点言えると同時に、恐ろしく中国の国内的な、いわばニーズに応じているやり方であって、これを下げることは、おそらく中国にとってはないと」
反町キャスター
「岡本さんはいかがです?そういう状況にいる中国。米中関係に対して、日本はどういうスタンスで見ていけばいいのですか?」
岡本氏
「結局、残念ながら日本は独力では中国に対抗できないです。尖閣がいい例で、あれだけ中国の公船が領海接続水域を侵犯してきた。日本が何を言っても、彼らの態度はやまない。ところが、オバマ大統領が昨年の4月に東京で記者会見して、安保条約第5条を尖閣にも適用すると言った途端、彼らはうんと引っ込みました。結局、彼らはアメリカとの、先ほど、鈴木さんが言われているように、アメリカとの関係が1番大事です。ですから、日本はアーミテージ氏と同じ言い方になりますけれども、アメリカとの同盟関係、協力関係というもので、日本の力というものを、アメリカと組みあわせる形で見せていくということしか抑止力としては役に立たない。抑止力にはならないと思います。ですから、そういう意味では、南シナ海も非常に重要だと思うんです。中国はこれまで大国が南シナ海から引けば、そこへ必ず力の侵攻をうずめるかっこうで、軍事的に占拠をしていますし、それから、そういう意味で現在の、ちょっと話は飛びますけれども、沖縄の基地問題も非常に重要だというのは、混乱のうちに、沖縄からアメリカの海兵隊が引くようなことがあれば、中国はそこに力の空白を認めますから、それはおそらくほぼ確実に、日米の同盟関係が弱くなったという心証を得て、尖閣にもっとずっと暴権主義的な態度をとってくるでしょう。だから、日頃からの日米の関係というのは非常に大事で、日本にちょっかいを出したら、必ずアメリカは日米安保条約に従って行動をしてくると。彼らが思い続ける。そういう日米関係をこれからも維持していかなければいけないですね」

シリア内戦と難民問題 泥沼化の背景は?
秋元キャスター
「そもそもこの中東地域において内戦や混乱が続いている背景には何があるんでしょうか?」
岡本氏
「アメリカの中東政策の責任というのは大きいと思います。シリアに対して優柔不断な政策をとってきた。あそこまで、鬼っこのような過激派・イスラム国(IS)の勢力を大きくしてしまった。それはアメリカに間接的な責任があると思うんですね。何となくどちらに向いているんだという話。そこへ世界の不良少年のようなプーチン氏が手を伸ばしてきて、秩序を破壊する側に立ってしまっている。プーチン大統領は、シリアでまず安定化ということより自分の国益のためにアサド政権を徹底的に支援している。そういうことでめちゃめちゃな秩序になってきている。本当に現在、解決が難しい状態にありますね」
内藤教授
「シリアに限って言えば、ロシアの介入ですけれども、これは現在に始まったことではない。冷戦時代から、現在のバッシャール・アサドの父親、ハーフィズ・アサドの政権の時からソ連軍はずっといたわけですね。簡単に言ってしまうと、中東でロシアが権益を持っているのはあそこしかない。手放すわけがない。これはソ連時代からまったく同じです。もう1つ、アサド政権というのは、これは現在のバッシャール・アサド自身は眼科のお医者さんですので、別に軍人でもなければ、政治家でもないですよね。ただし、政権の取り巻きの恐怖支配をしてきた連中は、父のアサド政権の時から引き継がれている。そのために、アラブの春が起きた時、私は個人的にはシリアでは起きないと思っていたんです。それはなぜかと言うと、1982年に父のアサド大統領がムスリム同胞団の反政府運動に対して激しく弾圧をして、ハマという街をまるごと包囲して潰してしまう。この大虐殺が起きた時に留学していたんです。彼らが実にスマートに、かつ冷酷に国民を支配するかということを目の当たりにしてきた。当然のことながらその当時の記憶のある人達はまだいっぱいいるわけですから。チュニジアやエジプトで起きたことをシリアで起こした場合、シリアの政権が何をするかということは、シリア人自身はよく知っていたはずです。にもかかわらず起きてしまって、案の定、拷問やら、投獄やら、殺害やらを、繰り返し、どんどん反政府勢力が複雑化して、自由シリア軍と言っていますけれども、あれはもともとはアサド政権軍から離反した連中ですから、道徳心がないことにおいては似たようなもので。そこに世界中からイスラム主義のジハーディストが加わってしまったと。アルカイダ系も加わった。さらに、そこで権力の真空が生まれた時に、北では、クルド人達の独立運動とイスラム国とが競合して入ってきた。こんな状態になってしまうと、もう止めようがないですね。アメリカはイスラム国に対しては空爆をしているが、アサド政権の支配地域にはロシアがいるわけで、シリア側が集団的自衛権の行使をロシアに要請したから、その要請を受けてロシアは空爆を開始した。しかし、国連でプーチン大統領が言っていたように、表向きはイスラム国を攻撃することになるはずですけれども、しかし、その本意はアサド政権に歯向かっている反政府側を叩くことが目的ですから。おそらくはISに対する攻撃はおざなりなものになるでしょう。あちらはアメリカもフランスも叩いているわけですから。そうなると結局、反政府側に対する攻撃も正当化すると。あそこにはアルカイダもいますからテロとの戦いではないか。しかし、難民がなぜ出ているかを考えると、これはアサド政権側の攻撃によるところが大きいです。ISではないです。ISからもちろん、逃れている人がいますよ。だけど、ISができたのはたかだか昨年。その前の時点で100万人以上の難民がトルコ側に出ていましたから、と言うことは、アサド政権軍とその反政府側との戦い。とりわけ空軍力を持っているのはアサド政権だけで、彼らが市民の頭上に落としてしまう樽爆弾という非常に汚い武器です。これをまったく無差別に落としてしまう。9950発以上内戦開始以来、これを落とした。実際、私トルコ側で逃れてきた難民の人達とも話したんですけれども、何が怖かったかって、樽爆弾ほど怖いものはないと。大音響で、殺傷力も高く、建物を破壊する力も強い。こんなことを繰り返されていたらもう逃げざるを得ない。今回の難民のもう1つの特徴を申し上げると金持ちも貧しい人も一緒くたに出たことです。つまり、特定の民族や特定の宗教の人を迫害したのではないと。貧しい人達は隣国の難民キャンプにとどまらざるを得ないわけです。しかし、その中でお金を持っている人達が、トルコからギリシャに渡り、現在、ドイツを目指している。ヨーロッパが騒いでいる難民問題と言っているのは、実は難民の上澄みの人達です。そうではない人達が隣国で非常に困難な状況にある」
反町キャスター
「一定の解決に向けた方向性は見えない?」
内藤教授
「ありません」
反町キャスター
「ない?」
内藤教授
「ないです。ここにきてロシアが態度を鮮明にしてしまったために、おそらく難民はさらに増えます」
岡本氏
「手のうちようがないです。ただ、アメリカがもう少し毅然とした対応をすれば、少なくともイラク側の治安はもう少し回復してくるんです。アメリカは場当たり的な中東政策を何回か繰り返してきた。1991年の湾岸戦争の時だってそうです、サダム・フセインを結局クウェートから追っ払ったがそのまま追求することはやめた。イラク国内のシーア派に反政府運動をやれ、俺達が必ず助けるからと言って、シーアをそそのかして、彼らがサダム・フセインに対して立ち上がった。しかし、アメリカは何の支援もしない。一説には60万人と呼ばれているシーア派がサダム・フセインに殺された。今度だって、イラクの主要都市の1つであるラマーディーというところを、イスラム国側がやすやすと奪取しました。その前に、サダム・フセインの出身地であるティクリートというところで勝利を収めて、国際社会はこれで有志連合の空爆が続いてIS側の資金源が絶たれ、地上戦でもアメリカ軍が訓練し、武器を与えているイラク政府軍が押し込んできているから、解決にいくだろうと思っていたが、イスラム国側の方が力は強いですね。これもアメリカは、今度はスンニーに対して立ち上がってくれ、俺達は武器でも何でも手配するからと言って、結局その約束を守っていないですよね。それで結局スンニーの人達は非常に惨めな戦闘をして敗退してしまった。しかし、それから、3000人を超える軍事顧問団を派遣してイラク国軍を強化すると言っているけれども、あまり効果が現れてきていない。アメリカが1人でも地上軍を派遣した途端に、国内で不人気になるということがあまりにも桎梏となって彼らが何にもできてない。間接的な対応しか、イラクでできていないと思いますよ」

日本の支援のあり方
秋元キャスター
「日本は金銭的な支援以外に難民を受け入れるという形での支援はないのでしょうか?」
岡本氏
「現在のところ言及されていませんね。それはメルケルさんは大変立派な人ですね。だって、自分ところの人口の1%を受け入れると言ったわけでしょう、80万人。日本はこれまで総計でどのくらい受け入れていますかね。1980年代までは結構受け入れてきているんですよ。ところが、ここ10年くらいは2桁です、毎年。シリアからの難民受け入れは3名とか。日本は、お金は大切なことですよ、特にイラク、シリアの難民ということであれば、日本の部隊からは遠ざかっていますから、日本が直接シリアからの難民を、難民希望者が殺到すれば別ですよ、そうではない限りはなかなかできないと思うが、しかし、難民を世界中で分担して受け入れるというネットワークの中に日本は絶対に入らなければいけませんね。たとえば、ミャンマーから出ているロヒンギャも難民です。現在のように法務省の入管局が厳重に操作して、いささかでも怪しげな奴は入れないと弾いて、その結果、恥ずかしくて世界に言えないような数の難民しか受け入れていないわけでしょう。だから、シリア、イラク難民は基本的にヨーロッパが主たる役割を果たすんだけれど、日本はそういう意味で、アジアからの難民を受け入れるということで、今度のイラク、シリアだけではないですからね。アフガニスタンからもパキスタンからもいろんな難民が出てきているわけでしょう。アジアの難民をせめて日本は門戸を開いて、もっともっと受け入れるべきだと思いますね」

内藤正典 同志社大学大学院教授の提言:『人を知らずして国際貢献なし』
内藤教授
「一般演説では良いことを言っていたのですが、今朝の記者会見でロイターの記者に聞かれて、難民を受け入れるのかと言われて、トンチンカンなこと言っていましたよね。人口問題で、女性と高齢者の活用と、それはまったく別の話をしていたので、まず現在起きている大問題、今世紀最悪の人道の危機と言われているわけですからね。そこにあたって日本が何をするかという時にはまずそこに来る人達を知らないと、先走って日本が困るとか、何とか言うことの前に、まず人間を知らないと、どういう国際貢献ができるかを決められないだろうということです」

岡本行夫 外交評論家の提言:『1、もう一歩前へ 2、経済、経済!』
岡本氏
「経済協力も当初予算ベースで言えばピークの半分になっているので、それを元に戻してください。自衛隊をもっとPKOに活用してください、というようなことが1つ。もう1つは、こういうことを全てできるのも国力の元というのは経済です。経済がないと国際社会で十分な発言権も確保できません」