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2015年9月24日(木)
どう動く?過剰マネー 米利上げ見送りと中国

ゲスト

後藤茂之
自由民主党日本経済再生本部幹事長 衆議院議員
大串博志
民主党役員室長代理 衆議院議員
早川英男
富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェロー
西浜徹
第一生命経済研究所主席エコノミスト

中銀FRB“利上げ”見送り 米国経済の現状は
秋元キャスター
「アメリカの中央銀行、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策に関してですけれども、利上げ見送りの理由については、雇用情勢の一段の改善が物価上昇率2%に中長期的につながっていくかを注視していきたいと。世界経済は不確実な点が多く、中国、新興国の状況がアメリカにどう波及するかが焦点ということです。利上げの見通しについては、委員会12名いらっしゃるんですけれども、そのうちの大半が年末までに引き上げとしていて、また、4人が来年以降という意見だったということです。FRBには物価の安定と、雇用の最大化という2つの使命が課せられているんですけれど、その推移を見ていきますと、失業率についてはリーマンショック後から比べても、1つの目安と言われている5%前半まで回復しています。一方、物価上昇率については2%という目標に対しまして、ここ2年ほど、もたついている印象なわけです。早川さん、このアメリカ経済の現状ですけれども、まだ利上げに踏み切れるほど強くはないと見ていますか?」
早川氏
「こういうふうに考えるんだと思うんです。まずお話のあったように景気はまあまあいいわけです。失業率も5%ぐらいですから、いわゆる自然失業率、ほぼ完全雇用水準まできたということなので、そういう観点からすれば、一応利上げを考えてもいい局面にはきたということです。その一方で、お話があったように、物価は、まだ目標にしている2%より低いので、だとすると、利上げをしていいけれども、急ぐ必要はないというのが現在のアメリカの経済指標から出てくる結論です」
大串議員
「FRBはマンデートとして通貨の価値の安定と雇用をつくり出すと。この2つが明確になっているものですから、どうしても市場と対話をする時に、この2つをきちんと出していくことになります。その面から言うと、今回もちろん、利上げの判断をしてもいいよというような状況に、先ほど、早川さんがおっしゃったようになっているのだろうけれども、たとえば、失業率でいうと5.1%まで下がってきているので、これはいいのですが、広義の失業率、たとえば、仕事には就いているんだけれども、フルタイムで働きたいんだというような方々は不満を持っていらっしゃる。これはまだ結構いらっしゃるんです。あるいは本当に失業率が下がってきて、スタック、つまり、余裕がなくなってきているのであれば、本当は賃金が上がってくるはずです。賃金の上昇がまだそれほど顕著でもないと。こういったところから見て、利上げを考える時にきているんだけれども、まだ少々の時間の余裕もあるかなという判断もあったのではないのかなという感じがします」
早川氏
「いわゆるデュアルマンデートと言って、物価と雇用と両方に目標を持っているというのは、実は世界の中央銀行で、基本的にはアメリカだけです。しかも、これは元を正すと1946年、第二次世界大戦が終わった直後の法律に基づいていた話なので、ちょっとこれはある意味ではごく普通のパターンではないです。それが1点。それから、もう1つ気をつけなければいけないのは、たぶん日本国内では、雇用にもうちょっと責任を持つべきだという議論があった時期というのは、2011年とか、そういう頃を見てみると、アメリカの物価は結構上がっているんです。その一方で、失業率はかなり高かった時期があって、その頃は、議論になっているんだけれども、現状とは違うんですね。現状はむしろ雇用の方が良くなっているのに物価がなかなか上がってこないので、仮にその物価みたいに雇用の条件を課しても、あまり話が変わってこない。日本も実は同じ状況で、見てください、日本は失業率3.3%ですから、これは完全雇用なのだけれども、一方で、物価の方はいかに原油価格の下落の影響があると言ってもゼロです。たぶん明日ひょっとすると、マイナスの数字が出るかもしれないわけですので、こちらもどちらかと言うと、雇用の方はうまく言っているんだけれども、物価は上がっていないということになっているので、要するに、2、3年前に議論があった時と随分環境は変わっているということも念頭に置いた方がいいと思います」
反町キャスター
「西浜さんの専門の立場から見た時に、どうしてもこういった話というのは、中国の経済の、その調子の悪さがどういったところに影響が出ているというふうに、僕らはよく説明をしたりするんですけれども、そういう感じで今回のイエレンさんの会見も見ていますか?」
西浜氏
「確かにそういう影響はあるんだと思うんです。ただし、中国の減速って、よく考えると、この2、3か月で始まった話ではなく、この1年ぐらいずっと減速が続いていると。これを殊更に市場が反応するというのは何なのだろうかというところは、中国の実態はどうなのというのがわかっていない。そこに尽きるのではないかなと思うんです。たとえば、経済統計が発表されましたと、本当?というのもあるんですけれども、たとえば、株が下がりましたと。私達も、いや、株と実態経済は別ものだからとよく話をするのですが、本当かな。たとえば、いろいろと町中に行くと、いろんな方が博打のような形で、株の取引きをやっていたと。ニュースで出てきて、その後、取り消されましたけれど、たとえば、自殺をされるような方まで出てきたところを見ると、本当に、経済に影響がないんだろうかと。よくわからない。よくわからないだけに、中国というのはより悪いのではないのかという連想が働きやすくなると。たとえば、貿易で見ても年明け以降の世界の物流は急激に縮小しているんです。これは何かというと中国が明らかに悪くなっているといったものが、外形的に表われてきていますので、そうなってくると中国も悪い。私が特にアジアを見ていて気になるのはアジアからアメリカ向けの輸出というのも、そんなに伸びていないんです。アメリカが本当に景気が良いと言うのだったら、自信が持てると言うのだったら、そのあたり、もっといろんな数字が出てきてもいいのではないか」
反町キャスター
「入りも出もダメなのですか?」
西浜氏
「というところがあるので、意外に、もしかしたら、アメリカ自体も確かに統計を見たら、とても調子はいいですし、間違いなく、これは堅調なのだろうという一方で、なぜ世界の貿易に与えるアメリカのインパクトがこんなに小さくなっているのかなというのがわからなくなってきているというところがあるかなと思います」

中国経済の減速と実情
秋元キャスター
「FRBのイエレン議長が利上げ見送りの理由としてあげた2つ目を見ていきたいと思います。中国のリスクについてですけれども、西浜さん、いわゆる世界同時株安からおよそ1か月ですけれども、中国経済の状況をどう見ていますか?」
西浜氏
「中国自体がもともと減速をするというのはあくまでも習近平政権が現在、中国経済がニューノーマル、新しい状態に向かっているんだ。それが故に構造転換をするから、それに必要な景気減速を受け入れるよと、この1年半ぐらい、実は言い続けているんです。彼としてはあくまでもブレーキを踏んでいるんだという意識はあるんだと思います。構造転換が本当に進んでいるのかというところと、ブレーキを実は踏み過ぎているのではないだろうかという、ここが非常に気がかりだと思うんです。構造転換というところでいくと、これまで特にリーマンショックのあとというのは、4兆元の景気対策というものがありますけれど、あの当時の中国は、ちょうど中国の経済規模というのは日本と一緒です。50兆円を超えるほどの景気対策ですから、明らかにV字回復をするわけですが、投資に偏重して、明らかにおかしくなってしまいました。その中で個人消費がどうなっているのかというのは、実は小売売上高というデータがあるんですけれども、伸び率を見ていただくとずっと実は右肩下がりの状態が続いていて、なかなか持ち直していない。物価の影響を除いた実質のベースで見ても非常に、戻りつつ行きつつみたいな形で、なかなか勢いが取り戻せていないというのが足元の状況でありますというところで、なかなか個人消費に転換できていないのではないですかという、1つ疑問があると。もう1つが、6月中旬から株価が急に下落をしたわけです。よく言われているのが、中国の株というのは、別に実態経済を表すものではないと言われていて、たとえば、2007年に1回、実は中国の株バブル崩壊が起きています。その時と比べて何が起きているかと言いますと、実は個人の投資家の数というのが劇的に増えています。あの当時というのは、12億人いる中で、せいぜい5000万とか、6000万しかなかった口座が、上海において昨年の末から急激に増えてきていて、今や1億3000万人に届かんという水準になってきています。たとえば、日本において現在、急激に増えた証券口座というと、NISA口座がありますが、これがざっと、八百数十万と言われています。しかも、この中で半分ぐらいは休眠口座ということになっていると400万ぐらいしか実質動いていません。そう言った中で1億2000万、1億3000万とも言われている。しかも、これは上海だけです。深圳には1億6000万あります。となってくると株価が下落した影響は本当にゼロだったのか、どうなのというところが見えにくくなっているというところが、中国は本当に大丈夫なのというところにつながってしまうということは言えるのではないかと思います」
反町キャスター
「経済成長率7%ということも含めて、ブレーキをずっと1年半、踏み続けていると言っている。本当に踏んでいるのだったら、7%のわけはなく、もっと下がってもいいのではないかと。いろんな専門家の話を聞くと7%のわけがなくて、真水は4%だよとか、3%だよとか、5%という話、いろいろ飛び交う中で、本気でブレーキを踏んでいるということを世界に認知してもらいたいなら、それは政府の発表、要するに、中国は数字をいじるという前提で話をしているんですけど、だったら、5%とか、6%という、もっと低い数字を発表すればいいのに、それを7%というふうに敢えてがんばってしまうところというのは、中国の内情としてどういうものがあるのですか?」
西浜氏
「中国国内、特に共産党政権に関して言うと、選挙等々で選ばれたわけではないですから、彼ら自体もきちんと経済成長ができないと共産党の存在意義というのが逆に問われてしまうと。ある種の、景気があまりにも減速をしてしまって、かつそれで人々が苦しむということになれば、必然的に国民の側からすればいったい共産党は何をやっているんだと。政府は何をやっているんだろうというような、ある種の下から突き上げがくる。それを回避するために、成長はしていると。皆さんの生活はまだまだ苦しいかもしれないが、成長はしている。それによって後々、分け前がくるからということをある種、示していかざるを得ないと」
早川氏
「正直言って、今年に入って中国はいくつかのミスマネジメントをやっているんだと思うんです。たとえば、株価についてもそもそもあんなに株価を煽る必要はなかったうえに、正直言ってあまりにも稚拙な株価対策をやったので、投資家の信頼を失っているし、それから、先だって中国元の切り下げについても、元の切り下げ自体はおかしくはないです。これまで中国の元は高くなり過ぎていたので、実勢にあわせて多少切り下げるとか、あるいはIMF(国際通貨基金)との関係でもっと弾力的にしなさいと言われて、そうやっただけなので、そんなに問題はないんですけれど、発表の仕方とか、あまりにも唐突だったので、いったい何を意図して、まさに輸出刺激のためにやったのかといったことも含めて、混乱を招いたというのもあるので。最近、ミスマネジメントがいくつか重なって、多くの人の疑心暗鬼を招いているのが現状ではないかと。基本的には先ほど、西浜さんが言われたように減速はやむを得ない。しかし、構造改革はきっちり進めていくのだということをちゃんと皆に理解してもらう必要があるのですが、ここ半年ばかりうまくいっていないなというのが正直なところです」
大串議員
「日本の立場から言うと、中国にどうあってほしいかというと、そういう振幅はできるだけ小さい方がいい。そういった観点から言うと透明性、経済財政運営に対する透明性は高い方がいい、統計も含めて。そのうえで構造調整は避け難いと思うんです。4兆元の大型投資を行って、リーマンショック以降、立ち直ってきたのは否めないので、構造調整は否めない。しかし、この構造調整をできるだけ円滑にやってほしいというのが近隣諸国からいうと、あるいは世界経済全体から言うと祈りに近い願いではないかという感じが私はします」
反町キャスター
「後藤さん、祈りに近いという大串さんの話をちょっと受けていうと、たとえば、習主席は現在、アメリカに行っています。ボーイングから300機、5兆円です。これが果たして本当に世界のために役立つのか。他国の立場でコメントしづらいと思うんですけれども、そのお金を使うのだったら、先ほど、西浜さんが言われたように中国国内の構造改革に使うのも結構でしょう。社会保障に費やしてもいいだろうと。中国のお金の使い方をどう見ていますか?」
後藤議員
「中国経済自身は困難な構造改革であったとしても第3次産業化も相当進んできている状況でもありますし、7%は無理にしてももう少し低いところで6%ぐらいの成長を達成していく可能性は十分あると思いますし、財政金融政策の余地もまだ日本、その他の国と違って、GDP(国内総生産)比51.5%の財政債務残高だし、それから、政策金利も4.6%もあるし、預金準備率も18.0%あって。そういう意味から言うと、従来の2ケタ成長みたいなことは無理だけれども、そこそこの中国経済にはまだまだ成長の余力はある、そういうことだと思います」

どうなる? 新興国リスク
秋元キャスター
「アメリカが金融政策を変更し、利上げに踏み切った場合の想定として、よく言われる問題の1つ、資金マネーの流出による新興国経済のダメージについて考えていきたいと思うのですが、西山さん、この新興国のリスクについては」
西浜氏
「過去においても、アメリカの利上げはだいたいどこか通貨危機を起こすとか、経済危機を起こすことがあったんです。たとえば、おそらく日本国内で1番鮮明に覚えているのは1997年から1998年に起こったアジア通貨危機。これは1番大きかったのではないかなと言われています。その中で直近いったい何が想像できるかというと、2013年5月にバーナンキさんが急に量的金融緩和の縮小をする。あくまでも金融引き締めでも何でもないんですけど、あくまでも縮小しようかなと言っただけでドーンと資金が逃げていった。よくその当時フラジャイル・ファイブなんてことを言われたんですけれど、経常赤字と財政赤字を抱えていて慢性的にインフレであると。つまり、ファンダメンタルズが悪いというような国々がだいたいあてはまったんですけれども。そこらへんが足元がどうだったのかというのが、ちょっと通貨の下落率を年明けから見ていただくと過去、年明け以降、意外に平穏無事に過ごしてきたんですけれども、ちょっといろんな国がありますが、ただ、非常に7月あたりから急激に下落をしているということが言えるとかと思います。これはドルに対してというところですけれども、特にブラジルに至っては過去、最安値になってしまっていたり、トルコも実は最安値になっていたりということで、かなり厳しい状態になっている。これは資金が逃げていることの1つの証左になっているかと思います」
反町キャスター
「利上げをしていないのに下がっている?そうしたら、もっと下がるのですか?そこはどう見たらいいのか?」
西浜氏
「前哨戦としてまず下げたというところはあるんですけれども、ただ問題は足元で厄介なのは何かと言うと中国が思いのほか景気が減速しているのではないかという疑心暗鬼です。特にこの国々を見ていただくと、たとえば、インドネシアにせよ、南アフリカにせよ、マレーシアにせよ、ブラジルにせよ、近年、中国に対する依存度を極めて強めてきた国々だということです。なので、確かに外から資金が逃げていく、プラス中国の景気が悪いことによって、たとえば、この中でいくと、南アフリカ、マレーシア、ブラジルというのは資源国でもありますから、資源価格が下がる。たとえば、輸出に関して言うと、数量も落ちて金額も落ちる。両建てで落ちる。ダブルでやられてしまうというのは非常に分が悪くなってきている要因なのかなと考えています」
反町キャスター
「西浜さんの話ではアメリカの金利は中国の減速が周りにバーッと影響しているのだと。そちらの方が、よっぽど大きい?」
西浜氏
「両建てできているということは言えると思います。非常に言われているのが、フラジャイル・ファイブに代わる新たな概念と言われていまして、トラブルドテンということが新たな話で出てきて、これはどういう国々かというと、中国との連動性が強い国、輸出依存度が高い。つまり、先ほど来、申し上げている世界の貿易量が縮小していますという話がある。もう1つ、中国との連動性が強いが故に、中国が減速する影響をもろに受けてしまう。かつ、この中でいうと、たとえば、韓国だとか、台湾、タイといったところは、中国とも実は競合してしまう。先だって人民元の切り下げがありましたけれど、あれ自体はあくまでも市場に沿ったものなのだという理屈で、おそらくいいのだろうと思いますが、ただ、実態としては、人民元は切り下げられてしまったということになると完全に輸出が競合してしまうような国もありますので、そういった意味で二重三重に悪影響が出るような国として、これらの国々があがってきていると」
反町キャスター
「そういう国々の通貨が下落するということは、日本にとってはプラスなのですか?マイナスなのですか?」
西浜氏
「通貨が下落することそのものの影響というものは、たとえば、通貨が下落して、インフレが慢性化してしまうと、それによって景気が悪くなる。日本からの輸出額というのは、実はこれらの国々に対して、通年で30兆円を超えるような規模ですから、これに悪影響が出てしまうことによって日本にも少なからずダメージがある」
後藤氏
「日本がじゃあどういう対応をしていくかということで言えば、アジア通貨危機の教訓等を考えても、日本としては短期の外貨資金の融通についていざという時には対応をきちんとしてやれるような、できるようなチェンマイ・イニシアティブみたいなものもやってはいますけれども、いろいろ緊密な対話を取りながらそういう国際的な資金の融通等について、日本の貢献できる分野は大きいと思います」
反町キャスター
「野党としての立場で聞きます。政府は十分それに対してのケア、対応、準備ができていると見ていますか?準備とか、対応とか、どうなっていますか?」
大串議員
「今回のアメリカと中国の状況が新興国に危機的な状況を及ぼすかというと、私は1996年、1997年、IMF、国際通貨基金にいたんです。当時危機が訪れるような国というのはいくつか類型があって、1つは外需が少ない国。外貨準備が少なければやられます。それから、短期の対外債務が多い国。外から安く借りてたくさん投資にまわしているような国が危ないです。それから、ドルペックの為替制度を持っている国。この3つが揃っている国がほとんどだったんです。そこで強いドル政策で、どんどん強くなっていく。それに従って、それらドルペックしている国の通貨も強くなってしまう。それで競争力を阻害して、いきなりドーンときてやっているんです。当時の記憶に鑑みて、ドルペックを皆、やめていますし、内需も増やしています。ブラジルは外需が現在、すごく多いです。短期債務が増えている国があるのがちょっと気になるところではあるんですけれど、それでも、当時と状況が違う。ただ当時と状況が違うのはもう1つ、中国のマイナス要素、心配要素があるという点で、非常に対外要素としては難しいところであるんです。難しいところであるにもかかわらず、たとえば、アベノミクスを含め、金融緩和を中心とした政策のように見えるんですね。つまり、国内のことをきちんとやっていれば、日本はデフレから脱却できるような感じに見えるわけです。対外要素というのは極めて大きいので、もっと、そこらへんを考えたうえで硬直的な金融政策は、私はどうかなと思っているものですから、そのへんに関する心配はあります」
早川氏
「リーマンショックから2011年、2012年ぐらいまで、新興国は好調だったわけです。先進国の成長率は低いけれども、新興国はいいと。新興国が世界をリードするのだという議論がずっとありました。何で新興国が良かったのかという理由が、実は2つあるわけです。1つは中国の高成長です。中国が高成長をすると、先ほどの話ではないけれども、中国にモノを輸出する国は当然、ハッピーです。もう1つは、中国が高成長をすると資源価格が上がります。そうすると資源国もハッピーである。2番目はその頃、アメリカが大胆な量的緩和をやっていました。アメリカの量的緩和でどういう国がハッピーなのかというと、実は内需型の新興国なのです。内需型の新興国は、普段は対外収支が赤字になるので、ファイナンスが大変ですよ。ところが、アメリカがどんどんドルをばら撒いてくれると、赤字国でもお金がどんどん入ってくるので、結構幸せです。その結果としてほとんど全ての新興国が好調だったんです。そう考えてみると現在、起こっていることは…」
反町キャスター
「全部、逆ですよね」
早川氏
「そうです。だから、先ほど、西浜さんが、どちらが大事かという話ではなくて、そもそも新興国の好調というのは、その2つに支えられて、ここまできたのだから、その流れが2つとも逆転してくると、新興国はなかなか厳しいですよというのが、大きな話の流れ。その中にあってどこが危ないか。どこが比較的ましかという話は先ほど、大串さんが言われた、財政収支を見ましょう。経常収支を見ましょう。外需の大きさを見ましょう。対外ファイナンスの形を見ましょう。短いので借りているのは危ないです。直接投資で入ってくれば大丈夫です。そういう形で見ていくということになると思います」

アベノミクス新章へ 新・三本の矢でGDP600兆
反町キャスター
「GDP600兆円、介護離職ゼロ、出生率1.8%、今回の新・三本の矢で、こういう中身を出している。今日の安倍総理の会見をどう感じましたか?」
大串議員
「もともとの三本の矢はどこに行っちゃったんだろうなと思いました。それは強い経済を続けていかれるのか、いかれないのか。もし強い経済を続けていかれるということであれば、これまでも実質2%成長、名目3%成長と言われていたので、それを単純にかけ算していくと、GDP600兆円に。ただ、足下で言うと、4-6月期の経済成長率がマイナス1.2%。2%、3%成長なんてとてもできていないですね。雇用は100万人増えましたと言われましたけれど、ほとんどが非正規の雇用のことで、正規の雇用の方はむしろ減っているんですね、25万人くらい。こういうことも噛み合わせると、もともとの3本の矢をどうするんだろうというところを問うていきたいと思います」
後藤議員
「金融の緩和については2%、この目標は何としても達成しなければならない。2016年の前半で、と言っているわけですが、多少の前後はあると日銀総裁もおっしゃっていますが、そういうことを考えていつできるのかは少し留保しておくとしても、インフレと賃金の引き上げ、つまり、実質所得をある程度プラスにしながら、それを実現していく。財政について言えば、2020年までの財政再建計画に従って必要な歳出を確保しながら財政再建をしていく。これは骨太方針にも書かれていることです。家計を元気にして消費活動を活発化させ、生産性の向上だとか、女性、若者、高齢者の活躍だとか、地方経済だとか、そういう骨太方針では、そんなような形で構造政策を整理していた。今回はまさに3年間、経済で結果を出していくんだという覚悟のもとに、構造政策についてこういう3本の矢、新しい構造改革に関する内需主導の構造改革のための3本の矢が提示されていると、私は考えます。600兆円もそういう意味で言えば、骨太方針の時も2020年に向けて、600兆円近い数字が3%の名目成長で可能になるとしていますが、もちろん、その前提として相当な構造改革をやらないと、この3%は達成できないだろうということは我々も思っているので、そのために2020年600兆円を目指すということで、構造政策を新しい3本の矢ということで、積極的に成果を出すというふうに進めるという総理の覚悟だと思います」
反町キャスター
「多様な働き方改革という言葉とか、生産性改革という言葉とか、生涯現役社会、つまり、労働力の流動化を高めるんだよと。生産性を高めるためにいろいろなことをやっていかなくちゃいけないよと。さらに生涯現役社会と言うことは、つまり、60歳で辞めるのではなくて70歳でも80歳でも働けるような社会を目指す。これは言葉は美しいですが、どう考えてもきつい話ですよ。そこに、たとえば、失業の問題があったり、職業訓練の問題があったりする。そういうものを含めての話だと思うんですけれど、どうも聞いていると、バラ色のビジョンと言いながらも、きつい部分をなかなか表に出さない話になっている印象があるのですが、そこはどうですか?」
後藤議員
「生産性の向上ということで言えば、生産性革命ですね。設備投資、研究開発投資の拡大だとか、今やっているところの、成長志向の法人税改革だとか、オープンイノベーションの推進だとか、下請事業者との間での単価の引き上げだとか、外国人材の積極的な利用だとか、従来からいろんな政策パッケージをつくってきましたけれど、そういうものを総動員しながら、やっていくということだということだと思いますし、多様な正社員の普及を含めた正社員比率の向上だとか、あるいは雇用の流動性の確保だとか、そういうことも、社会の仕組みを変えていかないとできないことではありますけれど、そういう方向に進むべきだという形で議論をし始めているということだと思います。しっかりとそれを実現しなければいけない」
反町キャスター
「2020年を想定したGDP600兆円。これは可能ですか?」
早川氏
「極めて難しいと思います。介護離職ゼロ、出生率1.8%。2つともすごく難しい目標ですけれども、しかし、これは高い目標を掲げてがんばるというのであれば、それはそれで意味がある。ところが、GDP600兆円はそういう性質ではないです。なぜかと言うと、名目3%で成長していくと、2020年に概ねGDP600兆円になるわけですから、言ってみれば名目3%成長は同じ話ですね。ところが、名目3%は単なる目標ではなく前提です。なぜかと言うと、要するに、名目3%で成長しても2020年のプライマリーバランス黒字化は難しいというのが今年6月に出した政府の計算だったわけですね。逆に言うと、プライマリーバランスを黒字化するためには少なくとも2020年にGDPは600兆円を超えているような勢いでなければならない。必達目標です。それができるかが大きなテーマであって。実を言うと、ついこの間、内閣府は日本の潜在成長率に対する試算を0.1%下げて、0.5%にしたんです。安倍政権の初期は0.8%あったんです。3年間に渡って0.1%ずつ下がって、現在0.5%まで下がってきた。潜在成長率0.5%の経済がなぜ突然2%、実質で成長できるのか。その根拠はどこにありますかということですね」
大串議員
「まずはこれまでのアベノミクスが成功だったのですか、ということは問うていかないといけない。安倍総理は自画自賛されていましたが、先ほど申し上げました通り、雇用が伸びているわけではない、非正規が増えている。かつ消費がなかなか伸びないですよね。実質賃金が2年半に渡って、基本的には下がる一方。民主党政権の時に比べると、実質賃金はマイナス8ポイント減くらいです。実質賃金が下がっている中で消費は増えるのか、増えないわけです。明らかに経済政策から言うと、消費が伸びず成長しない方向になっちゃっている。そのうえで、子育て支援、あるいは安心につながる社会保障、これはいいと思いますが、具体的な内容は何でしょうかということはきちんと問うていきたいし、雇用問題はどうするのかということも問うていきたい。加えて財政再建は本当にどうするのですかと。非常に心配していることは、民主党政権の時は基礎的財政対象の歳出は3年間増やさなかった。ところが今回、2015年度から2018年度までにかけては基本的に年間5000億円ずつ増えるような計画になっている。歳出の効率化はどこにいっているかという気がします。そういったところも問うていきたいと思います」
反町キャスター
「これまでの3本の矢は、これで1回終わったのだ。新しいステージに入ったのだと。あれっ?と思ったのですが」
早川氏
「先ほど、総理はデフレがまもなく終わりだとおっしゃった。そこはある意味で、金融政策がデフレ脱却という時に、ハードルをどこに置くかによって違うんですね。たとえば、ハードルを0でプラスになればいいという考え方に立つのであれば、確かに総理のおっしゃる通りですよ。明日出る消費者物価は前年比でマイナスになるかもしれませんが、それは専ら原油価格の下落によるエネルギーの低下のせいなので。それを抜いて考えると現在0.9。ほぼ1%なので、デフレから脱却しつつあるのは、そうではないか。一方、日銀が言っている2%の話ははるか遠いわけなので。そうすると、2%いかないのにとりあえずプラスになったら、もうその話は終わったでいいのかという問題ですね。日銀サイドは、僕達はどうすればいいんだということになっちゃいますね。もう1つは、成長戦略は実際どうなっているのでしょうか。先ほど申し上げたように、潜在成長率は下がってきているんですよと。成長戦略が功を奏していませんよね。実は安倍政権になってからの成長率の平均値は0.9%ですよ、年率で。民主党政権は1.7%です。民主党政権の半分しか成長していない。要するに、アベノミクスを評価する時に株価で評価するのであれば、(株価は)上がっているんですよ。成長は年率0.9%ですから、民主党政権の時の半分しかないわけですから、総理は雇用が100万人増えたとおっしゃっていましたが、成長していないのに頭数だけ増えているんですよ。これは生産性が下がっていると。と言うことは、ますます経済成長から遠のいていると。成長戦略、強い経済はどこにいってしまったのでしょう」

後藤茂之 自由民主党日本経済再生本部幹事長の提言:『好循環』
後藤議員
「経常的な利益が非常に上がっている中で給料を増やす、中小企業への仕入れ単価を引き上げる、投資を増やす、そういう形で内需中心の好循環をつくって、構造改革を進めていくことが、これからの日本にとって1番大切だということで、私は好循環と書かせていただきました」

大串博志 民主党役員室長代理の提言:『日本の存在感を!!』
大串議員
「中国という世界の牽引役が非常に厳しい中で、それに代わり得る日本の存在感を経済の場面でも示していきたいなと思います。それに関しては、経済政策が政治の場で1番大切だと思うんです。新しい3本の矢を総理が出されましたが、これは安全保障で大変国民の皆さんから厳しい声を受けた。この目線をそらすという観点から経済と言っているのであれば、それは良くないことであって、経済はとにかく生活を良くするという1点で日本は取り組むべきだと思います」

早川英男 富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェローの提言:『中国 改革前進』
早川氏
「現在、世界経済に大きな不透明感を与えているのは中国だと思います。成長率が下がってくのはやむを得ないし、それでいいと思うんですけれども、ちゃんと構造改革を進めて、投資主導から消費主導の経済に変えていく必要がある。具体的に言うと、たとえば、地方政府の不良資産の処理、それから、国有企業の過剰設備の処理、それに加えて、社会保障を充実させることによって個人の安心感を与える。こう言った改革をきっちりとやっていく。あまり小手先で株価対策をやったりするのではなくて、ということが大事だと思っています」

西浜徹 第一生命経済研究所主席エコノミストの提言:『話し合いのし易い関係』
西浜氏
「8月の世界同時株安が起きた時に、安倍総理とオバマ大統領が電話会談をされたことがありましたけれど、現在中国と本当に話し合いができる関係ができていない。これが1番問題ではないか。麻生大臣がG20でいろいろ話があったということをおっしゃっていたが、ああいうふうないろいろと話し合いができること。それは国家間だけではなく、市場との対話といった意味でも、話し合いのし易い関係をそれぞれの当局がつくっていくことが必要なのではないかと考えています」