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2015年9月16日(水)
機は熟したか安保採決 元防衛相&法制局長官

ゲスト

森本敏
元防衛相 拓殖大学特任教授
阪田雅裕
元内閣法制局長官 弁護士

安保法案 議論は尽くされたのか
秋元キャスター
「安保関連法案ですけれども、参議院において、今日、明日、採決が行われると言われていますけれども、果たして審議は十分に尽くされたと言えるのか。まず審議時間から見ていきたいと思います。衆議院では116時間30分と、これは歴代4位です。参議院では昨日までで97時間27分と、延べ210時間を超える審議時間が行われてきたということですけれども、森本さん、審議は十分尽くされたと感じますか?」
森本氏
「審議の時間が問題なのではなくて、もちろん、中身が非常に重要なのですが、私は衆議院の審議のやり方を少しあとから考えてみると、反省の余地があったと思います。質問の9割を野党に与えています。与えると十分な質問が出てくるので、それに政府が答えることによって、国民の理解を広げようとしたのですが、結果は逆になって、法案全体像に関する質問があまり出ず、包括的な法案の中身を国民に国会の審議を通じて説明する時間が非常に限られていて、結局、合憲だ、違憲だというような議論とか、6月4日の憲法審査会以降の議論はそうです。それから、法案の中身の非常にケースバイケースの細かい議論がずっと続いていて、法案の全体像がなかなか国民に理解が行き渡らないという状態が起きたことは、現在から考えるとちょっと残念だったと思います。参議院になってから、その反省もあって与野党でバランス良く質問の時間をとって、少しずつ理解は広まったが、支持が広がるというところまでいかなかった。それは別の理由があったかと思いますけども、国会の審議について言えば、時間よりも、むしろ法案全体は11の法案で、全体として2つのカテゴリーでできている。1つずつの法案の持っている意味合いというものを具体的な事例を引きながら説明する時間があったとは、私は思えない」
秋元キャスター
「安倍総理も先週金曜日に、ジャーナリストの桜井よしこさんの番組に出演した際、国民の支持が得られないことについて、このように発言をしています。『他の普通の国ではどうやって効率的に国民を守っていくのか、領土、領海、領空を守っていくか、政策について議論を深めていく。日本の場合はどうしても憲法との関係、国際法との関係、今までの答弁の積み重ねとの関係について議論にするのでわかりにくいのは事実』ということですけれども、阪田さん、日本はどうしても憲法との関係、それから、国際法との関係の議論になってしまうという安倍総理の発言。どのように受け止めますか?」
阪田氏
「すごく当然のことだと思います。憲法9条というのはあまり外国にはと言うか、まったくと言っていいのかもしれませんけれど、例を見ない、平和主義の規定でありますし、山口元最高裁長官がおっしゃっていたように、長い間、議論の積み重ねの結果として、国民の骨肉とおっしゃったのでしょうか。いわば血となり肉となっている、常識になっているような理解、それを一内閣で変えようということですから、これは嫌になるほど説明を尽くしてもらわなければいけないので、そこで入口論で平行線だからということなので、合憲か、違憲かという以前に解釈を変えるということがファクトなわけですね、これは。集団的自衛権の行使、これは憲法改正しないとできないということを歴代内閣はずっと言ってきたわけですから。大変重いものだと思いますね。森本さんがおっしゃったように、安全保障法制、他のところも大事なところがたくさんありますけれど、何と言ってもそこは立憲主義の原点というのでしょうか。政府が自分を縛る憲法を自分の都合でサイズを変えるということですから。しかも、小さく変えるのであればまだしも大きく変えるということですから、なぜそれが必要なのかということをずっと初めから申し上げているんですけれど、いわゆる立法事実というのでしょうか。これを変えなければ現在、日本を守れないんだということについて、どんな場合にこれを使うんだということについて十分、国民の理解を得るということは絶対に必要だと。現在、長く審議をされたということですけれども、政府の答弁をずっと聞いている限り、同じことの繰り返しなわけです」
反町キャスター
「総理の言葉というのは、つまり、日本の取り巻く安全保障環境を冷静に、日本は本当に危険な状況にあるんだぞということを、現実的に、具体策として議論をすることと、憲法との関係とか、国際法との関係とか、これまでの経緯みたいなものから、非常に乖離している。離れているから、審議しづらいんだよと総理は言っているように、僕には見えます」
阪田氏
「そうです」
反町キャスター
「そのうえで現在の話は現実的に日本を取り巻く環境がどれだけ厳しいか、わかるか、わからないか別にしても、まず基本となる法律、憲法、ないしは国際法との関係、ないしは過去のこれまでの経緯ということから離れること、その議論をすることはいけないんだよという、こういう意味なのですか?」
阪田氏
「いや、いけないということはないです。だけれども、憲法をどうやってもいい。あとからついて来る政策が必要だから、まずやるんだと。それに合わせて憲法を理解しろと。それはむちゃです」
反町キャスター
「そのあたり、森本さん、いかがですか?」
森本氏
「ご指摘の論点はわかるのですが、今回の憲法問題というのはもちろん、最終的に専門家とか、学者という人が憲法の議論というのをきちんと決めて、意見を言うことは民主主義ですから、自由に言ってもよいと思いますけれども。それを決めるのは司法の大きな責任なので、司法がお決めになることだと思うので、だから、我々は、個人としての意見を述べることしかできないし、責任を持って言うことはできないのですが、私は日本の安全のために、たとえば、アメリカの艦艇が日本の防衛をするという時、そのアメリカの艦艇が第三国から攻撃をされた時、それを守らないで、日本の安全が維持できるのかというと、どうもそうは思わないと。限られた条件下で日本の憲法を考えて、日本の法制を国会の審議にかけて成立をさせようということは、現在の憲法解釈の中でドラスティックに憲法解釈を根本的に変えるという、いわゆる解釈改憲とは、私は思わないので、組み替え方を変えたのかどうかわからないですけれど。限られた要件の中で、この憲法を読み解いて、従来の基本的な法制局のスタンスというのか、立場というものを大きく変えることなく、現実の法解釈の選択をしようとしたので、私はあまり無理がない法案になっているという印象を強くしているので、国の安全と憲法解釈とどのように調和させるのか。その細い可能性を見出そうとした時に、現在とろうとしている存立危機事態の法案の成り立ちというのは、私は限界。これ以上のことをやると、おそらく憲法改正をしないといけない。国際法上のフルスケールの集団的自衛権を行使するのではないやり方を、この法案の中で実現をしているので、私は無理がない解釈だなと」
反町キャスター
「ギリギリ?」
森本氏
「そうですね」

憲法解釈変更と違憲論議
秋元キャスター
「国会審議の中で大きなポイントとなったのは、集団的自衛権の行使が憲法違反であるのかどうかという問題でした。まず政府の見解について、おさらいをしていきたいと思うのですが、1972年の集団的自衛権と憲法に関する政府見解では憲法は自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするための必要な自衛の措置を禁じていないと。自衛のための措置は国民の生命、自由及び幸福の追求の権利が根底から覆されるという、窮迫、不正の事態に対処し、やむを得ない措置として容認され、必要最低限度の範囲に留まるべき。他国に加えられた武力攻撃を阻止する集団的自衛権の行使は憲法上許されないとあります。しかし、2014年の7月、政府は、我が国を取り巻く安保環境が根本的に変容。他国に対する武力攻撃でも我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得る。従って、最小限度の集団的自衛権の行使は憲法上許容されるという従来の憲法解釈を変更する閣議決定を行いました。この憲法解釈の変更について、横畠内閣法制局長官は、先月28日の参議院特別委員会で、『政府見解を出した1972年は、国際法上認められている集団的自衛権一般を行使するのかどうかという議論しかないと、限定して行使するという考え方が固まっていなかった』、集団的自衛権の限定行使は憲法違反に当たらないという見解を示しています。元内閣法制局長官の阪田さん、横畠長官のこの答弁をどう見ていますか?」
阪田氏
「武力攻撃発生というのはすごく外形的に明らかだということと、国際法上も、それは個別的自衛権と呼ばれるものであるけれど、集団的自衛権というのは、我が国に対して武力攻撃がないという意味で、行使するかどうか、政府の裁量に委ねられるとなっているんです。それから、まさに我が国に対して攻撃がないわけですから、そこに出かけて行く、他国の戦争に参加をするという、これは権利というか、違法性の阻却事由といった方がいいと思うのですが、国際法上、現在、戦争が正当化される、ほとんど唯一の根拠なわけです。だから、これまでの議論は少なくとも(昭和)47年前後というか、ずっとそのあとも一貫していますけれども、政府は全部の集団的自衛権なるものについてダメだと考えてきたことは間違いないと思います」
反町キャスター
「その全部というのは、今回の横畠さんの発言、微妙です。全部というのは俗に僕らが言うフルスケールの意味ですか?それとも部分的な限定容認の集団的自衛権も含めた全部がダメなのか?」
阪田氏
「そうです、もちろん。それは全部がダメだという頭で議論をしている」
反町キャスター
「全部ダメというのは、限定でもダメという意味?」
阪田氏
「もちろん、ダメという意味で言ってきた、政府は少なくとも。彼が言っているのは、そこは現在の安全保障環境に照らして、ちょびっとでもやれるところがないのかということをギリギリ考えたと。それで政府はどうしてもそれが必要だと、全体として判断をしている。法理としてどこかに可能性がないかということを探った結果として、限られた範囲、つまり、我が国に対して危険が迫っているという場合に限って集団的自衛権の行使を容認するという考え方があり得るのではないかというのが彼の説明だと思います。ですから、それが全然、憲法学者のほとんどは自衛ではない、集団的自衛権の行使というのは、基本的に大変なのだから、こんなものは相容れるわけがないというところで、皆ダメだと言っているのですが、私は、それはもし理屈として立つとしてもなぜこれまで全然、必要ない、それで日本の安全事態は守られているという中で、それを一部とは言え、認めないと守れなくなったのかという、そこをしっかりと説明してくださいと。それは、法制局はわからないところ」
反町キャスター
「それは法制局の仕事ではないですね」
阪田氏
「そうです。だから、それを政府がまさに外務省であり、防衛省であり、総理でありが、しっかりと国会で説明されるという責任があるのではないのですか」
反町キャスター
「横畠さんが今回、言われた、僕の理解で言うと、1972年の政府見解における集団的自衛権の行使は憲法上許されないとする政府見解は、集団的自衛権を、横畠さんの言葉で言うと、一般を行使するかどうか。つまり、フルスケールの集団的自衛権はダメという意味では、我々は、政府は内閣法制局を含め、ダメだと言っていたのであって、今回のような限定して行使するということについては1972年の段階では違憲と決めたわけではないから、今回限定して行使するということだから、我々は容認するのだという説明に僕には見える。これは違うのですか?」
阪田氏
「限定するという発想そのものがなかったと思います(当時は)。これまでは100か0かの世界だと思っていました。だから、集団的自衛権を分けて考えるというのは今回、初めて発想したことだと思います」
反町キャスター
「集団的自衛権を一部削り出すみたいな、削るような、そういう発想というのが新たに出てきたことで、限定して行使するという考え方を、これは違憲ではないと法制局長官として認めているという、この理解でよろしいですね」
阪田氏
「そういうことですね」
反町キャスター
「そういう考え方について、阪田さんは良しとするのですか?」
阪田氏
「そこは大変言いにくい。率直に言うと、良しとはしたくないのですが、法制局の立場みたいなものを考えれば良しとせざるを得ない部分もあるかと。だけれど、良しとするためには大前提があるので、そういう解釈をしないと、まさに安全が保障できないんだということについて十分な論証というか、できるということが前提だということですね」
反町キャスター
「そうすると、横畠さんがなぜ現在、阪田さんの立場からすると、良しとしたくないんだけれども、しょうがないという解釈をせざるを得なくなったのか。これはいろいろ言われます。安倍政権になってから、内閣法制局長官人事を自分達の思い通りになる法制局長官を持ってくることによって、こういう解釈をやろうとしたのではないかという批判というか、分析が安倍さんの内閣法制局長官、前の小松さんの時からそういう話が出ています。内閣法制局長官の人事を、内閣総理大臣がわかるように行使することによって、横畠さんもそういう、これまでなかった、スライスのような切った、薄い集団的自衛権の行使については認めざるを得ないと押し込まれているという見方でよろしいですか?」
阪田氏
「それは、内閣法制局は政府の機関だから当然のことだと思います。限界がある。それは政府全体からそっぽを向いて仕事をやっていくということはできないですね。ですから、当然、政府がやろうとしていることに法制面でギリギリどこまで理屈をつけられるかということを考える。それは法制局の仕事だと思いますので」
反町キャスター
「現在の話を聞いていると、内閣法制局に対する見方として、よく今回の安保法制が違憲だ、違憲だという人達は、内閣法制局というのは憲法の番人で、憲法学者と内閣法制局がダメというものはダメなのだという、非常に中立で、神聖にして不可侵な存在みたいに言う人がいます。その人達が内閣法制局の歴代の見解を根拠にして、これは違憲だと安保法制を叩いている。けれども、現在の阪田さんの話だと政府の機関の一部なのだから、それはある程度、政治の、政府の時の考え方に寄り添うのは、当然だという話を聞いていますと、これまで野党の人達が言ってきたような、内閣法制局の言っていることと言うのが、神聖にして侵すべからずというのと違うのだという、ここの部分。それはどうなのですか?」
阪田氏
「そこは、だから、憲法の枠内でギリギリ、どういうことを仕組めば、こういうことができるのかと。イラクの時、アフガニスタンもそうでしたね。そういう努力をしてきた組織だと思うんです。だから、幸か不幸かこれまでまったく憲法の解釈を根っこから変えろという政権はなかったし、ですから、憲法は守らなければいけないと当然そう思う前提の中で、どうやればそれと適合するような法制なり、行政の仕組みができるかということを工夫する役所だったと思うんです。今回はそういう意味で、歴史的に初めての試練と言いますか、そういう局面に彼は当たっているわけなので」
森本氏
「なぜこういう政府見解が出たかということについて、私が核心的にというのはちょっと言い過ぎですけれども、非常に強く感じることが2つあるんです。1つはもちろん、この数年に渡る国際情勢の中で、アメリカが、たとえば、国家軍事戦略というのを先月、発表するんですけれども、その中に今日の紛争というのは、正確なハイブリッド紛争で、グレーゾーン事態が起こるということが書いてあるんです。つまり、ハイブリッド紛争というのは、ハイブリッドカーがあるでしょう。つまり、ガソリンと電池を状況に応じて使い分ける。あちら行ったり、こちら行ったり、切り替えられるというので、ハイブリッド紛争というのは、正規軍が正規軍と戦うのではなくて、正規軍と非国家主体が戦う。現象としてはクリミアみたいなような状態。つまり、ウクライナをロシアの非正規兵によって盗られたような状態。南シナ海で中国が、ベトナム、フィリピンとぶつかっている事態。つまり、国会の宣戦布告もなく、意思も明確でないが、誰かがやっている、武器を使って武力行使が行われているという、こういうのをハイブリッド紛争というんですね。これが今日の紛争の事態です。しかも、それが平時でも有事でもない途中のグレーゾーン。白か黒かわからない灰色の事態が起こって、どんどん事態が変化していくという。これが今日の国際情勢の中で紛争事態だとしたら、そのような事態が、我が国の周辺とか、我が国の国益に極めて重大な影響を与えるような事態が起こった時にこれまでの憲法解釈で、ここは集団的自衛権、ここが集団的自衛権でないと、そんなにはっきりとした対応ができるのかということを考えた時、そのようなハイブリッド紛争のグレーゾーン事態に対応できる解釈というのをとっていかないといけない。それが政策の現実ですというのが、国際情勢の構造的な変化から出てくる、今回の法解釈の背後要因の1つと。それが第1です。それから、第2がすごく個人的な話を初めて人の前でするんですけれども、小松氏は私が外務省で非常に近かったので、フランスから戻ってきて法制局長官になったあとで、もちろん、お辞めになる前ですけれども、会ったことがあります。法制局長官として何をすべきかということを、自分は自分なりに考え、フランスから戻ってこられた本人の本心というのか、随分読みました。一言で言うと、法制局が歴代の長官の下で出してきた基本的な政府見解なるものを根本的に変えることは長官としてできない、自分は。その組織の長である限り、そんなことはできない。しかし、その時の政権、つまり、現在の政権が日米同盟の、いわゆる片務性。つまり、たとえば、最近アメリカで盛んに共和党の候補トランプ氏が言っているように、日米安保条約の不平等性ですね。つまり、アメリカは日本を守る義務はあるが日本はアメリカに義務を負わない。こんな不平等な同盟条約はあるか、そうは思わないかと言ったら、イエスと国民が言う。これを未だに言われている。これを少しは、全体では双務的にはならないんですけれども、少しは解消をすることができないかという想いは、私は総理がずっと想っておられた、政治家として想っておられて、第1期安倍政権の時から想っておられて、第2期政権の時も安保法制懇をつくられた、その根底にある考え方は、日米同盟の不平等性というのを少しは改善ができないのかということだと思うんですね。完全には改善できないです、双務的にならないから。でも、私は、外務省で安保の仕事をやっていましたけれど、安保の仕事は何かと言うと、不平等性からくるアメリカ側の不満をどうやって最小限に食い止めるかという仕事です。だから、基地を安定的に使用して、ホストネーションをサポートし、ODA(政府開発援助)を出し、対米技術供与をやって、日米のインターオペラビリティを高めて、アメリカの兵器を買い続ける。いろんな努力をしてきたのは全てアメリカの不満を解消するための、安全保障上の努力です。これが安保の業務です。安保の業務というのはこういうものです。総理の想い、現在の政権の基本的なマンデート、これと歴代の法制局がとってきた基本的なスタンスの調和をどうやったらはかれるのか。これが自分の仕事ですと彼は言って亡くなった。それは現在の法制局長官に引き継がれたと思うんですね、2代に渡って。それが時の政権の政治的要請と国際環境の変化の中で日本の安全を守るために根本的な法制局のスタンスを変えることなく、僅かな細い隙間を見出し、限定的な要件下であれ、集団的自衛権を行使する手段というのをすることによって、アメリカの不満を少し解消して、不平等性を少し改善することができないのか。これがこの問題をつくり出した背景要因だと私は思っています」

機は熟したのか 安保法案 自衛隊員のリスク
秋元キャスター
「まず自衛隊員のリスクについて、十分審議されたと感じますか?」
森本氏
「十分にというのは、何を持って十分かということですけれども、法案が通っていないのに、この法案が通ったあと、どのようなことが行われ、どのような準備の体制が整うのかということについてあまり総理や防衛大臣が事細かに説明する状況ではないですよ。法案が通ってもいないのですから。だから、法案が通って秋に、たとえば、臨時国会が開かれたら、そこでいったいどういう準備をしているかが問われて、そこで初めて説明できる。先取りして申し上げると隊員のリスクは常にある。ないはずがないです。だって実力組織だから、警察であれ、自衛隊であれ、国や国民の生命を守るための活動をやる時に自衛隊員であれば、誓約書に全部誓約して、その中に非常に厳しく困難な任務だけれど、それを完遂するために自分は全力を尽くしますと誓約して入るわけですから。徴兵制ではない。リスクがあることは理解して入るわけですね。常にその行動にはリスクがつきものです。加えて、この安保法制に基づいて、あまりこういうことを言ってはいけないのかもしれないけれども、存立危機事態が毎日起こるとは考えていない、蓋然性は低いと思う。むしろこの法案の中で、重要影響事態安全確保法、いわゆる周辺事態法を改正した新しい法体系に基づいて、米軍等に必要な後方支援を行うための法制、並びに国際平和支援法という、国連安保理決議に基づいて編成される多国籍軍、国際平和と安定のために活動する外国の軍隊に対する後方支援、この2つの後方支援はメニューがほとんど同じですが、1つだけ違う。国際平和支援法に建設という言葉が入っている。前者のものにはそれが入っていない。メニューはほとんど輸送であり、補給であり、整備であり、修理であり、調達であり、施設の利用であり、医療でありという、後方支援活動が法律の中に書かれている。これをやるためには、1つずつ性格の違う活動です。補給と輸送は全然違う。整備も違うし、修理も違いますし、施設も違うし、医療も違うんです。それを個々に、隊員が日本の国外でも活動することがあり得るので、それに伴うリスクというものを考えつつ、この活動を行うために必要な体制を整える、手順を整えることもあるでしょう。手順に基づいて訓練をすることもある。そういう全体の体制をとりつつ、たとえば、補給だ、輸送だと言ったら、日本の自衛隊は専守防衛だから、海外で活動するのはPKO(国連平和維持活動)とか、国際緊急援助隊、法に基づくいわゆる人道支援、災害救援みたいなものに出る以外は日常領域の外で活動することにはなっていないし、日本の持っている自衛隊の装備はすぐ日本の持っているものを他の国に補給したり、提供したりというふうにはなっていない。予算は、日本の防衛のために認められた予算ですから。だから、本来持っていない。鉛筆1本くれと言っても、それは自衛隊のもの、任務を遂行するのに必要なもの、余っているものをあげますというふうにはなっていない。いわゆる後方支援をするということは、非常に大きな予算と制度とシステムと手順と訓練が必要。それを現在からやらないといけない。それをできるだけ完全に実行できる体制を法体系ですることによって、隊員のリスクを減らすことができる。一言で言って、そういうことです」
反町キャスター
「リスク論によって審議がずっと続くのをどのように見ていますか?」
阪田氏
「この点はたまたま憲法上の要請とある意味では一致をするというか、要するに、武力行使と一体化をするから、活動は非戦闘地域だということで随分非難をされたところもありますけれども、我々としてはそれこそ現在の限定的集団的自衛権の行使と比べると、はるかに罪は軽かったのかもしれませんが、ギリギリ何ができるのかというところの知恵だったわけですよね。法的にも我が国自身が武力行使していると評価をされないだろうと、同時に自衛隊員もそれなりに安全なところで活動ができるのではないかということだったわけですね。アフガニスタンは洋上給油でしたから、そんなにリスクはなかったかもしれないが、たまたまイラクではそんなに犠牲者を出すようなことなく終えることができたということだった。今回は、非戦闘地域概念をなくすというか、緩めると、現に戦場でないところであれば一応活動はできるということですので、そこは法的にも議論の余地はありますけれど、同時に自衛隊員のリスクはそれだけ見ていると高まるわけです。そこは本当に大丈夫なのかと心配される方の気持ちはわかる。それに対して、実際に活動する地域は安全なところを指定するから大丈夫だというご答弁だったと思うのですが、それならなぜ非戦闘地域という概念を維持することができないのかと、どうも説明を伺っても理解できなかった。集団的自衛権の行使場面というのは、これはそう出てこないと思うが、現在の重要影響事態法、あるいは国際平和支援法での活動は、近い将来にあり得ることだと思いますので、本当に慎重に運用してもらいたいなと思いますね」
森本氏
「おっしゃるのは正論だと思うんです。そこで実際にある特定の分野において、ある活動をしないといけないという時に、あらためて実際に行うに必要な実施計画、あるいは範囲と内容、そしてそのできあがった法案の持っている本来の意味との整合性、私はあらためて立法府できちんと説明を要すると思います。現在法案が通ったから、もういいというのではなく、何のためにこういう後方支援をどこでやらないといけないのか、もし危険が起こったらどうしたらいいのか、あらためて細かく実施計画で事前に国会で説明をきちんとして国民の理解が得られるような実施計画にして出すということが必要だ。平和安保法制が今回審議終わって仮に採決が行われても、国会での議論はこれで終わらないと思います。私はきちんとケースバイケースでもう1回、憲法に立ち返って、1つずつの行動が真に合憲であるのか、本当に合理性があるのか、きちんと説明する責任を政府は負っていると思います」

安保法案 成立で日本はどうなる?
秋元キャスター
「法案成立によってどういう反応が出るのでしょうか?」
森本氏
「私は総理訪米の直後、いろいろな議員と一緒に全米4か所をまわってきました。どこに行っても日本が新しい閣議決定に基づく、ガイドラインと閣議決定を実行するための平和安保法制、これが通ることによって日米同盟がより緊密に強固になることについて、誰しもアメリカの中では歓迎する。これはアメリカの中で与野党を問わず、あるいは政府、学識経験者を問わずアメリカが日本のやろうとしている方向に歓迎という意思表示でした。我々は非常に勇気づけられましたけれども、しかし、非常に気をつけないといけないのは、先ほどの議論のように、フルスケールの集団的自衛権を行使するのではない、現実にこの法制が持っている性格をアメリカにキチッと説明する責任を我々は負っていると思います。同時に中国と韓国は賛成と言わないが、非常に抑制された評価ということです。つまり、大反対というのではなく、日本がどういう方向に行くか、我々は注目したいということを言い、ここは絶対反対ということを言わないのは、法制に基づいて日本がどういう活動をするのか、まず見極めたいという慎重な意見が、中国や韓国の中であると思います。一方、その他のアジア諸国はこぞって歓迎すると、アジア諸国のほとんどは歓迎の対応です。我々が気をつけないといけないのは過大評価されても困るし、誤った理解で、日本は戦争に入っていくのだという理解が広まることは厳しく戒めないといけないのですが、日米同盟がより強固になり、アメリカはじめとする多国籍の部隊が国際平和と安全のために活動するのを日本が後方支援であれ、これまでより前に出た、進んだ積極的な貢献や、役割分担をすることについて、我々が考えている以上に日本の持っている防衛力とか、日米同盟が持っている機能というのが周辺諸国から非常に高い評価を受けている。我々はこの程度だと思っているが、他国はそう思っていない。日本は新しい役割を負って、新しい任務を領域の外で実行するんだということについて大変慎重に、また注意深く見ていると思うんです。そのことは日本人としてよくよく考え、わきまえて行動しなければいけない。が、政府が一般論として言っている、抑止力が強化されると言っているのはその通りだが、どのように強化されるのかということがまだ十分に具体的に説明されていないと思います」

阪田雅裕 元内閣法制局長官の提言:『主体的な判断』
阪田氏
「今回の法律は日本ができること、外枠を決めるだけで、やらなければいけないことを決めるわけではない。アメリカがいつも正しかったということでは残念ながらないわけです。典型的には、ベトナム戦争のようなものもあった。日本の外交は、日米同盟はとても大事ですけれども、これまでは9条があるから、それはできないですと言えてきたところを、これからは9条の壁が相当に低くなるわけですから、森本さんもおっしゃったように、憲法を盾にして断ることが難しくなった分だけ本当にこれが世界的に評価できる活動なのかどうか、やってもどこかに恨みを買わないような活動なのか、政府も、議会もしっかりそれを見極めてやっていくことが非常に大事だと思います。自衛隊を出すことが正しいことかどうかを国民もまたしっかりと見張っていくことが求められると思います」

森本敏 元防衛大臣の提言:『安保法制を実施する体制をすみやかに整備すべし』
森本氏
「この法案が成立したという前提でお話をしますが、成立したあと、我々がやるべき仕事はすごく多くて、法律があれば何でもできるわけではない。これを実際に効率的に実行し、国民がさらに理解し、支持をしてもらうためには、それを実行する国内の体制をできるだけ速やかに整備をし、執行期間、法律が通ってから実際に履行するまでの時間はそうはないので、大変大きな仕事を皆が抱えると思うが、できるだけこの法案のもとで、もしやらなければならないことがあれば、それを実行できる体制を整えるということが次の優先課題であると考えています」