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2015年9月3日(木)
軍事パレード徹底解剖 中国の最新兵器の標的は

ゲスト

小野寺五典
自由民主党政務調査会長代理 元防衛大臣 衆議院議員
小原凡司
東京財団研究員・政策プロデューサー
加茂具樹
慶応義塾大学総合政策学部教授

抗日戦勝70年 軍事パレード 中国の意思と戦略は
秋元キャスター
「今日、北京で行われた中国の軍事パレードですけれども、これが抗日戦勝記念日に行われたというのは初めてだということですが、まず加茂さんに聞きたいんですけれども、これまでの抗日戦勝記念日というのはどういうことが行われてきたのですか?」
加茂教授
「これまでの演説を見ると、基本的に中国共産党が抗日戦争にどのように活躍したのであるかとか、どのようにして戦ったのかであるとか、あるいは日本にどの程度の被害があったのかという、そういう文脈と、あとは前回のものであれば、国民党、台湾の勢力が、中華民国がどの程度、活躍したのか、していないのかというところが1つ重要な論点だったというか、外部観察者から見ると論点だったわけですが、今回は、演説の中身を見ると極めてすっきりとした演説だったと。メッセージ性も極めて強いと感じられると思います」
反町キャスター
「台湾のことだけ先に片づけさせてください。そうすると50年、60年の時には、台湾、蒋介石、国民党が日本との戦いにおいて主力であったとか、そういう言い方は過去にはしていたのですか?」
加茂教授
「50年と60年を比較すると、60年の方が国民党の役割というのですか、全面に出ているというか、評価をしてきているということで、その時代によって評価が変わりつつあるということです」
反町キャスター
「今年はどうだったのですか?その点については」
加茂教授
「今年は、その点については特に明記はなかったと思います」
秋元キャスター
「なぜ、そのように時代によって変わっていくのでしょうか?」
加茂教授
「歴史をどう語るかというのは、政治がある意味、決めるものですので、中国にとってみれば、台湾とどう関係をつくっていくのかと。その文脈の中で、中華民国がどのような活躍をしたのかということは、重要な、台湾に対するメッセージになるということだと思います」
小野寺議員
「今回出席している、プーチン氏と2人並んだ姿を世界中が見た時に、これは南シナ海でやっている国と、ウクライナでやっている国と、言ってみれば、国際社会の中で、力によって現状を変えようとしている、両巨頭が並んでいて、その言葉から覇権主義はとらないとか、そういう言葉が出るということは、私はちょっと言っていることと、現在やっていること、あるいは国際社会が、歴史として捉えていることと、あまりにも差があるので、何となくよく言うなという印象を持ちました」
加茂教授
「過去の文章から比べると、言及の力点というのが、歴史や、抗日戦争という文脈よりも、今回の演説はもう少し別の観点を中国が強調したんだろうなと。つまり、これからの中国は、国際秩序をつくっていく主要なアクターである。なおかつ、ある意味、中国側が重視しているキーワードとして、運命共同体という概念を提起しているので、つまり、中国と共に国際秩序をつくっていくと。それで、国と国との間でつくり上げる国際秩序というのは共にwin-winの関係になるんだと。そういうことを強調したかったのだろうと思います。ただ、この演説の内容と、軍事パレードの中身というのは、我々が両方を見て、中国はいったい何をしたいのかと。何をする力があるのかというのを評価する必要性があるのだなというのを感じました」
秋元キャスター
「抗日戦勝記念日として、初めて軍事パレードが行われました。概要を見ていきたいと思うのですが、行われた場所、北京の天安門広場でした。中国政府の発表によりますと、1万2000人の兵士が参加したということです。参加した兵器ですけれども、戦車などおよそ500両。戦闘機などおよそ200機。その他に弾道ミサイルや巡航ミサイルなどということです。そのうち8割以上が初披露の兵器とされています。主な参加者ですけれども、ロシアのプーチン大統領、韓国の朴槿恵大統領、北朝鮮から崔龍海労働党書記。国連の潘基文事務総長が出席したということですけれども、小原さん、この中国の大規模な軍事パレード。これまでは10月1日、中国の建国記念日にあたる国慶節に行われるのが通例だということです。今年は中国が抗日戦勝70年記念日とする今日、行われたわけですが、この狙いをどう見ますか?」
小原氏
「まず軍事パレードの性格ですが、国慶節に行っているものと、今回の戦勝記念日として行ったものでは内容が違うと思います。今回、示したかったものは先ほど、加茂さんもおっしゃいましたように、単なる威容を示すものではない。中国は政治的にここで示したいものがあったはずです。これは小野寺先生もおっしゃいましたように習近平主席の演説の中で出てきているもの。メッセージは大きく3つに分かれていて、非常にクリアです、メッセージ性が。1つは中国人民のお祝いであると。これは抗日戦争勝利ということですけれども、2つ目は、世界が祝うイベントである。これが反ファシスト戦争勝利と。この中で先ほど、加茂さんがおっしゃった、運命共同体の話が出てくるわけですが、実はここで私が注目したのはそのあとに出てくる新型国際関係です。これを積極的に構築しなければならないと言ったんです。これは協力、win-winの関係を核心とする新型国際関係を積極的に構築をしていくといった意味は、現在の国際関係は協力的でもwin-winでもないと中国は認識しているといったことに等しいわけです。ですから、中国にとっては、win-winの国際関係をこれからつくっていくのだということを、ここで明言するわけです。これは中国が言う国際社会におけるポジションの調整というものにつながるわけですが、中国は戦勝国であるということをこのパレードで示したい。戦勝国であるから、本来は国際ルールをつくっていく側にいるべきなんだと。ところが、国力が低かったが故に、欧米に好き勝手をされた。だから、現在の国際社会は不公平だと。中国はこれを変える権利を持っている。その正当性をまず主張する。それと、その能力を現在は持っているんだというのを示すのがこの軍事パレードです。ですから、各国の軍隊に参加を呼びかけたのは国際観閲式のような形にしたいと。国際社会がお祝いをしているのだと。それを主催しているのは中国である。各国の首脳や代表団を従えて、習近平主席はその中央に立って、各国の軍隊の部隊からも敬礼を受ける。これを国内に見せることがとても重要だったと思います」

参加兵器と中国の戦略
秋元キャスター
「小原さん、この軍事パレードのどこに注目をされましたか?」
小原氏
「中国は、アメリカを意識しているという布陣になっていると思います。これは、各装備品を見ると、DF-16というのが1000kmの射程ということですけれども、中国では、これは第一列島線をターゲットにしているのだと。第一列島線は、沖縄から南西諸島にある米軍基地、あるいは自衛隊の基地がターゲット。DF-21というのは、対艦弾道ミサイルと言って、陸上の施設を狙うのではなくて、中国に攻めてくるアメリカの空母打撃群をターゲットにする。これは射程が3000kmぐらいあるのですが、最終的に船に突っ込む時に、普通は自由落下なのですが、飛行経路を変えられると中国は言っているんです。もし飛行経路を変えることができると、現在の技術では落とすことができないです。ですから、対艦弾道ミサイルの技術については、各国はまだクエスチョンマークをつけているんですけれども、実際に配備はしているということです。さらに、若干、射程の長いDF-26(中距離弾道ミサイル)。これは日本や朝鮮半島をカバーできるものですから、地域におけるアメリカや同盟国の基地を叩けるという能力を示した。さらにDF-31(大陸間弾道ミサイル)、DF-5というものを示し、アメリカに対する核抑止力を持っているんだぞということを示したかったわけです」
反町キャスター
「現在の話ではDF-16、1000kmのものは、第一列島線のところまでは中国の本土からミサイルで叩けるぞと、こういう意味だという話だったんですね。その次の、たとえば、4000km、3000km飛べるやつというのは、第二列島線ぐらいまでのイメージですか?」
小原氏
「3000kmはそこまでは行かないです。第二列島線の中になります」
反町キャスター
「そうすると、中国の、今日見せたミサイルの種類というのは、中国の本土からここまでも叩けるミサイルもある。このへんまでも叩けるミサイルがあると。要するに、レンジによっていろいろ武器があると。しかも、1番長いやつというのはアメリカ本土までも行けるものもあるという、バリエーションを全部見せたという、こういう理解でよろしいですか?」
小原氏
「その通りです。ですから、中国が今回、バリエーション豊かな弾道ミサイルを並べて見せたのは、まずアメリカに対して核抑止力はあるぞと。アメリカが中国に対して軍事力を使うことを抑止すると。それにもかかわらずアメリカが軍事力を行使したとしても、中国は西太平洋やアジアでのアメリカ軍の活動を無力化できるということを示したと。これは弾道ミサイルもそうですし、さらには航空機の布陣もそういうものです。こちらは、最初に飛んだKJ-2000、KJ-500、KJ200という空中警戒管制機なのですが、中国は東シナ海に防空識別圏を設定しました。ただ、この空域を監視する能力はないと言われていたんです、不足していると。ですから、スクランブルもかけられない。しかし、地上のレーダーを建設もしていますし、それを補完するものとして空域を監視し、さらに、戦闘機をその場所に誘導することができるといった航空機を大量につくることができれば、監視能力、対応能力は飛躍的に高まるということになります。特にこのKJ-2000というのは、機体はロシア、技術はもともとはイスラエルと言われていますけれども、1機300億円ぐらいする機体で、とてもたくさん買えないと。そこで廉価版のKJ-500。これは大量生産ができると中国が言っている機体です。ですから、こういったものを若干性能は落ちても基数を揃えることによって能力を高めるということができる。さらには、次にH-6Kという爆撃機です。これは航続距離を伸ばしたんです。8000kmぐらいあると言われています。さらには、この爆撃機は射程が2500kmぐらいある。地上発射型、先ほどの巡航ミサイル(の話)もありましたけれども、あれは飛行機からも発射できるんです。その飛行機からも発射できる、その射程2500kmの巡航ミサイルとあわせると、これは中国ではグアム島の米軍を叩く兵器だという言い方をするんです。こういったことをパレードの前に盛んに言って、こういう兵器を並べて見せるというのは、アメリカが、例え、中国に対して攻撃を仕かけようとも、西太平洋やアジア地域では中国はそれを無力化して見せるということを誇示したい。アメリカと対等なのだということを見せたいわけですね。これは先ほど、国際社会における規範などを中国は今後変えていくのだという意志表明をしたと思うのですが、具体的に、中国はこれをアメリカとやるのだと。米中2大国が決めていくんだという、これは突き詰めて言えば、中国の言う米中新型大国関係で、中国が自由に権益を追求しても、アメリカが軍事力を行使しない関係。これが中国の理想なわけです。と言うことは、アメリカに対して中国の要求を飲ませなければいけない。そのためにアメリカにちゃんと対抗できる力を見せなければいけない。対等だということを誇示したい。これがパレードでは非常に色濃く出ていたと思います」

急速な軍事増強&近代化 中国の狙いとその背景は
小野寺議員
「おそらく今日、いろんな映像を見て、映像を見た方というのはなるほど、安全保障環境が一層厳しさを増していることを、たぶん1番実感されたと思います。私も、防衛当局も様々な防衛装備については、しっかりと研究もしていましたし、中国の能力についてもわかっていますが、とにかく開発のペースが大変早い。資金力も潤沢であると。何より国家の意思としてこれをどんどん進めている。たとえば、日本であれば当然、専守防衛ですから、弾道ミサイルというものを当然持つことはしていませんし、様々、防衛装備についても憲法を含めた制限があると。こちらはそういう中で日本の国を守ろうと思って努力をしているのですが、ふと日本の周辺諸国を見ると、まったくそういう私どもの考えとは別に違う次元で防衛力がどんどん整備されている。それに対抗して、日本はどうやって国民の生命、財産を守るか。これに、いつも私ども防衛当局は悩んでいます。その中で是非知っていただきたいのは、これは私自身の国際交渉の中で、中国軍の上層部の方が発言した時の印象なのですが、たとえば、南シナ海でいろんな国から中国に対して非難が国際会議で集まります。その時に中国軍のトップの方は何と言うかというと、たとえば、ベトナムやフィリピンのエリアも2000年前、これはもともと中国の領土ではないのかと。自分達はそういう考えの歴史観を持っているんだという話をされて、その会場が皆シーンとしたんです。と言うことは、なるほど、たとえば、私達から見れば、現在の日本の領土、領海、中国の領土、領海というのはこういう形で規定されていると理解をしているのですが、中国の、たとえば、長い歴史から見ると、従前はたぶんもっと広いエリアを、中国はもしかしたら占有していたかもしれない。たまたまこの100年。いろんなことで政治が、あるいは政権が弱くなって欧米列強を含めて、他国からどんどん圧力を受けてきて、現在のような状況になっている。だけれども、もともと中国はこのぐらい大きな影響を持っていたのだと。おそらく中国の国民の皆さんは歴史でも、地理でも、こういうことを学んでいるのだと思います。そうすると、現在急激に力をつけてきた中国がどういうスタンスで、これから東アジア、あるいは南アジアを考えていくかとなると、当然1番、昔大きかったところと印象づけます。たとえば、自分のひいお爺さんの時は、うちの家、屋敷はこんなに広かったと。ところが、お父さんの代とか、お爺さんの代でかなり傾いちゃってこんなになっちゃったと。でも、ようやく最近、自分は力をつけ、これだけ広いところでも、今後はもしかしたら、昔のひいお爺さんの時の家、屋敷のところまで当然、私達は主張できるねと。もしそういう考えでいくとすれば、それだけの経済力と軍事力が相まって、そういう考え方でいけば、これは大変危険だと思います。ですから、私達がいつも気をつけているのは、中国も現在、隆盛期で、軍も含めて強くなっています。ただ、どこかの時点で成熟期があって、一定の安定した国をつくっていくんだと思います。人間で言えば成長過程にあるような中国の国とか、中国の軍ということであれば、現在ここである面、1つ1つの動きに対して過敏に反応するよりは、大人の冷静な対応を取りながら、しっかり国を守っていく。いずれ中国も一定の安定感が出た中で、たとえば、力による現状の変更はあってはならないとか、いろいろな私どもが考えているルールと同じようなスタンスをとってもらえるのではないかとか。それまでの間、私達はしっかりこの国を守らなければいけない。そういう意味で、現在の安全保障環境が厳しいと、なるほど確かに中国の防衛装備というのはここまで急速に伸びているということに関して、安全保障環境は変わったということを是非、見ている皆さんにも共有していただきたいと思います」
反町キャスター
「加茂さん、軍事力増強の話を小野寺さんがされました。中国共産党、中国政府でも結構ですけれども、中国政府としての、共産党としての軍事力増強の方針。現在、成熟期に差しかかったならという話がありましたが、いつかテンポがスローダウンするのではないかという話もあったんですけれども、その勢い、ないしはいつの日にか、どこかで飽和点を迎える、スローダウンする可能性があるのかどうか。ないしは軍と共産党の力関係ですね。それを制御できるだけの力を共産党が持っているのかどうか。維持ができているのかどうか。これはどう見ていますか?」
加茂教授
「これからどうなっていくかというのは、なかなか予測するのは難しいんですけれど、今回、今日、私達が見た、聞いた、演説と軍事パレードをつなぎあわせて考えると、中国が目指す新型国際関係であるとか、運命共同体とか、国際社会の平和と発展を築いていくとか、という発想と、そういう主張と軍事パレードというのをセットで考えると、中国の指導者の国際観というのかな、世界観というのは、力が重要なキーだというイメージを持っているということを我々は読みとる必要性があると思うんです。その文脈においては、中国共産党の政権にとってみれば、軍というのは重要な存在であるし、これから中国共産党が成長していく、中華人民共和国が発展していくという意味で、軍の役割というのは引き続き、重要な役割を持っているということだということを、私達は淡々と理解していく必要性はあると思います」
反町キャスター
「ただ、経済成長を見ても10%超えていたものが、9、8、7%…現在、実質5とか、4.5%とか、そう言う人もいるではないですか。そうした中で軍事費だけ年率10%ずつぐらい上がっているんですよね。そういう情報というのは中国国内で公開されているのか。公開されているとした場合に、たとえば、一般的な中国国民において、俺らの暮らし、こんなになっているのにと。日本だったら生活が苦しい中で、防衛費だけが年率10%上がっていたら、これは騒ぎになりますよ。そういう世論、ないしは政治的な圧力が軍にかかるという可能性というのはないのですか?」
加茂教授
「この軍事パレードの数日前に、人民日報でこういう記事がありました。『軍事パレードをすることは、国民の、民生の問題とかを減らしてしまうというか、過剰に軍に国家予算を投入することはいかがなものかという疑問があるけれど、私達はこう答えます』というような形の記事があったんです。そこから推測すると、当然、中国の社会は現在、多様ですから、当然軍に対する財政を投入することに対して批判というのはあるでしょうし、また、我々が見ている、中国社会の動きを見てみると、もう少し民生の問題だとか、社会の安定にもっと財政を投入するべきだという議論は当然、あるんだと思います。ただ、同時に、国家として国際社会の中で名誉ある地位であるとか、影響力という観点からすると軍事パレードに対して評価をするという声も当然、同時にあるということだと思いますので、これから経済の速度が維持できなくなると、当然、限られたパイをどのようにして配分していくのかというのはある意味、政治の中で、大きな課題になってくるのだと思います。そういう時代は当然、来ると考えてもいいだろうと思います」

中露関係と東アジア情勢
反町キャスター
「戦争の後半においてソ連の赤軍は中国の東方戦場に赴き、中国の国民と共に、日本と戦い、日本の侵略者を打ち負かすプロセスを早めたと言っています。旧ソ連の対日参戦については」
小原氏
「歴史的な事実は違うと思います。ただ、中国はこう言わなければならなかったのだろうと思います。実際国民党の背中を押したのはスターリンであることは間違いないと思いますが、しかし、スターリンは一切参戦する気はなかったわけで、蒋介石に対して、もし危なくなったら必ずソ連が助けると言い続け、ただ蒋介石を日本と戦わせ続けたわけです。結果として日本は南京まで侵攻しなければならなくなりましたし、その結果、中国が言うような事件等を宣伝されることにもなった。さらにはその途中、過程でアメリカやイギリスの権益も侵すことになって、最終的には太平洋戦争にも入ることになった。こうしたロシアのやり方というのは非常に怖いと思いますね」
反町キャスター
「今回、たとえば、中国側がロシアの前のソ連に対して対日参戦をこういう形で非常に高く評価した。それぞれロシアと中国の間でどこまで本当かわかりませんけど、今後、たとえば、中露が連携して、日本に対して、歴史問題に対してですよ、歴史問題において対日批判で中露が連携を強めていく、その入口になるかどうか、それはどう見たらいいのですか?」
小原氏
「ロシアは単純に中国を支持しているわけではないと思います。ロシアはロシアのゲームをしていて、米中の2極に対して、いかにして3極として生き残るのか、これがロシアの目的ですから、米中は対立していた方が、ロシアが第3局として生きるスペースが大きくなると考えていると思います。こうした考え方というのは変わっていないんだと思うのですが、ヨーロッパのゲームがウクライナ危機で頓挫して、今度はアジアでゲームを始めた。これを見ていないと、実は中国はこれを理解をしていて、警戒もしているようです。2014年にロシアが急に態度を変えた時に、中国では研究者等が、ロシアがいきなり態度を変えたのでバランスが崩れると怒っていました。中国はうまくバランスをとろうとしているところを、ロシアはロシアのゲームをしようとして中国の背中を押すと。これは中国にとってさえ歓迎できることではない。ただ、中国が今年やりたかったことというのは世界がお祝いするイベントだということを考えると、中国が歴史的にどうであったかにかかわらず日中戦争、中国が言う抗日戦争の間、いかに世界各国が中国を支持してくれたのか。中国がその支持を得ていかに日本と戦ったのかというストーリーをつくらなければいけないわけですね。今回の主賓であるロシアをここから外すわけにはいかない。まさにメインゲストですので、そうした意味で、こういったストーリーになったのだと思います」

中韓関係と日米韓連携の今後
秋元キャスター
「中国が韓国を招待した狙いをどう見ていますか?」
加茂教授
「北東アジアの中で、主要なアクターというと、日本があって、中国があって、ロシアがあって、当然アメリカというものがあると。北東アジアの安全というのは、日米それから、日韓との同盟関係である程度あって、中国からしてみるとこの強固な国際関係の中にある種、ある意味での楔を打ち込みたいという、そういう戦略的な意図というのは当然あるんだと思うんですね。今回の国際軍事パレードに韓国を招聘するというのはその文脈において、ある種、自然の流れなのだろうと感じますね」

朴大統領出席の背景は
秋元キャスター
「今回、韓国が軍事パレードに出席したことについては当初、同盟国であるアメリカからも懸念が伝えられたという報道もあった中、結局、朴槿惠大統領は最終的に式典にも、軍事パレードにも出席することになりましたけれども、韓国の事情というのか、立場をどう見ていますか?」
加茂教授
「そうですね。北東アジアの中で韓国というのは相対的に国力が弱いというか、つまり、大国としての日本であったり、中国であったり、アメリカであったり、ロシアのパワーゲームの中にある種、真ん中にポッとある国ですよね。そうすると、こういう国にとってみて、大国間のゲームの中でどうやって生き残ってサバイブしていくのか、これはとても難しいことだと思うんですね。ご案内の通り、韓国と米国は軍事同盟がありますし、それから、中国と韓国の間も経済関係が極めて密接ですので、韓国から見るとどのようにしてこの難しい国際関係を生き伸びていくのかというのは、この経緯を見るだけでも非常に苦しい選択というか、もう大変だなというのを感じますね」
反町キャスター
「韓国のポジショニングをどう感じていますか?」
小野寺議員
「韓国は韓国で悩まれて、自分の国のポジションを決めているんだと思います。それは私どもがどうこう言う立場ではありませんので、非常に苦労されているのは今回の朴槿恵さんの表情を見ても何となく感じます。ただ、1番感じますのは、私ども、たとえば、日米韓、この3つで当初は東アジアを含めた安全保障の一定のバランスを保ってきた中で、韓国がどうもこれだけ中国と近くなっていく。その中で、たとえば、軍事的な様々な情報の共有を、本当にどこまで私どもしっかりできるのだろうか。それが一定程度、たとえば、今後その3つの国の関係がしっかりできるかどうか不安であれば、ここのバランスが1つ崩れてしまいます。いろんなことを考え、たとえば、最近は友好国であるオーストラリアと新たな関係をつくっていく。それから、インドとも関係を結びつつある。そういう中で私ども常に生き物のように、実は安全保障の様々な動きを考えながら、それぞれの国との対応を結ぶ必要があります。ですから、韓国はおそらく経済的にも、あるいは地政学的にも北朝鮮の問題も考えて今後も中国に一定の配慮をせざるを得ないとすれば、日本としては密接不可分な関係の国ではありますが、そこは安全保障の面で一定の私ども韓国の行動については予測をしながら、それであればどういうことが必要かという、また、別な局面で安全保障の関係をさらに広げていくというか、そういう選択が必要だと思うので。韓国がこうだからけしからんとか、素晴らしいとかというのはまったくなく、むしろそういう立場に当然、地政学的にもなるかもしれないとすれば、別な形で私どもは安全保障関係をつくりながら、もちろん、日米韓も大事ですが、オーストラリアや他の国ともしっかりと結んでいくということが大切だと思います」

小野寺五典 自由民主党政務調査会長代理の提言:『国際社会との協調』
小野寺議員
「国際社会との協調の中で中国に対して一定の歯止めと、ある面で国際社会全体としての中国の成熟と言うのでしょうか、脱皮を、私どもは要請していくことが大変重要だと思っています。是非中国の軍のことについて理解していただきたいのは、あれは中国国民のための軍ではありません。現在でも中国共産党のための軍ですから、共産党を守るということが基本ですので、たとえば、中国の中で様々な人権にどうかなという問題に関しても軍が出て行って鎮圧をするということがあります。私どもとしては大切な隣国ですから、中国には是非、一定の成熟度を増した形での国際社会でのプレイヤーになっていただきたい。そのためには現在は国際社会が協調して中国に一定のメッセージを伝えていくことが大事だと思います」

小原凡司 東京財団研究員の提言:『大きな盤で外交ゲームのプレイを。』
小原氏
「日本はどうしても中国だけに意識を奪われがちですけれど、これも小野寺先生がおっしゃったように、国際社会の動き全体を見なければ正しい判断はなかなかできないだろうと。1つの国だけに意識を奪われてしまうと、かえって大国に駒として使われることになりかねないと。大きな盤でプレイをしているプレイヤーがいるわけですから。日本がその中で小さな部分だけ見るのではなくて、同じように大きな目で見ながら、流動性を追っていかなければならないと思います」

加茂具樹 慶応義塾大学総合政策学部教授の提言:『強靱な適応』
加茂教授
「今日の議論の中で明らかになったことというのは、東アジアの国際情勢が大きく変わってきているということ。まさに過渡期であるということと国家間の国益というのは当然違うということですので、状況の変化にうまく日本は適応しなければいけない。ただ、適応というと受動的に感じますけれども、そうではなく、国際社会が変化していることを理解しながら、淡々と日本としてやるべきことというものを考えていく。そういう意味での強靱な国際情勢理解というのが重要だという意味で、こういうことを書きました」