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2015年8月25日(火)
待機児童解消の根本策 保育園義務化は暴論か

ゲスト

田村憲久
前厚生労働大臣 自由民主党政務調査会長代理 衆議院議員
猪熊弘子
ジャーナリスト 東京都市大学客員教授
古市憲寿
社会学者
山本周
フジテレビ解説委員長

保育園義務教育化 提案のワケ
秋元キャスター
「先月出版された『保育園義務教育化』というのが話題になっています。この中には、保育園を義務教育にすれば待機児童がなくなるという大胆な提案が書かれているのですが、この本を書かれた古市さんに来ていただいていますけれども、古市さん、現在、独身?」
古市氏
「独身で、結婚もしていないですし、子供もいない状態です」
秋元キャスター
「あまり子供が身近でない印象ですけれども、なぜこの本を書こうと思ったのでしょうか?」
古市氏
「僕は今年、ちょうど30歳になったんですけれども、同級生が、子供が生まれたとか、出産、育児を経験していて、その状況があまりにも異様だなと思って、特に、お母さんが置かれている状況があまりにも酷いと思ったんですね。たとえば、子供が生まれてから、保育園にもすぐに入れないとか、子育てがとにかく大変だ。夫の助けもない、社会の助けもない状況があまりにも不思議だなと思ったんですね。どういうことかというと、現在、この国では労働力不足がすごい問題になっている。一方で、少子化が問題になっている。子供を生んでくれた親、特に、お母さんというのは労働力不足と少子化を解消してくれた存在であるはずなのに、その人達が保育園探しに奔走している。ある子供を生んだ親は、まるで子育てが罰ゲームみたいだということを言っていたんですね。お金もすごくかかる。保育園も見つからない、仕事も大変という。だから、本当に現在、日本は少子化で、これから子供を、人口を増やさなければいけない国にも関わらず子供に対してのケアというものがあまりにもされていないことに対して、ちょっと何か自分でもできることがあるのではないかなと思って『保育園義務教育化』という本を書きました」
秋元キャスター
「そういった中で、保育園義務教育化にどうして至ったのでしょうか?」
古市氏
「保育園は、正確には、保育所と幼稚園と子供園、どれでもいいと思っていて、義務教育化という言葉を使いましたけれども、別に全員の子供が0歳から、毎日5日間、朝から晩まで預けろというわけではなく、別に専業主婦のお母さんは週1回、3時間だけでも、1時間だけでもいいと思うんですよね。ただ、もうちょっと保育園を誰もが無料で使いやすくする環境があると思うんです。義務という言葉を使ったのは、現在でも日本だと、子供を保育園に預けることに対して、後ろめたさを感じるお母さんもいる。でも、そういう時に義務教育だからということを言えば、国が悪者になるというか、後ろめたさを感じず子供を保育園に預けられるお母さんが増えると感じたんです。たとえば、小学校は当然、待機児童はないではないですか。もちろん、義務教育だから、待機児童は当然、ない。一方で、保育園はこれだけ待機児童がある。だから、待機児童をなくす。国が責任を持つという意味でも、義務教育という言葉を使いました」
猪熊氏
「たとえば、私は、赤ちゃんなんかがいる、生まれたばかりというお母さん達によく相談を受けるんですけれども、本当に生後6か月とか、7か月とかの赤ちゃんを抱えているお母さんがいつから仕事フルに復帰できますかと。たぶん秋元さんもわかると思うのですが、このまま働かなかったら置いていかれちゃう。現実に経済的に働かなければいけない。ただ、会社に戻ると男性と同じように要求される。子供を預ける場所がない、四面楚歌の状況ですよね。その中で、働き方の問題ももちろんあるし、現在この時代で、少子化でたぶん働けるけれども、働いていない人達というのは子供がいる女性しかいないです、日本では。だから、そこに働いてもらわないと経済が成り立たないという意味での、たとえば、ワークライフバランスとか、保育というのを、何かすごくわかるんですけれど、じゃあ、本当にそれまで私達が幸せかと言ったら、女性の多くが悲鳴を上げている、これ以上、生めないというふうに若い世代が思うというのは本当によくわかるんです。だから、もちろん、お金をかけることも本当に大事だけれども、お金をかけたあと、メンタリティというか、人々の考え方をどういうふうに変えていくかということもすごく先生、重要ではないかと思うんですけれども」
田村議員
「だから、両立支援なんかも、法律をつくってやってきているんですけれども、まだ、社会の意識が完全には変わっていない。企業の意識も変わっていない。でも、本当は残業をやるよりか、そうではない働き方の方が生産性が上がって、業績が上がっている企業は結構あるんですよね。だから、そういうことも含め、我々、政治もそういうような企業を応援していく。どんどん、そちらの方に移っていただくことをやっていかなければならない状況だと思いますね」
猪熊氏
「男性だとイクメンという言葉がすごく流行っているけれども、イクママという言葉はないではないですか。それは当たり前だからということだからですよね。だから、イクメンがこれだけ幅を利かせているうちは、私はまだダメだなと思います」
古市氏
「本当はイクメンという言葉がなくなった方がいいんです。だって、現在、育児休暇を男性が3日取っただけで褒められるんだから」
猪熊氏
「そうですよ。ふざけるなという感じですよ」
古市氏
「だって、女性が3日で復帰は物理的に無理わけで、だって、仮に1か月で復帰しても、逆に、何かすごく子供に冷たいなと思われるではないですか。男女の格差というのはすごくありますよね」
猪熊氏
「そう。だから、現在の30代の人達は、本当にそういう考え方に変わっているんですね。だから、そこを是非、後押ししていただけるような政策があったらいいなというふうに思うんですけれどもね」
古市氏
「この10年で、第3次ベビーブームが起こっているはずの時期で、団塊ジュニアが、ちょうど20代、30代で出産適齢期だったのがこの15年間だった。だから、本当は2000年ぐらいから2015年ぐらいまでは第3次ベビーブームで、ものすごくたくさんの子供が生まれても良かったんだけれど、そこは政治の責任と言ってしまった方がいいと思うんですけれども、待機児童問題であるとか、少子化対策を先延ばしにしてきたがために、結局、そこのタイミングで日本は人口を増やせなかったというのが、大きい失策だと思うんですよね」
田村議員
「実は、子育て対策はずっとここ10年ぐらい打ってきているんですよ」
猪熊氏
「20年近く。エンゼルプランからいったら。随分になりますね」
田村議員
「だから、本当、人口推計なんかで見ていると、出生率、合計特殊出生率が、本当は、以前の推計では1.2、現在どうでしょう、4、5ぐらいのはずなのですが、それが、1.423ぐらいまで上がってきているんですよね。だから、それは若干なりとは効いているのは事実だと思いますね」
古市氏
「もちろん、何もしていないよりも良かったと思うんですけれども、ただ、人口について合計特殊出生率が2.07、2.08台では維持できませんから、1.4で本当に喜んではいられない状況なわけですよね。しかも、これから団塊ジュニアが出産適齢期を終えますからね。出生率は変わらなくても、お母さんである母数が減ってしまうから、これから生まれてくる子供の数が減っていくだろうということは言われていますよね」
田村議員
「だから、子供達を育てやすい環境、それは保育所も含めて、それから、保育所だけではなくて、地域の子供の子育て支援の拠点事業なんかも含め、どんどんそういうのをやっていくというのが1つ。それから、もう1つは、この20年間、実は、景気の低迷で若い方々の所得という問題、これもあったんですよね」

子どもが保育を受ける権利
秋元キャスター
「猪熊さんが自身の本の中で、子育てという政治の中で、子供が保育を受ける権利という発想が必要だと言っていますが、子供が保育を受ける権利というのは、どういうことなのでしょうか?」
猪熊氏
「実はいろいろ調べていたんですけれども、子供自身が保育を受ける権利。よく間違えられて、親が子供を預ける権利という権利と思われがちですけれど、日本は子供の権利条約とかも批准しているんだけれど、なかなか子供自身に、実は必要だというニーズがあるのだということであまり考えられていない。先ほど、古市さんがおっしゃっていたように、義務教育というか、義務化をする場合に、小学校は行けない子供はいないのに、保育園に入れない子はたくさんいるわけですよね。私は20年くらい前に、うちの長女を生んだ時、すごく待機児童で苦しんでいましたから。その時から何も状況が変わっていないと。それはどうしたらなくなるのかなと考えると、子供の居場所、子供達の正当な居場所として、保育が必要であれば、ちゃんと保育を権利として与えますよというようなことが、日本は唯一、先進国の中でなされていない、0歳から5歳までの長い間。たとえば、ドイツで待機児童を解消するというのがあるんですけれど、ちょうど2、3年前ですか、1歳以上の子供に居場所を与える権利というのが決まったわけですね。そうなると、そういう権利が子供自身にあれば、たとえば、子供に保育が必要ですよと言ったら、それは子供の権利だから、ちゃんと自治体、国なりが守ってあげなければいけない。ちゃんとお金を出して、居場所としてふさわしい保育施設をつくらないといけない。どんなところでも詰め込めばいいのではなく、ちゃんとしたところをつくらないといけないというところにつながってくるわけですね」
古市氏
「フランスでは3歳児の時点で、98%の子供が保育学校に行っていますし、どこの国でも乳児教育の年齢を下げようとしている。何でなのかというと、乳幼児教育は本当に一生のうちで1番大事なことがいろんな実験でわかってきているんですね。アメリカではいくつも実験が行われているですけれど、貧しい地域の子供は、たとえば、50人を良い保育園に入れる。50人を放っておく。その後の数十年間の状況を調査する実験をいくつかやっているんですけれど、それを見てみると、良い保育園に入れた方の子供の方がその後、犯罪率も低いし、生活保護受給率も低いし、人生においてすごく成功している。一方で、保育園に入れなかった子供はそうなっていない。だから、どんな貧しい地域に生まれても、どんな環境に生まれても、ちゃんと良質な乳幼児教育を受けさえすれば、その子の人生が、どんどん良いものになっていくということが様々な実験でわかっているんですね。だから、教育への投資は乳幼児期にするか、大学時代にするかとか、いろいろあり得るとは思うんですけれども、ただ、経済学でも定説になっているのは、子供が小さければ小さいうちに、お金を投資しておいた方がその子にとっても良いし、社会にとっても良い。結果的に犯罪率も下がるし、国民のレベルも上がるし、国にとっても良いことばかりということがわかっているんですね。だから、すごく大事な5歳まで、6歳までを、日本があまりにも無関心だということは保守政党、自民党にもうちょっと考えてほしいなと思っているんですよ」
猪熊氏
「そのへんのところは自己責任になっちゃうんです。だから、子供が生まれたら、自分で保育園を探さなければならないと、皆で思うわけですよね。だけど、それは、自己責任で本当に良い時代なのか。たとえば、片方で普通に教育を受けられる、保育を受けられる人達がもちろんいるけれども、一方で、格差、貧困の問題も非常に問題になっていて、そういう本当に保育をちゃんと受けられない人達をちゃんと支えていくという意味でも、本当に皆、誰でも豊かな愛情ある保育を受けられるというようにしていかないといけないのではないかとすごく思っているんですね」

どう対応? 待機児童問題
秋元キャスター
「保育所における最大の問題、待機児童ですけれども、待機児童の数を見てみますと、2010年をピークに年々減少傾向にはあるんですけれども、未だ全国で2万人を超える待機児童がいるというのが現状です。田村さん、あらためてなぜ待機児童が減らないのでしょうか?」
田村議員
「確実に保育所が増えているんですよね。預かり人数でいくと、現在、246万人ぐらいまできているんですけれども、ただ、一方で環境が整うと、整ったところにまた、皆さんがやって来られて、私も預けられると来られるんですよね。結果的には潜在化しているものが顕在化してくると。現在、二万何人と出ていますけれども、10月になるとグッと増えます。倍になる。10月にもう1回調査しているんですけれど。それはなぜかと言うと、一応保育所などを開設していって、4月はある程度は抑えられるんですけれども、半年ぐらい経ってくると顕在化してくるんですね。それも、また、保育所をつくっていくとかで抑えていくという繰り返しで、それでトレンドがちょっと下がってきているというのは、加速化プランを進めてきている成果というのも、それも若干出てきているのかと思いますが、まだまだやらなければいけない部分だと思いますよね、保育所の整備は」
秋元キャスター
「潜在化してくると。これまでこの人数に入っていなかった人数が10月段階で表に出てくるということは、もっと本当は必要だということですよね?」
古市氏
「だから、潜在待機児童は100万人ぐらいいると言われている試算もありますし、本当、全然足りないということだと思います」
猪熊氏
「10月に倍になるというのではなくて、そういう意味ではなくて、4月の時点で、だいたい定員がいっぱいになってしまうから、そこから先も入らなくて待機児童になっていく。だから、4月と10月に一応、調査するわけですけれども、そういうわけで、4月で、二万何千人までで、10月の調査だと倍ぐらいになって、4万人とかになっているというのが通年の例だということですね」
秋元キャスター
「こうした中で、これまで認可保育園については保育所と幼稚園と認定こども園というのがあったんですけれども、新たに3歳児未満の預け先として4つの事業が認可されることになりました。まず小規模保育については、自治体に認可された保育所で6人から19人までの定員で保育を行っているもの。家庭的保育というのは自治体の認定を受けた保育者が自宅に保育施設を設け、5人以下の乳幼児の保育を行っているというもの。居宅訪問型保育というのは自治体の認定を受けた保育者が保育を必要とする乳幼児の居宅に訪問して行うというもの。事業所内保育とは事業所が従業員の乳幼児を対象に開設したものということですが、こうした新たに認可された事業もありまして、待機児童の数自体はこれによって減るということになると思うんですけれども、田村さん、これだと、たとえば、本当は認可保育所に入れたかったのにというような希望というのが、ここに行ってしまうと叶えられないわけですよね?」
田村議員
「居宅訪問型保育というのは現在、ほとんど…手を挙げている県は4県ぐらいしかないと思いますが、実はそこはなかなか保育所では預かりにくい方々、お子さん方を訪問型という話で、また、話は別になってしまうと思うんですけれど、小規模保育というのはまさにまとまった土地を確保できないという意味ではフレキシブルに預かれるという意味で、今回、大きな目玉として出てきているものでありますが、ただ、これも先ほど言いました通り、どう質を担保するのかという問題が一方であります。事業所内保育も決して事業所の、働いている方々の奥さんだけではなく、地域のお子さん方も預かれるようになっていますので、それに対し一定の助成金等々、制約はありますけれど、出しながらやってきている。これはもっと強化していこうという意味。家庭的保育というのも、これまではあった保育ママと言われていた部分ですけれども、これに関しても、まあまあ力を入れていくというか、基本の中に入れようということで入ってきたわけですね。ですから、多様な受け皿と言いますか、保育の場をつくる中において対応していこうというのですが、メインは認可保育所であって、一定の人数がいるお子さんの中で、共同生活をしながら、いろんなことを学んでいただく。人間関係を学んでいただくという意味では、メインは、私は認可保育園だと思っていますけれども。他にも認定こども園や保育所もあります」
秋元キャスター
「あくまでこちらを増やしていくということを目指してはいる?」
田村議員
「施設型保育ですよね。それが1番のメインです。それで充分に対応できない部分に関しては、他のもので対応していこうというのが基本的な考え方と思っています」
古市氏
「待機児童は都市部で多いわけですけれども、都市部はどうしても土地の値段が高い。だから、自由化しますと規制を緩和したところで、民間企業がそこまで参入できるわけでもない。しかも、保育の質の問題もありますからどんどんつくれと言っても、結局、質の悪い保育園が増えてしまってもあまり意味がない。でも、結果的にいきつくところ、お金の問題だと思うんです。それだけ国が補助できるかどうかという。ただ、こういった、様々な保育園が認められたこと自体は良いことだと思います」
秋元キャスター
「現在、保育所の国の施設の基準というものがありまして、最低基準だということですが、乳幼児1人当たりの面積は、0歳から1歳児については、乳児室で1.65㎡。ほふく室で3.3㎡。2歳児以上については、保育室・遊戯室が1.98㎡。屋外遊戯場が3.3㎡ということですけれども、猪熊さん、この保育所の施設の基準というのは厳しいものなのでしょうか?」
猪熊氏
「緩くはないです。けれど、児童福祉法というのが戦後70年近く前、決められた時には、要は、こういう基準というのは最低の最低だと。これからもっとボトムアップをしていかなければいけないよということで定められた基準です。実はそこから良くなっているかといったら、全然良くなっていなくて、むしろ緩和する方向にいってしまっているというところで、国が豊かになっているのだから、本来はもっともっと良くなければいけないものだと思っているんですね」
山本解説委員長
「1.6㎡は要するに、畳1枚分ですよね。3.3㎡って1坪ですよ」
猪熊氏
「畳2畳分です」
秋元キャスター
「猪熊さん、お写真があると聞いているのですが」
猪熊氏
「これは私が、ある保育園で基準の実験をちょっとしたんですね。最低基準は、最低じゃないかという基準を入れたんですけれども、国の最低基準はここのところ、3.3㎡と書いてあります。ちょうど0歳の赤ちゃんとお母さんに座っていただいたんですけれど、0歳の基準で赤ちゃん3人に先生が1人ですね。だから、この面積3つ分に先生が1人加わるんだと思ってください。また、一部自治体、たとえば、東京都の世田谷区とか、千葉県の船橋市とか、石川県の金沢市というところは、5㎡というのを使っているんです。この5㎡でやっているから、何か待機児童が解消できないのだ、みたいなことを言われるのですが、昔は5㎡にしておくということで、認可保育所の補助金がいろいろ良かったというところもあったりして、現在も5㎡でやっているところもあります。だから、5㎡と3.3㎡だったら、これを3つあわせた分に赤ちゃん3人と先生1人が入るんだと思っておくと、混雑の度合いというのがわかると思うんですね。一方、この3.3㎡の内側にある2.5㎡というのは東京都の認証保育所の基準です。ちなみに言うと、自治体の悪口を言うわけではないのですが、横浜市が待機児童をゼロにした時、あの時は横浜に50人以上の待機児童がいるということで、特別に基準を緩和して良いと認められていましたので、この2.5㎡よりも少ない基準で待機児童を解消したんですね。2.5㎡のところ、これを3倍した広さに赤ちゃん3人と先生が1人というふうにしていくと、その基準が狭いということは、子供がどんどん混雑していくということがわかると思うんです。一方、この写真に入り切らない7㎡という数字があるのですが、これがスウェーデンの基準と言われています。だいぶ広いですね。これは人口密度が少ないからできるのか。それともやる気があるからできるのか、お金を出せばできるのかと、いつも思っちゃうんですけれども。こういうのを見ていただくと最低基準というものが持つ意味をとても良くわかっていただけるのではないかと思っているんですけれども」
秋元キャスター
「大企業については、会社の中に必ず保育所をつけなければいけないという義務づけはいかがですか?」
田村議員
「現在は保育の実施義務は自治体ですよね。ですから、それを大きく変えて、それぐらい規模以上の企業には、保育の実施義務を負わせるというのは、なかなかこれは難しいでしょうね」
山本解説委員長
「東京の場合、満員電車で赤ん坊を連れて会社に連れて行くというのは難しいのではないかと、僕は思いますけれども」
古市氏
「会社の、別に社屋の中に置かなくても、会社でもっと保育園を用意するということはできるでしょうし、それを義務にしないけれども、会社がもっとがんばるという。日本はそもそも福祉とかは会社に押しつけた国ではないですか。その伝統で考えれば会社でもっとがんばれよという話もあるとは思いますね」
猪熊氏
「ただ、私は住んでいる近くにあるということの方はいいと思うんです。それは、なぜかと言うと、保育園のいろんな持っている力というか、それを考えた時に、ただ、預ければいいというわけではなくて、その子供達が自分の地元で育つということで、地域の拠点となっていくわけですよ。私もママ友、パパ友がすごく多く、地域の保育園に行っていたことで地元との関わりあいがある。そういう中の子供の見守りとか、小学生になって、そこらへんでちょっと遊んでいると、何でそこにいるのと声をかけるということができるわけですね。そういう意味では、ある意味、保育園というのは、町づくりの側面も非常にあるんですね」
田村議員
「保育所等々に子育て支援拠点としての役割を担っていただこうというのを、我々は考えてやり出したんです。現在、認定こども園は、これはマストになっていますが、保育所はまだマストになっていないので、こういうものをもっとどんどん参画いただくというのは必要だと思いますし、一方、子供達と地域と言いますか、いろんな関係もあれば、実際問題、現在言われたみたいに、子供は生まれたけれども、あと誰の目にも触れないという問題があって、こんにちは赤ちゃん事業をやっていまして、全国訪問しているんですね。その中でここは問題があるなと感じた家にはその後もフォローしていくみたいなことをやって、しっかり対応をしていくとか、それから、これは新しい日本版ネウボラで、フィンランドは妊娠から出産、子育てまで一貫して窓口としてそこに相談しに行けば、何か対応ができるというものがあるのですが、日本も同じような形で、子育て世代の包括支援センターというものをこれからどんどん増やしていこうと。そこに行けばもちろん、妊娠期であっても出産してすぐであっても子供が小さいうちであっても、相談に行ったら、こういうようなサービスがあるから、先ほど言った話ではないですが、ここに地域の子育ての拠点があるから、そこに行ったらいいですよみたいなアドバイスをもらえるような、そういうものも整備していこうというのも、現在、やっていますので、そういうものが、まだ完全にできていないものですから」
猪熊氏
「お金の問題が…」
田村議員
「消費税分でやりますから」

どう対応? 保育士確保
秋元キャスター
「この職員の配置基準、これはどう見ていますか?」
猪熊氏
「日本の場合は、0歳は手厚いというか3人ですが、3~5歳のところがグループサイズが大きいですね、海外に比べて。あと個人的には1、2歳児が6人はすごく大変なんですよ。私は子供に双子がいるので、双子を0歳で2人見ていたことありますけど、1歳児2人もすごく大変ですね。動きまわる、左右に行っちゃう子達をぎゅっとみたいな世界なので。ただ、新制度で本当は当初のプランでは1、2歳児を5:1にするということ、3歳児は15:1にするという、プランがあったのですが、お金の問題でなかなかできなかったというのがあって、そこらへんのサイズをもう少し小さくしていくべきだと思います。プロだからこそ、これだけ見られるということになっていますけれども、現実に国の最低基準ですので、現実には自治体でもっと加算をつけて、予算をつけて、たとえば、5:1にしているところを4:1にしているところ、1、2歳児ですけど、そういうところもありますので、代わりの先生をつけて、もうちょっとそこは手厚くしてほしいなと思いますね」
田村議員
「新制度で3歳児に関しましては15:1にいただければ、それに対応する助成金が出るようになりましたので、我々としては、3歳児は15:1にしていっていただきたいと思っています。それから、財政的に余裕ができれば1歳児は5:1にしたいなというふうに思っていまして、言われる通り1、2歳児にしても、なかなか6:1というと厳しい側面があるなと思いますので、そこにも何とか力入れていかなければならんなという意識はあります。言われる通り、質を担保するという意味からすれば、配置基準というのは大変重要な点だと思いますね」
猪熊氏
「たとえば、災害があった時に、0歳の子供を3人連れて避難しなければいけない、そういうことも考えなければいけないです、日本は非常に災害が多いですから。1、2歳の子供を6人連れて1人の先生が逃げられるかといったら、難しいですよね。でも、そこのところも現実的に考えていただけるといいなと思います」
古市氏
「まだ保育の質にはいろんな議論があるんですけれど、1つ言えるのは、保育士さんの数は多ければ多い方がいい。ちゃんと子供を手厚く見る方がいいということがいろんな実験でわかっているんですね。ただ、先ほども話が上がりましたけれども、保育士さんがそもそも足りない。なり手がいない。単純に保育士さんになりたい人が減っているというよりも、あまりにも待遇が悪すぎて辞めていく人もすごく多いですね。保育士さんは大事な仕事で、たとえば、海外だったら大卒だとか当たり前という世界ですけれども、日本はまだまだ保育士さんの待遇というか、社会的な地位があまり高くないですよね。僕の友人も保育士になって、手取りが12万円とか13万円ぐらいで、結局これでは自分が結婚して子供がつくれないと言って辞めちゃう人がすごく多いですね。だから、ここも結局、お金の問題なのかなと、行き着くところは、そう思いますね」
秋元キャスター
「政府としては保育士不足そのものに対しては、どういった取り組みをしているのですか?」
田村議員
「現在、保育所保育士支援センターというものをフル稼働しまして、登録などもしていただきながら、復帰していただく時にはご不安な点もありますね。だいぶ離れていると不安ですから、そういう方々にはいろいろな研修等々も含めて、復帰していただきやすい環境を整えていくということはやっていますし、ハローワークとも連携しながら、なるべく1度離れられた保育士さんですね、そういう方々にもう1度復帰をしていただく。こういうようないろんな仕組みはつくってきています。それから、先ほど申し上げましたけれど、保育士不足、つまり、待機児童の多いところというのは都会ですから、そういうところは特区になっていただければ、保育士が年に1回の試験であるのを、年2回試験を受けられるようにしようと。ただ、受かったあと3年間はまずそこでしか働けないという制度ですけれどね。3年以降は外に出られるのですが、そういう工夫をしながら、現在それも千葉と神奈川と大阪と沖縄ですかね。特区に入ってそういうことをやろうとされておられますので、どこも待機児童の多いところですから、東京はなぜか入っていないですけどね。そういうことを使いながら、保育士さんの確保をしていただくというような仕組みは我々もつくってきているんですね」

どう確保? 保育の質
秋元キャスター
「就学前の子供にどういう教育が必要だと考えますか?」
古市氏
「学力はあとから伸ばせるんですけれど、非認知能力と呼ばれるものは実は5歳、6歳までしか人間は伸ばせないのではないかというのが最近言われているんです。たとえば、コミュニケーション能力であるとか、社交性とか、自制心とか、努力する心とか、人間力という言葉に近いと思うんですけれど、そういうものは実は大人になってからは手遅れで、6歳までに実は身につけなければいけないものではないかというのが最近すごく言われているんです。たとえば、実験があって、小学校の時に夏休みの宿題をいつやりましたかと言って、ギリギリまでできなかった子供というのは大人になってからもダイエットに失敗している。どういうことかと言うと、小学生のうちまでに自制心を身につけておかないと、大人になってからも自制心が身についてないからダイエットが失敗するという傾向にある。もちろん、全員がこうではないけれども、そういう傾向があるのはわかっているんですね。だから、実は努力する心とか、がんばれば何とかなると言うけれども、実はそういうものは5歳、6歳までの乳幼児期にどんな環境で過ごしたかということがすごく大事ということがわかっているんですね。そこの中で、家庭だけで子供を見るよりも保育園とか、幼稚園とか、こども園とか、その集団の中でちゃんと育った子供の方が、そういう社交性というものが身につく。だから、その教育というと、高校とか中学で道徳を教えればいいということを言うんだけれど、そうではなくて、実は道徳とか、社交性みたいなものは実は5歳、6歳までに身についてしまうということがいろいろ言われているんです。だから、そういう意味で、保育園で何を教えるかというと、英語とかを教えてもいいんだけれども、学力というよりも非認知能力というか、ちゃんとその子供が子供という集団の中で、遊ぶとか。だから、現在、日本の保育園でされていることはあながち間違いではないというか、保育の質自体決して別に日本は低くはないと思うんです。学力以前の、努力をできる力というのは、実は階層ごとにすごく差があるんです。上階層の子供の方は、子供の頃から親が当たり前に本を読んでいたりとか、辞書を読んだりとか、家に辞書がある、そういうこととか、自然に身につくから勉強というものがそこまで努力しないでもできてしまう。でも、そういう貧しい家の子はそうはなっていないと。だから、階層が上の子供の方が、たとえば、テストが悪かった時に、悔しいと思うことは多いけれども、逆に、貧しい子だとそうは思わないとか。だから、実は自助努力と思われているものも実は家庭環境にすごく依存してしまっている。特にこれだけ階層差が出てきている時代だからこそ、昔だったら家庭に任せておけば良かったものを、もうちょっと社会でもう1回取り戻して、保育園という皆に対して、良い幼児教育をちゃんとするということがますます大事になっていると思いますね」

田村憲久 前厚生労働大臣の提言:『子供目線の保育』
田村議員
「待機児童解消だとか、いろんな問題はありますが、親と言いますか、保護者の立場に立って、それをやっていたのでは子供達は幸せではないですね。ですから、いろんな免責や人の配置基準の話もありましたけれど、確かに預かるだけの施設をつくるなら、それを緩めて、場所をどんどんつくれば保護者は子供を預けられるんです。ところが、預けられて、そこで生活するのは子供達なので、その子供達の目線を忘れちゃうと、将来の子供達がどうなっちゃうかわからないという本当に恐ろしいことになっちゃうんですよ。ですから、子供目線の保育というものを進めていかないと、子供子育て支援制度というのは失敗しちゃうと思っていますから、これが1番の肝だと思っています」

ジャーナリスト 猪熊弘子氏の提言:『どの子も、豊かで、真に愛情あふれる保育を受けられる国に!』
猪熊氏
「本当に保育園、こども園、幼稚園もそうだと思うんですけれど、いろんな家庭で育っている子供がいます。でも、この国に生まれて、本当に未来を支えていく子供達、その子供達にとって必要なのは本当にいろんなものが豊かで、その中に、たとえば、真に愛情あふれる保育。どういうことかと言うと、たとえば、質は本当に目に見えないもので、でも、保育士さんの言葉かけ1つだって質ですよね。もう何々しなさいとか、はやくそれをしなさいなんて言われて、そういうふうに何かをさせる、脅して何かをやらせるみたいなことを言われているようなのというのは、私は質が高いとは言えないと思うんです。だから、そうではなくて本当に子供自身が何を求めているか、子供が何を目指して育っているかというところを真にちゃんと見て、本当に愛情豊かに守っていくような保育というのを求めていきたいなと思います」

社会学者 古市憲寿の提言:『保育園義務教育化』
古市氏
「結局、国の覚悟だと思うんですよ。国が義務教育と同じぐらいちゃんと乳幼児教育にも責任を持ちます、お金を出しますと、これというのはただ別にその子供達のためというよりも、少子化解消というのが日本の国力につながる話ですし、良質な乳幼児教育は世界全体のレベルを上げる。だから、これは別に子供がかわいいから、子供のためにというよりも、日本全体のためにちゃんと国が乳幼児教育に責任を持つ、お金を出す。お金を出したうえで、当然お二人がおっしゃったような子供目線の教育だとか、愛情も注ぐという。だから、まずは国に責任を持ってほしいなというのが僕の考えですね」