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2015年8月21日(金)
人食いバクテリア猛威 感染症への対処と実践

ゲスト

武見敬三
自由民主党参議院議員
菊池賢
東京女子医科大学感染症科教授
加來浩器
防衛医科大学校防衛医科学研究センター教授

人食いバクテリア猛威 致死率30%の実態
松村キャスター
「急激な進行の速さと致死率の高さから人食いバクテリアと呼ばれる、劇症型溶血性レンサ球菌感染症ですが概要をまとめました。主に傷口からの接触や咳などにより飛沫感染します。急激に手足が壊死するとか、多臓器不全などの症状があります。致死率はおよそ30%にも上るということなのですが、菊池さん、この人食いバクテリアとはそもそもどのような病原体が原因で発症する病気なのでしょうか?」
菊池教授
「レンサ球菌の中で溶血性レンサ球菌という菌がいます。これは感染を起こし、このような病体を起こす。その中でも、病原性の高いA群溶連菌、A溶血性レンサ球菌というものが多いということがわかっています」
松村キャスター
「発症するとどのような症状が出てくるのですか?」
菊池教授
「症状ですね、たとえば、傷口から感染をすると、そこから壊死に陥ったり、腫れたり、軟部組織感染と言いますけれど、壊死性筋膜炎と言って急激にそこから感染が広がっていって、紫色に、たとえば、変色をしていったような感染層がどんどん時間単位で広がっていく。急激にショック、それから、多臓器不全といった病気を、病体を起こして壊死に至るというような経過になります」
松村キャスター
「かなり広がっていくスピードもはやい?」
菊池教授
「はやいです」
松村キャスター
「どのぐらいの時間?」
菊池教授
「たとえば、昔、私が経験をしたケースですと、午前中に患者さんを診察しに行って、足の方に傷があって、そこが紫色に変色していた。午後に行ったら、膝の上まで病体が広がっている。そんな感じですね。時間単位で」
松村キャスター
「実際に、診察をされたということですが、その時の患者さんの様子というのは?」
菊池教授
「もう意識もほとんどない状態で運び込まれますので、ICUという集中治療をするところで、傷も開いて、切開をして、洗っている状態で、かなり重篤な状態でした」
反町キャスター
「データを持ってきていただきました。発症から死亡までの日数ということで、これは今言われた、いわゆる人食いバクテリアに感染した場合の、0、1、2というのは、これは1日、2日目で、圧倒的多数の死亡例は、当日、1日、2日目に集中している?」
菊池教授
「そうです」
反町キャスター
「それは、この病気の特徴として、他の病気と比べた場合、飛び抜けたスピード感なのですか?」
菊池教授
「そうです。おっしゃる通りです」
反町キャスター
「これは特徴として、逆の言い方をすると、はやく対応することだけが、手段としては考えられると。そういうことになるわけですか?」
菊池教授
「そうですね。これは感染症全般に言えることですけど、早期の診断、早期の治療開始ということに尽きるのですが、この病気は時間単位、下手をすると分単位で病気が進みますので」

感染患者増加の背景
松村キャスター
「患者数ですが、年々増加をしています。調査が始まった1999年は21人だったのですが、2015年8月9日時点では279人となりました。増えている背景というのは何かあげられるものはありますか?」
加來教授
「ドクターがよく診断ができるようになったというのが1つかもしれません。それと、法令に応じてきちんと報告してくれたということも、病気が認識され、よく報告をされたということもあると思います。ただ、どうでしょう、最近の傾向としての特性も考えてみなければいけないと思います」
反町キャスター
「と言うことは、菊池さん、これまで、要するに、人食いバクテリアによる発症ということがわからないままに亡くなっている人がたくさんいたということですか?」
菊池教授
「たくさんいたかどうかはわからないですけれども、認識しないでいたというところは過少評価されてもというところはあるかもしれません。あと法律的に言いますと、2006年に、感染症法でこの人食いバクテリア。溶血性レンサ球菌感染症の届け出の基準が変わったんです。それまではA群という1番多いタイプだけが届け出の対象になってきたものが、2006年4月からはそれ以外の溶血性レンサ球菌も対象になるようになった。C群、G群、B群といった別のタイプも報告をしないといけなくなった。それも1つあります。近年、特にC群、G群の劇症型溶血性レンサ球菌感染症が増えているんです。これは高齢者に非常に多いと」
反町キャスター
「お年寄りがケガした場合とか、そういう意味ですか?傷を持っている場合が危ない?」
菊池教授
「それもあります。あと私が日頃診ていて、診療門戸として多いのが水虫ですね」
反町キャスター
「水虫から先ほどの人食いバクテリアが入るのですか?」
菊池教授
「入る、入る。そうです。水虫は、夏になると足の指と指の間がぐじゅぐじゅして、ちょっとじゅくじゅくして、ちょっと出血をしたりします。そういうところから入ります。あるいは靴擦れができた。ご高齢の方で、特に認知症なんか患っていらっしゃる方は、あまり水虫があるとか、靴擦れができたと訴えられない。そうすると、ご家族とかが気づかないといつの間にか、あれ、足がこんなことになっているということになるわけですね」
松村キャスター
「患者さんの中でも、そういう方がいるのですか?」
菊池教授
「結構、多いです」

治療法と予防法
松村キャスター
「人食いバクテリアの話ですが、これは予防法というのはあるのですか?」
菊池教授
「簡単に言うと一般的なことしかないですね。要するに、外から帰ってきたら、手をちゃんと洗う。先ほど申しましたように、特に、ご高齢の方はフットケアと言いますけれども、足、そういう状態を日頃から注意をする。たとえば、深爪をしない、合った靴を履くとかです。あるいは外に出る時にマスクをする必要があるかという問題はありますけれど、慎重であれば、外出時にマスクをする。そういった一般的なことしかないです」
反町キャスター
「特に、この人食いバクテリアにピンポイントで対応できる策は、現在の風邪をひかないためのと同じような…」
菊池教授
「同じ」
反町キャスター
「そういうものでしかないわけですか?」
菊池教授
「そうですね」
反町キャスター
「そうすると、病院、どこも大丈夫なのということもあわせて聞きたいんですけれどもね。たとえば、菊池さんの病院に担ぎ込まれる人がたくさんいると思うんですけれども、そういう人というのは、まっすぐ菊池さんのところに来ているのですか?どこの病院でもこの病気には対応できるものですか?」
菊池教授
「人食いバクテリア、要するに、この劇症型になった場合はおそらく集中治療室、それに準じた施設でないとなかなか難しいし、その足の管理であったり、それから、全身管理、結局はショックとか、多臓器不全ということを起こすので、どこの医療機関でも診れるのか、たとえば、普通の一般の開業医のクリニックに行って大丈夫かと言うと、それはたぶん無理だと思うんですね。そうすると、専門家のいるところに行かないと救命は難しいだろうとは思います」
反町キャスター
「特効薬というのはあるのですか?」
菊池教授
「基本的に抗菌薬。要するに、ペニシリンは効く。幸い耐性菌はないので、昔からの古典的なペニシリンが良く効きます」
反町キャスター
「効くまでの時間が間にあわない?」
菊池教授
「間にあわない」
反町キャスター
「間にあわない時に全身全部が病気に冒されているという、そこの部分だけなのですね」
菊池教授
「だから、治療開始、発症してから治療開始までの1分、1秒が命を救えるのかどうかに関わってくる。だから、たぶんちょっと普通の風邪だなとか、普通に足が膿んでいるだけだなと思った時に、たとえば、それが急に紫になってきたとか、ちょっと異変を感じた時に、どれだけはやく医療機関にかかるか。そこがたぶん分かれ目だと思います」
反町キャスター
「街中のお医者さんに行った時に、それは判断できるのですか?」
菊池教授
「難しいとは思いますね。だから、どのぐらいはやくに担ぎ込まれるかですね」
松村キャスター
「1番わかりやすいサインはあるのですか? 感染症の?」
菊池教授
「7割ぐらいが傷口から入るケースなので局所の所見。腫れたり、膿んだりしてきたところがどんどん広がっているということでしょうね」
反町キャスター
「武見さん、1つの例で、ここまでだと怖い話みたいになっちゃうのですが、この怖い話だけで国は何をしているのですかと僕は聞こうとは思いません。こういうところまで含めて、医療制度の体制として何かとるべきもの、感じる部分はありますか?」
武見議員
「それは、そういう早期の診断と治療がはやくできるように街中のお医者さんでも、そういう診断ができるだけはやくできるように、きちんと理解を徹底させること。それから、あと報告制度とか、いろいろありました。先ほどの、1類から5類まで感染症があるんです。この人食いバクテリアのケースは5類の感染症と位置づけられていて、それが7日以内に、その患者の発生を報告するということになっているんですね。ただ、これは現在、ご指摘になったみたいに2、3日で亡くなる確率がこんなに高いのに7日も待ってから報告をするのでは遅くなっちゃうから、7日以内というのを、もっとはやくする必要性もあるかなというのが正直、お話を伺っていながら、わかりましたので。ただ、そういう仕組みをつくって、それではやくきちんと正確に診断して、検査して、報告をするという仕組みができてきたものだから、数が急に増えたように見える」
反町キャスター
「それはある意味、対応のスピード化、ないしは効率化が、逆に言うと、この病気をあぶり出している部分もある」
武見議員
「そういうことですし、これまで気づかれなかったようなケースも含め、全部、それがちゃんと診断されて、報告をされるようになれば、結果として、その数は増えるんですから、それによって過去と単純に比較してしまうと増えたように見えちゃうと。こういうケースもあるということです」

デング熱今年は? 国内感染の可能性
松村キャスター
「ひとくちに感染症と言っても、病原体は多岐に渡ります。ウイルス、細菌、真菌、原虫といろいろあるんですけれども、上から下にいくにつれ、感染症の病原体の大きさは大きくなります。昨年70年ぶりに国内での感染が確認されたデングウイルス。世界中で猛威をふるったエボラウイルス、韓国で流行をしたMERSコロナウイルス。これはウイルスに分類されます。先ほどまで話を聞いていた人食いバクテリアは細菌で、水虫などは真菌。マラリアなどの病原体は原虫と、このように分類されています。感染者が、特に多いのがこのウイルスということになるのですが、最近話題となっているウイルス。まずデングウイルスが引き起こすデング熱です。ウイルスを持っている蚊に刺されて感染するもので、高熱や頭痛を引き起こします。加來さん、昨年、国内での感染が広がって、非常に話題になりましたが、今年はどうなのですか?」
加來教授
「今年も海外で感染して、日本国内で発病するという方はいらっしゃいます。140例ぐらいの患者さんは現在、既に報告されていますが、日本国内で感染して発病されたという方は現在のところ報告はありません」
松村キャスター
「対策や取り組み、何か行っていることはあるのでしょうか?」
加來教授
「たくさんの、海外からの方が集まるようなイベントの時には、きちんと蚊に刺されないようにしましょうという注意喚起。あとはそのようなイベントが行われる前には殺虫剤を撒く対策など、東京都などはやっていました。それがよく効いているんだと思います」
反町キャスター
「デングウイルスを持っている外国人が日本に来る。それを蚊が吸う。その吸った蚊が他の日本人の、いわゆるキャリアではない日本人に刺す。それによって広がっていく?」
加來教授
「昨年はそのパターンでした。2つのパターンがありまして、海外でもそうですけれども、海外で流行して感染した蚊が直接来るパターン…」
反町キャスター
「蚊が直接入ってくるのですか?」
加來教授
「そうです。ですから、昨年、代々木公園で何か問題が起きた時には国立感染症研究所の職員とか、東京都の職員が蚊を採取しましたね。あの中に、もし海外由来の蚊がいたら、これは仮説として感染した蚊が持ち込まれている。なんらかの理由で、たとえば、貨物と一緒に持ち込まれて、日本国内で刺したといった証拠になりますよね。でも、それは、昨年は証明されませんでした。見つかったのは、日本独自の日本に土着するヒトスジシマカという蚊で、そこからウイルスが分析されました。ですから、2番目の仮説によって引き起こったといったことになります」

エボラ出血熱終息? 感染の現状と展望
松村キャスター
「次に、国外ではエボラウイルスによるエボラウイルス出血熱。これが猛威を振るいました。発症した患者の血液や体液に触れることで感染。発熱、頭痛、嘔吐などの症状が現れます。リベリアなど西アフリカを中心に、感染はアメリカやヨーロッパにも広がりました。なぜこんなにも感染が拡大してしまったのでしょうか?」
加來教授
「これはひとたび感染が起って、医療が破綻をしてしまったということが、地域での拡大に陥ってしまったということにつながるのだと思います」
武見議員
「これは現在のご指摘の点がよくわかるんです。言ってみれば、これは1000人あたりでどれだけお医者さんがいるかとか、看護師さんが何人いるか、薬剤師さんが何人いるかというやつで、そうすると、このエボラが発生した3か国、蔓延した3か国というのを見てみますと極端にお医者さんの数が少ないですよ。日本が2.23で約1000人あたり2.23人いる。ところが、0.1人とか、0.22人と言っているわけですから、これは桁が一桁、二桁違いぐらい少ないんです。実際に今回発生したであろう地域というのは、森林で、本当に中央政府から離れていて、その支配下から事実上、離れているようなところで、お医者さんも看護師さんもほとんど誰もいないと。コウモリからエボラが伝染るんですね。そうすると、どうもコウモリも食生活の中で、栄養状態が悪いから、そういうものも食べちゃったりしているんですね、現地の方は。それによって、こうした感染が動物から人に発生し、それが変異してヒト・ヒト感染にだんだん進化しちゃったと。こういう経緯ですよ。従って、お医者さんとか、看護師さんとか、薬剤師さんとか、こういう保健のシステムが極端に脆弱なところであったから、余計広く感染してしまった。拡大をしてしまったと、現在おおよそ認識されるようになっているんです。ところが、皮肉なことに、この3か国はついこの間まで、うち2か国は内戦をしていた、中央政府とか、ローカルな政府に対し、この地域の住民は信頼をしていなかったわけ。だから、こういう感染症が起きたぞと。では、隔離をしなければいけないと。しかし、隔離をこんな政府にされたら、俺は殺されると。従って、そういう隔離をしようとする動きがあると、すぐに住民が皆、逃げ惑うと。こういう状況になってきて、的確にそういう感染者に対する隔離とか、感染防止のための施策がきちんと実行できなかったという。そういう二重にも三重にも条件が悪かった」
反町キャスター
「そうすると、シエラレオネとかリベリアに関して、そういうところも含めて、内戦が起きているようなところでは、先ほど、加來さんが医療制度の崩壊と言いましたが、要するに、無政府状態になっているところではそういう話になってくるんですね?」
武見議員
「実際にほとんど保健システムがなきに等しい。しかも、政府に対する住民の信頼感もない。さらには、風俗、習慣の中で、ご遺体に対して、最後それを水で洗うとか、あとは最後お別れの抱擁するとか、ご遺体をですね。こういった接触感染で、ご遺体から伝染ってしまうというケースも、たくさんあったと言われていて、そういう風俗、習慣というものも感染を拡大させるのに一役買ってしまった。こういう経緯もあったということです」
反町キャスター
「そういう現在の話を聞いていると、アフリカの国々は、そういう意味において、特別な理由があるにしても、日本においてはこれだけの医師、看護師、薬剤師がいて、別に亡くなった方を抱擁するとか、触ったりするという経緯も、そんなにないということを考えると、あまりエボラに関しては、日本は心配しなくてもいいと見てもよろしいのですか?」
武見議員
「いや、いや、それはまったく違うと思います」
加來教授
「海外からどんな感染症がやってくるかというリスクを一病院レベルで私達は考えなければいけない世の中になってきたと思います」

MERS終息? 感染の現状と対策
松村キャスター
「次は、韓国で猛威をふるったMERSコロナウイルスですが、こちらは終息宣言が出されました。武見さんは、韓国に行っていたそうですけれども…」
武見議員
「私はちょうどその時期に朝鮮日報というところで大きな世界的会議があって、呼ばれて行ってきたんです。金浦空港に着いたら、閑散としているの。とってもおいしいレストランに行っても客は我々しかいない。びっくりしましたよ」
反町キャスター
「それは、人が集まるところはMERSに感染するかもしれないと、皆、出歩かなくなっているのですか?」
松村キャスター
「外出をしていない?」
武見議員
「だけど、それほどまでに警戒しなければならない状況であったとは、私には思えないんだけれども、多くの人々はこういう感染症が発生したとなると、非常に警戒をする。ある意味で、過剰にまで警戒をする。従って、経済活動とかのその他の社会活動にも非常に深刻な影響を、実質以上に及ぼしてしまうという、そういうリスクがあるんですよ」
反町キャスター
「そういう感じを韓国に行かれて、MERSに関しては感じたと。正しく怖がる方法を知らないと、過剰に反応して、本来の病気以上のダメージを社会に与えると、そういう意味ですか?」
武見議員
「まさにそうです。たとえば、WHO(世界貿易機関)がこういう危険な感染症が発生した時には、それをWHOに報告する義務を、それぞれの各国政府に課しています。これをインターナショナルヘルスレギュレーションと言います。ところが、実際にそれを履行できる国が全てではないわけで、そのためにエボラのようなケースが起きてしまったわけですけれど、こういう問題をしっかりと実施できるような体制をつくっていくということがこれから、現在世界でも最も大きな課題として認識されるようになったんですよ」

グローバル時代と感染症 対策強化への道筋
松村キャスター
「日本の感染症対策はどうあるべきだと考えますか?」
武見議員
「感染症に対応するためにはまず世界中、どこでどういう感染症が新たに発生したかというようなことを適宜、的確に情報を共有できるシステムを世界にきちんと張り巡らせる必要があります。日本は主要国としてそれにきちんと参画して、仕組みづくりを強化する必要があります。これがインターナショナルヘルスレギュレーション、国際保健規則というやつです。これをちゃんと実行できるように日本が重要な役割を果たすというのがまずあります。国内においても地域医療のところから全国レベルに至るまで、主要な医療関係機関、研究所がそういう情報について直ちに共有して対応できるようにしておくという国内対策も非常に重要になります。同時に、新たな危険な病原体というのが、危険なものであればあるほど、それを分離して分析をしてどういうワクチンをつくれるかとか、治療薬はどういう治療薬に可能性があるかとか、そういうことを普段からきちんと研究をして、いざという時にはすぐに対応できる仕組みをつくっておく必要があります」
反町キャスター
「BSL-4という危険な感染症の研究ができる施設というのは、武蔵村山にあるのが初めてなのですか?」
武見議員
「初めて1981年につくったのだけれども、これまでBSL-3まで実験、研究はやってきた。実際に専門家をその中で養成して、確保してきました。従って、いつでもBSL-4施設として稼動させることができます。しかし、そのためには指定をきちんとかけないといけませんでした。しかし、住民の皆さんのご理解が得られない段階では、政府は敢えて指定することをしなかったというのが34年間続いたということです」
反町キャスター
「日本は人口1億2000万人、海外から1000万人が来るという、人口の規模、人口の流動性を考えた時に、BSL-4の研究施設が1つしかないというのは少ない?」
武見議員
「アメリカにも8か所あります。日本は現在1か所ですよ。現在、幸いにして長崎大学が長崎県、長崎市と覚書を交わし、BSL-4施設を創設するという方向で現在準備に入って、今回の概算要求にもおそらく予算が盛り込まれることになると思いますので、2か所目のBSL-4施設ができる道が開けてきました。日本みたいに細長い列島の場合は合計で4か所ぐらいはBSL-4施設が確保されていることが好ましいと思います」

国民レベルの意識改革
松村キャスター
「海外に行く人が個人のレベルで気をつけることは何かありますか?」
菊池教授
「たとえば、検疫上で発熱された方とか、渡航中に下痢の症状が出た方とかはお申し出ください。ただ、我々が感染症の外来をやっていて、受診してくる方、たとえば、インドネシアから帰ってきて具合が悪くなったとかかってくる方々、そのほとんどの方々が検疫をすり抜け、申告しないで来ている方が多い。皆さんが自分のことと思っていない、そういう認識があると思います。だから、どんなところに行っても感染症のリスクにさらされているのだということ。個人個人が正しい情報を、どんな国に行くにしてもその国ではどんな病気が流行っていて、どういう予防をしなくてはいけなくて、帰ってきて、潜伏期がありますから、どのくらいあとにどういう症状が出たら、どこへ行った方がいいのかなと基本的な知識を持って、確認してから行っていただきたいし、帰ってきてからも対応していただきたいなと思います」

バイオテロの危険性
反町キャスター
「いわゆるバイオテロみたいなものとか、感染症に対する国家安全保障、この点についての懸念はありますか?」
加來教授
「たとえば、来年も伊勢志摩サミットがあります。全世界からVIPが来ます。そういう人達を狙ったテロと、不特定多数の人達が集まってきた時に何かを仕かけるテロ。一言でテロと言っても対応が違いますよね。致死性が高いものを撒くテロリストもいれば、いたずらみたいなテロリストもいる。社会にパニックを起こす目的はどのテロリストでもできてしまうかもしれない。ですから、いろんなレベルのテロがあるんだよということがわかったうえで、私達医療機関にテロの被害者だというレッテルをつけた状態で患者さんが来るわけではありません。日々の診療の中でちょっと違うことが起こっているぞというアンテナをもっと持つ。今日はインフルエンザの季節でもないのに、咳をしている患者がやたらと多いぞとか、ちょっとした気づきを吸い上げるみたいな仕組みを、病原体が診断される前に、時間がかかりますから、そういったイベントという形で捉えて、何か対策をうつような仕組みがバイオテロに限らず必要なのかもしれない」

人材育成のあり方
松村キャスター
「人材育成の必要性について、具体的には?」
武見議員
「感染症の専門官を育成するための、2年コースが今年から始まりました。5人の枠で最初の1年、国内で研修を受けていただいて、残りの1年は国際機関等に出向いて、そこで研修をしていただく。たとえば、アメリカには専門組織があるんですよ、そういうところに行って研修を受けると。WHO(世界保健機関)の関係でそういう施設がありますから、そういうところへ行って研修を受ける。それと、イギリスの熱帯医学研究所というところがあるので、そういうところへ研修に行ってもらって毎年5人ずつ専門官を育てる。医師の皆さん方が対象ですけれども、そういうことを今年から始めました。その他にもWHOの中に専門家を登録しておいて、いざという時にはそういう方々がすぐに対応して、連携して、WHOとともに活動ができるような仕組みがあるんですね。そういうのに登録をしていただくと。ぜひ感染症に関する知識のあるお医者さんにそういう登録リストに参加していただきたい」
菊池教授
「とても大事な取り組みだと思います。感染症医を目指したいという若い医師がだいぶ増えてきている。ただ、受け皿がなかなかない。たとえば、海外に行って仕事をする。2年間の研修を受けたあと、日本に戻ってきてどういうポジションで、どういう仕事ができるかというのが、そこがまだ不明瞭であるということが、誰か応募してくれるかと言った時に二の足を踏んでしまうこともあるのではないかと思います」

菊池賢 東京女子医科大学感染症科教授の提言:『対岸の火事はない』
菊池教授
「感染症というのは他人事ではないです。海外で起こっていること、日本国内で起こっていること、全てのことが対象になり得る。だから、我々専門家だけではなくて、一般の人から業者の人から、共通した認識を感染症に対して持ってほしい。もう少し感染症に対する安全管理の認識を植えつけてほしいし、底上げをするというのがまだ日本には必要ではないかと思います」

加來浩器 防衛医科大学校防衛医科学研究センター教授の提言:『知彼知己』
加來教授
「敵を知って己を知ればということですが、これは感染症のことをよく知って、自分が置かれた状況がきちんとわかることによって、現在何を優先的にやらなければいけないかということを導き出していくということに尽きると思います」

武見敬三 自由民主党参議院議員の提言:『国際的緊急対応ネットの強化』
武見議員
「国際的な緊急対応ネットワークを強化し、確立すること。これはエボラ出血熱が発生して、実際にそれがパンデミックで広がっているということをWHOが確認するまで半年以上かかってしまった。その間どんどん広がってしまった。WHOはそれをはやく的確に判断して、警告して、対策をうたなかった。なぜそういうことが起きたのか。WHOにはそもそもそういう能力がなかった。現地国にもなかった。WFP(世界食料機関)、ユニセフ、UNDP(国連開発計画)、いろいろな国連機関が瞬時にして連結して対応することを現地国政府と連携してやらなければいけないと。そういう仕組みをつくるのにえらく手間取った。それが感染症を広げてしまう大きな原因にもなったと。深い反省があります。従ってグローバル・ガバナンス・フォー・ヘルスと、健康に関わるグローバルなガバナンスをきちんと強化しようということが現在国際社会の共通の課題になってきています。来年は我が国がG7のホスト国ですから、是非こうした国際社会の共通の課題を積極的に我が国が解決するイニシアティブをとって、それが積極的平和主義の具体的な展開として、これから我が国が取り組むべき1つの大きな課題だと思います」