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2015年7月28日(火)
双頭の大国?中国の謎 異例厚遇とガス田開発

ゲスト

宮本雄二
元駐中国大使
興梠一郎
神田外語大学教授

谷内局長・李首相会談の背景
秋元キャスター
「今月17日、谷内国家安全保障局長が北京で李克強首相と会談しました。李克強首相が、首脳や閣僚ではない、谷内国家安全保障局長と会うというのは珍しいと言われているのですが、宮本さん、なぜ今回は中国、異例の厚遇で迎えたのでしょうか?」
宮本氏
「谷内正太郎という人物だと思いますよ。と言うのは、まず2006年に第1次安倍内閣というのですか、最初の安倍政権の時に、電撃、北京訪問。そのための段取りというのが、当時の谷内正太郎外務事務次官が中国側と話しあってまとめたんですね。それから、昨年は、APEC(アジア太平洋経済協力)の前の4点の了解事項というのをつくりました。最後は谷内局長が行って、楊潔?国務委員とまとめたわけですね。ですから、この節目、節目の時にはだいたい谷内さんが行って、成果を上げてきていますから、基本的には中国側からの高い信頼を得ているということではないでしょうか」
反町キャスター
「つまり、中国側から見た時に、谷内さんはダイレクトに、当たり前ですけれども、総理に、つまり、谷内正太郎は安倍であるという、そんな感じで見ている?」
宮本氏
「そうですね。非常に近い。従って、谷内さんと話をしたことについては、安倍総理の了解を得ているのか。そのあとの段取りがつけやすいと。当然、そう考えていると思います」
興梠教授
「現在、日本の中でいろんな政局で起きていることも踏まえて、どのへんまで向こうで理解ができているのかなというのが、非常に面白いポイントだと思うんですね」
反町キャスター
「それはどちらかと言うと、日本の政局に関する、中国の見方も、その時、李克強さんから下に伝わっているだろうと。そういう意味?」
興梠教授
「私は、予測ですけれども、中国側の報道を見ていると、ガス田の問題とか、すごく抑えているわけです」
反町キャスター
「日本では、政府が、外務省がワーッとなっているけれども」
興梠教授
「普通はもっと激しくやりますよね。ほとんど抑えていますよね。そういうのを見ていると、ある程度関係は壊したくない。改善していきたいのかなと。だから、そういったことも踏まえて、日本側の事情もある程度、理解しているという感じもします」

異例の待遇…中国の狙い
反町キャスター
「中国側がそこまで、日中関係改善に向けて前向きになっている事情は、どう見たらいいのですか?」
興梠教授
「私は今回、急にというより、河野元衆議院議長と李克強さんが会ったんですよね。李克強さんが出てきて、その時に、やたら歴史の話をするかなと思ったら、最後に、AIIB(アジアインフラ投資銀行)の話をしたんですよね。習近平さんがぶち上げたシルクロード構想で、絶対に成功させないといけないわけです。日本側とアメリカが入らないというので、格付けも上がらないのもありますし、日本を必要としている。特に、経済的に。それが非常にはっきりしてきていますよね」
反町キャスター
「たとえば、中国証券監督管理委員会は、株価対策にあたる国家チームは撤退しない、さらに増強をすると述べるとか、大口の投資家が、悪意を持って株を売却したことについては、それを厳しく取り締まると、調査をするという、こういう、いわば経済活動の自由、そこに対しても容赦なく介入して、大口の投資家が売却することを悪意であると。そんなことを言ったってしょうがないではないですかと僕は思っちゃうんですけれども、そこまで介入する中国政府をどう見たらいいのですか?」
宮本氏
「中国は全部、政府的に介入するんです。従って」
反町キャスター
「株を売却することも、共産党に対する悪意があるということになる?」
宮本氏
「株を売却することはいいです。株価を暴落させることが問題です。暴落させる人間がいると思うんですよ。実際はそうではなく、皆が集合的にやった結果かもしれないのですが、しかしながら、彼らはそれらをそういうふうにやった人間がいると。従って、こんなに大暴落をしたんだと判断するから、そういう発表になるんですね」
反町キャスター
「どう見ればいいのですか?それはそのまま通りいっぺん、ないしは、その背景にもう少し経済的なものに対する共産党の別の想いがあると見た方がいいのですか?」
宮本氏
「いや、経済は常に、自己矛盾を抱えているんです。市場の役割はどんどん拡大強化していかなければ、効率の良い良質の経済はできないということはわかっているんです。しかしながら、あらゆる経済を含め、共産党がコントロールしないまま発展していくことに対する著しい恐怖心があるわけですね。そうでありながらできる限り、そこは管理のできることを残しておこうという、一方は、それをやると経済的にうまくいかない。従って、市場の自由化は進めなければいけないが、それを進めてしまうと管理ができないところが出てくることに対する恐怖心。だから、管理したがると。この両者がいい落としどころを見つけられないままずっと推移しています。これからも推移していくと思います」

安倍内閣支持率急落の影響
秋元キャスター
「ここにきて安倍政権の支持率が急落しています。こちらはFNNの今月の18日から19日の世論調査の結果ですけれど、安倍政権を支持すると答えた方が39.3%。不支持が52.6%ということで、この支持率の急落。これを中国側はどのように見ているのでしょうか?」
興梠教授
「向こうの報道を見ていますと普通、こういう時、喜んだりする報道が多いんですよ。あまりそういう感じではないですね。もしかしたら今度は支持率が落ちてほしくなかったのかもしれない。せっかく話が進んでいて、谷内さんが呼ばれたりして、行って、良い感じになっているわけですよね。李克強さんまで出てきて。これで中国は自分の国の国益として日本とつきあった方が、いわゆる自分のためになるわけですよ。戦略的にこれはやっていきたいという感じで持っていったところに日本の中で、いわゆるこういうことが起きて、国会でも中国を名指しなければ国民を説得できないところにまでいっちゃったでしょう。これはもうしょうがないということですよね。だから、今後、そこを中国側はどれだけ理解して、この路線を変えずに関係を改善していくのか。現在の感じを見ていると、それほど大きく騒いではいないので、そのへんはしょうがなくて、名指しをしているのかなと。そうなっていけば、現在の改善のモードは崩れないと思うんですよ」
反町キャスター
「指示率の低下、中国はどう見ていると感じますか?」
宮本氏
「それは中国の国内世論との関係で、あまり安倍さん寄りとか、日本寄りだとかいう習近平さん自身が厳しい批判なり、足を引きずり降ろされるといった、そういう状況になった時には、習近平さんはもう1回考えざるを得ないんです。現在、まだ、そうならないようにするということで、基本姿勢を維持されていると思います。これからの進展で、中国側の対応が変わってくることもあり得ると。それはいつ変わって、中国国内の世論をどうするかということにかかっているのだろうと思います」
反町キャスター
「安保法制の審議の中で安倍総理が中国を、いわば名指しの形で脅威論を展開することも、興梠さんは現在、中国は我慢していると言いました。宮本さんもそう感じますか?」
宮本氏
「中国は敢えて安倍首相がおっしゃらなかった。どうしておっしゃらなかったかを中国はよくわかっていますよ。
反町キャスター
「これまでよく我慢してくれたと感謝しているくらいだと。本当ですか?そんなことがあるのですか?」
宮本氏
「向こうはわかっていますよ。いや、そういうボディランゲージというのは、我々以上によく理解の行き届く人達ですよ。それが現在こういう状況下に置かれて、安倍首相がそれを口にし始めたという状況もわかっていると思っていますよ」
反町キャスター
「もしかしたら安保法制の1日もはやい成立を中国は望んでいる?そうしたら、この議論が終わるではないですか?」
宮本氏
「私の口からは言えませんが」

安倍首相訪中の可能性
秋元キャスター
「続いて、安倍総理の訪中について、安倍総理は中国政府から9月3日に開かれる抗日戦争勝利記念日式典に招待をされているんですけど、宮本さんは安倍総理のこの9月の訪中の可能性をどのように見ていますか?」
宮本氏
「日本にとっても、中国にとっても、国民に説明が難しいですね。従って、安倍総理が訪中された時に、それで東シナ海の状況はあのままで、あるいは南シナ海のところまで波及するかどうか知らないですが、中国がまったくこれまでと同じままで、わざわざ日本が打ち負かされた、その記念日の日に行くのかということになりかねません。だから、習近平さんにしてみれば、習近平さんの方で、安倍首相が歴史問題についてきちんとした姿勢を示さなかった、あるいはこれから先の安保法制の問題。ますます対中非難を強めてきたり、そんないろんなことをされて、それで来ますと言われても困ってしまいますよね。従って、お互いに、国内的に無難に安倍首相の訪中が実現する条件を整備する必要があるんです。やっているのではないですか。私は思いますよ」
興梠教授
「流動的と言うのか、日本の国内の安保法制に関する議論がどのようになっていくかということですよね。ますます中国カードを切らなくてはいけなくなってくると、先ほど、おっしゃいましたけれども、中国の国内の世論というのがあるわけですから」
反町キャスター
「沸騰してきますよね?」
興梠教授
「そうですね。伝わりますので。そうすると、その時の抑えが効かなくなって、先ほどおっしゃったように、何でそんなにあちらの肩を持つんだみたいになってくると、習近平さんも必ずしも盤石ではないですね、現在は。まだ、権力闘争の進行中ですから。ですから、自分のことも考えますよね。それが1番あるシナリオかもしれませんね」
反町キャスター
「対日戦勝利70周年記念というタイトルのイベントとは言え、中国側の現在の言い方では、要するに、先の戦争においては、軍部、日本の指導部が悪かったのであって、日本国民はその被害者であるというロジックを立てています。そういうロジックに乗るとは言いませんけれども、敢えて総理が、安倍さんはそこの場において、それこそ、ノルマンディーでメルケル氏が言ったように、とは言いませんけれども、そういう姿勢を示すのはデメリットですか?メリットですか?どう見ていますか?」
宮本氏
「そこは敢えて日本の現時点での首相として、どうこうとおっしゃる必要はないと思うんですけれども、おそらく安倍首相としては、単に、そういうチャンスに行って、日中関係がそれで良くなりましたというわけにいかないですよ。未来志向の70年談話をお出しになって、その最大の狙いというのは、日中和解ができるということでしょう。和解という要素。これは9月に入ってこないと、なかなか安倍首相としても、現地に行かれるのは難しいのではないですか。習近平さんだって、大指導者を現在、望んでいるわけですから。そうであったら、日本と和解できるのであれば、非常に大きなテーマですね。そういうところにまでならないと、抗日戦争勝利はちょっと後ろに下げ、反ファシズム、なぜ中国が反ファシズムなのかがちょっとわからないですけれども、それを全面に出した対応になってきているでしょう。だから、それを超えて、和解のところにまで進んでほしいと思うんですね。もし、そういう、この一連の話しあいの中で、そういうところにまで進展するのであれば、安倍首相が訪中される意義は十分にあると思います」
反町キャスター
「よくケミストリーと言います。たとえば、安倍さんとオバマさんは、あまりケミストリーがあわないのではないかとか、俗に言われる、例のケミストリーです。肌合いという感じで言うと、見ていて、習近平、安倍晋三のケミストリーはどうですか?」
宮本氏
「2人は合うのではないかと思いますよ。と言うのは、結構、使命感を両方持っているんですよね。自分はお国のためにやらなければいけないという使命感。これは習近平さんも強いですよ。従って、その使命感にもとづいて、日本に対して強い姿勢、あるいは中国に対して強い姿勢を持ったとしても、一国の指導者ならある意味、当たり前ですね。そうすると、敬意を持つことができるんです。ですから、強い姿勢を持った指導者だから、仲良くなれないなんて決してなく、逆に、敬意を持つと。お互いに同じぐらい敬意を持つと。相手はなかなかよくやっているではないかということになれば、ある部分で日本に対して、あるいは中国に対し、強く出てきても、それは受け入れられるんですね」
興梠教授
「リアリスト的なところは似ているかなと思いますよね。それは、昨年の首脳会談。苦虫を噛みつぶしたような感じで会ったわけですけれども、その後の会談内容。概略は出てきましたよね。あれを見てみると、これから仲良くしましょうとか、一歩一歩みたいなね。本当に一歩一歩、顔つきが明るくなって、笑い始めている。あとは当時の人民日報の論説を見ていますと、当然、習近平さん、総書記ですから、知らないわけがないので、尖閣問題の位置づけですよね。それを、要するに、日本側が解き放った虎。習近平さんは虎が好きですよね、虎って使うのが。やっかいなものという意味ですね。それをちょっと檻に戻しましょうと書いてあったんです。私は、非常に注目をしたんですね。そうすると、全てが解けてきて。要するに、あの問題は、日中にとって1番大事な問題ではないのだということをいわゆる婉曲的に、それよりも経済があるではないかと。いわゆる戦略的互恵関係ですよね。要するに、プライオリティを変えたんですね。それ以降、たとえば、活動家は1回も香港の港から出ていませんし、全部、北京がブロックさせていますし、尖閣に、公船が来ますけれども、前よりは、こちらのネタが減りましたよね。なくなることはないと思います、デモンストレーション。そうすると、お互いにリアリストとして、自制するところはしている。何が大事かわかっているというのは大事かもしれないですね。口では強いことを言っていても。ただ、今回は名指しをしたということで、それをどう解釈するか。これは相当苦しかったのかなとか。そこまで理解できていれば、ある意味で、こちらもある程度となるので、そこは何となく似たような感じですね」
反町キャスター
「宮本さん、ガッツリした首脳会談をやらない中で興梠さんが言われたように、日中の首脳がお互いの立場を慮りながら、やるというのは、非常に、芸の技術のレベルが高い外交だと僕は思うんですけれども」
宮本氏
「それは、安倍首相も習近平さんも、ある程度わかっているのではないかと思いますよ。現在、首脳が非常に大きな役割を果たす外交ですよね、日中は。従って、そこで首脳がそういう意識を持っているということは非常に大事なことだと思いますね」
反町キャスター
「そのへんのところを、今回、谷内さんは、ちゃんとつないだと?」
宮本氏
「あの人だから、それぐらいやってきたのではないかなと思います」

戦後70年談話…中国への影響
秋元キャスター
「この夏にも出される戦後70年談話ですけれども、宮本さん、その内容によっては安倍総理の訪中に影響する?」
宮本氏
「これは、中国の習近平さんがこの間、二階先生と一緒に出演させていただいた時も申し上げましたけれど、あの時3000人の訪中団に対して、習近平さんは話をしていますでしょう。歴史に関して書かれていることをかいつまんで申し上げますと、中国人民は歴史の事実を否定し、歪曲することを許さないということだけですよ。否定し、歪曲するのを許さないというわけです。だって、当然、それを踏まえて反省をしてほしいと。いろいろあるかもしれませんよ。しかし、大きなところの要求があそこに収斂されたんです。そうだとすれば、安倍総理は、それはアメリカとか、オーストラリアで誠意を持って聴衆に訴えかけられたように同じ気持ちで、今度はアジアの人達を念頭に置いて、ご発言になれば、私は、談話は少なくとも中国に対しては大きな問題にならない、通り過ぎることができるのではないかなと思います。私は、韓国は専門ではないので、よくわかりませんけれども、中国に関してはそういうことだと思います。だって、これまでやってこられた、アメリカを含めた、一連の中の基本は歴史の事実をきちんと踏まえることと、それを踏まえて反省をすると。反省がなければ、未来の、新しいのをつくり上げることはできませんからね。それを骨格としたものをおやりになっていけば、いちいち中国はそんなにこだわらないのではないかと思いますよ」
反町キャスター
「そうすると、いわゆる国策を誤り、植民地支配、侵略、痛切な反省、心からのお詫び。そういういわゆる用語集みたいな。そこよりも、もっと具体的な反省としてのアクションプランみたいな。そういったものの方が中国には響く?こんな感じですか?」
宮本氏
「ですから、それを踏まえて、戦後、日本がどういうふうなことをやってきたのかということを、安倍首相はおそらく強くおっしゃるのだろうと思いますから。それが、まさに反省の結果ですよね。そういう構造になっていればいいと思いますね」
興梠教授
「中国側も歴史を鑑にする。一応、過去に、こういうことがあって、日本側がわかっていて反省をしている姿勢が1つのポイントですからね。未来ということも言っていますよね。向こうも未来ということで括っているわけです。だから、この2つの要素が入れば、細かい用語はたぶん言わないかもしれない。だから、反省の主旨ですよね。中国語で言うと、誠心ですよね。そういった姿勢とか、主旨が入っているような文章。それが汲み取れればということではないですか。未来に向かっていきましょうと。だから、過去にずっとこだわって、そこだけを追い続けるということではないかもしれない」
反町キャスター
「駐北京日本大使、宮本さんがかつていらしたポジションですが、その立場からすると、総理が70年談話を出すのであれば、事前にドラフトを送ってもらって、それを中国政府にサウンドして、どうだいとやった方が安全ですよね?やらない方がいいのですか?こういう時はどういうふうに」
宮本氏
「絶対にやるべきですよ。だからと言って向こうと調整をすることではないですよ。小泉首相の靖国参拝の時に、中国側のことも考えて日にちをずらした、いろいろ気を使っているんですよ。しかし、突然、ご訪問になるものだから、中国の事務当局はそれを咀嚼して、小泉首相の新たにとった措置を評価し、それを踏まえた対応をする時間的余裕がないです。だから、前と同じ発言を用意。いくら小泉首相がいろんなことを中国のためにやっても、それを全部無視をされて、最初と同じ外交スポークスマンコメントとなってしまうんです。私が申し上げたのは、安倍首相がおやりになるのを、向こうが咀嚼をして、ああ、なるほど配慮してくれたなということを研究して、理解できるための時間を与えるし、そのための材料を提供するのは悪くないのではないでしょうか」
反町キャスター
「僕は非常に率直な話で納得をしたのですが、宮本さんの話をどう感じますか?」
興梠教授
「イメージ的に日本の官対官というイメージだけを持っているとまずいと思うんですよね。向こうにも一党独裁体制とは言え、いろんな利益団体があり、民衆も現在、インターネットで全てわかってしまう。要するに、共産党は突き上げをくらっているわけですよ。だから、弁護士を捕まえたりするんですよね。だから、非常に強いように見えて、びくびくしているというのがあるんですよ。そうすると、特に、人事だとか、権力闘争が絡んでくると、余計、誰かが仕かけているのではないかとか、民衆を扇動しているのではないか。そういう伝統があるんですね、政治的な。それはこちら側がわかっている。民主主義のステージの上で行われているのではないんだということですよね。こちらの感覚で、そういったところをスピーディにやってしまうと、向こうは官僚機構もあるし、いろんな違いがありますし、そういったもののやり方の違いというのが、わかっていない時が非常に大きな問題になりますよね」
反町キャスター
「国別の配慮があって然るべきだと?」
興梠教授
「政治文化ですからね。良かろうと悪かろうと。しょうがない面もあって」

ガス田開発 公表の狙い
秋元キャスター
「菅官房長官は『日中の地理的中間線の中国側で、2013年6月以降で新たに12基、それ以前から確認したものを含めると合計16基の構造物を確認している』と記者会見で話しています」
興梠教授
「日本の報道で安保法制の件があって、そのタイミングで中国脅威論がスポッとはまる構図ですね。そういった報道が日本側である。中国側の事情をしんしゃくするかどうか。私は、向こうの報道、駐日本大使、中国大使の発言などを見ていますと、そんなにこれを大きくしたいとは見えないですよね。トーンダウンしましたよね。なおかついろんな報道では、そういった雰囲気ができればまた話してもいいよというニュアンスのことも言っていますね。向こうも言われて困っているのも確かで、突然出てきたので、これはどうして出てきたのか。向こうでも報道をしていますが、安保法制に絡んでいますので、チャイナカードとして出てきたのかと」
宮本氏
「南シナ海と東シナ海は結構、連動しているんですよ。尖閣問題で厳しくなってきた時に、南シナ海でやってきたことを見れば、これからどうするか予測ができるよと言われたぐらい、南シナ海と東シナ海は連動していますので、中国がいろいろな建造物を増やしたタイミングと、南シナ海で陸上の滑走路をつくったのと期を一にしていると。1つの方向は、あそこで既成事実をつくってしまおう、それが国際社会の反発を招いてしまって、現在それを戦線縮小、状況を変えなければいけないという状況に置かれています。東シナ海も同じことだと思いますよ」
反町キャスター
「逆に言うと、南シナ海で騒いでいる場合ではなかったのではないか?日本政府は」
宮本氏
「日中がすごく対立した状況であったのではないですか。それを踏まえて言っているのだと思うのですが、東シナ海に世界の関心が集まっている間に南シナ海で突貫工事をやってしまえという。だから、連動しているんですね。オバマさんと習近平さんが9月に会いますね。その時に米中でこの問題をどう処理するのかと関わってくると思います」

ガス田共同開発の可能性
秋元キャスター
「ガス田の日中共同開発が実現する可能性は?」
宮本氏
「両国の政治関係如何ですね。2008年6月の正式合意という話ですが、これで東シナ海を平和、友好、協力の海にするという基本的な精神のもとに、第1段階としてこういうことをやってきましょうと。第1段階ですから、第2段階、第3段階、第4段階と、これがうまくいけば、ずっとそのあと続ける仕組みになっているんです。ところが、第1段階の合意の内容について少し日本側に譲りすぎたのではないかという批判の声が中国の国内で起こりまして、中国政府は逡巡して前に進めなくなったと。しかし、合意そのものは破棄されていません。そういうことで、合意のところに戻るというのが大事なのですが、こういうふうに紆余曲折を経て今日きていますので、これをさらに前に進めていくためには、強い政治的なリーダーシップ。実は2008年6月の正式合意も、福田首相と胡錦濤主席の、ある意味での政治家同士の信頼関係が背景にあったんです。これは大事だと思います。そういう関係が出てくれば、私は話し合いが再開する可能性があると思います」
興梠教授
「2008年というと北京オリンピックですから。現在と全然、雰囲気が違いますから。世界に開かれた中国をアピールしていたし、胡錦濤の対日姿勢も現在と違いますよ。日中関係も現在と違っていたので、あまり安全保障の問題とか、中国脅威論が飛び交っていなかった。今回、純粋にビジネスの話とか、エネルギーの問題ではなくなっていますね。そうすると、共同開発して両方にメリットがあるか。日本も天然ガスが必要である、近場からね。中国はもっと必要ですね。そういった雰囲気ができあがってきて、なおかつ指導者同士の猜疑心とか、安全保障に絡めることをしなくなった時に初めて純粋にビジネスとしてやれるかもしれない」

どう考える? アメリカの影響
秋元キャスター
「アメリカが中国側にも日本側にも立たないという立場は日本にとってはどういう影響があると思いますか?」
宮本氏
「これは基本的に領有権の問題については、アメリカは中立の立場だと。南シナ海を含めて、中国が積極的に強い姿勢で出てきているということに対するアメリカの警戒心が確実に強まっていますよ。南シナ海についても中立と言ってきたけれども、必ずしも中立ではない場合もあり得るというようなことをアメリカの国務省の人が言い始めていて、要するに、中国側にあまり自由勝手にやるなよと。これ以上やったら、我々もどちらかの立場に立つようになるかもしれないよ。自制しなさい。場合によっては少し引けと。そういうメッセージを中国に送っているんですね。中国がアメリカに迫っていると。アメリカの地位に挑戦しようとしていると、アメリカの認識が高まっているから、従って、中国がアメリカにあまり簡単に手を出すと本当の意味で虎の尾を踏むということになりかねないと思いますよ」

宮本雄二 元駐中国大使の提言:『軟らかい手と硬い手』
宮本氏
「自分の主張するべきことを、いくら相手と仲良くしなければいけないと思っても、そういう時期だと思っても、言っていいということです。日本の人はこの人と仲良くしようと思ったら、両方の手が軟らかくなってしまう。ちょっとでも相手の気に入らないことを言ってはいけないのではないかと思うのですが、国と国との関係もそうですけれど、仲良くしなければと思うほど、自分の言わなければいけないことを言うことが両立するんですね。日本はこれから、たとえば、東シナ海の共同開発の問題で、中国がおかしいと思ったら、中国と関係改善をしようと思っても、言い続ける。言い続けても中国の人は奇異に感じないということだと思います」

興梠一郎 神田外語大学教授の提言:『物極必友』
興梠教授
「立場を決めて、全部OKだと決めてしまうと必ず不満が残りますよ。それがどこかで爆発するということを繰り返しているので、今後はあまり極端にやらないということですよね。中国を軍事的にだけ見るとか。軍事、経済、政治、アニメも含めて、全て偏らずに、多極的につきあっていくと戦略的にはこちらが強いと思います。どこかの極に偏ってしまうと非常に弱くなってしまう。それは対外関係もそうで、中国だけに偏るとか、アメリカだけに偏るとかではなくて、多極的につきあっていくということをした方が日本にメリットがあると思います」