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2015年7月27日(月)
米国謝罪・中国和解? 戦時中の“強制労働”

ゲスト

岡本行夫
三菱マテリアル社外取締役 外交評論家
小此木政夫
慶応義塾大学名誉教授

民間企業が元米兵捕虜に謝罪 戦時中強制労働の実態
秋元キャスター
「今回、三菱マテリアルが謝罪をした元米軍捕虜を含めて、第二次世界大戦中の連合軍捕虜に対する強制労働というのはどういうものだったかというところから聞いていきたいと思いますが、東南アジア西太平洋地域での戦闘によって、日本軍の捕虜となった人数はおよそ35万人です。そのうち、およそ3万6000人が日本国内130か所の捕虜収容所に移送され、労働力不足に悩む企業の工場、鉱山や炭鉱などで強制労働をさせられたということです。飢え、病気、事故、虐待、空襲などで、およそ3500人が死亡しています。今日、岡本さんには、外交評論家として話を聞いていきたいと思うんですけれど、そもそも強制労働というのは、どういう人が連れて来られて、どういう環境で、どういう仕事に従事させられていたのでしょうか?」
岡本氏
「悲惨だったのは鉱山、炭鉱、建設現場。それから、港。そういうところに配属され、配属というか、そういうところで働かされた人達がそれは大変な辛酸をなめる体験をしていますね。日本側にはそういう記録が残っていないんですけれども、アメリカで2001年に出された有名な本ですけれど、何百人の捕虜を女性のライターがずっと追って取材をしまして、かなり克明に書かれていたのは、どういうような状況に置かれたかというのが書いてありますが、悲惨の一言です。特に、東北とか、北海道。北海道は炭鉱がたくさんありましたし、東北は鉱山がたくさんありましたし、そういうところは、その配属された人達というのは、寒さとの闘いですね。それから、本当に暖房器具はほとんどありません。それから、付近にあった木を燃やして暖をとろうとしたら、日本人にこっぴどく殴られたとか、ついには自分の枕を燃やして暖をとるとか、そういうような状況でしょう。それは日本人もなかなか、つらい、鉱山、炭鉱での労働の中でも、彼らによれば、さらに危険なところをやらされたということですから、それは悲惨な目に遭いましたね」
反町キャスター
「今回、三菱マテリアルが謝罪した、ジェームス・マーフィーさん。その方の話によると、フィリピンで、太平洋戦争が始まった直後の、バターン死の行進というのがあったと聞いていまして、バターン死の行進の生き残りが日本に連れて来られて、さらに、また、この4つのうちのどこかに配属されて、配属というのかな、行かされて、そこで強制労働に従事したという、このへんの話を岡本さんはどのくらい聞いていますか?」
岡本氏
「私は歴史家ではないので、そんなに詳しくは知りません。ただ、日本に連れて来られた1万1000人の米軍捕虜のほとんどは、バターンと、それに近接するコレヒドール島という島があるんですけれども、そこで捕まった人達ですね。今度も4月29日に、安倍総理が米議会で演説して、バターン、コレヒドールと言いました。そういうところで、散った多くの若者達のことを考えると、自分は深い悔悟の念に捉われると言って、アメリカ国民に、安倍さんが、そのことで謝罪した格好になって、これは多くの感動を呼んだわけですね。ですから、三菱マテリアルが先走って謝罪をしたということではなく、国として、少なくともアメリカとの間ではそういった個別的な地名を挙げてということは、要するに、米軍の捕虜をとったところですよね。総理が謝罪されたことは、大変良いことだと思っています」
反町キャスター
「今年(戦後)70年です。70年が経った、先ほど出た、総理の両院議会合同演説会議における演説。あれを謝罪とするのか。ないしは今回の三菱マテリアルの行動がもっと直接的な謝罪だと思うんですけれど、なぜ70年経った、今年に結果的になってしまったのか。ここはどう見たらよろしいのですか?」
岡本氏
「確かに、総理が表明したのは、ディープリペンダンスですか、深い悔悟ということで、謝罪という言葉は使っていないですね。しかし、70年が確かに経ちました。捕虜だった人達が次々に亡くなっているわけですね。三菱マテリアルも、尾去沢という鉱山で500人近くの捕虜をとったんですけれども、生きている人が先ほどのジム・マーフィーさんとあと1人、2人いるかなという。ジム・マーフィーさんも94歳ですからね。その代わり、多くの遺族が集まっていましたよ。皆、涙して、死んでいった父親に、一言、この言葉を聞かせたかったと言って、泣いていましたけれども。この人は三菱マテリアルに使われた人ではないですけれども、捕まった人ではないですけれども、我々に言いましたよ、この人は95歳ですけれども、私が今日、皆さんに頭を下げる。これは自分が日本人に対して頭を下げる2回目だと。1回目は70年前、頭を下げないとぶん殴られるから。恐怖から頭を下げた。今日は、謝罪する勇気を持って、ここまで来てくれた日本人達に敬意を表して頭を下げますと言って、頭を下げましてね。もうほとんど、私も感動したというか、申し訳ないと思いましたね。もし5年ぐらいはやくこういう謝罪ができていれば、もっともっと、多くの捕虜達に直接、謝罪の言葉が伝わったんですけれどもね。そういう意味では、最後のチャンスでしょう。70年目の節目にやったというよりは、最後のチャンスですね」
反町キャスター
「どうしても謝罪というと、中国、韓国の話に行く前に、お金のことを聞かなければいけないです。今回、米兵の捕虜の皆さん、ないしはその遺族の皆さんに対しては、三菱マテリアルとしては、この場合の金額の名目は何になるのですか。未払いの賃金になるのか、それとも謝罪金になるのか。何らか払っているのですか?」
岡本氏
「お金はまったくないです。謝罪だけ。戦時捕虜博物館に対し、ごく僅かな寄付はしましたよ。だけれど、それは捕虜の人達に対する補償、賠償というものではまったくないわけ。ですから、アメリカ側も、私達はお金も要りません、求めません。ただ、謝罪がほしいだけですよということでしたね。他のイギリス、オランダ、オーストラリアも、それは日本と彼らの政府との間で金銭的なことは解決済みであると。請求権は完全に決着しているということですから、補償がどうのこうのという話にはなりません」

中国人の戦時中強制労働 当時の日本政府は
秋元キャスター
「三菱マテリアルについては、もう1つありまして、先週金曜に、中国人元労働者の支援団体が北京で記者会見を開き、三菱マテリアルが示したとする和解案を公表したと、中国メディアが報じています。その内容は、3765人の中国人労働者に劣悪な条件下で労働を強いた。722人が亡くなった。労働者と遺族に謝罪の意を表する。和解内容のポイントとして、元労働者のための基金を設立し、1人当たり10万元、日本円でおよそ200万円の賠償金の支払いと記念碑を建てるということの内容ですけれども、どういう時代背景があったのかというのをちょっと見ていきたいと思うのですが、まず戦時中の中国人労働者に関しては『華人労務者内地移入に関する件』というものを、1942年、昭和17年の11月に東条内閣が閣議決定します。これによって、1944年の3月から1945年の5月までの間に、国策として日本国内に3万8935人が移入されたということです。このうち、死者が6830人ということで、このうち、5999人が事業所内で亡くなっているということなんです。およそ15%の人が仕事場で亡くなっているということなのですが、労働者は様々な方法で集められていて、希望者を募った場合もあれば、半強制的に集められたケースもかなり多かったというふうに言われています。岡本さん、旧三菱鉱業で働かされていた中国人も現在、紹介したような国策によって集められた人達ということになるのでしょうか?」
岡本氏
「そうですね。希望して日本に来た中国人はいないでしょう。ほとんど強制的に、半強制的ではなくて、強制的に連れられて来ているんですよ」
反町キャスター
「紹介した華人労務者内地移入に関する件で、関連する話として1972年の日中共同声明があります。日中共同声明においては『中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する』ということになっています。これは国と国との間における賠償請求の放棄。これで終わりだよということだと思うんですけれど、華人労務者内地移入に関する、要するに、中国から強制的に日本に連れて来て、強制労働に従事させたという、この件に関しては、国と国との話しあいになるのか。ないしは個人と国なのか。ないしは現在三菱マテリアルがやっているような、個人と会社の話なのか。どういうレベルの話しあいにするべきだと岡本さんは考えますか?」
岡本氏
「これは、中国側の立場というのは個人の請求権までは否定したものではないということでしょう、彼らはね。そこは日韓の、あとで話がちょっとありますけれど、請求権協定、1965年は国と、それから、人と書いてあるんですね。だから、これはもう個人の請求権も放棄したという建て方になっていますけれども、ここは、個人が日本国政府に対して、あるいは日本国企業に対して、請求権を持っているんだということが、中国側の、現在の立場でしょうね。だからこそ中国はその裁判所が訴えを受理しているわけですからね」
反町キャスター
「そうすると、先日の官房長官の会見を聞いていただくしかないですが、今月の24日の官房長官会見で、菅さんはこういうことを言っています。『個人の請求権の問題も含めて、法的には解決済みであると考える。中国の間も同様で存在していない』と。国と国との間、個人と国との間、中国人の個人に対する国の請求問題も既に解決済みだというのが、日本政府の、基本的なこれまでの立場ですけれども、これをどう我々は見たらいいのですか?」
岡本氏
「これが日本側の立場ですよ。でも、中国側は個人の請求権まで放棄したわけではないと。こういうことですね」
秋元キャスター
「小此木さん、今後、個人が日本政府に賠償を求める可能性というのは、どのように見ていますか?」
小此木名誉教授
「政府に求めるというのは難しいのではないですかね」
反町キャスター
「そうすると、小此木さん、先ほどの菅さんのこうした、法的には解決済みであるという、この日本政府の姿勢。これは逆の言い方をすると、変えない方がいいと思いますか?」
小此木名誉教授
「ちょっと違いますが、たとえば、慰安婦の問題でも人道的救済という形をとりましたよね。女性基金なんかね。だから、そういう形でやるのか、企業が個々に。でも、これは補償ということではないでしょう。和解金でしょうね」
岡本氏
「三菱マテリアルが最初ではないですね。中国とはもう金銭解決してきた企業が、特に、ゼネコンなんかの間でいくつかありますし。この間はある船会社が、船を向こうでとられて、こんなのは解決済みなわけですね。だけれど、仕方ないから30億円ぐらい払いましょうと。こういう、これは中国側が無理難題を言ったんだと思いますけどね。だから、ケースが全部違うんですね。ですから、あとどのぐらい長い期間がかかるかわかりませんが、それは1つ1つ片づけていく問題なのでしょうね。戦争というのはそれぐらい深刻なことですよ」

民間企業による補償の是非
反町キャスター
「1つ1つと、こういう形で余計なことになってしまうかも知れませんが、どこかが対応すると、ここも対応してくれるのではないのかと言って、向こうの期待値というか、そういう形ですよね。向こうは当然、訴訟に対するモチベーションが高まるわけではないですか。訴えを起こすことに対する。結果的に、それが次から次へと訴訟を誘発させるような形になるかどうか。それは、話を聞いていると、それも当たり前だという話ですか?」
岡本氏
「いや、それはたいぶ前、10年ぐらい前ですね。建設会社が1人あたりいくらか、ちょっと忘れました。70万円とか、そういう金額で和解した。ですから、お金を払って、解決するというのは既にいくつか行われてきているわけで、それは訴訟を誘発していると言えなくもないわけで、現在もそうなのでしょう。じゃあ最初にお金を払った建設会社が酷いのかというと、それは事情があったのでしょう」
反町キャスター
「官房長官が言っているような、全て、そういったものが解決している国の、ある意味、建前であり、もしかしたら面子かもしれません。メリット、デメリットもそういうところも全部包含されると考えた時、個々の、たとえば、ゼネコンであるとか、船会社であるとか、旧三菱鉱業にしてもそうかもしれませんけれども、日中のビジネスに、いまだに関わっているところは、今度はそういう建前とか、面子とかではなくて、実利の面において、これは謝った方が、言葉が過ぎたらすみません、謝った方が得だという判断ではないかという気もするんですよ。そういう判断の方が物事を動かしていくというような感じで見てもよろしいのですか?」
岡本氏
「それは個々の経営判断というのはあると思いますよ。しかし、私も社外役員で、中にいてわかりますけれども、皆の心を動かしているのは人間として気の毒なことをしたという、だから、いくら法的には決着済みであっても、従って、賠償金を払う理由はないと。しかし、気の毒ではないかと、これから亡くなっていく人達。だから、人間としての、シンボリックな和解金というのは出すべきだと。ですから、いろんなお金の出し方があるのでしょう。個々の人に対する支払い。あるいは何か基金をつくって、その人達の姉弟を学校に行かせるというようにするとか、何かモニュメントをつくるとか、いろんな方法がありますでしょう。だけれど、人間としてあまりにも酷いことをしたのは事実ですよね。それに対して率直に詫びて、何らかのことをして差し上げるというのは自然な人間の感情。それを止めなければいかんということは、私はないと思いますね。
反町キャスター
「小此木さん、いかがですか?」
小此木名誉教授
「私もそう思いますよ。それは企業によって違うでしょうね。それから、三菱マテリアルの場合、中国に利害関係が現在もあるのか、ないのかということは、私は知らないんですけれど。だから、確かに大きな利害関係を持っているところでは争うよりもですね。払うものを払っちゃった方がいいという、そういう判断もあるかもしれない。だから、いろいろだと思いますが、しかし、でも、訴訟があったから和解成立したという意味では、最後、裁判が成り立ったということにはなりませんか。受けたということだと思うんですね。企業としてはね」
反町キャスター
「結果的には、それが良い方向に、それが補償金ではなくて、和解金という名目であっても、スムーズに話が進むであろうと感じて見ているのですか?」
小此木名誉教授
「それはわかりませんね。それは何とも言えない。中国政府が、今回のケースをどう見ているかというのは好意的に見れば、これから日中の首脳会談も開かれるのでしょうから。その前に条件を整えるという意味で、そういう方向で動いているのかもしれないと見ることもできるし、風穴を開ければ、別の状況が出てくると意地悪く考えているのかもしれないです。それはちょっと、私は何とも言えないです」

韓国“徴用工問題” 民間企業の対応は
秋元キャスター
「韓国の徴用工問題についてはどういう考えなのでしょうか?」
岡本氏
「本当に大雑把に言ってしまえば、日本は1910年に朝鮮を併合したわけですね。これはもう絶対にやってはいけないことをやったと思いますよ。だけど、形式論理だけでいくと、その時点で朝鮮人というのは南北朝鮮ですね、日本人になったわけです。1938年に国家総動員法というのが施行されて、全ての日本人が、いわば朝鮮系日本人です。彼らの意に反して日本人にさせられちゃった。これはこれで大変反省しなければいけないことであり、また別の話をしなければいけませんけど、ともかくその人達も日本人と同じように工場へ連れて行かれて働かされたと、私の理解ではですよ。給料を払われたと。これが現金であれ、軍票であれ、それは終戦と同時に、敗戦と同時に紙くずになっちゃったわけです。日本人はしょうがないと皆、諦めましたけれども、日本人でなかった朝鮮の人達は大変な不満を持ったということではないでしょうか。ですから、過酷な労働にどれくらいその引っ張られたかは私もよく知らないんですよ。実は記録があまり残っていないですね」
反町キャスター
「未払い賃金、ないしは先ほどの賠償金、ないしはもっと柔らかい表現の和解金、そういったものを韓国のいわゆる徴用工問題については適応すべきではないというような話に聞こえます。そういう理解でよろしいですか?」
岡本氏
「要するに、性質が違うということですね。戦争捕虜、中国人で強制労働のために日本に連行されてきた人達というのはほぼ例外なく、劣悪なところに押し込められて、監視つきで脱走しないようにしたわけです。四六時中見張りがついてということでしょう。銃を持ってね。私は、視聴者の皆さんでご体験からご存知の方がいたら教えてもらいたいんですけれども、韓国の徴用工が皆、それぞれの工場に割り振られて住んでいた。そこに脱走を防止するための何か仕かけがあったのか、見張りが始終ついていたのか、それとも他の日本人と同じようにそこは自由に出入りできていたのかというのは、1つ大きなポイントだと思っています」
小此木名誉教授
「たぶん見張りがついていたのではないですか。同じ条件ということはないと思います」

韓国の“徴用工問題” 強制労働にあたるのか
反町キャスター
「中国に対するもの、ないしは白人捕虜に対するものと、明らかに韓国の朝鮮人の徴用工に対するもの、ケースとしてちょっと違うのではないかという考えは?」
小此木名誉教授
「それは岡本さんのおっしゃられたのはごく普通の日本的な解釈ですよね。つまり、戦争捕虜の問題と国内的な戦時動員の問題という。これは、韓国は合法的に日本の一部になって、従って、韓国人も日本人になって、それに対して日本人と同じように、国家総(動)員法も適用されたという解釈だと思うね。それは日本側の論理だと思うんですね。私はどちらの論理が正しいかということを現在申し上げようとは思わないんですけれど、問題の所在はなぜこの問題がそんなこじれるのかという意味で申し上げれば、先ほども出てきた大法院の判決、12年の5月のものですね。韓国のものですから翻訳させていただきますと、要するに、日本の法廷でそういったもの、国家総動員法とか、国民徴用令が、朝鮮半島だとか朝鮮人に対して適用されていることが有効であるかのように日本の法廷では扱われている。だけれど、韓国の立場から言うと、日本の強制動員自体が不法行為であると。大韓民国の憲法の革新的な価値を損なっていると。つまり、そもそも論ですよ。そもそも植民地にしたのは不法行為ではないかと。不法行為を行ったものが、国家総動員とか何とか言って半島人を動員していった。それもまた不法行為だと。だから、それを認めない国との間で結ばれた協定、条約に関しても効力に限界があるのだと。これが基本的な考え方、韓国の裁判所の。だから、あの時は日本人だったのだからという我々の感覚はまったく通用しない」

戦後70年 どう総括すべきか?
秋元キャスター
「70年談話はどのようであるべきだと考えますか?」
小此木名誉教授
「戦後70年は、その場合の戦争というのは我々にとっては、太平洋戦争、満州事変から太平洋戦争にかけての戦争ですよね。ですから、それに関連したことで我々が与えた被害というものに対して率直にこちらの気持ちが通じるようにやればいいわけであって、文言に固執する必要はないと思うんですよ」
反町キャスター
「文言にこだわる必要はない?」
小此木名誉教授
「そこにこだわる必要はないのだけれども、ネグレクトしてしまったらそれは怒るでしょうね。つまり、私が申し上げたことで言えば、韓国の場合は要するに、1931年から1945年の間、むしろ戦争後半期にあった、ある種の戦時動員ですからね。だから、その問題について過酷な経験があったということに関して何らかの、ただ、それを1つの言葉で表現するのは簡単ではないですよ。徴用工はどうで、慰安婦はどうでというわけにいきませんから。そういうことで言えば、植民地統治とか、植民地支配という言葉になってしまうと思うのですが、そういった言葉が入るかどうかというのが彼らとしては1番気にしているところではないかと」
岡本氏
「これはマスコミ的に言うと、キーワードで、いくつ入っていれば何点とか…」
反町キャスター
「そういうことにはしたくないと思っているんですよ。言葉を探すって作業として意味があるような感じがしないんですけれど」
岡本氏
「そうですね。大事なのは概念というか、考え方ですよね。それでこの中で1番大切なのは反省だと思うんですよ。謝罪というのは、あの時すまなかったと頭を下げればいい話で、比較的簡単にできる話ですが、あとが残るかどうか保障はないですよね。反省というのは、謝罪したその気持ちを何か制度にキチッとくっつけないといけないですね。国家が過去のことを反省しているかどうかという1番の尺度というのは、教育だと思うんですね。教育でどれぐらい子供達に過去のことを客観的に伝えていくかということですね。私もいろんな大学で講演なんかしますけれど、驚くほど若い人達が昭和のことを知らないですね。ですから、近現代史というものを独立させ、明治、大正、昭和ですよね。しかも、それを必修科目にするということが1番この反省のシンボリックなことだと思いますね。それをやるかどうか。それは、談話とは直接関係ないですが、是非、反省を、我々も2度とこれをやらないんだと。これを十分、我々が共通しないと、今日の主題ではないですが、安保法案が戦争法案だとか、そこで戦争に引きずり込まれるのではないかとか、そういう誤った観念につながっちゃうのではないかと思いますよ」
小此木名誉教授
「日本と韓国の間で現在、対立しているのは何なのかというと、歴史の個々の事実をどう解釈するかという、対立と考えるのか。制度的な問題だとか、価値観の問題だとかで考えるのか、それとも別のものなのかというと私はどうも別のものであって、日韓のアイデンティティの問題だと思うんです。お互いが自分のアイデンティティを相手側に知らせたい、あるいは理解してほしい。歴史の問題は解釈がどうかというより、集団的記憶がそもそも違うわけですから。彼らにとっての戦争というのが、戦時動員ですと言われれば、普通の日本人はわからないです。連れて行かれたことです。そういう観点から見ると、あの戦争は連れて行かれる戦争だったから、慰安婦だって連れて行かれたに違いないという解釈になってしまう。日本人はそこのところはわかりませんからね。そういう集団的な記憶の違いとか、文化的な伝統の違い。たとえば、裁判はまったく違うんですよ。韓国の裁判はそもそも論でしょう。そもそも論というのは朱子学の伝統ですよね。儒教的な伝統、正しいことを追求するんですよ。その法律が正しいか、正しくないかが問題です。日本的な法律の解釈はサムライの伝統がありますから、内容よりも守ることが大事です。日本人はとにかく決まったのだから守れと。韓国人は、それは違うではないか、そもそもこうだと。だから、あわないですよ。率直に言って、接点がなかなか見つからないと思いますが、相手の文化がそういう文化であると、キチッとお互いに学習しなければいけないです。ナショナリズムもそうですよね。日本のナショナリズムと韓国のナショナリズムはまったく異質なものですから。お互いのアイデンティティを突きあわせて、どこが同じでどこが違うのかをキチッと学習していく。そういう努力が、教育の場でも必要だし、日常の民間の交流でも必要だと。非常に大事なポイントですよ」

岡本行夫 三菱マテリアル社外取締役の提言:『勇気を持って和解へ』
岡本氏
「和解のためには、謝罪、反省、日本から必要です。ただ、それは相手国に受け入れられなければいけない。だから、これは中国と韓国の友人達へのメッセージでもあります。そのためには謝罪する方も、受け入れる方も両方とも勇気が必要です。双方で勇気を見せてほしいと思います」

小此木政夫 慶応義塾大学名誉教授の提言:『植民地の動員』
小此木名誉教授
「現在、日本と韓国が直面しているのは植民地の動員。これをどういうふうに現在の視点から解決するかという問題でたぶん岡本さんの提言、これは正しいのですが、日韓では成立しない。私は、請求権協定の第3条の仲裁条項で、第3国、第3者仲裁という方がすっきりしていいのではないかと思っていますね。国際司法裁判所へ直接持って行くわけにはいきませんから、その前に協定の中にちゃんと書いているのですから。第3者の仲裁を入れて、国際的なスタンダードはこれですよ、という、日本人もわかるでしょう、韓国人もわかるでしょうという仲裁作業が必要なのかなと最近では感じています」