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2015年7月23日(木)
最新防衛白書が描く闇 領海領空と中国ロシア

ゲスト

森本敏
元防衛大臣 拓殖大学特任教授
小原凡司
東京財団研究員・政策プロデューサー
小泉悠
未来工学研究所政策調査分析センター客員研究員

安全保障環境の変化とは
佐々木キャスター
「日本を取り巻く安全保障環境がどう変化したのか。一昨日、閣議で了承されたばかりの新しい防衛白書、その最初の項目で、日本を取り巻く安全保障環境と題してこのようなことが書かれています。まず中国については、軍事力の強化や東シナ海、南シナ海での拠点構築など、中国の活動拡大や活発化に強い危機感を示し、高圧的とも言える対応や、一方的な主張を妥協なく実現しようとする姿勢をとっているとして批判しています。また、中国と台湾の軍事バランスが変化し、中国に有利な方向に動いているとも分析しています。ロシアに関してはウクライナ問題以降、軍事力の近代化や拡充をはかり、軍の活動が活発化し、活動領域も拡大していると指摘されています。北朝鮮に関しては、度重なる挑発行為や、核開発の継続。弾道ミサイルの開発を、水中からの発射実験を成功させるなど、日本にとっては差し迫った脅威であると分析しています。森本さん、近年、本当に変化してきていると、昨年までの書かれ方と比べて、特に、今年、変化を感じたという部分はどこですか?」
森本氏
「私は、中国の、一言で言うと、高圧的という表現に代表される、非常に、周りのことを無視し、力によって威圧をしようとして、つまり、いろいろな国が懸念を示しても、一切、耳を貸さずに、とにかく力による現状を断念するとか、あるいは控えるとか、考え方がない。この中国の高圧的、威圧的行動というのが、この地域全体を不安定にしている。そこが、今回の、この防衛白書の中で強調されているのだと思います」
反町キャスター
「森本さん、高圧的な中国という書きぶりと、ガスのプラットホームの写真を公開する、しないにおいて、少なくとも自民党の部会において、発表を止めようとした外務省と、それに反発している防衛関連議員という構図が今日、自民党の中であったんですけれども、その意味において、防衛大臣を務めた森本さんにという意味で、敢えて、尋ねますけれども、その防衛白書には中国をいわば名指しで高圧的であるというふうに、ちゃんと書いて、勢い、懸念というものをはっきりと出したいというのが防衛省の姿勢だとすれば、一方の外務省の方はそういう写真やら何やらという発表をちょっと待ってくれと。現在、日中関係は微妙だと。よくわかるんですけれど、微妙な時期だから抑えるべきだということで、これを止めるという動きがあったとすれば、それは政府の中のアクセルとブレーキの関係というのがあっていいものなのか。殊、この時期においては、そういうものというのは間違ったシグナルを中国に送ってしまうか。これはどう見たらいいのですか?」
森本氏
「トータルで、意思決定というのは、官邸ルールで考えていただくので、当然、本来やっていただくと思いますけれど、国家安全保障会議で、きちんと担当大臣が所見を述べて、意思統一をされるということが行われていれば、党からとやかく言われる筋合いはないと思うんですね。1番、気になるのは、日本人というのは、相手に嫌なことを言うのは関係を悪くするということで控えるという文化を持っているんですけれども、中国は逆です。やるべきことはきちんと言って、相手が何と思おうと言うべきことをちゃんと言う、やるべきことはやる。むしろ自分達が対外的な外交活動における新しいテコをつくるのであって、取引材料がどんどんできるのであって、かえってその方が有利であるという考え方に立っているので、文化が相当違うと思うんですね」
反町キャスター
「現在の森本さんの話はいかがですか?」
小原氏
「中国と日本の考え方が違うというのはおっしゃる通りと思います。ただ、中国は、本当は今年、日本との問題はあまり表沙汰にしたくない。中国は今年、やりたいのは、彼らの言う大きなところで、国際社会における地位の変更だと。これは、防衛白書の中にも書かれている、力を背景にした現状変更に大きく関わってくる部分だと思うのですが、中国は最近、国際規範、ルールは不公平だと公然と言うようになってきます。今年、何をやりたいのかというと、これは抗日戦争70周年でもありますけれども、反ファシズム戦争勝利70周年。これで示したいのは、中国は戦勝国であると。連合国の正当な一員である。これまで中国は能力がなかったために、国際規範は欧米の戦勝国がつくってきたけれども、これからは中国だ、中国は現在その能力がついてきたと。中国にその正当な権利があるのだということをもっと強く打ち出していきたい。その正当な権利を使って議論が行われるのであれば問題はないと思いますが、中国は、それでは間に合わないという危機感もあり、こうした力による現状変更ということをやろうとする。中国がライバルだと思っているのはアメリカ一国。アメリカに対しては、中国は防御的です。と言うのも、アメリカと戦争をしても勝てませんから、中国から戦争を仕かけることはないわけです。アメリカが中国の発展を妨害するために攻撃をしてくるのを非常に強くおそれています。ただ、問題なのは、防御的なのはアメリカに対してだけということです。これは新型の大国関係ですけど、アメリカが攻撃するのを防御する。あるいは中国が発展するのを他の国が妨害するのは、それは仕方がないと」
反町キャスター
「話がずれてしまうのですが、あと1問だけ。日本に対しては、日本と中国が戦争をしたら、日本には負けるわけがないと向こうが思っているとすれば、威圧的、高圧的に出るのかどうか、防衛白書みたいに。ないしは安保条約があるから手を出せない。ここはどう向こうは日本のことを見ているのですか?」
小原氏
「これはあくまで中国のロジック、こうありたいということですね。中国は国際規範を変える、現在も力を使ってやっている。実はAIIB(アジアインフラ投資銀行)も、軍事力ではありませんけれど、これまでの経済ルールは中国にとって不公平だと。だから、中国は自分の経済力を使って新しいルールをつくるんだと。ただ、現在の国際社会の中でではありますけれども、これも一種の力による現状変更だと。このガス田の話もそうですね。これも軍事力は使っていませんけれど、中国は日本からの議論、抗議に対して答えることなく、実力を使ってやっていると。こうして中国の有利なルールをつくられなければならない。ライバルはアメリカだというのですが、日本はこの論理で小国になってしまうんですけれども、それにもかかわらず、日本が無視できるほど小さくはないというのが、中国をいらつかせることにもなっているのだと思います」
反町キャスター
「我々が中国をいらつかせているのですか?」
小原氏
「ですから、中国は、本当はそのロジックの中で、日本が動いてくれればいいんですけれど、日本には日本の国益があるので。しかも、もし戦闘をしても局地戦において日本にさえ勝てないと軍は思っていますので。全面戦争ではなくて、局地戦ですね。部隊を限定的にした場合では、自衛隊と中国の人民解放軍とどちらの練度が高いのか。どちらが近代的な戦闘ができるのかどうかといった場合に、軍人はわかっていますから」
反町キャスター
「そうすると日本を取り巻く安保環境はどうだという今日のテーマからいくと、安全保障上の脅威というのはどう見たらいいのですか?」
小原氏
「これはもちろん、中国はこの安保法制が通っても、抑止に関しては、短期的なものと、本当の目的、もう少し時間のかかる長期的なもので考えないといけないと思うのですが、これを混同すると本来の目的を見誤ると思います。短期的には日本が何かをすると言えば、中国はもちろん、反発をするので、そういった意味では抑止が効いていないと言えるかもしれませんが、本来、日本が求めなければいけないのは、中国は力をもって、現状を変更しようとすること自体を止めなければいけない。これを抑止することなので、これには時間もかかりますし、誰かが力を使って現状変更をしようとした場合に、議論でこれが効かない場合には、誰かが力を行使せざるを得ないというのが国際社会の現実ですので、力を使うということはすぐに鉄砲を撃つとか、大砲を撃つということはありませんけれども、そうした行動をとらなければならなくなるということですね。そう言った意味では、現在の安保法制が、日本のオプションを広げる。行動の幅を広げるという意味では、非常に意義のあるものだと思います」
反町キャスター
「ロシアの日本に対する、軍事的な日本に対するプレッシャーというか、我々はロシアの軍事力、極東における軍事展開をどのような脅威として見ないといけないのか、ここ数年をどのように見ていますか?」
小泉氏
「まず今年の防衛白書に出ていますけれども、昨年末にロシアが軍事ドクトリンを改定いたしました。これを見ますと、ここ数年と基本的に大きく変わっておりませんで、外的な、主要な脅威というのは、筆頭に来るのがNATO(北大西洋条約機構)の拡大ですとか、あるいはミサイル防衛であるとか、基本的にアメリカの軍事力に向いているんです。もう1つは、アフガニスタンを震源とするイスラムの脅威。ここはおそらくIS(イスラム国)の脅威も入ると思いますけれども、西側の軍事力とその新しいイスラム過激主義的な脅威というのが、ロシアにとっても主であって、その他のロシアの政策文書なんかを見ても、なかなか極東のことはそんなに出てこないですね。おそらくそれは2つ側面があって、1つは、ロシアがそもそも極東に関して軍事的な脅威を感じていないというのが1つ。もう1つは、極東の話をすると、どうしても中国の話をしなければいけなくなってしまうので、中国とのことにはあまり言及をしたくない。つまり、パートナーでもあるけれど、ロシアも中国のことを一定程度脅威だとは考えているので、そのことは中国の体面を考え、なるべくは言いたくないという側面、両方あると思います。これを踏まえて現在の極東の状況を考えてみますと、ロシア側が受動的に何かすごく大きな脅威を感じているということはないと思うんです。西側ではNATOの拡大とかがあるわけですけれども、そういうものが特にないと。逆にロシアが、極東側で、何か攻勢的な戦略に出ようとしているかというと、そういう兆候もあまり見られないと思うんです。確かに、防衛白書にも書いてあるのですが、極東でロシア軍の活動がすごく活発化していると。これは間違いがないですね。特に、昨年は、ボストーク2014というロシアの東部を動員した、非常に大きな規模の軍事演習を行いまして、さらに、航空自衛隊のスクランブル回数も冷戦後、最高の水準になるというところまできましたので、ロシアの活動がかつてなく活発化をしていることは間違いないです。ただ、これが何らかの攻勢的な意図をもってやっているのか。それとも、ロシア軍全体の訓練頻度であるとか、活動の幅が広がったので、結果として、こうなっているのかを区別しなければいけないと思いますね。その意味で言いますと、基調としては、ロシア軍の活動全体が活発化している。その中で、特に、東側だけ、ロシアが注意を向けているとは現在のところ言えないだろうと思うんですね。一方で、部分的に、たとえば、ロシアの爆撃機が日本を一周するという形で、おそらく日本向けにやっているのだろうなというふうに思われる活動も従来に比べれば増えているというところだと思います。ただ、最初の方に申しましたように、ロシアの安全保障の1番重点なのは、西側と中央アジア側に向いているというのが現状だろうと思いますね」

中国の東シナ海“ガス田開発” 中国の狙いと今後は
佐々木キャスター
「昨日、政府は、日本と中国のEEZ、排他的経済水域の境界線として、日本が主張する日中中間線の周辺で、中国が行っているガス田開発について、最新の映像も踏まえて、情報を公開しました。こちらが東シナ海で中国が進めている主なガス田です。2003年に中国が、日本では白樺と呼ばれるガス田の工事に着手したことから資源開発問題として日本と中国が大きく対立することになりました。その後2008年。共同開発に向けて歩み寄りの姿勢も見られたのですが、尖閣諸島などを巡り、日中関係が悪化したことで、平行線を辿っています。そんな中、政府は昨日、日中中間線の、中国側の領域に、2013年以降に新たな海洋プラットホームを12基建設し、合計で16基になっていることを明らかにし、中国に抗議をすると同時に写真を公開しました。この新たなプラットホームの建設に関しましては、安保法案の、衆議院での審議でも取り上げられています。中谷防衛大臣の発言が今月10日にありまして、衆議院平和安全法制特別委員会で『中国がプラットホームにレーダーを配備し、空中偵察等のためにヘリパッド、着陸場として活用し、ヘリコプターや無人機の拠点として利用する可能性がある。安全保障面での利用を進めた場合に、東シナ海における中国の監視・警戒能力等が向上して、自衛隊活動などが、従来よりも把握される可能性がある』と、ガス田が中国の軍事拠点になるおそれを指摘したんですね」
小原氏
「まず、これだけの海域で、あれだけのプラットホームがあるということが、非常に不自然だと思います。もともと資源の話から始まっているのですが、いろいろと話を聞くと、この海域での海底資源は、さほど見込みほど多くないのではないかという話も聞きます。中には、中国が掘削して出ないから、次々と建てているのだという話も聞きますけれども、もし本当にここでの資源がそんなに多くなくて、うまくいっていないというのであれば、まずは調査船ですとか、オイルリグを使って、試掘してみるというのが、通常の手段だと思います。それにもかかわらず、中国がプラットホームにこだわっている、その目的は何なのかということだと思います。もちろん、ここでプレゼンスを示すということはあると思いますが、それだけのためなのかというのは疑問が残るだろう。そうすると、他に考えられるのは何だということですね。プラットホームというのは土台ですから、そうすると何でも使える。ここで何に使うんだということになると軍事目的ということが、まず考えられるのではないかということだと思います」
反町キャスター
「このガス田の地域、このガス田に対空探知レーダーをつけると、沖縄で離発着する飛行機、嘉手納ですね、はっきり言ってしまえば、そこの動きが全部筒抜けになる可能性がある?」
小原氏
「はい。レーダーは、水平線以下は届かないわけですから、そうすると、大陸からでは距離が遠すぎるんですね。しかし、ここにあると(大陸からの)距離の半分ですね。その可能性が出てくる。より低い高度のものが見えることになる。さらには、レーダーでなく、もっと見にくいもの。これは潜水艦を探知するための装置等を海底に敷設した場合…」
反町キャスター
「それは、要するに、プラットホームという海底に打ち込んだ、足の上に建っているものですよね。その足に?」
小原氏
「そのプラットホーム自体を使うのではなくて、たとえば、ここに何らかのソナーのようなものを敷設していくということになると、普通に船でやってしまうとすぐにばれてしまうんですね。ですから、こういったものを使いながらカモフラージュしながらやるということは考えられるだろう。まだ現在やっているという話はありませんけれど、将来的にはそういうことも考えられるだろうと。さらに、そこでとった音というのは何らかの形で大陸に送らなければいけませんから、そう言った意味で装置をプラットホームに積むということも可能になるだろうと。そうすると、航空機だけではなく、水上艦艇ですとか、あるいは潜水艦の動きも全て把握されることになりかねないと。そうした場合は海上自衛隊や米海軍の動き、東シナ海での動きは全て中国側に筒抜けになるということです」
佐々木キャスター
「レーダーやソナーがつけられる可能性があるというだけで、日本は対応を変えていかざるを得なくなるということなのですか?」
小原氏
「はい。まだあくまで現在の写真からクロだと断言することはできないわけですけれども、なぜこんなに多くののプラットホームがあるのかという、少なくとも合理的な説明は求めるべきだと」
森本氏
「レーダーについては、日本側が探知する、されるということもありますけれど、もう1つ、中国の防空識別圏の中における中国機のコントロールをより有利にするというか、やり易くするので、航空活動が非常に助かるんです。つまり、中国の本土のレーダーでは、中国の防空識別圏を全部カバーできない状態になっているのかもしれない。それがここにレーダーを置くことによって、中国機のコントロールをよりたやすくするというか、たとえば、AWACSを使わなくても中国機が頻繁に活動できる。そのことによってこの周りのガス田を守っている。中国艦艇のエアカバーをするということですから、対空の戦力がアソシエイトされると、非常に大きな防御群がここにできるということなので、我が方が監視されるという能力もありますし、その裏表として中国の活動がよりこちらに接近してくるということですから、我が方の活動がそれだけ制約されるということにもなりますよね。ただ、それを中国は日中の境界線を認めないと言いつつ、実は、日中の境界線の中でこういうことをやっているという、より巧妙なやり方をしているので、なかなか国際法上、これを違法行為だというふうには言えない。我々ができるのは、つまり、中国の日中境界線の中でやっている、石油採掘、ガス田が、実は我が方の領域の中、日中境界線の我が方の中に埋蔵されている天然ガス類は吸い取られる可能性もあるので、従来から、日中の東シナ海の油田開発交渉については、実態を教えろと何度も要求をしています。情報を開示しないということですね。そこに大きな問題があるということだと思うんですね」

急速な軍事力近代化&強化 ロシアの狙いと矛先は
佐々木キャスター
「9日に行われた対ドイツ戦70年式典の軍事パレードで、公表された新兵器、このタイミングで公表されたこと。ロシアからどんな意図が読みとれますか?」
小泉氏
「先ほどおっしゃられたように、ロシアは2011年から非常に大規模な装備近代化プログラムを進めていたわけですけれども、中でも陸上兵器の近代化というのは比較的遅れていたんです。その中で、これまで秘密にされていた新型兵器、陸上兵器をいっぺんにこの対独戦勝記念パレードに出してきたと。2000年代ぐらいまではせいぜいGDPの3%以内ぐらいが国防費だったんですけれど、今年は4.5%を超えていますので、大変な高軍事負担傾向というものが続いているということが言えようかと思います」
反町キャスター
「アメリカと一戦交えよう、アメリカに並ぶだけの軍事力を整えようというマインドでプーチン大統領はやっているのですか?」
小泉氏
「ロシアのいろんな軍事戦略ですとか、戦略家の発言を読んでいきますと、たとえば、ウクライナみたいな形で小規模紛争がある。あるいはその前にグルジアでも紛争がありましたけれども、こういった紛争というのは小規模紛争ではあるのだけれども、これにNATOが介入してくる可能性がある。こういった介入を阻止しながら小規模紛争をやるためには核の抑止力というものがなければいけない。小規模紛争は重視する一方、古典的な核抑止みたいなものも非常に重視するという二重体制でずっと軍事力整備が続いていたと思うんです。ですから、RS24アレスという新型ICBM(大陸間弾道ミサイル)を今回、一緒に初めて出してきたわけですけれども、迅速に介入が可能なような通常戦力と、介入を抑止するための核戦力という2大体制が現在のところのロシアなのかなというふうに思います。ただ、その中で今回そのウクライナのような事態が、いわば昨年の2月に突然、ヤヌコビッチ大統領が首都からいなくなってしまって、介入しなければいけなくなったという状態。そういう時にロシアが何をしたかというと、おそらく力による現状変更という話がありましたけれども、現状に対する不満がいっぺんに出てきたのではないかと思うんです。ですから、ロシアにしてみれば、たとえば、冷戦後に、アメリカの対テロ戦争にも協力したし、あるいはMD(ミサイル防衛)問題でもある程度の話しあいの余地をつくったはずだし、ロシアにしてみれば。あるいはNATOの拡大を認めてきたし、いろんな意味で、ロシアは我慢してきたけれども、一向にロシアの主張、たとえば、独自の旧ソ連に対する勢力圏みたいなものとか、ロシアの様々な国益に関する主張を全然聞いてもらえなかったんだという不満が非常に強かったと思うんですね。ですから、もともとロシアが不満を募らせていて、起こったのがウクライナなのではないかという気がしています」
小原氏
「ロシアは最近、新しいゲームを始めたのではないかと思っていますが、これは米中が2極になるのではないかというおそれから、自分がどうやって第3極として生き残ろうかという戦略ですね。ロシアはこれまではヨーロッパの中で何とか協力関係を通じて第3極として残りたいということだったのですが、これはウクライナ危機でまったく思惑がひっくり返ってしまった。現在アジアの方に関心を寄せてきている。中には、ロシアのアジア回帰なる言葉を使うオフィシャルもいると。さらには南シナ海にも非常に関心を持ち始めている。これによって困ったのは中国でもあるんです。中国は一生懸命バランスをとろうとして、何とかこれまではロシアを引きずりこんでいるつもりだったのが…」
反町キャスター
「それは対米協調というという意味で?」
小原氏
「対米協調、対米牽制ですね。それがロシアは自分の状況が変わったら急に中国の背中を押したと。これが2014年に起こったことで、中国にしてみれば。中国はこの程度の牽制をかけたいと思っているところを踏み越えるくらい牽制がかかってしまったということです」
反町キャスター
「具体的に言うとどういうことですか、ウクライナのことですか?」
小原氏
「ウクライナによってロシアが中国と協力せざるを得なくなったし、ロシアは、アジアで自分が第3極として残る何らかのスペースがないかと考え始めた。たぶん米中が対立している方がロシアにとっては都合がいい。ロシアとしては中国の背中を押していた方がいいということですね」

どう捉える? 北朝鮮の脅威
森本氏
「(北朝鮮は)これまで3回核実験をやっているんですけれども、4回目の核実験以降、核実験が進んで、核兵器が、たとえば、小型化される、軽量化されるというのを我々非常に懸念しているということですね。それとこの弾道ミサイルというのが連携しているので、時が経つにしたがって、弾道ミサイルの射程、精度の開発がどんどん進んでいくと。しかも、非常に柔軟に、あらゆる状況に警告なしに発射できる弾道ミサイルの数が増えていく。と言うことは、我々にとって直接の脅威なので、これにどうやって対応するのかというのは最も日本にとって深刻な脅威だと思います」
反町キャスター
「中国と北朝鮮、どんなふうに見ていますか?」
小原氏
「中国は、北朝鮮を支持するということに関しては、私はそれは現在の段階ではない。そもそもこれも表向きの協力関係と違って、中国は北朝鮮が大嫌いです。血の同盟ということになっていますけれども、現在、北朝鮮が韓国と一戦交えた場合に、中国では北朝鮮を支持し、中国の若者の血を流すことに対して理解は得られないだろうと言われています」
反町キャスター
「北朝鮮のために兵隊を送り込む環境が現在の中国にはない?やったら逆に政権批判につながると、そういう意味ですか?」
小原氏
「はい」
反町キャスター
「北朝鮮が暴発した時に誰が止めるのかという時に、中国カードはどのくらい効果があるのか?」
小原氏
「他の国よりは中国が影響力を持っていることは間違いないと思います。ただし、ミサイルの発射実験等でも、中国から聞いた話では、中国から行った代表団が、他の国の代表団と同じに扱われたということで憤りを示していました。そういった北朝鮮の態度もあって、現在、中国は北朝鮮の核兵器の保有自体に対して明確に反対ということを言っています」
反町キャスター
「ロシアと北朝鮮の関係。どういうパワーバランスが働いていると思いますか?」
小泉氏
「ロシアにとっての北朝鮮はおそらく問題としての北朝鮮と、パートナーとしての北朝鮮の両方あると思います。ロシアとっても北朝鮮は大変問題があるのは間違いない。核と弾道ミサイルですね。ロシアにとって核不拡散政策上望ましくないと。弾道ミサイル開発は、アメリカのアジア太平洋におけるプレゼンスを正当化する結果になっているわけですから。ただ、ロシアはソ連時代以来、北朝鮮と付きあいがありますし、現在、北朝鮮が中国との関係が若干悪化しているという中で、その隙間を埋めるようにエネルギー供与でロシアが入ってきている、あるいは港湾の開発。中国と若干微妙な関係にあるいろんな国と関係をつくっておきたいという、ロシアの戦略もあると思います。あるいはロシアの極東振興のためのパートナーとして北朝鮮が必要だという面もあると思います」

変容する“安全保障環境” 国会審議でなすべき議論は
佐々木キャスター
「安保法案について、国民が議論を不十分だと考えている理由は何だと思いますか?」
森本氏
「なかなか国会での論戦というのは、安全保障政策を論じるのではなくて、憲法解釈で議論しているものですから、法律用語で答弁がずっと続き、なかなか。たとえば、重要影響事態とか、存立危機事態とか、あまり聞き慣れない言葉でずっと答弁が続くので、思わないではなくて、わからないですね」
佐々木キャスター
「今日のような具体的な危機を語ることというのは?」
森本氏
「なかなか、ここは外交上難しいですけれど、抽象的な言葉をずっと言っても、たとえば、安全保障環境が変わっているといくら繰り返しても、具体的になかなかピンとこないし、正直申し上げると、北朝鮮の脅威だけで安全保障環境を論ずることは少し無理がありますので、私はわかりやすくするためには、何か具体的な国の名前をあげなくてもいいからシナリオ。たとえば、南シナ海でどのようにベトナム、フィリピンがいろいろな目に遭ってきたかということを具体的に事実としてまずとり上げ、それが我が国であればどういう対応があり得るのか、この安保法制がもし通れば、その変化がどういうところに起こるのかという、そういうシナリオ的な思考過程を持って国会の審議の説明をしていくと、少し理解が進んでくるのではないかと思っています」

森本敏 元防衛大臣の提言:『与野党調整しつつ修正点を模索するべき』
森本氏
「これまでの安全保障関係の法律というのはPKOだとか、周辺事態法とか、特別措置は、全部原型と言いますか、もともとの原案が出て、国会の審議を通じて、与野党がいろんな修正調整をやりながら、最終的に合意点を模索して成立してきたわけですから、今回も衆議院はそうならなかったのですが、参議院の審議を通じて受け入れられるところをできるだけ受け入れ、現実的な修正ができるような道を探っていただきたいと思います」

小原凡司 東京財団研究員・政策プロデューサーの提言:『世界政府は存在しないという認識』
小原氏
「私は安全保障を語るにあたってはリアリスティックに考えなければいけないと思います。国に善悪があると考えるのはリベラルな考え方ですけれども、実際各国は自国の利益を追求するために動いている。世界には政府はない。誰かが何かを行った場合に、それを止めるのは他の国際社会の国でしかない。こうしたことを考えたうえで、しかも、その事象が全て連動している。これを考えたうえで、日本がどうするかを考えるべきだと思います」

小泉悠 未来工学研究所政策調査分析センター客員研究員の提言:『ロシアの安全観=безопасность』
小泉氏
「辞書で引くとこれは安全と出てくるんですけども、これを字義通りに解釈すると危険がないという意味しかないですね。ですから、ロシア人の世界観の中では現在たまたま危険がない。軍事力であるとか、諜報活動とか、いろんなことによってたまたま安全が保たれているだけに過ぎないのだと非常にネガティブな安全観しか持っていない。日本人とはちょっと違う安全観みたいなものを理解しないとなかなかロシアの考えていることは見えてこないのではないかなということを考えました」