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2015年7月21日(火)
高齢者に手厚すぎる? 和田秀樹が説く理とは

ゲスト

和田秀樹
精神科医
島澤諭
中部圏社会経済研究所チームリーダー
高橋亮平
NPO法人Rights代表理事

シルバー民主主義と18歳選挙権
松村キャスター
「シルバー民主主義、高齢者による政治への影響力を増す現象ですが、精神科医として高齢者と接することの多い和田さん、このシルバー民主主義、どのように捉えていますか?」
和田氏
「高齢者の問題を考える時に、確かに、高齢者はマジョリティになりつつあるのだけれども、いろんな種類の高齢者がいて、こちらからすると、高齢者が勝ち逃げだとか、優遇されているという話になりがちだけれども、そこを悪いなと思っている人もたくさんいるという印象も持っています」
島澤氏
「ジニ係数というのがありますけど、世代内の所得格差が非常に大きいわけですよね。どちらかというと、貧困に置かれている高齢者であれば、迷惑をかけているというよりも、自分が生きていくためには何らかの所得を得ないといけないわけですから、そうすると、若い人から所得の分配で出るというところが強く出てくると思うんですね。そうした中で、高齢者は投票に行く割合が高いわけですから、そうすると、高齢者が意識しているか、していないかはまた別問題として、それは票をもらう政党が、政治家が、高齢者の方をある意味、忖度し、高齢者優遇の政策を打てば、自分達に投票してくれのではないかということで、いわゆるシルバー民主主義みたいな話になっているのかと思っています」
反町キャスター
「普通だったら、人口に比例して、それぞれの世代に配らなくてはいけないという、国がそういう義務をもって、政府が義務を負っていくとしたら、今言われた、お年寄りの方が人数も多いし、投票にも行くから、人数が多いところが、さらに、投票率も高ければ、政治的なパワー、若い世代に比べれば格段に増すわけではないですか。それに、本来配られるべきものが、少し歪んで、たとえば、お年寄り、高齢者に手厚くなっているかどうか。そこを僕らはシルバー民主主義の弊害的な意味で使うんですけれど、それは、僕らの持っている印象は正しいのですか?分配が歪められているのかどうか。そこはどうですか?」
島澤氏
「結果的に見れば、分配は歪められていると思います」
反町キャスター
「それをどう感じますか。やむを得ない?声の大きい人が、それなりの享受をするのは、ある意味、民主主義だという話があるのですが、そこはどう感じますか?」
島澤氏
「民主主義は単に数でごりごりやりあうのではなくて、民主主義が成り立つ根本的なところには他者への配慮というものが必要だと思います。その他者というのは、ある意味、少数派ということでもあると思うんですけれども、その配慮をなくして、民主主義は成り立たないと思っています。そうした中で高齢者が自らのパワーを背景にして、自分達だけの利益を追求しているとすれば、それは当然、シルバー民主主義ですし、いろんなところに歪みが生じていると思います。ただ、それが本当にそうなっているのかどうかというのは別問題ですし、あとは実際に高齢者にかけられているお金というのは多いんですけれど、それにこれまでの制度がそのまま維持されてきた結果、多くなってきているだけで、結果として申し上げたいのは、右肩上がりの時代の制度を後生大事に維持しているから、高齢者への配分が大きくなってきているという側面もあるということです」
高橋氏
「よくメディアはシルバー民主主義とか、シルバーデモクラシーの話をする時に、高齢者がすごく得をしていて、若者が損をしていて高齢者は自分達の利益を守るのだから、若者も自分達の利益を守るために、積極的に参加をしなければいけないという対立構造を煽っているわけですけれども、メディアというのはこの番組だけがというわけではなくて、単純にそういう構図ではないのではないかなと思います。私どもがシルバーデモクラシーに対して、ユースデモクラシーというのをつくらなければいけないというのは、よく言うんですけれども、それは対立するための唯一のデモクラシーではなくて、若い人達というのは参画に対して非常に弱者だと思うんですね。かつては、たとえば、身体的に恵まれていないとか、様々なハンディキャップを持っている人達というのは、それで不利益を得てきたわけですけれども、それに対してバリアフリーというのが、ある意味、スタンダードになってきましたよね。同じように、民主主義において、弱者である若者に対して、どうバリアフリー社会をつくっていくかというのが、これからの民主主義において非常に重要になってくるのではないかなと思っていまして、それをどうつくるかというのがまず大事なのではないかと。これが1つ」
反町キャスター
「民主主義において、若者が弱者であるというのがよくわからないです。皆、同じように投票権を持っていて、皆、同じように投票に行けるにもかかわらず。この投票権を政治参加の権力を行使しないのは、僕は、勝手だと思うんだけれど、そこが弱者だという根拠は何ですか?」
高橋氏
「まず1つ、投票権という話にのってお話をさせていただければ、若者の中には、投票権を持っている人間もいますけれど、投票権を持っていない人間もいますということがまず1つあると思います。そういう意味で言うと、投票権を持っていない人達に対して投票権を与えるというのが、まさに18歳選挙権だと思うんですね。ただ、若者達は、どうやって参画すればいいのかというのをあまり学んでこなかったというのがあると思います。これは年配の人達が習ってきたのかというと、そうではなく、社会経験の中で、様々積み重ねてこられた中で、参画をしていく必要性や、そのことによる利益があるということも含めて、様々、学んでこられたんだと思うんですけれども、まだまだ若い人達はそういう感覚が体験できていないところがあって、そういう意味で言うと、非常に、社会的に政治的な意味合いでの弱者という側面があるのではないかなと思っています」
反町キャスター
「18歳、19歳に、2年分認めることで240万人の有権者が出るわけですよね。どうですか、その240万人、投票率が前回の選挙で3割ぐらいですよ、すると70万票。50%として120万票。これで社会を動かせるパワーまでいきますか?」
高橋氏
「たぶん数字的なデータで言えば、そのインパクトはないと思いますね。ただ、一方で、そういう数字で言えば、婦人参政権を得たのが70年前。それが唯一選挙権が拡大した時ですけれども、当時のインパクトと比べれば、極めて少ないことというのがデータ上も示されていると思うんですね。ただ、70年間放置され続けてきた民主主義下で、有権者を増やそうという概念が一歩進んだという意味では、この選挙権の年齢引き下げというのは大きな意味がある。要するに、日本の民主主義が進化しようとしたということですね。しかも、どちらの方向に進化しようとしたかというと、まさに、今日のテーマにもなっていますけれど、若い人に参画させようという意志が見えたということについて言えば、それは数字以上のインパクトがあるし、逆に言えば、我々も含め、政治家の人達がどう若い人達に意識を向けるかということをすることが、これから大事で、バタバタとドミノ式で社会を動かしていく、1つ目の仕掛けとしては、非常に大きな価値があるのではないかなと思っています」

社会保障費の負担と配分
松村キャスター
「ここからは社会保障費における世代間格差について考えていきます。島澤さん、まず高齢者と若い世代に対する社会保障費の配分は現在どのようになっているのでしょうか?」
島澤氏
「年金ですとか、介護といった高齢者に使われている社会支出が現在、53.6兆円。児童手当といった家族と言いますか、若い世代向けの社会支出が6.2兆円ということですので、だいたい高齢者に向けた支出というのは9倍ですね。若い世代の9倍、高齢者にお金が使われていると。一方、ヨーロッパ先進国を見てみますと、だいたい1対2から1対4というところが相場でありまして、日本みたいに1対9というのはあまり例がないですね」
反町キャスター
「日本のバランスというのはバランスを欠いているとは申し上げません。偏重しているのは間違いない?」
島澤氏
「偏重は間違いないと思います。ただ、それも先ほど申し上げたように、かつての高齢者が少ない時の制度をそのまま維持してきて、それを変更していない、別に、官僚がどうしたという話ではないですけれど、根本的な改革がなかなか難しいところがあって、少しずつ備忘策的に少しずつ、少しずつやっていくと」
反町キャスター
「そうすると、つまり、それがシルバーデモクラシーではないかという話になるわけですよ。要するに、お年寄りに対する給付を削ることの抵抗が強く、その分、予算の中で現役世代に対する給付を増やそうというパワーがありながらも予算がどんどん伸び率が悪くなる中、国の借金も大きくなる中、かつてのように潤沢に予算が毎年増えていくわけではないから、そうすると、どうするかというとお年寄りの予算を減らすパワーが政治にない。そうかと言って、現役世代に対する給付を厚くすると言っても予算の余裕がない。そこのバランスを欠いたところをずっと続けてきたのは、これは、もしかしたら与党の責任だけれども、それがシルバーデモクラシーではないかと僕ら的には現象で見るのですが、そこはそういう言い方でよろしいのですか?」
島澤氏
「シルバーデモクラシーをどのように理解するのか。冒頭の議論に戻ると思うんですけれど、高齢者が望んで、もう絶対変えてくれるなと。非常に政治家にプレッシャーを与えているというのであれば、それはシルバーデモクラシーだと思いますけれど、そうではないような気がするわけです」
反町キャスター
「お年寄りが望んでいるわけではない?」
和田氏
「まったくそう思います。だから、現在のやっているところ、先ほど、島澤先生がおっしゃったみたいに、高齢者が喜ぶであろうが、高齢者が怒るであろうということに対して、すごく政治がナーバスになっているということが1番大きな問題で、それを皆、金の問題だけで解決しようとしているというのが問題になるのではないかと」
反町キャスター
「島澤さん、和田さんの指摘されたお年寄りはそんなに金を望んでいるわけではないのだけれども、政治の方が金を配るということ…」
和田氏
「望んでいないとは言っていないわけです」
反町キャスター
「政治の方が、要するに、金を分配することに重きを置いていることに問題があるのではないかという指摘。本当にお年寄りが望んでいないのか。そこの部分、どう感じていますか?」
島澤氏
「お金を望んでいないとは当然、言えないと思うんですよね。これまで1対9という先ほど、数字を申し上げましたけれども、それが温存されてきているというのは高齢者が、自分が貰って、給付を受けているお金の財源について、ある意味、無知というか、知ろうとしなかった」
反町キャスター
「社会保障給付費の財源の内訳ですけれども。これはどういう意味ですか?」
島澤氏
「社会保障給付が2012年度で、確か107兆円ぐらいあるんですけれど、そのうち社会保険料で賄われているのが、全体の48.3%。半分弱ですね。残りが公費負担で、33.5%。これは税金という意味ですね」
反町キャスター
「3分の1は税金ということですね」
島澤氏
「はい。ただ、税金が3分の1ですけれども、ご承知の通り、日本の財政は非常に厳しくて、全て税金で賄えているわけではなく、国債を発行しているわけですね。国債というのは当然、将来の税負担ですね。将来の税負担、誰が将来その税を負担するかですね。子や孫世代ですね。要は、現在の社会保障の給付を賄うのに、現在の高齢者が、ある意味、勝手に孫の財布からお金を抜き取って、自分達が使っているという状況が実際これですね」
反町キャスター
「それは、たとえば、今日だいたい皆さんは同じように話す中で、高齢者の方は別に貰っているからといっても、現役世代に対して負担をかけているとすれば、それは申し訳ないと思っている人がほとんどだと言うのだけれども、今の話は貰っている中の3分の1が税金で、しかも、その中の何割かは将来に対するツケ回しだというところは皆さん、理解されているのですか?」
島澤氏
「この数字は、おそらくほとんどの方がご存知ないと思いますね。1番の問題は、知ろうとしなかったことです。高齢者が」
反町キャスター
「それは高齢者側の責任?」
島澤氏
「知らせなかったというのももちろん、あると思いますね。政府もそうですし、政治家も敢えて知らせなかったと思いますね」
反町キャスター
「たとえば、高齢者と話をされる時に、現在みたいな話は、たとえば、あなたが貰っている年金、月12万円を貰っていますよと。その中で税金の負担分は4万円ぐらいありますよと。下手すれば、その4万円のうちの1万円、2万円分ぐらいというのは将来、あなた方が年金からプレゼントを買って渡しているお孫さんに、借金のツケをつけまわしているんですよと。ここまで話をした時、現在の高齢者の皆さんは、俺、年金減額していいよというところまでおっしゃる方はたくさんいると思いますか?」
和田氏
「たくさんいるかどうかはわからないけれども、ある程度はいるのではないかなと思いますね」
高橋氏
「世代会計というのがあって、その説明は島澤先生が専門なのでお譲りしますが、そのデータが経済財政白書という政府が発行していたものに掲載をされていたんですね。それが平成17年までしか掲載されていなくて、そのあと、急に掲載されなくなっているんですよ。これを見ると」
反町キャスター
「世代会計が何なのかの説明を」
島澤氏
「一口で申し上げますと、あらゆる世代に政府とお金のやりとりがあるわけです。年金を受けとるとか、医療サービスを受けとるとか、税負担や社会保険料を払うという、その世代ごとにいくら損得というか、出入りがあるかというのを、生涯を通じて、それを数字、金額で示したのが世代会計でありまして、だいたいの人の推計の結果を見ますと、お年寄りと若い世代の間で、1億円ぐらいの金額の格差があると」
反町キャスター
「若い世代の人の方が生涯を通じて国に対して1億円多く払っている?」
島澤氏
「そうです。多く払っている」
高橋氏
「高齢者は5000万円ぐらい一生涯で得をするんですよ。若い人はだいたい一生涯で5000万円ぐらい損をするみたいな話になって、これは研究所では、いろいろなデータが、最新データまで出されているんですけれども、その政府の出している経済財政白書というのは、平成17年まで出しているんですね。それを見たら明らかにおかしいと、見やすい表ですね」
反町キャスター
「お年寄りと若者にプラス5000万円とマイナス5000万円。行って来いで1億円あるわけではないですか。その1億円の違いが生じる原因はどこにあるのですか?」
高橋氏
「1番極端に言うと、そこでインパクトが大きいのは社会保障ですね。年金です。ほとんどが年金です」
反町キャスター
「そうすると、そこまでの話をすると、若い人達に一生涯通じて、自分からお年寄りを見た時、1億円余計に負担をさせることで、あなたの年金は運営されている部分があるんですよという、この説明をするか、しないか」
高橋氏
「僕は、大学の授業では、まさにそれを言って、ただし、政治に関心がないとか、わからないと言っている間にこんなになっているんですよと。1億円ですよと。あなた達は生涯でいくら稼ぐのと。3億円稼ぐの、4億円なのと。そのうち1億円ぐらいは少なくとも高齢者よりは良い暮らしができないんだよという話をするんですけれども、そうすると、結構シビアに感じてくるわけです」
反町キャスター
「高齢者と若い人の間の生涯における、その負担が1 億円違う。国庫に対する、収めるのが1 億円違う場合、それは、たとえば、実際の生活レベルでどのぐらい、本当に単純生涯賃金が1億円少ないという実感で受け止めた方がいいものなのかどうか、たとえば、よくある話で、日本というのは社会資本を1億円先払いと、よく言うではないですか。事前に1億円を先払いして社会資本を充実させているのだから、あとの若い世代の人達は、先につくられた社会資本の中で、豊かな暮らしができるのだから、1億円先払いしたと思って我慢しなさいという、こういう理屈を言う人もいます。そこはどうなのですか?」
島澤氏
「社会資本が豊かだと。確かにそうだと思いますけれど、これから人口が減っていきますので、余計な社会資本もあるわけですよね。その分の負担も当然入ってくるわけですから、その議論は必ずしも全てに当てはまるわけではないです。経済成長の果実の下で、若い世代がそれを受けとっているというのは確かですけれども、先ほど、ありました生涯賃金の関係で言いますと、今後、そんなに昔の世代が受けとっていたほど、生涯賃金が伸びませんので、その中で財政ですとか、社会保障の持続可能性を担保にしていこうと思うと、ドーンと負担が増えていくわけですね」
反町キャスター
「それは税や社会保険料が上がっていく?」
島澤氏
「そうです。2010年に生まれた世代が、生涯賃金に対していくら政府にネットで支払うかと言いますと、だいたい20%ぐらいです。現在、いわゆる団塊世代がどのぐらい負担しているのかというと10%弱です。ですから、生涯賃金で見て20%ぐらいの差があるというのが確かでありまして、それはなぜかと言うと、これまで生涯賃金で見てそんなに金額で見れば、確かに高齢世代がかなり負担していたかもしれないですけれど、生涯賃金で見ると、それに見あった割合で負担してこなかったということはあると思います」
高橋氏
「そこが見えているわけですよ。かつての政治というのはジャストナウで、現在、困っている人達と、現在、裕福な人達が助けあいましょうということをやってきたんですけれども、時代が進むにつれて、特に、時間軸というのをもっとより見なければいけないような形になっていると思うんですけれども、社会システムが、そういう時間軸を入れるということに、まだ、慣れていないというか、そこが1番大きな問題だと思います。そういう時間軸まで入れて、立体的に見た場合には、現在、島澤さんが言われたようなことは、官僚をはじめ、専門家達にはかなりスタンダードなことで、わかりきっているんですね。将来の人が我慢しなければならない。将来の人達が、我々の世代は年金に期待しないとか、街で聞いてもそう言っています。だから、論理とか、データは知らないかもしれなけれど、感覚的に国に頼ってはいけないという認識はしているわけです。そういう意味で、彼らは、準備を始めているんですけれど、そういうことがわかっていながら、なぜ現在、減らしていくという作業にいちはやく取り組まないかということが、まさに大きな問題で、ここが、シルバーデモクラシーという言葉が使われる最大の所以なのかなという気がします」

世代間格差の現状と今後 高齢者の脳内で何が?
松村キャスター
「高齢になるに従って脳内では何が起きているのでしょうか?」
和田氏
「高齢者の脳が老化するというイメージというのは、世間のイメージだと認知症だと思うんですね。たとえば、物忘れが酷くなるだとか、知的レベルが落ちてくるだとか、ところが、認知症の場合でも、実際は記憶障害が起こっているだけのレベルの時は、知能テストをやらせたら、結構良い点を取るんです。だから、そういう意味で、知能テストは普通の知能テスト、IQというやつは、記憶力を問う問題が出ていないですから、だから、長谷川式という代わりのものを使うということですけれど、その前の段階、高齢と言って言いのか、もう40代、50代ぐらいから徐々に始まっているんですけれど、脳の中で前頭葉という場所が縮んでくると。この前頭葉という場所が結局、長い間、謎に包まれた場所でして、たとえば、昔は暴れる精神病の患者さんをロボトミーの手術をしておとなしくする。ところが、前頭葉の一部を切っても、まったく知能テストの点が落ちないですよ。だから、モニスというロボトミーを発明した人はノーベル賞までとっているんです。ところが、たまたまそれを切ってしまったら、知能はまったく落ちないのに、たとえば、意欲というものが落ちてしまう。意欲が落ちてきて、それで結局、無為、いわゆるぼんやりしたり、刺激がない人間になってしまう」
反町キャスター
「これは加齢、歳をとることによって自然に起きる前頭葉の機能低下によってもたらされる症状?」
和田氏
「そうです」
反町キャスター
「誰しもこういうのが起きる?」
和田氏
「誰しもとは、程度の問題はあるし、結局、老化というのは個人差が大きいですから。前頭葉というのは、若い頃から機能があまり発達していない。つまり、ルーティンワークは得意だけれども、クリエイティブではまったくない人だとか、意欲が乏しい人もいるものですから、なかなか一概には言えないんですけれども。ただ、同じ人間を比べて見た時に、若い頃と比べると落ちると考えていただきたい。そうすると、意欲が若い頃と比べると、歳をとると落ちる。もう1つは、歳をとると丸くなるとか、モノわかりが良くなると言うんだけれども、普通に前頭葉が縮んでくると、むしろ逆に、ちょっとしたことで怒る。だから、暴走老人だとか、あるいは昔で言う寺内貫太郎とか、ああいう感じの人の方が実際は多い」
反町キャスター
「歳をとると切れやすくなる?」
和田氏
「切れやすくなる。これは前頭葉という、いわゆる理性というか、感情を抑える機能が脳の部分ですから、それから判断力というのが、モノの判断をする時に、多面的な判断とか、いろいろなことを想定しての判断ができなくなって、それで目の前にいる人のことを信じちゃうから、これが振り込め詐欺に引っかかるとか、リフォーム詐欺だとかに引っかかる。つまり、彼らは決して知能が落ちているわけではないから、振り込め詐欺師であろうが、あるいはリフォーム詐欺師であろうが言っていることはかなりまともなことを言うわけですよ。それを信じてしまうんだけれども、他の人からそれを疑うとか、あるいは他の人の意見も総合してとか、次に、誰かに話を聞いてから、それを判断しましょうということが衰えやすいと。問題になってくるのは、歳をとればとるほど、だから、考えが保守的になってきたり、あるいは先ほどの話ではないけれど、お金がないと不安だとか、そうなってきたりするみたいに、結局、世間で言うみたいに守りに入るという状況になる。だから、シルバー民主主義というものの弊害がもしあるとしたら、いわゆる大きな改革を望まない。たいして豊かではなくても大きな改革を望まない。そういうことが起こりかねない」
島澤氏
「疑問なのは、後期高齢者医療制度を導入した時に、非常に高齢者が反対したわけですよ。あれを考えると、先ほど、和田先生がおっしゃったような、ここをうまくやっていけばというのがどうも疑問というのか、何となく懐疑的でありまして、後期高齢者医療制度は後期高齢者を取り出して、保険機能をしっかりやって、そんなに後期高齢者の方々に悪くはない制度だったと思うんですけれど、後期高齢者という言い方が聞き捨てならんとか、何か感情的な反発が非常に多かったと思うんです」
和田氏
「だから、感情的な反発を招くような政策がまずいということで、お金の負担がちょっと増えるだとか、あるいはちょっと減らすとかということに対しては、むしろ我々の前頭葉機能低下ということに対しての先人の知恵があると思うんです。その先人の知恵というのは、特に儒教文化などに見られる高齢者を立てる、つまり、彼らは顔が潰された時はすごく…」
反町キャスター
「それは一般論の話ですよね?」
和田氏
「そうそう」
反町キャスター
「機能低下を防ぐ方法はないのですか?」
和田氏
「前頭葉をちゃんと使えばいいです。どうも日本社会は教育で前頭葉を使わないわけですよ。つまり、ルーティンワークをさせることが多くて、あまりクリエイティブが求められない。想定外が起こった時に前頭葉は使われるわけです。たとえば、歳をとってから小説を書くのもいいだろいうし、株式投資みたいに予想していないことが起こるとか、あるいは高齢者は恋愛とかで、若返る。そういう意味では、高齢者に対し、年甲斐もなくと言うことが、前頭葉の萎縮を促進してしまう。旅行に行くにしても思い切ってエジプトに行ってみようとか、お年寄りにいろんな形で遊んでもらう」
反町キャスター
「ギャンブル、恋愛、旅行?楽しいですよね。そういうことをやることによって前頭葉の老化が防げる?」
和田氏
「ある程度、防げる」

若者の不満解消するには?
松村キャスター
「若い人の不満を解消する方策というのは何かありますか?」
島澤氏
「先ほども申し上げましたように、若い人と高齢者の間で政府のお金の使い方が非常にアンバランスになっています。9:1ですよね。若い人がこれから社会を支えていく、あるいは高齢者を支えていくわけですから、若い人にある程度分厚く再配分を行うというのは1つあるだろうと思うので。現在、日本の場合、若い人にだいたい社会保障給付の5%分ぐらいしか使えていないですけれど、ヨーロッパですと10%使われていますので、それなりに上げていくというのも1つの手だろうと思いますね。お金を困っている若い人を助けるために、社会の基盤を安定させていくわけですから、そういうやり方があるのかなと思います」
高橋氏
「先ほどから議論をいろいろしてきましたけれども、年齢によらず日本の現状をあまり知っていないというのが大きな問題だと思っていて、メディアもそうですし、研究者もそうですし、特に政治家、官僚がそうだと思いますけれども、こういうものをできるだけ共有していくということが必要だと思います。うまくいっている時代は、右肩上がりであれば、お上に任せとけば間違いないというような状況ですとか、こういうものはプロに任せておこうというような考え方で成り立ってきましたけれども、もはやそういう時代ではなく、たとえば、生活保護のような形で苦しんでいる人だって、自転車をこいで発電しなければいけないのではないかというぐらい、これは極端な例ですけれど、それぐらい国民皆が働かなければいけない。そういう時代だと思っているんですね。それは何かお金を生み出すだけではなくて、知恵を生み出すということも、そうですし、そう考えると決して子供であっても、あなた達はいつまでも守られているんだよではなくて、彼らも含め、日本国民として現在自分に何ができるか、何を知らなければいけないのか、自分ができることはどういうことだ、それをやらなければとなっていかなければいけないと思うんです。そういう意味では、保護する対象を決めないで、皆を使い切るというか、皆がプレイヤーになる。逆に言えば、政治についても幅広い人達が参画をしていかなければいけないと。だから、選挙についても年齢を拡大したわけですけれど、選挙だけではないですね。物事に対するコミットの仕方。たとえば、ヨーロッパだと、近所の公園がリニューアルするという時に使っている子供達が、僕達はこういう公園にしたいんだという当事者性を持って意見を言うと、そういう当事者にとって相応しい公園になったりとかするんですね。そういうことから考えると、決して子供だって、政治や町づくりにおいていつも守られている存在ではなく、主催者として参加することだってできると思うんです。それから、先ほど、冒頭に民主主義というのは決して多数決ではないんだよと。数の横暴ではないんだという話も出ましたけれども、そういったことも含めて、民主主義を進化させるということが、大きな解決策になるのではないかなと思っています」

精神科医 和田秀樹氏の提言:『高齢者問題は高齢者が解決』
和田氏
「1番言いたいのは、高齢者の問題は若い人に頼るなということですね。高齢者で解決すると。先ほど、申し上げたみたいに、高齢者の年金だとか、福祉の財源は相続税で賄えば、60歳の時に払うと。あるいは消費不足だって、高齢者が金を使うようになったら解決するだろうと。労働力不足だって高齢者が働くようになれば解決する。つまり、元気な高齢者がもう少し高齢者だと自己認識しないで、社会に参画するということが重要なのではないかと思います」

島澤諭 中部圏社会経済研究所チームリーダーの提言:『真に困った人へ』
島澤氏
「年齢で人を切らない。能力と言いますか、負担できる人、真に困っている人というのを見定めて、真に必要なところにお金がまわるような仕組みを構築できれば、世代間格差というものも簡単に乗り越えていけるのかなと思っています」

高橋亮平 NPO法人Rights代表理事の提言:『全員参画』
高橋氏
「先ほども言ったんですけれど、日本人が年齢とかに限らず、それこそ子供まで、全員が参画をしながら、次の日本をつくり上げていくというのが大事なのではないかなと思います。たとえば、今日のこのテーマでの議論も、私は最年少で39歳なわけです。こういったものをもっと若い人がコミットメントしたりとか、テレビの現場でなくても、地元だったりとか、友人達の中でこういう議論ができるような状況にすることが大事で、そういう意味で、政治教育というのがすごく大切だと思うんですけど、現在、政治的中立性というのが議論されているのですが、先日、山口で安保法案についての模擬選挙をやったら、教育委員会からご指摘を受けて、次からしない方がいいのではないかということが問題になったりしていますけれど。ああいうことは大々的に取り扱いながら、若い人達が当事者としてどう考えるかというトレーニングをもっともっとやっていった方がいいと思います。子供に包丁を使わせないと、いつまで経っても料理ができないわけで、危ないというのがわかりながらも、指を落とさない程度に教育していく、育てていくという、そういう想いが日本人にとっては大事で、選挙だけではない直接参画も含めた参画の仕組み、そういうインフラを整えることが大事ではないかと思います」