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2015年6月18日(木)
知的財産と国際攻防戦 成長戦略再点火のカギ

ゲスト

山本一太
自由民主党知的財産戦略調査会副会長 参議院議員
萩原恒昭
一般社団法人日本知的財産協会参与
相澤英孝
一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授

日本の知的財産戦略は
秋元キャスター
「知的財産の代表的な権利、特許がありますけれど、それぞれの国で1 年間で登録された特許の件数は、日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国、韓国をあわせますとこれだけで世界の8割近くを占めるということですね。審査基準の厳しさなど、それぞれ違いがあるんですけれども、市場規模的に数だけ見ますと、日本とアメリカがおよそ27万件で、中国がおよそ21万件ということで、日米に中国が猛追しているという格好です。日本で見てみますと国内企業が登録している割合が8割で、同時に、日本企業が進出している他のエリアも1割から2割程度を占めているということです」
山本議員
「内閣府特命担当大臣として知財戦略を担当した時に、数日前に参議院の審議で決まった営業秘密に関する不正競争防止法の改正案と、もう1つ職務発明制度を含む特許法の一部改正。これは本当に日本のオープンクローズ戦略を進めていくうえでの2つの大きな柱になると思っていまして、非常に大事だと思っています」
反町キャスター
「オープンクローズ戦略とは簡単に言うと、どういう?」
山本議員
「簡単に言うと、まさに、知財こそ国富だと思うんです。日本の企業の基礎力というのは、まさに、日本企業の成長の源泉なわけですよね。ただ、高い技術力、知財をどう活用するかということが、企業の競争力につながり、日本の競争力につながる。オープン戦略というのは、シンプルに言うと特許制度のことですよね。それから、世界標準化の戦略。クローズ戦略というのは、今度の不正競争防止法の改正案で出てくる営業秘密で、つまり、ブラックボックスをきちんとつくっていくと。この2つをうまくバランスさせて、いわゆる知財を最大限活用し、最も高い成長を上げられる。そういう体制をつくるということが、日本にとってすごく必要なことだと思います。現在、オープンとクローズを組みあわせないと、個々の企業が持っている高い技術力、つまり、差別化をはかるような技術はきちんとブラックボックスにしておいて、しかしながら、マーケットのシェアを増やすみたいな話もオープンにしていこうと。この組みあわせをちゃんと戦略的にやらないと、これはおそらくアメリカに比べたら20年ぐらい遅れていて、韓国から比べても、たとえば、営業秘密をみたら10年近く遅れていると思います」
相澤教授
「たとえば、特許をとった方がいいもの、特許をとらなければならないものは、たとえば、製品を売ると相手の人がそれを解体して中身がわかるようなものというのは、これは特許をとっておかないと秘密にはできないわけですね。たとえば、わからないものの典型が、たとえば、シャンペンを買ってきても、あの味というのは、実は、一家相伝で、その人にしかわからないわけですよ。そういうものは、ブランドで守られていれば、その味は誰も出せません。そういうものもあるんですね、小さいけれども。ですから、モノによって守り方が違うということですね。日本は特許、今、登録件数あるんですけれども、出願件数が減ってきているんですね。むしろ中国の方はガッと伸びている。現在は出願数、中国1位。たぶんアメリカが2位」
反町キャスター
「出願数が多いですね。これは登録件数ですからね」
相澤教授
「過去の蓄積分があるのですが、こちらの方は、中国は政策的にガッと、特許戦略をやるということをやってきているし、アメリカもやってきている。1つはどうやって組みあわせるかの中で、いろんな知的財産を組みあわせてビジネスをしていくことが大事で、萩原さんのところも、特許を持っているし、商品のブランドを持っていて、いろんなもの使いながら自分のビジネスを守ると」
秋元キャスター
「特許以外にもパクリものとか、ちょっと怪しい遊園地とかがあるではないですか。その種類というのはどうなっているのか。ちょっと説明いただけますか?」
相澤教授
「いろいろありまして、今日、主としているのは特許権、技術ですね。意匠というのはデザインですけれども、どちらかというと量産化されたデザインですね。商標というのはまさにマークでして、よくあるパクリは、たぶん、これ(著作権)です。何とか遊園地みたいなやつですね。実は、著作権はコンテンツだけではなくて、コンピューターソフトもここに入っているので技術という側面もある。これをどうやってビジネスをやる時に、うまく混ぜてやっていくかと。ですから、この特許を使って技術開発をしました。特許をとりました。一部は営業秘密にしています。でも、それだけではビジネスはうまくいかないので、どういう商標をつけて売るか。あるいは、コマーシャルをやって、どうやって企業イメージに結びつけていくかという、これを全部バランスをとってやることが、これからの成長につながっていくと思います」
反町キャスター
「たとえば、日本はモノづくり、モノづくりだとこれまで言っていて、いいモノをつくれば売れるんだよというような信念で歩んできた部分はありますよね?」
相澤教授
「はい」
反町キャスター
「ここの話というのは、いいモノつくるだけでは勝てないんだよという話ですよね?」
相澤教授
「そうです」
反町キャスター
「その感覚というのは、現在まさにここで議論をしているということは、日本のモノづくりのメーカーは、そこの部分が不得意?」
相澤教授
「不得意だったか。これまでは良いモノをつくれば売れていたから。だけれど、言っては何ですが、良いモノよりも、良くないモノが普及しているものがいっぱいあるではないですか。そういう高性能品ではなくて、実は頃合いの良いモノが普及していることがあるというようなものがありますよね。ですから、お客様が望むものは、必ずしも最高品質のものではなくて、使いやすいもの、他に良いもの、持って気持ちが良いもの。たとえば、そういうことも必要なので、たとえば、テレビは画面がきれいなだけなのか。でも、部屋に置いた時に何となくファッといい雰囲気になる。そういうものも大事。私はそれが現代のビジネスだと思います」
山本議員
「少なくとも見た限りで、オープンアンドクローズ戦略。グーグルみたいに、いわゆる企業の収益率が3割とか、4割ですから。日本のモノづくりの会社はせいぜい良くても5%ですよね。アップルとか、グーグルみたいな企業は日本にはないと。そういう意味では、まさに、日本の法律もそうですけれど、オープンクローズ戦略というものを、安倍内閣でしっかりとさせて、本当に知財戦略を経済成長に結びつける必要があるのではないかと思います」
反町キャスター
「萩原さん、山本さんの話だと、モノづくりの技術やノウハウをいくら持っていても、オープンクローズ戦略というか、知財にかける戦略があるかなしかで利益率が5%から30%までいろいろあるよという話にも聞こえるのですが、そういうものですか?実感としては」
萩原氏
「結局のところ、日本の強みというのは、モノづくりだと言われていて、そこに固執し過ぎているところがあるのかもしれませんね。クアルコムとか、現在お話のあったアップルというのは自分のところで開発したアルゴリズム、そういうものをきちんとしていくが、モノづくりについては、ホンハイだったり、中国だったり、台湾だったり。そういうところに任せてしまうんですよね。その部分についての特許があろうが、なかろうがアップルは知ったことではないわけですよ。彼らに安くつくらせて、自分達のブランドで売っていくと。そのへんのビジネスモデル。これがなかなか日本では難しいところなのかもしれませんね」

発明の権利は誰のもの?
秋元キャスター
「今国会では、知財に関する新たなルールづくりとして、特許法の改正案が審議されています。仕事の中で生まれた発明、職務発明について、特許を受ける権利がこれまでは、1人1人の研究者が持っていたんですけれども、これからは企業側が持つという形になります。研究者に権利がなくなる分、企業には事前に発明の報酬等の取り決めをしておき、きちんと研究者を処遇するという義務が課せられます。事前の契約など、細かいルールを定めていない中小企業などは、従来通り、今回の法改正の対象にはならないということですね。今回の契約に関するガイドラインを国が策定するということですが」
反町キャスター
「一義的に、発明、ないしは特許を取った時の利益を、契約に基づいているとはいえ、企業に渡すということですよね?」
山本議員
「はい」
反町キャスター
「この話でいうと、すぐ発光ダイオードの話を思い出しちゃうのだけど、個人に行くべきだという説をあの方はおっしゃっていたと思うんですけれども、それはどう説明をされるのですか?」
山本議員
「それはカリフォルニア大学の中村先生ですよね。青色発光ダイオード。まず中村先生は素晴らしい研究者だし、ノーベル賞も受賞された大変素晴らしい方だと思って、日本人として誇りに思っています。中村先生の業績に一切ケチをつけるつもりはないですね。青色発光ダイオードの件については、いろいろな見方があって、私は知財担当大臣として2年近く、知財戦略を担当したんですけれどもね。相澤先生や萩原先生がどうお考えになるかはわかりませんけれども、職務発明制度、もちろん、発明した人の貢献も大きいのですが、日本の場合はチームプレーでできていることが多いんですよ。たとえば、中村先生みたいな、いわゆるスーパー研究者と、普通の研究者というのをわけて考えるべきだと思うんですけど。たとえば、よく出てくる例で、YKKの自動車用のシートでファスナーが見えないチャックがあるんですね。これを発明した人がいるんですけれど、それは日頃から営業が取引先をまわって、こういうニーズがあると、拾いあげてきたからできていると。だから、それはチームワークで、日本の職務発明というのはなされていると思います。職務発明というか、権利が発生したところから、従業員帰属だったものを企業の判断で、契約とか、いろんな内規とか、いろんなことを踏まえて、企業の判断で法人帰属にできるということだから。たとえば、その企業の判断で、先ほど言った職務発明規定のない中小企業は、そのまま従業員帰属にするとか、あと、スーパー研究者を抱えている大学とか、そういうところはちゃんと従業員帰属を選択すればいいということです」
萩原氏
「もう少し対価についての合理性というものを出せるような形にすべきではないかということで2004年に法改正されました。それは従業者に特許を受ける権利が帰属するという、それはそのままにしておいて、ただし、対価の決め方のところで、会社と従業者とできちんと協議をしてルールづくりをしましょうと」
反町キャスター
「事前に?」
萩原氏
「そうです。会社のルールを決める時に。相当の対価を決めるルールをつくるんですけれども、それをきちんと会社と従業者と協議して決めましょうと」
反町キャスター
「でも、研究者はたくさんいて、当てられる研究と当てられない研究で、ほとんど当てられなかった方がたくさんいるわけですよね?」
萩原氏
「そういうばらつきはあります。そういうことがあったとしても一応会社としてはそういうルールづくりをしないといけない」
反町キャスター
「誰が当たるかわからないから、一応ルールづくりをしておこうと」
萩原氏
「それをきちんと全ての発明者を含む従業員に開示しましょうと。さらに、そういうルールで相当の対価を算定するんですけれども、相当の対価に妥当性があるかどうかというのは、発明者の意見をちゃんと聞きましょうと。そのうえで、その対価が合理的かどうかということで、これがもし合理的でないということであれば、裁判所でそれを判断してもらいましょうということになったんです。従ってそういうような法改正が行われたのですが、そのことによってかなり相当の対価の予見可能性というのが出たんですけれども、基本的に特許を受ける権利が従業者にあって、従業者から会社の方にそれを譲渡してもらうということが残ったものですから、相当の対価というものが残ったわけですよね。従って、相当の対価の合理性が最終的には裁判所で争われるということが残ってしまったわけです。今回、法人帰属、すなわち特許を受ける権利。最初から法人に帰属するということになったので、譲渡のための対価というような概念がなくなったんですよ。従って、企業から見れば、相当の対価というものが、経済上の利益を発明者に与えればいい。企業から見れば、インセンティブに相当する。そういうものを発明者にきちんと与えておけば、それで発明者に対しての還元になるというような内容になったんです」
山本議員
「法人帰属にしたら研究者の人達がインセンティブを失って、イノベーションが衰えて、皆外に行ってしまうと。本当かなと思ったんですね。あるいはいくつかの企業の方々、特に、製薬会社が多かったんですけれども、現在のままだったらまだまだ法的な不安定性があるから、たとえば、外資系とか、欧米系の企業研究所は皆、日本から出て行ってしまうとか、私は両方ともどうも納得できなかったので、前の、現在の特許庁長官にお願いをして、実は職場詰め制度のタスクフォースをつくっていったものですから、とにかく実態を掴むために研究者の世論調査をやってくれと。1万5000 人で、回答率が23%ですけれども、いろんな研究機関とか、企業に移りたい、その時、1番のインセンティブは何ですかと聞いたら、日本の企業も、日本にある以外の企業も両方調べたんですけれども、7割は待遇です。年収、給与。2番目は何かというと、これが報奨金ではないですね。2番目は人間関係。3番目が社風。職務発明制度の褒賞が充実しているから移るという人は5%しかいなかった。だから、職務発明制度の特許の権利が、法人帰属になるから、研究者の人達のインセンティブが削がれるというのは、私は正確ではないと思います」

営業秘密保護の新規ルール
秋元キャスター
「企業の知的財産に関してもう1つの法改正が審議されています。その対象が先ほどから話が出ています営業秘密ですけれど、よく聞く言葉ですが、あらためて、その営業秘密の定義から見ていきたいと思います。従業員が合法的に接することができて、3つの要件を満たす情報ということなのですが、要件というのは秘密として管理されている。商業的価値が認められる。公然と知られていない。これらを満たすものだということです。今国会で審議されている法改正の骨子ですけれど、不正競争防止法ということで、抑止力の向上としましては罰金額の引き上げということですね。不当に入手した情報でつくった商品から得た利益は全て没収などですね。厳罰化による犯罪の抑止を狙っています。処罰範囲の拡大としましては、盗んだ秘密を転売できた場合とか、ネット上の不正なアクセスによる入手を想定した予防措置も新たに盛り込まれているということですけれども、萩原さん、このような厳罰化の方向を産業界としてはどう受け止めていますか?」
萩原氏
「基本的には、極めて望ましい方向性で法改正されたと考えています。今回の法改正でやっと世界レベルに、保護が近づいたと。近づけることができたと言っても過言ではないと思っています」
相澤教授
「海外において日本の技術が、言ってみれば、不正に、タダで使われる。これが大問題です。これはもちろん、反町さんがおっしゃったように、営業秘密だけの問題ではなく、特許も、その他もそうです。そういうものを複合的に守っていかなければいけないのに、どうするかということの中で、先ほどから出ていますが、この中で刑事罰もそうですが、今度は立証。営業秘密で使われたと言っても、工場の中の話でわからないわけですよ。それをどうやったら立証負担が軽減されるかと。アメリカはディスカバリーという制度があって、非常に立証しやすくなっている。日本に比べてずっと立証しやすいと。それから、これまでは外国で営業秘密を侵害して、日本に輸出しますよね。それを税関で止められなかったんですね。今度、これを止められるようにしようと。止めるところまでは、次の関税法の改正ですが、入っていませんが、その前提としての不正競争防止法の改正。そういう国際的なことを視野に入れた改正ということも考えることができるのだと思います」

個人スキルとの線引きは?
反町キャスター
「日本の、たとえば、家電メーカーの話ですよ。リストラがありました。ないしは早期退職の募集に応じました。その人が元の会社で何らノウハウかスキルというものを、中国のハイアールでも、韓国のメーカーでもいいですよ、行って、新たな契約をそこで結んで、前の会社で培ったノウハウやスキルを伝えることは、これはアウトですか?」
山本議員
「それは営業秘密の定義によると思います。たとえば、経験とか、手で覚えた仕事。これはまったく使っちゃいけないということになったら転職できない。だけれど、たとえば、その人が会社固有の、まさに営業秘密に該当するようなノウハウを知っていたとしたら、それは退職後も、漏洩してはいけないと思うのですが」
反町キャスター
「これが営業秘密か、どれが営業秘密かを誰が決めるのですか?」
相澤教授
「会社がきちんと管理しなければいけないので。たとえば、よくあるケースというのが、これまでは営業秘密の漏洩のケースというのは、会社からデータを持ち出しているんですよ」
萩原氏
「そういう問題ですね。だから、頭の中に入っているものを止めるというのは、非常に難しい問題がありますけれども、そうではなくて、設計図を持ち出したり、データを持ち出したり。それはやめましょうという考えです」
反町キャスター
「それは、どちらかというと、営業秘密ではなく、単なる持ち出しとか、産業スパイの類ですよね?」
相澤教授
「いや、産業スパイは外から入ってきますから」
反町キャスター
「インサイダー。持ち出しだ。経済的な問題よりも国の安全保障の方策だと思った方がいいですか?」
山本議員
「いや、それは、日本の、いわゆる代表的な工作機械の会社が、たとえば、北朝鮮から目をつけられて、その技術を盗み取られるという可能性はあると思いますよね。本当にミサイル技術に転用できますから。だから、そういう意味で言うと、たとえば、警察庁と、それから公安調査庁にも連携してもらわなければいけない。公安調査庁は、北朝鮮とか、中国の情報をいっぱい持っているから、たとえば、北朝鮮関連の組織が何かの製品を狙っているということになれば、公安調査庁と経産省と連携をとってもらなければいけないということだと思います。安全保障にもかかわる問題だと思います」
萩原氏
「そういう意味では、今回もう1つの改正ポイントは非親告罪化になった。すなわちこれまでは親告罪、すなわち訴えないというか、告発をしないと捜査機関が動かないという形だったわけですよね。山本先生がおっしゃったように国の機関が動くということが、この問題については非常に大きなところがあります。従って、企業が告発をしなくても、そういうような動きができるというような形になりましたから、これは非常に大きなポイントだと思っています」
反町キャスター
「萩原さん、別にリベラリズムを発揮するつもりはないんですけれども、働く側の人達、研究者たちからしてみたら、これまでに比べると、圧迫感というか、監視されている具合というか、拘束力。企業側からの、研究者あるいは労働者に対する拘束力が増している印象があるんですけれども、それはそういうものだという理解でよろしいですか?」
萩原氏
「基本的に、普段の研究開発については先ほどの職務発明の問題ではありませんが、インセンティブにしても企業から自由度を増して、その企業にあったインセンティブ政策をとれるようになったというようなところだというのもあります。従って、そういう意味で言うと、研究者にとってより研究しやすい環境を、企業がいかにつくっていくかということだと思うのですが、ただ、この営業秘密の漏洩のところだけはちょっと甘かったのではないかと」
反町キャスター
「これまでが甘かったと。だから、厳しくしたと」
萩原氏
「そう思います」

安倍政権の知財戦略 その展望と今後の課題
山本議員
「全国47都道府県にある知財総合支援窓口というのがあるんですけれど、そこでいろんなサポートをすると。その中には、外国出願の助成もやると。これは、補助金をつけるということで、こういう形の知財戦略、いわゆる地域の中小企業の知財戦略の強化の予算は、昨年度は43、44億円だったのを、今年としては65億円ぐらいまで増やしていますね」
反町キャスター
「中小企業が知財にこだわるメリットについて、そこはどう見たらいいのですか?」
萩原氏
「中小企業はいろいろありますけれど、研究開発型の中小企業にとっては極めて知財問題というのは重要で、経営者の方もそう意識していらっしゃる方が結構いますね。しかしながらまったく意識されていない方もいらっしゃいます。このへんの落差が極めて大きいのが中小企業の特徴だと思いますので、従って、現在山本先生がおっしゃったようなことを、かなり上の方にいる中小企業はまあまあしていくだろうと。しかし、このボトムのあたりをいかに引き上げてくかというのが極めて重要な施策になってくるのだろうと思います」
相澤教授
「たとえば、常に特許だけで防備するだけではなくて、たとえば、意匠とか、そういうのもあるし、それから、ブランドだって、小さいブランドだって国際的になっていくものもあるわけです。たとえば、日本酒の酒造メーカー、山口の小さい酒造メーカーが世界中で現在売られているというのもありますよね。だから、そういうこともあるので、あれも知財なので、そういうこともはかっていく必要がある。それから、中小企業はお金がないという面で言うと、あるいは政策投資銀行とか、それから、産業革新機構ですね。こういうファンド的なものが中小企業に入ることをしてあげる。それから、もう1つ言うと、地方銀行がそういう投資ができるようにしてあげると。地銀とか、信金は地場産業ですから。地方の企業だけではなくて金融機関も一緒に育っていかなければ本当の地方創生ではないと思うんですよね。そういう面で言うと、そういう皆が一緒になってできる枠組みをどうやってつくってあげるかというのと、それから、大企業がそこの中でどうコラボしていくのか。つまり、大企業だとこういう小さいモノをつくっても何となくニッチでうまくいかないものを、たとえば、そういうものを提携してあげて、うまく外国にブランドを売ってあげて、自分はディストリビューションするとか、お互いに利益になることを考える。ニッチなものって好みであるんですよ。少数だから、それが欲しいという人がいるわけで、それをどうやって国際的にしていくか。あとは現在、地域ブランドというのがあって、昨年ニューヨークに行った時ですけれど、たまたま有名店で、日本の和牛の同じ地域のが、メインで出たんですよ。それぐらい日本の小さな地域のブランドもアメリカのニューヨークの名店でメインディッシュになる。そういう国際的な展開も考えて知財は使っていく。だから、中小企業にとっても決して人のものではないということだと思います」

激化するグローバル攻防!
反町キャスター
「中小企業を考えた時に意匠とか、商標とか、経営戦略上重要ではないかと」
相澤教授
「特許権の侵害を主張するのはすごく大変です。権利をとるのも大変だけれど、権利を行使するのはもっと大変。意匠権だったら権利は狭いかもしれないけれど、そっくりさんが出てきたらアウト。商標権も自分と同じ商標のモノが売られていたなら、アウト。つまり、権利が主張しやすいものを使うというのも戦略です。自分の身の丈にあった戦略を工夫していく。もちろん、特許で技術を独占できればいいですけれども、何たって特許の勝訴率って20%しかないですよ。日本は2割しか勝てないですよ。大企業はもちろん、外国でやるからアメリカの4割とか、ドイツのもっと高いところを使えるわけです。中小企業が特許を持っていきなりアメリカで、何十億かけて訴訟しなさいといっても無理ではないですか。でも、日本だったら、意匠とか、商標とかを使って自分のビジネスを守れるかもしれない。そういうことが大事だと思います」
反町キャスター
「意匠とか、商標は具体的にはどういうものなのですか?」
相澤教授
「たとえば、メガネの形ですね。そういう、たとえば、日本でも競争力のある。あと商標はロゴと言いますけれども、名前ですよね。ですから、同じ商品でも、名前が違えば値段が違うという世界で、必ずしも消費者の方は、大企業がつくったものだからいいとばかり限らず、中小企業がつくっても、私はこれが好きという人をつくり出せれば。たとえば、欧米のアパレルだって、小さいところがいっぱいあるわけですよ。パリに1店舗しかないけれども、国際競争力あるお店があるんですよ。そういうものができていくということがいいのではないかと思います」
山本議員
「モノづくりを活かして、霞で食べられるようにすればいいんだと思います。たとえば、先生がおっしゃった意匠権とかありますよね。これも何かいわゆる日本のモノづくりの良さを活かして、カスタマイズしていく。あまりこだわらず、たとえば、伝統的な焼き物があったら、ヨーロッパでどうやったら受けるか。そうやってテーラーメイドをしていく、そういうことをちょっと加えると急に霞になって、知らないブランドだけれどすごく良いではないかということで、霞になるかもしれません。だから、別に霞を食べるということが、モノづくりを否定するということではないと私は思います」

山本一太 自由民主党知的財産戦略調査会副会長の提言:『オープン、クローズ戦略の強化』
山本議員
「オープン、クローズ戦略をしっかりと強めていくと。これをしっかりやれる体制がようやく整ってきましたから、これが最大のポイントだと私は思います」

萩原恒昭 一般社団法人日本知的財産協会参与の提言:『健全な“競争”と“強調”』
荻原氏
「健全なというのがポイントですけれど、グローバル競争にしっかり勝ち抜いていかないといけません。一方で、先ほど来、話が出ていますように他の国と強調しながら、ルールをあわせていくことが非常に大事です。この2つがうまくバランスできる様なことが、これから重要かなと思っています」

相澤英孝 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の提言:『未来志向の知財戦略』
相澤教授
「日本で法制度の議論をしていると、副作用な議論ばっかりするんですね。要するに、病気を治す議論よりは、こういう副作用がある。ですから、雑草が生えるのではないかと、除草剤いっぱいまいちゃうと芝生が生えないってそういう現象ですよね。それをあらためてこれから日本の知財をどうやって価値を高めていくか。そういう未来志向の戦略を考えていただきたいと思います」