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2015年6月9日(火)
中国『バブル』転機は 爆買い景気の賞味期限

ゲスト

津上俊哉
現代中国研究家 津上工作室代表
柯隆
富士通総研主席研究員
豊島逸夫
豊島&アソシエイツ代表 マーケットアナリスト

中国経済のリスクを検証 上海株急騰の背景
秋元キャスター
「中国のGDP(国内総生産)の成長率ですけれども、今年1 月から3 月期のGDPは実質ベースで前年同期比7%増にとどまり、リーマンショックの影響を受けた2009年の1月から3月期以来、6年ぶりの低さになりました。一方、上海株の急騰は目を見張るものがあります。昨年6月9日を100として、この1年の株価の動きを見てみますとすごい勢いで上海株が上昇しているのがわかります」
反町キャスター
「東京、上海、香港市場の時価総額、比べますと、4月末で上海が東京をついに抜きまして、時価総額665兆円ということになりました。株価と同様に、上海市場の規模というのも急スピードで上昇しているという、こういう状況です。上海株の盛り上がり具合をどう見ていますか?」
豊島氏
「怖いですね。ネズミの大群の如く、売りだ、買いだとドドドッと動くんですよ。そのほとんどが初心者で、実際に私が話したセミナーですけれど、初心者にもかかわらずに信用取引ですよ。そうしますと、業界も、それに対応をして、資金準備と言いますか、そのために、最近、中国の証券会社の増資が相次いでいるんですよ。増資をし、そのお金をそのままマージンアカウントと言うんですけれど、信用口座、信用取引の口座に貸してあげるという、ですから、セルサイドの、出す方もそういう形なわけです。このリスクというのは、もし株価が下がった場合には担保価値がすぐに下がってしまいますから、ですから、まず追加的な担保を出すか、あるいは取引そのものを縮小するか。いずれにしても株が下がると連鎖的に株価全体が下がっていくと。こういう内部的な構図になってきているんですね」
反町キャスター
「ただ、株式市場自体はずっと右肩上がりで上がっていっていますよね?」
豊島氏
「総じて。しかし、今年に入ってからの上げというのはどう見てもバブルっぽいですね。ほぼ相場には絶対という言葉はありません。しかし、1つだけ絶対と言えることがあって、それは上がり続ける相場はない。現在の景況感が悪化をすれば、緩和を強めるであろうと。つまり、もっと金利を下げるだろう、あるいは向こうが量的緩和はやりませんけれども、中央銀行である中国人民銀行が民間銀行に対して、お金を供給する。そのお金のバルブみたいなのがあるんですけれども、それを少し緩めるだろうと。こういう両方の面から」
反町キャスター
「経済指標が良くなった時には?」
豊島氏
「逆ですよ」
反町キャスター
「経済指標が良くなった時には株価が落ちる?」
豊島氏
「落ちる場合がある。それは緩和縮小懸念」
柯氏
「若干捕捉させていただきます。一言で言えば、貯蓄率がとても高い中国ですから、一般家庭は貯蓄率30%に達しているわけですが、これまでは不動産に投資をしていました。現在コントロールされている不動産市場、これ以上投資すると危ないということがあって、行き場が失われている中で株ということになりましたから。それから、中国政府にとっても当然、株式市場を上げていけば、少しぐらいは、マインドが良くなるだろうというのはありまして、ポリシーメーカーにとっても、現在の局面は決して悪いわけではないと。ただ、これをいつまでキープできるか。株価が上がっているレンジにおいて、きちんと改革を進めていけばとても良い結果になります。ただ、あまりにも株式、株価の高騰がはやすぎていて、先ほど、臨界点の話がありましたが、だから、ピ-クアウトして、ストンと落ちたXデーが来月かもしれません。なぜかというと、7月中旬ぐらいになると、第2四半期の経済成長率が発表されますから、第2四半期の経済成長率が決してよくないと私は思うんですね。そうなった時に、改革が間にあわなくて、全体のマーケットに失望感が満ちてくるとみると、非常に危ないわけです」
反町キャスター
「失望感が満ちてくるマーケットに対しても、中国政府は株価下支えの方策、作業、それはできるのですか?」
柯氏
「やるのは、たぶん彼らはいろいろ工作するのでしょうけれど、人民日報を使って、社説を書いて、まだ株が上がっていいはずだという論調でリードすることはあるけれども、これだけ大きな市場ですから、1日の取引が2兆人民元、3兆人民元を超えていますから、政府がいくら専制政治と言っても、そう簡単にできるはずはないと思いますね」
反町キャスター
「相場への介入。金融緩和みたいな形で何かをやるといったのはないのですか?」
柯氏
「十分に現在、緩和していますし、中国のマネーサプライ(M2)も、GDP比で、どれぐらいかというと190%だと言うんです。190%のレバレッジがかっている経済ですよ。これ以上、もっと緩和するというのは、この先、もう崩壊していいのかということですよ。私は、むしろコントロールすべきであって、李克強首相が就任した当初に言っていた構造転換をもっとやらなければいけないと私は思います」
反町キャスター
「そうすると、たとえば、先ほどの上海の株価が上がっているではないですか。この状況はまずいと北京は理解しているのですか?」
柯氏
「もちろん、理解はして、ただ、コントロール不可能ですよ。本来ならば、1番理想なのは1日1%ずつゆっくりと上げていて、2年、3年、この上昇傾向をキープしておいて、その間、構造転換、国有企業改革、金融制度改革、財政制度改革をやればいいんですけど、あまりにも急激に上げすぎると、ピークアウトして、Xデイにもなるわけですから、だから、私は、李克強首相がもっとはやくマーケットと対話をしていかなければいけないと。彼の声はまったく我々に聞こえてこないわけですから。中国のポリシーメーカーはマーケットとの対話、そこはまだ慣れていない。選挙のない国ですから、たとえば、アメリカの(連邦準備制度理事会元議長の)グリーンスパン氏もそうだし、現在のイエレン氏もそうですが、マーケットとの対話を重視し、絶妙なタイミングで、マイルドな口調でアナウンスメント効果を狙って言ってくるわけですけれど、中国の政治家達は、そこは申し訳ないが、下手だと思います」

上海株急騰の背景
反町キャスター
「中国国内における理財商品というのがあります。これはどういうことなのですか?」
豊島氏
「これは、いわゆるシャドーバンクを組成して、それで実際に中国の大手の商業銀行が…」
反町キャスター
「シャドーバンクというのは、地方自治体が企業に貸し出すとか、そういう状況ですか?」
豊島氏
「ライセンスを持っていない金融機関、あるいは証券会社のようなもので、たとえば、具体例を言うと、石炭の炭鉱会社に投資をする。そこで得た収益を分配するという、それが往々にして非常にハイリターン。たとえば、7%から10%。そういうハイリターンなわけです。ただ、組成しているのはバンキングライセンスを持っていない。あるいは証券ライセンスは持っていない、そういう機関が組成をしていると。さらに、リスクとしては、炭鉱そのものが破綻する、あるいは生産が減少する、あるいは石炭の値段が急落する、ということがあると、その商品自体が成り立たなくなる。はっきり言うとデフォルトになる可能性がある。ですから、ハイリスク、ハイリターン。2011年、2012年の販売がピークですけれども、日本流で言うコンプライアンスというのは、ほとんど当時はありません。それといわゆるディスクローズジャー、リスクの開示。こういったものもなされていないと。言ってみれば、富裕層がだいたいくるんですけど、大手の銀行で売っているのだから間違いはないだろうというような感じで買っていくと。ですから、1番の問題は、リスク、あるいはデフォルト、債務不履行という言葉をほとんど聞いたこともないような人達が、実際に買っている。ただ、理財商品というのは、そういうことで何か悪役にされがちなのですが、ただ、デフォルトでいうと実際にするようなものは全体で10兆元ちょっとぐらいと言われていますけど、その中でも5%とか6%ぐらいなので、ですから、非常に限られたものが少し日本流に言えば、やばいという感じはあるわけです」
反町キャスター
「ただ、その一部にしても金融商品がいろいろ組みあわされている中で、もしその5%が転んだら全体に影響が及ぶ。それはまさにアメリカで起きたのが、そうではないですか。そういうリスクに関しては皆わからない?」
豊島氏
「はい。ですから、まずそういう金融のリテラシーというものが…まだまだ投資家教育というのが、私自身がセミナーで本当に痛感しましたけれど、ほとんどゼロに近い」
反町キャスター
「この状況をどう見たら…、かなり危ない、ギリギリのところでやっているようにも聞こえますし、そこでバランスがとれているかなとも思うし、どういうふうに見たらいいのですか?この状況というのは」
津上氏
「経済が減速してきて、はっきり言って、投資バブルをやっちゃいましたということがますますはっきりとした中で、普通の市場経済だったら、そういうことがはっきりした時点で、投資の需要も資金の需要もガタンと落ちて、長いトンネルに入るわけですね。それはトンネルに入ると不景気でつらいのだけれども、一方では、それで金利がグッと下がって、だいぶ傷んでしまったバランスシートの修復が進み始めるわけですよ。ところが、現在、中国はまだ底に入ってこないですよね。金利が高いままなので。それは1つには、いやいや、7%を割り込むわけにはいかないからと言うので、まだ一生懸命に投資をしようという官の力が働いて、市場ではない、官の力で何とか資金需要とか…まだ続いているものだから、金利がなかなか下がらないというような。それでお金が稼げていますかというと、やった投資はお金を稼いでいない。と言うとますますGDPとの比率がどんどん跳ね上がっていくと。それでは持たないよね。どこで止めますかということですけれども、止めると、今度はドーンと反動が、また成長が下がってしまうという」
反町キャスター
「要するに、止められないという意味で言っています?」
豊島氏
「だから、そのところで、昨年、ニューノーマルということを言いました。あれはある意味では痛みに少し堪えようと。そんなにいつまでも高成長、高成長というわけにはいかないのだからということを、婉曲に表現をしたという役割があったと思うんです。だけれども、実際に痛みが加わって、増してくると、入れているんですね、見ていると。投資をすごくしっかりやらなければいけないとか、あるいは政府のアカウントはダメなので、これからは民間資金を使ってPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)とか、日本でいうとPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)とか、ああいうふうな格好で投資をやろうとか、それで民間が金を出すと思いますかと。金が出るとしたら、政府がアカウントを別に、それで済むかもしれないけれども、日本の太陽光発電ではないけれども、地域経済とか、地域住民とか、誰かがそれを払うことになるんですよと。そういう点ではいったんは暫くの間、7%から相当外れ、トンネルを過ごさざるを得ませんと。そうでないと、市場経済が成り立たなくなっちゃうからという現実に向き合った方がいいんですけれども、まだそれができていない」
秋元キャスター
「先ほどの話、柯さん、いかがですか?」
柯氏
「昨年7月以降、理財商品と預金との間にファイアウオールと言って統合できないように指導が入っていますので、従って、いざデフォルトが起きた場合は、まず販売している金融機関が責任を持たなければいけないと。ただ、その金融機関の体力に限界がありますから、これ以上はもうダメだ、取りつけ騒ぎが起きるので、そうなった時にどうしても穴が開くわけです。最終的に、たぶん社会問題に発展しないように、政府が税金を投入する。ですから、実際に平均の利回り5%ですから、10%以上の利回りで販売している商品は5%でいかないわけです。ですから、その部分が危ない。5%に近いような、6%とか、4%で売っている商品はそんなに心配はいらなくて、最終的に2つだけ申し上げるが、1つ目は、不動産市場の動向。これは相当のお金が不動産に入っているわけですけれど、不動産価格が下がって、これ以上低迷すると危ないシナリオになる。2つ目は、地方債務が随分、お金を借りて、理財商品を買っているわけですけれども、それが不動産にいっているわけですが、中国の地方債務、要するに、公的債務のGDP比、先ほど、津上さんがおっしゃったのですが、どれぐらいの規模かと言うと、これはマッキンゼーが集計したのがありまして、282%。これが満期になってくるわけですから、これは相当危ないということです」

GDP成長率7%の背景
秋元キャスター
「こうした中、先ほども触れましたけれども、中国のGDP成長率が減速していますけれども、津上さん、この状況というのをどう見ていますか?」
津上氏
「GDPのグラフでは、ほとんどゼロコンマ何パーセントという落ち込みしかしていないのですが、それ以外、たとえば、統計で、間接税収だとか、電力消費だとか、鉄道貨物の輸送量だとか、国有企業の売上高とか、こういうものをいくつか挙げてみたのですが、見ていただきたいのは、2013年の後半ぐらいと、昨年の、1年後の数字というのを比べてみると、ほかの統計でざっくり言うと、10%ぐらい対前年比で伸びていたものが、1年後には5%前後まで伸び率が落ちていると。ここまで他の統計が落ちている時に、GDPがゼロコンマ何パーセントしか落ちていないんだというのは変ではないのかと。全体としては、私は7%というのは、相当メイキングが入っていると言わざるを得ないと」
反町キャスター
「メイキングと英語を使いますけれど、要するに、嘘だということですね?」
津上氏
「そういうことですね。ちなみに、実質7.0%ですが、名目で何パーセント伸びているかというと、名目の数字は5.8%ですよ、公式の統計でも。意外と皆、知らないので。つまり、デフレターという、物価調整のところでマイナス1.2%ぐらい、物価がマイナスになっているという数字になっているものだから、名目の数字だけでいうと6%を切っている。それにしても、まだ他の数字の落ち込みを十分に説明できていないので、ぶっちゃけ現在、どのぐらいなのだろうと言ったら、ヤマカンですけれども、5%はいっていないのではないかなと」
柯氏
「まず金融緩和はやっているんです。今年に入ってから、最初の5か月。これまであまり利下げ調整はしてこなかったので、今年だけで、3回やったんですよ。金利を下げたんです。それはQE、量的緩和。これも明確にアナウンスはしませんが、中央銀行、国務院が商業銀行に対して、窓口主導と言って、口先介入と言って、もっと貸しなさいと言って、商業銀行、特に国有銀行から相当お金が出てきた。ただ、出てきたのはいいんですけれど、どこに出たかというと、民営企業にいっていない。国営企業にいっているんですよ。ですから、マーケットでは流動性がジャブジャブ。先ほど申し上げたM2。マネーサプライがGDP比で192%と言いながら金がないわけではない。ただ、本当にお金がほしい、必要な民営企業にいっていないだけでして、国有企業は効率が悪いので、いくら彼らが金を持っていても意味がない、マクロ経済的に言うと。それから、中央政府が期待している国債の部分というのはそんなに多くはない、幸いにも。ただ、地方債務が非常に大きいので、先ほど、マッキンゼーの推計を申し上げた282%は、日本をはるかに上まわっているので。その部分に関して言えば、これ以上債務を抱え込んでいいかというと、そうではないですね。もっと改革しなければいけない。そのために当然、どこかのタイミングで国債を発行しなければいけない、中央政府は。国債を発行していても、安心して買ってもらうために何をする必要があるかと言うと、政治改革ですよ。だって、政府が人民に信用されるようにもっと改革しなければいけない。でも、政治改革は遅々として進んでいないのが大きなハードルになってくると。現在すぐにではないですよ、と思いますね」
津上氏
「振り返って見ると、中国の政治、経済の歴史は大きな振り子が右に行ったり、左に行ったりという、これを繰り返してきたという気がしています。左が左派、保守派と言われて。中国では右派というのはむしろ改革志向ですね。こういう人達を右派と言うのですが、毛沢東の時代はもちろん、左。にっちもさっちもいかなくなったものだから、鄧小平が改革開放で右に振れました。だけれども、それをやっているうちに、天安門事件が起きて、左がすごく文句を言ったんです。あんな邪道なことをやっているから、こういうことになったのだと攻撃したわけです。いったん左に振れかけたんだけれども、そこで、南巡講話というので鄧小平が反撃して戻したと。その後、江沢民さんの社会主義市場経済というので、グッと右にいきました。だけれども、胡錦濤さんの時代になったら経済成長で国庫にもお金が戻ってきたと。国有企業にもお金が戻ってきたという、ここがドーンと国有経済の復活ということで、ある種、左にいってしまったんです。そのあとにリーマンショックが起きて、4兆元の投資。これがだいたい国有企業の投資の中に納まりましたから、ますます栄えていくという、左にいって、これがまたいき過ぎたんですね。現在どうにもならなくなったものだから、習近平さんはもう1度ハンドルを右に切ってということで、こちらにいこうとしているんです」
柯氏
「若干、津上さんの話と違うところがありまして、私は、中国という国を見る時の座標軸は3つあると思うのですが、1つが縦の政治の軸と、左側が経済の軸と、右側は社会という軸で、どういうことかと言うと、政治統制が評価すれば上にいくのだけれど、経済の自由化が進めば左に行く。社会というのは、ナショナリズム、民族主義を高揚させるのであれば、右に行くのですが、鄧小平の時代を振り返ると、彼らは割合に、自信を持っていましたから、だから、経済の自由化をどんどん進めようと。だから、それこそ現在だとあまり聞かない郷鎮企業(農村企業)とかありまして、もっと改革開放も進めるとか、日本に学ぶというのがありまして、そんなに統制をしなかったと。それに対して2番目の江沢民さんは日本であまり人気がない方ですけれども、彼は、経済の自由化は鄧小平の時代に比べれば、少し逆戻りした部分がありまして、その代わり政治統制を進めていまして民族主義も若干高揚させたわけで、それでも大規模な反日デモがなかった。問題は、3番目の胡錦濤の時代。この人の時代は10年間で何回も反日デモが起きたし、ドイツとか、アメリカに対しても、いろんなデモが起きたわけだし、経済の自由化に関しては、完全に逆戻りして国進民滞。先ほど、国有企業の復活という言葉があったんですけれども、中国語でいうと、国進民滞が進んでしまって、国有企業がどんどん進んで、民営企業が後退すると。ただ、彼のカリスマ性が弱い分、幸いなことに政治統制がちゃんと強化されなかったというのがあった。最近どうなのかというと、むしろどんどん政治統制が強化され、言論統制とか、マスコミに対する統制。ただ、ナショナリズムを高揚させると若干、中国自身に戻ってくる、政府に矛先を向ける場合があるので、そこは慎重にやろう。経済の自由化について言うと、少し逆戻りしているのではないかなと、私は自分で見ています」
反町キャスター
「経済の自由化だけに焦点をあてて聞きますと、現在の話だと、鄧小平時代には経済の自由化はマックスまで伸びていました。その次の江沢民時代には、経済の自由化がちょっと落ちましたよね。胡錦濤時代には、さらに経済の自由化が狭められて、現在はもっと経済の自由度を狭められていますという、この時代の変化と共に、柯さんの話だと、経済の自由化、経済の自由度がどんどん狭くなっているという、こういう理解でよろしいですか?」
柯氏
「そうです」
反町キャスター
「先ほどの津上さんの説明をもう1度出しますけれど、津上さんの説明だと、習近平氏は市場経済志向だという。津上さんの話と柯さんの話、市場経済に対する自由度の見方が違うように感じるのですが」
柯氏
「今日のこの番組で、初めて対立軸ができていいのですが、だから、鄧小平の時代というのは、要するに、1980年代に入って言うと、あの時代は、私は中国にいましたから、あの時の中国人は本当に解放されたばかりで、希望に満ちていて、未来志向とは言わなくても、とてもいろんな期待、希望を込めて、これからがんばるぞというので、新しい会社も興されて、でも、時間が経つにつれ経済も成長していって、統制をしなければいけないということで、どんどん自由度が狭まってきていると。もう1つは、政府がやらなくても、国有企業が巨大化しているために既得権益になるわけですね。独占をしているわけですし、だから、政府とあまり関係ない民営企業にとってますます経営環境が苦しくなるわけですよ。それも1つの背景です」

習主席を取り巻く環境
反町キャスター
「習近平さんの権力基盤をどのように見ていますか?」
柯氏
「まだ十分に強化されていないと見ていいと思います。鄧小平という人をまず見ていくと、彼は国家主席になれなかった最高実力者と言われていたと。その時に、彼は自分らしい政治ができた。なぜかと言うと、彼に影響を与える、彼を牛耳る、後ろで操作する人、院政を敷いている人はいなかったんです。毛沢東も死んでくれたし、死んでくれたという言い方は変ですけれども、周恩来も。江沢民の時代は若干前半が大変だった。鄧小平という人は生きていましたから、1997年に鄧小平が亡くなって、以降ようやく江沢民は自分らしい政治ができた。胡錦濤氏は10年間国家主席をやっていてずっと彼が不満だったわけですね。江沢民がいつも邪魔してくれると。現在、習近平国家主席にとって若干不満を感じているのは、2人が後ろにいるわけですから、ですから、彼が反腐敗、汚職撲滅で、どんどん政敵を倒していく。それでもって自分のカリスマ性を強化しようとする。それがまだ完全には終わっていなくて…」
反町キャスター
「その作業は終わったと言う人もちらほらと。十分に習近平政権の基盤が強化されたと言う人も当番組のゲストにはいるのですが、まだダメ?」
柯氏
「私はまだ道半ばだと思いますし、捕らえられた人達でもまだちゃんと裁判やってない、残っているわけですから、なぜ裁判ができなかったかというと周永康さんをかばう勢力がいるのではないかという、想像はできるんですよね。それ以外もまだいろいろあるわけですから。ですから、彼は少し時間を稼ぎながらでも、自分のカリスマ性を強化する。彼はいろんな話をしているのですが、私が見ていると、毛沢東時代のやり方に回帰をしようではないかという部分は若干あるわけですから、すなわち権威主義、自分のカリスマ性を頼りにして、コントロールして、自分に対する崇拝を強化する。その部分が見え隠れしています」
反町キャスター
「ソーシャルメディアが発達した中国で毛沢東と同じカリスマ性を持つことができるのですか?」
津上氏
「毛沢東と同じような同質のカリスマ性を求めても、そんなものできっこないのは明白ですよね。ただし、たとえば、プーチン氏と同じような、拍手喝采を浴びるような指導者になるというのは達成可能かも知れない」
反町キャスター
「何年待ったらカリスマ性が完成するのか、そのあとはどう変わるのか?」
柯氏
「まず先ほどの話を一言フォローすると、プーチン氏がスターリンになれないのと一緒で、習近平氏は毛沢東にはなれない。だけれど、やり方と目指す方向性は同じです。崇拝してもらわないと困ると。じゃあ、いつ完成するかというと完成はしないので、こういうのはね。だから、常に戦っていかなければいけない。自分との戦いと、自分の政敵との戦いなわけですから、彼にとって少なくとも制度上あと8年ぐらい残っていますから、最初の第1期目は残り3年ぐらい。この間、ある程度の形を作っていかないといけない。そうでないと2期目は落ち着かないわけですから。私は向こう3年というのが1つの山場だと。要するに、形作っていくわけですけれども、あと2年ぐらい経つと、次の世代の指導者を彼が選ぶわけですから、カリスマ性が十分に強くなければ自分のブレーンを抜擢するのもなかなかいろんな障害が必ず出てくるわけですので、もちろん、彼が思惑通りにできるのかどうか。江沢民氏と胡錦濤氏の長寿がいつまでなのかというのが1つの変数になってくるわけですね」

世界市場から見た現状分析
秋元キャスター
「現在の中国を世界の市場はどのように見ているのでしょうか?」
豊島氏
「1番、世界の市場で注目しているのが人民元の国際化の問題だと思います。これにはAIIB(アジアインフラ投資銀行)も絡むのですが、果たしてそれがドルに対抗できる切り口とかになり得るかというところで、それの判定役がIMF(国際通貨基金)になると思うんですよ。IMFの総会が今度9月に行われます。そこでたぶん中国側の狙いというのは、何らかの…。さすがにその時点で、たとえば、SDR(特別引出権)という統制通過があって、IMFの188の参加国で融資等に使われていて、その合成通貨の現在の構成を見ると、4つの通貨があって、米ドル、ユーロ、円、ポンド。それの5番目の通貨として人民元を是非入れてほしいと。こういう強い中国人民銀行の願いがあるわけですけれども、それに対してIMFは、そうであれば、それなりの生産性を持つ経済の構造にしてくださいと。つまり、腐敗の問題というのが出てくるわけですけれども、だいたい新興国に共通して、腐敗という問題が生産性を落としていくと。そういう意味では、いわゆる基軸通貨、あるいはリザーブカレンシーと言いますけれども、準備通貨として各国が安心して保有されるようになるためには中国経済の衣替えと言いますか、自由化。より具体的にそのプロセスを言いますと、まず人民元そのものが実際の、既に貿易のいわゆる決済に扱われています。ただ、投資媒体としてはまだまだ。現在その第1歩として、たとえば、香港と上海の市場の相互通行というような、インフラの方から少し始めていまして、それから、その次に考えられるのが、実際に中国人の外物と我々が呼んでいるような外貨立て投資を可能にするような何か仕組みをつくっていくということ。また、逆に外から見た、欧米の機関投資家が実際に中国にもっとお金を入れられるような、そういう制度にしていくと。ですから、少なくともそのへんまでは具体的なロードマップ、いわゆる工程表ができれば、ある程度IMFとしてはゴーアヘッドまでは行かないけれども、検討しましょうということになるのではないかと思うんですよ」

爆買いの資金源を探る
秋元キャスター
「経済が失速する中、中国人が日本で爆買いをしていますが、その資金はどこから出ているのでしょうか」
柯氏
「1人あたりの中国のGDPは7000ドルぐらいです。7000ドルぐらいの中国人ですが、年収に換算すれば。1回、日本に来て、だいたい統計で見ると20万円ぐらい使われていると言われていまして、1回の入国でね。これがいったいどういうことかというと、なかなか不可解な部分がありまして、ただ、1つだけ言えるのが中国人は反日的ではない。これだけ日本に来てたくさんのお金を使って、メイドインジャパンの日本の商品を買って帰るというのは、日本を嫌いではないということは言えると。2つ目、大きなポイントとしては、この金がどこからきているか。おそらく正規の給与、年収で得られるインカムではないと、私はまず断言できると思います。そうでなければ1回、日本に来て、たぶん2、3か月食い物がなくなるわけですし、生活できないという計算になりますので、中国のいわゆる統計で捉えられている中国人の年収というのはそうではないよというのが、まず1つ言えると思うのですが、もう1つ重要なポイントは、日本に来ているのは一般の中国人ではなくて、それなりの人達。すなわち上中下に階層化していくとすれば、限りなく上に近い人達です。13億6000万人の総人口がいる中国で、1年間に日本に来ているのは百数十万人しかいない。ですから、1%どころか0.1%にもいかない中国人。相当のエリート、高所得層が日本に来ていると。それでも彼らがもらっている名目所得ではここまで贅沢な消費ができないはずですから、幸いにも北京市政府がつくっている、抱えているシンクタンクがありまして、その推計によると、中国の名目GDPは世界で2番目の経済ですが、12%がグレーインカム、灰色収入と言って、白の収入は合法の所得ですけれども、ブラックというのはマネーロンダリングとか、ドラッグをやっている違法なもので、日本はその灰色の部分がまったくない、この国は。だから、中国は12%がグレーのものだと。合法でも、違法でもない。これはいったいどういうものなのかというのは私にも全然わかりませんが、何人かの先生が説明しているのは、すなわち本来は納税しなければいけないんだけれども、納税しないからグレーだと。納税さえすれば合法で、日本だと納税しなければブラックになるんだけれども、納税していないからグレーに分類されていて、その合法、違法は別として、GDPの12%ですから、世界2番目の経済で、これ相当の大きな規模の…」
反町キャスター
「名目は何で手に入れているのですか?」
柯氏
「名目は普通、我々は給与所得意外に何があるかというと、移転所得と資産所得がありまして、たとえば、株式投資して得られたキャピタルゲインがたくさんありまして、日本は必ずとられるわけですが、中国は払っていないのがほとんどでして…」
反町キャスター
「株の配当、売却益というのは補足されていないの?」
柯氏
「十分には補足されていない現状。一部は補足されて…100%は補足されてないと。もう1つは、移転所得と言って、贈与だとか、贈与の中には当然賄賂もあるからね。それから賄賂ではなくてもビジネスをやって、私が仲介してあげると。リベートとして払ってもらうと。この部分は当然申告していませんが、私はちゃんとビジネスを仲介してあげたから貰っていいだろうという話で、だから、グレーに分類されています。これだけ大きな経済ですから、政府が買い付けをする、発注するその間に立っている役人達が仲介するものですから、業者と政府の間で当然、業者から、ペイバックを貰うわけですから、それは全部、そういう灰色収入に分類されている」

現代中国研究家 津上俊哉氏の提言:『“中国はリスキー”だけなら誰でも言える』
津上氏
「確かに、今日いろいろ議論してきたみたいにわからないこと、不透明なところはいっぱいあるんですけれども、危ない、危ないだけ言っていたのでは、メシは食えないと思います。あとどのくらいは大丈夫とか、言えて初めてプロかなというところはありますね。そういう点では危ないと、それだけでなで斬りにしない姿勢というのは必要だなと思います。それから、もう1つ言えば、危ない、危ないはいいけれど、日本人に言われたくないんだよね、と向こうは思っているかもしれない。そこを公平に全体を俯瞰するという、そういう姿勢も必要だなと。日本だって相当リスクがありますから」

柯隆 富士通総研主席研究員の提言:『有備無患』
柯氏
「リスクというのは必ず浮上してくるものではなくて、潜在的なリスクもたくさんあるのですが、私が書いたのは、今日のテーマにぴったりですけれども、中国語ですが、備えあれば憂いなしという話ですが、だから、必ずしもそのリスクは危機にならないかもしれない。でも、備えは必要だろうと。今日の議論はたぶんそういうことだろうと思うのですが、今日すなわちチャイナリスクの議論がありましたが、結局のところ経済に限って言えば、ハードランディングするかどうか、しないかもしれない。けれどハードランディングした場合にどう備えるかということをたぶん日本という国、あるいは中国と取引している企業、中国に進出している企業。皆が考えなければいけないと私は思います」

マーケットアナリスト 豊島逸夫氏の提言:『仮面夫婦』
豊島氏
「愛情は、どうも国民感情からしてこれからも生まれそうにないと。しかし、離れられない。経済的には一緒にこれからもやっていかなくてはならないという意味で仮面夫婦にしました」