プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2015年6月5日(金)
日中経済攻防の導火線 3年ぶり財務対話の行方

ゲスト

小野寺五典
自由民主党政務調査会長代理 衆議院議員
凌星光
日中科学技術文化センター理事長
井川紀道
東洋学園大学客員教授

日中経済攻防の行方 3年ぶり財務対話
松村キャスター
「日中財務対話は2006年の3月以降、2年おきに開催されてきましたが、前回2012年以来、日本が尖閣諸島の国有化を発表したことなどもあり、両国の関係が冷え込み、開催が見送られていました。今回は3年2か月ぶりとなります。小野寺さん、今回の開催の意義はどのように見ていますか?」
小野寺議員
「3年2か月ぶりということで、開催されたということは大変重要なことだと思います。特に、世界のGNPの第2位、第3位の国ですし、日本にとっては大変貿易相手国としても、1番重要な国となりますので、そういう意味では、ここでしっかりお互いに話しあうということ。これが重要なことだと思っています。私どもが大切だと思っているのは今回、特にAIIB(アジアインフラ投資銀行)の問題。これは中国側の考え方をしっかり聞くということもありますし、日本側としてもこの問題について今後どう対応をするか。これは現在、重要なタイミングになっていますので、そこは注視をしながら、この対話についてはしっかり私どももフォローをしていきたいと思います」
凌氏
「尖閣の国有化以降、中国が対抗措置をとることによって、ずっとぎくしゃくしてきました。当時は政府間ばかりではなくて、民間の交流、経済交流も影響を受けました。その後、民間交流、経済交流は徐々に、1年前ぐらいからだいたい正常化に向かっています。ただ、政府間では下のレベルは行われていますけれども、閣僚レベルですね。本格的な話しあいというのは。大変重要な意味があるのではないかと思います」
反町キャスター
「ここのところ、本格会談とは言わないですけれども、何かのついでとは言いませんけれども、どこかに行った時に、そこにいれば日中首脳会談も、昨年、今年ですか、行われでいますよね。このへんの雰囲気は明らかに変わってきている。その前提、その1つの表立った証拠が、今回の財務対話の復活という、こんな理解でよろしいですか?」
凌氏
「そう思いますね。昨年、まず谷内さんが11月に訪問されて、4つの合意。それが結局、APEC(アジア太平洋経済協力)での日中首脳会談につながりました。バンドン会議で2回目の首脳会談をやったと。もう1つ、中国側としては11月以降、安倍さんが、中国側を刺激するような言葉を控えてきた。それをかなり重視しています。そういうことがつながっていて、今回、この財務相会議になる。この前、二階さんが、国家首脳の相互訪問と言われましたけれども、私もそういう方向に行っていただきたいんですけれども、それは歴史認識問題と尖閣の問題、そういったものがある程度、相互信頼が深まらないとなかなか無理ではないか。しかし、今回、閣僚レベルで相互の副総理の話しあいになったということは、閣僚よりも上に行ったわけですから、これは大変良い方向に行っているなと思っています」

AIIB設立の思惑
松村キャスター
「日中財務対話の大きなテーマがアジアのインフラ投資です。とりわけ注目されているのが、中国主導のAIIB、アジアインフラ投資銀行です。全世界から、既に57か国の参加が確定しています。このAIIBの主な動きをまとめました。2013年に設立が提唱されていたのですが、急速に拡大していったのは今年、イギリスやヨーロッパ各国が参加を表明してからでした。今月25日に協定締結予定。年末に運営の開始予定ということですが、凌さん、このAIIB、準備は順調に進んでいるのでしょうか?」
凌氏
「ええ、大変順調に進んでいるように見ています。というのは、5月の20日、21日、22日の3日間、準備会合を開いた時には、それでもって一応の定款と言いますか、それをまとめる。これがだいたい3日間、たっぷり午後までかかると思ったのが、だいたい3日目の午前中で終わったんですよね」
反町キャスター
「それは決めたから終わったのですか?それとも先送りをしたので今日はこれでおしまいと終わったのですか?」
凌氏
「いや、そうではなく、中国の発表では、だいたいそれで一致したと言っています」
反町キャスター
「そのへんは、井川さんはどのように見ていますか?今回の準備会合、北京で行われた」
井川氏
「AIIBの総裁になるだろうと見られている金立群さんというのは非常に卓越したグローバルリーダーだということで、たとえば、協定をどうつくるかという時に、世銀に長いこといた法律専門家を呼んであたらせたと。着々と準備を進めているのではないかと理解していますし、たまたま私の知っている人間が準備チームに入っていますので、少し取材してみたら、非常にスムーズにいっていると」
反町キャスター
「凌さん、57か国という参加国。これはどうですか?中国から見たら」
凌氏
「いや、中国は初めの21か国、実際にはインドネシアは大統領の交代ということで、遅れて、22か国ですよね。22か国が入るのも、予想を上まわったと言っているんですね。中国が50%以上を出すと、出資ね。あれは中国の決意を示したのであって、別に半分以上を必ずとるとか、そういうのではないと説明しているんですね。つまり、始めた時はどのぐらい参加するのかは、そんなにたくさん入るとは予想していなかった。22か国でも大変満足しているところ。3月の末までに期限を設けますけれども、そういう中でヨーロッパの国も入ってくると。その後も3月31日、(期限が)切れたあと、4月15日までですけれども、増えていくんですよ。それで最後に57か国と。これは、中国は予期していなかったと。でも、それはこれだけ皆、期待があるんだなと。その点で気を強くしたでしょうし、自信を持ったんでしょうけれども、一方で、いや、これだけ集まってくるとどうやってうまくまとめていくか。これは大変だと。私の中国上海の後輩などは、それをどうやって具体的に対応するかで、毎日忙しい。大変だそうですよ」
反町キャスター
「嬉しいけれど、ちょっと不安という感じですか?」
凌氏
「いや、不安というよりも責任重大だと。これから成功させなければいけないから、だから、大変謙虚ですよね。日本についても、いや、日本はアジア開発銀行の経験があるから、心の知れた、井川さんもそうでしょうけれども、そういう人達もいるわけですから、是非入って協力してもらいたいという。そういう想いが強いですね」

総裁候補 金立群氏とは
松村キャスター
「先ほど、井川さんのお話にもありましたけれども、AIIBの初代総裁候補と言われているのが、金立群氏です。これまでに世界銀行の副執行理事やアジア開発銀行の副総裁を務めた方ですが、なかなかその人物像は伝えられていません。井川さん、金立群氏と最近お会いになった時はどんな話をされましたか?」
井川氏
「私はたまたま昨年の12月に北京に行くからと言ったら、結構時間をくれまして、1時間15分ぐらいお時間をいただいたんですけれども、その時に、敢えて批判されていること、懸念していることは聞かずに、あなたが持っておられるAIIBに対するビジョンなり、英語ではアスピレーションと申しますけれども、それは何だとぶつけてみたんです。そうしましたら3つ標語を出しまして、Lean、Clean、Greenと。Leanというのは世銀みたいに膨大な組織にしないというのが第1点。Cleanというのは汚職の問題について、これは中国も国内でそうなっているんですけれども、ゼロトレーランスだと。それからGreenというのは環境問題をしっかりやるんだと。懸念には及ばないということを言っていました。ですから、こういうLean、Clean、Greenと。非常に説明が上手な人ですね。それから、古い話ですけれども、金立群さんに十数年前にお会いした時にハッと思うことがありまして、それは最近、日本経済は元気がなくて中国経済がすごいねという話をしたら、これは中国企業の実力ではないんだと。中国はマーケットをオープンにして、実際には多国籍企業が活躍をしているんだと。自分達の中国企業の力ではないんだと。あくまでもマーケットだというような、そういう指摘をして、アレッと思ったんですね。ですから、いろんな意味で、グローバルな視野に立って、その違う文化に対応できる。私は稀に見る卓越したリーダーなのではないかなと思います」
反町キャスター
「小野寺さん、凌さんの話とか、井川さんの話を聞いて、AIIBに対する印象はいかがですか?」
小野寺議員
「正直、騙されてはいけないという印象を持っています。いかに、そういう形で非常にスマートなリーダーが出てきても、基本的には中国が提唱し、その資本もかなりの部分を中国が出し、言ってみれば、トップも中国が占め、場所は北京である。かなりの部分の決定権を中国が持つということになると、これは中国自身が国内で汚職が本当にないのか。たとえば、入ってくる役人が、普通の私達が思っているような透明性を持った形で運用をするのか。もともとある土壌がまったく違う土壌であって、そこに急にきれいな花が咲くというのは考えにくいなと。ですから、本当を言えば、中国国内が民主化をして、経済的にも政治的にも改革をされ、報道の自由があり、きちんとしていろんな評価をする。様々な指摘が入って透明性が高まる。このような素晴らしい銀行ができれば、それはきれいな花が咲くと思うのですが、残念ながら中国国内にそういう土壌がない中で、なぜきれいな花が咲くのか。私どもとしては非常に懸念を持っている。日本もアメリカもそうですが、透明性はどうなのでしょうか。たとえば、ヨーロッパの国々が入っていますが、それは遠くに見えますから、実際に遠くに見えて、領土も近いわけではありませんので、それは何となく、少しおいしそうかなと思って、どんどん入ってくると思うんですが、近くにいて長い歴史を持って、現在でも中国の良さと中国の難しさを知っている、私どもにとってはそんなに単純な話ではないのではないかなと思います」

財務対話とAIIB
井川氏
「小野寺さんがおっしゃるようにリスクがあるということは十分に、日本として理解をしなければいけない。そのリスクは2つあるのではないのかと思いまして、1つは大きなリスク。これはAIIBというのが、中国の中でどういうふうに位置づけられているかというと、一帯一路構想の手段として位置づけられているんですね。これは一帯一路構想に関する行動文書というのが今年の3月に出ていますけれど、その中にこれは明らかに中国の国家戦略の1つの手段と…」
反町キャスター
「一帯一路構想を説明した方がいい。凌さん、一帯一路構想というのは、要するに、中国がどちらかというと、アジア、ヨーロッパの方に向けて経済的な結びつきを強めるうえでの、陸のシルクロード。あと海は、要するに、南シナ海を渡って、インド洋を渡って、それもまた、ヨーロッパ、西アジア、ヨーロッパにつながっていく。海と陸の2つの道で、アジア、ヨーロッパとを結びつけていこうという、こんな理解でよろしいですか?」
凌氏
「そればかりではないですね。太平洋に向かう海のシルククロードづくりも入れていますから。いわゆる島サミットをやったでしょう。そういう国。太平洋の小さな島も海のシルクロードに入れていますから、西だけではないですね」
反町キャスター
「その陸やら海やらの2つの道で、主に西に向かって強めていく中で、その中におけるAIIBの位置づけというのは、どういう意味なのですか?」
凌氏
「それは、この一帯一路は中国の周辺諸国ですね、今、言ったようにそれをもっと拡大すれば太平洋諸島にも向かいますけれど、当面まず周辺ですね。そういう中にあって、中国は2国間の資金を提供する。それもいくつかあるんですね」
反町キャスター
「それは政府でやりますよね」
凌氏
「ええ。それ以外に、アジアインフラ投資銀行は、初めは主に東南アジア、ASEAN(東南アジア諸国連合)だったと思いますね。それが、一帯一路ということで、さらに拡大をして。ですから、この全体のプロセスは絶えず反応を見ながら、拡大をしているように思えます」
小野寺議員
「現在の一帯一路という陸のシルクロード、海のシルクロード、いろいろな話がありますが、これは経済的な問題だけではないです。必ず安全保障、軍。実は重要な港というのを1つ、1つ押さえていっているというのが実態です。いくつか知っている港について、たとえば、中国がODA(政府開発援助)で多額の投資を入れ、そのあと、その港については軍がかなり中心的に活用するという、そういうことも実際に起きていますし、あるアフリカの港であれば、港の開発について中国はかなりの資本を入れます。資本を入れるのですが、最終的にそれが返せないということになると、その港の占用権をどんどんとっていく。そういう意味では、通常、国際金融機関のやり方であれば、お金を貸して返せないのわかっているけれども、とにかく貸して焦げついたら、返せないなら、代わりにこれをよこせなんてことは、普通はない話だと思うのですが、これまで中国が実際、私が見ている中での、いろんな2国間の中で、かなりそれに近いことが、どうもあると現地では言われていますので、言ってみれば、今言った一帯一路構想の先にあるもの。これは決して経済だけではなくて、安全保障分野でも出ている。これは、たとえば、私達、アジア開発銀行とか、世界銀行とかでこういう想定のインフラ整備は普通ありませんから、私はこの内容についてはよく注視する必要があると思います」
反町キャスター
「井川さん、なぜこういう話があったかというと、一帯一路構想は中国の国策ですよ。中国の国策が世界的金融機関であるAIIBとリンクしているかどうかというのが最大のポイントになっているわけですね。中国の政府、ないしは政府金融機関がやるのはどうぞご自由にと。シルクロードファンドであるとか、何でやるかは自由です。ただ、国際的な金融機関であると言いながらも、それが中国の国策とリンクしているのであれば、これはおかしい。眉唾だと皆思うのではないですか。そこはどう見ていますか?」
井川氏
「中国は資金的に見て輸出入銀行もありますし、開発銀行というのもあります。それで資金的にも十分だと。十分ある。敢えてAIIBというのをつくるので、一帯一路構想の中に組み込まれて考えられていますけれども、逆に言うと、これは欧米の論調というのもありますけれど、逆に、国際機関の運営で、今や欧州諸国も入ってきていると。そうすると、理事会をEメールでやるとか、何とか言っていますけれども、ヨーロッパ諸国、あるいはオーストラリアの監視の目にさらされていると。国際機関には一定の透明性の確保という一種のグローバルスタンダードもありますので、そういう意味では、かえって中国のやろうとしていることを仮にAIIBを通じてやるということであれば、かえってトランスペアレントになるという面もあると。透明性が向上する面もあるのではないかと」
反町キャスター
「AIIBという国際金融機関が中国の一帯一路、国策に取り込まれていると言いましたけれども、これは良いことですか、悪いことですか?それは是とすべきなのか。問題だと批判すべきなのか。それをどう考えますか?」
井川氏
「そこのところは、個人的な意見を言わせていただくと、中国はそういう関連のプロジェクトをやることがあると思います。それから、議論になっていませんけれども、AIIBが中国国内のプロジェクトをやるかどうかという問題もあります。その点について、私がこれまでいろいろな情報を収集しているところですと金立群以下、準備チームは非常にガバナンスの問題とか、透明性の問題に気をつけていると。ここで中国の主導の機関がこんなことしかできないのかということがないように、細心の注意を払っているというのが現状です」
反町キャスター
「そうすると、取り込まれているというふうに、井川さんは言いましたけれども、取り込まれないように現在、金立群さんはがんばろうとしている?」
井川氏
「というようなことが言えるのではないでしょうか。逆に言うと、私は長い目で考えますと、5年経ってみてAIIBという機関は何だと。中国の手先で終わったかとなるのか。中国の首脳部が、AIIBというのはアメリカが期待するような責任あるステークホルダーの役割を中国が果たしたのだと言えるようにする。どちらが国益かと考えると、私は後者。つまり、中国はAIIBでベストプラクティスをやって、中国も責任あるステークホルダーの役割を果たし得るんだということを示し得る国益が大きいのではないかと思います。という意味で、100%とは言いませんが、8割か9割かもしれませんけれども、この運営は結構、うまくいくのではないかと個人的に考えています」

失速?中国経済の実情
松村キャスター
「今夜は、明日行われる日中財務対話に注目し日中の経済における攻防を検証しています。今回の日中の財務対話では、アジアへのインフラ投資のほか、マクロ経済についても意見交換が行われます。そこで注目されるのが中国の経済成長の減速です。GDP(国内総生産)成長率が、一時の勢いを失いまして、7%台にまで下降していますが、井川さん、この中国経済の現状をどのように見ていますか?」
井川氏
「これは一口で言いますと、ニューノーマルということで、2ケタ成長が終わって7%になる(というのは)、ごく自然だと思うんですね。ただ、それが実態的に5%なのか、もうちょっと下がるのかというところが論点だと思います」
反町キャスター
「5%?」
井川氏
「5%台」
反町キャスター
「5%台も視野に入っているのですか?」
井川氏
「これは最近、言われていませんけれど、中国が減速して、ハードランディングシナリオが起こり得るというのが2年、3年ぐらい前に結構、ブームということはないですけれども、多くの方がおっしゃっていた。最近、そういう論調はあまり聞かれないんですけれどね」
反町キャスター
「その意味で、5%台というのがハードランディングに変わるものとして徐々に成長率が鈍化していく。そういう説明の意味の5%?」
井川氏
「ということではなく、割合はやいタイミングで、たとえば、ニューヨーク大学のルビニー教授は、そういう警鐘をかなり前から鳴らしていたと。ちょっと最近の議論とはまた違った面があるのではないかと思うんですね。凌さんに聞きたい点もあるのですが、じわじわと7%ではなくて、成長が起こっているのではないかと。そういういくつかの要因が起こっているのではないかという中で、この住宅問題とか、それから、過剰融資の問題もあるのではないかと。そういう位置づけで考えています」
反町キャスター
「そうすると、井川さん、このニューノーマルというのは、中国政府が、世界に対しても、国民に対しても、これが普通の新しい状態だよと説明をするために、7%台に入っても、これが平常だと思ってくださいという、いわば安心させるための説明だと思っていたのですが、井川さんの見立てだとニューノーマルが実はさらに落ち込んでいくという前提で考えた方がいいのか、そこの部分はどう感じていますか?」
井川氏
「中期的に見ると、これは確実に起こっていくんです、暫く7%。IMF(国際通貨基金)の見通しだと6%台の数字を出しています。ただ、数年前との違いは8%という数字がありまして、8%以下の成長になると失業者が増えちゃうと。それが最近では7%で維持できるのではないかと変わってきているのではないかと思います。それは、もうちょっとスローダウンした時にどうなるかというのが論点だと思います」
凌氏
「中国経済は三十数年、高度成長していますから。高度成長も2ケタの高度成長、あれはアブノーマルです。私に言わせると、せいぜい8%、9%台ですよね。2ケタは行き過ぎです。これは日本においても、いろいろ国際的経験が示していることであって。現在、7%に落ちたということは、だいたい8%か9%が、7%に落ちたというのは、これは条件が変わったからです。たとえば、労働力の面においても、労働集約型産業は現在だんだんと賃金がアップしている。労働力不足を感じてきていますから。それから、もうひとつは、先進国から学ぶ、これが結局、高度成長の1つの要因ですけれども、この面でもまだ学ぶ必要があるんだけれども、初期のような効果というか、経済効果ではなくなってきていると。随分と吸収しましたから、労働力の面。それから、改革の面では現在中国も取り組んでいますから、しかし、改革をする場合、これまでの状況から今度は量から質へと。この転換はかなり難しいですね。だから、中所得の罠に陥って、成長しない。だから、中国もそれに陥るのではないかと言われているんですけれど、私は、中国は陥らないと思う。と言うのは、まず中所得の罠に陥るのは、1つはインフラがちゃんと整備されない。中国はインフラには力を入れてやりました。それから、もう1つは改革をするかどうかという話で、中国は現在、改革に力を入れてやっています。もう1つは、人材の養成。これも力を入れてやっています。この3条件からいって、だいたい日本とか、韓国のように、中所得の罠に入らないでいく可能性がある。しかし、現在、その転換期にあってかなり厳しい。加えて、現在、中国は腐敗退治をやっています。そうすると、現在のそういうリーダーにある人達も多かれ、少なかれ、少しは問題があるとします。そうすると、自分について一種の不安があって、中国国内でも最近では、責任をとろうとしないとか、たとえば、重要な決定をする場合にはサインをします。それを控えたりするということを聞くんです。と言うことは、現在の不正、腐敗退治が、これがまだ進行中ですから、それが少しは影響しているのではないかなと思います」
反町キャスター
「つまり、これはこういう数字もあって、全人代で発表された、中国の汚職摘発、立件が5万5101人。日本円で1900万円以上の賄賂額で立件されたのが3664件。うち共産党幹部が28人。これは多いのか、少ないのかというと、どう見ても多いんだけれども、このくらいやったことがかえって、凌さんの話を聞いていると、経済、ないしは政治判断を委縮させている、そういうことですか?」
凌氏
「その過渡期において、また人が変わるわけです。新しい人が出てくる。そういう一連の過渡期にあるわけです。これが一段落ついて、新しい人が出てきて、それでおおいにやる気になる。そうすれば、これがまた、経済の取り組み方がもっと元気が出てくると思うんだけれども」
反町キャスター
「現在、過渡期にある?」
凌氏
「ちょうど過渡期にあるんです。この不正、腐敗退治、上の方をやりました。今度は中、下とだんだんそういうところも整理されてくると、優秀な人が出てくる。そういうプロセスです」

中国 腐敗と粛清
反町キャスター
「小野寺さん、凌さんの中国に対する見方、説明をどう感じますか?」
小野寺議員
「腐敗退治、確かに一生懸命にやっていらっしゃいますが、私達から見たら、現役ではなくて、既に引退をした、あるいは政権の中で、前の政権の人達を中心にどうも摘発をされているような印象があります。現在の政権の人達は、全員クリーンの人だけが選ばれているかというと、なかなかそうでもないのかもしれない。そういう意味で、腐敗退治という国民に向けたメッセージ。これは大事なことだと思いますが、もう1つ、前の政権の人達がそのポストを、このことで失えば、逆に新しい、現在の体制の人達が、そのポストにどんどん就ける。言ってみれば、一挙両得の、国民には腐敗退治のメッセージを出し、新しいポストにはどんどん自分の腹心を入れるという、体制固めの非常にいいやり方で現在進んでいるのかなと。ただ、腐敗を撲滅することが大事だと思います。私が思うのは、現在、たくさん日本に観光客に来ていただいて、たとえば、銀座を歩くとたくさんお買いものをします。いっぱい買っていただく爆買い。非常にありがたいと思います。そこで感じるのは、皆さん日本のモノをたくさん買っていって、粉ミルクとか、子供用品とか、様々なモノを持って買って帰るのですが、これは逆に言えば、本来、中国国内の、経済の中でまわっていってもいいものだと思うのですが、それを日本に来て、これだけのものを買っていっていただけるということは、逆に、中国国内の需要をまわすような、そういう新しい企業がきちんと生まれていないのではないか。確かに大きな世界でのメジャー企業がありますが、逆に、中国国内で新しく生まれて、中国国内の人達が、それをとても満足してどんどん使っていく、買っていく。そういうものがまだできていない。そういう形で見ると今後、中国の目指すところというのは新しい企業が出てきて、メイドインチャイナの素晴らしい品質のものになって、それをどんどん生産工場ではなくて、品質の高いものが、むしろ世界から、それを買いに来る。中国国内の人がそれを使っていく。そういう国がたぶん目指す方向だと思うんです。ただ、その中でぶつかるのは政治体制の改革。実はずっと改革の話をされるのですが、常に経済の話、あるいは様々な地方制度の話をしますが、1番大きな改革は現在の中国の一党が独裁をして、国民には選挙権がない、報道の自由もない、こういう基本的なところの改革。政治改革が実は進んでいかないと、本当の意味で自由な経済がどんどん発展してこないのではないかと。私は中国の経済の現在、頭打ちがもしあるとするならば、それはここまでの伸び方は、言ってみれば、世界の工場として、どんどん投資をしてください、国としても支援をしますということで、どんどん資本が入ってきて、多くのモノが中国製になって、それが輸出という形で広がっていった。一定の所得が上がった。これから中国が次に目指す時に、中国自身で新たないろんなビジネスが出てきたり、経済活動が出てきたり、いろんな才能を持った人がどんどん出てくる。そのためには、逆に、次の段階にいくためには中国自身の政治改革、政治制度の改革。これが次のステップに必要だと思うんです」
反町キャスター
「井川さん、中国の経済の今後のさらなる伸びのためには現在の小野寺さんの話だと、まずは政治改革が必要なのではないかと。その他、諸々の改革もあるのではないかと。でも、凌さんは、先ほど中国はインフラを十分やってきたし、改革も進んでいるし、人材も豊富である。中国の成長に向けた前提条件をどう見ていますか?」
井川氏
「私は、小野寺さんがおっしゃったように、政治改革が進んでほしいと思います。それから、アメリカは、共和党政権の時に、ブッシュ大統領までが、中国が成長をすれば、民主化が進むと期待した向きがあると。それが期待外れだったと。ただ、いろいろ側聞をしますに、ソ連邦がどうして崩壊したかということとか、あるいは天安門事件がどうして起きたかということから、中国は何か教訓がないかということです。だから、結果的には、アサーティブネスといいますか、体制維持ということにちょっと力を入れ過ぎているのではないかと」
反町キャスター
「現在?」
井川氏
「現在です。これを数年のうちに変えていただこうと。変えろ、変えろと言うのはいいですけれども、現実的に、それはできない相談ではないかと思います。ですから、現在の体制がもうちょっと、たとえば、市場機能を活かした改革をするとか、国有企業の役割を少し抑えるとか、マーケットプリンシブルでやるとか。これはなかなか難しいかもしれませんけれど、司法制度の独立性という言葉ですね。三中全会の青写真の中に入っているので、三中全会の改革案の中に入っているようなものを、これは習近平さん自身が決めたということですから、そこを突いた方がいいのではないかと、私は思います」

両国関係のあるべき姿
松村キャスター
「では、日中の経済協力のあり方ですが、小野寺さんは、経済における日中両国の関係の見通しをどのように展望されますか?」
小野寺議員
「これは見通しというよりも中国経済にしっかりしてもらわないと、日本もそうですし、アジア全体、世界経済に響きますので、むしろ中国経済にどうやったら日本としてもしっかりコミットできるか。中国と日本、アメリカもそうですが、win-winの関係。これは経済的には大事だと思っています。ただ、どうしても常につきまとうのは安全保障の問題。現在、中国の軍事費が毎年毎年、経済成長がたとえば7%なり、6%になってもたぶん落ちることはなく、2ケタの伸びを続けていくと思います。目的は、1つは自分の国を守ろうということなのでしょうが、もう1つは、現在の政治体制を維持するためには、実は軍にはお金を出し続けなければいけない。それから、現在の政治体制を維持するためには、常に経済成長は、たとえば、7%を切ると失業者が新しく出るとなれば、これは中国の体制そのものに大きな影響が出てきますから必死になってこれを食い止める。であれば、地方政府でどんどんいろんなインフラ投資をしてもらい、合算としてのGDPはこんなですよということで、大きく見せなければいけない。実はいろんな問題の矛盾。中国が新しい段階になって、一定の経済成長が行われ、たとえば、社会保障が充実して、中国国民の生活度がアップし、内需がどんどん拡大して、これが中国の安定した経済になり、日本にもwin-winの関係になる。この1つの過程の中で、必ず出てくる問題というのは、中国の政治体制の問題。ここを逆に言えば、私はソフトランディングして、民主化を進めていく中で、是非中国の政治体制が変われば、本当の意味で、私達も安全保障の面でも、中国国内で報道の自由があり、選挙で選ばれた政治家がいて、様々な政府のことについては、常に国民の目が直接届くということになれば、これはどれだけ大きな軍事力を持とうが、私どもは全然、不安に思いません。いつも、私どもが中国に対して思うのは経済的に大事な国だからこそ、中国の政治体制に対して、これは民主化に関しては、時間はある程度かかると思いますが、その方向にむしろ政治改革の方も進めていただきたい。これが中国経済に今後、望むことだと思います」
凌氏
「まず軍事費の問題ですけれど、現在2ケタと言っていますが、成長率が1ケタになっていると。でも、間違えてはいけないのは、GDPというのはネットですね。それで、軍事費というのは、これは物価上昇率をどうするかを考えていないです。だから、GDPの場合は、物価上昇率を除いているんですよ。ですから、中国の場合、GDPの比率から見て、軍事費はずっと1.3%以下ですよ。変わっていないですよ。だいたい1.3%。日本は1%をちょっと切っていますけれどもね」
反町キャスター
「その見立てはあっているのですか?」
井川氏
「名目のという意味ですね。名目GDPと実質GDPというのがあって、7%成長というのは実質GDP。物価を加味した時に名目GDPがいくつになるかと。その時に、軍事費の伸びというのが2ケタだけだけれど、名目GDPはもうちょっと増えているという、そういうご主旨?」
凌氏
「ではなく、実質でやった場合ですね。1.3%で、もし成長率が8%だったら、同じように1.3%だったら変わっていない。8%です。決して2ケタではないです。2ケタでは、物価上昇率は除かなくてはならないの。物価上昇率は、中国は最近2%、3%」
小野寺議員
「先生、その数字は誰がおっしゃっても信じないと思います。現実に起きている中国の軍事費の伸び。これはアメリカも含めて、世界的に推定の中で出てきています。もちろん、自国で出しているという数字はあくまでも表面上の数字で見えない数字もあります」
凌氏
「見えないもの。それは、また別問題」
小野寺議員
「見えない数字があることは、私どもは問題だと思っていますので、透明性を高めていただきたいと思います」
凌氏
「見えない数字については、これは統計をどう発表をするかにもよるんだけれども、日本だって、たとえば、科学研究にいろいろ使って、軍事に使えるものもありますよね。それは軍事費とは違う?」
小野寺議員
「いや、それは、日本はそういうやり方はありません。きちんとそこは明確にしていますので。すみません、日本と中国を同じ土俵で比較はしないでください」
凌氏
「私が言うのは、中国の場合も、たとえば、科学研究費。それは民用と軍用に両方使えるものもありますよね。それをこれは軍事費とするのか。たとえば、宇宙開発。日本の宇宙開発も軍事にも転用できるでしょう。それは軍事費としないでしょう。そのへんのところは何とも言えないです」
小野寺議員
「そこは明確に違います。そこははっきりさせた方がいいと思います。日本は透明性が高い国ですから、今言ったような民用、軍需が一緒になって数字をごまかしていることは一切ありません」

小野寺五典 自由民主党政務調査会長代理の提言:『国際秩序への取り込み』
小野寺議員
「私は、中国は大切な隣人だからこそ、是非国際秩序の中に入っていただきたい。特に現在、南シナ海、あるいは東シナ海を含めて、安全保障でも様々な問題が起きていますので、国際的なルール、国際秩序の中に、大国ですから、しっかりと入っていただきたい。そうであれば、逆に言えば、新しいAIIBをつくって、国際社会のプレーヤーとして活躍していただくこと、これは重要だと思うのですが、是非、国際秩序、これをしっかり取り込んでいただきたい。国際秩序の中にしっかりと入っていただきたい。そう思っています」

凌星光 日中科学技術文化センター理事長の提言:『日中経済社会協力十か年計画の作成』
凌氏
「日中経済社会協力十か年計画をつくるように提案したいですね。ここにどうして経済で、社会かというと、日本の安定した社会。それから、中国のために。これは中国の観光客が皆、評価をしていますけれども、そういうところも含め、十か年に向けての計画をやったらどうかと。かつて中国の計画経済の時というのは、1970年代にあったんです。ちょうど始まった頃に。そのあとも、最近、中国はロシアとも、あるいはヨーロッパとも、ドイツともだいたい1つの協力を結ぶんです。その枠組み、協定みたいな、あるいは貿易額をどれだけプラスにするのか。日中間はもともとそういう土台があった国です、中国が改革開放政策を始めた前後は。しかし、最近政治的にぎくしゃくしてから、こういう問題はほとんど話題に上らない。しかし、私は関係が改善に向かう中で日中経済社会協力十か年計画。これは昔の計画経済のような計画ではなく、ガイドラインですね。ガイドラインのあとは企業レベルで、市場の原理をもって、それに努力をすると。政府はそれをバックアップする。そういう仕組みをつくったら、日本の経済はすぐに活用できると思いますよ。中国にとってもプラスになります」

井川紀道 東洋学園大学客員教授の提言:『多面的友好・協力』
井川氏
「私は多面的友好・協力の推進ということを掲げました。日中の経済関係を改善するという時に、経済だけにフォーカスすることなく、文化的な活動とか、多方面で友好を深めるということが大事だと思います。それから、経済人同士だけではなくて、役所、あるいは研究機関同士の交流、あるいは大学の交流を含め、日中の関係を多面的に進めていくというのが、今後の両国の安定的な関係の構築に必要だと思います」