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2015年6月4日(木)
新・国防白書に見えた 中国軍『本当の標的』

ゲスト

森本敏
元防衛大臣 拓殖大学特任教授
村井友秀
東京国際大学国際戦略研究所教授 元防衛大学校教授
朱建栄
東洋学園大学教授

検証!中国の新軍事戦略 その正体と真意は
秋元キャスター
「先月26日に中国が発表した国防白書ですが、1998年以来、2年おきに発表しているもので、今回が9回目の発表となるということですが、日本の防衛白書と比べますと、日本の方は500ページあるのですが、中国の国防白書は10ページとかなり薄いものですけれども、村井さん、中国で国防白書というのはどういう意味を持ったものなのでしょうか?」
村井教授
「国防白書というのはいろんな国が出しているんです。アメリカも出している、ヨーロッパの国も出している、日本も出している、中国も出していると。それぞれの国で目的が違うわけです。アメリカの国防報告書というのは基本的に大統領や国防長官が議会に軍事予算の同意を求めるものです。ですから、議会に説明をするものです。ヨーロッパもだいたいそうです。日本の場合は防衛省や自衛隊がこんなことをやっていますよという、国民に知らせるものです。ですから、それほど量が違うんですね。中国の場合、どうかと言うと、中国も基本的に外国に説明をするものだと思うんですね。何を説明するかというと基本的に中国のやっていることは正しいということを説明する。ところが、それが目的なので、年度によって、中国に対する批判が違うので、それぞれに反論をしなければいけないので違うことが書いてある。以前は、中国は中国脅威論に反論するという形で、中国は悪くないんだという主張、前の国防白書がそうだったんです。今回の、ちょっと違うのはもうちょっと積極的に、自分が悪くないというのではなくて、アメリカが悪いんだと。そういうふうに言っていると思うんです。それは、要するに、より積極的に出るというバックグラウンドがあるから、反論も強くなる。悪者をはっきりと認定するという方向に出ているんだと思いますね」
反町キャスター
「自分が悪いと言われる時に、悪くないと言うだけではなくて、悪いのはあいつだというところまで踏み込んでいるという、そういう理解でよろしいですか?」
村井教授
「そうです。それが前回の白書と今回の白書の違いだろうと」

海洋重視の狙いと背景
秋元キャスター
「内容を見ていきたいと思うのですが、まず強軍となってこそ国を守ることができ、強国となる。陸軍重視、海軍軽視という伝統的思考を突破。国家主権と海洋権益を守り、海洋強国建設のための戦略を提供する。海洋軍事闘争を準備し重大な危機を効果的に制御すると書かれていて、全体を通して海洋についての記述が多かったと。軍事闘争を準備という言葉など刺激的に思える記述も見られるんですけれど、この白書のどこに注目されますか?」
村井教授
「中国のこの白書を出す背景と言ってもいいかと思うんですけれども、中国の指導部が何を考えているかというと、よく言われる、中国外交の5割から9割は国内問題の反映だという言い方をされることもあります。現在、中国がやっているのは共産党政権に対するいろんな矛盾が大きくなってきて、国民の政権に対する、世の中のいろんな不満が高まっている。それをどうやって解決するかというと国内で解決するには非常に難しいです。国内で何かをすると利益を受けるものと不利益を受けるものが出る。それをうまく解決するのは難しい。1番簡単なのは、外に敵がいて、国民の目を外に向ける。国内の問題に対する不満を外に向けるというのが、1番、政権にとって簡単な、これは古今東西、どこの国でもやってきた。それをやろうとしていると思うんですよ。そうすると、要するに、現在の政権は国民の役に立つことをやっているんだと。その1番簡単な例が影響圏というか、領土というか、国境というか、勢力圏を増やすという。そうすると、どこで増やせるのかというと、陸上の国境で増やすというのは大変です、これは。簡単に増やせないです。でも、海はどこが国境か見えないですから、比較的簡単だと。だから、海に出る。どこに出るかというと、中国の海は東シナ海か、南シナ海しかない。どちらに出るか。東シナ海に出ると相手は日本とアメリカですよね。南シナ海に出る。基本的に東南アジアですよね。東南アジアの方が出やすい。コストが小さい。だから、出ていく。そういう背景があって、それを正しいことだというためには、2つのポイントがあって、自分が外に出て行くのではない。固有の領土、元あるものを取り返すという理屈です。そうすると、侵略にならない。だから、昔の中国だったところまで出るということがポイントの1つだと。それを合理化するために、説明するために、白書が出て、これが重要な目的だと私は思います」
反町キャスター
「朱さん、先ほど、村井さんが言われたように、国内に問題があるから、外に目をむけさせることによって、政権の求心力を高めるためのツールとしての国防白書、ないしは海洋戦略という、この話というのは前提として習近平主席が国内統治に苦労しているか、ないしはもう全部抑え込んだかという、たぶん、そこによって見方が違ってくると思うんですけれども、そこはどうですか?」
朱教授
「もちろん、これから改革は大変な難題だと思いますが、権力基盤で言えば間違いなく、これまで20年の江沢民、胡錦濤時代より、わずか2、3年で、現在の習近平政権がはるかに安定で強力な政権になっているわけですね。彼がやっているのは後ろ向きで、皆の不満をかわすということではなくて、大胆にこれまでやったものを、既得権益者を含めて、打倒して、新しいスタイルをつくると。そういう意味で、ただ弱いから、いろいろ外に天敵がいるというより、明らかに1つ言えるのは、アメリカに向けての部分もあると思います。アメリカが現在、中国の軍事戦略、いったい東シナ海、南シナ海で何を目指しているのか。それに対しては今回、中国はこんな軍事戦略だということを示して、9月に習近平主席、訪米して、米中首脳会談が行われるんですね。おそらくそれに向けて、中国とアメリカの外交、軍事戦略をもう1回、すり合わせするというための準備の一環であると思います」
森本氏
「この白書というのは、日本でいうとNSSみたいなもので、つまり、ナショナル・セキュリティ・ストラテジー、国家安全保障戦略をコンパクトにしたようなもので、つまり、日本の防衛白書と全然違って、ポスチャーとか。ポスチャーというのは部隊の配備だとか、装備だとか、品目だとか、予算だとかというようなことはともかく、中国が国家の軍隊というよりも、むしろ党の軍隊としてどのような方向に進むのが良いのかという、根っこになる基本的な戦略。日本で言うと、NSSをもう少しコンパクトにしたようなものを出して、これまで曖昧にしていたものを、はっきり開き直って、言うべきことを言おうとしたものですね。だから、軍事大国になるかと(いうと)、軍事大国になりますと言っているんです。海洋国になるのかと。海洋大国になりますと言っているんですよ。だから、曖昧さの戦略を完全に超越して、疑念なく自分達が考えていることを、開き直るという。その中では、南シナ海も重視する。これも開き直るという。私は非常にはっきりとしてきたんだと思うんです。ただ、言いたくないことは言わない。だから、たとえば、中国が持っている核心的利益とは何かって一言も言わない。つまり、言いたくないことは言わない。ただ、国内でも、国際社会でも、いろいろ疑問を持たれるようなことにははっきりここで回答をしてしまうという、そういう意味あいを持っている白書になっているんだろうと思いますよね。村井さんが確かにおっしゃったように、海洋には国境はないんだけれど、そういうことではなくて、これは国際法上、国家の主権が確定していない分野、ドメインというのは海洋と宇宙とサイバースペースですよ。そこに出てくるのは出てきた方が勝ちだから。だから、基本的に言うと、そういう国際法上、確定していない分野には出る。もちろん、それらの中には海洋権益だとか、海洋の資源だとか、海上輸送路だとか、台湾の攻略だとか、いろんな理由があるんですけれども、基本的に言うと、そこに利益を求めて海に出てくることが利益だということで、海空軍を近代化して、海に出てきているということですね」

南シナ海強硬姿勢の狙いは
秋元キャスター
「今回、中国が発表しました国防白書の中で、南シナ海について『一部の海洋隣国は中国領土の主権と海洋権益の問題に挑発的挙動をとり、中国領の島や岩礁の上で違法な占拠を軍事的に強化していると、南シナ海における中国の主権を主張したうえで、幾つかの域外国家も南シナ海の情勢に手を出して、一部の国家は中国に対して、高い頻度で海洋偵察を行い、いたずらに接触を維持。海洋の権利保護は長期にわたり存在するだろう』と、名指しはしていないですけれども、南シナ海で監視を続けるアメリカ向けと思われる非難も表明しています。『国家の主権を守り、安全・国家海洋の権益。武力衝突と突発的事件の対応の準備を確実に行う』と書かれています。また、南シナ海を巡る動きについて先週末行われたアジア安全保障会議、いわゆるシャングリラ会合で、中国の孫建国副総参謀長がこのような発言をしているんです。『埋め立ては、中国の主権の範囲内で完全に道理にかない合法だ。軍事・防衛上の必要なニーズを満たすためである』としていて、中国の南シナ海での埋め立ては合法であると主張し、さらに、軍事目的であることを国際会議の場で明言しているんですね」
森本氏
「前回シャングリラで、確か副参謀総長が、2000年前から南シナ海の領域は全て中国の領土だと言ったはずですよ。だから、中国の立場から言うとどの国も挑戦できない。2000年前というと、中国以外、残りは全て国ではなかったわけですから、我が国も含めて。だから、中国の主権にチャレンジができないという海域、つまり、実効支配を強めるために軍事施設を置いて、たぶんそのうち2つぐらいは飛行場。3つぐらいの対空レーダー施設を置いて、いずれの日か、アメリカは2017年から2018年に建設が終わると言っていますから、その直後に防空識別圏を九段線に沿って引くということになると。そこは海上活動。中国の海上活動をエアカバーする。つまり、航空戦力で、航空制空権をとってくるということによって、南シナ海に入ってくる、たとえば、アメリカの空母機動部隊は非常に通りにくくなるか、つまり、アメリカの言葉でいうADというか、エリア拒否という戦略を、実効支配できるようになる」
反町キャスター
「中国の領海であると主張するために現在いろいろなところに軍事施設をつくっている、こういう理解でよろしいのですか?」
森本氏
「そういうことではなくて、この7つの施設。既に中国が実際に島を占拠して、実効支配しているところに、全て7つ島がありますが、飛行場、飛行レーダー、港湾施設、補給施設等を置いて、九段線に沿ってADIZというか、防空識別圏を引くとここに入ってくる航空戦力に対して、ここからいつでもレーダーで見えて、飛び上がれて、その航空機をレーダーで管制できるということになるわけですから、ここに入ってくる外国の航空戦力を排除できるということは、中国がここで海洋活動をする時に制空権をとる。海南島では見えないです。オーバー・ザ・ホライゾンで、地球は丸いですからレーダーでカバーできないので、ここにレーダーを置くと概ね九段線の中はカバーできる。東シナ海と同じですね。東シナ海もそういう感じで、ADIZというか、防空識別圏を引いたわけです。ただ、非常に面白いのは、ASEAN(東南アジア諸国連合)の国々はまだどこもADIZを明らかにしていないですね。南シナ海における、ADIZは自分で引くことができるのですが、これは宣言をしなくても、してもいいんです。たとえば、ロシアはADIZを持っているはずですが、世界に公表してないです、防空識別圏。それは各国が主体的に考えていい。つまり、義務はないということです、国際法上は。だから、どうASEANの国々がADIZを引いているかというのがよくわからないところに、ADIZを先に引かれると、中国としてより実効支配を強めることができるということなので、この施設が完成するとそういう時期がくるのだろうと思われます」

中国の戦略と今後は
村井教授
「森本先生がおっしゃられた、今度の国防白書ではっきり言うようになったというその背景は、これまで曖昧にしていたのは、アメリカを見ていたんだと思うんです。要するに、アメリカを見ていると、自分が強いと言わない方がいいですよ。相手の脅威になるんだというような言い方はしない方がいい。相手の方が強いから。今度の国防白書は、東南アジアが非常にメインのターゲットになっている。相手が弱くて自分が強いと、相手に対する説得力が増すと考えていると思いますね。典型的な例が航空母艦で、航空母艦というのは自分より強い相手に対しては浮かぶ棺桶ですね。簡単に沈められる。でも、自分より弱い相手、航空母艦を沈没させる能力のない国に対して、すごく大きな影響力がある。それと同じで、南シナ海で中国がやっているのは自分の方が強い。どういうことをやったらいいかというと、たぶん航空母艦が現在1隻あるのを使えると思っていたと思うのですが、ところが現在、ベトナムとか、インドネシアとか、潜水艦を導入します。そうすると、1隻ぐらいの空母では非常に無力です。だから、それでどうしたらいいかと言うと、もっと航空母艦を増やす。どうしたらいいか。島を航空母艦にすればいいんですよ。だから、島というのは不沈空母ですよ。だから、現在1隻しか空母がないけれども、島を埋め立てて滑走路を造れば超大型空母が3隻、4隻、現在全部できると7隻ぐらいできる。そうすると、ベトナムやインドネシア、その他の国が少々の潜水艦をもって航空母艦を攻撃できるような能力ができても、島は沈められませんから。大きな航空母艦をいっぱい並べたような、中国の軍事的な優位性というのがいっぺんに大きくなりますね。だから、島を埋め立てていることは、軍事的には非常に大きな意味がある」
朱教授
「私が聞いた、最新の動きで言えば、中国は我々が防空識別圏を設ける、南シナ海で設定するとは1度も言ったことはないというのは、公の説明。裏でアメリカに対しては、我々は考えていない、と伝えたと聞いています。南シナ海で、中国がこの岩礁のところを、これから島として領海を設定するということは考えていないとアメリカに伝えたと。そういうのを受けて、現在アメリカの最近の反応は、最近のオバマさんと、中国の南シナ海についての考えも一定の理屈はあるかもしれない。ただ、大国だからもっと大国らしくやれというような表現にちょっとトーンダウンしたんですね」

国際社会の懸念に中国は
反町キャスター
「通行権の懸念を、もしアメリカが持っているとした場合、先ほど、朱さんは内々ではあるけれども、中国からアメリカ側に対して、防空識別圏は設けないよと。領海の設定しないよというのを内々に、アメリカ側に伝えているんだというようなお話がありました。これははっきり言って、そうだよと言われ、うーんと、裏のとりようのない話ですけれども」
森本氏
「基本的にそんな必要はない。相手に通報する必要はない。防空識別圏というのは全ての国が、国際法上、防空識別圏を引く権利を持っているので、いつ、いかなる時に状況が変わるかもしれないから、予め私の国は防空識別圏を引きませんなどということを、他国に約束する必要もないし、やったからと言って、それで効力があるわけでもない」
反町キャスター
「朱さんが言っていた、南シナ海において、たぶんベトナムを念頭に置いた話だと思うんですけれども、ベトナムやら何やらが領有し、基地を建設しているのを、アメリカは文句を言わなかったのではないかという点に関して、先ほどの話で中国が占領することと、基地を建設することによる通商上の脅威とか、安全保障上の脅威をまったく別の枠として考えているということでよろしいのですか?」
森本氏
「そうですね。ASEANの国が南シナ海の中に、確かベトナムが21持っていますかね。マレーシアが7つ、フィリピンが3つ持っています。台湾が1つ、南沙諸島だけの話ですけれど、持っていますが、それに対してアメリカが懸念を表明したことはありません。ないのは、アメリカの航行の自由が損なわれたということが、これまでにないと」
朱教授
「はっきり言って、中国は南シナ海に、軍事拡張することは、現在の中国の発展にとって下の下の策ですね。中国は現在、シルクロード構想を2つ出していて、陸と海。まさに現在、東南アジア諸国と中国は最大の貿易相手です。そこをやめるというのは小国にとっても、中国にとっても大打撃です。ですから、そこの部分、過度に中国を注目し、そこで軍事拡張し、それを拠点として、空母として利用するなどと解説するのは、正直言って事実にあたらないと」
村井教授
「たぶん朱さんと中国の国防部の意見は違いますよ。中国の国防部はこの前、報道官が言いました。南シナ海の島は軍事目的で使っている、と国防部が言っているんです。だから、国防部も…」
朱教授
「いやいや、その中で、一部として、これを守るということもあるという…」
村井教授
「軍事基地ですよ。それは確かで、中国もそう言っているんだから。なぜかと言ったら、基本的に自分達で東南アジアの国を抑えなければダメだと思いますよ。だから、先ほどから議論になっている、ベトナムの埋め立てはどうだと。フィリピン、ベトナムは、南シナ海を軍事的にコントロールするような能力はないですよ。できないですよ。だから、アメリカは何も言わない。世界も何も言わない。自由航行に何の影響も与えないからです。でも、中国の島、埋め立ては十分に南シナ海をコントロールする基地になり得る。だから、皆が文句を言っている。もう1つは、先ほど朱さんが言った、アメリカと中国の間で交渉があるかもしれない。私は知りませんが。その場合も埋め立てをやりますよというのは、中国側のこれまでの交渉のやり方を見ると、たぶんアメリカと交渉をする時に、外交交渉というはギブアンドテイクだと。何かをギブしないとテイクできない。その時の、交渉のカードになります。たとえば、埋め立てをやめる、何かをする。そのためには現在できるだけ、自分のカードを増やさないと。だから、これからもどんどん埋め立ては積極化していく。交渉が近づけば、近づくほどスピードアップするのではないかと」

海洋重視の狙いと背景
反町キャスター
「中国はそういう気持ちはないと言いながら、国防白書の南シナ海関連の記述を見ていても、これはどう考えても海洋隣国は違法な占拠を軍事的に強化しているとか、域外国家、アメリカも高い頻度で海洋偵察を行って、そうした延長線上に武力衝突、突発的事件への対応の準備を確実に行うという、ここまで国防白書に書かれていると。朱さんは先ほどから、いやいや、これは基地をつくるように見えるけれども、これは基地ではないんだよと言われても、ちょっと無理。だから、現在は軍事的な意味がなくても将来出てくるかもしれないだろうからつくっているわけでしょう?」
朱教授
「将来的にも、ここは脆弱なサンゴ礁。サンゴ礁の上にできているので、軍事的に、これを不沈空母にするということは、もともと最初から中国はそれが意味ないことはわかっていると思います」
反町キャスター
「ないと言っているのに、だったらシャングリラでこんな話はしませんよね。軍事防衛上の必要なニーズを満たすためであるという」
朱教授
「それは現在の報道の仕方が…。中国は今回も3分の2を明らかに民業、通行用で確保する、各国の協力のためにと。最後に、これらの島を守る最低限の軍事防衛上必要だねと。つまり、これを拠点にして、他に対して、中国は何か軍事戦略を展開するという、それを本当に一言も言っていないですよ。これが本当に…日本でのちょっと解釈の拡大だと思います」
森本氏
「何を守るのですか?」
朱教授
「だから、軍事的には、ただ、この島を守るだけの問題ではなくて」
森本氏
「いやいや、撤退すればいいではないですか、守る必要はないのではないですか?」
朱教授
「でも、他の国が出て、中国だけが撤退するということですか?」
森本氏
「他の国がつくっていると言うけれども、別にフィリピンが、たとえば、戦闘機の飛行場をつくっているとかはないですから」
朱教授
「中国はこれをつくっていて、軍事用でこれはつくれないと、米中で約束をしたら、問題ないということですか?」
森本氏
「約束するはずないではないですか」
朱教授
「これは、米中でまさに裏でやっていますよ。米中がここで、中国はこれを米中が対立する最前線にしたくないということは明らかで、アメリカもそれをわかってきたので、ここ2日、3日、オバマ大統領が中国に対して、中国に一理があるかもしれませんが、ただ、大国としてはもう少し自制しようということを検討していますよ」
森本氏
「アメリカは係争上の領有権の問題にはかかわらないですよ。これが原則です。アメリカの外交。だから、これは認めないです」
村井教授
「もし米中で、そういう合意があったら、1番困るのは東南アジアの国ですよ。そうすると、非常に大きなアンバランスが固定されるということになるわけですからね。東南アジアの国は、そういうのは非常に困ると思いますよ」

今、日本がなすべき安保議論は
秋元キャスター
「日本にどういう影響をもたらすのでしょうか?」
森本氏
「アメリカが南シナ海でどういう活動をし、中国がこれにどのような反応をするかということが、日本の対応に大きな影響を与えると思うんです。サンフランシスコ条約で領有権は放棄していますので、南シナ海の領有権を日本が主張することはないのですが、日本にとって重要な海上輸送路なので、たとえば、ここで米中が非常に難しい状態に入るというような場合に、日本の船団とか、船舶の自由航行が阻害されるようなことになった場合、それを日本としてどう考えるかということです。たとえば、現在議論している安保法制で言うと、立法的に言うと、そういう緊急事態が、安保法制の中での重要影響事態にあたるのかどうか、あたるような要件を満たすのか。満たすとすれば、日本はアメリカに協力をする。これは分野が決まっているのですが、するということになるのか、あるいはするとしても、それが法律で言う、現に戦闘が行われている現場以外の場所とは、南シナ海のところでどこを言うのか、といったいろんな問題が南シナ海の問題で出てきて、まだ国会ではペルシャ湾の話は随分議論になっていますけれども、南シナ海で安保法制がどう適用になるかというのは、本格的な議論はまだ行われていないんですけれど、これは我々にとって非常に大きな問題であり続けるということだろうと思います」
反町キャスター
「それは、たとえば、南シナ海において現在アメリカが行っている公海上の偵察活動とか、情報収集活動に対して、日本が関与していく、そこに関わっていくということは、これは今後の可能性としてはどう見ているのですか?」
森本氏
「これは別に重要影響事態ではないということになったら、平時の対応ですね。平時の対応で、たとえば、アメリカの要請を受けて、平常時における警戒監視活動をある特定の海域でやるかどうかというのは、これは論理的に言うと、世界中どこでもできるかというと、論理的にはできるんです。しかし、それをやることが政治的にいかなる意味があるかということは別途、政治判断が必要だと」
村井教授
「中国が何をやろうとしているのかということを、もう1回考えてもらいたいと思うんですね。中国は、最初に私が発言したように、国内問題を解決するためには外に出ると。民族主義というのは非常に表に出ています。中華民族の偉大な復興、これは民族主義そのものです。これが中国の夢だと言っている。これは現在の習近平政権の正当性の重要な部分ですよ。これを守っていかなければいけないということになって、いろいろなことをやっている。我々が考えておかなければいけないのは南シナ海問題ですと。日本とは関係がないのですかと言うと、絶対にそんなことはない。要するに、中国から見ると、海へ出ようとした時に南シナ海も東シナ海も同じです。これまでの中国を見ると、東シナ海で何かをやっている時は南シナ海では出ないですよ。南シナ海で何かやっている時には東シナ海には出ない。だから、経過から見たら、南シナ海の問題で皆が努力して、関係者が努力してある程度合意ができた。その時に東シナ海がどうなるかということです。これまでのパターンを見る限り南シナ海であまりエネルギーの必要がなくなると今度は東シナ海へ…問題が発生する可能性の方がおおいにあると思うんです。だから、我々は南シナ海にどういう態度をとったらいいのかというと、その地域の問題が平和的に解決する努力をするのと同時に解決したあとで東シナ海で日本にとって不利な既成事実ができないよう、その時の準備を常にやっておくということが、現在日本が問題に対する態度としては重要な問題ではないかと思っています」
反町キャスター
「中国の南シナ海に対する姿勢と東シナ海に対する姿勢は、行動基準は同じですか、違うのですか?」
森本氏
「基本的に中国のその時々のプライオリティがどこにあるかということによるんです。本当は2つとも中国は自分の内海下にしたい。それだけの余裕があるかということ、その時の国際情勢でどちらに重点を置いているかということなので、本当は両方ともやりたいんです。だけれど、東シナ海は明らかに在日米軍の非常に強い、抑止力が効いている。南シナ海は91年の米比基地協定でアメリカ軍が引いたあと、力の空白ができたのを中国は埋めにきていると。埋めにきているので南シナ海では、中国の海軍が直接フィリピンに向かっているけれども、東シナ海は公船しか入ってきていない。だから、そこはすごく違うんです。どのようにアメリカの抑止が効いているかということが非常に重要なので、基本的に言うと、南シナ海もフィリピンが希望しているようにアメリカの抑止機能がきちんと働けば、それだけ自由航行が維持できる。それは間違いないと思うんですね。アメリカも自由な活動ができる十分なリソースを持ってない。だから、リバランスというのをやっているわけですよね。中国も現在のところ、ダブルトラックのアプローチができるほど十分な海軍力があるわけではない。本当は両方ともやりたいんだけれども、現在は十分な能力がない。おそらく空母が3隻とか、4隻になると、多少そういうことができるかもしれないけれども、現在はその能力がない。そういう過渡的な状態にあるのだろうと思います」
村井教授
「この前、ベトナムとの会議があって、その時のベトナムの外交官の意見は、中国が東シナ海と南シナ海で行動パターンが違う最大の要因はアメリカの存在だと。ベトナムはそう思っているということでした。ですから、相手がどれだけ強いかということによってその行動が変わってくる。これは合理的なプレイヤーだとそうなる。そういうことから考えると東シナ海と南シナ海の差というのはそこにあると。だから、パワーバランスが変われば、それに比例する形で中国の行動は変わると。中国は合理的なプレイヤーだから。そういうことになると思います」
朱教授
「中国がここまで発展したら、アメリカにとって追いつかれ、追い越される1番の潜在的なライバルだと。アメリカもこれからいろんな理屈を使って中国の足を引っ張り、他の国を使って、中国を孤立させると。その点を中国は1番わかっているので、中国が、たとえば、東南アジア諸国を敵にまわすということは、それはできないし、やってはいけないということはわかっているわけです。フィリピンはほとんど空軍力がない。ですから、簡単に言えば中国はいくらでも現在フィリピンが占領している南シナ海の29の島をとれるわけです。とってはいけないというのは、現在の国際情勢でわかっているわけです。そういう意味では、中国は領土の拡張というような話より…だって中国は、最近他の国が占領している島をとっているわけではないのですから、そこは背後に米中の戦略的な駆け引きというところがあるということを我々はもっと見抜いて、私は先ほどの指摘にもあるように中国がアメリカだけを見て、東南アジアの反応とかを無視する、これは良くないと思います。もっと総合的に見て、中国は大国になったのですから、小国からの懸念ということを意識すること。これは中国の問題。一方で、アメリカと同じように中国の脅威論を煽るだけでは問題の解決にはならないと。その両方のバランスをとる必要があると思います」

村井友秀 東京国際大学国際戦略研究所教授の提言:『弱気を助け 強きをくじく日本になろう』
村井教授
「私が最近の議論を見て思うのは、集団的自衛権の話などそうだと思うのですが、集団的自衛権というのは基本的に弱い国を皆で助けようとするものです。ですから、その趣旨をもう1度よく考えて、これからの日本はどういう国になったらいいのかということになると、弱い国を助ける。弱気を助け、強きをくじく。そういう世界で尊敬される国になろうと日本人が覚悟するということが絶対に必要だと思います」

朱建栄 東洋学園大学教授の提言:『日米中の安保協議を』
朱教授
「私は、日中で互いに内心で懸念しあう、正直言って、多くは過剰な脅威感ですね。腹をわって互いに協議して、特に日中米で3者がもっとハイレベルで戦略や、いろんなところで交渉して、いろんな懸念を消していくということがこれから1番大事だと思います」

森本敏 元防衛大臣の提言:『日米同盟を核心とする多国間協力を促進』
森本氏
「私は非常に現実主義者なので、現実の問題はアメリカの抑止機能がどのように機能するかということが1番重要で、その際、今回のガイドラインのように、アメリカのリバランスを日本、あるいは豪州が支えて、それだけでなくて東アジアにおける価値観を共有できる国、特にASEANの幾つかの国を一緒に巻き込んで、多国間でこの地域の安定をはかる努力をするというのが1番適切なやり方だろうと思います」