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2015年5月19日(火)
二律背反?両立可能? 経済成長と財政健全化

ゲスト

伊藤元重
東京大学大学院経済学研究科教授 経済財政諮問会議民間委員
小幡績
慶応義塾大学ビジネススクール准教授

財政再建への道筋とは
秋元キャスター
「税収などの歳入と、国債の元本返済と利払いを除いた歳出の収支、いわゆるプライマリーバランスの推移ですけれど、1992年にマイナスになって以来、現在まで赤字が続いています。1998年の急激な落ち込みは、アジア通貨危機の影響で、2006年に小泉政権による歳出削減で回復しかけているんですけど、社会保障費が毎年2200億円削減することへの反発が強く、計画自体が頓挫します。その後、さらに赤字が膨らんでいきまして、2008年にリーマンショックがありまして、2009年、赤字が増えていますけれど、赤字体質から抜け出せないままとなっています。政府は、このプライマリーバランスを2015年度に2010年度の半減、2020年度に黒字化することを公約としています」
反町キャスター
「安倍さんが言っている財政健全化と景気回復。どちらか1つだったら、うんと楽なのにと皆さん、言うんですけれど、この部分、あらためて聞きますが、それは両方同時というのは、政策の目標としては事実上、ほとんど困難だという理解でよろしいのですか?」
伊藤教授
「とにかく増税をして、歳出カットをするということをやれば、数字のうえでは乗っかりますが、そういう状況ではなかなか成立できない。ギリシャを見てもわかると思うんです。ですから、そういう意味で、成長、あるいは経済を回復させることをベース、もちろん、どうやって経済を成長させるかの議論は大事なことですけれど、ベースのうえで、どういう財政の再建のシナリオがあるかということをきちんと考えましょうというのが、おそらく現在の安倍政権の基本スタンスだと思います」
反町キャスター
「もう一問、基本的なこと。プライマリーバランスというか、財政赤字。このまま拡大していったら、どうなってしまうのかというここの部分です。なぜここまで、我々は真剣にこの問題を捉えなければいけないのか。そこだけまず教えていただけますか?」
伊藤教授
「少なくとも3つの異なった問題が同時になることを我々は、認識しなければならないです。1つは、過去に借金を抱えたために、赤字を出したために、膨大な借金が書いてあると。これは過去からの問題です。これが非常に大きな問題である。2つ目は、この瞬間でも、プライマリーバランスは赤字という形で出血が続いているわけです。この状態を続けると困るということ。それから、3つ目は、2025年ぐらいになると、いわゆる団塊の世代がみんな75歳を超えるわけですけれど、現在のままの制度を維持すると、その時に、どうにもならなくなるという問題。私は、前門の虎、当面の出血、後門の狼と呼んでいるんですけれども、この3つを、ある意味でいうと、それぞれの問題を見ながら修正をしていくということになってくるとすると、これはなかなか複雑です。誰が考えてもわかるのは、当面の出血を止めることというプライマリーバランス、赤字をなくすということは、他の問題も含めて、問題の解決の重要なステップだということだと思います」
秋元キャスター
「小幡さん、プライマリーバランス、赤字から抜け出せない要因をどう考えていますか?」
小幡准教授
「今日、冒頭から核心、1番大事なことを2点、反町さんおっしゃったのですが、これは両方という問題の立て方が間違っているんです。経済成長か、財政再建かではないです。何か経済のせいで財政再建ができないようなことを言いますけれども、これはまったく違っていて、財政は財政の問題で、家計でもそうですけれど。収入と支出をやり繰りする。一緒にあわせるということです。収入の範囲内で支出を抑える。それができていないと。ただ、それだけのことです。グラフを見ても、2つは、日本が経済危機の時にすごく膨らんでいるわけではないですか。だから、この時に黒字にしようと、それは間違いですと。経済が壊れそうな時にそんなことをするかということですけれど、経済再生という言葉を使うからいけないのだけれども、経済は別に現在、そこまで悪くないですね。リーマンショックの時はどうなっちゃうかわからない。あの時の危機も日本が特に危機だったから、リーマンショック以上の、日本としての危機だったわけで、だから、全然、関係ないので、経済成長の議論と別に財政再建をやるということから、まず始めないといけないと思います」
反町キャスター
「そうすると、たとえば、税収が現在、50兆円しかないとしたならば、50兆円で一般的な予算を組んで、それで景気が足りないというならば、その分だけ追加をすればいいと、そんな予算の考え方自体を全部変えた方がいいと、そういうことですか?」
小幡准教授
「まったく、その通りです。ですから、経済問題ではなく、政治問題なわけです。もっとわかりやすく言えば、大盤振る舞いし過ぎた。年金、医療、介護。それは、いい方がいいんですけれども、我々は幸せな社会です、日本社会。でも、それはできないことを借金してやっているから、標準以上に幸せなわけで、これは続かないわけですね。借金でやっているわけだから。だから、経済問題ではなくて、政治問題ですごく甘い約束をして、そう言えば喜ばれますから、つい約束をしてしまうと。でも、よく考えていたら、経済が右下がりになってきたし、無理だなという時に、困ったと。実はできませんでしたと言わなければ済まないんですけれども、でも、それは言いにくいから、じゃあ、経済をもう1回右上がりにすれば、何とかなるかなという理論でつじつまあわせしているんですけれど、経済は政府ががんばって右上がりになるのだったら、とっくにすればいいわけで、そう簡単ではないわけです」

経済成長 実質2%前後の理由
秋元キャスター
「今月12日に、経済財政諮問会議の民間議員は、財政健全化計画の基本方針を公表しました。まず実質2%程度、名目3%程度を上まわる経済成長を実現。消費税率10%の引き上げを2017年4月に実施。それ以外の国民負担増は極力抑制する。2018年度の中間目標に、プライマリーバランス赤字のGDP比を1%前後とする案を提示、ということですけれど、伊藤さん、実質2%程度、名目3%程度。この経済成長を前提とする理由というのはどこにあるのですか?」
伊藤教授
「財政再建のために出た数字ではなく、もともと安倍内閣の数字です。だから、そういうマクロ経済的な状況を実現するということが成長戦略の目標であるわけですから、もちろん、それが実現できるか、できないかという議論があると思うんですけれど、それを目標とした前提の中で、財政健全化をどうやって実現するかというのが最初のポイントだと思います」
秋元キャスター
「そうすると、実現できるのか、どうなのかという話になるのですが、四半期ごとのGDPを見てみますと、最新のデータで、昨年の10月から12月の名目GDPが3.9%。実質GDPは1.5%ということで、名目GDPの方は目標を上まわっているのですが、実質の方は目標の2%に届いていないというのが現状なわけです。この実質2%、名目3%、これは実現可能な数字なのでしょうか?」
小幡准教授
「いや、無理でしょう。いわゆる潜在成長率という言葉が、長期の日本経済の実力を示しているんです。それは日銀の推計だと0から0.5。1980年代ぐらい、高成長していてバブル崩壊で下がってきたと。これはバブル崩壊で崩れたから元に戻るかというと、それまでがバブルで高過ぎただけなので、これが実力だと思うんです。だから、0と1の間で、内閣府が少し高め1ぐらい。日銀が0から0.5です。IMFとか、いろんなところを見ても、0から1の間ということです。と言うことは、長期の実力1だから、普通は妥当に目標を設定すれば1です」
反町キャスター
「そうすると、実質2、名目3…」
小幡准教授
「だから、無理です。それよりも高くなることもありますが。先ほど、秋元さんが出してくれた折れ線グラフは一見、現在の足元の数字が高いみたいですけれども、均すと2014年度は、ほぼ、実質だと0に近い形になってくると。それがほぼ実力で、それを上まわる何があるかというと、景気循環というのがありまして、実力がこうあった時に、景気はそれよりも良くなったり、悪くなったり、これは循環です。短期の波なわけです。現在は、経済学的に、普通の分析をすると、経済が過熱をして、実力を上まわっていると。黒田日銀総裁も、だから、インフレが起きるんだと言う。つまり、経済の実力よりすごくいっぱいつくって、だから、人手不足になっていて、完全実業率も、完全雇用に近い失業率の推移、3.4%になっていると。だから、経済、実力以上を発揮している。だから、インフレになると」
反町キャスター
「もう、現在の時点において、実力以上ですか。実質1.5の、名目3.9という」
小幡准教授
「そうですね。このデータを信じれば」
反町キャスター
「潜在成長率が、0.5%とか、1%だとすれば」
小幡准教授
「問題は、だから、短期には財政出動をすれば、GDPというのは増えるわけです。需要を増やすわけだから。でも、ずっとカンフル剤を打ち続けるのと一緒ですから、無理してやれば、実質2はある程度いくのですが、その結果、日本は借金が溜まってきたというのが現実。実力を上まわることを求め過ぎた。実力通りにやったら、行かないわけですけど、じゃあ、何もできないのかというと、そうではなく、この実力を上げましょうと。アベノミクスにたとえれば、第3の矢、成長戦略ということですけれど、この実力を上げる方向に長期戦略を切りましょう。ところが、これがなかなか上がらない。これはよく人口が減って、労働人口が減っていると。日本は潜在成長率が下がってきたんだけども、それは労働人口がどんどん減ってきているので、労働人口1人当たりで見ると、欧米よりも高く、先進国で最も優秀なわけで何の問題もないという議論も海外のエコノミストもあるぐらいです。ですから、そうだとすると、長期的に人を増やしましょう。働く人を増やしましょうという施策。これは賛否あって。僕、必ずしも賛成ではないんですけれども…」
反町キャスター
「それは移民の話ですか?」
小幡准教授
「移民はやり方。現在、働いていない人を働かせるとか、いろいろありますけれども、でも、普通は人間の選択によりますし、移民というのも、経済のためにやるのではなく、社会として多様な民族を持つべきか、持たないべきかということなので、もし経済成長でいくのであれば、いわゆるTFPという、要は、イノベーションを、技術革新が起き、進歩が起きれば、良くなりますというのと、もう1つは、資本ストックと言われている。モノで言えば、設備投資。人間で言えば、人的投資。つまり、たとえば、5000万人しか働いていないとしても、優秀な5000万人と、普通の5000万人だったら、感覚的にはあるんですけれども、こういうので見ると、そこまで上がらないんですけれども、そこが、この15年下がってきちゃったんです。モノへの投資も、デフレマインドも」
反町キャスター
「教育も含めて?」
小幡准教授
「教育も含めて。つまり、オンザジョブがすごく減って、つまり、正規雇用というフルタイムで、将来があるから、お前、修行をしろと。最初の5年は修行だ。次は、ちょっと前線に出て働いて、その後はトップになるためのミドル・マネージメントを勉強してとか、そういう人的投資を進めるような、能力を高めるような採用をせずに、その場しのぎの、現在1番安い人で、現在、前線で働く人を雇ってと、自転車操業をやってきたわけです。だから、人的資本も身につかない。設備投資も、この先どうなるかわからないから、設備投資も控えていると。現在、景気が良くなってきたから、企業はお金が余っています。じゃあ、設備投資をするかと思いきや、多少は増えていますが、ほとんどが海外に投資をするわけです、アジアを中心に。だから、構造的に、日本も成熟してしまったので、ここから、1から2にグンと戻すというのは、相当、奇跡的というか。戻した方がいいんですけれども、その奇跡に頼って、財政健全化のことを考えるのは、明らかに間違いではないかと」
反町キャスター
「実質2の、名目3という前提で、9.4兆円を何とかしようという議論。この前提が、夢物語だと言っているわけですか?」
小幡准教授
「そうです」
反町キャスター
「つまり、9.4兆円をいかに、どこからかひねり出して、持ってくるかという議論自体があまり意味がないと。本当だったら、たとえば、1の2みたいな、実質1%の名目2%とか、一段階低いところ、リアリティのある前提条件の下で、実質プライマリーバランスは何兆円届かないのかという議論をすべきだという、こういう話ですか?」
小幡准教授
「まったくその通りです」

赤字9.4兆円 どう解消?
秋元キャスター
「政府が目標、目指しています2020年度のプライマリーバランス黒字化ですけれども、内閣府の試算によりますと、2010年度に35.1兆円だった赤字が、2015年度には半減し、16.4兆円になるんですけれども、GDPの成長率が実質2%、名目3%程度になったとしても、2020年度には黒字化せず9.4兆円の赤字が残るとされています」
伊藤教授
「9.4兆円という数字が現在、1人歩きをしているんですけれども、ある意味でいうと、これは内閣府のやった試算ですから、あまり恣意的な条件を入れないで、機械的に計算をしているわけです。だから、歳入に関して見ると、税収弾性値というのですが、GDPの伸びと同じぐらいに、どんどん伸びていくだろうという前提でどこまで行けるかということと、ある意味で言うと、甘く見た中での9.4兆円なわけですから、そこは歳出、歳入を実際に見ると、詰めていける部分…」
反町キャスター
「甘く見たというのは、税収がそんなには伸びないと言う見立てをしている?」
伊藤教授
「たとえば、そこは議論になるところだと思うんですけれど、過去、安倍内閣が発足してからの税収の伸びというのは現在の内閣府の試算ベースのようなことから見ると、皆、上振れしているわけです。これは専門用語を使うと、税収の弾性値は1を超えているということで、これはいろんな議論があると思うんですけれども、要するに、デフレからの脱却。税収の、要するに、デフレからの脱却プロセスから、弾性値の方が大きく伸びているわけで、これの、いわば果実がどのくらい期待できるかということが、1つの論点だと思います。だから、歳出の方も、実際に歳出を見るとかなりいろんなところに無駄があるわけです。無駄という意味は、少し努力をすれば、そんなにいろんな公共サービスを見直さなくても、歳出が抑えられる部分で、そこをどこまで、これから詰められるのかというところが勝負だと思います」

税収増の可能性は?
反町キャスター
「1995年から2013年の平均で言うと、税収弾性値というのは3.0ありました。つまり、成長1%に対して、税収が3%伸びています。けれども、現在のところの、内閣府や財務省の予測においては、税収弾性値は1で計算をしている。つまり、内閣府の予測というのは、成長に対する税収の拡大というものを、あまりにも厳しく見過ぎているために、財政再建の道が実際の予測以上に厳しく、我々は見えてしまっているじゃないかと。こういう理解ですけれども、それでよろしいのですか?」
伊藤教授
「いや、厳しく見ているというよりは、比較のリファレンスポイントですから、長い目で見たら税収弾性値というのは、だいたい1になるんだと思うんです。だから、そういう意味では、そのベースで計算をしてみましょうという結果ですから。じゃあ、現実的に、現在のデフレから脱却がもしできた時に、その時に、税収弾性値がこれから数年の間にどう動いていくんだという、別の視点で分析をしていかなければいけないと思うんです」
小幡准教授
「まず3というのが高過ぎるんです。何で高いかというと、要は、先ほどの1997年か1998年、日本にすごい危機があり、また、リーマンショックがあり、要は、乱高下した20年です、18年というか。乱高下すると弾性値は大きく出るんです。良くなったり、悪くなったりすれば経済は揺れ動くわけですから、プラスにもマイナスにも。だから、大きく出ているけれども。長期で見ると、1であることは間違いないわけです」
反町キャスター
「1ですか?」
小幡准教授
「そうです、長期には。だけど、ポイント2は、これは政治の問題を経済のテクニカルな問題でごまかそうとする、置き換えている。つまり、先ほどの実質成長率に、名目3%、これで本当かと議論をしたんですけれども、でも、本当は、そんなの関係なくて、要は、だって1053兆円赤字があって、GDP比で見て250%超えていて、ネット、グロスで見ると、そうだけれども、ネットで見ると150%ぐらいとか。いろいろ議論はあるにせよ、それでも先進国でダントツに悪いのですから、それで、減らしていっても、マイナス9.4(兆円)、プライマリーバランスですら足りないのだから、減らさなきゃいけないことは間違いないので、できることは全部やらなければいけないわけです。でも、それは、政治決断がなかなかできないから、年金、医療、介護、全部カットすることができないから、経済の数字をいろいろ出し、それで埋めあわせようとして、そうすると、そこに議論が集中して、経済論争ができるのかどうかと。それとは関係なく、歳出削減やれるところを、全部やりましょうと。もし経済が良くなっていない…」
反町キャスター
「でも、税収弾性値が1か3かによって、もしこれで前提が3で皆さん考えるようになったら、それは9.4兆円のうちだって自然増収分というのがこれだけあって、実際に社会保障費を削るのがこれだけで済むという。全然、痛みが激変するわけではないですか?」
小幡准教授
「いや、違うんです。それは間違っている。それは、なぜかというと、税収弾性値だと自然に増えるから、痛みがない増税だと思っているのですが、経済にとっては同じ増税です。消費税を上げようが、税収弾性値がすごくて、法人税がすごくとれようが、民間経済から、政府で税金をとって、たとえば、10兆円あれば、10兆円、経済からとったことには変わりないです。これは政治的な痛みはまるで違います。つまり、消費税増税を問うて、選挙して負ける可能性があるというのと、何もしないで法人税がいっぱい入ってきて、これは企業にとって実は負担がすごく重くなっているけれども、政治的に何もしていなくていいから、そういう政治的には、ただどりだねという話なので」
反町キャスター
「ただ、社会保障費の歳出カットは、その分、少なくて済みますよね?」
小幡准教授
「だから、企業から、年金受給者に所得移転が起きているわけです。それを、何の法律も通さずに自然にできるという話だけで、経済へのインパクトで見れば、経済に対するマイナスインパクトがあることは間違いないです。10兆円の増税しているわけですから」
反町キャスター
「自然増収による企業活動に対するインパクトもいわゆる増税に、ないしは、別の歳出削減によるインパクトも、企業に対する圧力、ダメージは同じという意味ですか?」
小幡准教授
「同じです。企業というか、日本経済全体に対するダメージは、結局は同じなわけで、誰が負担させられているかというだけの問題ですので、税収弾性値が3だろうが5だろうが、そうなったら、その時、減税しなければいけないわけです。高度成長の時、弾性値はすごく大きいわけです。インフレがすごく起きた。と言うことは、目に見えないというか、皆が気づきにくいから騙されていたんだけれども、増税をしていたということです。だから、財政がすごく良かったと。あの時、所得税減税をせずに、カーブがきついまま行っちゃったら、おかしくなって、1990年代に入ってからフラットタックスというか、税の累進を弱くして、経済に活力を与えようとか、税調だと本間先生とか、そういう人がフラットタックスと言ってやっていたわけですけれど、要は、増税し過ぎちゃったんです。弾性値を議論してもあまり意味がなくて、つまり、思った以上に弾性値が高くて、景気というか、経済が成長して、税収がすごく増えたら、ラッキーだから、その分赤字が思ったより減るということですよね。思ったより減ったところで、まだまだ道が遠いわけだから、その時はラッキーと言って、減らせばいいだけなので、税収弾性値を3とか、それよりは、本当に高くてという前提でプランを組むよりは、1にして、1の下でプライマリーバランスを、バランスしようとしていて、弾性値が結果的に3でね」
反町キャスター
「少なくとも、僕は、2020年までをターゲットにずっと話をしているんです。2020年までに9.4兆円をどうしようかと。大変だと。税収弾性値を1にするか3にするかによって、その超えなくちゃいけないハードルが高かったり、低かったりするから、だったら、3の方がうれしいよねと。こういう話で僕はしているのだけれども。超長期の話をされているわけですね?」
小幡准教授
「ハードルがその先、20も30もあるわけだから、1個超えるつもりが、2個超えちゃったら、ラッキーですけれども、まだまだ遠いので…」
伊藤教授
「100で見積もるのが低いからですかね」
小幡准教授
「そう。だから、堅めに見積もって構わないわけです。景気循環から言えば、潜在成長率0.5%の中で実質1%台にいこうとしているわけですから、現在、そういう意味では、すごく良い時期なわけです」
反町キャスター
「好景気であると?」
小幡准教授
「好景気である。でも、現在やらなかったら、平均的に見たら、現在以上にやれるタイミングがないので、その時にギリギリのハードルだけでと言っていたら、それはまずいと思うんです」
反町キャスター
「現在、好景気なのに、甘いターゲット設定はするなと。こういう意味ですか?」
小幡准教授
「かつ、その実は、先ほど、先送りした話は、実は財政再建をした方が経済成長する。これは二律背反ではないですね。二律背反というのは間違いで、経済成長なくして財政健全化なしというんだけれども、実は、逆で、財政健全化なくしては、経済成長なしです」
反町キャスター
「財政健全化というのは、借金1053兆円が全部なくなった時という意味で言っているのですか?」
小幡准教授
「いいえ、そんなことではないです」
反町キャスター
「単年度のプライマリーバランスで言っているのですか?」
小幡准教授
「いや、両方ですね。全部なくならなくても、(借金が)減るだけでいいです。つまり、1053兆円を民間セクターから政府セクターに奪ってきた結果なわけです、借金というのは。つまり、1053兆円を民間投資に使っていたら、すごいことになっていくわけです。成長していく。ただ、成長機会がないから政府が代わりにやったというのもあります。ただ、それは成長力を上げる長期の投資は先ほどのTFPという生産性を上げるとか、設備投資をするとか、人に投資をするという話ではなくて、景気が悪くて失業が出てきちゃうとか、地方では皆に仕事がなくて、明日のご飯食べられませんと。そういうためにやっている景気対策としてやっていたわけです。それを使っちゃっているわけですよ。だから、その分、成長率が落ちちゃっているわけです。つまり、財政健全化をしていくと、借金の額が減っていくということは、国に、国民の、個人の金融資産が1600兆円あるとしても、1053兆円とられてしまったら、残ったお金少ないではないですか。それが増えれば、民間投資が少しでも増えると。国内に投げれば、海外投資すれば、それが収入になって入ってくる。政府は借金、低い金利でしか返してくれませんからあまり増えない。だから、借金を減らしていって民間にお金を流していけば、実は成長力が上がるんです。人的投資とか、設備」
反町キャスター
「順番が逆ですか?」
小幡准教授
「そうです」
反町キャスター
「現在、世間でやっていること?」
小幡准教授
「そうです。ただ、景気がすごく悪い時はすぐに景気を良くしなければいけないから、そのためには、悠長な長期投資と言っているわけではなくて、現在、需要を出しましょうと。民間が冷え切ってきて、誰も需要を出さない、投資もしないのだったら、代わりに政府がしましょう、景気を刺激して。これはいいです。ただ、景気がいい時は、それはまったく必要がないうえに経済成長を阻害することになるので、経済成長のためにやるのであれば、財政再建をした方が長期的にはいいです。短期の景気が悪い時にやってしまうと、元も子もないという議論ですけれども、現在、そういう状況ですかと。そこがポイントです。リーマンショック直後では、私が今日言ったようなことは間違いで、頭がおかしいねということになりますけれども、現在は普通の状態で、私からすればいい状態。黒田総裁から見てもいい状態。だったら景気のことは二の次、長期の成長を考えましょう。それだったら、財政健全化、歳出削減した方が経済成長力も上がると。だから、二択ではないです」

どう行う?歳出削減
秋元キャスター
「民間議員の提案が出ていますが」
伊藤教授
「そこにあるものの幾つかのものというのは、既に消費税を引き上げる時に、同時に設置された、社会保険国民改革会議の中で出ていることですね。簡単に言うと負担力がある人には、それなりに負担をしてもらうことを考えなければいけないと。たとえば、高齢者の方でもそれなりの所得がある方であれば、それなりの負担をしていただくということがあり得るのではないだろうか、それがそこで言う高額療養費制や後期高齢者の窓口負担ですね。所得や資産についてしっかり負担できる人にはしてもらうということが重要だろうと」
反町キャスター
「後期高齢者で、75歳以上で全額だったり、2割だったりと負担があるわけではないですか?そこの部分というのはもう年齢で切ることは止めましょうと?」
伊藤教授
「止めるよと言っているわけではない。年齢だけで切るよりは、経済力というか、負担能力も加味して考えたらいいのではないだろうかということです。さらに言えば、それの負担能力というのは所得だけではなく、たぶん金融資産ということもあると思うんですね。だから、年金でそれほど収入が毎月なくても、たとえば、2000万円とか、3000万円とか、たとえば、資産をお持ちの方もいれば、持ってない方もいる。その人達が一律に同じ負担というよりは負担できる人にはしてもらうという方向にいくことは考えるべきではないかというか。マイナンバーを使うということですね」
反町キャスター
「マイナンバー制度というものをもっと強化して、精密に詳細に各個人のフロー、月々の収入以外にも、ストックである株とか、土地とか、預金とか、そういう資産も全部わかるようにし、75歳後期高齢者の方でも、預金が、たとえば、5000万円あります、6000万円あります、株も持っています、ないしは家賃収入や土地も持っていますということになった場合には、それは2割とか、3割とか、4割とか、必要なものに、資産に応じた負担をやってくださいと、医療においては。こういうことでやっていきたい?」
伊藤教授
「マイナンバー制度をもし活用できるのであれば、ということですけれどね」
反町キャスター
「高所得者の基礎年金国庫負担相当分の年金給付の至急停止を実施、というのは?」
伊藤教授
「そういうことも可能性としてはあるというこうです。基礎年金は、税金から補填するわけですから、高所得者であれば、そういう税金負担による、年金の部分は支給がなくても、ある程度生活には支障がないと」
反町キャスター
「非就労のタイミングや人口動態の変化を踏まえ、年金需給時期のあり方を検討すべきとの指摘も、これはどういうことですか」
伊藤教授
「年金の支給年齢をいずれは上げていくこともオプションの1つとしてあるのではないかと。海外ではドイツがそういうことをやっているわけですから、そういうことをどう評価できるかと考えていく必要があると思います」
反町キャスター
「2018年度から保険償還額を後発医薬品価格に基づき設定すべきであるという、これはどういう意味ですか?」
伊藤教授
「することも考慮に値するということですけれども、日本は後発医薬品の利用値が非常に低いですよね。アメリカとか、おそらく8割ぐらい、ジェネリックがある場合は使っているんですけれど、日本は低いと。それを何とか上げていかなくてはいけないと、現在いろんなことをやっているわけですけれども、ドイツなんかはこういう制度に近いと言われているんですね。ジェネリックがある場合には、その分のコストにあう分は保険で見ても、敢えて少し値段の高い、いわゆるパテント切れの新薬みたいなものをやる場合は、そこは自己負担してほしいという制度になっているわけで、そういうことで、もし本当にジェネリックを増やすということは、コストを下げるということであれば検討する余地があるというのが、このポイントですよね」
反町キャスター
「報酬本体水準一般については、過年度のデフレ分についての段階的なマイナス調整を次回以降の診療報酬改定に反映するなど国民負担増を抑制…これを教えてください」
伊藤教授
「これはかなり政治的な論争が出てくる問題であると思うんですけれど、簡単に言うと診療報酬、つまり、お医者さんが受け取る、収入というのはいわゆる診療報酬として決まっているわけですけれども、それは国民が負担することになるわけですね。過去を見てみると、デフレであるにもかかわらず、物価の動きよりは診療報酬の伸びが高いわけです。ですから、そういう意味では、診療報酬というのは、一般的な物価の動きに比べると、高い利率で上がってきている。これは単にそれだけ診療報酬が大盤振る舞いになっているということなのか、あるいは医療が高度化しているものですから、そういう高度化に対するある種のフィーというふうに見るか、いろんな議論があると思うんですけれども、ただ、少なくとも今後の診療報酬を見る時に、全体的なマクロの、物価上昇率というものを見ながら、しっかりと決めていくということは重要なのではないだろうかということを指摘しているわけです。ただ、実際やろうとすると、なかなかいろんな議論が出てくると思います」
反町キャスター
「過年度のデフレ分、過去何年かに遡るかによって違うのですが」
伊藤教授
「一般的に過年度をどう解釈するのかということ。財政問題というのは生き物ですから、機械的にエスタブリッシュに削るとか、そういう話ではないですので、これはいろいろな政治の場で議論されて、決まっていくと思います」
反町キャスター
「ここまでの話はいかがですか?」
小幡准教授
「いや、全部賛成ですね。反対する理由はないです。全部やればいいのですが、要は、評論家的になって申し訳ないんですけれど、物足りないですよね。全部やっても、他にもいろいろあるとおっしゃられたので、9.4兆円には遠く届かないですよ。半分もいかないのではないですかね。基礎年金もどれだけやるかにもよりますけれど、届かないと思いますね。お話を聞いていても、申し訳ないのですが、すごく腰が引けていますよね。そもそも民間議員という呼び方を止めたらいいのではないですかね。おかしくないですか。だって、公務員で皆平等にやっているのに、私はアドバイザーで、オブザーバーで、一応コンサルタントとしてアイデアは提言しますが、皆さんで決めてくださいみたいな…」
反町キャスター
「とりまとめ側が明らかにそこに線を引いているような印象を受けます」
小幡准教授
「おかしいですよね。だって、経済諮問会議は平等なメンバーなのだから、ガッツリこれをやらなければ全然足りませんと。これでも足りませんと。何が何でもこれをやれというのが本来あるべき姿で、腰が引けているという言い方をするというよりは、たぶん向こうのまわし方自体も、民間議員という名前をつけられて、外野で、専門家で、アイデアだけ出してくれればいいと。あとは政治の問題なので、そう簡単にいかないけどということですけれど、だから、財政の問題は全部政治の問題で、政治的決断ができないのを、先ほどで言えば、経済の実質成長率が税収弾性値という話にすり替えてごまかすと。この時もいろんないいアイデアを出してもらうのはいいけれども、議論をしてくださいという話をするけれども、やるかどうかは全然わからないし、それでいくらかと試算しても、9.4兆円に届かないと思うんです。これで財政健全化をするということにはならないので、物足りないということですよね」

どう行う?歳入改革
反町キャスター
「マイナンバーを活用する。現在の日本における捕捉率の低さと、それに伴う不公平感というのはどうにもならない、そういう前提ということでよろしいのですか?」
伊藤教授
「それもおそらく1つ背景にあると思うんですね。だから、どうにもならないかは別にして、国民が納得するような財政制度というのは、もちろん無駄な歳出を抑えることも大事だけれど、歳入にしても、現在の中でどういう仕組みに改革ができるかということを議論していかなければいけないと思うんですよ。具体的な制度設計は税調とか、そういうところでやっていくのだろうと思うんですけれど、その時に資産課税とか、遺産課税については、避けて通れないだろうというのが、このメッセージだと考えています」
小幡准教授
「資産課税は難しいのではないですか。資産があればあるほど、逃れやすいので、海外逃避、いろんな形がやれて。地価の高い自宅を持っている人が結局割りを食うみたいな。本当の資産家は逃げられる。結果的には実効性は低い」
反町キャスター
「マイナンバーについては?」
小幡准教授
「マイナンバーは全面活用すればいいと思います。資産がある人ほど逃がすので。シンガーポール、スイス…結果的にはあまり得にならないと思います」
秋元キャスター
「歳出削減全体をどう進めていけばいいと思いますか?」
小幡准教授
「額が絶対的に足りないので、年金をカットするという話が出てこないのは、問題ですよね。先ほどの基礎年金部分というのは一部なので。大雑把に言うと年金を2割カットしないとつじつまがあわない。年金は賦課方式でやるんだったら、税金投入を一切止めるべきです。税金で補填するのだったら、補助金と呼んだ方がいいと。積み立て方式だったら、自分の積み立てた分をもらう。賦課方式だったら、若い世代からということで。年金制度の中に税金は最初なかったのですから、入れたのが間違いで、やれる範囲でやるということですから、そういう抜本的なことをやらない限り、2割カットというのは難しいと思います。そういう財政健全化の議論は逃げてきちゃっているので、そういう抜本的なことをやらないとプライマリーバランスの黒字化は無理です」

伊藤元重 東京大学大学院経済学研究科教授の提言:『財政の質を高める』
伊藤教授
「特に歳出というのは、価格に数量をかけたものですよ。たとえば、診療報酬にどれだけ病院にかかるかというところで、現在の日本の歳出を見た時にこの質の部分にかなり問題が多いです。たとえば、1人当たりの医療費がやたら多い県と、そうではない県があるという話だとか、あるいは本来であれば、そこまで国がやらなくても民間でできるものがあると。そこをできるだけ歳出の質を変えてくということがもちろん、足下で財政の歳出を抑えることにもなるんですけれども、長期的に日本の財政を良くしていく方向になると思うので、こういう財政構造改革ですから、単に数字のつじつまあわせだけでなく、財政の質を変えると。いろんなことを良い方向に持ってくということが大事だと思います」

小幡績 慶応義塾大学ビジネススクール准教授の提言:『歳出削減なくして経済成長なし』
小幡准教授
「財政再建というよりは歳出削減。増税よりは歳出削減の方がいいですよ。つまり、民間から消費税を上げて財政再建しても、その分、奪ってきちゃうわけですから、これは確かに経済成長にはマイナスですけれど。歳出削減は介入を減らすということですから、これはあり得るということです。財政再建というのは、自分のやれることをやったうえで、経済成長をすれば、さらに良くなるということで、経済成長を100%政府の政策でコントロールできるのであれば、それをやればいいのですが、そうではない。経済というのは民間経済で決まるわけなので、政府の役割としては歳出削減をして財政を健全化することによって、民間活力が自然にお金がまわって良くなると。やるべきことをやるという意味で、歳出削減を徹底的にやるということだと思います」