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2015年4月30日(木)
安倍首相の“史上初” 米議会演説発信と波紋

ゲスト

榊原英資
青山学院大学教授
岡本行夫
外交評論家

米国へのメッセージ全容検証
秋元キャスター
「アメリカ議会で日本の総理が演説するのは池田隼人元総理以来、54年ぶりだということですね。上下両院の合同会議という場では、安倍総理が日本で初めてということで、500人あまりのアメリカの議員関係者が演説の始まりから、じっと聞き入る中での、独特の緊張感が漂う中での総理のスピーチの内容はかなり練り込んだなという印象がありましたけれど、たとえば、自身の名前について触れている部分がありました。『私の苗字ですがエイブではありません。アメリカの方に時にそう呼ばれると悪い気はしません。民主政治の基礎を、日本人は近代化を始めてこのかた、ゲティスバーグ演説の有名な一節に求めてきたからです。』エイブラハム・リンカーンの演説をとりまして、ゲティスバーグの演説に言及をしているんです。『人民の人民による人民のための政治』という、アメリカ人にはなじみ深いもので、戦後、GHQによって日本国憲法の前文にも引用されたとされる一節ですけれども、まず岡本さん、この演説の組み立てですとか、議場の雰囲気ですとか、どう見ましたか」
岡本氏
「いや、良くできているのではないですか。ユーモアもたくさん入っているし、アメリカ人の心を捉える演説です。最初に、気負わずにスッと個人的なところから入っていってね。あとから出てきますけれども、政策的に言っているのはTPPと安全保障と2つぐらいに絞って、その他のことでずっと心を捉えていって、英語でおやりになったのは、良いことだと思いますよ」
榊原教授
「僕は、岡本さんと違って、この演説にかなり批判的ですね。最初に日本語でやるべきですね、日本の総理ですから。たとえば、習近平氏が行ったら、中国語でやるでしょうしね。それから、フランスの大統領、オランド大統領が行けば、フランス語でやるでしょうからね。それは当然、日本の総理として日本語でやるべきですね。池田隼人さんがやった時も、確か日本語でやっていると思います。それから、平和条約の時も、吉田茂は英語でやろうとしたんですね。彼は駐英大使ですから、英語がうまかったんだけれども、白洲次郎が止めて、日本語でやってくださいと言って、日本語でやったわけです。だから、当然、総理としては日本語でやるべきです。もちろん、英語の訳だっていいですよ。英語の訳は完璧なものを配っていいですけれど、そこが第一の間違いだった。日本はアメリカの属国ではないのですから。アメリカの言葉で喋る必要はない。それが1つ、非常にこの演説に対する強い批判ですね。英語で、日本の総理があそこで喋ったというのは初めてではないですか、おそらく。これはおかしいですよ」
反町キャスター
「両院合同会議のスピーチ、安倍総理が初めてということがありました。日本の総理が初めてやることにオーッと僕らも思ったんですけれど、韓国の大統領が6回。他の国はどうかというと、他の国も結構たくさんやっていて、旧枢軸国という言い方も変かもしれませんけれども、ドイツの首相もやっているし、イタリアの首相もやっている。その意味において日本がどうしてここまでやれなかったのか。これはどう見たらいいですか?」
岡本氏
「これは日本の総理大臣が出なかったというのはおかしいです。それは働きかけが少なかったし、そういう意味では、日本の首相を是非ここに立たせてやろうという応援をしてくれる議員さんが少なかったということもあるでしょうね。これが我々日本の努力がつながったということはあると思いますね」
反町キャスター
「一方、両院合同会議については、1941年12月8日、パール・ハーバーの翌日、フランクリン・ルーズベルトの演説がこの場で行われた。日本から卑怯なる戦争の騙し討ちにあった、パール・ハーバーをやられたと。フィリピンにも来ている、グアムも攻撃をしていると。いわゆる汚名演説というのですか。それが行われたのが両院合同会議だから日本は最後まで呼ばれなかったんだという、この解釈は当たりですか、外れですか?」
岡本氏
「それはもうないと思いますね。さすがにね。それよりは、だけど、韓国は随分、日本の首相を演説させるべきではないと妨害した。それはいろいろな情報からは明らかでしょう。また1つ、韓国の慰安婦の問題、アメリカの中での大変に大きな政治力を韓国系のアメリカ人が持つに至っていて。ですから、日韓関係の悪化というのは、韓国側の伝えるそのままの姿で、アメリカの国民に浸透してしまったという、こういう非常に深刻な問題がありますね。だからこそ韓国からは日本の総理大臣にはあそこで演説をさせなかった。これだけ安倍さんが、アメリカの議員さんから拍手をされて、喜ばれているのを見ていたら、韓国は楽しくないでしょうね」
秋元キャスター
「国内外から注目をされていました、戦後70年の歩みに関する安倍総理の演説。『歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈なものです。私は深い悔悟を胸にしばし、その場に立って黙祷を捧げました。親愛なる友人の皆さん、日本国と、日本国民を代表し、先の戦争に斃れた米国の人々の魂に、深い一礼を捧げます。とこしえの、哀悼を捧げます』とこのように表現をしたんですけれど、岡本さん、アメリカの人々へ向けられた安倍総理の想いをどのように受け止めましたか?」
岡本氏
「アメリカの議員さん達がスタンディングオベーションと言って、立って拍手をする。非常に感動的な場だったと思います、アメリカにとって。バターン、コレヒドール、珊瑚海、もちろん、真珠湾。ああいったことを正面から言ったのは非常に良かったと思います。あれと同じことを、いつの日か中国の全人代の議場で、上海で、南京で、重慶で倒れた人達に深い哀悼の意を示しますと言えるかどうかという問題はもう1つありますけれども、アメリカに対してはアレで本当に私は十分というか、一区切りついたと思います。それをRepentanceという、強い後悔の言葉ですよ。それを被せたということ。アメリカに対する総括としては、私はただ1つの点を除けば良かったと思います。その1つの点というのは、おそらく榊原さんがこれからおっしゃるであろうことのあとに僕が言った方がいいと思うので…」
反町キャスター
「榊原さんはいかがですか。総理のスピーチをどう感じましたか?」
榊原教授
「確かに、岡本さんの言った通りにアメリカに対する演説としてはDeep Repentanceですね、深い悔悟の念でいいと思うんです。ただ、これはおそらく中国、韓国も聞いているわけですよね。安倍総理の前の総理は、日本が侵略をしたと。それに対して深くお詫びをしたいということを言っているわけですね。Heartfelt Apologyということを言っているわけです。ところが、安倍さんはお詫びをしていないですね。侵略をしたとは言っていないんです。深い悔悟の念ということだけ言っているだけで、これは中国の人、韓国の人が聞いたら、これは違うのではないか、反省の念がないのではないかというふうにおそらくは思うんですね。ですから、アメリカに対してはこれでいいのですけれども、この演説はアメリカに対してだけではないです。世界中の人が聞いているわけです。特に、アジアの人が聞いているわけです。ここに対しての配慮が僕はなかったと思っていますね」
反町キャスター
「アジアに対する配慮。総理の今回のスピーチを抜き書きにするとこうなります。『戦後の日本は、先の大戦に対する痛切な反省を胸に、歩みを刻みました。自らの行いが、アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない。これらの点についての思いは、歴代総理と全く変わるものではありません』 と、岡本さんはこの表現では足りない?十分?いかがでしょうか?」
岡本氏
「これは、アメリカ国民とアメリカ議会に向けられたものですから、それほどの違和感はないですよ。RepentanceとRemorseの使い分けということもあまり深読みする必要はないかと。村山談話の痛切な反省の時の英語はRemorseを使っているわけで、それをアジア向けにもう1回使ったわけですね。同じ言葉を使うのも能がないというか、別の言葉の方が演説として響きがいいし、強いからRepentanceという言葉を使ったのではないか。アメリカに対してはより深い反省で、アジアに対しては軽いとは、僕は思わないですね。落としたのは慰安婦の問題だと思うんですよ。なぜかというと、慰安婦の問題というのは、アメリカの国内問題にもなってしまっているんですね。先ほども申し上げたように、韓国系の人達が、大変な政治力を持っている。現在、日系アメリカ人というのは80万人ぐらいしかいない。韓国系アメリカ人というのは145万人いるわけですね。もう一大勢力ですよ。彼らは、日本がけしからんということをあちこちでやって、慰安婦の像を全米に建てようという運動もしている。本当に申し訳ないけれども、しつこいぐらい、強く何度も何度も日本がやったことをアメリカに悪口を言ってまわっている。それがだいぶアメリカの議員さんの間に浸透してきていて、だから、このあとのアメリカのテレビ番組を見ていましても、専ら話題になっているのは、慰安婦問題で、安倍さんは何も言わなかったではないかということですね。日米首脳会談の直後、ホワイトハウスの芝のうえでやった共同記者会見でも歴史問題に対するアメリカの記者からの唯一の質問というのは慰安婦問題についてということで、アメリカ側の問題になっちゃっているんですよね。だから、これは韓国との間の問題だから、また別の場所でと片づけずに、この演説の中で最初からピシャッと言っちゃったら、これでアメリカとの関係での慰安婦問題というのは幕が引けたと思います。そこはちょっと残念だったという感じがします」
反町キャスター
「その言いぶりは、たとえば、昨日の記者会見で総理がおっしゃったのは、非常に悲しい、過去にそういうことがありました。いわゆる人身売買云々かんぬんという悲しい事実が歴史にありますと。国連の女性の問題などについても、日本はこれからも積極的に支援をしていきますと。このくだりで十分ですか?」
岡本氏
「いや、不十分ですね」
反町キャスター
「それでも足りない?」
岡本氏
「言うべきことは、日本は、実は何度も謝ってきているんです。ですから、確かに、その忌まわしい制度があったと。河野談話の言葉というのは、こういうふうに日本の過去の、安倍さん自身がそれを自分の言葉として言うのが嫌なら、このようなことを表明している日本の政府談話もありますと。私はそれを継承していますと。大事なのは、日本が既に何度も謝ったということですよ。これまで4人の総理大臣が300人近い元慰安婦の人達にお詫びの手紙を出してきているんですね。これは河野談話以上に、胸を打つようなお詫びの書簡ですよ。そんなことをアメリカ人は1人も知りません。韓国が日本は謝ってもいない。けしからんという間違ったキャンペーンを張るものだから、日本はなぜ一言も謝らないのだと。それがどんどん膨らんでいるんですね。安倍さんが過去、先輩の4人の総理大臣達が、もう300人近くの人達にお詫びの手紙を出しているんです。補償もしました。我々は、それでもなお反省という言葉が嫌ならば、この犠牲になった人達に心からの同情を申し上げますと言えば、この問題は済むんです。アメリカとの関係で。それがなかったのは残念だと思います」
反町キャスター
「大きなチャンスを逃しましたか?」
岡本氏
「慰安婦問題については、これから、また言えばいい話ですけれども。ただし、アメリカの議員さん達は日本が謝ったとは思っていないですよ。この件についての謝罪を頑なに拒んでいると思い続けていますけれども、現在も。謝って、何で言わないのかなと思いますね」
榊原教授
「ですから、ニューヨークタイムズが安倍さんの演説を批判しているわけですね。それはこの1点ですよ。謝っていないと。ですから、侵略ということも、彼は言っていませんし。従軍慰安婦のことも言っていませんね。それに対するお詫びも言っていないということですから。見る人からみれば、日本政府の態度が変わったのだということですね。ですから、それが大変、安倍演説に対する批判にアメリカの中でもなっているということはちゃんと認識をしておかないといけないですね」

成長市場とTPP
秋元キャスター
「注目されていたTPP交渉について、安倍総理は演説で『日米間の交渉は、出口がすぐそこに見えている』と発言しています。その前日、首脳会談の場でオバマ大統領は、『これまでの進展を踏まえて、より迅速な交渉の可決に取り組んでいく』と発言しているんですけれども、榊原さん、このTPP交渉の大きな節目となる首脳会談に向けて、事務レベル、それから、閣僚級と協議を重ねてきましたけれども、結局、大筋合意には至らなかったということですけれど、この進み具合、進捗状況をどのように見ていますか?」
榊原教授
「首脳間では決着をつけるということですけれども、なかなか難しい問題が残っていますよね。農業の問題だとか、自動車部品の問題だとかね。僕は、TPPを解決するのも大事ですけれども、より大事なのは、日中韓のFTA(自由貿易協定)だと思うんですね。つまり、アジアが現在、成長センターですから、TPPはどちらかというと、アメリカとか、オーストラリアがアジアの成長を取り込もうという、そういう1つの試みですからね。TPPに、僕は反対をするわけではないです。反対をするわけではないですが、TPPよりは重要なものが、実は日本にありますよと。日本というのは、アジアの国ですよと。この一連の演説の中で、気になるのは、アメリカとの対話ばかりに気を揉んで、日本がアジアの国だという認識をはっきり出していないことですね。だから、TPPについてもそうですよね。むしろ日本はアジアの一員ですから、アジアの中での連携を深めていくという方が、日本にとってはプラスですね。TPPがマイナスだというのではないですよ。TPPはアメリカにとってはプラスです。オーストラリアにとってもプラスですね」
岡本氏
「TPPは日本にとってもプラスです。だって、あれは、要するに、関税にしても、何にしても保護水準が現在、低いところが、1番メリットが大きいですね。と言うのは、皆一斉にゼロにしようということだから、高いところがこれから全部関税を撤去する。日本はもともと低いから、少しぐらい撤去をしたって、そんなに譲歩にはならない。それから、榊原さんがおっしゃっていることはわかるんだけれど、しかし、中国を入れた自由化交渉で、FTAというものが、どれぐらいのものが成し遂げられるのかというと、あれも反対、これも反対ですよ、中国はね。そうすると、低いレベルの自由化しか実現しない。それは、やればいいと思いますけれども、もう少し大学生レベルの解放をやらなければならない、日本、アメリカ、オーストラリア等の環アジアの先進国間で、お手本になるようなモデルをまずつくることが大事だと思います」
榊原教授
「岡本さんに反対ではないですけれども、日本の最大の経済パートナーは中国ですよ。アメリカではないです。日本の輸出の20%が中国に行っているんですね。日本の輸出の15%以下ですよ、アメリカは。ですから、日本がこれから交渉しなければならない、経済的にですよ。経済問題で交渉しなければいけないのは中国ですね。この中国との間、岡本さんが言ったように、中国はいろいろな反対をするでしょうと言いましたけれどもね。これは巨大な市場ですね。中国もある段階ではオープンにしようということを考えているはずですから。中国とどういう妥協ができるかと。東アジア共同体と言う人もいますけども、東アジア共同体に近づいているような感じになっているわけです、現在。そこを、ASEANを入れて、インドも入れて、中国、韓国というようなことで、経済的連携を深めていくということが実は非常に日本とって枢要な課題ですね」
反町キャスター
「中国の話でいうと、AIIB、アジアインフラ投資銀行の話があります。今回のスピーチで出なかったにせよ、昨日の記者会見で、オバマ大統領に対しても、総理に対しても、この関連の質問が出ていますね。それぞれオバマ大統領も総理も、いわゆるガバナンスの問題であるとか、そういう条件がクリアされれば考えるという雰囲気を昨日の記者会見で2人とも出されています。事実上、経済の問題、AIIBに関しては日米が中国という大きな経済帯をどのように見るのか。この議論が事実上のテーマになっているわけではないですか。この日米の対中国に対する連携をどう見て、将来性をどう見ますか?」
榊原教授
「AIIBでいうと、AIIBが本格的な国際金融機関になるかどうかというのは、まだわかりません。まだ不透明なところがあります。一方、ADB、アジア開発銀行というのがあって、これは日本が総裁を送って、主要なポストを皆、日本人がやっているわけ。中国は自分のある程度、影響力の強い国際機関をつくろうとするのはごく自然なことです。ですから、AIIBが本格的な国際金融機関になってくるというようなことが見えてきたら、これは日本も参加すべきですね。既にヨーロッパが参加していますね。ヨーロッパはおそらく中から透明性を増そうという方向で働きかけると思うんです。ですから、現在、日本は外にいますけれど、ヨーロッパと連携をして、AIIBが本格的な国際金融機関になるように働きかけて、そのうえで参加するということが非常に重要だと思いますね。AIIBを敵視する必要はないと思います」
反町キャスター
「日米一緒に参加する方向ですよね?」
榊原教授
「おそらくアメリカと連携しながらということが重要になってくると思います。ここでは連携をしないといけないですね」
岡本氏
「この点は珍しくというか、僕も賛成です。アジア諸国が使うのは、俺達のお金ではなくてはダメだぞという、アメリカと日本の考え方というのはどこかで負けていってしまうと思いますね」

安倍首相の熱弁と波紋
反町キャスター
「安全保障に関する総理の意気込みや、国民の受け止めをどのように感じていますか?」
岡本氏
「この反対論には、国内での安保法制もやらない前に、ガイドラインで先走ってやっちゃったと。それを夏までに成立させるといったような手続き面に対する世論の反発も含まれているんでしょうね、きっと。だって、ガイドラインそのものはそんなに大げさなことをやるわけではないですね。我々はつい忘れがちだけれど、憲法9条は厳然として存在するんです。つまり、自衛のため以外の武力行使は憲法違反です。ですから、どんなことをアメリカと一緒にやるにしても、それは日本の自衛としてのものだけですね。それをこれまで過重に縛っていた。そこのところをより自然にできるようにするだけの話ですから、私はそんなにおどろおどろしいものではないと思っています。それにもかかわらず、これだけまだ理解が得られていないというのは、政府の説明不足なのでしょうね」
反町キャスター
「たとえば、昨日の会見で、オバマ大統領の発言の中で中国という言葉が出て、尖閣という言葉が出て、昨日も今日も安全保障に対しては日米両首脳が中国に対して極めて強い警戒心をあらわにして隠さなかった2日間だと思います。これについてはどう感じますか?」
岡本氏
「それは現在、中国がやっていることを考えれば当然だと思います。突然、尖閣だって、あれは俺のものだと言い出したわけでしょう。例の有名な九段線という、この線を南シナ海に引いてですよ、この中には、300ぐらいの島がありますよね、全部俺のものだと宣言して、ベトナムとか、フィリピンとか、マレーシア、インドネシアなどと大変な緊張関係を持っているわけですね。ここ数年、特に習近平政権になってからの海洋での膨張主義というのは、アメリカと日本を心配させるに十分なものがあると思いますね。だから、それに対して現状を何とか維持する、平和と安定という現在の状況を力で変更することは許さないという政治的なメッセージを現在出すことは大事なことだと思いますね。昨年の4月にオバマさんが日本に来て、安保条約第5条が尖閣にも適用されると言ってから、中国がだいぶおとなしくなった。中国にとってみれば、日本は何とも怖くもないけれども、アメリカが日本と一緒にいるというメッセージを聞くと、彼らはそこで非常に慎重になるという意味で、私は良いタイミングで出たステイトメントだったと思います」
榊原教授
「若干意見が違うんですけれども、明らかにこの演説というか、声明は中国を仮想敵国にしましたよね。これは非常に明らかですね。ですけど、日本の外交ということを考えた場合、日本と1番経済関係の深い国は中国ですよ。ですから、日本は日米関係と日中関係のバランスをとるということが非常に重要なので、日米関係に傾き過ぎて、中国を敵視するような政策というのは決してとるべきではないと思う。これは日本の経済界が困りますよ、そんなことしたら。中国から日本の企業は出て行けみたいな話になったらね。これは困るので、そのバランスを考えて、あまり昔の外務省みたいにアメリカ寄りにならないで、中国もちゃんと大事にするという、そこのバランスを考えなければいけないと。今度の安倍さんのスタンスは、明らかにアメリカ寄り過ぎますよね。もともと安倍さんというのはそういうところのある人ですけれど、もうちょっと日中関係ということも考えてほしいと思いますね」
岡本氏
「日米、日中のバランスをとるというのは、そのことに反対はしませんが、ただ、民主党政権の時によく言われていた日米中生産関係というのは、あんなのはナンセンスだと思いますよ。だって、アメリカというのは、日本にとって唯一の同盟国、つまり、日本が攻撃をされた時には、アメリカが自分達の兵隊の血を流しても日本を守るという法律上、条約上の義務を持っている国。それと、日中関係が同列であるはずがない。だから、バランスという言葉は美しいけれども、その意味することが日本とアメリカ、日本と中国が等距離であれば反対ですね」
榊原教授
「それは安全保障という意味では日米が同盟国であって、日中はそうではないですよ。それははっきり認めます。ですが、経済関係という意味では、先ほどから言っていますけれど、経済関係という意味では日本の最大のパートナーは実は中国ですよ。ですから、経済と安全保障のバランスをとるということでもあるんです、日中関係と日米関係のバランスをとるということは。ですから、そこのところをちゃんと押さえないと、中国を敵視したら、それは日本の企業、日本の経済がおかしくなっちゃうんですよ。ですから、そのへんのことも考えなければいけないという、そういうことです」
秋元キャスター
「日米首脳会談について総合的にどう評価されますか?」
榊原教授
「先ほどから言っていますけれど、アメリカに対するメッセージとしては非常に良いメッセージを出していますね。ただ、それに偏り過ぎちゃって、アジアの中の日本という視点が欠けていますね。ですから、当然、演説はアジアの国も見ますから、それに対していろいろなコメントが出てきていますね、既に。あるいは批判も出てきていますね。そこのところが、若干配慮が足りなかったというのが、今度の安倍演説を全体として見た時の感想です」
反町キャスター
「そうすると、いわゆる8.15に出すと言われている70年談話。それに向けては課題を背負った訪米だった?」
榊原教授
「そう思いますね。あまりにも対米関係だけに偏った、アメリカに行ったんだからしょうがないという部分はもちろん、ありますよ。ですから、今度の70年を展望するような時に、もっとアジアの中の日本という視点を考えなければいけないですね」
岡本氏
「アメリカに行ったのだからしょうがないというのは確かにその通り。だから、あの演説全体として良かったと思うんだけれども、違う理由で榊原さんの言われたことに賛成なのは、もう少し日本がアジア情勢全体を、自分の目で見てどうかというのを教えてやることはあったと思いますね。最近、アメリカはオバマ大統領の今年の一般教書演説にしても、そういう外交的視点は本当にないですね。アジア・リバランスということを一言言っちゃって、でも、それが具体的にはどういう内容かということもキチッと言ってくれないし、だから、我々の目から見た現在のアジア太平洋の情勢は、こうなっていますよということを2国間関係だけではなくて、もう少し多数的な国際関係の中での日米関係だという面はもう少し言っても良かったのかなとは確かに思います。だけど、うまいですよ。最後の津波、原発に対する、アメリカの支援に対する感謝なんて、あの時は世界中の国が日本を助けてくれました。中国は15人の人を2週間送ってくれました。だけど、アメリカは2万人でしょう。ずっと一緒にいた。ああいうレベルで他の国に対する支援をアメリカがやったということはないですよね。アメリカ国民から寄せられた寄付金にしても、アメリカがありとあらゆる世界中の、それから国内のハリケーンのカトリーナに対する支援も含めても4番目か5番目ぐらいの多さですし、大切な国をいろいろと重視していくということは、間違いではないと思いますし、その点では、安倍さんは良い演説をしたと思っています」

外交評論家 岡本行夫氏の提言:『再びの前進』
岡本氏
「日本は太平洋戦争の総括をアメリカに対してしていなかったということも1つアメリカとの関係にブレーキになっていたと思いますけれども、そこは今度の安倍演説で外れた。もう1つ、前進を阻んでいたのは、日本は口だけではないか、レトリックはいいのだけれど、実際には危険を分かちあわないではないかと、特に湾岸戦争の時からずっとその冷たい底流は続いていたんですね。今度ガイドラインによって、実際にガイドラインというよりは安保法制によって日本は前に進みますと。だけれど、それを本当にやるのかどうかは、実はこれまでアメリカとの関係で日本がなし得なかった多くのことは憲法上の理由ではなく、自衛隊は危険なところへは送らないという政治的な決定ですから、そこのところはいくら安保体制ができても変わらない。そこをキチッと今回こそやれるかどうか、再びの前進をという意味です」

榊原英資 青山学院大学教授の提言:『Equal Partner』
榊原教授
「対等な立場でアメリカと向きあうのは重要だと思います。必要があればタフな交渉もするということですね。これまで戦後をずっと引きずってきて、何か日本がアメリカに従属しているような、そういう感じを持っている人が少なくないですね。ですから、日本もGNP世界NO.3の大国ですから、イコールな立場でアメリカと向きあう。それから、アメリカと一致しない部分だってあるわけです。そこはタフに交渉するということが非常に大事だと思いますよね」