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2015年4月28日(火)
地価“3分の1”予測 日本の住宅政策を議論

ゲスト

清水千弘
シンガポール国立大学不動産研究センター教授
キヤノングローバル戦略研究所上席研究員
内山博文
リノベーション住宅推進協議会長 リビタ常務取締役

個人資産・日本経済への影響
秋元キャスター
「衝撃的なデータから見ていきたいと思いますが、清水さんが試算したものですけれど、2010年と比較した場合の2040年に全国の住宅価値がどうなるかを都道府県別に色分けしたものです。内訳ですけれど、2040年に最も低い予測が青森県で28.9%。以下、北海道、秋田、福島、千葉、栃木と続きまして、関東一円もほぼ全域が3分の1になってしまうんです、30%から35%ですけれど。ちなみに、東京は39.5%となっています。住宅地価が3 分の1 以下になるというのはかなり衝撃的な数字ですけれども、清水さん、これはどういう計算をされているのですか?」
清水教授
「人口が減少するということと、現役世代が65歳以上の高齢者を支える、その比率を、我々は老齢人口依存比率と言っていますけれど、その比率が上がるということで下落が起こるということです。ここで重要な問題というのは、予測しているわけではなく、シミュレーションをしているわけでありまして、予測というのは、住宅の価格、不動産の価格というのは人口だけの要素だけではなく、たとえば、経済の成長とか、そういうものにも依存をするわけです。そういうものは除いて人口が減るということと、高齢化が進むという、この2つだけに注目をして、住宅の地価がどうなるかとシミュレーションしたら、こういうことになったということです。その中で下落率が非常に大きかったところというのはどういうところかということになるわけですけれど、また、小さいところはどういうところかということですが、2010年と比較しているところがポイントで2010年まである一定のところでも高齢化が進んでしまっているようなところ。これは、ここから高齢化の速度が落ちるわけですから、下落率が小さいわけです。ここから一気に高齢化が進むような地域。それが首都圏みたいなところが入ってくるわけですけれども、その速度が上がるところが、これから下落が大きくなってくると。そういうシミュレーションの結果となっている」
反町キャスター
「人口の推移と、もう1つ老齢人口比率によって割合が出されるという話ですが、よく、たとえば、うちの番組で経済の話をすると、経済が、景気が良くなれば、皆経済活動が活発化して、土地を買うから、株も上がるし、資産が上がるんだよという、この理屈。これを真っ向から否定しているシミュレーションではないですか?」
清水教授
「ええ」
反町キャスター
「これはどういうことですか?」
清水教授
「経済が成長する時というのは資産の価格というのは上がっていきます。でも、この時に考えなければいけないことというのは、どれぐらいの将来を見据えて物事を見るかということで、たとえば、日々動いているような金利であるとか、株であるとか、経済の活動の中で、不動産の価格も動いているわけですね。こういう非常に細かな動きということと、非常に長期のスパンの中で、マグマのようなエネルギーを持って、日本経済に与えていくインパクトということを考えると、ゆっくりではあるけれども、じわりじわりと打ち解けていくのが長期の、我々の経済学で言うと、短期均衡と長期均衡と言っていますけれども、長期均衡で考えると、人口の予想というのはこれから強く出てくる。それが、人口によって価格が下がるというメカニズムです」
秋元キャスター
「そうすると、防ぐための政策というのは何があるのですか?」
清水教授
「たとえば、アメリカの歴史、欧州の歴史、また、シンガポールもそうですが、移民政策。1980年代後半にアメリカでも有名な
“THE BABY BOOM, THE BABY BUST, AND THE HOUSING MARKET”
という、ハーバード大学のグレゴリー・マンキューという先生が書いた論文があるのですが、アメリカでも1980年代後半に出生率が大きく下がったんですね。その時に、彼らがやった研究というのは、アメリカの地価が25年かけて半分になるという予測を出したわけです。しかし、現在アメリカの地価は半分になっていないわけですね。そういう時、移民を強化するとか、いろんな政策を変更することによって、アメリカの地価というのは維持されているわけです。我々も現在3分の1になると予測しています。シミュレーションを出していますけれど、政策によってはそうならないような選択をとることもできるかもしれない。2つ目は、女性の社会進出というのも、これから考えることもできるわけですね。たとえば、我々のシミュレーションで、20歳から64歳、65歳以上人口というところで見ているわけですけれども、20歳から64歳の労働人口の内訳というところを見ると、男性の方が圧倒的に働いていて、女性が入っていないわけです。そこのパイが膨らめば、その比率を下げることができるかもしれないと。ただ、65歳以上というところでのシミュレーション、老齢人口と置いていますけれども、それを拡大してもいいかもしれない。定年延長というのもいいかもしれない。もちろん、その中で労働者の配置換えというのもありかもしれない。いろんな選択肢を我々は持っているはずです」
東京の住宅地7割下落も
反町キャスター
「言葉が悪いかな、歩留まりの良いところと、下落率が著しいところの、違いというのは、それは、たとえば、現在言われたみたいな住宅の減少率だったり、高齢化率だったりするというのは、自治体の政策によって、2040年、現在行われている自治体の、いわゆる人口対策とか、高齢化対策みたいなものも見たうえで、ここから、この地域というのは、30年後、25年後?こういうような変化をするだろうという、それぞれ自治体の政策を見て判断をしているということですか?」
清水教授
「いや、これは本当にマクロのシミュレーションだけですから、マクロ的に、このぐらいのインパクトがあるというのを見ているんです。今度、自治体の政策になってくると、どういうことが起こるかというと、我々は、たとえば、3分の1になるということは平均として3分の1になるということですね。そうすると、価値が変わらないような、同じ1つの、たとえば、練馬区の中でも価値が変わらないところがあるかもしれないと。また、ゼロになってしまうところがあるかもしれない。そういうものをあわせて3分の1と言っているわけです。そうすると、あとから出てくる議論ですけれども、同じ1つの住宅でも価値が維持できない。リノベーションとかをして価値が維持できる可能性があるかもしれないし、エリアとして、きちんとマネージメントされたら、価値が生きているような理由があるかもしれない。練馬区の中でも。逆に価値がグーッと沈んでしまうところが出てくるかもしれない。空家だらけになってしまうようなこととか。そういうものを含めて、3分の1ということですから、自治体が考えるべきことというのは政策的にいかに残される地域というのを考えていくのか。ただ、地方都市でも起こっていますけれど、コンパクトシティみたいに中心にどんどん機能を集中させていくとか、そういうようなことを考えていかなければいけないということだと思います」
反町キャスター
「たとえば、地方都市とかで、一般に地方と言われるところだったら、そこでいかに希薄な人口を1点に集めるかという政策で、そこでコンパクトシティ構想は終わっている。その中で、いろいろモノや人をまわしてというのはわかるんですけれども、一応、東京ではないですか。杉並、練馬と言ったら、それなりに現在の時点においては、おそらく家を買うにしても、高いところですし、住宅的な、環境としても、評価が非常に高い地域だと僕は思うんですけれども、そこが落ちていくというのは、まさに、そういう経済の拠点になるような部分がないという、そういう見方になるということですか?」
清水教授
「そこが少し都市の政策とマクロのインパクトを分けて考えなければいけないと思うんですけれども、こういう都市の真ん中で、人が集中して、人口が集積をしているようなところでというと、マクロのインパクトの方が強く出てきていると思うんですね。そうすると、こういうところで、人がいるんだけれど、どんどん下がっていくというのは、高齢化が進むということです。そういうインパクトが強く出てくるということです。そうすると、政策というのは、地方都市、おっしゃられたようにコンパクトシティとか、そういうものというのは希薄なところというものを、どう再建していくかということだと思うんですけれども、23区みたいなところは、また、別の施策を考えなければいけないということだと思いますね」
秋元キャスター
「そうすると、東京に近い、たとえば、千葉ですとか、神奈川ですとか、いわゆる東京のベットタウンの部分というのはどうなっていくのでしょうか?」
清水教授
「ベッドタウンの方は、地方都市化と思っていただいていいと思うんですね。いわゆる現在、地方都市で起こっているようなことが、ベッドタウンのようなところで起こる。人口も減るし、高齢化も進むし、空家も増えるし、というようなことが出てくるんですね」
反町キャスター
「それは、でも、政策によってどうこうできるものではないですよね?おそらくは」
清水教授
「ええ」
反町キャスター
「流れとしてもどうにもならない。じゃあ、ベッドタウンになっていて、そこが、たとえば、地方の、いわゆるニュータウンと呼ばれるところにおいては、高齢化がガッと進んでいったりするわけではないですか?」
清水教授
「うん」
反町キャスター
「それを食い止めようと思っても、どんな政策が成し得るのか?」
清水教授
「ここまで来ると、資産価値を維持しようという政策目標そのものが間違っていると考えた方が…」
反町キャスター
「それは狙うなという意味になってしまいますよね?」
清水教授
「そうです。住宅は、あくまでも資産として形成をするという局面があったかもしれませんけれども、資産として扱うというのが、むしろそこにどう住まうのかという資産から資源へという見方で考えていかなければならないと思うんです。これは、有名なマサチューセッツ工科大学の先生が、地下が上昇する時というのは、住宅資産として見るべきだと。資産価値が下落する時、資源として見るべきだという論文を書かれていますが、まさに、そういう局面が現在、日本にきている」
秋元キャスター
「資産から資源として見る時、どう見方を変えたらいいのですか?」
清水教授
「たとえば、資産として見るということであれば、家の中でどう住まおうか。要するに、どう使おうがまったく関係ないわけですね。空いても別にいいわけです、資産だったら。上がるだけですから。それだけになっているわけですから。資源というのは、使って、我々は経済界で効用を得るという、効用をどれだけ得ることができるのかということを考えなければいけない。それを考えるべき。それが価値になってくると、なってもいいわけです。逆に、資産が下がったからと言って、家から受ける機能は変わらないわけですね。そこで家族と一緒に、食事をするとか、ただ、誕生日を一緒に祝うとか、お正月を祝うとか、クリスマスを祝うとか、そういう時間の共有をするというのが家ですから、その機能というのは資産価値から解放されているはずですね。そういうふうに住宅を捉え直すということがいいのではないかなと思っています」
反町キャスター
「つまり、土地神話を捨てて、土地信仰を捨てて、価値観もライフスタイルも変えないと、この変化にはついて行けないぞと聞こえます」
清水教授
「ええ。たとえば、企業にとっても、先ほどの商業地の話もそうですけれども、企業が資産価値として、その資産のキャピタルゲインを狙って所有をしますということではなくて、我が社は、たとえば、こういう製品をつくる会社ですと。そのために、土地が必要ですと。土地を使って、付加価値を付けて、製品をつくって、社会に財やサービスを提供していくと。そういうための資源として捉えてしまえば、それに見あった価値がつくわけです。そういうふうに我々はファンダメンタルという言い方をしていますが、ファンダメンタルな価格に、その価値を修復させていくと。そういうふうに考えていけば、別に、キャピタルゲインさえ下がっていなければということですけれど、土地の価格が下がろうと、経済に対する我々の国民生活や、経済活動に対するインパクトはそれほど大きくないと思っています」
反町キャスター
「清水さん、アベノミクスをどう見ていますか?」
清水教授
「それはどういう意味でおっしゃっています?」
反町キャスター
「アベノミクス、つまり、株とか、土地とかの資産の価値を上げ、それで、いわゆるそれを持っている人達の裕福感というのか豊かさを、金を使ってもらって、まわして、それでトリクルダウンですか、今は誰も言わなくなってしまったんだけれども、経済全体をまずまわしていこうという発想だと思っているんですよ。でも、現在のお話だと、アベノミクスは3年、5年、10年もいかないかな、5年ぐらいのスパンで見ているとしたら、2040年の日本を見た時には、明らかにその考え方は、日本は立ち行かない状況があるよと、この瞬間やっているやり方は、20年後には通用しないよと言われているように、僕には聞こえます。いかがでしょう?」
清水教授
「そういう意味では、アベノミクスというのは第1弾目というのは、ある程度、評価を得ていると思うんですね。アベノミクスの1弾目というのは、金融政策をいわゆる緩和をして資産価値を上げるという施策が、1弾目は成功している。次、2弾目、3弾目に行こうとすると、経済そのものの生産性を、というところを上げていかなければならないということになってくると、それはまさに、そういうことを目標とされていますけれども、そこに次、どれぐらい生産性を改善できるかというところが、次の評価につながってくるという話ですから、私は不動産の経済学者をしていた時は、土地の生産性をどれだけ上げることができてくるのかということに次、注目しているというのがあります」
反町キャスター
「その意味でいうと、現在の政策ではなくて、いわゆる成長戦略がどうこうとは言いませんけれども、土地をいかに安く、土地の利活用をどうするのかというビジョン、ないしは地域とかそういう部分の活用の話がないと、先行き、人口が減っていく、高齢化が進んでいく日本の中で、本当の成長戦略というのが、そこにマッチしてこないのではないかという話に聞こえます」
清水教授
「不動産と考えると、たとえば、本来、不動産を持っていると、より生産性を上げることができる企業が出てきますと。逆に生産性が低い企業が、土地を大量に持っていたとしますと、そういうものを入れ替えすればいいわけです。生産性の低い企業がありますと。それで持っている土地が違う企業に移ったら、もっと生産性を上げてくれると。土地の生産性を上げることができるかもしれないということがあるわけですね。それを、リアロケーションと我々は言っていますけれども、そういうようなものをどんどん進めていくと。それで、企業不動産戦略という言い方をしていまして、企業の中で、たとえば、キャピタルゲインを狙って、不動産を持っている人達がいるとするならば、そういう人達の手から解放してあげて、それを使って、もっと有効に土地活用をやって、経済に対して生産を上げることができるならば、そこに移してあげる。そういうものが次に必要になってくると思うんですね。空家もまったく同じで、現在持っている人が、たまたま使えないというのが空家なわけでして、それを使える人が世の中にいるわけですね。そういう人達にちゃんと渡してあげればいい。昔、不良債権という言葉がありました。あれは別に不動産は何も悪くなかったわけですね。不動産についている権利関係が崩れていたということで不良債権と呼ばれていた。今回の空家も、ただ、きちんと使われていない土地も、悪くはないですね、空き地とか。でも、それを持っている人達がちゃんと有効に使えないということが問題なので、ちゃんと使える人にそれを移してあげる。そういう戦略をとっていけば、経済の生産性は上がってくる。そう政策を転換していくということを、我々は研究としてもやっているところです」
反町キャスター
「そもそも土地とか、家に対する考え方をどう変えていくかという資産教育というか、土地教育というか、そういう考え方から変えていかないとダメだと。こういう話になりますよね?」
清水教授
「ジョン・スチュアート・ミルという方が昔、『富める国の地価は上がり続ける』ということを言ったわけです。経済の成長と、いわゆる地価の上昇というのは、パラレルだと、我々はずっと考えてきたわけです。これから人口が減少するとか、高齢化するというのを。日本というのは2000年の歴史の中で初めて、これぐらいの速度で人口減少、または高齢化が進むという。これはどこの国も経験したことがなかったんですね。そこに対して、日本は現在しているということを考えると、これまでのような、我々の経済学で学んできたような枠組みの中では、少し難しい問題に直面していることは確かだと思います。そうすると、正しく資産、土地というものと向きあっていく。住宅、または不動産と向きあっていくというのは、どういうことをしたらいいかというのは、現在、我々に問われていることだろうと思っています」

家は買うべき?借りるべき?
反町キャスター
「下世話な話ですけれども、現在は家を買わない方がいいかなと。そういう話、土地を買うのは、現在ではないという、そういう話になってくるのですか?」
清水教授
「それも資源として考えると変わってくるんですね。資産として考えれば、下がるものに対して投資をする人なんかいないわけですね。しかし、私も子供が3人いますけれども、たとえば、現在育ちつつありますけれど、子供が小さい時にこの子達と一緒にこういう時間を共有したいと思ったとしますと、子供達が家にいる時間というのは限られているわけです。将来、巣だってしまう。その時間を買いたいと思えば、資産価値がいくら下がろうと、その時に住宅を買いたいと思うわけですね」
反町キャスター
「でも、それ、貸家でもいいのではないですか?」
清水教授
「そうです。そこが1番大きな問題で貸家にそういうスペックのものがあれば、我々は選択ができるわけです。でも、そういうような貸家市場に対して、そういう選択肢が現在、与えてられていないとするならば、買うしかないということであれば、その時間を買うために買えばいい。貸家市場があって、そこで借りられるような貸家があれば借りればいい。もっと純粋に、買うとか、借りるとかを考えずに、住宅を使う、資源を使って、どういう効用を得たいのか、生活をしたいのか。企業だったら、どういう成果物にしたいのかと考えた方がいいというのが、先ほどの話です」
反町キャスター
「資産として見るなという、そういう話ですね?」
清水教授
「そうですね」
内山氏
「最近よくリノベーションという言葉が使われるようになったように、古い住宅やマンションを活用して、自分らしい暮らしを実現するというスタイルが、だいぶ若い方を中心に出てきまして、実際、中古住宅を買ってもいいという方が以前は50%以下だったんですけれども、現在50%を超えて、選択肢としては広がってきていると。そういう状況の中で、まさに我々が何をするかということにつながると思うんですけれども」
反町キャスター
「たとえば、清水さんが言われたみたいに実際、売り手、買い手の人達を見た時に、かつてのように家を買う、中古住宅でも買う資産でしょう。必ず値上がりをするから、現在買っておいて、値上がりして、30年、40年かけて払って、終わったあとに土地が残るから、それでというような感じで買っている方というのは、まだ多いですか?それでも、将来はわからないけれども、これは資産として買うのではなく、まさに、清水さんが言われたみたいに、資源として現在、これを使いたいから買うんだよという、そういう感覚の人というのはいますか?僕は、少なくともあまり見たことがないですよ。どうですか?」
内山氏
「まさに、現在中古住宅を選択する人が増えてきたというのはそういう点にあると思っていまして、もちろん、中古住宅には、ネガティブにそれしか買えないという方も、中にはいらっしゃるかもしれませんが、中古になった瞬間に選択肢が広がるわけですね。場所にしても、立地にしても、駅距離1つとっても、広さも含めて。選択肢の広がりを活かして、自分が求める住宅を得るのに1番近い方法が中古住宅を活用し、リノベーションするというスタイルが波及している1番の大きな要因になっていると思いますので、僕らはよくアンダー35という言い方をしますが、この世代を中心に、そういう発想が広がっているような気がします」
反町キャスター
「そういう価値観が、たとえば、将来的に、2040年になったら、地価が3分の1になるからだとか、そういうことではなくて、自然に、そういう35歳以下の人達の間に、資産だとか、何だとかということよりも、目の前のモノをいかに使うのか。住みやすいからいいよねという感覚が広がってきている?」
内山氏
「広がってきているということですね。まさに、どう住まうかということで」
反町キャスター
「何で変わってきたのですか?別に地価が値下がりするからとか、そういう判断基準ではないですよね?」
内山氏
「でも、何となくその世代というのは、日本の将来に対して、あまり明るい展望を持っていない世代と言われていますね」
秋元キャスター
「お金の面が大きいのではないですか?」
内山氏
「まさに、預貯金も含めてなかなかない中で、確かに平均年収も現在、非常に、ここ15年で100万円ぐらい、30代の世代は下がっていると言われていますように、確かに、経済面の厳しさもあるかもしれませんが、感覚的には、それだけではなく、ポジティブに、賃貸派もその1つだと私は思っています。その中の、1つの現象として中古住宅を活用するというユーザーが増えているというところかなと思っています」

中古住宅の資産価値が低いワケ
秋元キャスター
「空き家の増加が問題になる中、なぜ新築なのでしょうか?」
内山氏
「そうですね。これはなかなか一言では正直申し上げにくいんですけれど、これまで日本の住宅政策そのものが、税制含めてかなり新築優遇政策を取り続けてきたということが1つ、それがまだ生き続けているというのが大きな要因ではないのかなと思います。現実的に現在の新築マンションを含めた価格上昇も、結果的に消費者が決めているというよりは、どちらかと言うと、新築が現在9割と言われている世の中で、価格を決めているのは結局、不動産会社、実際に土地を扱っている業者がどう関与しているのかというところが私は大きな要素を占めていると思っていまして、結果的に消費者の受給バランスで決まっているというよりは、これまで新築を優遇し続けてきた業界の要因が1番大きいと思っているんですね」
反町キャスター
「政府主導で新築住宅を購入しやすい社会になっているのですか?」
内山氏
「はい。住宅ローンそのものの仕組みがインフラとして非常に整備されてきたと。要は35年、現在は1%しないような変動金利で借りられるわけです。こうした住宅ローンの仕組みをつくったというのもある意味1つ(新築住宅を購入しやすいの要因)」
反町キャスター
「中古住宅には適用されないのですか?」
内山氏
「厳密に言うと、35年の長期というものは使えたり使えなかったりという状況で、築年数等によっての制限もありますし、取引に関わる仲介業者によっても扱えるローンの種類が違っていたり、かなりそこは不透明という言い方は適切ではないかもしれませんが、相談しにいくところで答えが違ってくるというところもあるので、なかなか一貫したあと押しがない状況も1つあります」
反町キャスター
「公平性の点において問題がある?」
内山氏
「そうですね。それともう1つ、1番わかりやすいところで住宅ローン控除という言葉を皆さんもお聞きかもしれません。つまり、新築を買うために、借り入れをすると、その借り入れに対して支払っている金利が戻ってくるという政策ですけれど、現在の中古住宅にも適用になるようにはなってきたんですけれど、もともとは新築にしか適用にならない。要は、税制も含めて取得する時の不動産取得税ですとか、固定資産税、全ての税金が新築は優遇されてきた。中古は優遇されないという時代がかなり長かったんです。これが現在、ようやく中古にも少しずつですが適用される。ある一定の基準を越えるものに関しては適用されるようになってきたので、だいぶ良くなったと思うのですが、ただ、実際そういうことを知っている消費者なり、知っている不動産会社がどれぐらいいるかというとまだまだ政策の認知度も上げられていないというところがあるので、まずは新築のショールームを見に行くというところがスタートになってしまうことで、実際、低金利ですから買えてしまうわけですよね。これだけの低金利が続いていますと、本当にそういう意味では、本来買えない人まで買えてしまうという状況もありますので、当然一時取得者中心のマーケットですから、初めて家を買う人というのは、当然最初は妥協したくないと。いきなり中古を買うというのは、まだまだ日本の文化の中には何となく妥協したのではないかと、周りの友人からも思われるという、社会もある意味あと押ししているところがあるのではないかと思います。まず新築から検討するという状況ができているのも、こういった着工数をまだまだ維持させている1つの要因かなと思います」
秋元キャスター
「中古住宅流通シェアでアメリカは89.3%、イギリスは88.0%。日本は14.7%。なぜ諸外国では中古住宅の取引が活発なのでしょうか?」
内山氏
「いろんな要因があって、一概にこれがダメとは思ってはいないのですが、現在、欧米でどういうことが起きているかというと、当たり前のように古い建物を売り主が自ら手を加え、高く売るために、リファビッシュという言い方しますが、リファビッシュして、売りに出すと。買い手がそれを実際どういう性能が維持されているかインスペクションと言って、キチッとその建物の性能を第三者の機関に査定をしてもらって、それに基づいて鑑定評価を得て、きちんと先ほどのファイナンスの問題も含めてクリアして、家を買うという文化が普通にもう根づいているというところがたぶん大きいと思うんです。その点、日本は現在まだまだ築20年経つと、一軒家でいうと価値がゼロと言われていて、先ほどのような銀行も耐用年数を20年か25年ぐらいで見て担保評価を出す仕組みになっていますから、結果的に20年経った家というのは、建物部分には価値がない」

中古住宅の価値向上のために
秋元キャスター
「中古住宅の資産価値を維持するためには何をしたらいいのでしょうか?」
内山氏
「これも1つの答えで、全て劇的にこの(住宅投資額累計と住宅資産額の差)500兆円が埋まるという世界ではないと思うのですが、そもそも日本人の中には何となく劣化という言葉がある。まさに中古住宅という言葉もそうですが、何となく時間が経っているものというのは、古くて悪いものであるという概念が染みついているところがあると思いますので、キチッと建物自体にまず問題がないんだということをプロとしてまず見える化していく。また、そういった事例を多く増やしていくということが最初に大切なことではないかと思います」
反町キャスター
「海外の住宅事情では、中古住宅は、日本ほど下がらないものですか?」
内山氏
「現実的にアメリカでの資産では(新築と中古が)ほぼ同等、もしくはそれ以上」
反町キャスター
「日本で社宅だったマンションを外面も全部補強なり新しい設備を入れ、価値としてはどのくらい高まるものなのですか?」
内山氏
「これはユーザーがどう判断するかというところで、我々が判断するところではなかったんですけれども、この事業を10年前から始めているのですが、10年前はまだまだリノベーションという言葉も定着していませんでしたし、一般的にマンションの中をリノベーションするだけであれば、新築価格の7割とよく言われていたんですね。我々の一棟まるごとのものであれば85%ぐらいを1つの、これはあくまでも私どもの会社の試算ですので一概には言えませんが、そのぐらいまでは全体の見える化とバリューを上げたことで、評価されたとは思っています」
反町キャスター
「築20年だよ、フルリノベーションだよと、ユーザーの反応はどうなのですか?」
内山氏
「もちろん、最初はうがった見方というか、本当に大丈夫なのかと。ですから、そこはキチッと第三者機関の調査データ等を持って状況をお伝えする。その内容を持って、きちんと改修する部分を改修する。ただ、1番大事なのは、特に共同住宅マンションの場合、あと戸建ての場合もこれからそうだと思うのですが、それをこれからどうやって長く維持させていくのかということをキチッと説明して、業界としてもそれをキチッと見える化を推進していく、まさにマンションで言えば、管理会社等が主体となって、こういったものをあるお金でできることをやっていくというより、きちんとさらに長期の、現在新築も30年とか、50年の長期修繕計画しか立てていないんです。それを築80年から100年ぐらいまでをメドに長期修繕計画を立てるようにし、それをユーザーに開示するようにしているのです」
反町キャスター
「20年のやつを買い取って、修理し、築21年で売るわけですよね。その後、60年間面倒を見るよという計画なのですか?」
内山氏
「そうですね。我々が面倒を見るというよりは、管理組合がこういう形でお金を積み上げていけば、維持していけるはずですよということをキチッと見える化して、将来にあたってもハードギアとしての資産価値が適切に維持されるということを示していくという努力もしていかなければいけない。だから、戸建ても本来、同じだと思うんですね。まさに建てられた時に新品で1番価値が高い状況で、ある意味、ほとんどメンテナンスをしなくていいかの如くつくられてきたと思うんです。どんなものでも手を入れていかないと、どんなにいいものつくっても長くは持ちませんし、周りから見てユーザーからも評価されないという形にもなりますので、きちんとメンテナンスを続けていくということを、どれだけ我々が消費者に対してあと押ししていけるかということが、実際に今後建物価値そのものを顕在させていくうえで1番大きな1つのポイントになってくるかなと思います」

清水千弘 シンガポール国立大学不動産研究センター教授の提言:『Open the Door』
清水教授
「誰かに扉を開くということになるわけですけれども、くどいようですけれど、我々が行ったシミュレーションというのはあくまで人口減少と高齢化によってどのようなインパクトがあるのかというのを見ているわけです。こういうものをこれから我々がどう対応していくかというのを考えた時、3つぐらいの扉の開き方があるだろうと考えています。1つは、諸外国がやってきたように移民政策というのが1つのオプションとして考えられるでしょうということです。2つ目は20歳から64歳という生産年齢人口に対して65歳以上の比率が上がることによって、地価が下がるということを申し上げたわけですが、この20歳から64歳の働き方ということを見た時に、女性が必ずしもそこにきちんと労働力として参入できていないというのが日本の特色であり、そういう意味で、そういう人達にドアを開くというのもあるもしれません。労働市場の中で言うのであるならば、本当に適職に就いている方々というのも限られているかもしれない。きちんとドアを開いて違うところに移った方がいいかもしれない。そういう意味で、労働市場に対してもっともっとドアを開いていくということも考えられるだろうと思っています。もう1つ、日本というのは65歳以上人口というのを老齢人口と定義しましたけれど、世界の最たる長寿国なわけです。そうであるならば、もう少しこういう高齢者の方々に対して労働する機会をもっともっと与えていく。そういう意味で、定年を延長するとか、みたいなことも含めて高齢者に対してドアを開いていく、そういうようなことが必要なのではないかと思っています」

内山博文 リノベーション住宅推進協議会長の提言:『建物価値の見える化』
内山氏
「この見える化によって、いろんな金融サイド、住宅ローンの問題とか、それに対するファイナンスの問題をクリアしていかなければと思ってはいるんですけれど、まずは消費者が安心して、古い家を取引できる状態をつくるということが必要だと。単に安心して安全に住める家ということだけではなく、それを活用することで、非常に価値のあるものであるというような、活用の方法の多様化みたいなことも、見える化の次の一歩先、その先には考えていくことで、たとえば、買える方が、家を一軒だけではなく、郊外にも一軒持ちながら家を持つとか、また、最近言われていますように海外からの旅行客が宿泊できるような、そういった用途にも活用できるようにしていくことで、何らかの価値が出てくるわけです。そういった建物価値があるということがわかると、そういったことの投資にもどんどん消費者が動いていくと思いますし、いろんな意味で建物価値を見える化してインフラを整備していくことが大切かと思っています」