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2015年4月22日(水)
アジア・アフリカ会議 安倍演説と日中会談は

ゲスト

小野寺五典
自由民主党政務調査会長代理 元防衛大臣 衆議院議員
天児慧
早稲田大学アジア太平洋研究科教授

5カ月ぶり日中首脳会談 会談の意義と日中関係
秋元キャスター
「日中首脳会談で一致した内容として戦略的互恵関係の推進がありますが、これについてはいかがですか?」
小野寺議員
「これは従前から日中の両国間でよく練られた言葉です。両国間には様々な問題があるけれど、そういうことはそういうこととして置いておいて、経済を含めた良いところをどんどん伸ばしていきましょう、それが戦略的互恵関係ということだと思います。常に日中間の政治関係が良い時はこの言葉がよく使われます。最近、久しくこの言葉が表に出てくることがそうそうなかったとすれば、これを使える雰囲気になったのかなと。2つ目の国際会議などにおける首脳会談の継続、ということは、まだお互い首脳間の相互訪問での2国間会談、そういう本当のところまではなかなかすぐに行けないと。今後とも様々な国際会議がありますので、その時にはその都度首脳会談をやっていきましょうと。関係改善をする中で、それが前に進む時に、いつかの時点で相互訪問というものが実現すればいい。そういう1つの段階だと思います。現在は、お互い良い雰囲気になりましたねと。今後もやっていくのだけれども、具体的にこれは協力しましょうというところには行っていない。だから、総理も青年交流とか、比較的文化的なフワッとした形での成果について触れていますので、そういう意味ではすごく成果が出ているというよりは、それはその先、1歩、1.5歩前に踏み出してきた、そんな形だと思っていいと思います」
秋元キャスター
「AIIB(アジアインフラ投資銀行)に日本が参加していたのなら、また違った雰囲気になったのですか?」
小野寺議員
「これはもう少し経済連携の話とか、相互のアジア開発銀行、ADB(アジア開発銀行)とAIIBの協力関係とか、もう少し踏み込んだ議論があったと思います。いずれにしても従前であれば歴史認識の話とか、いろいろな話がちらちらと出たと思いますが、お互いに未来志向で戦略的に互恵関係を結んでいきましょうと。少し前に踏み出す議論が行われたのだと思います」
反町キャスター
「一致した内容ということですが、首脳会談の継続に関しては、総理が努力したいと言ったのであって、両首脳が一致したという確約した情報ではないです」
天児氏
「戦略的互恵というのはおっしゃられたようなことで、昨年のAPECでは4項目合意というものができました。この4項目合意というものは、まさにモヤモヤと曖昧で中身がどのようにも解釈できるような。4項目合意というのは、歴史認識に関して相互がというやつ、具体的には島に関する問題についてです。ただ、そういう問題に違いがあって、違いは違いとしてお互い一応は認識しておくという合意があったわけです。つまり、戦略的互恵というものは、そういう違いを前提として、尊重しあいましょうということでいいわけです。そういう意味では現状認識をきちんとしながら、しかし、お互いに非難の応酬をするとか、対立を進めるということをできるだけ避けましょうと。ですから、そういう意味ではそんなにポジティブな方向性ではないと言えるかもしれない。次の段階としては戦略的協力関係というような、そちらの問題が出てくると思います。その出てくるところで、AIIBの問題について、おそらく具体的に聞きたいし、中国側としては国運をかけたAIIB、一帯一路と言ってもいいような非常にスケールの大きく全力でやらなければならないこと。それに対して日本がコミットしなければいけないのか、これは非常に大きいわけですね。ですから、聞きたいということは1番の大きな問題だと思います。しかし、それをすぐに日本側に回答を求めるような段階ではないということで、できるだけ慎重にアプローチをしていると。中国側の姿勢は積極的に見えた」
反町キャスター
「中国側は今回、日中首脳会談に前のめりだったのかどうか」
天児氏
「前のめりという判断が仮にできるとするならば、それ以前のAPEC以降のいろいろな交流の中で、日本の感触があるわけで、そういうものをベースにして今回安倍さんに会ってみると、これまでの感触のうえに立った姿勢だという判断をしているのかもしれない。それを前のめり、ポジティブな捉えられ方ができたのかもしれないですね」
反町キャスター
「月末の訪米、8.15の70周年談話をみないと踏み込めない?」
天児氏
「そうでしょうね。おそらくだいたいこういうふうな出方を安倍さんはアメリカに対してするかなというような読みは、私はある程度できると思います。ただ、8.15の話はまだ見えないです、中国側から。ですから、今日の安倍さんの発言はあとで議論されると思いますが、今日の発言をどう評価するかということ、それを中国側がどう見るかということに関連してくる、まだ見えないんだと思いますよ」
反町キャスター
「中国側の方が前のめりなのにもかかわらず、踏み込めないという話をどう感じますか?」
小野寺議員
「まずこういう時、たとえば、日本の国民は中国と日中関係を良くしたいという方が多いと思います。中国側で日中関係を良くしたいかと言うと、いろんな歴史教育もありますから、その前に日本がこういうことがあるだろうというような、もう少しワンクッションがあると思います。そういう両国の国民がもっているものを背負って政治家はああいう場所で会ったりします。そうすると、どちらかと言うと日本で安倍総理が中国の習主席と会うということは、日本人は会うべき、話すべきだと単純に歓迎すると思いますが、習主席の場合はある一定のリスクを負って笑顔を出したり、会ったりしているのだと思います。そうすると、よりこういう形で見れば、努力をしているのは中国側なのかなと、私は個人的な印象で見ていました。そういう意味で考えると、私は、これは良い機会だと思います。向こうが戦略的互恵関係、これは日本側がそういう話をしたかどうかはわかりませんが、一定の良い雰囲気でこれから前に進もうという議論ということは、中国も1つ日本に対する政策を変えていく良いタイミング、良い機会と捉えて、私は好機、チャンスと捉えて進めていくことが重要だと思います」

“日本の侵略”“お詫び”言及せず 安倍首相演説の狙い
秋元キャスター
「10年前の小泉元首相の演説では『我が国は、かつて植民地支配と侵略によって、という表現があったのですが、今回はその点がなくなっているんですね」
小野寺議員
「私はいろいろな国際会議に、アジアで出させていただきましたが、率直な印象は、日本はサンフランシスコ平和条約の締結によって、過去の、先の大戦についてはしっかりと反省をするという形で認めているわけです。ですから、それをずっと継続して私どもは行っています。現在、たとえば、植民地支配とか、侵略、痛切な反省、心からのお詫びとか、これらを聞きたい国というのは、習主席の戦略的互恵関係の話からすれば、過去の大戦の反省、歴史認識を持っているが、それは置いておいて、次に行きましょうというのが、現在の中国の姿勢ではないですか。そうすると、これを敢えて言ってほしいというのは韓国ぐらいしかないのかなと。敢えてこの会議で多くの人達が経済成長について話しあいたい、日本が戦後一貫して、こういう国に経済的な支援をして成長を共にしてきたということを皆、知っている。その中で敢えてこの話題に触れなければならないと考える国はないと思います。正直言ってこの言葉を入れないと、常に何らかのメッセージを出す国というのはだいたい特定されていて、その国に対して、我々は丁寧な説明をし、丁寧な発言をすればいいだけであって、全体の会議で、アジア、アフリカの今後の発展についての大きな話をする中で、このことを敢えて入れるということもむしろ違和感がありますし、そういう意味では、非常に場の雰囲気にあった、現在の日本が国際社会から見られている雰囲気にあった中で、今回このような短いフレーズの、先の大戦の深い反省に収斂して、この問題はここで決着と。むしろ経済的なもの、日本のこれまでの貢献、このボリュームを大きくしたということで、私は時節にあった話だと思います」
反町キャスター
「揚げ足とりの議論になりませんかというところは?」
天児氏
「日中関係を良い方向に向かわせたいと、これは双方の大きな流れとしてあると。双方とも。その時に揚げ足とり的な形で批判を繰り返すというのは、たぶんしないと思います」
反町キャスター
「法の支配が大小に関係なく、国家の尊厳を守ることだと言っていますが、どこの国とは言わないけれど、これはどう考えても中国ですよ、これについては?」
天児氏
「中国の外にいる人間がこの発言を聞けば、そうだろうなと思いますね。ただ、中国の人が同じように解釈するかというと必ずしもそうではない。だって、それは習近平主席の発言の中にも似たようなことが書いてありますよ。国の大小問わず皆平等であるという国際社会を作るべきだと、力で支配することはいけないと言っているんですよ。これをもってして、中国を直接攻撃しているというように解釈しているかどうかはわからないと」
小野寺議員
「私はここの発言をする、例えば大きな国が小さい国に対してプレッシャーを掛けてはいけないとか、また領土について力による一方的な変更はダメだとか、平和的な国際法によっての話しあいだとか、安倍総理がこういう場でもおっしゃっているということは、そこに来ている多くの国は、大きな国もありますが、そうでない、言ってみればそのことも意識している国がたくさんあって、でも、ここまではっきりとそういう大勢の前で言える国は、逆にそれだけ国力があって、しっかりできる国ですから。日本はある面では、いろいろな国にとっては自分達が心に思ってもなかなか言えないことをしっかりと言ってくれたと。そういう面では良く言ってくれたと、心の中で思い、拍手もすると思います。なかなかアジア、アフリカの小さい国の中で、大国に対してこういう言い方をすると、直接あとで厳しいことにならなければいいなと、皆さんすごく不安なわけです。ですから、こういう場面で日本がこういう発言をするということはそこに集まっているアジア、アフリカの小さい国の多くにとっては非常に頼りになる国、首相だなと、そういう思いを持つのだと思います。これは言ってみれば特定の国に対しての何らかのメッセージというよりかは、もしかしたら、中国が皆さんの頭にあるかもしれませんが、アフリカの国でも同じように、アフリカの大国の傍で、武力やその他の問題で自国の資源が浸食されている国はたくさんあるわけです。そういう多くの人達に対して共通のメッセージをということで、伝わる、そういうこともあるのだと思います」
反町キャスター
「一方、TPP、RCEP、FTAAPはさらにアフリカに向かって進んでいきます、私はそう考えます、という総理の発言は?」
小野寺議員
「これは随分チャレンジャーな発言をしたなと。AIIBのこともありますし、それから、経済的な連携もあります。中国が現在2つのシルクロードという形で、アジアとアフリカに権益を確保しようという中で、そのステージとは違うTPPとか、RCEP、FTAAPの話ではないですか。これはもしかしたら中国の方が見た時にちょっと耳に残った話かなと」
反町キャスター
「どう聞いたらいいのですか?」
小野寺議員
「今回の総理の発言の中で1番、私がチャレンジャーだと思ったのは、この部分です」
反町キャスター
「中国の経済覇権に対して、日本はチャレンジするぞ、と聴こえなくもありません」
小野寺議員
「これは、日本が中心というよりは、これまで、たとえば、西側の中でアメリカも積極的に取り組んでいると。たとえば、TPPとか、あるいは世界の自由貿易の1つのルールがありますが、そのルールに沿って広げていくという考え方がありますから、私達が普段考えている貿易のルール、それがだんだん広がっていく。そういうこちらのルールで広げていきたいなというメッセージがここにはこもっていると思います」
反町キャスター
「その意味で言うと、今回のスピーチは、中国を意識していると示唆している?」
小野寺議員
「内容を見て1つ1つ精査をすると、かなり戦略的に発言をしていて、これは見る人が見れば、聞く人が聞けば、強いメッセージだととるのだと思います。逆に言うと、習主席の発言というのは、歴史問題を含めて、摩擦に関連する話がないと思うので、普通、日本の発言と言えばフワッとしていて、むしろ中国側がすらっといくのが、今回は逆です。このスピーチを書いた日本の担当者は当然中国がぐんと行くのだと思って、同じように考えたのか、ある面で中国がこんなにフワッと柔らかくくるのに、敢えてそれでもチャレンジャーでこういうふうに戦略的に強く押し出したのか、そこは聞いてみたいなと思います」

習近平国家主席 演説の狙い 歴史問題を言及せず
反町キャスター
「習主席のスピーチで先進国の協力が必要だと言っています。こういうことを言う時に中国は自分の国を先進国と位置づけているのですか?それとも発展途上国側に置いているのですか?」
天児氏
「たぶん発展途上国に置くのでしょうね。置くというのは、ですから、政治的に、です」
反町キャスター
「中国は、アジア、アフリカの発展途上国の先頭に立って、先進国との交渉をやるみたいな、そんなイメージもあるのですか?」
天児氏
「時にそういうことでしょうね。先進国の技術、そういうものも我々はしっかりと提供していただいて、それを発展途上国のアジア、アフリカのために、大いに活用してもらいますよというメッセージがあると思いますね」
秋元キャスター
「それは、アジア、アフリカの国々はどう見ているのですか?」
天児氏
「これは歴史がありますからね。ですから、その3つの世界論という毛沢東時代に掲げたあの路線が、これは基本的にはそうですよね。米ソ超大国の波及に対して我々は戦うんだということを言っていたわけで、鄧小平の時代は自分の国を強くすることが最大の目的だから、経済的にも。ですから、第3世界との関係というのは事実上すごく落ちていたわけですよね。でも、習近平さんの時代になって非常に自分の力がついてきて、屈辱の歴史を塗り替えるために何をしたらいいかというと、国際秩序の中で、これまでの欧米を中心に全ての国際秩序をつくってきたことに対して、切り込んでいこうというのは、これはもうはっきりありますよね。切り込んでいく時に、習近平さんが政権についた時は、アメリカとの関係をとにかく調整することだと。21世紀の創造的な大国関係をつくろうということを言い続けてきたわけ。ところが、アメリカは乗らない。それで、もう1回、戦略を練り直す。アジア、アフリカ諸国を味方につけながら、そこを強くすることによって、自分のプレゼンスも高めていこうという戦略を立ててきた」

中国の抑制された反応
小野寺議員
「注目すべきは、今回の習主席のお話の中で、特にODAについて政治的目的に影響されないODAを拡大すべきと。これはたぶん中国から見たら、私ども日本も含めて、これまで西側がやっているODAというのは、ある面では政治的にうまく使いながら、その国をこちらに向かせると。ODAを使うというような。私達から見たら中国が1番そうだと思うのですが、中国は敢えて自分のことには触れずに、これはこれまで西側の国の、先進国の方がこれを使って、途上国について、これをやるから、あんたは言うことを聞きなさいとか、これをやるから、資源について何か協力しろとか、そういう意味でずっと途上国は略奪をされてきた、搾取されてきた、そういう心の中での傷があります。特にアフリカの国はですね。ですから、それの琴線に触れるような言い方で言って、そうだろうと思ってもらう。その裏返しには、ところで、今度、中国が出すODAというのはシルクロード基金も含めて、皆さんもおわかりの通り、政治的には特にありませんよ、どうぞと。西側のいろいろな基準で面倒くさいことも言いませんよ、どうぞと。その国のトップの方がそれで、たとえば、大きな工事をすることで、ちゃんと透明性が確保されているか、ちゃんとお金が使われているかどうか、私どももいろいろ透明性とか、お金の使われ方をチェックしますが、中国はそんなことはあまりもう見ない、どうぞと。そういう甘いメッセージをここで存分に出したという印象で聞いていました。ですから、AIIBは素敵ですね、シルクロード基金は素敵ですよね、中国はあまり面倒くさいこと言わないで、そういうのをどんどん出しますから、皆さん共に成長しましょう。なぜなら私はまだ途上国、南の代表だから、皆さん、一緒になって伸びていきましょうと、そういうメッセージだと思います」
反町キャスター
「アジア、アフリカの国々は、中国の言葉を歓迎して、受け入れるのですか?」
小野寺議員
「アジアの一部の国かもしれませんが、小さな発展途上の国の場合、中国にいろいろな支援を受けて、大きな国会議事堂をつくってくれて、ありがとうとか、立派な大統領官邸をつくってくれて、ありがとうとか、なかなか民主化がされきれていない国に、何となく独裁者みたいな人がいる中で、そういう人達が喜ぶ支援というのは、目立つもの、形に残るもの、だけれど、一般の貧しい国民の明日の生活が豊かになるものではないわけですよ。日本はこれまで一般の国民の人が経済的に豊かになって、いずれはその国が経済的に自立して、たとえば、中国や韓国のような大国になっていく、そういう、あと押しをずっとやってきているわけですが、一定のあなたもがんばりなさいよということが必要なわけです。それよりはこれから発展しようとしている、民主化をしていない国のトップについては、あまりがんばらなくてもいいけれど、こういうおいしものをどうと言った方が胸に響く。途上国ならではの、1つの捉え方ということをうまく捉え、琴線に触れる言い方を習主席なりにされたのかなと。これはこれでしたたかだなと聞いていました」
天児氏
「その可能性があることは否定しません。ただ、中国がこれだけ国際社会の中に入ってきて、AIIBを設立する1番の目的は、中国が国際金融機関の中でリーダーシップを発揮できる能力、ガバナンスがあるというのを見せられるかが大事なことで、うまくお金をばら撒いて味方につけるというのは少し前の時代の話。中国はIMF(国際通貨基金)、世界銀行とかに、人材を置いている。アメリカでMBAをとっている人達は日本を超えるぐらいの数がいて、そういう人達が国際金融機関の中心のところで働いていて、それが中国に戻ったり、が増えてきた。透明性を彼らは非常に気にするんですよ。透明性を不透明なままにして、それで政治的に使うというレベルの話ではなくなってきている。そのためにこそ、日本を取り込んで、アメリカも取り込むということを、将来したいのだと思います」

存在感強める中国 日本はどう対応すべきか
秋元キャスター
「バンドン会議での、習主席と比べて、安倍総理の切り上げのはやさは?アジア、アフリカ諸国からの印象に影響をするのでしょうか?」
小野寺議員
「特にマイナスの印象はないと思います。バンドン会議というのは途上国がもともとしっかりしていこうという形でできている会議でありまして、G7、先進国の首脳で行っているのは安倍総理だけです。ですから、そういった意味では、安倍総理が行くということ、そのことだけで大変大きなメッセージが伝わっているんだと思います。中国はもともとバンドン会議のスタートする時にいたメンバーですから、むしろこうして日本の首脳が行くということは大変大きな印象があります。私は、それ以上に習主席の20日ですか、パキスタンの訪問、こちらの方が気にかかると言いますか、この5兆円の支援というのは、何でパキスタンが大事かというと、現在、中国が進めています陸のシルクロードと、海のシルクロードがあるのですが、この陸と海をつなぐライン、これが実はパキスタンの国内にあって、グアダルという港がそのキーになります。パキスタンでどういう形で中国が一定のインフラを持つかということが、逆に内陸部の陸のシルクロード、沿岸部の海のシルクロード、その接点を両方抑えることになると、これは、非常に中国のプレゼンスが高まりますので、パキスタンにどんどん現在、お金を入れています。これは戦略的に物事を進めているなと、そういう印象を持ちます」
反町キャスター
「それは一帯一路という…」
天児氏
「これは国際的な戦略としては、国際秩序そのものをどう変えていくのかということにつながりますね。国内的な問題でいきますと、これは基本的に輸送インフラを積極的につくっていく。高速道路をつくり、飛行機の拠点をつくるという。それをつくるということが、現在膨大な外貨を持っているわけですから、その膨大な外貨を遊ばせているわけにはいかないし、そういう意味で、これをうまく有効に利用すると。それから、そういう輸送インフラを充実させれば、普通はモノが動き始める、人が入る、お金が動き出すということで、ある意味で、中国の国内でやった経済発展のパターンを、これを国際的に有効に活用していくと。それは国内で現在よく言われる経済停滞が始まりつつあると。7%は停滞ではないんですけれど、しかし、始まりつつある。それをどうするかという問題にも、これは関係してくるわけですね。おそらく一帯一路の戦略というのは国内的にも国際的にも非常に大きな意味があって、習近平政権の命運をかけた1つの戦略だと言えると思います。それを1つ1つ具体的に進めていく時に抑えておかなければいけないパキスタンが出てくると。パキスタンは、小野寺さんもおっしゃられたように、陸と海の接点になる。同時に、インドとの地政学的な非常に重要な意味を持つ。あるいはこのアフガニスタンを初めとして、これはイスラムの過激派を巡る問題と絡んできますから、これは新疆そのものが非常に重要なリンクをしてくるわけです。ですから、パキスタンはやはり重要だなと、そこに目をつけた。これは特別扱いかもしれないという感じを思っています」
反町キャスター
「一帯一路は、中国の世界戦略として、海と陸の2本のシルクロードでヨーロッパと中国をつなごうとしている。その間にある国々に投資をして(中国の)友好国をつくろうとしている。どう見たらいいのですか?」
天児氏
「陸のシルクロードと海のシルクロードが抱え込んだ空間というのは、ある意味、中国がイニシアティブを持てる空間であると思います。大中華圏というものにつながっていくような構想として位置づけられるのかなと」
反町キャスター
「中国がアジア、ヨーロッパを巻き込んで、アメリカとの対立グループをつくろうとしているようにも見えますが?」
小野寺議員
「そういう遠大な話よりもむしろ中国の経済成長が鈍化してきて、確か中国は(成長率が)7%を切ると、新規の大学生が失業するという数字になってしまう。本当にその数字が正しいのかはわかりませんが、それよりも下まわる推測を出したら、失業者がたくさん出るよという、そういうメッセージになります。ある意味では、デッドラインの印象を持っています。経済の成長があるからこそ、中国の共産党一党支配の中で、一定の国が保たれている。政治の改革に触れないで、中国が何となく維持できている。中国国内で様々な暴動が発生している。軍事予算よりも公安の予算が増えていると言われています。矛盾を持っている中で経済が伸びていることが唯一、それを覆い隠すとすれば、とにかく経済を進めなければいけない。国内の需要が一定の冷え込みになってきた中で、外に出ていくとすれば、陸続きの中央アジアとか、最終的にヨーロッパに、1つの経済圏をつくって経済的に成長していこうと。日本ももともとは投資がたくさんあった。ところが、日中の冷え込みで急に落ち込んできている。日中の関係改善についても中国の中の経済的な事情を習主席も強く意識してやっていると思います。もっと切実な切羽詰ったことにとにかく向きあう。そういう中で、打ち出しているのが一帯一路の政策の一環かなと思います」

天児慧 早稲田大学アジア太平洋研究科教授の提言:『戦略的政経分離政策に踏み込め』
天児氏
「政経分離というのはよく言われる言葉です。日中国交正常化する前もそうですし、現在の台湾と日本との関わりもそうですが、私は現在、特に中国を巡る様々な軋轢、問題を考えた時に、戦略的に政経分離に踏み込むという意識を持つことが非常に大事ではないのかと。つまり、政治あるいは安全保障が、中国とまだまだ本格的に対話も始まっていないし、どうすればいいのかがわからない。だからと言って、中国との関係というのは大事ではないとは言えないわけですから、その関係を強めていく、その意味では、経済のそういうつながりをつくることが非常に重要で、これは実はオーストラリア、東南アジアも、あるいは台湾も皆、実は現象としては政権分離やっているんですね。それを戦略的にやることによって、中国の安全保障に対する安全保障もある程度確保できるという。こういう意味で、戦略的政経分離論を提唱したいです」

小野寺五典 自由民主党政務調査会長代理の提言:『平和国家70年』
小野寺議員
「私は、戦略的な発信というのは何を発信するかということがとても重要だと思います。日本は、70年前は先の大戦に対しての様々な反省、これは歴代内閣が述べていますが、大切なのはむしろ70年間、平和国家であって、世界の国の平和に貢献してきた。特にアフリカやアジアの国に対しては、たとえば、累積すると確か3000億ドル以上の支援をしてきています。ですから、そういう意味で、日本が平和国家70年で何をしてきたか。そのことをあらためて対外的に発信することの方が、私は戦略的に受け止めていただけるんだと思うんです。過去の反省とか、そういうことより、もっと前向きな未来志向の話、これまでやってきたことは間違いないことですから、結果として、たとえば、中国や韓国、こういう国は現在、日本のライバルになったかもしれません。ですが、逆に日本側の支援、ODA、日本の平和国家としての役割はライバルが出たとしても、その国が自立し、大国となっていくこと。それをよしとして、私達は応援してきた、むしろ中国の台頭というのを日本の成果という形でポジティブに考えることも大事だと思います」