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2015年4月14日(火)
中国着々アジア投資銀 IMF元幹部の評価は

ゲスト

木宮正史
東京大学大学院総合文化研究科教授(前半)
髙初輔
弁護士(前半)
加藤隆俊
元IMF副専務理事 国際金融情報センター理事長(後半)
津上俊哉
現代中国研究家 津上工作室代表(後半)

産経前支局長 出国禁止解除 韓国政府の思惑と背景
秋元キャスター
「昨年4月16日に、韓国セウォル号が沈没しました。その際に、朴槿恵大統領が元側近と密会していたとする加藤前ソウル支局長の書いたコラムに対して、韓国側が名誉を毀損したとして、前支局長を在宅起訴しました。昨年8月に加藤前支局長を出国禁止処分にして、これまで8回に渡って延長。加藤前ソウル支局長側は処分の停止を求めて仮処分を裁判所に申請してきたのですが、認められませんでした。出国禁止解除の連絡ですが、今日午前、弁護士を通じて伝えられたということですけれども、まず木宮さん、韓国がなぜこの時期に出国禁止処分を解除したのでしょうか?」
木宮教授
「まずは裁判によって、朴槿恵大統領がその側近と密会していなかったという事実が認定をされたということで、まずは朴槿恵大統領の名誉は確保されたと考えられると思うんです。それから、もともとこの措置については、韓国国内でもちょっとやり過ぎではないかと。朴槿恵政権、韓国にとって必ずしも賢明なことではないのではないかと。そういう声が実は大きかったんです。ただ、大統領個人の名誉にかかわることであるが故、なかなかそれを表立っては言いにくいという雰囲気は確かにあったと思うんです。大統領自身が、名誉を確保されたという気持ちがあるということが、この措置の背景には、おそらくあったのではないかなと推察します」
髙氏
「起訴をした時から、そもそも朴大統領は、この件に関して起訴してほしいとか、あるいは起訴しないでほしいということは何も言っていないです。何も言っていないので、起訴をしていると。たぶん起訴してほしいんだろうという認識で起訴を検察はしたという形を、一応とっている」
反町キャスター
「それはシステム的に言うと、韓国における法のシステム。システムの話です。名誉毀損の罪で今回、裁判にかけられているわけではないですか。もともと加藤さんの原稿が名誉毀損にあたると言ったのは、民間団体か何かですよね?」
髙氏
「そうです」
反町キャスター
「これは、大統領の名誉毀損にあたるということで告発したんですよね、検察が」
髙氏
「そうです」
反町キャスター
「検察側が、これは名誉毀損にあたると裁判にもっていくということに関して、大統領の意思というのはそこに、私は名誉毀損と思うから裁判にしなさい、いや、私は裁判にしなくていいと、そういう判断がなくても、ここまでこられるのですか?」
髙氏
「こられます、結論から言うと。つまり、大統領が明示的に、これは処罰しなくてよいと。処罰しないでほしいということを言わない限り、検察側は起訴ができます。処罰まで持っていきます。これは名誉棄損罪が韓国の刑法、あるいは情報通信網法上、反意思不罰罪、ちょっと難しい言葉ですけれども、明確な意思に反しては、被害者の明確な意思に反して処罰することができないと。だから、明確な意思に反しなければいいです」

朴大統領と司法の関係は
反町キャスター
「韓国の司法制度というのは、政治と非常に密接不可分な関係であって、青瓦台の言っていることに、すごく影響を受けるというのが、韓国の司法制度ではないかという指摘を、何回かこの番組でさせていただきましたけども、今回、出国禁止処分の解除。ここには、大統領の意思、もういいよ、帰しなさいよという意思があったのかどうか。ここはどうご覧になりますか」
髙氏
「なかったとは言えない。だから、一応、法律家ですから、証拠が無い限りは、何も断定はできないんですけれども、本件については、大統領の意向というのは、反映している可能性は、多分にあるというふうには思います。ただ、なかったとは言えないというのは、正しい言い方だと思いますけど」
秋元キャスター
「大統領意向が反映されていなかったとしたら、逆にどんな理由があるのですか?」
髙氏
「検察側として前回、第5回の公判で、裁判官が結局、大統領とチョン・ユンフェ氏が面会をしたと、事故当時です。と言うのは、嘘、虚偽であると。なおかつ加藤前支局長がコラムに書いた噂は虚偽であると、合理的な疑いを入れない程度に立証されていると。こういうふうに自分の心証を言ったんですね」
反町キャスター
「それは普通のことなのですか?裁判の経過において、双方の言い分が出揃ってもいない中で、あなたのこの部分というのは間違っていると私は思うというふうに裁判官が言うというのは、これは日本の裁判でもありですか?」
髙氏
「刑事裁判においてはあまりないです」
反町キャスター
「それは韓国ではあることなのですか?」
髙氏
「比較的あり得るかなと」
反町キャスター
「要するに、裁判の途中で、潮の流れが見えちゃうじゃないですか?」
髙氏
「いや、今回に関しては潮の流れが見えているというわけではなく、有罪か無罪かはまだわかりません。あくまでも虚偽であるということがわかっただけで、今後、公共の利益ですとか、あるいは言論の自由ですとか、もしくは誹謗中傷の目的とか、そういった点が論点になっていくわけです。そちらの方向で弁論をしなさいと、前回の裁判長の訴訟指揮で述べられているんです。従って、先ほど、加藤前支局長も言っていたように、今後の裁判ということがあって、かなり注意深い話し方をしていたと思いますけれども。今度は、加藤支局長側の、いわば攻撃の番だということなのだと思うんですね。つまり、検察側の攻撃は一応いったん終了したと」

韓国政府の思惑と背景
反町キャスター
「産経側からの主張というと、どういう、たとえば、名誉毀損の意思がなかったと、そういう主張になるのですか?」
髙氏
「まずは虚偽について、虚偽ということについては知らなかったというと思います。虚偽について知らなかったとすれば、誹謗中傷の目的が果たしてあるか、ないのかというのが問題になっているわけです。誹謗中傷の目的も否認するということをして今回の報道については、ご自身としては真実だと思ったと。真実だと思ったけれど、結果的には虚偽だったと。真実だと思ったことについては、いわば相当な理由があると。こういうような言い方をすると思うんです。なおかつ報道機関の場合は著しく不相当に信じたのではない限りは処罰しないという判例もありますので、その判例に乗っかって主張を展開していくと思います」
反町キャスター
「木宮さん、政治と司法の距離感。これは本当に少なくとも僕にとっては理解しがたいものがあるんですけれども、どう見たらいいのですか?」
木宮教授
「もちろん、司法と政治の距離感が近いということは、政治権力の意向を司法がある意味では忖度して、そういう判断をくだすということも、もちろん、一方であるんです。ただ、他方で、これは特に日本との関係でここ数年で出てきたいろんな判決を見ると、逆に言うと、今度、司法がある意味では、政治を制約するというか、政治に介入して、政府のいろんな行動を縛るような、そういう判断をくだすということ…」
反町キャスター
「政治賠償の請求権みたいな。そのへんの話?」
木宮教授
「そうですね、憲法裁判所の慰安婦に関する判決であるとか。その後、最高裁判所の徴用工に対する判決とか、これはある意味で政府からすると、それほどありがたいことでもないと思うんですね。むしろ裁判所がそういう判決をくだすことによって、政府としては何らかの行動をとらざるを得なくなると。そうなると、国内の世論がなかなか収まらないと。それは政府にとってみると痛し痒しのところがあると思うんです」
反町キャスター
「髙さん、20日に次の公判を控え、当然、今回、加藤さんが出国できた背景には、韓国側の司法当局に対して、次の裁判に帰ってきますという約束で出て行っているはずですけれども、今後の20日以降の裁判の見通しはどう見ていますか?」
髙氏
「1つは、普通に考えれば、私が申し上げたように加藤さん側の、いわば攻撃という面での展開になっていくと思うんですけれども、1つ可能性があるかどうか、はっきりは、どの程度の可能性であるかはわかりませんけれども、政権側としては、朴大統領に関する噂は虚偽であるという、初期の目的は達したんです。その意味では、あと残っているのは、言ってみれば、加藤前支局長を処罰するかどうかということです。そこまで果たして政権側として望むかどうかです。ある意味、別に処罰しなくてもいいですと言えるタイミングではあるんです」
反町キャスター
「それを言うのは、大統領が言うのですか?」
髙氏
「大統領です。大統領が処罰する必要はないと。この件については、検察側が必ずしも勝つとは言えない。100%勝つという見込みが立つわけではない。負ける可能性があるわけです。そうすると、負けるリスクをとるかという問題があるものです。ここで初期の目的は達したので、もう起訴はとり下げてもいいという意向が示される可能性がないとは言えない」
反町キャスター
「朴大統領が現在の段階で、このへんで手打ちにしようかと、国民に対して見せることのメリット、デメリット。あと、今度22日からアジア・アフリカ会議で、バンドン(インドネシア)に(安倍)総理が行って、朴大統領もそこに行って、日韓首脳会談が行われるか、まだ調整中という話ですけれども、その政治日程、ないしは6月22日でしたか、日韓基本条約50周年という、今後の政治日程をいろいろ見ていった時、大統領がどこかのタイミングで何かを言う可能性はあると思いますか?それとも、リスクをどのように見ますか?」
木宮教授
「この判決の話ですか?」
反町キャスター
「この判決、起訴をとり下げにしろと大統領が言う?」
木宮教授
「出国禁止措置の解除自体は、ある意味では、前段階として位置づけるということであれば髙弁護士がおっしゃったようなことが私はあり得ると思います。今回の措置が日韓関係に及ぼす影響を考える場合、私は、最近韓国のいろんな報道を見るとちょっと日本に対してやり過ぎたのではないかと。歴史問題とか、何かについては。1つ重要なのは、どうもアメリカがそう見ているのではないかという認識が、韓国の中でもあって、従って、ちょっとやり過ぎたのだから、ここはちょっと抑える必要があるのではないかという見方が一方で出ています。ただ、他方で、この問題もそうですし、それから、歴史問題というのは、ある意味で言えば、日韓がある種、争っているわけです。そうすると、日本は、先ほどの外交青書で基本的価値というものを削除したりしたのですが、これは韓国からすると日本がそういうことで批判をしてきたのだと。従って、韓国としては、韓国は民主主義国家であって、報道の自由、言論の自由はあるんだということをある程度アピールしないといけないということであるわけです。今回の解除措置というのは、その一環として韓国は考えているかもしれないなと思います」

基本的価値共有 削除の影響は
秋元キャスター
「先週、外務省が発表しました外交青書で、韓国について2014年版までは、韓国は自由、民主主義、基本的人権などの基本的な価値と、地域の平和と安定の確保などの利益を共有する日本にとって、最も重要な隣国であると。2014年度版でこうあったものを、今年、2015年版では、韓国は日本にとって、最も重要な隣国であり、良好な日韓関係はアジア太平洋地域の平和と安定にとって不可欠であると。この2014年度版にあった基本的価値の共有というのが削除されました。木宮さん、そうしますと、今回の前支局長の出国禁止解除には、外交青書の文字の表現削除の影響があったと見ていますか?」
木宮教授
「私は、少なからずあったと思います。このことについて思いのほか、韓国の政府、それから、韓国の社会は結構、ショックを受けていたと私は思っています。ただ、ショックの受け方というのは、一方で、非常にそれは心外だと。自分達は民主主義国家であって、言論の自由とか、報道の自由は守っているんだと。そういうある種考えがあって、それから見ると、今回のように日本がわざわざなぜそういうことを言うのだという、いわゆる不満、批判があると思うんです。ただ、それを国際社会に対して、アピールするためには何らかの目に見える措置をとらなければいけないと。今回の措置というのはその一環として韓国政府は位置づけていると考えます」
反町キャスター
「支持率がどんどん下がってきて、政権基盤の弱体化と今回の産経新聞に対する判断。これはリンクしているのか、していないのか。ここはどう見ていますか?」
木宮教授
「必ずしも明示的なリンクはないと思うんですけれども、ただ、現在、朴槿恵政権がやろうとしていることは、前政権の資源外交を問題にして、その不正腐敗を正そうということで、それは政権の浮揚に役立てたいと考えているんですけれども、今回の措置も、そういうある意味では、朴槿恵政権の重荷を減らしたいということになったと思うんです。ただ、問題は今回、それが朴槿恵政権に跳ね返ってくる可能性が非常に高くなってしまったんです。まさに、資源外交を担った企業の社長が自殺をしたと。その自殺をした社長のポケットから、朴槿恵政権の重要な政治家達の名前と金額が書かれた紙が出てきたという。従って、捜査が行われると、これはどうなるのか、まだ不透明ですけれども、朴槿恵政権のある種、弱体化に跳ね返ってくる危険性は非常にあると思います」
秋元キャスター
「朴大統領は、日韓関係改善に向けて前向きになったと見ていますか?」
木宮教授
「その意思はあると思うんです。今回の措置も朴槿恵政権としてはその第一歩であると。ただ、問題は、日本側に対してボールを投げたのだから、日本が何かボールを投げ返してくれるのを、ある程度待っていると。そういう状況だと思うんです」
反町キャスター
「今度は日本から何かをしなくてはいけないのですか?」
木宮教授
「朴槿恵政権は、慰安婦問題に関して、日本政府の中の前向きな措置を前からずっと首脳会談の前提条件として要求をしているわけです。従って、もちろん、それを100%満たすかどうかは別として、朴槿恵政権としては、今回の措置は、日本に対するある種のシグナルだと。日韓関係を改善するために韓国サイドが日本に対して送っているシグナルなのだから、日本サイドもそのシグナルに何らかの形で応えてもらいたいというのは期待していると思います」
反町キャスター
「何をしろということになっていくのですか?でも、いわゆる慰安婦の問題については、政府の言っていることは承知の通りで、一通り全部終わっているんだと。アジア女性基金もやって受けとらなかったのはそちらの都合でしょうと。総理の手紙までつけてやっているんですと。それで、さらに、韓国側は別の形、いろんな形で提案されているようですけれども、そこにまた政府が、日本側が乗っていかなければいけない。そこまでしないと事態が動かない。こういうことになっていきますか?」
木宮教授
「少なくとも韓国サイドから見ると、日本の政権は過去の歴代政権に比べると、現在の政権は、ある種、逆のことをやっているという認識があるわけです」
反町キャスター
「現在の政権が?」
木宮教授
「要するに、河野談話の検証と言っても、これは韓国サイドから見るとどうも河野談話をかなり骨抜きにしているのではないかとか、そういう認識があるわけですね。そうすると、朴槿恵政権としては安倍首相に対して、たとえば、河野談話とか、村山談話とか、いわゆる(戦後)70年の談話ですね、それに対して、従来の談話の水準は、最低限守ってもらいたいと。そういうような期待というのか、そういうような要望を持っていることは確かだと思うんです。それを期待しながら、これまでは、かなり要求をすることによって、それを何とか獲得しようとしていたんだと思うんですけど、どうもそれはあまりうまくいかないというふうになると、何らかのシグナルを送って、韓国サイドからも何か歩みよるという姿勢を見せなければいけないかなという感じに、ちょっと潮目が変わってきたのではないのかなとは思います」
反町キャスター
「それでは、特に、日本側が、新たに大きく踏み込んだ制度的な提案をするのではなくて、たとえば、70年談話において、現在のところ総理が言われているのは、要するに、過去の村山談話、小泉談話、50年、60年の談話を大きな形として引き継ぎます。この話が出ています。それは木宮さんの感じとして、セーフですか、アウトですか。その言い方だったら、足りないという感じになりそうですか?韓国側の気持ちですよ」
木宮教授
「たとえば、重要な点。謝罪とか、おそらく反省はいると思うんですけれども、謝罪とか、たとえば、植民地支配とか、そういう文言が、あるか、ないかでは、受け取り方はかなり違ってくると思います。もちろん、大枠として受け継ぐということは重要だと思いますけれども」
反町キャスター
「具体的に言葉をちゃんと入れなくてはいけない?」
木宮教授
「どうしてもそこに注目が集まっちゃっているという現状があるわけですね」

AIIB設立の影響は 日本不参加をどう見る
秋元キャスター
「日本がAIIB(アジアインフラ投資銀行)参加を見送ったこと、これについてはどう見ていますか?」
加藤氏
「アジアにはアジア開発銀行(ADB)という日本がリードしてきた銀行が、AIIBの資本金の3倍ぐらいの規模の銀行があるわけですから、AIIBというのはアジア開発銀行とどこが違うんだ、どういう補完関係があるんだ。それから、自分の経験から言いましても、常設の理事会というものがあって執行部と議論しながら業務を進めていく。そういう仕組みがきちんとしているか、あるいは環境基準はどうなるか、日本が入っても相応しいような立派な国際機関になる見通しがあるのかどうか、そのへんのところを見極めたうえで日本としての判断をする。そういう考え方ではないかと思いますし、私自身もその考え方でいいのではないかと思っています」
反町キャスター
「常設理事会がない場合、何が起きるかというところを聞きたいのですが、たとえば、このプロジェクトに対して融資するかどうかということをやる時に、その融資するかを決めるのが理事会ですよね。理事会がない時には誰が決めるのですか?」
加藤氏
「それは総裁が決めるということです」
反町キャスター
「総裁は中国人ですよね?中国の方が自分で勝手に決めてしまう。融資案件を勝手に決められていくこのリスクがある、こういう意味でよろしいですか?」
加藤氏
「そうですね」
秋元キャスター
「欧米の国のように、参加を表明している国のように、先に入って一緒にルールを考えようという考え方もありますけれども、それはなしですか?」
加藤氏
「その両方の考え方はあると思いますけど、ただ、日本のように入っていなくても、たとえば、水面下ではいろんな議論ができますし、あといずれアジア開発銀行なり、それからJICA(国際協力機構)なりが共同でプロジェクトをやるということも具体的にはこれから出てくるでしょうから」
反町キャスター
「AIIBとADBのジョイント…、なるほど」
加藤氏
「AIIBとJICAのジョイントというのも出てくるでしょうから、そういうところを通して、たとえば、1番望ましいのはアジア開発銀行なり、JICAの基準をAIIBも採用し、そういう仕組みにもっていけるようにしていきたいということ」
秋元キャスター
「総裁と目されている金立群さんはどういう人物ですか?」
加藤氏
「中国財政部の海外担当の次官、アジア開発銀行の副総裁を務めた方です」
津上氏
「ポイントとして、先々週、北京で聞いた話ですが、中国にとっても五十何か国も参加して、G7からも欧州勢がドドドッと入ってくるというのは、想定外だったらしいんです。そんな望外な幸せというか、2月まではそんなふうになるとは想像できなかったと。まったくの新事態だと言うんです。ある意味で2月までそうではないと思って考えていたことというのは、いっぺんもう1度ご破算にして考え直さなければいけないという部分がいっぱい出てきていると思うんです。そうなると、たぶんこれから走りながら考えていくんだろうと思います。私は、これまでは積極的に参加すべきだという立場だったのですが、ここに至って、ということを考えて見ると、いったんここはちょっとポーズを置くと。6月までということで、無理して焦ってというようなことはしない方がいいと思っています。2年間ぐらい、先ほど、加藤さんがJICAとか、そういうようなところとの共同事業の可能性ということに触れられましたけれども、言ってみれば、若葉マークのAIIBですよ。慣らし運転をしている間は、参加はしないけれども、外からそういう共同事業というような格好で、AIIBと関わるということを意識的に心がけたらいいと思うんですね。それによって、一方ではこの人達どちらに行きそうなのかといういうことをちゃんと観察をする。6月までに答えろと言っても答えは返ってこないかもしれないけれども、2年間ずっと一緒に仕事をしながら観察すれば、かなりはっきりしたものが見えてくると思うんですね」

アメリカの対応をどう見る
秋元キャスター
「アメリカが反対している中、アメリカが主導する世界銀行が協力姿勢を打ち出している、これは矛盾していませんか?」
加藤氏
「世界銀行とAIIBが一緒に作業していくことで、むしろこれまでのガバナンスの枠組みをAIIBにも取り入れてもらうきっかけになる。そういう意味で必要なことだという考え方だと思っています。それから、国際機関の間では国際機関のトップの協議会というのも定期的にやっていますけれども、それもAIIBがかたまった時点ではもちろん、AIIBの総裁もその協議会に入ってくると思います」
反町キャスター
「アメリカが先に行っちゃうという可能性はないのですか?」
加藤氏
「アメリカも非常に現実的な国ですから、ここまで広がりが出てくると、できるだけAIIBと一緒にやっていく方がアメリカの国益に適う。そう考えていると思いますけど、ただ、それはそうとしても、アメリカ自身が議会から出資のオーソリゼーションをとってくれるのかということになります。オバマ大統領と行政府が2010年のG20でアメリカが中心になって、まとめたIMFのクォータ見直しの法案がまだ発行しないのにはひとえにアメリカ議会からアメリカ行政府がそれに必要な授権をとってこられないから、ということでありますので、2016年の選挙の結果、議会の構成が変われば別の話かもしれませんけれども、議会との関係でなかなか展望が開けないという事態が少なくとも結構アメリカとして痛いところではないかと思います」
反町キャスター
「たとえば、アメリカが入るのに、日本が入らないというのは、心情的にまずいのでは…」
加藤氏
「それはそうかもしれません」
津上氏
「1月に意見交換をした時も、同情的な見方、タカ派的な見方。どちらの立場の人も、共通にこの点だけは一致していたというのは、オバマ政権中は身動きはとれんだろうと」
反町キャスター
「アメリカの大統領が代わるまでは、日本も動かない方がいい?」
津上氏
「そこのところは必ずしもアメリカ待ちという意味だけではないんですけれども、この2年間は無理ですということは皆が言っていると。言われれば言われるほどネクストプレジデンシーになるのはまた違うのかも知れない感じがしてくるんですけれど。ただ、現実問題としてそんなものに出すのだったら、それこそ世銀に増資した方がまだましだよねという議論は議会の中にもまだあるだろうし、ということから考えると、1つの選択として、先ほどから言われている、世銀、ADB、そういう既存機関とまずは協力ということから始めたらどうだというところが、アメリカからも政府の方からも言われている。実施機関のADBや世銀もそういう方向に走り出している。中国もそうしたいと言っている。皆そこのところには異論がないですよ。ということになると、そこのところを中心にやるんだなということになるんだけれども、それは日本がどうしようと、そちらの方に行きそうな気配ですから、だとすれば、日本はそこに加えて、日本だってJBIC(国際協力銀行)もあれば、JICAもあれば、独自の経済協力実施機関もあるわけですから、そういうところにも負けずに一緒にコラボをやれと。ちょっと中の様子を探れと。かつなるべくこちらの国際観光の方へ、若葉マークを引っ張ってこいということに心がけると、2年後に加盟するのもよし、加盟しないもよしという、自由度を大きく、保持できるのではないかと思うんですよ」

中国の経済戦略とは? “一帯一路”構想の狙い
秋元キャスター
「2013年秋に一帯一路構想を打ち出しました。なぜ中国はこの構想を掲げているのでしょうか?」
津上氏
「もともとは周辺国にも中国が経済発展すると良いことがいろいろあるなという思いをしてもらい、中国の周辺との対外関係を改善するという外交政策からスタートしているように見えたんですけれど、その後の国内の議論を聞いていると、ちょっと待ってよという感じです。現在、中国製造業で鉄鋼をはじめとして、過剰な設備投資をしちゃったものだから、過剰設備どうするかという大問題になっているんですね。一帯一路で新幹線みたいな高速鉄道を通すとそこでまたレールの需要が出てくるとか、そういう国内の過剰設備問題を何とか緩和する役割があるのではないかとか、中国企業もこれから海外に投資して進出しなければいけないと。そのために非常に役に立つとか、それから、高速鉄道というと、中国の国内を通るわけですが、沿線地域の開発の起爆剤になる、人民元の国際化に役立つ、自分の利益のことだけを議論しているんです。もう大盛り上がりになっている。現在の一帯一路の(中国)国内の議論には批判的ですよ」
加藤氏
「シルクロード基金は100億ドル規模ですけれど、AIIBの方は資本金が1000億ドルとすると、それをバックに、マーケットからその何倍もの資金を調達してくるということですから、動員できる資金量というものが、AIIBの方がかなり大きくなる可能性を秘めているので、だから、マーケット資金を活用してという観点からは、中国政府にとって一帯一路を実現していくうえで、AIIBの役割というの無視できない。あるいはかなり重視しているのかもしれません」
反町キャスター
「その先に中国が意識しているのは、よくG2と言うではありませんか。アメリカに対する新しい軸をつくるとしているという感覚はありますか」
加藤氏
「ありますね」

加藤隆俊 元IMF副専務理事の提言:『日中戦略経済対話の立ち上げを』
加藤氏
「米中戦略経済対話は、年に2回やっています。その下にワーキンググループを幾つかぶら下げて、会議用にめがけて皆、それぞれ宿題をこなして、いろんな面での自由化を進めてきています。日中間で現在そういう仕組みがありませんので、日中財務対話というのを6月にやるという新聞報道ですけれども、もう少し幅広く経済問題を話し合い、そのワーキンググループをつくって、お互いの国内市場の自由化を進める1つのきっかけとするような枠組みが日中間であった方がいいと思います。おそらくAIIBの話に関しても7月と言われる米中戦略対話でかなり議論すると思いますので、そういう機会をできるだけ多く、日中間でやった方がいいと思います」

現代中国研究家 津上俊哉氏の提言:『政治主導外交の深化』
津上氏
「今回参加しないということが最初から決まっていたみたいな、そういう後日談が出てくるのは、日本の政治、あるいはマスコミも含めた全体の対中間ムードで、霞ヶ関がそれに対する異論を挟むということが怖くてできないみたいなバイアスがかかったことになっているんだと思うんです。ある意味で、今回みたいな結果になったのは必然だったと思うんですけど、そういうバイアスをかけて議論すると良くないことが起きちゃう1つの見本だったような気がするんです。でも、今や全てを政治が主導して、政治が責任を負わなければいけないという時代になっているとするなら、そういうバイアスがかからないように何とか全体を運んでいかなければいけないというのも、政治が心しなければいけないことだと思うんです。そういう意味で、これはバイアスかかるなと思った役人は、そこのところを意識的に、官邸が逆の方の考え方も出してみろというふうに誘導するとか、そこまでやれないと政治主導の責任は全うできないのではないかと」