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2015年4月13日(月)
楽観?悲観?株価2万 徹底対論アベノミクス

ゲスト

浜田宏一
内閣官房参与
浜矩子
同志社大学大学院ビジネス研究科教授

徹底対論!アベノミクス 株価上昇の背景
秋元キャスター
「アベノミクスの効果について、先週の金曜日に一時2万円台をつけた株価と、為替の値動きについてまず見ていきたいと思います。まず株価を見ていきます。2013年1月の日経平均株価は1万688円でしたが、4月、日銀が行った量的、質的金融緩和、いわゆる異次元金融緩和により株価は上昇傾向になりました。昨年は、消費税増税、また原油価格の下落を受けて、株価は横這いだったんですけれども、これを受けて日銀が昨年10月末にさらなる金融緩和策を発表し、株価は再び上昇。先週金曜日には再び2万6円をつけまして15年ぶりに2万円台を回復しました。今日の終値は1万9905円と、2013年と比べますと、およそ2倍の高値となっています。浜田さん、この株の上昇、株高はアベノミクスによる金融緩和の効果が出たものと見てもよろしいのでしょうか?」
浜田氏
「一般的に言えば、そういうふうに見ていいものだと思います。お金が出ていくと、市場にたくさんの貨幣が投入されるわけですから、もう少し貨幣でなくて、株式で持とうという人が出てくると。それをリフレ反対の方はまったく理解できていないわけですけれども。そういうような状態で、株価が高くなって使えるということで、消費も増えていくという好循環が生ずるわけです。ただ、株式というのは、あくまでも資産市場の思惑にも依存するものですから、いつ下がるかもわからないと。そういうものがあって、雇用市場に、投資に、それから、モノの需給に表われてきている。これがまさに現在起こっていることですけれども、それがあるということは、アベノミクスを強く信じていいことで、その1つの兆候が株価の上昇だと思います」
反町キャスター
「中身の問題だと思うんですけれども、中身が伴った株高なのかどうかという議論があります。まず上がったことはいいにしても、上がる根拠はどうだろうと。ここの部分の議論については、どう見ていますか?」
浜田氏
「その前に言っておきますのは、何年前に上がったかは覚えていないんですけど、株式の時価総額というものを普通に見ると数年前に1番高かった日本の株価と同じぐらい、上がっていたわけです。指数はいろいろ、どれを選ぶかですから。ですから、今回、初めて、この前の4万円に近かったのが半分にきたわけではなくて、前の水準は、経済学的に見ればもう済んでいるということ」
反町キャスター
「済んでいるというのは、クリアしている?」
浜田氏
「クリアしていたと。それをさらに超えているということで、前の水準に戻ったと考えるのは非常に悲観的過ぎる見方だと」
浜教授
「先ほど、見せていただいたデータを見ると、面白いと思うんですけれど、必死で政策をもって株価を押し上げている姿ですね。ちょっと勢いがなくなってくると、追加緩和とか、円安を推進するとか、そういう格好で懸命になって、政策で、株をよいしょ、よいしょ、と押し上げている。それで何とか2万円にしなくてはいけないというので、2万円にするんだ、するんだと。なるんだ、なるんだと、あれだけ言っていれば、投資家達もそれに誘われて、そこまでいくのだろうと思うから、そうなると、そういう現象が見えているわけですけれども、これは日本経済の実態と全然関係がないですね。過半数を大きく上まわる人達は景気回復の実感を持っていないということで、株価は、正常な姿であれば、経済の実態を反映して、上がったり、下がったりするというのがまともな関係ですけど。ですから、逆に、株を上げることによって、景気実態を良くしようというのは、そもそも全然、本末転倒というか、すごく無理のある関係つくりだと思いますが、もはや、そういう関係づくりさえも、ちょっと発想の外に出ちゃったみたいな感じで、ともかく株価を何とかすればいいとか、株価を何とかしなければいけないという政策展開がこういう数字をもたらしているに過ぎないという、そういう姿だと思います。だから、むしろ、現在の政策の責任者達は、株式市場に、逆に言えば、振りまわされたと、株価を良くしなければならないというメッセージに対応し、がんばりますという感じで、政策を出しているとか、そういう意味では、金融政策としての主体性を失っているということが、この株価の動きに表われている。そういう感じではないかと思います」

株価上昇の背景
反町キャスター
「浜田さん、たとえば、株価の上昇が1万8000円以上に順調に上がってきたと。一方で、海外投資家の買取額と、日本の、いわゆる日本の金融機関、信託銀行の株式買取額というものが、たとえば、2013年の頃というのは明らかに海外投資家の買越しがずっと続いていて、それに連動するかのように、株価がどんどん上がってきたと。ただし、2014年に入ってからは、海外投資家の買う部分と、邦銀の信託銀行の買う部分というのが結構、競っているというか、海外投資家の買う機運、気持ちというのが、だんだん薄れているのではないかというイメージが出ているんですけれども、これはどう見たらいいのですか?」
浜田氏
「そういうふうにお読みになるのは、1つの見方だけれども、逆に言うと、日本でも金融政策がちゃんと効くのだという、250年の歴史のある経済学。私も大先生にたくさんついて、幸いに習ってきた。そういう人のことがわかる人が増えた。非常に健全な状態だと思う」
反町キャスター
「そうすると、日本の株というか、日本経済の将来性について、最終的に目をつけたのが海外投資家で、現在ようやく、ちょっと遅れて、日本の銀行も、そこにチャンスだと思って、気がついたら追いついてきた?そういう理解?」
浜田氏
「そう。私はそういうふうに理解しました」
反町キャスター
「株高の背景として、よく言われるのはGPIFと日銀によるETFの買い上げです。いわゆる年金基金が大量に日本の株を上げるとか、買い増しの方法をとる、日銀がETF(上場投資信託)という株価、平均株価と連動する金融商品を大量に買い込むというようなことをすることによって、言葉が悪いですけれど、官製相場という人もいるんですけれど、そういう形で株価を押し上げてきたという、こういう見方に対してはどう感じていますか?」
浜田氏
「2つありまして、日本銀行が、ETF等にたくさん民間経済の自然な価格、メカニズムに介入するのが良いのかというのは問題としてはわかります。しかし、GPIFというのは、そのトップだった人はほとんど経済学も金融論も知らない人がやっていたわけです。何パーセント以上は買うなという、非常に厳しい条件の下でやってきた。そういうお役人として成功したけれども、金融論もファイナンスもわからない人がやってきたのが、現在、変わってきているので、いいと思います」
反町キャスター
「株高の根拠として日本の実態経済が元気になっているとか、そういうことではなく、いわゆるGPIFとか、日銀のETFの買い増しとか、そういうものないしは金融緩和です。実態経済ではなくて、そういうものが株価を押し上げているという要因。これは皆さん、認める部分があると思うんですけれど、結果、現在、求人倍率が1.15まできたという、つまり、経済の実態があとからついてきて、良くなってきている?」
浜田氏
「それでも、株価が上がってきて、経済の実態が良くなったことを、反町さんは、まずいというわけですか?」
反町キャスター
「それをどう見たらいいかという話です」
浜田氏
「現在は求人倍率、その他も随分良くなってきているんです。だから、私は非常に安心しているわけです。株だけ上がっているのだったら、いつ崩れるかわからないと。円も思惑で違うから。しかも、100万人ぐらいの雇用が安倍政権でつくられているわけで、そういうことをやった政治家はいないです。それを認めないで、金融政策をやり過ぎると言うのは、全然、私は理解できない。そういう経済学を流す人というのは国民経済に害悪を流していると、これは私の言葉ではなく、アメリカの前のCEA委員長が言ったことですが、そういうことが起こっているのだと思います」
浜教授
「現在の株価と投資家の動きということではGPIFにしろ、日銀のETF買いにしろ、そういう公的な、言ってみれば、誘導があるから、ある意味では、それに引っ張られて、民間投資家が株式市場に入ってきているという、そういういわば、リスク資産に民間投資家を誘導するということが政策的に行われているということだと思います。そういうことに公的誘導があるということは、これは誤解ですけれど、ドンと大きく下がることはないではないかという思いもあって、だんだん人々が、言ってみれば、おびき寄せられていると。株式市場に投資家をおびき寄せる作戦がずっと展開されていると。それが外国人投資家であったと。彼らは売るために買ったと言うわけですけれども、売るための買いでも、現在、明らかに買いだという雰囲気をつくったから、それは外国人の買い越しが先行したと。それが一巡したあとは、国内の投資家を呼び込んでいかなければいけないというので、この手の政策が展開されているということの結果を、ある意味で、非常に素直に反映した姿になっているのではないでしょうか」
反町キャスター
「要するに、ポイントとしてずっと20年近くデフレが続いたあとに起爆剤として、まず動き出すためには、金融緩和をやって、多少、資産的な富裕感を出して、株価を上げる、無理やり上げることによって、そこから経済をまわそうというアイデアも、僕はそこにはあったと思うんです。それは良くないのですか?」
浜教授
「良くないと思いますね。言ってみれば、毒をもって毒を制すという考え方で、デフレを制するためにはバブルにするという。これは非常に危険な発想だと思いますし、それこそそれを正当的なリフレ政策とは言えないであろうと思います。だから、実態経済がちゃんとうまくまわっていくようにしていくということで、そのことを素直に反映して、株価が上がっていくのであれば、そこから先は確かに、好循環になっていく可能性もあります。でも、浜田さんもまさしくおっしゃっているように、株式市場というのは、投機性のある市場ですから、いっぺん軌道に乗せればうまくいくでもない。株からスタートするというのは、私は邪道だと思います」
反町キャスター
「浜田さん、ここはどうですか。資産価値を上げることによって景気をまわしていこうという、この方法ですよね?」
浜田氏
「そうです」
反町キャスター
「それは、どういう?」
浜田氏
「それは、岩田規久男さんの考え方で、まさに、世界の金融学者、ファイナンス学者はほとんどがそう思っています」

円安のメリット・デメリット
秋元キャスター
「先ほどは株価について見ていきました。今度は為替の推移を見ていきたいと思いますけれど、ドル円相場は株高やアメリカ景気の回復を受けまして、今年1月には88円前半だったんですけれども、120円台前半まで、円安は現在進んでいます。浜田さん、円安が進んだことによる景気回復への効果。これを評価されていますか?」
浜田氏
「これはJカーブというか、輸出の伸びには遅れがあるとか、いろいろなものがありますし、それから、日本はだんだん年をとっていますから、経済収支は日本がいつも経常収支を集めるような成長経路はとれないわけですので、いろんな問題がありますけども、まさに、旧日銀政策の1番の失敗は、リーマン危機が来て、円高になり過ぎた時に、それを防ぐことができなかった。金融政策でできたのにしなかったと。それが最大の罪悪であると思うんですけれども、それを逆に行っているわけですから、うまく働いていると言うだけです」
反町キャスター
「そうすると浜田さん、現在の、たとえば、120円ちょっとぐらいの水準。これはだいたい、このぐらいの値ごろ感なのですか?もうちょっと進んでもいいぐらい?どのように感じますか?」
浜田氏
「それは日本経済の雇用とか、生産の状況が、一番望ましいところに、金融政策というのは行われるので、為替レートを見てやってはいけないと。為替レートでこれだけにしようとすると、本当に為替戦争になってしまうと。変動制の下では、ユーロはダメで、ユーロに入った国は変動制ではないです。日本の場合には、自分で為替レートを決定することができる。金融政策が為替に効くということは、浜先生は別だろうけれど、ほとんどの経済学者は、何もわからなかった時代に比べて、現在は順調に進んでいると思います。ただ、長期的な統計の数字である購買力平価というのにしますと、120円というのはかなり円安の方に振れているという人もいます。私の共著者である安達(誠司)さんに言わせると、100円ぐらいの購買力というか、100円ぐらいかもしれないけど、そのぐらいのところなものだから、120円、それが125円以上、130円にいくと、それは行き過ぎだと。行き過ぎだと思うと、行き過ぎだと理解させ、それで儲けようというジョージ・ソロスのような人が現われてくると。ですから、為替を円安にしようと、我々学者が言うべき状況ではないと思います」
反町キャスター
「そういう意味でいうと、105円ぐらいが、日本経済にとって手頃な良い具合だというような感触?」
浜田氏
「日本で何を買っても、アメリカで何を買っても同じとなったと。そういうような状態には近いと。だから、非常に長い間、購買力の低下から、為替レートが高いとか、安いとかが起こったら、何か起こるということです」
反町キャスター
「120円という為替水準、日本にとって良いのか、悪いのか。そこから聞いていきます。どう感じていますか?」
浜教授
「現在の日本にとって非常にフィットが悪いレベルであろうと思います。それは、現在の購買力平価の議論でもそうですし、日本が債権大国であり、一方においてアメリカは債務大国であるという関係からみれば、債権大国の通貨が相対的に高くなるというのは、ごく自然の成り行きだというふうに思うわけです。だから、その2つの側面から考えて、120円というのは明らかに適正なレベルではないと思います。為替レートというのは経済的なバランス、均衡をもたらすようなところに落ち着くのが1番当たり前だし、穏当なわけであって、政策が為替市場に介入することが許される場合というのが、仮にあるとすれば、そういう全てをうまくバランスさせる方法に為替が向かっていなくて、それと逆の方向にいっちゃっている時に、うまいバランスに到達するようなところに、為替関係を引き戻すためには、先に政策が介入するのはあり得ると思うんです。だけど、そういうバランスによって、マッチしない方向に、政策が意図的に為替を動かそうとしているということが、幅広く一般的に見えちゃうと、それこそジョージ・ソロスも然りですけれども、そういうところから儲けようと思う人達がいろんな動きをすることによって、為替市場がどんどん攪乱されていくという問題が出てきますよね。だから、とりあえず120円が適性かというところに話を限定しておけば、他にもいろいろあると思いますけど、そこは以上の理由で、こんなところにあるべき筋合いのものではないと思っています。どんどん円安を目指して動いてくというこの政策というのは、これは浜田さんもおしゃっている通り、変動相場制の状況の中で、そもそもそれがうまくいくかというか、一定の水準を目指すということが現実的かということもともかくとして、為替を安くすることによって経済を成長させるという発想は、どうも現在の日本との関わりではすごく時代錯誤だと思うんです。そもそも輸出立国的な構造にあるわけではないし、輸入依存度も高くなってきている。これだけ大きな経済、成熟度の高い経済は輸入依存度が高まるのは当然ですね。そうすると、輸入に依存している部分が大きいのに円安になるということはコスト負担が非常に大きくなってくる。現状においては円安に伴って、家計は生活コストが上がる。企業、とりわけ中小、零細企業は生産コストが上がるという、いずれにしてもコスト高に痛めつけられるという格好になっていくわけで、そちらの方向がどうしても大きく出てしまう。確かに、ここに来て円安効果で輸出する量が伸びる。Jカーブ効果というのは前から言われていることですから、若干その効果は出ていますけれど、そこにかけるほどの大きな数量効果が出ているとは見られない。一方で、輸入面で痛めつけている部分が大きいということで、そういうところを一応全部考えると、なぜここまで力を入れて円安を追求するのかというのがどうしてもわからない。発想がちょっと浦島太郎なんじゃないのと思うわけです」

日銀の物価安定目標は
秋元キャスター
「黒田日銀総裁は今月8日の会見で『量的・質的金融緩和は初期の効果を発揮しており、今後とも2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで量的・質的金融緩和を継続する』と発言していますが、物価上昇の現状と、黒田日銀総裁の発言、これをどう受け止められますか?」
浜田氏
「初めの2行はまったく賛成です。しかし、2%というのをつくったのはインフレがほしいわけではないですね。インフレというのは大衆課税なわけです。誰でもお金を持っている人に課税がくるわけで、だから、政府にとってはイージーな時があるから、政府がインフレ政策をとり過ぎてしまう危険というのはどこの国でもいつでもあるわけです。そういう意味でインフレは好きではないけれども、なぜ2%と言ったら、各国も2%やっているからというのは、1つですけれど、もう1つはお金にしがみつくとお金がじゃぶじゃぶで、だから、金融政策をやっても役に立たないということに対抗するには、お金を持っていると少し目減りすると思わせた方が、人々がお金離れをするのではないかということを、特に、岩田規久男さんは考えまして、それで2%ぐらいと言ったんです。その時にでも原油価格が2分の1になるとは誰も思っていなかった。日本銀行だって思っていなかった。そういうことで、石油を含んだのがどんどんゼロに近づいていく、それは日本銀行のせいではないと思うんですね。ですから、コアの、0.3の方をこういうふうに石油化学が非常に強く動く時には考慮すべきだというのが、世界のマクロ経済の学者と一致してるんです。ただ、0.3というのはデフレ期待を払拭するにはあまりに小さ過ぎるということで、これがずっと続くようであれば、インフレ目標を貫徹するという意味であれば、黒田さんがもう少し書かれたように、よりドラスティックな政策も用いるということも起こり得るだろうと思います。しかし、あまりにもインフレ目標に人々の注目がいっていて、本当は、我々は雇用がほしいわけですね。テント村がすぐなくなって、大卒の就職率が良くなると。そういうことが目標なわけですから、2%にこだわる必要はないと、それはお金離れさせるためのいい手段だけれど、究極的な経済の目標ではない。これはいわゆるリフレ派というのですか、リフレ派の人達と、私と少し別れるところです」
反町キャスター
「黒田総裁のさらなる金融緩和の必要性というのをどう見ていますか?」
浜田氏
「これが、0.3がずっと続くとやらなくてはいけないと思いますね。しかし、たとえば、1%までいって、2%が目標だろうから無理だろうというのはインフレに過ぎるのではないかと思いますね」
浜教授
「そもそもこういうものを達成目標にしていいのかという問題があります。この数字を見ていると、人々の生活が苦しいということが、そこに表われてきていると思います。景気回復の実感がないとか、確かに、失業率は下がっているということは間違いなく事実ですけれども、でも、これには非常に大きな地域格差があるということもある。一方においては、貧困率という数字も上がっていく。そういうような状態の中で、人々がモノの値段が順調に上がっていくような、モノの買い方をするということにはなかなかならないということが、この数字に表われているのだと思います。そこをどうするかと考えなくてはいけないので、インフレ期待については、まさに浜田さんが言われた、お金を多少持っている人は貯め込まないで、金離れっていうふうにおっしゃいましたけれど、金を持っていない人にはどうにもならない話なので、そんなに生活が苦しいのに、買い急ぎをしなくてはいけないのかというような話になってくると、それは人々の生活を痛めつけるということにもなっていくわけですね。だから、物価目標というのを掲げて、人々の金離れをよくするというのはゆとりのある人の世界においてはいいですけれど、物価が上がることを阻んでいるのは実はそういうゆとりのない人々の生活の苦しみであると思うわけです」
反町キャスター
「先月、今月で企業の機械受注の数値も下がっているのですが、企業の投資が伸びていない?」
浜田氏
「それは政府がとめているんですよね。日本の法人税率は世界一高いですよね。消費税は大変な議論でしたが、重要なのは法人税で、日本とアメリカが高い。それでは皆、シンガポールに投資するか、韓国に投資するか、日本に来ないわけです。アベノミクスがうまく働いていないのかというと、それは1の矢が問題ではなく、3の矢がちゃんとやっていないと。成長戦略はどれも大事ですが、政府が現在できることは、法人税を安くすればいいわけです」

トリクルダウンは
反町キャスター
「トリクルダウンの見通しは」
浜田氏
「私はリフレ派の人にトリクルダウンを使わないでくれと言われているのですが、なぜならばレーガンがやったのは、もう少し直接的な所得分配に対する介入であって、金持ちの税率をどんどん下げちゃったわけですね。それを言い訳にしたのは金持ちが懐豊かになれば、どこかで使ってくれるだろう、それはほとんど起こらなかった。現在起こっているのは、金融緩和をやって企業の業績が良くなる、あるいは株式が好調で、消費もインセンティブがあるということで、賃金が上がり、雇用も、所得も増えてきていると。それが日銀の言う通りであれば、そのまま話して終わりですけど、それが本当にうまくいっているということを、リフレ派の学者ですらあまり信頼できなくなっているというところが現在のクエスチョンマークがあるところだと思いますね。ただ、賃上げについて言いますと、賃金の方が物価よりも遅く上がってくれるのが絶好の条件ですね。日本経済の成長のためには賃金が物価より先に上がってはダメです。なぜなら、それは需要サイドでは賃金が増えると使う人が増えますけれど、供給サイドの企業、中小企業と考えた時に実質賃金が上がっているところで人は雇えないわけです。そういう意味で、人を雇うためには実質賃金が下がった方がいい。だから、物価は賃金より少しはやく上がるというのが望ましい。これはケインズが一般理論等で議論していることでもあります」
反町キャスター
「トリクルダウンは、アメリカでは起きなかったという話がありました。日本ではどうですか?」
浜教授
「歴史的に見てトリクルダウンと言われている効果が出たというためしはないと言ってもいいでしょう。19世紀に遡っても、それは起こらない。もともとトリクルダウンという言い方は、それを使うなと言われているというのはすごくなぜだかよくわかりますが、そもそもトリクルダウンという言い方は、そんな言い方をして、金持ち優遇ばかりをやっているやつらがいるという、ニュアンスで使われた言葉ですよね。これは別名『馬と雀政策』と言いまして、馬にいっぱい干し草を食べさせると、馬の体の中を通ってそれが下に出ていきますよね。そうすると、馬糞に雀がたかって雀も食料に預かることができるという言い方をしていて、だから、実は本当に下々のものはそんなので我慢しとけという、いわばそういうのが出てくるまで待っておれというような、実にそういう意味では差別的なものの言い方を政策責任者達はしているのではないかというニュアンスで使われ始めた言葉です。だから、本当はトリクルダウン効果があるから、これは良いとか、悪いとか、そもそも言うような性格な言葉ではない。ということをまず認識しておかないといけないと思いますが、それはそれとしてわかったうえで、その言われるところのトリクルダウンというのはもちろん、いわゆるレーガノミクスの時にはなかったですし、レーガノミクスほど身も蓋もない、そういう金持ち優遇ではなかったけれども、レーガノミクスの半歩前に展開されたイギリスのサッチャー政権下のサッチャリズムというやつも、そういう基本的には強いものをより強くすることが全体に恩恵を及ぼすという発想だったけれど。そういう効果は出なくて、結局のところ格差が拡大するばかりという展開になったというので、トリクルダウンという言い方は、私は端的に言えばまやかしだと思いますね」

浜田宏一 内閣官房参与の提言:『消費税より法人税の大幅な減税 弱者を本当に救っているのはアベノミクス』
浜田氏
「アベノミクスはトリクルダウンの部分も株式その他ありますけれど、それよりずっと広い概念なわけです。労働市場がタイトになって、円安の効果もあり、いろいろな効果があって、それで雇用が100万人現実に増えてきたと。そういうのはレーガノミクスにはなかったのだろうと思います。そういう意味で浜先生の定義するアベノミクスというのは非常に実際よりもずっと狭い概念であるということ。消費税は間違って上げたというのが正しいのでしょうけれども、消費税より法人税の方がこれからの問題であると。日本は投資が不足しているわけですから、機械受注が不足している。法人税を大幅に安くして、他の国よりも安くするという意味の、考えて見れば、戦略的な租税政策が必要であると、私が、だから、一生賭けてやってきたことというのは、通貨戦争と租税戦争のことなのだと、現在になって、それはかなり実際に使えると学者としてはどちらかと言えば、幸せな状態にあるわけです。もう1つ言いたいのは、弱者を本当に救っているのはアベノミクスで、これを昔のような金融引き締めの方に戻そうという囁きが今日もありましたけれども、そういうのが皆に伝わっていくと、本当に15年間の長期不況に日本経済が陥ってしまうということです」

浜矩子 同志社大学大学院教授の提言:『傾ける耳 なみだする目 さしのべる手』
浜教授
「現在の日本の政策に1番必要なものを3つ掲げました。浜田さんがいみじくもこの弱者という言葉を使っていただいたので、これは全て弱者に関するものです。弱者の叫びに傾ける耳、弱者の姿に涙する目、弱者の救済のためにさしのべる手。耳と目と手、この3つのものが現在、日本の経済政策には間違いなく必要なものであるということだと私は思っています」