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2015年4月1日(水)
国会議員をどう選ぶ? 1票の格差は悪なのか

ゲスト

伊吹文明
前衆議院議長 自由民主党衆議院議員
佐々木毅
「衆議院選挙制度調査会」座長 東京大学名誉教授

なぜ続く?抜本改革は? “1票の格差”問題の本質
秋元キャスター
「2014年衆議院選挙1票の格差訴訟で、合憲としたのは4件、選挙無効とはしなかったものの違憲状態としたのが9 件、選挙を違憲としたのが1件。この判決をどう受け止めていますか?」
伊吹議員
「合憲とした東京高裁は同時に裁判官が違えば違憲状態という判決も出たわけです。大阪高裁についても同じでしょう。だから、憲法14条、法の下の平等ということで、1対1でなければ絶対にいけないんだということであれば、全国一律の比例代表選にすれば格差はなくなります。ただ、多数党が乱立することによって、ヨーロッパのいろいろな国のように政権がつくれない、混乱が生ずるというデメリットがあるわけですね。国会がいろいろ判断をしながらつくっている制度には立法の主旨というものがあるわけですが、それと1対1でなければいけない。あるいは1人が2票を超えてはいけないという絶対的なルールがあるかどうかということが現実に問われている。だから、現実が動かないような議論をやってもしょうがないし、動かないからダメだよと言って、法律を無視してもいけないし。その間の調和を目指してつくっていくというのが国会の役割だと思います」
反町キャスター
「1票の格差の議論を見た時、毎回毎回問題になるということは、それは正すべきものなのか?」
伊吹議員
「それは正せれば正した方がいいけれども、人間は憲法上、移動の自由、居住の自由というものを持っているわけでしょう。現在の日本の社会から言うと、都市集中というのが良い悪いの議論はありますが、職を求めていろいろなところで動いている。今回問題になっている東日本大震災の結果、1番人口が少なくなってしまった宮城県の選挙区のような例も起こってくる。そのようなことになると、何年間かの一定期間を通じて、ここまでは許されるのだということを決めておかないと、少しでも、たとえば、2倍が絶対的に正しいかどうかは別ですよ。3倍でも憲法違反ではないという判決も昔はあったわけです。そうすると、2倍を超えれば憲法違反だということになれば、有権者が投票した市は、選挙ごとに4年間、衆議院の任期があったとしても、選挙ごとに区割を変えなければいけない。そうすると、反町さんに投票して、4年間見ていて、今度あいつには投票しないとか、反町さんには投票しなかったけれども、あいつはよくやるから、今度は投票しようとか、そういう有権者との安定性というのはまったくなくなってしまう。このへんをどう判断するかという問題ですよ」
秋元キャスター
「福岡高裁の判決要旨(3月25日)ですが、『是正期間の起算点は国会がこの状態を認識し得た最高裁判決言い渡し時の2011年3月23日。今回の選挙まで約3年9か月が経過し、法改正も解消していない。是正が不十分であることが明らかになっている』としています。この指摘はいかがでしょうか?」
伊吹議員
「国会が憲法にいうところの唯一の立法機関であり、国権の最高機関、つまり、日本の主権者は国民である。国民から国政のために国権を預かれるのは、まさに、現在話題になっている選挙制度を通じて国会議員だけなんですよ。日本は大統領制の国ではありませんので。まして一党独裁の国でもなければ、絶対王政の国でもないから、国民が国のことを決める権限を委ねるのは国政選挙しかないですよ。だから、できるだけ公平にしなければならないという要請は一方であります。しかし、同時に有権者と被有権者、つまり、国会議員の勤務評定、あるいは国会議員がやったことに対する主権者への報告。こういう関係を安定させるために、国会は区画確定審議会に直近の国勢調査の結果が公表されてから、1年以内に2倍を超えないように区割を確定すると書いてあるわけです。この立法主旨は、直近の国勢調査というのは、平成22年10月1日です。その結果が、官報に公表されたのが平成23年10月26日。その時には2倍を超えないように区割を変えないでおくと国会が自ら立法しているわけです。前回の平成24年12月の選挙は、平成23年10月26日付、つまり、1年間の確定したあとに行われていたのに、0増5減の区割を通していなかったから、これは明らかに国会が怠っていたわけです。だから、この時は違憲状態という判決がほとんど、中には違憲であったと。しかし、同時に0増5減の区割はつくらなかったが、枠だけは通したと。後ほど出てきますが、小さな県にも1つずつ割り当てるという方式は法律から外してやったと。そういう判断を最高裁がして、選挙結果は有効だと。その後0増5減というものを国会で通したわけです。その結果、必ずしも満足のいくものではなかったが、一点九九何倍の倍率に、直近の国勢調査の結果を参考にする限りはできていたわけで、そうすると、国会が立法した主旨はこの区割を確定することによってクリアしているんですよ。そうすると、直近の国勢調査を前提にしてということを国会は言っているわけだから、10年の間は憲法14条の、法の下の平等というのが、どこまで許容されるのかということ。スタート時点では2倍は超えていなかった。国勢調査は10年ごとです。その間は車で言えばハンドルの遊びが若干あった方が、国政というものを運営していくうえで、安定的に運転できるのではないかと。1回ごとに2倍を超えたらすぐに選挙の区割をころころ変えてしまうということが現実的にいいかどうかという判断をしなければいけないと思うんですよ。平成24年に自民党政権が戻った時に、次の選挙は明らかに区画確定審議会法の規定を、自分がつくった法律を自分が守れなかったなんてとんでもない話だった。だけども、平成26年12月の選挙はまがりなりにもクリアしていたと。だから、合憲が4つ出てきたのは、当然だと思っています」

まだ残る? 1人別枠方式
秋元キャスター
「福岡高裁の『1人別枠方式の構造的問題が解決されず是正は不十分だ』という判断についてはいかがですか?」
伊吹議員
「民主党政権の時に0増5減という枠をつくると同時に、1人別枠方式、つまり、どの県にも1議席ずつ割り振ったあとで、残っている議席を人口比例で今度は割り当てていきますと。そうすると、人口が非常に少ないところは優先的に1議席を割り当てられるから、格差の原因になるんですね。だから、2011年福岡高裁、最高裁の判決は1人別枠方式の廃止を求めたわけです。だから、民主党政権の時に1人別枠方式をまず外したわけですね。外すと同時に0増5減にしますという法律を出して、区割を決めないまま、平成24年の総選挙に突入しているということでしょう。だから、1人別枠方式を外しちゃったんだから、人口によってどういうふうに各県に定数を配分していくか。後ほど出てくるのでしょうが、アダムズ方式とか、いろいろ難しい方式を検討しているわけです。これは理論的に正しいと同時に、多くの人達をできるだけまとめて賛成に持っていかなくてはいけないという別の要素があるんだけれど、そういうことをやっていますから。敢えて伺いたいのは、もし1人別枠方式に代わる、新しい方式が佐々木先生のところで提案され、各党がそれに合意をして法律をつくったとすれば、10年間の国勢調査の最初に2倍を超えてなければ、10年経って2倍を超えていても、その間に行われた選挙については、憲法違反ではないという判決をされるのかどうなのか、これが事前に日本の仕組みでは擦りあわせができないですね」
反町キャスター
「たとえば、最高裁までいって、1つの判例として枠を決めることはできないのですか?」
伊吹議員
「今回はまだ1人別枠方式に代わる新しい仕組みができていませんね。これが今度、佐々木先生のところで答申されて、安倍総裁は、自民党はそれに従うと言っているわけだから、他の党も従ってもらわなければならないのだけれども、それが法律になったとして、そのもとで選挙が行われ、2倍を超えていても、最高裁でこれは合憲だとか、違憲だとか言わないと、決められない憲法と言うか、日本の統治システムになっているんですね。だから、憲法改正の時にいろいろ議論しなければならないことだと思います」

選挙制度調査会での議論
秋元キャスター
「衆議院選挙制度に関する調査会では幅広い諮問事項が並んでいますが、まずは1票の格差是正が喫緊の課題として議論が進んでいるのですか?」
佐々木氏
「これは伊吹議長のもとで我々の委員会は発足したんですけれども、いわゆる憲法問題ですから、定数削減の問題は政治問題ですが、憲法問題をまず優先しようということで、幾つか内部的に確認しながらこれまでのところ進めています。1つは、0増5減という緊急是正をやったわけですけれど、その際どのような形で議席を都道府県に配分するかという条項が消えてしまったわけです、いわゆる別枠が削除された。それに代わる配分の方法を決めないといけないというのが1つですね。それから、配分の基準は人口を基準にしようと。有権者という説もあったんですけれども、人口を基準にしようと。都道府県単位で配分すると。それから、定数配分の見直しは大規模国勢調査の人口統計に基づいて10年ごとに見直しをすることを基本とするという、これもいろいろ議論があったのですが、そのうえで各党への配分方式として、いくつかの条件を念頭に置いたらどうかというのがこれまでの議論です。どういうことかというと、都道府県格差をできるだけ少なくするということが必要であると。それから、定数1人の県をなるべくつくらない。ちょっと緩いんですけれど。それから、配分見直しによる都道府県の議席の増減変動をなるべく小さなものにする。二十幾ら増、21削減みたいなことにあまりならないように。その点についても方式を判断する時の材料にしようと、こういうことですね。それから、将来の人口変動。地域間のギャップですね。これにもある程度対応できるものでなければならないだろうというような条件を掲げまして、いろいろな方式の試算、あるいは推計をもとにした議論をやってきているというのが現在までのところです。そういう中、新聞等でお話が伝わっていますが、アダムズ方式というものが1つの候補として出てきましたが、まだ結論が出ていませんので、これからどこかの段階で議論の詰めをしなければならないと思っています」

是正策“アダムズ方式”
秋元キャスター
「アダムズ方式とはどういうものですか?」
佐々木氏
「総定数が295ですね。これを配分するというわけですね。ある序数、実際は47万人ちょっとですが、これで各都道府県の人口を割るというものですね。割ると、小数点以下が出てきます。その小数点以下を切り上げる、3点何々が出てきたら4にする。切り上げて議席の配分をするということで、こういう計算式についてはいろんな議論があって、要するに、議席の見直しの時にたくさんの県が影響を受けることが比較的少ない。定数1人の県をなるべくつくらないと。具体的には鳥取県が話題になりますが、それから、都道府県間の議席差を低い水準に収めるということ。試算をしてみて、もう少し確信がもてるかどうかを考えてみたい。いろんな方式を比較しながら、検討して、最終結論には至っていませんが、日本ではどういう方式でやるかなんて法律の条文に書いていないこともありますから。とにかく1人別枠方式プラス最大剰余法式という、これまでの条文です。本当に変動幅が小さい、議席がほとんど動かない方式なのですが、いかんせん天井がつかえているものですから。いろんな方式でサスティナブルかどうかを見極めようという、そういう観点から、相対的にこれだったら納得が得られるかなというものを探そうというのが、我々の基本的な作業ではないかと。そういう気持ちで現在作業中ですので、結論は待ってください」
反町キャスター
「このアダムズ方式でいくと、1県1選挙区というのは起きないのですか?」
佐々木氏
「起きない」

衆議院の選挙制度改革 格差是正と定数削減
秋元キャスター
「調査会としては定数削減の問題をどう考えていますか?」
佐々木氏
「いや、まだ議論していないんです。現在ヒアリング中で、自民、公明、民主、維新の4党からヒアリングが終わって、残りの政党が来週ですか、お話を伺うということになっていますので、ちょっとまだどういう議論が出てくるか、私も見当がつきません。ただ、議員のご意見としては、削減というのにあまりにも傾き過ぎているのではないかと。身を切るというのはどういうことかという話を巡って、いろいろなご主張があるようで。ですから、とにかく議席の定数削減だと、それが始めにありきという議論に対する反論的な議論がときどき聞こえてきます」

定数削減の現状と行方
秋元キャスター
「実際に各党からヒアリングされて、どういう感触でしたか?」
佐々木氏
「党によって重点の置き方に微妙な違いがありますね。ですから、定数是正と定数削減というのはどちらを、両方ともと言うわけでしょうけれど、定数を減らしていくということは、定数是正にとってはむしろマイナスに機能しますからね。数が少なくなるとどうしても格差の問題の処理が難しくなってきますから、ですから、戦後の日本の中でも反町さんもご存知のように中選挙区時代も、結局増やして調整をしたというのが、これは各国が当たり前で、ありていに申し上げれば小選挙区的な選挙をやっているところは、日本よりはるかに議席が多いわけですよ。イギリスが650議席でした。それから、ドイツも600議席、フランスの577議席というのは半端な数だけれども、これはもし1票の格差をシリアスに受け止めるということになれば、議席がかなり多くないと、なかなか調整が難しいという問題がおそらく背後にあるのではないかと想像していますが、その意味では、特に、小選挙区制というものが議席数というものとかなり密接に絡んでいるところがありますのでね。実は減らすとおっしゃられてもどこを減らしたらいいのかなと。それから、定数削減がより大事なのか是正が大事なのか、そのへんで各党の間で何となくニュアンスの違いが伝わってきたような感じを受けました」
反町キャスター
「先ほど、委員の中から、定数を削ることに対しての異論が出たことがあるという話がありましたが、それは各党の代表に対して質問のような形で…」
佐々木氏
「質問もあったと思います。議席を減らされた都道府県の人の持っている感情というものは複雑なものがあるのではないかと思いますが、そういう意味で言うとあまりにも減らす議論の通りが良すぎるのではないかという疑問の声がないわけではない。消費税を上げるということと議席のカット、これは見方によっては、税金はとられる、議席がなくなるという話であれば、二重に有権者は、政治家の方で身を切るどころか、有権者の方が身を切っているのではないかと」
反町キャスター
「余計政治が遠くなるという意味ですね?」
佐々木氏
「そう。しかも、代表者は遠くなる」
伊吹議員
「正論は現在、委員会でなされている通りと思いますし、私は定数削減ということを抱えて選挙はしていないですよ。メディアも読売新聞は定数削減に絶対反対ですよね。むしろ定数を増やすべしという論陣を張っておられますね。この問題が出てきたのは、民主党政権のもとで税と社会保障の一体改革で消費税を上げる際に、我々も身を切らなくちゃいけないから、定数を削減するということを言ったわけですね。ポピュリズムという言葉をおっしゃったんだけれど、その流れに乗り遅れまいとして、各党は自民党も含めて、自民党は小選挙区ということは言っていません。定数を削減するということを言っているわけですね。公明党は明確に言っておられなかったかな。それで民主も維新も定数を削減するということを言っておられますから、佐々木先生と違って、私達、政治家の立場からすると、主権者から主権を預かる行為である総選挙の際に、約束をしたことについて当選をしてから違えるというのは本来あってはいけないことだと思うんです。だから、どこかで決着をこのことについては、今回はつけないといけないと思うんだけれども、今後この議員定数の削減という話について、そう軽々に論ずべきでないのでね。佐々木先生がそれとなくおっしゃったことは、身を切るというのは自分のものを節約するとか、拠出するという意味であって、議員定数というのは、国会議員さん、あなたのものではありませんよと、これは主権者が主権を国政に表すために持っているものであって、これは国民のためのものですと。有権者のためのものですと。それを自分達のもののように考え、身を切るというのは僭越な沙汰だよということをおっしゃった方がいるということです。だから、政治の信頼性とか、いろいろなことを考えると、何らかの形での定数削減は今回やらざるを得ませんと私は思います、政治的には。それをどの形でどこまでやるかという議論ですよね。その定数削減の議論と、一方で、格差是正の議論は、直接関係はないんだけれども、それを両方、連立方程式で解こうとすると、東京大学教授としても非常に難解なことだなということを先生はおっしゃっているわけ」
反町キャスター
「野田さんと安倍さんの党首討論、あの瞬間は間違っていたと?」
伊吹議員
「これは、もう少しあの時の議事録を正確に読まないといけないと思います。それは安倍さんを弁護するわけではないのですが、安倍さんは定数削減をやりますということは言っていませんよ。安倍さんが言ったのは、そんなことを我々だけでここで議論をしてもいいのですかと。党首討論に出てきていない党の方もおられますと。選挙制度は皆のものですと」
反町キャスター
「3党合意は?」
伊吹議員
「それはそうですね。3党合意をした限りは。3党合意は、3党の政党間の約束だから。それはそれで3党の中で処理すればいいことだと思うけれども、それを選挙公約にしたわけでしょう。選挙公約にして、こういうことをやりますからと、票をもらったのではないですか。だから、何らかの形はつけないといけないと思います」

佐々木毅 「衆議院選挙制度調査会」座長の提言:『完璧な仕組みはないのではないか?』
佐々木氏
「先ほどいろいろ申し上げましたように、問題は相対的に比較してみた時に、どのような制度を選択するかということに最後はいくのではないかと思っています。ですから、その意味では人間のやることですので、皆さんも一緒に考えていただいて、悩んでいただきたいと思っています。難しいものは難しいし、できる範囲のものはちゃんとやらなければいけない。そういう気持ちでいきたいと思って書きました」

伊吹文明 前衆議院議長の提言:『多数決、判決の“決” 大切なもの 間違うこともある 謙虚に運用』
伊吹議員
「私自身の自戒として言えば、多数決で物事を決めると、それから判決に従うというこの決定の『決』という字は先進的な民主主義国家の基本ですよ。ただし、これは、だから、非常に大切なものであるけれども、ナチスドイツを選んだり、あるいは袴田死刑囚は突然袴田さんになったりするということがありますので、私自身、多数決を行使するものの1人として自己に対する謙虚さのようなものを持ってこれを運用していきたいと。だから、是非有権者の皆さんは判決とか、多数決というものがこういう謙虚な姿勢で運用されているかどうかについては、遠慮なく議論をしていただくというのが、先進国の立派な有権者の態度だと思います」