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2015年3月24日(火)
自給率目標引き下げへ 食料戦略に勝算あるか

ゲスト

柴田明夫
資源・食糧問題研究所代表
茂木創
拓殖大学政経学部准教授

食料自給率現状と今後
秋元キャスター
「食料自給率については主に3つの定義があります。カロリーベース、穀物ベース、生産額ベースとこの3つですけれど、まず農林水産省が指標としているのがカロリーベースの自給率で、食料をカロリーに換算して計算したものです。このカロリーベースの自給率は1960年代に79%でしたが、2013年度は39%まで減っています。一国の穀物の全消費量に占める国内生産量の比率であります、穀物ベースの自給率は、1960年代は89%でしたが、2013年度は59%になっています。食料価格に量をかけ算出する生産額ベースの自給率は、1960年代は93%だったのですが、2013年度は65 %となっています。今回、カロリーベースの自給率の目標は50%から45%に、5%分引き下げられたのですが、生産額ベースでは現行の70%から73%に引き上げられました。まず目標設定についてどう受け止めているか聞きたいんですけれども、柴田さん、いかがですか?」
柴田氏
「食料の自給率の数字そのものは食生活の質とあまり関係ないです。それから、戦後の食料難の時には、まさに飢餓人口で1000万人亡くなるとか、こういう心配をされた時には、まさに食料を輸入していなかったわけで、食料自給率は100%ですね」
反町キャスター
「自給率100%でも餓死する人がいるということですか?」
柴田氏
「だから、直接、食の安全保障とは結びつかないんですけれども、私は食料自給率が下がるということは、国内の生産力がずっと劣ってきて、結局、自給率がなくなって、その結果、下がってくる可能性もある。だから、そういう意味では、食料の自給率目標は、私は50%、安定というところでは51%を目指すべきだと。これは逆に言いかえると、食料の自給率というのは海外依存率です。だから、39%しかないということは海外に61%依存しているわけで、これでいいのかという問題ですよね」
秋元キャスター
「今回、なぜ引き下げたんだと考えますか?」
柴田氏
「これは、現実的に数字は50%を目標としながらも、4割を維持するのがやっとだったんです。足元が39%。足元を見ると、食料自給率というのは国内の食料の消費量を、これは生産プラス輸入マイナス輸出プラス在庫変動とあるんですけれども、分母に対して分子の国内生産がどのくらいかという割合ですよね。2000年以降、見ると、分母が減って、食料の消費自体は縮小してきているわけです。人口が減って、高齢化が進んで、おいしいものをちょっと食べようと、こういうような志向になってきていますから。だから、本来、これまで通り国内は、国内生産していれば、自給率が上がって然るべきものなのに、国内生産も実は分子の方も下がってきてしまっているという実態を見ると50%に上げる、維持していくというのは現実的ではないなと思う」
反町キャスター
「茂木さんから見て45%とは?」
茂木准教授
「もちろん、現在、農業が抱えている問題というのは、後継者の問題とか、いろいろあります。そういった問題を抱えている中で、45%というのは、決して楽に達成できる数字ではありません。もちろん、これをクリアしていくということが重要な…」
反町キャスター
「6ポイント上げるというのはそんなに大変なことですか?」
茂木准教授
「かなり大変だと思いますね、実際問題として。この20年近くの間に上がらないという状態がありますので、20年と言っても、60歳で働いた人が80(歳)になってしまうんです。それを考えていかなければならない時にきていて、そのことを考えますと、45%というのはギリギリのラインに下げたと。現実を見てくれということだと思うんです」
反町キャスター
「これから先、とてもではないけれども、語れる状態ではない。45%になるか、ならないかもわからない中で、本当だったら、そこをクリアしたら次は50%、60%を目指すなんて議論はとてもではないけど、現在の日本の農業を見た時に、議論ができるような状況ではないと感じますか?」
茂木准教授
「これは食料自給率の計算の仕方にも非常に問題が出てくると思うんです。たとえば、穀物飼料を外国から輸入していれば、それをかけて計算をしていくなんてことをやっていると、45%というのを実現するのは、実際は難しいことになってきます。国内で育てたものを国内だという計算にしていけば、おそらくこんな数字ではないはずです。そういう独特な計算の仕方をしているのでちょっと問題があるということです」
反町キャスター
「先ほどのカロリーベースと生産ベースの比較ですけれども、カロリーベースで出すことについて、日本ぐらいですか?カロリーベースでやっているのは?」
茂木准教授
「そうです」
反町キャスター
「あと韓国ぐらいですか。世界的にカロリーベースの自給率で我が国は大変だと騒いでいるのは日本だけだと。ほとんど日本だけだという指摘がある中で、このカロリーベースに固執する農水省、ないしは政府の姿勢ということについては、疑問の声もあがっているんですけれども、茂木さん、どう見ていますか?」
茂木准教授
「その通りだと思うんです。国民は何を考えているかというと、ダイエットをしたいと思っているわけです。まさに、そういう時代においてカロリーを摂れば、どうにか幸せになれるような、そういうような発想というのはちょっと間違っているんです。もちろん、生産ができなくなるということをちょっと除いておいて、消費者が何を求めているのか。消費者は1つの作物をたくさん食べたい。今回、農水省も芋を食べたら何日間持つというようなことを言っていましたね。ああいうことでは国民は困るわけです。いろんなものを食べたい。おそらく1960年代の頃の食生活と、現在の食生活ってまったく違う。だから、今回、食料自給率のグラフ出ていましたけれど、1950年代の頃、1960年代ぐらいの自給率70%、80%時代と、現在の数値を比べること自体が果たしてどれだけ正しいことなのかということも考えなくてはいけない。79%、8割ですね、カロリーベースで。その頃の学校給食でどれぐらいかというと、だいたい600から700キロカロリーぐらい摂取しているんです。ところが、現在はその倍近く摂っているんです」
反町キャスター
「一食で1200キロカロリー食べるのですか?」
茂木准教授
「そういうところもあるんです。昔はコッペパンと簡単な副食が出ていた。ところが、現在はビビンバが出るわ、いろんなものが出るわけです。それはなぜかというと、国民の体がそれを欲しているだけではなくて、そのおかげによって、世界に伍する、たとえば、オリンピック選手を輩出するようになったりすることができている。つまり、現在の時代と1960年代、確かに、私も折れ線で書きます。本にも書きましたけれど、そう見ると下がっているとなるんですけれども、必ずしもそれは正しいことなのか。数字の裏側にある社会を見ているのかということです。それは非常に重要だと思います」
反町キャスター
「そうすると、いろいろな問題があるにせよ、自給率そのものに対する懸念は当然、皆さん持っているんだけれども、それをカロリーベースで測ることについては異論があるということですか?」
茂木准教授
「もちろん」

食糧安全保障と食料輸入
秋元キャスター
「主な食料の輸入率の推移ですけれども、とうもろこしは1994年度から100%前後となっています。大豆、それから小麦は1970年度から90%前後で推移していて、果実、肉類、牛乳、野菜といった品目が1985年頃から上昇しています。柴田さん、先ほど、食糧安全保障の話もありましたけれども、これだけの食料輸入に頼っている日本で、食料の輸入が難しくなる状況というのはどういう状況が考えられますか?」
柴田氏
「1つは、価格が上がってくるというのがあります。それから、中国との競合です。もう1つは、中国だけではなくて、私が心配しているのは中東、北アフリカとの競合です。これは全般ですけれども、中東の産油国は人口の増加率というのが3%近いわけです。まさに食料の消費量が増えている。それに対して、域内は乾燥地帯とか、水の制約がありますから、あの地域での食料生産国はトルコとイラン、エジプト。エジプトはもう世界最大の小麦の輸入国ですから。1000万トンレベルの輸入をしていますから。ここはまだまだ増えていく。たとえば、麦類ですと、世界の麦の貿易量の3分の1は、中東、北アフリカです。伸びているのはとうもろこし、麦をはじめ、米も伸びているし、大豆も、菜種油も伸びているんですね。これは日本の輸入の部分とまったく競合してくる。プラス中国の脅威というのがあります」
反町キャスター
「そう考えると、日本が現在、ここでも言っている、大豆とか、小麦粉とか、とうもろこしは、輸入100%、93%、88%。日本がほとんど輸入に頼っている部分というのが、これから世界的なマーケットもきつくなっている部分がここにある?」
柴田氏
「そうです。きれいな言葉で言えば、輸入競合が強まる。もっと露骨に言えば、食料争奪戦が始まる」
秋元キャスター
「売ってもらえなくなるということですか?」
柴田氏
「売ってもらえなくなるというか、日本は買い負け現象というのが。買い負けというのが、たとえば、中国が日本よりも高く買うと。牛肉とか、羊とかで起っているわけですね」
秋元キャスター
「茂木さんは、この穀物輸入の危機についてどう考ますか?」
茂木准教授
「新興国である中国が食料を輸入していくという、1990年代の最初の頃ですかレスター・ブラウン氏が『誰が中国を養うのか?』という有名な本を出しまして、中国の爆食が非常に問題になっているということをお話したんですけれども、ただ、なぜ中国が食べられるのかということを考える必要があると思うんですね。と言うのも、中国が食べられている背景には何があるかというと、世界の工場であるという事実があるんです。つまり、経済力を背景に獲得できているという現状があるわけです。つまり、中国がたくさん食べれば、日本は食べられなくなってしまうというのはすごく二者択一な考え方だと思うんです。まずもって農業は農業だけで考えず、製造業とか、他産業が牽引していって、成長して、高めていって所得を得る、成長していくということをまずやっていかなければいけないと思うんですね。つまり、食料だけで考えていくということではなく。ですから、そういうことを考えて見ると、中国が食料を食べつくすとかということはまずもって中国だけを考えていればもちろん、あり得るけれども、他の国々もあるということです。ですから、中国の他に、もしかしたら東南アジアの新興国がさらに伸びて来るかもしれない。もしかしたら新たな日本の脅威になるかもしれません。逆に、日本が中国や東南アジアを上まわるような成長戦略を立てていくということを前向きに考えていって、それが新たな輸入食料を購入できる所得水準になっていくということも考えていかなければいけないと思うんです。そういう意味で、確かに輸入食料が途絶する可能性というのはまったくないわけではもちろん、ないです。ただ、それを購入できる地位にあったからこそ今日の日本があったということが現実です。それをもうちょっとポジティブに評価してもいいのではないかと思うんです」
反町キャスター
「日本が食料を買えなくなる危機が本当にリスクとしてそこに存在するのかどうかという点において、お二人は絶対意見が違うと思うんです。茂木さん、日本が食料を買えなくなる状況はあり得ると思いますか?」
茂木准教授
「ないです。というのも、なぜかというと国際貿易という、私のやっているようなジャンルで言うならば、輸入だけをするというのはできないんです。必ず輸出しているんです。一方的に輸入ということはできないです。相手のパートナーになるわけです。不可分な存在になることによって、いわば相手の急所を持っているんです。力を入れないで持っているんです。何かがあった時にそれを締めるぞというのがまさに安全保障のギリギリの状態です」
反町キャスター
「それは食料だけではなくて、いろんなものですね」
茂木准教授
「そうです。全てを食料だけで考えれば、確かにそういうことがあるんですけれども、中国にとって日本の企業というのが進出していることによって、それは中国の企業にとっても、中国国内にとっても重要なパートナー、成長にとって重要な要素です。それが撤退するぞというような極端な話になることと、食料が輸入できなくなるぞという話はまったく同じで、そういう状態をつくらない状態にしておく。つまり、日本が中国にとって大事なパートナーで、逆に、中国にとっても日本が大事なパートナーであるという状態こそが安全を保障するうえで重要な状態で、輸入がなくなってしまったらということを考えることはある意味、究極な状態なわけです」
反町キャスター
「つまり、日本が輸出するものがなくなった時と、イコールぐらいの感じで見た方がいい?」
茂木准教授
「そうならないようにしておくのが安全保障です。それは有事の状態です。食料がなくなったという状態は。そういうことをしておかないということが非常に重要で。唯一中国に関して私が懸念していることがあるとすれば、それは中国がただ単に外国から食料を購入するだけではなく、特に、アフリカ地域が多いんですけれども、そういったところにかなり農園を確保するかのごとくの動きをしている。これはいろんなところで報道されていますけど、それは非常に重要な安全保障の考え方です。そういった動きに対して日本はどうして海外とうまく農業の関係を持っていかないのかということは、かなり懸念していることです。つまり、中国のようになれとは言いませんけれども、海外の農園とか、海外の農園経営者とうまく関係を持っていく。それは日本という国がいざとなった時に救済してくれるルートだと思うんです。それを確保しておかないと難しいのかなと思うんです」
柴田氏
「もちろん、そういうことです。しかし、国内において、基礎食料、絶対必需品としての食料はある程度ベースをおいておく必要があると思うんです。それが、基本的な安全保障の1つであると。それと備蓄と現在の輸入です。安定的に輸入するためには海外での生産、増産に協力していくというのはもちろん、クライシス用です。その組みあわせですけれども」
反町キャスター
「ある程度の、ここぐらいまでは何とかやっていかないといくら貿易でがんばっても無理だろうというのが、それが45%だと思っていいですか?カロリーベースの」
柴田氏
「カロリーベースの、そうです。45%に上げるべきだと思うんですけれども」
反町キャスター
「それを上げていくというのは経済力とか、産業要素でがんばれる部分というのは、逆に、縮めていくことにならないのですか?」
柴田氏
「そうです。市場原理に任せてきたから、米の生産が1200万トン、一時1400万トンとか、ありましたが、現在は800万トンを食用ベースで切ってきたんです。この800万トンを切るということはどういうことかというと、日本のある一定の地域経済そのものがかなり痛んできているなと思うんです。先ほども野菜とかで見れば米800万トンを切りましたけれども、野菜を入れて1200万トンぐらいの生産はありますから、一時的にはそれはいくらでも豊かです。しかし、野菜ばかり食べているわけには…ベースとしては。腹持ちのする穀物に私はこだわるんです。特に米です」
秋元キャスター
「柴田さんが想像されている穀物危機というのは世界全体の食料危機みたいな状況を想定されているのですか?贅沢品にこだわっている余裕はなく、とにかくお腹を満たさなければいけない?」
柴田氏
「そこまで逼迫する状態というのはないわけですけれど、ある程度、現状を維持、豊かなところを維持するためにも基礎食料の部分というのは国内で抑えておく必要があると思うんです」

日本の農政を考える…成長戦略
秋元キャスター
「政府の掲げる農業改革をどのように見ていますか?」
柴田氏
「日本の農業者といった場合、土地持ち農家から、自給的農家から、まさに政府が育てていこうとする販売農家はいくつか層があるわけですよね。企業の参入というのを促していく。国がやっていく政策というのは、それはむしろ企業が参入して、農地を集約して規模を拡大して単に農産物をつくるだけではなくて、付加価値も上げていく、垂直にですね。6次産業化を進めていく。あわよくば輸出にも活動を開くと。そういう農業ですよ。ここはもちろん、誰も異存はないですよ。農業サイドも異存はないし、国にも異存はない。まさに農業は国の礎だと。成長産業ですよ。しかし、それだけではないというところが難しいところですよね。いわゆる経済的価値を追求して攻めの農業をやっていく農業というのは、たとえば、農地面積の中で見れば水田面積で見ると、250万ヘクタールの水田がもともとあるわけですよね。そのうちの規模を拡大して、攻めの農業をやっていく、しかも、区画整理を済ませている農業分野、領域はどのぐらいかと言うとせいぜい20万ヘクタールですね。残りの230万ヘクタールというのは、まさに生業的な山間地の農業です。ここで、中には、徳島のお婆ちゃんの葉っぱビジネスとかで非常に付加価値をつけて話題になっているところもあるわけですけれども、まだ点在しているだけであって、面的な広がりを持っていないですよ。ここも実は重要だと思うんです。社会的価値を高めるということを言っていますけれど、ここの部門というのは非常に重要でいいところだけの20万ヘクタールの攻めの農業だけでは、周りがなくなれば、全部水も何もつながっていますから、ここの部分というのは持続が難しいと思いますよね。だから、1967年にできた農業基本法は農家の貧困をいかに救っていくのかという狙いがあったわけですけれど、そういう意味での農家はもはや貧困でもないですね。都市と比べても、ある程度豊かになって見劣りはしなくなってきているんですよね。そういう中で日本の農業の考え方というのは大きく変わった。それが1999年にできた食料・農業・農村基本法です。食料・農業・農村と言うのは、目標の3つの頭があって、それぞれ矛盾しあっているんですよ。食料というのは多少お金を払ってもコストがかかっても自給していきましょうと私が言っている部分です。農業というのは農業の経済的価値をもっと追求しましょう、儲る農業にしましょうという部分ですよ。アベノミクスはここの部分ですね。農村は何かというと農村の社会的価値を追求しましょうということ。これは言ってみれば多面的機能、水とか、景観も含めた、そういうものも追求しましょうということですね。でも、全部バラバラですよね。そこに日本の農政の問題があるんですよ。しかし、水田、農業資源のフル活用という言葉があるんですけれども、これがあれば、私はとりあえず相矛盾するものが全部整合性を持ってくると思うんですよ」
反町キャスター
「食料自給率を維持、向上させながら、農村も守りつつ、なおかつ農家の問題、いわゆる後継者の問題とか生産性の問題も解決しようというのは、なかなかこれは難しいですよね。全部一度にやるのは」
柴田氏
「難しいけれども、まさに方向性を見ると、コメは市場原理に任せた結果ですね、コメ離れが起こって…当然ですね、高いコメですから安いものも…その結果、コメの生産が減ってきて、現在800万トン割った。向こう10年ぐらいを見ると、コメ離れが終わっていないですね。進んでいる。たぶん東大の鈴木先生の計算ですと600万トンぐらいまで減ってしまうということですよ。600万トンということになると、日本の水田はもとより農業資源、地域資源がたぶん…」
反町キャスター
「無理やり米を食べたくない人に食べろという、そこまでやってまでも食料自給率を維持する、そういう議論ではありませんよ」
柴田氏
「コメを食べると言うのではなくて、現在、国がやろうとしているのは、コメではなくて、飼料用の…水田のフル活用ですよ。だから、現在のまま、たぶんいくと、水田はフル活用されないまま、水田の現在の面積を250万でいいのか、もっと下げていいのか、こういう議論はなされていないですよ。ズルズルと下がってきてしまう可能性が高いと思うんですね」
茂木准教授
「私は、たとえば、水田とかが担い手がいなくなるという話ですけれども、コメの価格が下落してきたのは、市場原理というよりも他に要因があるのではないのかなと。つまり、コメの生産が減ってきているということですけれど、それについてはむしろ担い手が少なくなってきている。まさにそこに尽きるのかなと思うんです。食料自給率ともしその話をあわせるのであれば、1990年ぐらいからずっと40%、これは農家の方が相当がんばって維持してきている数字ですね。その中で20年の間ですから、60歳の人が80歳になるわけですよ。一生懸命つくろうと思っても、なかなかできない。そういう状態になってきている現実があるわけですね。現在政府が出した農業改革ですけれども、農業改革の中で農地利用の最適化というのがあります。商品性の高いようなものをつくれということですけれども、確かにこれはどれも素晴らしいスローガンですけれども、なかなか難しいなと私も思っています。と言いますのも、最近ですと日本酒を売り込もうという話がありますよね、6次産業化で。ところが、日本酒のお米というのは、コシヒカリではないですよ、コシヒカリでもできますけれど。コシヒカリとか、そういういわゆる我々が食べるコメではないです。日本酒に適するお米があるんです。そのお米を生産するというのはまた技術が必要です。つまり、農業というのはこの土地がダメだから別なものをつくれと言ってすぐできるかというと、それはすごく技術の積み重ねがあって、悲しいかなその部分のバトンタッチをあまりしてこなかった、少なくとも積極的にやってこなかったというのがまさに問題点だと思うんです。後継者ができないということも含め、技術の伝播ができない。そうなると、海外に出ていって、農業をやるというのは、さらにハードルの高いことになるんです。ところが、海外に展開して農業が成功しているという事例はいくらでもある。身近な例だと最近ななつぼしという北海道のお米があって、現在、タレントさんがCMしていますよね。ななつぼしのDNAは何かというと、カリフォルニア米ですよ、実は。スーパーで売っている安いカリフォルニア米、それが遺伝子として組み込まれている。それはなぜかと言うと世界戦略を考えているからですよ。つまり、日本の農業を世界に売り出していくために何が強みだったのかということを技術サイドでやっているわけですよ。それを考えてもらいたいということですね。北海道の環境で育つようにというだけではなくて、世界を見据えて、何がヒットしているのかということを日本が逆輸入し始めている。そういうのがまさに技術です。その技術の伝播をもう少しうまく伝承していかないといけなかったのですが、それがうまくできていなかった。だから、ここにきて、あらためて整理し直してみましょうというのが、現在の農業改革の文言ですね」

最適食料自給率とは
秋元キャスター
「最適食料自給率とはどういうものなのでしょうか?」
茂木准教授
「耳慣れない言葉だとは思うんですけれど、自給率というのは、私はそもそも一国全体で何%目標にするというのには否定的ですね。つまり、地域の特性だとか、環境、いろいろありますよね。それにあわせて自治体レベル、あるいはそういったコミュニティレベルで、自給率というのは決めていけばいいと思っているんですね。最適食料自給率というのは、時間的な食料自給率と空間的な最適食料自給率の2つあるんですね。時間的な最適自給率というのは、1970年代ぐらいの80%の自給率と、現在の30%、40%の自給率とが同じかということです。それは時間的にも、歴史的に見て、環境が違う数字を比べているわけですから、これはおかしい。おそらく1970年代ぐらいには80%自給することが望ましかったんでしょう、一生懸命やってもそのぐらいできていたんですね。ところが、現在は一生懸命やっても40%ぐらいしかできていないという状態にあるということですね。この状態というのを見ずして、ただ下がってきている、農家がんばれよというのは無責任な話だと思うんです。もう1つ、空間的な最適な自給率というのは、今申し上げたように、地方自治体とか、そのレベルで考えていくということです。たとえば、群馬県の食料自給率、カロリーベースですとどのぐらいなのか、想像がつきますか?少なくとも39%よりも高いイメージがありますよね?ところが、群馬県の食料自給率は34%なんです。なぜか。それは畜産です。畜産の飼料を外国から輸入しているからです。あるいは群馬と言ったらこんにゃくですけれど、こんにゃくはカロリーがないですから、カロリーベースで見るとすごく下がっちゃう。ところが、金額ベースだと91%を超えている。その順位は22位か、23位ぐらいです。もっと高いところはいっぱいあるんです。そう考えてみると、環境とか、あるいは雨の量、あるいは耕作できる加工地の面積ですね。そういった様々な要因を複合的に考えて自給率というのは出していくべきなのではないかと。そう考えてみると、一国全体で何%と決めていくのはちょっと難しいのかなと思います、少なくとも生産者を守るという意味に置いては」
反町キャスター
「軍事、食料、エネルギーなど、安全保障の全体をまとめた指標みたいなものはイメージできるのですか?」
茂木准教授
「難しいですね。おそらく自給率が下がると食べるものがなくて餓死するんだというようなイメージがたぶんあるんですね。そのためにも海外とのリンクをしておくということが重要で、既に岐阜県はギアリンクス社というところを通じ海外とやっているんですね。要するに、無農薬のものを優先的に岐阜県に持ってこられるよう自治体レベルで取り組みをしているんです。東日本大震災の時に、不幸なことに日本米のブランドが下がった時があったんです。日頃米屋に置いてあっても見向きもしなかったカリフォルニア米がなくなったんですね。そうなった時に、海外から輸入ができるような体制。それこそまさにいざという時に自分の身を守る、唯一のパイプになるわけですよ。そういうことをやっておく必要がある。それがこれからの検討課題になっていくのではないでしょうか」
柴田氏
「軍事とか、エネルギーとか、難しいですね。ただ、食料は明確に絶対必要量という部分は確保しておく、農地として、生産力として。結果として自給率が持ちこたえればいいとは思うんですけどもね。そこが危うくなってきている。ズルズル1200万トンの生産量から800万トンへ放っておくと、600万トン。これでいいのですか。そういう中で農家の後継者、引き継ぐ時期にきて、このままでいくとまずい状態になるのではないかと思いますよね。一方で、まさに経済的価値を追求する企業型の農業というのが育ってきて輸出に活動を開く。こういう流れにもなってきている。それはそれでいいです。しかし、そこの部分というのは全体の230万ヘクタールの生業的な地域経済の農業というのが、崩れてしまったら結局成り立たないですよ。なぜなら水が上からつながっている話」

柴田明夫 資源・食糧問題研究所代表の提言:『まるごと』
柴田氏
「これは、哲学者の鶴見俊輔先生の言葉でもあるし、民俗学者の宮本常一先生、彼の言葉でもあるんですけどね。まるごとというのは全体ということに対しての言葉ですね。全体というのは同じようなものを積み上げたものですけれども、まるごとというのは人間の手とか、目とか、手足のように全てが結びついているという話です。何が言いたいのかと言うと、農業というのはまさにまるごとの問題ですね。水も人も、水田も、水資源も、水源涵養林も地域経済も、全部つながっている、つながって、有機的に機能している部分です。これを維持しているのは何かと言うと、肝になっているのが稲作農業だと思うんですね。それがズルズル40年間も減り続けて来た結果、このままの延長でいくと、500万トン、600万トンも減ってくると、まさにまるごとの機能が失われてしまう。水田フル活用ができればいいんですけれど、それならそのように自給率の目標も下げないで、ある程度、高めに掲げておいて、本当に本気でまるごと活用して活かしていくんだと。そういう姿勢が必要だし、それから、消費者に何と言っても、生産者ばかりが言っても、何を言っているんだという話になるわけで、消費者にこの点を理解してほしいということですよね」

茂木創 拓殖大学政経学部准教授の提言:『農僑支援』
茂木准教授
「これは私がつくった言葉ですけれども、僑というのは、まさに華僑とか、和僑という言葉に出てくるように海外で活躍する人間のことですね。つまり、農家の人が海外に出て行くだけではなくて、農業に関わる全ての産業が一丸となって農業を支援すると。これが私は非常に重要だと考えているんです。幸いにして農業改革が成長戦略の1つとして出てきています。これには農業の国際展開というのが掲げられているわけですから、これを否定的に捉えるのではなくて、積極的に活かしていくべきだと私は考えています。振り返ってみますと、日本の農家の方にも海外で成功している農家の方も多いです。現在、外国のカリフォルニア米が入ってくるのではないかということになりますけども、それももともとは日本人がカリフォルニアで創業しているわけです。それをこれまでは、日本の農家に対して敵対的なイメージで捉えてきましたけれども、もっと高く評価していく時代がやってきたのではないかと考えています。これは農業を海外で展開するだけではなく、農産物に関わるあらゆるモノ、6次産業化も進められていますので、そういったものを海外でPRしていくことも含めて、それに携わる人、マネージメントする人達、こういった人達を政府が支援していくことが重要ではないかなと思います」