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2015年3月23日(月)
“中国主導”世界戦略 アジア投資銀…日本は

ゲスト

小林鷹之
自由民主党財務金融部会副部会長 衆議院議員
榊原英資
青山学院大学教授
柯隆
富士通総研経済研究所主席研究員

英独仏伊が参加の理由&影響
秋元キャスター
「アジアのインフラ整備に資金を供給することを目的に中国主導で設立を目指しているAIIB、アジアインフラ投資銀行ですけれど、まずはこれまでの動きと設立までのスケジュールを見ておきたいと思います。2013年10月に、習近平国家主席が設立を提唱しました。その翌年に、東南アジア諸国など21か国が基本合意書に署名しています。今年に入って3月、イギリスをはじめ、ドイツ、フランス、イタリアが続々と参加を表明していまして、3月末に創設時参加メンバーの申請期限と言われています。これからの動きとしては、6月末に設立協定が締結される。年内に発足と言われています。これまでに参加を表明している国々を見ておきたいのですが、アジアでは中国をはじめ、インド、ASEAN諸国など21か国。それから、中東ではサウジアラビア、カタール。ヨーロッパではG7を構成するイギリス、ドイツ、フランス、イタリアの4か国。スイス、ルクセンブルグも、今月に入って相次いで参加を表明しています。全体で現在参加を表明しているのは33か国ということになるのですが、柯さん、ここに来てヨーロッパの国々が続々と参加表明している。その理由はどう見ていますか?」
柯氏
「私は、中国の立場から説明をした方がいいと思いますけれども、中国はこれまで、ギリシャの国債、スペイン、イタリアの国債などたくさん買っていますので、ある意味で、ヨーロッパの国々に対する貸しができたわけです。今回中国主導でAIIBをつくるわけですけれども、アメリカと日本が抵抗していて、だから、ヨーロッパの国々に助けてくれと。だから、貸しは返してくれと。そういう形でヨーロッパがいくら出資するかは決まっていないんだけれども、一応名義貸しという感じ。今年の半ばで、最終的に決着するわけですけれども、とりあえず参加する姿勢を表明したわけです」
反町キャスター
「規模とか、出資金額はほんのお付きあい程度でよく、要するに、中国がギリシャ国債を買い支えてくれたおかげで、多少のユーロ危機に対する緩和にもなったので、我々もこれからの中国との付きあいが大切だからと、こんな感じですか?」
柯氏
「まずヨーロッパを襲っている経済危機というのはまだ去っていなくて、ギリシャの経済はまったく良くなっていないわけですけれども、引き続き、中国に助けてほしいというのが、たぶんヨーロッパの主要国、フランスの本音だと思いますが、最終的にAIIBに、ヨーロッパの国々がいくら出資するか現在はわからないんですけれども、おそらく大きな規模にならないだろうと思うし、ただ、中国からすれば、入ってくるという名義だけでもいいから、大きな価値になるわけです」
反町キャスター
「榊原さん、現在の中国のヨーロッパに対する貸しに対してのお返しとして、名義貸しだという、こういう下世話な表現で話していただくとわかりやすいんですけれども、そんな理解でもよろしいのですか?」
榊原教授
「そういうことでしょう。ヨーロッパへの貸しを返すところで、実際に、この銀行がどうなるかというのはまだ見えなかったわけです。中国のお金を使って2国間援助をするようなものなのか、あるいは本格的な国際金融機関になるのか。本格的な国際金融機関になるなら、ヨーロッパもある程度出資し、ちゃんと理事会をつくって、ガバナンスをちゃんとするということになるでしょうけれども、現在のところ、それが見えないので、一応名義は貸しましたということでしょう」
反町キャスター
「そうすると、入ってきたイギリス、ドイツ、フランスの思惑というのは、さらなるアジアにおける何かということよりも、当面、中国との関係が1番大切だという、そこだけと思っていいのですか?」
榊原教授
「当面はそうだと思います」
反町キャスター
「対アメリカという意識が強いヨーロッパの国々から見た時に、今回のAIIBというのは、アメリカに対する、あまり敵意ではないんだけれども、我々は我々で、独自の経済圏で、経済意識を持って、世の中に対峙しているんだということを見せつける場になっているのではないかという、この見方というのは?」
柯氏
「その部分はおそらく多少はあると思いますけれども、ただ、ヨーロッパの人達は、対米関係の中で、どうバランスをとるか。非常に複雑な部分があると思うのですが、彼らがずっと中国とのある種の距離感を持ちながら関係改善をしようと。中国も一生懸命にロビー活動をやるわけですけれども、中国が最も得ようとするメリットは何かというと、これとは関係ないんですけれども、武器の輸出解禁です」
反町キャスター
「ヨーロッパからの?」
柯氏
「ヨーロッパ。だから、貸しをたくさんつくって、そして返してもらうと。名義を貸してくれて、将来的にまたヨーロッパに対して、大きな貸しを、もしできれば、それで中国とヨーロッパの関係が一気に改善する。もう1つは、ロシアとの関係ですけれども、ドイツがロシアとの関係をこれ以上悪化させたくないと。中国とはそれと関係していますから。だから、いろんなファクターが複雑に絡んでいて、最終的に、アメリカとどうバランスをとるかというのを、双方とも、中国とヨーロッパは考えるわけです」

日本政府の対応は
秋元キャスター
「日本政府の対応ですけれど、麻生財務大臣、20日の記者会見で日本が求めている審査基準の透明化や環境に配慮をした融資の実施といった条件が整えば、中に入って協議ということになる可能性はあるとしています。一方、菅官房長官は20日、参加については慎重な立場だと言っているんですけれども、小林さん、これは現在の日本政府の対応についてはどう見ていますか?」
小林議員
「麻生財務大臣も菅官房長官も同じことをおしゃっていると私は理解していて、現時点においては、参加については慎重な立場というベースラインはあるんだと思います。ただし、これは外交交渉ですから、中に入って協議ということになる可能性はあると外交カードを見せておくことによって、外交交渉上、有利にことが運ぶという、そういう発言の一環として捉えているんですけれども。私自身は現在、日本政府のスタンスについては基本的には賛同しています」
反町キャスター
「榊原さん、この麻生さんの言っている、日本が求めている審査基準の透明化。これはどういうことだと思えばいいのですか?」
榊原教授
「要するに、現在のところはまだ理事会もつくらないと言っているんでしょう。そうすると、総裁の言う通りになっちゃう」
反町キャスター
「総裁は中国人?」
榊原教授
「中国人ということになりますよね」
反町キャスター
「そうすると、皆でお金を出しあっても、中国人の理事長が、トップが、ここに貸し付ける。ここからここまで貸し付けないと勝手に決められる?」
榊原教授
「現在の状況だとそうです。ですから、日本政府の立場は、理事会をきちんとつくって、そういうところが透明になるのだったら、日本は参加をしていいけれど、そこのところがまだはっきりしないねと。中国が勝手にお金をばら撒くのだったなら、勝手にやってくれと。2国間援助ですけれども、2国間援助なら勝手にやるんだったらいいけれど、国際金融機関をつくるというのは、それはルールがあると。それに従ってくださいということで。僕はたまたま財務省の幹部と2度会いましたけれども、非常に批判的です。まだまだこんなもの国際金融機関としての体をなしていないんだから、そこはちゃんとしない限り日本はサポートしないよということですね」

米国の対応&参加の可能性は
秋元キャスター
「アメリカも慎重な立場ですけれど、アメリカが参加する可能性というのをどう見ていますか?」
榊原教授
「中国ももう大国ですから、GDPでは世界No.2ですから、そういう国が1つのプレゼンスを求めて、アジア開銀に対応するような機関をつくろうということに対して、アメリカは相当大きく反対はしないと思います」
反町キャスター
「そこは、ある程度、受け入れざるを得ないほど、中国のプレゼンスが強くなってきた?」
榊原教授
「それと、我々は気がついていないのですが、アメリカと中国というのは水面下でつながっているんです。中国の幹部というのはかなりアメリカ留学していますから。ですから、そういうのが、アメリカと中国は日本で考える以上に近いところがあります」
反町キャスター
「そうすると、日本が反対、反対と旗を振っていると、意外と日中国交正常化の時みたいに、頭越しに、アメリカが先に参加してしまったりするのですか?」
榊原教授
「だから、アメリカと連携をとりながら、日本はこれに対応する必要がありますね」
反町キャスター
「小林さん、いかがですか?アメリカが参加するか、しないかの見通し。どんなふうに思いますか?」
小林議員
「なかなか高度な政治的な判断が絡んでくると思うので、一概に言えないですけれども、私はアメリカも、確かに中国を1つの大国として位置づけていると思います。ただ、そうした中でこれまでのG7あるいはG8。こうした国家が中心となったブレトン・ウッズ体制に対して、既存の秩序がもし変質していくとすれば、その象徴的なインパクトというのは、私はかなり大きいと思っていますし、また、そうした中で、アメリカが確かに最後参加するという判断をくだすかもしれません。ガバナンスとかが確保できたなら。ただ、アメリカの高度な、たぶん外交判断が絡むと思っていまして、カードを切らされるのではなくて、カードの価値をアメリカとしてはできるだけ、日本としても、そうですが、高めることによって、最後バーターで何かと取引していくという可能性はあると思います。これは予断を許しませんけれども、今年おそらく習近平国家主席がアメリカに国賓待遇で訪問されることになっているので、そういう節目、節目でアメリカの政治状況もありますし、また今年後半になれば大統領選挙も盛り上がってくると思います。レガシーづくりという観点もあると思います。そうした中の流動的な動きというのも日本は注視しなければいけなくて。いずれにしても、我々としては、日本としては米国追随というわけではなくて、基本的な価値観を共有できるアメリカと共同歩調をとっていく。これは絶対的に必要だと思いますし、アメリカにとっても、日本にとっても、現在TPPという枠組みをつくりつつある中で、こうした交渉との兼ねあいというのも冷静に見ていく必要があるんだと思います」

中国の狙い&メリットは
秋元キャスター
「中国が主導する国際金融機関というのは既にあるんですね」
柯氏
「1番大きなバックグラウンドというのは、中国がお金持ち過ぎなんです、外貨準備が。米国債とか、ヨーロッパの国債、金融債を買っても目減りするわけですから、もっと自分の国の国益にかなうような使い方はないかというと、この3つですけれども、AIIB、BRICSの各国でつくられる開発銀行と、あと中国独断でつくるシルクロードファンドと呼ばれているものですけれども、榊原先生よりもこのAIIBの透明性を心配しているはずのASEAN10か国、皆一期生として入っていたわけです。1997年のアジア通貨危機時に、皆IMFにやられていたわけです。あの時いろんな条件、厳しい条件がつけられて、マレーシアも、インドネシアも、韓国もやられたわけです。だから、我々はアジア主導の、こういうのをつくれないかというのが、実は東アジアの、中国以外のASEANの国の中でも非常に気運が高いわけです。だから、彼らは、非常に積極的に応じてくれているわけです。あとBRICSは、これはロシアが1番積極的で、金がないんだけれど、これをつくってくれれば、アメリカ主導の経済制裁をかわすことができる。シルクロードファンドというのはどちらかというと中央アジア、すなわち中国の新疆ウイグル族と国境を接する国々との関係を改善すれば、中国から見るとテロを抑制する可能性が出てくるんです」
反町キャスター
「それぞれ思惑がちゃんと別々にあるんですね。ただ、その前提として、お金がたくさんあるというのであれば、たとえば、使い道として銀行を設立するのが1番いい方法なのですか?もちろん、これ以上アメリカ国債を買えとか、日本国債を買えとか、そういう意味ではないのですが、他に使い道がないからこういう形に?」
柯氏
「いや、この3つを合わせても、中国の外貨準備の1割しかいかないわけです」
秋元キャスター
「国際金融機関をつくるということが、1番お金の使い道としてはいいのですか?中国にとって」
柯氏
「先ほどブレトン・ウッズ体制、何回かおっしゃられていたわけですけれど、将来のことを考えると当然、中国は人民元の国際化を考えてやるわけです。それが当然、ドルを基軸通貨とする国際金融にチャレンジするわけですけれども、北京で経済フォーラムがあって、中国の中央銀行、人民銀行の総裁の周小川さん、彼は繰り返して言ったのですが、SDR(特別引き出し権)という構想をもっと強化していくと」
反町キャスター
「話が大きくなって特別引き出し権。榊原さんに説明していただいた方がいいかな」
榊原教授
「SDRというのは、要するに、IMFが持っている通貨のようなものです。IMFを経由して、そこからお金を引き出すということです」
柯氏
「それを強化していく」
反町キャスター
「そこで、困った国が緊急融資を受けられるようにする」
柯氏
「だから、その中で中国のシェアをもっと伸ばしていきたいというのが本音ですが、その場にいたのが、ラファードというフランス出身の専務理事です。だから、中国の本音としてはドルを基軸通貨とする現在の国際金融体制にチャレンジしていくわけです」
反町キャスター
「そうすると、現在ドルを基軸とする国際通貨体制にチャレンジするということだったならば、先ほど、榊原さんが何回か言われたように、理事会ができないのであれば、AIIBとか、銀行をつくるのではなくて、2国間で、相対でやればいいんだよというのを敢えて設立してまでやらせる狙いというのは、そこに狙いがある?」
柯氏
「理事会をたぶんつくると思います。まだ、どうつくるかが問題」
反町キャスター
「AIIBとわざわざ銀行を設立するのと、これまでやってきたように、私はお金を持っているのだから、必要だったら貸してあげますよ、2か国の間で。敢えて理事会をつくらずに、中国の単なるODAとか、国際協力とか、資金援助でやっていると、わざわざ銀行をつくることとの、その違いというのは何なのか?」
柯氏
「2国間援助というのは、ファンドで充分できるわけですけれど、そういう多国間のマルチの国際金融機関をつくることで、中国はいろんなことを経験できるし、それから、先進国や途上国と、それぞれどういうネゴシエイトをするかどうかというのは、これまで経験がなかったわけですけれども。だから、この金融機関に関して、テクニカルな問題がいっぱい残っているのですが、たとえば、どう審査するのか、どういう法律を適用させるか。公用語は中国語なのか英語なのか。いろんな問題がまだ残っているんです」
反町キャスター
「公用語もまだ決まっていないのですか?」
柯氏
「北京に本店を置いて、中国語を適用したら、他の国はパーです」
榊原教授
「この設立はアジア開発銀行(ADB)が念頭にあると思うんです。アジア開銀はアメリカと日本で、総裁はずっと日本人が出ているんですね。中国は影響力を増そうとしても、副総裁ぐらいはとっているわけですけれど、アメリカほど影響力は持てないわけです。そうすると、中国が影響力を持てるような国際基準金融というものをつくりたいというのが今回の狙いだと思います」

中国の経済戦略 人民元の国際化
反町キャスター
「基軸通貨という言葉について、柯さんに聞きたいんですけれど、中国は、たとえば、基軸通貨と呼ばれるドルとか、ユーロとか、そういう通貨に中国人民元を、そういうふうにしたい?そう思っているわけですか?」
柯氏
「基軸通貨という言葉はあれですけれども、中国で言われているのが人民元の国際化、人民元の国際化とはどういう意味なのかということを問われると、とりあえずファーストステップとして国際貿易の中で人民元を決済通貨とするウェイトを高めていくと。資本取引は、まだ自由化されていませんから、国際金融での基軸通貨としての役割、投資のための通貨としては、まだ合わなくて、とりあえず国際貿易、すなわち実態経済の中で、人民元がたくさん使われるようにしようと。それが着々と進められていて、将来的にAIIBとどこかで接点をつくっていくと思われます」
反町キャスター
「人民元を国際通貨にしたいという思いと、先ほどのAIIBというのは、将来つながっていくとすれば、人民元というのは、少なくとも理解している限りで、自由に為替の相場が動く状態に現在はなっていなくて、変動幅を決められていたり、どこかの通貨と連動するように仕組まれていたり、ある意味、非常にアンフェアな状態で安定性が担保されているような印象が、僕はあるんですけれども、それは違う?」
柯氏
「アンフェアかどうか別にして、ここで重要なのは、人民元は両替できるかどうかと。ここが重要ですけれども」
反町キャスター
「僕が聞きたいのは完全なる自由化をされていないものが国際通貨になり得るのかどうか。そこの議論というのは中国の内部ではないのですか?」
柯氏
「なり得ませんけれども、なり得ませんが、その準備として、ファーストステップとして、とりあえず人民元を海外で入手できると。だから、東京でも現在人民元が買えるわけです。だから、アメリカでも買えると。ここは実は大きな進歩です。なおかつ人民元が現在少しずつ動いているんです。動いている背景には、確かに中国政府の操作が見え隠れしているので…」
反町キャスター
「だって、2%でしょう」
柯氏
「2%と言っても、だから、10営業日経てば随分変わりますから。そこですよね」
榊原教授
「おそらく人民元を国際通貨にするというのは、中長期的な20年、30年先の話です。ですけど、20年、30年ぐらい先にはアジアでの共通通貨にしたいという思惑があって、20年、30年と、僕が言うのは、人民元を本当に国際通貨にするためには、金融の自由化をしなければならないわけです。金融の自由化がまずあって自由に金融取引ができるというところに持っていって、そこで人民元の国際化ということになるのではないか。ですけど、おそらく中国というのは非常に中長期的に考えますから、10年先、20年先のことを考えているわけです。20年先には人民元はアジアの基軸通貨にするという目標をおそらく持っていると考えていいのではないですか」
反町キャスター
「そうすると、たとえば、金融の自由化が行われてもいない。人民元の変動も完全に自由化されていない中で、AIIBなるアジアインフラ投資銀行を設けるということ。これ矛盾するものではないのですか?」
榊原教授
「それはインフラ銀行をつくることと、通貨が自由に取引されるということは別問題ですから」
反町キャスター
「でも、たとえば、ここの理事長が中国人になって中国の政策的な判断ないしは中国の財政事情、経済状況を色濃く反映させるような、投資活動、経済活動が行われた時に、それは公平なものなのかどうか?」
榊原教授
「この銀行はドルで資金調達し、貸すでしょうから。人民元の自由化とは関係ないです」
反町キャスター
「小林さんから見てAIIBというのは、ドル建てで始まると思うんですけれども」
小林議員
「このAIIBはドルで調達をし、ドルで貸し出すと思います。ただ、それは現在、ドルで貸し出したとしても、それによって中国の影響力の及ぶエリアを拡大していくことによって、いずれ通貨としての人民元が育ってきた時、そのエリアを人民元建てに変えていくと。そういう土台をつくっているという意味では非常に理にかなっていると思います」
反町キャスター
「そうすると、これ自体は過渡的なもの?最終的な人民元経済圏というものを視野に入れた長期的な経済?中国のやり方とすると今の話はそういうことですよ」
榊原教授
「だけど、30年、40年先の話ですよ」

既存の国際金融機関への影響
秋元キャスター
「中国は既存の国際金融機関があるにもかかわらず、AIIBを設立しようとしている。既存のものに入るという選択肢はなかったのですか?」
柯氏
「選択肢はなかったでしょうね。あの入っていまして、ただ、1997年、アジア通貨危機以降、アジアはIMFにやられたわけですから、それに対する文句がたくさんあって、それを逆に利用してこういうAIIBをつくるというのが今回の発想になったわけです。もう1つ、先ほども申し上げた中国はお金を持ち過ぎだというのがあって。AIIBという機関が本当にうまくいくかどうか、先ほど両先生から随分指摘があって、だから、もし理事会も常設しないで適当にやってしまうと最終的に頓挫するか、あるいは2国間の援助になってしまう可能性も十分あり得るかもしれないですから、そこらへんは中国も事情をわかっていますから、だから、そこまで妙なことはたぶんやらないと。1つだけこの機関の弱点を申し上げるとすれば、国際金融機関というのは単にお金を貸していくわけでなく、もう1つ重要な役割というのは、情報をつくっていく。IMFも相当強いリサーチ機能能力を持っているんですね。だから、彼らが発行するいろんなリサーチレポートというのは、いわゆる国際金融市場を導引できるぐらいの力を持っているので、だから、AIIBというのは最終的にもしも北京に置いてしまうとすれば、中国はご存知の通り、いろんな情報操作、コントロールをするわけですから、情報の創造という意味では本当にうまくいくかどうか。うまくいかなかった場合、AIIBというのは形の上でも存続しにくいと思うんですね」
榊原教授
「これは非常に優秀なスタッフを集める必要があるわけです。ですから、そのためには、おそらく共通言語は英語でなくてはダメですね。中国語では中国人以外はダメですからね。できれば本部は北京ではなく、中国の外に置く。たとえば、アジア開発銀行をつくった時に、日本人が総裁になるけれども、それはマニラに置くということを決めたわけです。それが生きているわけです。あれが東京にあったら、いろんな批判が出てきたと思いますね。おそらく中国の場合にも中国の外、たとえば、ASEAN諸国のどこかに置くというようなことをやる。そういうことでクレディビリティを増すということが必要ですね。ですから、そこまでの準備があるかどうか、中国は問われていくわけですね。1997年から1998年のアジア経済危機の時に、IMFは大変な失敗をしているわけですよ」
反町キャスター
「どういうことですか?」
榊原教授
「むしろ危機を加速させてしまった。たとえば、銀行の閉鎖を命じたり、財政をもっと引き締めろというようなことを言ったりね、あるいは金融を引き締めろと言ったりしてアジア経済危機を悪化させたのが実はIMFだと。IMFもあとでそれを認めている。そういうことがあってIMFに対する反発というのが非常にあったわけですよ。IMFも世銀も欧米主導ですから。アメリカ、ヨーロッパの目でアジアを見るわけですよ。そうすると、アジアはわかっていないねと。アジアをわからないでいろんな施策をとりましたねというような批判があったわけです、アジア経済危機の時に。ですから、そういう意味でアジア独自の機関を作る、アジア開銀というのがあるわけですけどね。それとは別にアジア独自の機関をつくるというのは、アジアの人にとっては非常に重要なことだと思われます」

アジア開発銀行(ADB)の教訓は
反町キャスター
「アジア開発銀行(ADB)とAIIBは折りあっていく感じはありますか?」
小林議員
「ADBの特徴としては、貧困削減という目的がありますので、状況的融資と言いまして、普段のローン、融資よりもうちょっと安い、あるいは返済期間が長いと、そういう意味でADBの貧困削減の目的と、AIIBはそうではなくむしろもうちょっと商業ベースになるインフラだというような意味で補完関係になると言っているんですけれど、ここはADBもインフラ投資と投融資はやっているので、まさにバッティングしてくると思います。その中で1つ懸念するのは、しっかりAIIBのガバナンスが効けばいいんですけど、しっかりとした融資をしてくれればいいんですけれど、現在のちょっとふわふわしている感じですとガバナンスが効かなそうだ、もしそれが前提になるとすると、無秩序な融資が行われ、仮にADBと同じような貸付先になったとした場合に、仮に返済が滞ってしまった場合、結局きちんと審査をして、真面目に貸していたADB側の融資が一部焦げつくという可能性というのは出てくると。そういう意味で、AIIBがADBとしっかりやっていくのであれば、ADBと同じぐらいの同水準の厳しさを持った融資が必要になってくると思います」

懸念される要素は何か?
柯氏
「中国は50%出してくれているわけですから、1番多く出している人間はいい加減なことをやらないだろうという期待的な観測を踏まえて、その部分を強く感じています」
小林議員
「そういった観点から、中国という国家が信頼できるのかどうか問われると思います。柯さんのおっしゃるような初歩的なミスを本当にしないのかどうか。それを日米が外から見守っているという状況だと思います」
榊原教授
「これをもっとテクニカルに言うと、中国の2国間援助になるのか、本格的な金融機関になるのか、それを皆見ているわけですよ。前者になっても、それは勝手にやってくださいと、それは中国の金だから。しかし、それだと日米は協力できないですね。ですから、本格的な金融機関に、ちゃんとしたガバナンスを持ったそういうものになれるのかどうかということが現在問われている」

日本は参加すべきか?
反町キャスター
「日本はAIIBに参加した方がいいと感じますか?」
柯氏
「東アジアの今後の繁栄を考えた場合に、日本はこの地域の最も重要な国の1つであるわけですから、たとえ、ADBを持っているとしても、私ははやい段階で参加表明して、外から見てガバナンスを強化するのでなくて、入って、ルールづくりに参加した方が我々アジアにとってとても良いことだと思うんですね」
小林議員
「AIIBに日本が参加するカードを現在切ったとしてもヨーロッパがとりあえず参加して、それに日本も屈して負けましたというようなカードの切り方ではなく、むしろ外交上の切り札は切らされるのではなくて、価値を高めて切るものだと私は思いますので、そこはアメリカと共にまだ外の方からAIIBに対して可能であれば、積極的な貢献をして、ガバナンスがしっかりしたものをつくる、そういうスタンスでいいと思います」
榊原教授
「私は慎重に見極めるべきだと思いますね。そう慌てて入る必要はないですね。それでキチッとしたガバナンスができれば、あとから入れば、それなりのメリットはあるわけですから、小林さんの言った通りアメリカとの共同歩調というのは非常に重要ですね。アメリカと連絡をとりながら、アメリカと共同歩調で、アメリカと日本が参加するならば最終的に参加するということであろうと思いますね。ですけれど、当面は慌てて参加するということはしない方がいいと思います」

柯隆 富士通総研経済研究所主席研究員の提言:『同舟共済』
柯氏
「我々中国人は四文字熟語は慣れているので同舟共済。意味が非常に簡単で、同じ舟に乗っていればお互い助けあうと。同じ東アジアにいるものですから、敵対意識はあるでしょうけれども、ただ助けあわなければいけない。安倍さんがいいことをおっしゃっているものですから、戦略的な互恵関係。今回日本は別にいくら出資するかを表明する必要はないけれども、積極的に関わっていくことが選択肢としてあってもいいと思います」

榊原英資 青山学院大学教授の提言:『中長期的協調体制』
榊原教授
「短期的にはいろいろあるかもしれませんし、この構想だって、短期的に飛び乗る必要はないですけれども、中長期的には中国との協調関係というのは、日本にとって極めて重要ですね。経済的に見ると最大のパートナーですからね」

小林鷹之 自由民主党財務金融部会副部会長の提言:『複眼的視点』
小林議員
「外交には虫の目、鳥の目、魚の目が必要だとよく言われますけれど、今回の点でも開発金融という国際金融のミクロの視点と、より広い外交安全保障も含めたマクロの視点、あるいは今後の交渉の時の流れ、潮の流れを読む視点が必要だと思っています。先ほどちょっと言えなかったんですけれども、今回のAIIBで言うと、たとえば、アジアということになっていますけれど、イギリス、フランスというアフリカの旧宗主国が入っていることによって、仮に陸と海のシルクロード、海の方は東アフリカの方も入っているんですよね。その時に、中国が主導する国際機関の普通の力をレバレッジとして効かせて、アフリカにもどんどん進出していくのではないのか。あるいは気になっているのが、中央アジア、先ほど柯さんが言っていた新疆との関係ですけれど、隣にカザフスタンをはじめとする中国の歴史上の安全保障のアキレス腱がある中で、そこが経済的に安定するということではあるんですけれど、東太平洋に向けての海洋進出への圧力がかかってくる。そういう中で、イギリスが昔、二流、三流の国から一流国へと覇権を握っていったのは、大陸との距離をとりながら、勢力均衡をとっていったという意味で、日本も経済的、軍事的、あるいは外交力、様々な面において、東アジアで勢力均衡というのをどうやって維持していくのかという視点からも、このAIIBを捉えていく必要があると思います」