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2015年3月18日(水)
検証・春闘集中回答日 古賀連合会長問う成果

ゲスト

古賀伸明
連合会長
斎藤太郎
ニッセイ基礎研究所経済調査室長(前半)
島田陽一
早稲田大学法学学術院教授

“春闘”集中回答日 賃上げの成果と闘争の評価
秋元キャスター
「今日、自動車や電機など大手製造業の労働組合の要求に対する経営側の回答が出揃いました。主な企業の妥結額ですけれども、自動車は組合の要求額6000円に対しまして、いずれも前年からアップしています。その他、電機大手6社は3000円アップと、ほとんどが昨年を上まわるベースアップということになっているんですけれど、まず古賀さん、この結果をどのように受け止めていますか?」
古賀氏
「連合の交渉組織単位だけでも、おそらく6000とか、7000あるんですね。そのうちの、今日は3ケタもいかない、まさに先行組合の回答が引き出されたという位置づけですから、これだけをもってして春季生活闘争2015の全体を、当然のことながら語ることはできませんし、中小企業の働く仲間達、非正規の方達、未組織の方達、こういう人達にどういうふうに全て底上げをするかということの方がむしろ現在、求められているわけで、我々としてはこれから第2弾がスタートという、そういう位置づけだと、まず前提として思っていただきたいということです。そのうえで今日の回答ですけれども、我々はデフレ脱却、新しいサイクルで経済の好循環をまわしていかなければいけない。そのためには、国民所得を引き上げていく。そのことが極めて重要だし、それは言うまでもなくGDPの6割を占める個人消費を動かさなければ、実態経済がまわっていかないということで、過去も取り組んできました。昨年、ご案内の通り、長年、一定水準にはりついていた賃金水準を要求全て満足ではありませんけれども、引き上げるというトレンドが起きた。この流れを加速していく、あるいは広げていかなければならない」
秋元キャスター
「一方、春闘の在り方についてなんですけれども、昨年、今年と、『官製春闘』と言われているんですけれども、安倍総理は昨年に続いて経済界に対して、賃上げをはかる要請をして、企業はその要請に応える形になったわけですけれども、古賀さん、この『官製春闘』と言われていることについてはいかがですか?」
古賀氏
「『官製春闘』という言葉は、マスコミが勝手につくった言葉で、労使側もこんなことは言っていないし、政府も言っていないです。まずもって日本は全体主義国家でないし、社会主義国家でもない。政府が労働条件、賃金について、いちいち規制をかけて、上げたり下げたりするという社会ではない。あくまでも賃金も含め、労働条件は労使が粘り強く、真摯に、お互いに置かれた立場を理解しあおうと努力をする中で、決定をしていくものです。ただ、『官製春闘』とマスコミの皆さん方がつけたのには2つあると思うんです。1つは政労使会議。政労使会議で一応、まとめて大きな方向をつくっていますよねということです。私は、政労使が、経済政策や社会政策についていろんな議論をするのは、これはヨーロッパでは当たり前のことになっていますし、当然のことだと思う。社会のステークスホルダーの一部、主要なステークスホルダーとして、そこでこれからの経済をどうしていくのかという、あるいはデフレからどうやって脱却するのか。我々は国民所得を上げていかなければならない。このままでは本当に負のスパイラル、どんどん落ちます。そういうことが、私達流に言えば、やっと政労使の場で確認できたというイメージを持っているわけです。それを確認したのを第一幕として、それもお互いに、心に、頭に入れながら、交渉をやっていくということだと思うんです、具体的交渉は。もう1つは、現在いみじくもおっしゃったように、総理はじめ、関連閣僚はとにかく経営者に賃上げ、賃上げと要請をするということです。私は、どういう真意があって、経営側がそれによって、どれだけ交渉の場で心が動いているかはわかりません。経営側に聞いてみないと」
反町キャスター
「労使交渉の場で、これだけ言われるとか?」
古賀氏
「いや、そんなことは言わないでしょう。労使自治は労使自治ですから。ただ、それは、アベノミクスは国民所得が上がって、実態経済をまわさなければ、えらいことになる。このアベノミクスという経済政策、そのものが問われるようになる、非常に大きな危機感だと思うんです。ただし、私に言わせれば、そんなことせずにもっと政府はやることがあるでしょうと。底上げですよ。たとえば、最低賃金を上げるということに旗を振る。あるいは非正規労働者の均等待遇を法制化する。あるいは能力開発や職業訓練を全ての人に受けられるようなシステムを整えて、能力開発をしていく。あるいは非正規労働者の社会保険の適用を拡大する。様々なことがあります。公正取引をきちんと取り締まる。こういう政策をきちんとまわすことが、私は政府の役割だと思います」

賃上げで個人消費は
反町キャスター
「デフレからの脱却がどうこうという議論になってくるんですけれども、それに向けての強烈なプッシュを今回の春闘の結果があと押ししているという、そこまではなかなかまだ言いきれない?」
斎藤氏
「一歩前進したことは間違いないと思います。それは、昨年よりも今年の方が、さらに積み増しもありますので、それは一歩前進だと思います。ただ、ゴールはもう少し先にあると私は思います」
反町キャスター
「この場合のゴールとは何ですか?」
斎藤氏
「この場合、1つは、政府、日銀は2%物価を上げようとしています。この是非もありますけれども、たとえば、仮に2%の物価上昇というのを実現した時に、賃上げというのはどのぐらい必要なのかというと、最低2%必要です。そうしないと、実質的な賃金は下がってしまいます」
反町キャスター
「個人消費の広がり、見通しはどうですか?これから先の分を見た時に。何が引き金、何が条件というか、要因になって、これから個人消費の広がりというのは、どう広がっていくと見ていますか?」
斎藤氏
「賃金の上昇というのは1番大きいと思います。2014年度は、個人消費は極めて大きな落ち込みを示したんです。株価が上がって、企業業績が比較的良いので、何となく景況感というのは、ムードは良いんですけれど。実は先ほど紹介したような、家計というのは非常に厳しい1年だったわけです。実際、数字で言うと個人消費は2014年度の見込みですけれども、前年と比べて3%ぐらい落ちたんです」
反町キャスター
「家計消費ですか?」
斎藤氏
「そうです。株価とか、企業業績と全然違う数字です。ですから、賃上げがないと、ここが持ち直していかないので、そういう意味でも、賃上げが明確な形で出てきたというのを、私は明るく捉えています」

中小企業や地方への波及
秋元キャスター
「今日の大手製造業の集中回答で示された賃上げは果たして中小企業にまで波及していくのかどうかという、今後の焦点はそのあたりになると思うんですけれど、中小企業の雇用者数は、全雇用者数のうち69%、3855万人と大企業の雇用者数の3倍以上あります。古賀さんはこの全雇用者数の7割を占める中小企業への賃上げの波及。これをどう見ていますか?」
古賀氏
「波及させなければならないでしょう。するか、しないかではなくて」
斎藤氏
「中小企業は厳しくて、なかなか賃上げの動きも遅れるというところは、致し方ない面もあると思います。ただ、昨年、今年と2年続いて、大企業が引っ張る形で賃上げが実現したので、ある程度は波及すると思いますし。あと私の考えでは、中小企業の場合、大企業と違うメカニズムで、結果的に賃金が上がるのではないかと思っています。つまり、中小企業の場合、春闘でボンと上げるというよりは、むしろ毎月毎月、人が足りないとか、そういう中途採用の人を雇わなければいけない企業が多いわけです。現在、労働市場全体としては失業率が非常に下がっていて需給がかなり逼迫しているんです。ですから、中小企業が新たに人を雇うとすると企業によって、経営者によっては厳しい話かもしれませんが、ある程度、賃金を上げないと、人を雇えなくなっている。そういう状態になってきています。ですから、少しメカニズムが違うんですけれども、そういう市場原理で中小企業の方にも賃上げの動きが波及してくると私は予想しています」
反町キャスター
「斎藤さん、中小企業は、賃上げ体力があるのかないのか、よくわからないところが多いのですが、どう見ていますか?」
斎藤氏
「個々バラバラとしか、答えようがなくて、でも、私の場合は平均値で見るくせがありまして、そうすると結局、中小企業7割ぐらい占めているわけですけれども、当然、厳しいところは非常に厳しい、賃上げところではないというのは事実だと思いますが、大企業は平均的に非常に良いのは間違いないですが、中小企業も全体として賃上げの余力がまったくないのかというと、そんなことはないと。中小企業でもかなり収益を上げているところは出てきていますので、かつてのように横並びで一律に賃上げするというのは無理だと思いますけれど、できるところはやるということは十分に可能な状況にあると思っています」
反町キャスター
「古賀さん、そういう状況でいくと中小企業においても現在、斎藤さんが言われたみたいに、求人難の中で賃上げすることによって、人を集めなくてはいけない。そういう、いわば中小企業の体力競争みたいなものがこれからもし始まるとすれば、これから先の部分というのは中小企業の中においても、生存競争というか、淘汰が結果的には、ある程度進むのかなという、こういう見方はいかがですか?」
古賀氏
「起きるかもわかりませんね。それは。たとえば、中小企業は、私はグループ化をするとか、そういうことが非常に重要なことだと思います。だから、そういうことでは加速をするための1つの契機になるということを否定はしませんし、その時は働く我々の立場からすれば、働く者を市場に放り出すと。それはちょっとやめですよねと。どこかがきちんとやるとか、あるいは能力開発をして次の分野に移すという、その経路をきちんと整備をするということではないでしょうか。人手不足というのは本当に実感します。斎藤さんがおっしゃったように。だから、ある経営者は防御的賃上げをしなければならないということは、そういう言葉を吐く人が出てきているように、需給関係で見ると、我々からすれば売り手市場になっているわけで、それは確かに昨年今年とかなり加速しています、それは」

正規・非正規労働者の格差
秋元キャスター
「ここまでは正社員の賃金についての話を聞いてきたんですけれども、日本全体の個人消費を押し上げるためには、非正規労働者の賃金の底上げも大きな課題となっています。昨年6月時点のデータですけれども、非正規労働者は1936万人で、労働者全体の37%を占めています。正規労働者と非正規労働者の賃金の差を1か月の給与で見てみますと10万円以上の開きがあるわけですが、古賀さん、今回の春闘では労働者間の格差についてどのような議論、どのような成果があったんでしょうか?」
古賀氏
「だから、非正規労働者の底上げというのは極めて重要なことで、ただ、非正規労働者と言って、マスで捉えるのはでなく、たとえば、雇用形態にしてもパートタイマーの人もいれば、派遣の人もいる。契約社員の人もいれば、嘱託の人もいる。それぞれで、それぞれの課題が違うわけですから、そういう観点から見なければならないということを、非正規労働者の方でも、パートタイマーの方達で賃金体系をきちんと持っているところもあるんです、現実に。いわゆる定期昇給的なものもあれば、まさに時給だけというところもある。そういうところをどう精査して、きちんと対応できるかということです。少なくとも今回、我々は全構成組織が参加をして非正規共闘というのをつくって、これは時給の格差是正も含めて、時給アップを要求する。プラス時給だけではなくて、たとえば、一時金があるかないか、いろいろあるんです。福祉の関係、休暇はどうなっているのか。こういうことはそれぞれの職場の場合は、それぞれの現在の置かれている状況をもって、優先順位をつけながら、要求を提示するという作業を、現在、一連でやって終りつつある。またこれからあるかもしれない。これからです、非正規の方達の交渉は。だから、現在、どうなったかというのは、冒頭言ったように、まさに現在からスタートしたと捉えていただければありがたいし、この人達の底上げをしないと、日本経済全体にも非常に影響を与えることなので、そのことについて我々は懸命に取り組んでいくということです」
反町キャスター
「非正規共闘は連合の組織間の非正規共闘に参加している労働者、働く人はどのぐらいいるのですか?」
古賀氏
「非正規共闘というのは全構成組織は参加をする。どこでも非正規の方を抱えるところが多いですから」
反町キャスター
「そういうことですか。要するに、非正規の人達だけで、1つの組織体をつくっているわけではない?」
古賀氏
「違います」
反町キャスター
「いわゆる正規の人達も、それを支援する形で、その組織に入っている?」
古賀氏
「そういうことです」
反町キャスター
「そうすると、非正規で働いている人というのはいろいろな業種に多岐に渡っているんですけれども」
古賀氏
「そうです」
反町キャスター
「それに対して一律で要求する統一要求というのはなかなか難しいですね」
古賀氏
「だから、言ったようにそれぞれの置かれた環境の中で、皆さん方、非正規共闘の方達がメニューを出して、これをチョイスして、今年はやっていこうということで交渉しているんです」
反町キャスター
「労働運動というのは、働いている人達がある程度、固まって数としてマスにならないと効果がない。そうしないと、使用者側と雇用者側との対決の場に立てもしないではないですか。それぞれ、言われたようなように、非正規共闘というのは全体として大きいかもしれない。それぞれの企業、職場においては、もしかしたら2人とか、3人とか、場合によっては1人。そういう人達が、こういう要求を非正規共闘に提出しますと。これは運動体として効力があるのですか?」
古賀氏
「ないでしょう。だから、そういうところをなくさなければならないです、まず。たとえば、非正規と正規と一緒になった労働組合もあるんです。これはちゃんとこれで、全体で交渉をするということですね。そういうところを増やしていかなければならないということです、我々としては」
斎藤氏
「なかなか格差が縮まらないというのが率直なところです。正規、非正規の問題を考えた場合、非正規の人が正社員になるべきだという点もあると思うんですけれども、私自身は、大きな流れでいくと、これから女性と高齢者がこれまで以上に労働市場に参加していかないといけないという中では、働く側も、非正規で働きたいという人が従来に比べてかなり増えているんです。これは統計的にもそういう数字が出ているんですけれども」
反町キャスター
「ここでいう非正規で働きたいというのはどういう意味か。たとえば、年金も要らない、社会保険も要らないという、そういう意味ではないですよね?」
斎藤氏
「そうです」
反町キャスター
「そこでいう非正規は、フレックスに働きたい。そこですよね?」
斎藤氏
「時間とか、もしくは私はこの専門知識で働きたい。ですから、非正規でもいいと。そういういろんな理由で非正規を選ぶ人ももちろん、正社員になれなくて、非正規という人もいるわけですけれども、かつてと比べると、非正規で働きたい人が増えている。ですから、これから先も非正規の比率は、私は上がっていくと思います。ですから、なおさら非正規の待遇というのを上げていかないと、これは労働市場全体、国民全体の賃金が上がっていかない。おっしゃられたように、実は、これは賃金だけの問題ではないんです、待遇というのは。これは社会保険、雇用保険も含めて現在、正規と非正規の間での格差が大き過ぎると思います。大き過ぎることが企業にとって、非正規を雇うインセンティブが、ちょっと高過ぎると思うんです。ですから、このことによって…」
反町キャスター
「それはどういう意味ですか?非正規の賃金が安すぎる?」
斎藤氏
「コストが賃金だけで測ったコスト以上に非正規と正規の差があるんです。ですから、生産性に比べて、企業にとってみれば非正規を雇いやすいんです。現在のこの状況で」
反町キャスター
「人件費、トータルで言うと、賃金、保険料、諸々全部、正規と非正規で比べると倍ぐらいですか?」
斎藤氏
「そうですね、ざっくり言うと倍ぐらいです」
反町キャスター
「つまり、正規を1人雇うつもりで、非正規2人を雇える?」
斎藤氏
「はい」
反町キャスター
「経営側、会社側からすれば…」
斎藤氏
「はい。その分、生産性が低ければ、それに見あったコストなわけですけれども、実は非正規の人もそれほど生産性が低くないです。ですから、企業にとってみれば、雇いやすい。これが実は歪みを起こしていると思うんです」
反町キャスター
「古賀さん、先ほど、非正規の話をされた時に、斎藤さんはずっと先の見通しとして非正規労働者が増えるという見通しを述べました。連合も同じ見立てですか?」
古賀氏
「増えるというよりも働き方が多様化する。そういうことはこれから起きてくると思います。働き方が多様化していく。だから、それは非正規というか、正規というのかはわかりませんけれども、多様化していく。それは当然多様化するべきだと思うし、私は。ただ、現在の前提、何もないところで多様化すると、言ってみればコストダウン。人件費削減、こういうことにつながっていくわけですから。そこはきちんと条件を揃えなければならないし、当然、男性、正社員、長時間労働がモデルの働き方の中で誰もが社会に参加をして、支えるという、そういう社会が生まれないわけで、リーズナブルな働き方をしながら、女性も、高齢者も皆が働くことを通じて、社会に参画をする。そういう労働環境をつくらなければならないでしょうし、その中では、働き方の多様化というのはライフサイクルの中で、働き方が多様化しても、それは良いと。ただし、先ほど言ったような、それをもって経営側のコストダウンの1コマになるようなそういう働かせ方をするというのは、大きな間違いであって、だから、2つか3つぐらいの前提条件がいると思うんです。1つ目は、働く側の意思も尊重されると。働かせる側だけの意思だけではなくて働く側の意思も最大限、尊重される。2つ目は、均等待遇です。働き方に応じて、ただ単に雇用形態が違うからすごく差があるというのはおかしい話で。ただ、同一になるかどうかはわかりません。特に日本は人に値段がついていますから、その人の能力にお金を出すというのが日本の特質として出てきましたから、一緒の仕事をしていても違う可能性はあるんですけれども、現在のようなこんな格差ではないでしょう。3つ目は、働き方を移れると。その働き方でずっとではなくて、いろいろと先ほど言ったような人生のライフサイクルの中で、現在こういう働き方をしているけれども、次はこういう働き方をやろうとか。たとえば、女性でも出産とか、何とかという時には短時間勤務というのは、現在もあるわけで、男性でも現在は高齢になれば、短時間勤務をしていく。隔週、隔日と。そういう働き方を、いろんなケースを想定すると。その時にこういう条件がいるでしょうと。そういうことです」
反町キャスター
「正規と非正規の2軸になっていて、たとえば、連合の運動方針として、非正規の人達をなるべくたくさん正社員に吸収すると。かつてはこの話をされていませんでしたか?されていましたよね?」
古賀氏
「いや、だから、していましたけれども、我々は非正規を全部正規にするみたいなことは言ったことはないです」
反町キャスター
「なるべく多くという意味ですか?」
古賀氏
「多く。それよりも不本意非正規であるとか、そういう人はできるだけ、正規になるような、それが必要でしょうし、それより、むしろきちんと政策対応しなければならないのは、その人が家計の収入のほとんどを占めている。しかし、低処遇だと。こういう人に1番、光を当てて政策を打つべきです。それは一次所得だけではなくて、社会保障の関係もあるでしょう。様々な政策で底上げしていかなければいけない。そういうことではないですか」

“働き方改革”の意義と行方 “残業代ゼロ制度”の是非
秋元キャスター
「そもそも政府はどういう狙いで高度プロフェッショナル制度の導入を目指しているのでしょうか?」
島田教授
「この問題は、私ども規制改革会議でもご意見を提出しているところですが、労働時間改革については3つの観点が必要だと考えています。1つが健康確保という原点、これはまず徹底しなければいけない。2つ目がワーク・ライフ・バランスの促進という観点。3つ目が一律の労働時間管理がなじまない労働者というのが先ほどのお話の多様化という中でも出てきていますので、これに則した労働時間制度をつくるべきだろうと。この点ではおそらく今度の政府提案の、共通するお考えだろうと思っているところです」
反町キャスター
「導入企業は以下のいずれかを実行、この3つの条件のいずれかとは何か変ではないですか?24時間の中ではこれ当たり前の話で、次の2つ目もまた当たり前の話で、3つ目は週休2日という意味ですよね?104日以上というのは。これは3つ全部でも普通かなと思っちゃうんですけれども、それをどれか1つでいいというのはおかしくはないですか?」
古賀氏
「それは反町さんがこの制度をまったく理解していないから。当たり前でないようにしたわけですよ。労働時間規制を全部除外、適用除外にするのがイグゼンプションだと。何もないけれども、島田先生がおっしゃったように健康は守らなければならんですよねと、だから、新しくこういうのをつくって、このどれかを実行すれば、健康は守れるのではないでしょうかということですよ。当たり前のことがなくなったんですよ」
反町キャスター
「古賀さんはこれをやれば健康が守られると…」
古賀氏
「我々はこの制度導入に反対していますので、一切こういうことをやっても、しかも、一定と言って、一定とは何時間ですか?全然わからないということです。私どもの立場は」
反町キャスター
「いずれかというのはどういう話なのですか?」
島田教授
「規制改革会議は、これについては三位一体改革ということを言っていまして、古賀会長がおっしゃるように、今回は、いわゆる労働時間の規制から適用除外するという制度ですので、その際に、それはまさに労働時間規制になじまない労働者にとって必要だと。しかし、そうは言っても健康確保というのは確実にやらなければいけないということですし、同時に、そういう働き方がワーク・ライフ・バランスということも考えなければいけないと。それを支えるための条件として提示されているものだと思います。私どもが申し上げましたのは、労働時間の量的な上限規制というのをここでは健康管理時間という言葉になっていますが、これを設ける必要があるということです。ここは1か月、3か月ということがいいのか、年間で考えるのか、いろんな考え方があると思いますが、そこは考えておく必要があるだろう。と言いますのは、現在週40時間と言われていますが、ご存知のように時間外労働というのは三六協定という協定があれば、相当程度、極端に言えば、法的規制がないと言ってもいいぐらいできるようになっていまして、そういう状態を前提にして考える中でこの制度を導入してはまずいので、まず上限というのは決めておくべきだろうと。これは、日本はないですね。1週40時間というのはあるんですけれども、時間外労働を含めた上限時間というのは、我が国は持っていない。そこを持つべきだと、これが1点ですね。それから、我々は休日、休暇と言いました。その考え方は現在いろいろな働き方が多様化してくる中で、たとえば、日本も外資の証券系の若い人達の働き方を見ると、長期休暇をかなり多くとって、それによってバランスをとっているということがあるので、我々は日本で普及していない年次有給休暇を本当の意味の長期でとるというような仕組みでバランスをとると。それから、週休2日というのは確実に年間を通じたところでとれるようにするということによって、バランスをとっていくというような働き方として考えたらよいのではないかと言っています。ただ、政府案は、我々とちょっと考え方が違っている」
反町キャスター
「三位一体だったのが、政府案になるとどれが1つでいいようになるのですか?」
島田教授
「それはいろいろな考え方だと思います。いろいろな議論の中でこういう提案をされたので、我々としては若干残念。ただ、我々が提案をしたことを少しは汲んでいただけたのかなと」
反町キャスター
「事前の説明は政府側からあったのですか?」
島田教授
「規制改革会議はあくまで政府にご提案申し上げるということがメインです。政府案について、こうなりましたというようなことを公式にご説明いただくことはない」
反町キャスター
「議員の中には、これはおかしいだろうと。これは趣旨が違うよという議論にはならないのですか?」
島田教授
「非常に残念だというふうに…」

“労働者派遣法”改正案の是非
秋元キャスター
「どうして労働者派遣法の改正が雇用の安定や正社員化につながるのでしょうか?」
島田教授
「専門職と言われる26業務以外というのは最長で3年間しか働けませんでした。そのことによってまた非常に不安定になる。こういう人達は登録型と言って、派遣企業に派遣期間だけ契約期間があるという状態でしたけれども、今般の改正は、派遣会社の方になるべく期間の定めのない契約で雇われると。そういう方向を目指しているんです。それが非常に安定化につながるだろうと。またキャリア支援というところにもつながっていくだろうということになると思います」
反町キャスター
「ここで言っている、目指している正社員化というのは、派遣会社の正社員なのですか?それとも派遣先での正社員ですか?」
島田教授
「両方あるのですけれども、今般はむしろ派遣会社において雇用を安定させていくことを…」
反町キャスター
「派遣会社の正社員になることを、義務づけまでいっていましたか?」
島田教授
「義務づけまではいっていないです」
古賀氏
「私どもはこれも反対です。3度目になりますけれどね。2度廃案になって、まず経営、あるいは政府が好きなグローバルスタンダードの大きな2つが落ちているんですね。1つはいわば派遣労働は臨時的、一時的な仕事だということ。今回、修正で何かこう入れたみたいですけど、文言は。しかし、実態としてずっと派遣で続けるというような仕組みになっているということです。2つ目は均等待遇原則です。均等待遇原則がまったく法案の中にも触れられていない。だから、均等待遇というのは、同じような仕事は同じような待遇にしようではないかということですね。島田先生とは考え方違うんですけれども、結局、こういうことになると、生涯派遣で低賃金になってしまうと。そういう人達をたくさん増やしてしまう可能性が十分あるのではないかと思っていますので、我々としてはこの制度、労働者派遣法をまさに解約(規定)と受け止めて、先ほどの法案と同様に、何とか阻止ができないか、それらのことで国会は野党を中心とした論戦、我々自身も運動として、世に訴えて、世論を喚起していきたい、こんなことを現在考えているところです」
島田教授
「たとえば、派遣の方が、いわば派遣会社の正社員になることによって、いろんな仕事を体験することができる。そこでキャリアを積むような研修を受けられるようになれば、仮にその方が別の正社員とか、直雇用を求めていけば、そういう道はこれから開かれてくるでしょうし、これまでもそうだったと思っているんですね。これまでも派遣という形をまず3か月なりやって、そのあとで正規に雇用するというシステムはあったわけです。こういうのは社会的な機運で広がっていく可能性というのをもっているのだろうと」
古賀氏
「私はそうは思いません。残念ながら、そこは島田先生とはちょっと違います。技術派遣とか、これはよくわかるんですよ、そこで研修を重ねて、技術を持って派遣すると。現在の派遣はほとんどが登録型派遣ですよ。コンサルティングみたいなものを置いていたらいいみたいな、義務化もされていないキャリアのアップですから、だから、こちら側としては、こういう能力がきたら、探して、こういう能力がある人をと。そういうことが頻繁に行われていますから、現在でも。先生がおっしゃったようなじっくりとその人を育てて、いろんな仕事ができるようにしてというのはちょっと絵空事とまでは言いませんけれど、きれいな絵が描かれ過ぎているという感じですね」

島田陽一 早稲田大学法学学術院教授の提言:『正社員改革 格差是正』
島田教授
「先ほど申し上げましたけれど、現在の日本の正社員の長時間労働、あるいは男性中心の働き方、これを大きく変えていくことがこれからの日本の発展にとって必要だと。そういうことになりますと、当然働き方の多様化というのを進めていかなければならないだろうと。働き方が多様化してくる時に、現在考えなければいけないのは今日の議論にもありましたけれど、正社員、非正社員というのを2分でわけたような格差をなくしていく。これは賃金だけではなくて、社会制度も含めて変えていく。そのことによって労働改革を進めていくのが日本の成長にとって必要だろうということであります」

古賀伸明 連合会長の提言:『ディーセント・ワークとワーク・ライフ・バランス社会』
古賀氏
「ディーセント・ワークとは働きがいのある人間らしい仕事です。雇用の質を上げなければならない。雇用の質を上げることこそが社会を強くし、経済も成長するだろうと。ディーセント・ワークということを非常に重く見るべきだと思います。2つ目はワーク・ライフ・バランス社会。これは島田先生と非常に似通った考え方ですけれど、我々は仕事だけではなくて、ワークとライフをバランスさせると、もっと言えば、これからは社会のコミュニティの中でそれぞれが1人1人の役割と責任を果たさなければならない。と言うことのリーズナブルな働き方というものをつくることによって、女性も高齢者も皆が社会で働くことで参画し、支える側にまわる。こういうことになると思って、2つをあげさせてもらいました」