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2015年3月17日(火)
プーチン政権の光と影 核使用準備発言の真意

ゲスト

塩原俊彦
高知大学人文学部准教授
名越健郎
拓殖大学海外事情研究所教授

クリミア併合あす1年 核使用準備発言の波紋
秋元キャスター
「一昨日、プーチン大統領がロシアの国営テレビで、昨年、クリミアを併合した時に、NATOとの全面対決に備えて、核兵器の使用を準備していたことを明らかにしました。まず、名越さん、このタイミングでプーチン大統領がこの件を明らかにしたことについて、どのように受け止めていますか?」
名越教授
「実際に昨年、核使用の準備をしていたとは思えないです。クリミアが当時、平穏で騒乱状態でもなかったと。それから、当時ソチ五輪があったでしょう。ウクライナ情勢というのはソチ五輪の終盤と並行して進んで、プーチン大統領は2月23日だったか、ソチ五輪の閉会式に出ているんですね。プーチン大統領はソチにいたと思うんです。あの混乱、バタバタしている中で、彼も場当たり的に決めたというのは、別のところで言っていますから、いろんな決定を。核兵器まで頭が及ばなかったと思うんです。昨日の発言は、あくまで現時点での欧米への警告です。1つは、ロシアは、絶対にクリミアを返還しないと。それから、もう1つは、ヨーロッパとアメリカを離反させようとしている。つまり、核の恫喝というのはヨーロッパに対して脅威を与えるわけですね。アメリカではないと。だから、それによってヨーロッパを譲歩させようとする外交手段だと思うんです。怖いなと思ったのは、冷戦時代というのは、米ソ間のアームズコントロールがきちんとしていて、お互い一種の馴れ合いがあったわけで、お互いに戦争をしないという暗黙の了解があった。しかし、当時アームズコントロール、軍備管理、軍縮管理をやった人達は皆辞めていますね。米ロ間でそういう交渉はやられていないです。だから、核の暴走というのか、それがこれから出てくるのではないかと。特に、今回のクリミア併合というのはある意味で、核大国の暴走だと思うんです。核大国が暴走をすると、手がつけられないところがあって、その意味で、それこそプーチン大統領が警告を発したというのは不気味なところがあるんですね」
塩原准教授
「名越さんが言われた、特に、ヨーロッパへの警告という点が非常に強いと思います。2月21日の段階で、当時の大統領であったヤヌコビッチ大統領と反政府勢力の3者が危機調整協定に署名をしたわけです。それに、ドイツ、ポーランド、フランスの外相が列席して見守っていたわけです。この協定ができたにもかかわらず、ヤヌコビッチ氏を追い落とそうとする、ライトセクター、右翼セクターといわれる超過激なナショナリスト達が攻め込んだと言われていて、それでヤヌコビッチ氏は逃げ出さざるを得なくなったということがあって、まさに22日、ヤヌコビッチ大統領の所在が不明ということになって…」
反町キャスター
「当時のウクライナの大統領ですね」
塩原准教授
「そうです。本来であれば21日にこれだけの保証をする人達がいて、なおかつヤヌコビッチ大統領と反政府勢力が署名をした協定にもかかわらず、なぜか西側はすぐに、いわば武力でヤヌコビッチを追い落とした人を暫定政権として認めてしまうわけです」
反町キャスター
「トルチェコフ氏のことですか?」
塩原准教授
「彼も入っているし、ヤツニエコフ氏もいるし、ということですけれども、こういう連中をすぐに暫定政権として認めてしまったことでヤヌコビッチ派は行きどころを失うということが起きたわけです。こういうことを、プーチン氏はクーデターと言っていて、そのクーデターが起きたあとに大変なことになる。クリミアをナショナリスト達が攻撃するというようなことが実際起きていて、だから、彼は…」
反町キャスター
「ここで言っているナショナリストというのはウクライナの民族派ですね?」
塩原准教授
「そうです」
反町キャスター
「反ロシア、ウクライナの民族派ということですね?」
塩原准教授
「そうです。そういう人達が攻撃もしていた。だから、大変なので、何とかしなければいけない選択肢の1つに核の準備があり得たということを言っているわけです」
反町キャスター
「どういう状況において核の使用というものを想定し、準備をしたのかというのが想定できない。名越さんはどう感じていますか?」
名越教授
「ロシアの軍事ドクトリンでは、核兵器を使用する場合は、現地に大混乱が起きて、騒乱状態になったとか、あるいはロシアに重大な脅威が生じた時とか、そのようなケースに限定されるわけですね。今回の場合は、それに当てはまらないので、クリミアでそんなに騒乱とかは起きていない。実際に起きていなかったですから。だから、ああいう発言をしたのは不思議ですよね」
反町キャスター
「名越さん、中距離核戦力全廃条約、INF全廃条約がありました。あれはブッシュとゴルバチョフの間でしたっけ?」
名越教授
「いや、レーガンとゴルバチョフ。つまり、核兵器が3種類あって、射程ごとに。長距離の戦略核、中距離核、それから、短射程の戦術核です。1980年代にレーガン、ゴルバチョフが調印したのが中距離核全廃条約で、これは500kmから5500kmの射程です。このミサイルをロシアは一切持っていない」
反町キャスター
「持っていないはずですね。つまり、その点で問題になるのは、SS20という中距離ミサイル核があったんですけれども、これをロシアは持っていないはずですね?」
名越教授
「持っていないですね」
反町キャスター
「今回、ここで、もし核の準備をしていたとしたら?」
名越教授
「それは、戦術核、500kmキロ以下です」
反町キャスター
「もっと短い、短距離ですか?」
名越教授
「短距離です。それを仮に、レニングラードとかに配備すると、パリに届くという発想ですから。ただ、ロシアの軍の中で出ている議論は、ロシアは中距離核全廃条約から脱退すべきだと。SS20をまたつくるべきだと。そういう議論が現在、出ているんです。それはなぜかというと、アメリカは中距離核を持っていなくてもいいんです。ICBM大陸間弾道弾だけですから。ただし、ロシアの場合、周辺国の中国、インド、パキスタンとか、フランス、ドイツ、イギリスが動けば、北朝鮮も持っているわけです、中距離核ミサイルを。だから、ロシアは中距離核、ミサイルを持っている国に包囲をされているわけですね。それもあって、ロシアから出てくる議論は、中距離核全廃条約を脱退し新たに製造すべきだという議論が出ています。ますます中距離戦力がハイテクの技術の遅れから、現在NATO、に負けているから、核の選択に傾いているわけです。今回の発言のようなものがこれからどんどん出てくると思うんですね。そういう意味で、非常に危険な状況になっている」

ロシアの内部事情を探る
秋元キャスター
「塩原さん、クリミア併合の背景をどのように分析していますか?」
塩原准教授
「昨年のフォーリンアフェアーズの9月号、10月号にミアシャイマーというシカゴ大学の教授が非常に良い論文を書いているんですね。それは、Why the Ukraine Crisis Is the West’s Faultと言って、要するに、ウクライナ危機というのは、西側の責任。なぜ責任なのかということを書いてある本で、つまり、まさにミアシャイマー自身、悪いのは西側だと書いているんです。その中で、彼が非常に強調しているのは、どうしてそういうことをしたのかというと、NATO拡大、EU拡大、民主主義推進という3つが、アメリカ主導というので、ウクライナの危機を、ナショナリストを使って引き起こしたという要因になったんだという分析をしています。私はそれを基本的に正しいと思っている。ヌーランド氏という米国務次官補がいるわけですが、彼女はユダヤ人で、夫がロバート・ケーガン氏というネオコンの残党、生き残りでありまして、ヌーランド氏自身もネオコンの残党であると考えられます」
反町キャスター
「ネオコンとはどういう人達なのかというのを説明していただけますか」
塩原准教授
「簡単に言ってしまうと、ユダヤ人が多いんですけれど、要は、世界の民主化という、あまり多くの人が反対できないようなことをスローガンに書き、民主的でない国家に対して、言ってみれば、独裁政権だったり、そういうところに民主化のためのいろいろな策略を巡らせて、民主化をさせて、その過程で投資を促進したり、結果的に、民営化を進めたりしてアメリカ資本を入れる。あるいは戦争になったら戦争になったで、また、戦争で金儲けができる」
反町キャスター
「武器を売る?」
塩原准教授
「というような人達」

アメリカとウクライナ危機
反町キャスター
「民主主義という錦の御旗を掲げながら、ビジネス面ではその他、諸々の実利をきっちりとろうとしている人達、こんな感じの人達ですか?」
塩原准教授
「そうです」
反町キャスター
「それが、たとえば、ヌーランド国務次官補、マケイン上院議員の2人がある意味、ネオコンの気持ち、その思想を体現する大きなキーパーソンだということでよろしいのですか?」
塩原准教授
「特に、ヌーランド氏はユーラシア担当の人物ですから、彼女がどう考えても主導していたのではないかと思われるのですが、彼女がナショナリスト達、特に、ウクライナ西部にいるナショナリスト達を煽り立てることをしたわけです。それだけではなく、これは3月15日放送されたテレビの中でプーチン氏自身も言っているのですが、こういう反政府活動をしている人達の軍事訓練というのを、ポーランドであったり、リトアニアであったりというところでやっていた」
反町キャスター
「アメリカ政府が?」
塩原准教授
「アメリカ政府の支援のもとなのでしょうね。というようなことまであって、つまり、かなり本格的な武力クーデターをヌーランド氏を中心としたグループが仕込んでいたわけです。しかも、それは初めてのことではないです。つまり、2004年から2005年にかけてオレンジ革命があって、ユーシェンコ氏という親米派の大統領を誕生させるわけですけれども、その時にもよく似たようなことを1度やっているわけです。だから、それだけアメリカはウクライナに対し、非常に熱心にロシアから離反させ、自分達に近づける。まさに先ほど申し上げたようにNATOに入れるとか、EUに入れるとか、そういうことを画策してきた」
反町キャスター
「それを感知したロシア政府が7日、アメリカがウクライナでクーデターを計画していると非難というのは、プーチン大統領がそうしたアメリカ側の動き。またやろうとしているぞと。それを察知して、平場で非難をした。こういう理解でよろしいのですか?」
塩原准教授
「それは、そうです。私が知っている情報では、かなりヤバイという、非常に問題だという理解が進んだのが2013年11月の段階、大変なことになりそうだとロシアがよくわかっていたのだと思いますけれども、7日の段階になると、かなり切迫した事態であったということが考えられます」
反町キャスター
「そうすると、そこから先の部分で、21日、22日、23日、先ほどの話にあったように当時の大統領だとヤヌコビッチ氏が、要するに、ある程度の安定的な基盤をつくれるチャンスを、ドイツ、ポーランド、フランスと一緒にやったにもかかわらず、そのあとすぐクーデターが起きる。これはつまり、アメリカは、ヤヌコビッチ大統領は追放されるべきだと。彼は、要するに、親ロシアと近いから、ヤヌコビッチ氏を追放して、アメリカの意向を汲んだ政権基盤をウクライナにつくらなくてはいけないと判断をしたと。こういう理解でよろしいのですか?」
塩原准教授
「そこは非常に微妙な部分があります。21日の段階で、プーチン氏とオバマ氏は電話会談をしたと。この協定についてお互いに了承したと言っているんです。だから、そういう意味でいうと、オバマ氏もこれでいいというOKが出ているから、まさにドイツ、ポーランド、フランスの外相が見守る中で協定が結ばれたわけです。ところが、それからあとにヤヌコビッチ氏を追い出そうとした人達はアメリカ政府の意図で追い出されたのか、極めて偶然的な結果、つまり、超過激と言われているライトセクターの跳ね上がりが勝手にやったことなのかについては、実はよくわかりません」
反町キャスター
「ライトセクターがヤヌコビッチ大統領を追い出したと。ウクライナの中の極右勢力というのはもともとアメリカがいろいろなところで、先ほどのポーランドによる軍事訓練も含めて、アメリカが育て上げた集団ですね」
塩原准教授
「そうです」
反町キャスター
「最終的にアメリカが行けとゴーサインを出したかは別にしても、結果的にアメリカが育てた極右勢力はまとまったにもかかわらず、その翌日に大統領を国外に追放するという形になってしまった?」
塩原准教授
「そうです」
反町キャスター
「これはアメリカにとっても、もしかしたらラッキーなことだったのですか?」
塩原准教授
「そうかもしれません。つまり、結果として、すぐに暫定政権をつくらせて、ヤヌコビッチ氏を追い出して、親米政権を樹立することはできたわけですから」
反町キャスター
「アメリカの言葉、ネオコンの言葉でいう民主化することが、アメリカのどういう国益になるかということで言うと、たとえば、天然ガスの話がありますよね。つい先日もガス代を払っていないから、止めるとか、止めないとかという話も、ロシアからウクライナに関しての話もあり、僕らも聞いているんですけれども、天然ガス、ないしはエネルギー戦略を考えた時に、ウクライナを彼らの言う民主化することによってアメリカにとってどういう利益があると感じますか?」
塩原准教授
「1つは、シェールガスがアメリカでたくさん採れるようになって、シェールガスの輸出先として、ヨーロッパが非常に重要な市場になりつつあるわけですね。既存のパイプラインを使ってロシアはヨーロッパにたくさんの天然ガスを輸出しているわけですから、市場をとるという意味では、ロシアとEUの関係を離反させるということが決定的に重要です。そういう意味では、ウクライナ危機を煽って、ロシアとEUの関係を分断、離反させるということが極めて重要になると思います」
名越教授
「ネオコンというのはもともと民主党左派のグループが多かったんですね。1980年頃、民主党に飽き足らずに、共和党に移った。アメリカ全体が世界に民主化を広げる国なわけで、日本も占領統治されて、民主化されたわけです。だから、ウクライナでもそういう動きが当然あったと思うんです。昨年の夏、1週間ほどウクライナに行って、自分なりに調べたんですけれど、わからないことが多いですよね。つまり、10年前のオレンジ革命というのは、これは無血革命だったんです。非常に整然として、1人の負傷者も出なかった。しかし、今回は100人以上死亡する凄惨な流血戦になったんです。どうして起きたのかというと、デモ隊と治安部隊の両方が過激化したんです。2月19日頃ですか、スナイパーが出てきたんです。誰がスナイパーなのかは正体不明です」
反町キャスター
「これは政府軍なのか、要するに、極右勢力なのかもわからない?」
名越教授
「そうです。ロシアは極右組織、ネオナチだと言っています。しかし、そこのところがわからないです。つまり、ウクライナ検察当局は捜査もしていないです。だから、謎だらけです。ただ、100人以上の死傷者の大半は普通の若者だったんです。それは、死者の写真がいっぱい出ていますから。だから、犠牲になったのは普通の若者であると。ロシアは常にネオナチグループが扇動して画策したと言うんだけれど、ただ、昨年5月の大統領選挙では右派セクターの候補は1%しか得票率がなかったです。泡沫政党です。どうも現地で調べた限りではそんなに影響がなかったと。アメリカは当然、画策したと思うのですが、どの程度の影響があったかというのはよくわからなかったですね。だから、わからないことだらけです」

ロシアで現在、何が起きているのか
反町キャスター
「核兵器準備発言と同じような、こういうことで誰かに対するブラフ、恫喝であるとすれば、誰に対する恫喝なのか、たとえば、ロシアの中における反プーチン派に対する恫喝なのか、反プーチン派で大きな本格的な人達に対してポリス・ネムツォフ氏を殺すことによって、お前らいい加減にしろよとプーチン氏にたてつくなよという警告なのか、ないしはそういうレバレッジのような狙いがあったような感じもありますか?」
塩原准教授
「そんなに真剣に考えなくてもいいと…」
名越健郎
「真っ先に思い出したのは、2006年にアンナ・ポリトコフスカヤ氏という女性記者がアパートのエレベーターの中で殺されたんです。あの時も銃弾4発撃たれたんですね。ネムツォフさんも銃弾4発を浴びているんです。ほどなくしてチェチェン人の数人の実行犯が逮捕された。結局真相はうやむやのままで黒幕が誰かというのはわからなかったですよ。全体像がわからないままになっている。今回も同じ展開をたどると思うんですね。ロシアに反政府のノバヤガザータという新聞があって、そこの記者が書いたのは、これはプーチン大統領への警告である。つまり、政権内部、あるいは治安機関、特殊機関の国粋主義グループです。つまり、プーチン路線よりもさらに強硬な極のグループです。それがプーチン大統領に一種の警告としてやったと。つまり、クレムリンから300mぐらいですよね。要するに、プーチン政権に対して欧米強硬路線をとれ、もっと。ウクライナ東部の親ロ派をもっと支援しろと。そういう一種の警告としてやった、もちろん、1つの仮説ですが、真相は一切わからないですよ。それが結構説得力あるかもしれないなと読んだんです。だから、現在ロシアで不気味な事件が続出しているんですね。サハリン州のホロシャビンという知事がいて、政権に近い人ですけれど、彼が突然汚職容疑で逮捕されたんですよ。でも、真相がはっきりしないですよ。どうもネムツォフさんの暗殺もそうですけれども、ロシアで謎めいた事件なり、奇怪な悲劇が続出しているんですね。これはロシア人によると、何か大きな変化の前触れじゃないかという人もいて、つまり、2006年のポリトコフスカヤの時、暗殺事件の時はロシア景気が絶好調だったですよね。石油価格も非常に高くて、高度成長を遂げていた時、しかし、今回は石油価格下落で経済危機ですから。今日の石油価格は1バレル確か42ドルだった。昨年の夏は100ドルだったでしょう。それがこれだけ落ち、ロシア経済というのは資源頼みですよね。輸出の7割が石油とガス。だから、資源依存経済だから石油価格次第で、石油価格が高いと強いロシアになって、石油価格が低いと弱いロシアに(なる)。だんだん弱いロシアになっていくんですよ」

ドイツの立ち位置とは
反町キャスター
「ロシアの経済状況をどのように見ていますか?」
塩原准教授
「特に昨年の12月15日以降、ルーブルが大暴落をして、ウクライナ危機に対する、欧米を中心とする制裁が昨年の3月以降、どんどん強まっているのですが、その制裁の影響の何倍かの津波のようなものとして昨年12月のルーブル大暴落があって、実は予算の組み替え作業をずっとやっていて、昨日下院に新しい修正予算を提出できたのですが、そういう意味で言ったら、プーチン氏はそちらの方に力を割いていて、すごく忙しく、ネムツォフ氏のことなんかやっている暇がないというぐらい、ロシア経済は深刻な打撃を受けている。非常に厳しい状況にあるのは間違いない」
反町キャスター
「現在のウクライナの大統領のポロシェンコ氏と、アメリカ寄りの首相の2人の力関係はどういう位置づけにあるのですか?」
塩原准教授
「ポロシェンコ氏は非常に立場が難しいですね。実は議会の構成を見ると、もう1人、コロモイスキー氏と言って、ユダヤ人で、テレビ局なんかを支配していたり、銀行などを持っているような人なのですが、この人がいろんなところに金をばらまいて、それで昨年10月の議会選の時に450人の中で、150人から200人ぐらいが自分の支持者だと言われるぐらいの勢力を議会に持っているんですよ。この人も比較的非常に過激な思想を持っていて、彼自身はドニプロペトロウシク洲の知事をやっているのですが、周辺で、民兵と言うのか、自分で金を出して軍隊を複数支配しているようなところのある人です。そういう人はヤツェニュークに近いんですね。だから、この2人がもし手を組んじゃうと、ポロシェンコ氏はなかなか厳しい状況になる。つまり、アメリカ寄りということは武器もどんどん入れて、むしろウクライナ東部については攻め落とすまで戦争すべきだという話につながっていっちゃうと。こうなると、ヨーロッパ全体の安全保障というのか、非常にヨーロッパ全体が混乱に陥るということがあり得るので、メルケルさんとしては何としても2月12日に結ばれた協定を遵守すべく、ポロシェンコ氏にがんばってほしいというような話だと思います」
反町キャスター
「アメリカとヨーロッパの思惑の違いは?フランス、ドイツはどういう落としどころを目指しているのですか?」
塩原准教授
「2月12日に結ばれたミンスク協定だけは遵守して、和平を取り戻したいというのが基本線です。それだけではなくて、本日のフィナンシャルタイムスに、フランスとドイツとイタリアがアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加するという記事を掲載しています。これは非常におもしろい記事で、AIIB設立にあたっては、オーストラリアと韓国が入ろうとしたことに対して、アメリカが圧力をかけて入らせないようにしたわけですね。アメリカが第二次世界大戦後につくった、国際金融秩序に挑戦するようなアジアインフラ投資銀行に対して、フランス、ドイツ、イタリアが参加したいと言い出したということは、彼らも相当に頭にきている部分があって、アメリカのやり方に対して挑戦状を叩きつけるぐらいのことをやろうとしているのかなと思って、非常に注目しているわけです」

日露関係の今後
秋元キャスター
「日本はどのように動いていくべきですか?」
名越教授
「日本の場合は、他の国と違うのはロシアと北方領土問題がある。戦後未解決の問題を抱えているということですね。もう1つは、G7の一員である。G7は世界で現在唯一、国際法と人権を主張していく機関ですから、これがないと世界は無法地帯になるんですね。日本はG7の一員であると。しかし、日本はアジアの一国であって、ヨーロッパの国ではないです。だから、ウクライナ問題というのはある意味で米露も含めたヨーロッパ外交の失敗なんですね。そこに日本があまり関与していく必要はないと思うんです。立ち位置が非常に難しい。だから、日本はG7の一員として、大量制裁に入っていますけれども、非常にソフトですよね。欧米に比べるとほとんど制裁らしい制裁でもない。だから、安倍政権の立ち位置は、僕はうまくやっていると思うんです。たとえば、今年プーチン大統領が訪日を予定していますけれども、おそらくウクライナ情勢次第で難しいと思うんですよね。ただ、安倍総理とプーチン大統領は保守派同士でケミストリーあうんです。おそらく安倍総理はオバマ大統領よりもプーチン大統領の方が好きではないかと思うんです。同じ保守派ですからね。だから、せっかく2人の個人的親交で、ここまで築き上げてきたのがまた後退してしまいますよね。だから、その意味で非常にアンラッキーなところもあるんですけれど、だから、これから日本の場合、北方領土問題あるから、それを解決するような高度な外交が求められると思うんですね」
反町キャスター
「現在、日本がG7の他の国々に根まわしをして、ロシアに手を伸ばすということを行った場合、どういうリスク、メリットがあると思いますか?」
名越教授
「アジアで大量制裁をしているのは日本だけですから、韓国もしていないですよ。日本だけアジアで孤立しているところもあるわけです。その結果、プーチン大統領は、アジア太平洋各国と広範に関係強化をしたいのだけれども、日本が制裁に参加したから、やむなく中国一辺倒外交をやっていると思うんですね。日本にとってリスクがあるのは、大量制裁に参加することによって、中ロの結束をますます強めてしまう。これは安全保障上、よくないですからね。今年は戦勝70周年で中ロのナショナリズムが高まりますから、それに韓国が加わって領土問題で結束するかもしれない。三国干渉ですよね、19世紀の。北方領土、竹島、尖閣と。そういう事態になりかねない。中国はロシアに北方領土と尖閣での共闘を呼びかけています。それをプーチン大統領がずっと中立的立場で拒否をしてきた。ただ、これほどロシアが経済困難になって、孤立してしまうと、中国との同盟の道を選ぶかもしれない。その意味でも、対ロ外交というのは慎重な対応が必要かもしれないですね」

名越健郎 拓殖大学海外事情研究所教授の提言:『変化球外交』
名越教授
「要するに、日本外交全般で、難易度が高い外交問題は解決できないですね。北方領土問題しかり、拉致問題、それから、日中、日韓もそうですよね。これはある意味、速球ばかり投げていると思うんです。中国やロシアのような独特なバッターに直球だけで勝負できないですからね。変化球が必要です。たとえば、クリミアの問題でも、いろいろカードとして利用できると思うんですよ。たとえば、プーチン大統領がクリミアはロシア固有の領土だと言った。北方領土はロシア固有の領土ではないわけで、これは日本の固有の領土であって、そういうふうにクリミア問題を利用すると。つまり、クリミアの面積というのは北方四島の5倍ぐらいあるんですよ。ロシアは、おそらくウクライナ問題がだんだん沈静化したら、とり過ぎという反省点が出てくると思うんです。それはもう返さないにしても、北方領土はいいからとか、何か、要するに、あらゆる可能性を考えないとダメですね。それとタイミングですね。ドイツは冷戦のどさくさに紛れて戦後処理が終わったけれども、日本は何もできなかったわけですね。その意味で、タイミングと変化球、これが重要だと思うんです」

塩原俊彦 高知大学人文学部准教授の提言:『独立性』
塩原准教授
「ともかくも日本国政府の独自な立場をアメリカに知られないようにきちんと外交として実践していくという体制づくりをするということをしなければ、はっきり言ってロシアの側も日本と外交する時に何か喋ればアメリカに漏れると最初からわかっているわけですよね。だから、メルケル首相がやってきた時にも、安倍さんと会って、本当の意味で率直な話ができるのかと言ったら、非常に疑問符がつくでしょう。こういうことは実は外務省だけではなくて、経済産業省にしても、財務省にしても、いろんなところにそういう人達がたくさんいるわけですよね。ただ、良かったのは先ほど申し上げたように、安倍さんはかなりはやいうちに今回のウクライナ問題の真相をよくご存知なはずで、周辺の人達がいかにマニピュレートされた、情報操作された、おかしな情報、つまり、ロシアが悪いという情報を持ってきても、いかにいい加減であるかということを身をもって安倍さん自身が体験されているはずですよ。だからこそ、官邸外交というのをしっかりと構築すべく是非努力していただきたいと思います」